JP3843211B2 - 傾斜複合材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜複合材の製造方法に関し、一層詳細には、表面の硬度が互いに相違する部位を有する傾斜複合材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属とセラミックスとを含有する複合材は、種々の分野で広汎に使用されている。例えば、コバルトと炭化タングステンが焼結されてなる炭化タングステン−コバルト系超硬合金や、モリブデンと炭化チタンが焼結されてなる炭化チタン系サーメットは、切削工具の刃具として採用されている。
【0003】
前記複合材の靱性や強度、硬度等の特性は、金属とセラミックスの組成比に依存して変化する。すなわち、金属の組成比が高くなるほど強度および靱性が向上し、一方、金属の組成比が低くなるほど硬度が向上する。したがって、金属とセラミックスの組成比は、複合材が所望の特性となるように選定される。例えば、上記したような刃具においては、硬度や耐摩耗性を確保して長寿命化を図るために、金属の組成比を低くする傾向にある。
【0004】
しかしながら、金属の組成比が低い刃具は、高硬度および高耐摩耗性を有する一方、靱性が低い。したがって、この種の刃具を使用した場合には、該刃具に割れや欠けが生じることが懸念される。しかしながら、靱性が高い刃具には、耐摩耗性が低く寿命が短いという不具合がある。
【0005】
そこで、表面が高硬度でかつ内部が高靱性である傾斜複合材から刃具を構成することが提案されている。この場合、表面が高硬度であるので長寿命を有し、かつ内部が高靱性であるので割れや欠けが生じ難い刃具となるからである。なお、この刃具においては、硬度が表面から内部に指向して低下するとともに、靱性が表面から内部に指向して上昇する。
【0006】
この種の傾斜複合材は、通常、金属の粒子とセラミックスの粒子との緻密焼結体が作製され、次いで、面荒れのない平滑な表面を得るために、該緻密焼結体の表面から少なくとも0.5〜1mm程度が加工にて除去されることにより製造されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した緻密焼結体の硬度は、表面が最も高い。すなわち、傾斜複合材を製造するに際しては、緻密焼結体の最も高硬度な部位が除去されている。このため、製品としての傾斜複合材では、高硬度な部位の厚みが小さくなるという不具合がある。
【0008】
高硬度な部位の厚みが大きい傾斜複合材を得るためには、形状が大なる成形体を作製した後に該成形体を焼結することが有効であるかのように考えられる。しかしながら、この場合、成形体の内部では焼結が起こり難くなる。したがって、緻密焼結体を効率よく得ることができなくなるので、傾斜複合材の生産効率が低下してしまうという不具合を招く。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、高硬度な部位の厚みが大きく、このために加工により表面が除去された場合であっても新たに露呈した表面がなお高硬度である傾斜複合材を得ることが可能な傾斜複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hfの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる群から選択された少なくとも1種をセラミックスとして含有し、かつFe、Ni、Co、Al、Crまたはこれらの中の2種以上で構成される合金からなる群から選択された少なくとも1種を金属として含有するとともに、表面の硬度が互いに相違する第1部位および第2部位を有する傾斜複合材を製造する傾斜複合材の製造方法であって、前記セラミックスの粒子と前記金属の粒子とが混合されてなる混合粉末を成形して成形体とする成形工程と、前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程と、前記多孔質焼結体の表面の一部に、前記セラミックスの粒子の粒成長を促進する粒成長促進剤からなり、かつ前記多孔質焼結体の内部に窒素が浸透することを防止するコーティング膜を形成する被覆工程と、表面の一部に前記コーティング膜が形成された前記多孔質焼結体を窒素雰囲気中で再焼結して緻密焼結体とするとともに、前記コーティング膜が形成された部位では窒素が浸透することを防止しながら前記セラミックスの粒子を粒成長させて前記第1部位を設ける一方、前記コーティング膜が形成されていない部位では表面から内部に窒素を浸透させることで前記セラミックスの粒子の粒成長を抑制して、表面硬度が前記第1部位に比して小さい前記第2部位を設ける二次焼結工程とを有することを特徴とする。なお、ここでいう「表面の一部」には、コーティング膜が形成された領域に比してコーティング膜が形成されていない領域が狭い場合のみならず、広い場合も含まれる。要するに、コーティング膜が形成されていない領域が多孔質焼結体に残留している状態であればよい。
【0011】
窒素は、一般的に上記したセラミックスの粒子の粒成長を阻害する。本発明においては、コーティング膜が形成された領域では多孔質焼結体の内部に窒素が浸透することが著しく抑制される。したがって、該多孔質焼結体の内部におけるセラミックスの粒子の粒成長が阻害されることがない。このため、コーティング膜が形成された領域では表面から内部に亘ってセラミックスの粒子が良好に成長した傾斜複合材を得ることができる。このような領域では、強度が向上している。
【0012】
また、コーティング膜の形成領域を調整することにより、窒素の多孔質焼結体内部への浸透箇所が調整される。これにより、所望の特性を有する傾斜複合材を得ることができる。
【0013】
前記コーティング膜の構成材料の好適な例としては、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、Bの炭化物、窒化物、炭窒化物、または炭素のいずれかを挙げることができる。これらは上記したセラミックスの粒子の粒成長促進剤として機能するので、コーティング膜直下に位置するセラミックスの粒子が一層良好に粒成長するからである。
【0014】
特に、容易かつ安価にコーティング膜を形成することが可能であることから、構成材料が六方晶系窒化ホウ素(h−BN)であることが好ましい。
【0015】
また、被覆工程と二次焼結工程との間に、前記多孔質焼結体の内部に粒成長促進剤含有溶液を含浸させる含浸工程を行うことが好ましい。これにより、コーティング膜のみを形成して二次焼結工程を行う場合に比して強度および硬度、靱性が一層向上するからである。
【0016】
この場合、粒成長促進剤含有溶液に含有される粒成長促進剤としてはFe、Ni、Co、Mn、Cr、Mo、Tiまたはランタノイドを好適な例として挙げることができる。なお、以下の説明では、この粒成長促進剤と、コーティング膜である前記粒成長促進剤とを区別するため、便宜上、粒成長促進剤含有溶液を「触媒含有溶液」と表記するとともに、粒成長促進剤含有溶液(触媒含有溶液)に含有される粒成長促進剤を「触媒」と表記する。
【0017】
なお、前記混合粉末における前記セラミックスの粒子と前記金属の粒子との割合は、重量比で60:40〜95:5とすることが好ましい。セラミックスの粒子が60重量部未満でかつ金属の粒子が40重量部を超えると、セラミックスの粒子の粒成長が起こり難くなる。また、セラミックスの粒子が95重量部を超えかつ金属の粒子が5重量部未満であると、製品としての傾斜複合材を得ることが容易でなくなるからである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る傾斜複合材の製造方法につき添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態に係る傾斜複合材の製造方法のフローチャートを図1に示す。この製造方法は、成形体を得る成形工程S1と、前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程S2と、前記多孔質焼結体の内部に触媒含有溶液を含浸する含浸工程S3と、前記多孔質焼結体の表面の一部にコーティング膜を形成する被覆工程S4と、前記多孔質焼結体を再焼結して緻密焼結体とする二次焼結工程S5とを備える。
【0020】
まず、成形工程S1において、セラミックスの粒子と金属の粒子の混合粉末を調製する。
【0021】
ここで、セラミックスの粒子としては、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hfの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる群から選択された少なくとも1種(以下、非酸化物セラミックスという)の粒子が選定される。これら非酸化物セラミックスの粒子は、二次焼結工程S5において、後述する粒成長促進剤の作用により粒成長が促進される。なお、金属の粒子としては、Fe、Ni、Co、Al、Crまたはこれらの中の2種以上で構成される合金からなる群から選択された少なくとも1種の粒子が選定される。
【0022】
混合粉末における非酸化物セラミックスの粒子と金属の粒子との組成比は、非酸化物セラミックスの粒子:金属の粒子=60:40〜95:5(重量比、以下同じ)とすることが好ましい。非酸化物セラミックスの粒子の重量比が60重量部未満でかつ金属の粒子の重量比が40重量部を超えると、セラミックスの粒子の粒成長が起こり難くなる。また、非酸化物セラミックスの粒子の重量比が95重量部を超えかつ金属の粒子の重量比が5重量部未満であると、製品としての緻密焼結体(傾斜複合材)を得ることが容易でなくなる。
【0023】
そして、この混合粉末に成形加重を加えて成形体を作製する。この際、成形荷重は、後述する一次焼結工程S2において多孔質焼結体が得られるようにするため、金属粒子が塑性変形を起こさない程度に設定される。具体的には、成形荷重を100〜300MPa程度とすることが好ましい。この場合、金属粒子が塑性変形を起こすことを回避することができるので、成形体の開気孔が閉塞されることはない。
【0024】
次いで、一次焼結工程S2において、開気孔が残留するように前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする。この時点で緻密焼結体とすると、高強度と高靱性とを兼ね備える傾斜複合材を得ることは困難である。
【0025】
したがって、一次焼結工程S2における焼結温度や時間は、金属の粒子同士の融着が起こり、該金属の粒子同士にネックが形成された状態で終了されるように設定される。すなわち、一次焼結工程S2では、非酸化物セラミックスの粒子同士は融着されない。このため、成形体が多孔質焼結体になる過程においては、体積はほとんど変化しない。
【0026】
次いで、含浸工程S3において、触媒を含有する触媒含有溶液を前記多孔質焼結体の内部に含浸させる。具体的には、触媒含有溶液中に前記多孔質焼結体を浸漬する。この浸漬により、触媒含有溶液が多孔質焼結体の開気孔を介してその内部へと浸透する。
【0027】
なお、触媒は、二次焼結工程S5において非酸化物セラミックスの粒子の粒成長を促進する物質であれば特に限定されるものではないが、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、Mo、Tiまたはランタノイド等を好適な例として挙げることができる。触媒含有溶液としては、上記した金属を含有する金属塩を溶媒に溶解したものや有機金属溶液を使用すればよい。
【0028】
この場合、触媒は、溶媒中に分散または溶解されることにより単一分子またはイオンにまで解離される。したがって、含浸工程S3においては、単一分子またはイオンにまで解離された触媒が多孔質焼結体の内部に均一に分散される。このため、二次焼結工程S5における非酸化物セラミックスの粒子の粒成長は、多孔質焼結体の表面から内部に亘り促進される。
【0029】
含浸工程S3を行った後には、自然放置により触媒含有溶液を乾燥する。または、多孔質焼結体を加熱して触媒含有溶液を乾燥するようにしてもよい。
【0030】
次いで、被覆工程S4において、前記多孔質焼結体の表面の一部にコーティング膜を形成する。すなわち、前記多孔質焼結体には、コーティング膜が形成されていない領域が残留する。なお、以下においては、コーティング膜が形成されていない領域を非被覆領域と表記するとともに、コーティング膜が形成された領域を被覆領域と表記する。後述するように、被覆領域では表面から内部に亘って高硬度となり、一方、非被覆領域では内部が高靱性となる。被覆領域と非被覆領域の比は特に限定されない。例えば、前記多孔質焼結体が直方体である場合、少なくとも一端面を非被覆領域とするようにしてもよい。
【0031】
また、コーティング膜の構成材料は、前記非酸化物セラミックスの粒子の粒成長を促進する粒成長促進剤であることが好ましい。粒成長促進剤は、特に限定はされないが、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、Bの炭化物、窒化物、炭窒化物、または炭素のいずれかを好適な例として挙げることができる。このうち、h−BN(六方晶系窒化ホウ素)からなるコーティング膜は、容易にかつ低コストで形成することができるので特に好適である。
【0032】
コーティング膜は、例えば、キシレンやトルエン、あるいはアセトン等の溶媒にh−BN等のような粒成長促進剤が分散されてなる溶液を多孔質焼結体の表面に噴霧した後、溶媒を揮散除去することにより形成することができる。
【0033】
最後に、二次焼結工程S5において、表面の一部にコーティング膜が形成された多孔質焼結体を窒素雰囲気中で再焼結して緻密焼結体とする。
【0034】
この際、多孔質焼結体におけるコーティング膜が形成された領域では、非酸化物セラミックスの粒子の粒成長を阻害する窒素が多孔質焼結体の内部に浸透することが著しく抑制される。このため、多孔質焼結体の内部に存在する非酸化物セラミックスの粒子の粒成長は、窒素により阻害されることなく前記触媒によって促進される。また、コーティング膜が上記したような粒成長促進剤から構成されている場合には、コーティング膜によっても表面近傍の非酸化物セラミックスの粒子の粒成長が促進される。
【0035】
一方、コーティング膜が形成されていない領域では、多孔質焼結体の内部に窒素が浸透する。このため、多孔質焼結体の内部に存在する非酸化物セラミックスの粒子は、窒素により粒成長することが抑制される。
【0036】
すなわち、二次焼結工程S5においては、被覆領域ではセラミックスの粒子が粒成長し、このため、該被覆領域は表面から内部に亘って高硬度かつ高強度となる。一方、非被覆領域ではセラミックスの粒子の粒成長が抑制されるので、該非被覆領域は高靱性な部位となる。
【0037】
このことから諒解されるように、被覆領域と非被覆領域との比を調整することにより、該多孔質焼結体の内部への窒素の浸透箇所を制御することができる。すなわち、高硬度かつ高強度な部位と高靱性な部位を所望の割合で得ることができ、結局、所望の特性を有する緻密焼結体(傾斜複合材)を得ることができる。
【0038】
このように、本実施の形態に係る傾斜複合材の製造方法によれば、被覆領域と非被覆領域との比を調整することにより所望の特性を有する傾斜複合材を製造することができる。すなわち、高硬度かつ高強度な部位の厚みが大きい緻密焼結体を得ることができるので、該緻密焼結体の表面を加工して除去する場合であっても、新たに露呈した表面は除去された領域と略同一の硬度および強度を示す。
【0039】
なお、本実施の形態においては、成形工程S1と一次焼結工程S2とを個別に行っているが、熱間等圧成形(HIP)等のように、両工程S1、S2を同時に行うようにしてもよい。
【0040】
【実施例】
平均粒径1μmの炭化タングステン(WC)粒子を90重量部、平均粒径1μmのコバルト(Co)粒子10重量部を混合して混合粉末とした。次いで、この混合粉末を100MPaの成形荷重でプレス成形することにより、20mm×20mm×70mmの成形体を3個作製した。この成形体を乾燥した後、真空内において900℃で30分間保持することにより多孔質焼結体とした。
【0041】
次いで、この多孔質焼結体を濃度10%のNiイオン溶液に1分間程度浸漬することにより、多孔質焼結体の内部にNiイオンを分散させた。乾燥後、h−BNがキシレンに分散された溶液を、図2〜図4に示すように、多孔質焼結体10a〜10cの表面にスプレー塗布した。そして、室温にて放置してキシレンを揮散除去することによりh−BNのコーティング膜を形成した。なお、図2〜図4においては、直方体の多孔質焼結体10a〜10cを展開して示し、かつコーティング膜が形成された端面、すなわち、被覆領域を斜線で示すとともに参照符号12を付している。また、参照符号14は、非被覆領域を示す。
【0042】
次いで、窒素雰囲気中において、被覆領域12および非被覆領域14を有する多孔質焼結体を1400℃で1時間保持することにより緻密化させ、3個の緻密焼結体(傾斜複合材)を得た。
【0043】
そして、得られた各傾斜複合材を長手方向に沿って切断した後、切断面における硬度を測定した。結果を図5〜図7に示す。なお、図5〜図7においては、多孔質焼結体10a〜10cに対応する傾斜複合材に参照符号16a〜16cを付し、かつ硬度が高い領域を斜線で示している。
【0044】
図5〜図7から、被覆領域12の近傍では硬度が高く、一方、非被覆領域14の近傍では硬度が低いことが諒解される。この理由は、非被覆領域14の近傍では、二次焼結工程S5が行われる際に多孔質焼結体10a〜10cの内部に浸透した窒素によりWCの粒成長が抑制されているためであると考えられる。
【0045】
また、上記と同様にして図8に示す形状の傾斜複合材20を製造した。この場合、コーティング膜は多孔質焼結体の外周壁部にのみ形成した。この傾斜複合材20につき、上端から2.5mm(M−M’線)および下端から1.5mm(N−N’線)の位置で、水平方向に沿ってビッカース硬度および破壊靱性値を測定した。結果を図9、図10にそれぞれ示す。なお、ビッカース硬度は外周壁部から内周壁部に指向(M→M’方向およびN→N’方向)して示しており、一方、破壊靱性値は内周壁部から外周壁部(M’→M方向およびN’→N方向)に指向して示している。
【0046】
図9から、コーティング膜を形成した外周壁部が高硬度であることが明らかである。また、図10から、破壊靱性値は外周壁部と内周壁部との略中央付近で最大となっていることが分かる。
【0047】
さらに、この傾斜複合材20をSCM440材に対して摺動動作させて摩擦係数μを測定したところ、0.38であった。一方、市販品である超硬材、TiNコーティング材およびTiCNコーティング材の同一条件下での摩擦係数μは、それぞれ、0.67、0.74および0.75であった。すなわち、傾斜複合材20の摩擦係数μは市販品に比して著しく低く、したがって、加工時における発熱量が低下するとともにかじりが生じ難い材料となる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る傾斜複合材の製造方法によれば、表面の一部にコーティング膜が形成された多孔質焼結体を再焼結して緻密焼結体(傾斜複合材)とするようにしている。この場合、コーティング膜が形成された領域ではセラミックスの粒子の粒成長を阻害する窒素が多孔質焼結体の内部に浸透することが著しく抑制される。このため、コーティング膜が形成された領域では表面から内部に亘ってセラミックスの粒子が良好に成長し、その結果、高硬度な部位の厚みが大きい傾斜複合材を得ることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る傾斜複合材の製造方法のフローチャートである。
【図2】表面にコーティング膜が形成された多孔質焼結体の展開図である。
【図3】表面にコーティング膜が形成された多孔質焼結体の展開図である。
【図4】表面にコーティング膜が形成された多孔質焼結体の展開図である。
【図5】図2の多孔質焼結体が再焼結されることにより得られた傾斜複合材の内部における硬度の変化を示す長手方向断面図である。
【図6】図3の多孔質焼結体が再焼結されることにより得られた傾斜複合材の内部における硬度の変化を示す長手方向断面図である。
【図7】図4の多孔質焼結体が再焼結されることにより得られた傾斜複合材の内部における硬度の変化を示す長手方向断面図である。
【図8】別の形状の傾斜複合材の縦断面概略斜視図である。
【図9】図8のM−M’線およびN−N’線に沿うビッカース硬度の変化を示すグラフである。
【図10】図8のM−M’線およびN−N’線に沿う破壊靱性値の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10a〜10c…多孔質焼結体 12…被覆領域
14…非被覆領域 16a〜16c、20…傾斜複合材
Claims (6)
- W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hfの炭化物、窒化物または炭窒化物からなる群から選択された少なくとも1種をセラミックスとして含有し、かつFe、Ni、Co、Al、Crまたはこれらの中の2種以上で構成される合金からなる群から選択された少なくとも1種を金属として含有するとともに、表面の硬度が互いに相違する第1部位および第2部位を有する傾斜複合材を製造する傾斜複合材の製造方法であって、
前記セラミックスの粒子と前記金属の粒子とが混合されてなる混合粉末を成形して成形体とする成形工程と、
前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程と、
前記多孔質焼結体の表面の一部に、前記セラミックスの粒子の粒成長を促進する粒成長促進剤からなり、かつ前記多孔質焼結体の内部に窒素が浸透することを防止するコーティング膜を形成する被覆工程と、
表面の一部に前記コーティング膜が形成された前記多孔質焼結体を窒素雰囲気中で再焼結して緻密焼結体とするとともに、前記コーティング膜が形成された部位では窒素が浸透することを防止しながら前記セラミックスの粒子を粒成長させて前記第1部位を設ける一方、前記コーティング膜が形成されていない部位では表面から内部に窒素を浸透させることで前記セラミックスの粒子の粒成長を抑制して、表面硬度が前記第1部位に比して小さい前記第2部位を設ける二次焼結工程と、
を有することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項1記載の製造方法において、
前記被覆工程で、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、Bの炭化物、窒化物、炭窒化物、または炭素のいずれかを構成材料とするコーティング膜を形成することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項2記載の製造方法において、
六方晶系窒化ホウ素を構成材料とするコーティング膜を形成することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、
さらに、前記多孔質焼結体の内部に粒成長促進剤含有溶液を含浸させる含浸工程を有することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項4記載の製造方法において、
前記粒成長促進剤含有溶液に含有される粒成長促進剤をFe、Ni、Co、Mn、Cr、Mo、Tiまたはランタノイドとすることを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記セラミックスの粒子と前記金属の粒子とを60:40〜95:5の重量比で混合して前記混合粉末とすることを特徴とする傾斜複合材の製造方法。
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