JP3843150B2 - Mg−Zn系フェライト材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばテレビ受像機やパソコン用CRTディスプレイといった画像表示装置の偏向ヨーク等のコア材料に適したMg−Zn系フェライト材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
このようなMg−Zn系フェライト材料は、主成分として、Fe2 3 (酸化鉄)、MgO(酸化マグネシウム)、ZnO(酸化亜鉛)などが配合されたものであり、Mn−Zn系フェライト材料やNi−Zn系フェライト材料といった他のフェライト材料に比べて、製品化の際の製造コストを安価に抑えることができる点で優れている。また、この材料から製造されるフェライト製品は比較的高い固有抵抗を有するため、当該材料で作成された偏向ヨークはリンギング現象の発生を抑制することができるといった優れた点を有している。
【0003】
しかしながら、このMg−Zn系フェライト材料から製造された偏向ヨークは、他のフェライト材料から製造された偏向ヨークに比べてコアロス(磁気損失)が大きいため、高周波数域で使用する高精細、高画質のCRT用偏向ヨークコアに適用した場合にコアの自己発熱が大きくなりCRTが正常に機能しなくなるといった恐れがあった。
【0004】
このような事情から、Mg−Zn系フェライト材料から得られるフェライトコアのコアロス低減化について従来から研究がなされており、現在までに、多種多様な組成を有するMg−Zn系フェライト材料が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このうち、本出願人は先に、特公平3−66254号公報に示すように、Fe2 3 を46〜49mol%、MgOを24〜27mol%、ZnOを18〜21mol%、MnO(酸化マンガン)を4〜7mol%、CuO(酸化銅)を1〜4mol%含有する主成分に対し、副成分としてBi2 3 (酸化ビスマス)を0.3〜0.6重量%添加してなるMg−Zn系フェライト材料を提案しているが、未だコアロス低減化において改善が要求されている。
【0006】
本発明は、本出願人が先に提案した上記発明に係るMgーZn系フェライト材料の改良に係るもので、その目的は、コアロスが従来よりもより一層少なく高周波数域で使用する高精細、高画質のCRT用偏向ヨークコアの製造に好適なMg−Zn系フェライト材料を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明に係るMg−Zn系フェライト材料にあっては、主成分として、Feを39〜41mol%、MgOを28〜32mol%、ZnOを17〜19mol%、MnOを9〜15mol%、CuOを1〜3mol%の各範囲内で、かつ合計が100mol%となるように配合してなり、高周波(100kHz)でのコアロスが550kw/m 以下であることを特徴とする。このような組成からなるMg−Zn系フェライト材料からは、従来と同様に高い固有抵抗及びキュリー温度を有する一方、従来に比べてコアロスを顕著に減少してなる偏向ヨーク等のフェライトコアを得ることができる。
【0008】
また、好ましくは、前記主成分に対し、副成分としてBi2 3 を1.0重量%以下添加することで、これにより、更にコアロスの小さいフェライトコアを得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係るMg−Zn系フェライト材料の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。本発明に係るMg−Zn系フェライト材料は、主成分としてFe2 3 、MgO、ZnO,MnO,CuOを所定量配合したものであり、当該材料からは次のようにしてフェライト製品、例えばフェライトコアを得る。即ち、先ず当該フェライト材料を仮焼成し、仮焼成により得た仮焼成物を微粉砕して仮焼成紛を作成する。そして、仮焼成紛にバインダーを加えて混練して所定のコア形状に成形し、その後、得られた成形体を本焼成してフェライトコアを得る。
【0010】
ここで、Mg−Zn系フェライト材料としてその主成分を種々変えたものを用意し、各材料から得られたフェライトコアに対してコアロスを始めとする材質特性の測定試験を行った。
【0011】
各配合比率は、Fe2 3 が38.0〜50.0mol%、MgOが22.0〜32.5mol%、ZnOが14.0〜20.0mol%、MnOが4.0〜16.0mol%、CuOが0.0〜5.0mol%の各範囲内で、かつ配合比率の合計が100mol%となるようにして、表1に試料A〜Uとして示す配合のものからフェライトコアを得た。
【0012】
また、従来品として、特公平3−66254号公報に開示されたMg−Zn系フェライト材料として、Fe2 3 が47.4mol%、MgOが25.9mol%、ZnOが19.7mol%、MnOが5.9mol%、CuOが1.1mol%の比率で配合されたものからフェライトコアを得た。
【0013】
各材料からフェライトコアを製造するに際し、仮焼成を温度約800〜1000℃で行うとともに、仮焼成物の微粉砕をボールミルを使用して機械的に行った。また、成形体の成形に際しては、仮焼粉用バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)と適量の水とを混合して作成したものを使用するとともに、混練によりペレットを造粒して、このペレットを環状に成形した。また、本焼成にあっては、空気中において温度約1250〜1330℃で行って、外径約25mm、内径約15mm、厚さ約5mmの大きさを有する環状のフェライトコアを製作した。
【0014】
そして、これら試料A〜U及び従来品について、固有抵抗、キュリー温度及びコアロスの測定を行い、測定結果を表1に示した。ここで、コアロスの測定は、JIS C 2561−1992「フェライト磁心の材質性能試験方法」における「コアロス測定法(波形記憶装置による測定回路の使用)」に基づき、測定条件として、周波数fを100kHz,磁束密度Bmを100mT,温度を100℃に設定して行った。尚、キュリー温度が170℃を越えたものについては、該当欄に「>170」と示した。
【0015】
【表1】
Figure 0003843150
この表1から、従来品については、固有抵抗が約10Ω・cm、コアロスが800kW/m、キュリー温度が約155℃という測定結果が得られた。
【0016】
これに対して、本発明ではコアロスの目標値として従来の値より大幅に低い550kW/m以下を設定し、また固有抵抗については偏向ヨークのリンギング現象の発生を充分に抑制できる従来と同様の10Ω・cm以上の値を目標値として設定し、キュリー温度については偏向ヨークコアの温度上昇に対しても十分な飽和磁束密度を保つことができる130℃以上の値を目標値として設定した。この結果、試料B,D,Eに示した本発明品を得た。
【0017】
また、試料A,C,F〜Uについては、固有抵抗が10Ω・cm未満か、あるいはキュリー温度が130℃未満か、或いはコアロスが550kW/mを越えたものを比較品として示した。
【0018】
ここで、本発明の全ての目標値を満たした試料B,D,Eについて着目すると、これら試料は主成分としてFeを39〜41mol%、MgOを28〜32mol%、ZnOを17〜19mol%、MnOを9〜15mol%、CuOを1〜3mol%の各範囲内に配合したフェライト材料から製造されたものであることが認められた。
【0019】
したがって、上記組成からなるMg−Zn系フェライト材料からは、十分高い固有抵抗及びキュリー温度を有し、かつコアロスが従来より大幅に減少したフェライトコアを得ることができる。このことから、本発明のMg−Zn系フェライト材料は高周波数域で使用する高精細、高画質のCRT用偏向ヨークコアの材料として用いた場合には、コアの自己発熱の発生を抑えてCRTの機能低下を防止することが出来る。
【0020】
次に、本発明の組成に係るMg−Zn系フェライト材料に対してBi2 3 (酸化ビスマス)を添加してフェライトコアを作成し、このフェライトコアのコアロス測定試験を行った。この試験では、表1の試料Bと同じ組成を有するMg−Zn系フェライト材料に対してBi2 3 を添加することによって行った。Bi2 3 の添加量は、0.1〜1.5重量%の範囲内で種々に変えて行った。表2はBi2 3 が添加されなかった試料Bの場合とともに測定結果を示したものであり、添付の図1は表2の結果を示したグラフである。
【0021】
【表2】
Figure 0003843150
この表2及び図1から、Bi2 3 の添加量が増加するに従って、コアロスが小さくなるが、添加量0.8重量%付近のところで最も小さくなった後は、添加量が増加してもコアロスが小さくならず、逆にコアロスが増大する傾向にあることがわかる。このBi2 3 は比較的高価な物質であるから、添加量はできるだけ少なくして大きな効果を得ることが望ましく、1.0重量%以下の範囲内、特に添加量0.6〜1.0重量%程度が好ましいことが認められる。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るMg−Zn系フェライト材によれば、主成分として、Fe2 3 、MgO、ZnO、MnO及びCuOを請求項1で規定した所定の範囲内で配合することによって、高い固有抵抗及び高いキュリー温度を有し、かつ従来より大幅にコアロスが低減されたフェライト製品を得ることができる。これにより、本発明のMg−Zn系フェライト材料を高周波数域で使用する高精細、高画質のCRT用偏向ヨークコアの材料として用いた場合には、コアの自己発熱の発生を抑えてCRTの機能低下を防止することが出来る。
【0023】
また、好ましくは、Mg−Zn系フェライト材料の主成分に対し、Bi2 3 を1.0重量%以下の範囲内で添加した場合には、さらにコアロスが小さいフェライトコアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るMg−Zn系フェライト原材料に対して添加されるBi2 3 の量とコアロスとの関係を示したグラフである。

Claims (2)

  1. 主成分として、Feを39〜41mol%、MgOを28〜32mol%、ZnOを17〜19mol%、MnOを9〜15mol%、CuOを1〜3mol%の各範囲内で、かつ合計が100mol%となるように配合してなり、高周波(100kHz)でのコアロスが550kw/m 以下であることを特徴とするMg−Zn系フェライト材料。
  2. 前記主成分に対し、副成分としてBiを1.0重量%以下添加してなることを特徴とする請求項1記載のMg−Zn系フェライト材料。
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