JP4242716B2 - 傾斜複合材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属およびセラミックスを含有するとともに、これら金属およびセラミックスの組成比が表面から内部に指向して変化する傾斜複合材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワークに穴部を設けるためのドリルやリーマ等の各種加工用刃具として、例えば、SK材、SKD材もしくはSKH材(いわゆる高速度工具鋼)等の鋼製のもの、ニッケル系合金もしくはコバルト系合金等の超合金材製のものが知られている。この種の加工用刃具には、高硬度、高強度および高靭性等を兼ね備えることが希求される。この場合、耐摩耗性が高く長寿命であり、変形が生じ難く、しかも、割れや欠けが生じ難い(耐欠損性が高い)加工用刃具となるからである。
【0003】
加工用刃具の硬度、強度および靭性を向上させる手段としては、その表面にTiCやTiN等の硬質セラミックスのコーティング膜を設けることが一般的である。しかしながら、コーティング膜を設けるには、化学的気相成長(CVD)法や物理的気相成長(PVD)法を行う必要があり、このために加工用刃具の生産効率が低下し、また、製造コストが上昇するという不具合がある。
【0004】
そこで、特許文献1に提案されているように、焼結時の冷却速度や雰囲気中の窒素量を制御することにより、CVD法やPVD法を行うことなく炭窒化物からなる被覆層を設けて加工用刃具の耐摩耗性を向上させることや、特許文献2に提案されているように、ショットピーニングやショットブラスト等の機械的処理を施して表面に10kgf/cm2(およそ0.1MPa)の圧縮応力を付与することにより、該加工用刃具の耐摩耗性および耐欠損性を向上させることが想起される。
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された方法で諸特性が向上するのは、表面のみである。このため、耐摩耗性や耐欠損性が著しく向上するとは言い難い側面がある。
【0006】
このような観点から、本出願人は、特許文献3および特許文献4において、セラミックスと金属との複合材であり、かつ表面から内部になるに従ってセラミックスと金属の組成比が変化する傾斜複合材からなる加工用刃具を提案している。このように構成された加工用刃具は、表面から内部に亘って高硬度、高強度および高靭性を示す。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−230589号公報(段落[0007]〜[0009])
【特許文献2】
特開平5−171442号公報(段落[0004]〜[0006])
【特許文献3】
特開平8−134562号公報
【特許文献4】
国際公開第02/49988号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3または特許文献4に記載された加工用刃具に比して一層優れた硬度、強度および靱性を示す加工用刃具が希求されている。
【0009】
本発明は上記した技術に関連してなされたもので、高硬度、高強度および高靱性に優れ、このために加工用刃具とした場合に長寿命を有し、かつ変形が生じ難く、しかも、割れや欠けも生じ難い傾斜複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、セラミックス粉末と金属粉末とを含有する混合粉末を成形して成形体とする成形工程と、
前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程と、
前記多孔質焼結体に金属塩の溶液を含浸する含浸工程と、
前記溶液が含浸された前記多孔質焼結体を再焼結して緻密焼結体とする二次焼結工程と、
1000〜1450℃の間で、かつ前記二次焼結工程時の温度よりも低温で30分以上保持することによって熱処理を施す一次熱処理工程と、
温度を80℃以下に下降させた後、500〜780℃に上昇させて15分以上保持することによって熱処理を施す二次熱処理工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明においては、緻密焼結体(傾斜複合材)を得た後、該傾斜複合材に対して2段階の熱処理を施すようにしている。まず、1段階目の熱処理において、金属粉末が粒成長して形成された金属粒に対し、例えば、セラミックスの構成元素を源とする元素が固溶することが促進される。次に、2段階目の熱処理において、この固溶された元素を源とする化合物が析出する。このため、傾斜複合材は、析出物が析出することによって硬化した金属を含むものとなるので、優れた硬度を示す。
【0012】
また、この場合、傾斜複合材の強度や靭性を低下させる金属間化合物が生成することが抑制される。このため、この傾斜複合材は、強度や靭性に優れたものとなる。
【0013】
このように、本発明によれば、高硬度、高強度および高靭性を兼ね備える傾斜複合材が得られる。このような傾斜複合材は、例えば、加工用刃具の構成材料として好適である。
【0014】
なお、一次熱処理工程および二次熱処理工程は、不活性ガス雰囲気中加圧下で行うことが好ましい。この場合、緻密焼結体の冷却速度が大きくなり、硬度、強度および靭性等が一層優れる傾斜複合材を得ることができるからである。
【0015】
加圧する場合、圧力を0.3〜10MPaとして熱処理を施すことが好ましい。0.3MPa未満では冷却速度を上昇させる効果に乏しく、10MPaを超えると反応装置の耐圧を上回ることがある。
【0016】
ここで、前記セラミックス粉末としては、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、ランタノイドの炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選択された少なくとも1種が選定されるとともに、前記金属粉末としては、Fe、Ni、Co、Cr、これらの中の2種以上で構成される合金の群から選択された少なくとも1種が選定される。この場合、セラミックス粉末と金属粉末との割合は、重量比で60:40〜97:3とする。金属が3重量部未満であると、傾斜複合材の靱性が乏しくなる。また、40重量部を超えると、傾斜複合材の硬度や強度が低下する。
【0017】
いずれの場合においても、窒素ガスを含有する雰囲気下で二次焼結工程を行うことが好ましい。これにより、新たな工程を付加することなく、金属に窒素元素を容易かつ簡便に固溶させることができる。
【0018】
また、セラミックス粉末が粒成長したセラミックス粒、または金属粒が窒化されると、粒子の端部が丸みを帯びる。このために鋭角状に尖った粒子を含む傾斜複合材に比して応力集中が起こり難く、したがって、破損が生じ難いものとなるので好適である。
【0019】
さらに、金属塩の溶液が含浸された多孔質焼結体の表面にホウ化物を含有する溶液を塗布する塗布工程を行うことが好ましい。このホウ化物を源とするホウ素が金属に固溶されると、上記した二次熱処理工程において金属からホウ化物が析出する。これにより金属を析出硬化することができるとともに金属間化合物が生成することを抑制することができ、結局、高硬度、高強度および高靭性を兼ね備える傾斜複合材を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る傾斜複合材の製造方法につき、図1に示すリーマを傾斜複合材の例として添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
このリーマ10は、刃部12とシャンク部14とを一体的に備え、このうち、刃部12には、6つの切刃16が軸方向に沿って所定の長さで設けられている。
【0022】
図1のII−II線矢視断面図である図2に示すように、リーマ10の内部には、セラミックスの組成比が金属の組成比よりも著しく大きなセラミックスリッチ部20が設けられており、かつ表面には、金属の組成比がセラミックスの組成比よりも著しく大きな金属リッチ部22が設けられている。そして、これらの間には、セラミックスリッチ部20から金属リッチ部22側に指向して金属の組成比が漸増する傾斜部24が介在されている。
【0023】
すなわち、リーマ10において、金属の組成比は表面(加工面)で最も高く、内部に指向して減少している。また、その逆に、セラミックスの組成比は加工面で最も低く、内部に指向して増加している。換言すれば、リーマ10は、表面から内部に指向して金属の組成比が減少しかつセラミックスの組成比が増加する傾斜複合材により構成されている。
【0024】
リーマ10の構成材料であるセラミックスとしては、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、ランタノイドの炭化物、窒化物または炭窒化物の群から選択された少なくとも1種が好ましい。また、金属としては、Fe、Ni、Co、Cr、これらの中の2種以上で構成される合金の群から選択された少なくとも1種が好ましい。金属には、これらに加え、Cr、Mn、V、Tiの少なくとも1種がさらに含有されていてもよい。上記したセラミックスおよび金属を構成材料とすることにより、穿孔加工を行う上で必要な強度、硬度および靱性を有するリーマ10を構成することができる。
【0025】
上記したセラミックスおよび金属をリーマ10の構成材料とする場合、セラミックスと金属との割合は、60:40〜97:3(重量比、以下同じ)に設定される。金属が3重量部未満であると、靱性が乏しくなるので割れや欠けが生じ易くなる。また、40重量部を超えると、硬度や強度が低下するので耐摩耗性が乏しくなるとともにワークの加工時に変形が生じ易くなる。より好ましい割合は、85:15〜95:5である。
【0026】
また、リーマ10の加工面は、Aスケールのロックウェル硬度(HRA)が90以上であることが好ましい。HRCが90未満である場合、硬度が乏しいのでリーマ10を長寿命化することが容易ではなくなる。しかも、この場合にはワークとリーマ10との摩擦係数(μ)が高くなり、その結果、切削加工時における発熱や発生する応力の増大が惹起されるので、ワークに表面荒れが生じ易くなる。
【0027】
次に、このように構成されるリーマ10の製造方法につき説明する。
【0028】
本実施の形態に係る製造方法のフローチャートを図3に示す。この製造方法は、成形体を得る成形工程S1と、前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程S2と、前記多孔質焼結体の内部に金属塩の溶液を含浸する含浸工程S3と、前記多孔質焼結体の表面にホウ化物を含有する溶液を塗布する塗布工程S4と、前記多孔質焼結体を再焼結して緻密焼結体とする二次焼結工程S5と、この緻密焼結体に対して1000〜1450℃で熱処理を施す一次熱処理工程S6と、500〜780℃で再度熱処理を施す二次熱処理工程S7とを有する。
【0029】
まず、成形工程S1において、セラミックス粉末と金属粉末とを混合する。上記したように、セラミックス粉末としては、W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、ランタノイドの炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選択された少なくとも1種が好ましく、また、金属粉末としては、Fe、Ni、Co、Cr、これらの中の2種以上で構成される合金の群から選択された少なくとも1種が好ましい。なお、セラミックス粉末と金属粉末との割合は、重量比で、セラミックス粉末:金属粉末=60:40〜97:3、好ましくは85:15〜95:5とする。
【0030】
そして、この混合粉末に成形加重を加えて、リーマ10に対応する形状の成形体を作製する。この際、成形荷重は、後述する一次焼結工程S2において多孔質焼結体が得られるようにするため、金属粉末が塑性変形を起こさない程度に設定される。具体的には、成形荷重を100〜300MPa程度とすることが好ましい。この場合、金属粉末が塑性変形を起こすことを回避することができるので、成形体の開気孔が閉塞されることはない。
【0031】
次いで、一次焼結工程S2において、開気孔が残留するように前記成形体を反応炉内で焼結して多孔質焼結体とする。この時点で緻密焼結体とすると、含浸工程S3において金属塩の溶液を内部に含浸させることが困難となるからである。
【0032】
したがって、一次焼結工程S2における焼結温度や時間は、金属粉末同士の融着が起こり、該金属粉末同士にネックが形成された状態で終了されるように設定される。すなわち、一次焼結工程S2では、セラミックス粉末同士は融着されない。このため、成形体が多孔質焼結体になる過程においては、体積はほとんど変化しない。
【0033】
次いで、含浸工程S3において、金属塩の溶液を前記多孔質焼結体の内部に含浸させる。具体的には、金属塩の溶液中に前記多孔質焼結体を浸漬すればよい。この浸漬により、金属塩の溶液が多孔質焼結体の開気孔を介してその内部へと浸透する。
【0034】
金属塩の溶液の好適な例としては、二次焼結工程S5においてセラミックス粉末の粒成長を促進する金属、具体的には、Fe、Ni、Co、Mn、Ti、Cr、Al、V、Zr、Mo、ランタノイドの硝酸塩、塩化物塩または酢酸塩の水溶液が挙げられる。または、これらの金属元素のエトキシド、プロポキシド、ブトキシドのようなアルコキシド、イミド、アミド等の各種有機金属塩であってもよい。
【0035】
この場合、金属塩は、溶媒中に分散または溶解されることにより単一分子またはイオンにまで解離される。したがって、含浸工程S3においては、単一分子またはイオンにまで解離された金属が多孔質焼結体の内部に均一に分散される。このため、後述する二次焼結工程S5におけるセラミックス粉末の粒成長が、多孔質焼結体の表面から内部に亘り促進される。
【0036】
含浸工程S3を行った後には、自然放置により触媒含有溶液を乾燥する。または、多孔質焼結体を加熱して触媒含有溶液を乾燥するようにしてもよい。
【0037】
次いで、塗布工程S4において、前記多孔質焼結体の表面に、h−BN(六方晶系窒化ホウ素)等のホウ化物を塗布する。この塗布は、例えば、キシレンやトルエン、あるいはアセトン等の溶媒にh−BNが分散された溶液を多孔質焼結体の表面に噴霧することによって行うことができる。その後、溶媒を揮散除去すればよい。
【0038】
次に、二次焼結工程S5において、表面にホウ化物が存在する多孔質焼結体を前記反応炉内で再焼結する。この際、雰囲気を窒素等の窒化ガスとすると、多孔質焼結体の表面近傍に存在するセラミックス粉末の粒成長が阻害される。その一方で、窒化ガスは多孔質焼結体の内部には到達し難い。このため、内部に存在するセラミックス粉末の粒成長が窒化ガスによって阻害される度合いは、表面に比して小さい。しかも、内部に存在するセラミックス粉末の粒成長は、前記金属塩によって促進される。
【0039】
結局、二次焼結工程S5においては、多孔質焼結体の表面ではセラミックス粉末の粒成長が抑制され、内部では促進される。その結果、金属粉末が表面近傍に集中するような再配列が起こる。同時に、セラミックス粉末の粒成長が生じ、結局、表面で金属の組成比が高く、かつ内部でセラミックスの組成比が高い傾斜複合材、すなわち、図2に示すように、内部にセラミックスリッチ部20、表面に金属リッチ部22が存在するとともに、両部位20、22の間に傾斜部24が介在されたリーマ10(傾斜複合材)が得られる。
【0040】
二次焼結工程S5における焼結温度は、セラミックス粉末の粒成長が生じる温度、一般的には、1300〜1560℃に設定される。そして、この二次焼結工程S5において、金属粉末が粒成長してなる金属粒に、雰囲気ガスを源とする窒素元素や、表面に塗布されたホウ化物を源とするホウ素、さらには、セラミックスの構成元素を源とする元素、例えば、炭素元素が固溶される。
【0041】
また、この際、セラミックス粒または金属粒の一部が窒化される。この窒化に伴って、粒成長した窒化セラミックス粒または窒化金属粒が丸みを帯びる。
【0042】
次に、一次熱処理工程S6において、炉内の温度を1000〜1450℃の間で、かつ二次焼結工程S5における焼結温度よりも低温となるまで冷却する。この際の冷却は、炉冷であってもよいが、アルゴン等の不活性ガスを導入して加圧下で行うことが好ましい。この場合には冷却速度が上昇し、その結果、強度等に優れたリーマ10が得られるからである。
【0043】
なお、ガスを導入して加圧下とする場合、反応炉内の圧力を0.3〜10MPaとすることが好ましい。0.3MPa未満では冷却速度を上昇させる効果に乏しく、10MPaを超えると反応炉の耐圧を上回ることがある。
【0044】
この一次熱処理工程S6は、窒素元素やホウ素元素、炭素元素の金属への固溶が充分に進行するまで、具体的には30分以上継続して行われる。換言すれば、一次熱処理工程S6では、金属固溶体が生成する。
【0045】
次に、二次熱処理工程S7を行う。すなわち、炉内の温度を一旦80℃以下まで下降した後、500〜780℃に上昇させる。これにより、一次熱処理工程S6で金属に固溶した窒素元素やホウ素元素、炭素元素が、窒化物やホウ化物、ホウ窒化物、炭化物、炭窒化物からなる微細析出物として析出する。換言すれば、この場合、金属中に微細析出物が分散することにより金属が析出硬化される。また、この場合、傾斜複合材の強度や靱性を低下させる金属間化合物が生成することが抑制される。
【0046】
二次熱処理工程S7における冷却も、冷却速度が上昇し、その結果、強度等に優れたリーマ10が得られることから、アルゴン等の不活性ガスを導入して加圧下で行うことが好ましい。この際の好適な圧力も、上記と同様、0.3〜10MPaである。
【0047】
結局、この場合、析出硬化された金属を含みかつ金属間化合物の生成量が少なく、このために硬度、強度および靱性に優れる傾斜複合材、すなわち、製品としてのリーマ10が得られるに至る。なお、二次熱処理工程S7は、微細析出物が充分に析出するまで、具体的には、15分以上継続して行われる。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、一次熱処理工程S6で金属固溶体を生成し、次なる二次熱処理工程S7で固溶体から微細析出物を析出させるとともに、金属間化合物が生成することを抑制するようにしている。このため、硬度、強度および靱性に優れるリーマ10を得ることができる。
【0049】
上記したように構成されたリーマ10は、表面が金属リッチ部22からなるために高靱性であり、かつ内部がセラミックスリッチ部20であるために高硬度および高強度である。しかも、金属リッチ部22は、微細析出物を含むために硬度にも優れ、かつ金属間化合物の生成量が少ないために靱性および強度が一層優れる。以上のような理由から、このリーマ10は、ワークが切削加工されるに際して充分な硬度、強度および靱性を兼ね備える。このため、長寿命でかつ変形が生じ難く、しかも、割れや欠けが生じ難い。
【0050】
さらに、リーマ10においては、窒化セラミックス粒または窒化金属粒が丸みを帯びているので、鋭角状に尖った粒子を含む傾斜複合材に比して応力集中が起こり難く、したがって、破損が生じ難いという利点が得られる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、成形工程S1と一次焼結工程S2とを個別に行っているが、熱間等圧成形(HIP)等のように、両工程S1、S2を同時に行うようにしてもよい。
【0052】
また、塗布工程S4を行う必要は特にない。例えば、二次焼結工程S5での雰囲気を窒素として、リーマ10を構成する金属粒に少なくとも窒化物のみを析出させるようにしてもよい。
【0053】
さらに、二次焼結工程S5の雰囲気を窒化ガスとする必要は特になく、塗布工程S4を行った後にアルゴン雰囲気下で二次焼結工程S5を行って、リーマ10を構成する金属粒に少なくともホウ化物のみを析出させるようにしてもよい。
【0054】
さらにまた、本発明によって得られる傾斜複合材は、リーマ10やドリル、スローアウェイチップ等の加工用刃具に特に限定されるものではなく、例えば、鍛造用金型であってもよい。
【0055】
そして、上記した実施の形態では、表面に金属リッチ部22が存在し、内部にセラミックスリッチ部20が存在する傾斜複合材を例示して説明したが、表面にセラミックスリッチ部20が存在し、内部に金属リッチ部22が存在する傾斜複合材であってもよい。
【0056】
【実施例】
1.傾斜複合材の諸特性
炭化タングステン(WC)粉末とコバルト(Co)粉末とを、両者の割合を種々変更しながらヘキサンを用いて湿式混合して混合粉末とした。次いで、この混合粉末を、金型内静水圧加圧成形法にて120MPaの加圧力でリーマ10に対応する形状に成形した。そして、この成形体を900℃で0.5〜1時間保持することにより多孔質焼結体とした。
【0057】
次いで、この多孔質焼結体を濃度10%のNiイオン溶液に3分間浸漬することにより、該多孔質焼結体の内部にNiイオンを分散させた。さらに、多孔質焼結体を90℃で1時間保持することにより乾燥した。
【0058】
次いで、前記多孔質焼結体を、窒素雰囲気中において1390℃で2時間保持することにより再焼結して緻密焼結体とした。
【0059】
次いで、炉内の温度を窒素ガスによる0.35MPaの加圧下で1200℃まで下降させ、1時間保持した。その後、炉内の温度を一旦80℃まで冷却し、600℃まで再度上昇させ、2時間保持して傾斜複合材を得た。これを実施例1とする。
【0060】
また、焼結の後に放冷にて1000℃まで下降させて1時間保持し、炉内の温度を一旦80℃まで冷却した後に500℃まで上昇させて2時間保持したことを除いては実施例1と同様にして傾斜複合材を得た。これを実施例2とする。
【0061】
比較のため、二次焼結工程後に熱処理を行わなかった傾斜複合材と、成形体に金属塩の溶液を含浸させることなく1回の焼結で緻密焼結体とした複合材とを作製した。これらをそれぞれ比較例1、2とする。
【0062】
これら実施例1、2の傾斜複合材、比較例1の傾斜複合材、および比較例2の複合材における残留応力を測定した。結果を、コバルト量を横軸とするグラフにして図4に示す。この図4から、熱処理を施すことによって残留応力が低下することが諒解される。
【0063】
また、実施例1、2の傾斜複合材、比較例1の傾斜複合材、および比較例2の複合材の抗折強度、破壊靱性値、Aスケールのロックウェル硬度(HRA)をそれぞれ測定した。結果を図5〜図7にそれぞれ示す。これら図5〜図7から、熱処理を施すことによって強度、破壊靱性値、硬度のいずれも向上することが明らかである。
【0064】
このように、熱処理を施すことにより、諸特性に優れ、かつ残留応力が小さいので応力集中が起こり難く、このために欠損が生じ難い傾斜複合材を得ることができる。
【0065】
2.加工用刃具としての性能
平均粒径1μmのWC粉末を80重量%、平均粒径2.5μmの炭化チタン(TiC)粉末を5重量%、平均粒径3.4μmの窒化チタン(Ti3N4)粉末を3重量%、平均粒径2.8μmの炭化ニオブ(NbC)粉末を2重量%、平均粒径2.4μmの炭化タンタル(TaC)粉末を2重量%、平均粒径1.4μmのCo粉末を7重量%とし、ヘキサンを用いて湿式混合して混合粉末とした。次いで、この混合粉末を、金型内静水圧加圧成形法にて120MPaの加圧力でリーマ10に対応する形状に成形した。そして、この成形体を900℃で30分間保持することにより多孔質焼結体とした。
【0066】
次いで、この多孔質焼結体に対し、上記と同様にして濃度10%のNiイオン溶液を含浸させ、90℃で1時間保持することにより乾燥した。さらに、この多孔質焼結体の表面に対し、h−BNがキシレンに分散された溶液を塗布した。
【0067】
次いで、前記多孔質焼結体を、窒素雰囲気中において1450℃で2時間保持して再焼結することにより、緻密化させた。なお、再焼結においては、昇温を開始した時点から、窒素を導入した。
【0068】
さらに、750℃まで放冷して60分保持した後、窒素ガスを導入して炉内の圧力を0.5MPaとし、80℃まで48℃/分の降温速度で急冷した。その後、520℃に加熱して2時間保持し、リーマ10を得た。これを実施例3とする。
【0069】
また、比較のために、成形体に金属塩の溶液を含浸させることなく1回の焼結で緻密化させ、かつ熱処理を施さなかったことを除いては実施例3と同様にして、複合材からなるリーマを作製した。これを比較例3とする。
【0070】
さらに、市販品であるTiNコーティング鋼製リーマを用意した。これを比較例4とする。
【0071】
以上の実施例3のリーマ10および比較例3、4のリーマを用いて、Cスケールのロックウェル硬度が44であるSCM450材に対し、切削速度を30m/秒、切り込み量(f)を0.05mmとして切削加工を施した。加工長さが合計で5mとなった時点で切削加工を停止し、刃先先端から5mmの位置における摩耗量を測定したところ、実施例3のリーマ10では僅か0.1mmであったのに対し、比較例3のリーマ(複合材)では0.5mm、比較例4のリーマでは0.2mmと、いずれも実施例3のリーマに比して大きかった。この結果から、焼結後に熱処理を施すことによって、耐摩耗性に優れる加工用刃具が得られることが明らかである。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、焼結後に熱処理を施すことによって、傾斜複合材を構成する金属の固溶体化を促進するとともに、該固溶体から析出物を析出させるようにしている。このため、金属が析出硬化するので優れた硬度を示す。しかも、この金属において金属間化合物の生成が抑制されるので、該金属は、強度および靭性にも優れる。すなわち、本発明によれば、高硬度、高強度および高靭性を兼ね備える傾斜複合材を容易かつ簡便に作製することができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る製造方法によって得られた傾斜複合材からなるリーマの概略全体正面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】本実施の形態に係る傾斜複合材の製造方法のフローチャートである。
【図4】実施例1、2および比較例1の傾斜複合材、比較例2の複合材におけるコバルト量と残留応力との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1、2および比較例1の傾斜複合材、比較例2の複合材におけるコバルト量と抗折強度との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1、2および比較例1の傾斜複合材、比較例2の複合材におけるコバルト量と破壊靱性値との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1、2および比較例1の傾斜複合材、比較例2の複合材におけるコバルト量とHRAとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…リーマ 12…刃部
20…セラミックスリッチ部 22…金属リッチ部
24…傾斜部
Claims (5)
- W、Cr、Mo、Ti、V、Zr、Hf、ランタノイドの炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選択された少なくとも1種からなるセラミックス粉末と、Fe、Ni、Co、Cr、これらの中の2種以上で構成される合金の群から選択された少なくとも1種からなる金属粉末とが重量比で60:40〜97:3の割合で含有された混合粉末を成形して成形体とする成形工程と、
前記成形体を焼結して多孔質焼結体とする一次焼結工程と、
前記多孔質焼結体に金属塩の溶液を含浸する含浸工程と、
前記溶液が含浸された前記多孔質焼結体を再焼結して緻密焼結体とする二次焼結工程と、
1000〜1450℃の間で、かつ前記二次焼結工程時の温度よりも低温で30分以上保持することによって熱処理を施すことで、前記金属粉末が粒成長して形成された金属粒に対して前記セラミックスの構成元素を源とする元素を固溶させる一次熱処理工程と、
温度を80℃以下に下降させた後、500〜780℃に上昇させて15分以上保持することによって熱処理を施すことで、前記金属粒に固溶された前記元素を源とする化合物を析出させる二次熱処理工程と、
を有することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。 - 請求項1記載の製造方法において、前記一次熱処理工程および前記二次熱処理工程を、不活性ガス雰囲気中加圧下で行うことを特徴とする傾斜複合材の製造方法。
- 請求項2記載の製造方法において、圧力を0.3〜10MPaとして熱処理を施すことを特徴とする傾斜複合材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、窒素ガスを含有する雰囲気下で前記二次焼結工程を行うことを特徴とする傾斜複合材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、前記溶液が含浸された前記多孔質焼結体の表面にホウ化物を含有する溶液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする傾斜複合材の製造方法。
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