JP3843886B2 - エンジンの冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの冷却構造に関し、特に、シリンダヘッド製造への影響を抑制しつつ、ウォータポンプをシリンダヘッド近傍に配置可能なエンジンの冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、燃費改善を図るため種々の対策が行われており、例えば、エンジンオイル温度を上昇させ、エンジンオイルの粘性を低下させることによって、抵抗低減を図り、燃費を改善することが知られている。
【0003】
例えば、特開平6−101475号公報には、エンジンの熱発生量が低い運転状態では、シリンダヘッドのみに冷却水を供給し、シリンダブロックを比較的高温に保つことによって、抵抗低減を図り、燃費を改善することが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の先行技術によれば、ウォータポンプはシリンダブロック側に配置されているが、シリンダヘッドのみに冷却水を供給する場合、ウォータポンプはシリンダブロックよりもシリンダヘッドに近接して配置する方が通路レイアウト上望ましい。
【0005】
しかしながら、ウォータポンプを単に、シリンダヘッドに近接配置させようとすると、以下のような問題がある。
【0006】
まず、シリンダヘッドの前方(各プーリ、補機駆動用のベルト等が配置されるエンジン長手方向の一端側)にウォータポンプを配置することが考えられるが、シリンダヘッド前方側には吸気・排気カムシャフトを駆動するためのカムプーリが配置されるため、スペース上ウォータポンプ駆動用のプーリをレイアウトすることが難しい。
【0007】
そこで、シリンダヘッドの前方ではなく、吸気マニホールドが接続されるシリンダヘッドの気筒配列方向(長手方向)と直交する一端側に向けてシリンダベッドの一部を突出させ、その突出部分にウォータポンプのポンプ室を形成することが考えられる。
【0008】
しかしながら、シリンダヘッドの気筒配列方向(長手方向)と直交する一端側にポンプ室を突出して形成すると、ダイキャストによるシリンダヘッド製作時、突出部への湯回りが悪くなり巣ができ易くなる。
【0009】
また、シリンダヘッドの熱処理時、突出部がヒートスポットとなり、シリンダヘッドの歪みを生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題に勘案してなされたもので、その目的は、シリンダヘッド製造性への影響を抑制しつつウォータポンプをシリンダヘッド近傍にレイアウト可能なエンジンの冷却構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあってはその解決手法として次のようにしてある。すなわち、本発明の第1の構成において、エンジンの駆動力が伝達されるとともに、その先端にインペラが取付けられるポンプシャフトと、
該ポンプシャフトが軸支されるウォータポンプケースと、
該ウォータポンプケースに対峙して取付けられ、上記ウォータポンプケースとの間に上記インペラが配設されるポンプ室を形成するウォータポンプカバーとから構成されるウォータポンプと、
シリンダヘッドと、
該シリンダヘッド内に形成された冷却水通路と、
上記シリンダヘッドの気筒配列方向と直交する一端側に接続される吸気通路形成部材とを備え、
上記ウォータポンプによって上記シリンダヘッド内に形成された冷却水通路内に冷却水を供給するよう構成されるエンジン構造であって、
上記ウォータポンプは上記吸気通路形成部材が接続されるシリンダヘッドの気筒配列方向と直交する一端側に配置されるとともに、
上記ウォータポンプのウォータポンプカバーが上記吸気通路形成部材と一体形成されるよう構成してある。
【0012】
通常、吸気通路形成部材はアルミ若しくは樹脂によって形成されるが、シリンダヘッド製作時のように熱処理は行われないため、熱処理に伴う歪みは生じない。
【0013】
また、吸気通路形成部材を樹脂で射出成形する場合は、湯回りの問題も生じない。
【0014】
本発明の第1の構成によれば、ウォータポンプカバーは、シリンダヘッドではなく吸気通路形成部材と一体形成されるため、シリンダヘッド製造性への影響を抑制しつつウォータポンプをシリンダヘッド近傍にレイアウトすることができる。
【0015】
さらに、本発明の第1の構成では、上記シリンダヘッドの長手方向一端側には、エンジンの各シャフト駆動用の巻掛部材が巻掛部材ケース内に配置されるとともに、上記ウォータポンプケースと上記巻掛部材ケースとが一体形成されるよう構成してある。
【0016】
ウォータポンプカバーが吸気通路形成部材の側部から突出形成されると、そのウォータポンプカバーには、ベルト等の巻掛部材による駆動によって負荷が掛かかるため、ウォータポンプの強固な支持剛性が要求される。
【0017】
上述の構成によれば、ウォータポンプカバーに対峙して取付けられるウォータポンプケースが巻掛部材ケースと一体形成されるため、ウォータポンプケースの支持箇所、支持面積が増加し、ウォータポンプケースの支持剛性を向上することができる。
【0018】
また、本発明の第2の構成において、上記吸気通路形成部材及びウォータポンプカバーは、樹脂製部材により構成してある。
【0019】
ウォータポンプカバーが吸気通路形成部材と一体形成されると、吸気通路内を流れる空気が冷却水温度によって上昇するため、空気密度が低下し、エンジン出力が低下する惧れがある。
【0020】
本発明の第2の構成によれば、金属製のものに対して熱伝導性が比較的低い樹脂によって吸気通路形成部材とウォータポンプカバーとが一体形成されるため、冷却水が吸気通路内を通過する空気に熱的影響(空気温度の上昇によるエンジン出力の低下)を与えることを抑制することができる。
【0021】
また、本発明の第3の構成において、上記ウォータポンプカバーは、上記吸気通路形成部材を構成する吸気マニホールドと一体形成されるよう構成してある。本発明の第3の構成によれば、ウォータポンプを吸気マニホールドに一体形成することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、シリンダヘッド製造性への影響を抑制しつつウォータポンプをシリンダヘッド近傍にレイアウトすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面1〜5に基づいて説明する。
【0024】
図1はエンジン前方側から見たエンジン正面図、図2は図1上方側(シリンダヘッドカバーを外した)から見た平面図、図3は図2のA矢視図、図4は図2のB−B断面図、図5は冷却水の流れを模式的に示す模式図である。
【0025】
尚、図2〜図4には、当該図面の基となる3次元CADデータの関係から、R部分やテーパ等を表すフィレットを示す線が含まれている。
【0026】
図1において、1はチェーンカバーで、シリンダブロック2、シリンダヘッド3の前面側に取付けられている。そのチェーンカバー1内には、吸気カムプーリ4と、排気カムプーリ5及びクランクプーリ6を駆動するためタイミングチェーン7が張設されている。
【0027】
また、チェーンカバー1の前方側には、ウォータポンププーリ8、オルタネータプーリ9、エアコンプレッサープーリ10及びパワーステアリングプーリ11を駆動するための補機駆動ベルト12が張設されている。
【0028】
また、シリンダヘッド3の気筒配列方向と直交する一端側には、樹脂製の吸気マニホールド13が接続されており、各気筒に接続される吸気枝管13b〜13eとサージタンク部13fとから構成されている。
【0029】
また、シリンダヘッド3の気筒配列方向と直交する他端側には、排気マニホールド14が接続されている。
【0030】
尚、15はシリンダヘッドカバー、16はオイルパン、17はアイドラーである。
【0031】
次に、ウォータポンププーリ8により駆動されるウォータポンプ18の構造について、以下、図2〜図4に基づいて説明する。
【0032】
ウォータポンププーリ8によって駆動されるウォータポンプ18は、図3に示すように補機駆動ベルト12を介してエンジンからの駆動力が伝達されるポンプシャフト18aと、そのポンプシャフト18aを軸支するとともにチェーンカバー1と一体形成されるウォータポンプケース18bと、ポンプシャフト18a先端に取付けれらたインペラ18cと、ウォータポンプケース18bに対峙して取付けられ、ウォータポンプケース18bとの間にポンプ室18dを形成するウォータポンプカバー18eとから構成される。
【0033】
ウォータポンプカバー18eは、図2、図3に示すように、吸気マニホールド13のフランジ部13aのエンジン前方側に一体形成されている。
【0034】
また、ウォータポンプカバー18eには、図4に示すように、シリンダヘッド3の吸気側に形成されるとともに気筒配列方向に延びる冷却水通路3aのエンジン前方側端部から冷却水をポンプ室18dに供給するための流入通路18fと、ポンプ室18dから出吐される冷却水をシリンダヘッド3の排気側に形成された冷却水通路3bに供給するための出吐通路18gとが形成されている。
【0035】
次に、冷却水の流れを、図5に基づき説明する。
【0036】
シリンダヘッド3とシリンダブロック2とは独立して冷却可能とされ、エンジン低負荷時はシリンダヘッド3内のみに冷却水を流し、高負荷時はシリンダヘッド3とシリンダブロック2との両方に冷却水を流すよう冷却系が構成されている。
【0037】
具体的には、低負荷時、実線で示すように、ラジエータ19、サーモスタット20、シリンダヘッド3の吸気側冷却水通路3a、ウォータポンプ18、シリンダヘッド3の排気側冷却水通路3b、切換弁21、ラジエータ19の順に冷却水は流れる。
【0038】
一方、高負荷時は、切換弁21がシリンダブロック2側への流れが許容されるよう切換えられるため、上記冷却水の流れに加え、破線で示すように、切換弁21、シリンダブロック2、ラジエータ19の順に冷却水が流れる。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、ウォータポンプカバー18eが吸気マニホールド13と一体形成されるため、シリンダヘッド3の製造性への影響を抑制しつつウォータポンプ18をシリンダヘッド3近傍に配置することができ、冷却水通路の通路長等レイアウトを有利にすることができる。
【0040】
また、ウォータポンプカバー18eが樹脂製吸気マニホールド13と一体形成されるため、冷却水温度の空気への伝達が、金属製に比べて熱伝導性が低い樹脂によって抑制され、空気温度の上昇を抑制することができる。
【0041】
また、ウォータポンプケース18bがチェーンカバー1と一体形成されるため、ウォータポンプケース18bの取付箇所が増加し、取付強度を向上することができる。従って、ウォータポンプーリ8がエンジンから突出して配置された状態でタイミングチェーン7によって駆動され、ウォータポンププーリ8に掛かる負荷が大きくなってもウォータポンプケース18bの強度を十分に確保することがてぎる。
【0042】
尚、本実施の形態では、ウォータポンプケース18bを樹脂製吸気マニホールド13と一体化する例を示したが、アルミ製吸気マニホールドと一体化するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、ウォータポンプケース18bを吸気マニホールド13のフランジ部13aと一体化する例を示したが、吸気マニホールド13の吸気枝管13b〜13eや、サージタンク部13fと一体化するようにしてもよい。また、本実施の形態では、ウォータポンプケース18bを吸気マニホールド13と一体化する例を示したが、吸気マニホールド13とは別の吸気通路を構成する部品、例えば、吸気マニホールド13とシリンダヘッド3との間に介在される別体のスペーサと一体化するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン前方側から見たエンジン正面図。
【図2】図1上方側(シリンダヘッドカバーを外した)から見た平面図。
【図3】図2のA矢視図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】冷却水の流れを模式的に示す模式図。
【符号の説明】
1:チェーンカバー(巻掛部材ケース)
3:シリンダヘッド
3a、3b:冷却水通路
7:タイミングチェーン(巻掛部材)
8:ウォータポンププーリ
12:補機駆動ベルト
13:吸気マニホールド(吸気通路形成部材)
18:ウォータポンプ
18a:ポンプシャフト
18b:ウォータポンプケース
18d:ポンプ室
18e:ウォータポンプカバー
Claims (3)
- エンジンの駆動力が伝達されるとともに、その先端にインペラが取付けられるポンプシャフトと、
該ポンプシャフトが軸支されるウォータポンプケースと、
該ウォータポンプケースに対峙して取付けられ、上記ウォータポンプケースとの間に上記インペラが配設されるポンプ室を形成するウォータポンプカバーとから構成されるウォータポンプと、
シリンダヘッドと、
該シリンダヘッド内に形成される冷却水通路と、
上記シリンダヘッドの気筒配列方向と直交する一端側に接続される吸気通路形成部材とを備え、
上記ウォータポンプによって上記シリンダヘッド内に形成された冷却水通路内に冷却水を供給するよう構成されるエンジンの冷却構造であって、
上記ウォータポンプは上記吸気通路形成部材が接続されるシリンダヘッドの気筒配列方向と直交する一端側に配置されるとともに、
上記ウォータポンプのウォータポンプカバーが上記吸気通路形成部材と一体形成されており、
上記シリンダヘッドの気筒配列方向の一端側には、エンジンの各シャフト駆動用の巻掛部材が巻掛部材ケース内に配置されるとともに、
上記ウォータポンプケースと上記巻掛部材ケースとが一体形成されることを特徴とするエンジンの冷却構造。 - 上記吸気通路形成部材及びウォータポンプカバーは、樹脂製であることを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却構造。
- 上記ウォータポンプカバーは、上記吸気通路形成部材を構成する吸気マニホールドと一体形成されることを特徴とする請求項1記載のエンジンの冷却構造。
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