JP3842857B2 - 溶鋼のrh脱ガス処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はRH型真空処理槽を用いた溶鋼の脱ガス処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,高清浄度の鋼材の要求から溶鋼の真空脱ガス処理が広く行われている。これは,溶鋼を真空に晒すことにより溶鋼中の水素,窒素,酸素等のガス成分を除去するものであり,RH型真空処理槽がよく用いられる。その際,真空槽の側部に設けた羽口から送酸して脱炭処理を促進することも普通に行われている。
【0003】
この脱炭処理を促進する方法には,真空槽内に設置した羽口から溶鋼の湯面下に酸素を吹き込むRH−OB法と,RH内上方に設置したランスから湯面上に酸素を吹き付けるRH−KTB法が知られているが,前者の方が活発な反応を行わせることができる。しかし,羽口の先端が高温の溶鋼に曝されることや,送酸停止時の羽口詰まりを防止するために,保護ガスを流し続けなければならない。他方,RH−KTB法では,前者に比べると反応効率や脱ガス効率が低下することは否めず,また送酸休止時にも羽口詰まりを防止するために保護ガスを流すことも必要である。
【0004】
いずれの場合にも,保護ガスとしてはアルゴンや窒素ガス等が使用されるが,窒素濃度の上昇が好ましくない鋼種では,RH−OB法で保護ガスに窒素ガスを使用すると溶鋼に窒素が溶解し,窒素濃度が上昇するため,アルゴンガスが普通に用いられている。また,RT−KTB法においても保護ガスとして,窒素の濃度上昇が好ましくない鋼種ではアルゴンガスが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような背景のもとでは,窒素含有量が30ppm以下といった極低窒素の溶鋼を溶製するには高価なアルゴンガスの使用量が増大し,これが製造原価を押し上げる要因となっていた。
【0006】
したがって,本発明は,保護ガスとして安価な窒素を使用しても,極低窒素の溶鋼ができるRH脱ガス処理法の開発を課題としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,羽口を有するRH型真空処理槽を用いた溶鋼の脱ガス処理において,脱炭時に槽内溶鋼レベルを羽口の位置より高くして羽口から湯面下の溶鋼中に酸素を吹き込み,その後,脱酸剤を投入し,脱酸材投入後の槽内の溶鋼レベルを羽口の位置よりも低くして溶鋼を環流処理し,当該環流処理の際に湯面上の槽内空間に露出する羽口に窒素ガスを送気することにより当該羽口を保護することを特徴とする溶鋼のRH脱ガス処理方法を提供する。この場合,脱ガス処理終了時の溶鋼中のN濃度を30ppm以下にすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に本発明法を実施するRH型真空処理槽の要部(槽下半身)を示した。真空槽1の下方には上昇管2と下降管3が取付けられ,これらは取鍋内溶鋼に浸漬される。真空槽1の上部には排気装置に通ずる排気口と添加材投入口が設けられているが図面上には示されていない。上昇管2の中腹にはガス導入口4が取付けられ,このガス導入口4から環流用ガスが導入されることにより,減圧下で真空槽1内に吸い上げられた溶鋼は,上昇管2→真空槽1→下降管3→取鍋へと環流する。
【0009】
真空槽1の中腹部やや下方に,ノズル口を斜め下向きにした羽口5が取付けられ,この羽口5は二重管羽口であり,酸素ガスと保護ガスが適宜吹き込まれる。本例では,この羽口の位置は脱炭反応時には溶鋼の湯面下となり,脱酸材投入後の環流時には湯面上となるような高さにしてある。すなわち,脱ガス処理全体を通じて湯面下に位置する浸漬羽口(フルデイップ羽口)ではなく,半浸漬羽口(セミデイップ羽口)とし,その吹込方向を斜め下向きにしてある。図面上の湯面6は脱炭反応時のときを示しており,この場合には羽口5は湯面下となり,図面上の湯面7は脱酸材投入後の環流時のときを示しており,この場合には羽口5は槽内空間に露出することになる。
【0010】
このRH真空脱ガス設備により,本発明を実施する場合の一連の操業を以下に説明する。
【0011】
転炉から出鋼する溶鋼を取鍋に受け,この取鍋を本RH真空脱ガス設備に運搬し,上昇管2と下降管3を該取鍋内溶鋼に浸漬したうえ(図中の8,8’はスラグ,溶鋼溶湯レベルを示す)ガス導入口4から還流ガスを流しながら真空排気装置を作動させ真空処理を開始する。真空処理開始と同時に羽口5の保護のためにその外管と内管にアルゴンガスを流す。この脱炭反応時の湯面は図の6の位置にある。
【0012】
脱炭処理を促進する場合には,脱炭反応時に所定の脱炭処理を満たす量まで,外管に灯油等の冷却物質・内管に酸素を吹込む。脱炭処理が目標値まで済んだところで脱酸材(例えばAl)を投入し,環流処理に移行する。この環流処理中も環流ガスは流し続けるが,脱酸材投入により溶湯は鎮静下し,湯面を7の位置に下げる。このとき,羽口5は槽内空間に露出することになるが,この時点で内管と外管は共に窒素ガスだけとし,アルゴンガスは使用しない。この環流処理を規定の時間行ったあと,復圧し環流ガスを停止し,真空脱ガス処理を終了する。
【0013】
なお,前例は酸素吹き込みによる脱炭反応を促進する例を示した。なお鋼種によっては酸素の吹込による脱炭反応を促進させない場合もあるが,脱酸材投入は行われ,脱酸材投入後の環流処理には,湯面上にある羽口5から窒素ガスを使用し,アルゴンガスを使用しない。
【0014】
このように,本発明法は,羽口位置を脱酸材投入後の湯面レベルより高く設置し,環流処理中の羽口保護ガスに窒素ガスを使用する点に特徴がある。これによって羽口が保護されると共に,湯面下に窒素ガスを導入する場合とは異なり,溶鋼への吸窒現象が抑制されるという作用効果を奏する。その結果,鋼の成品N成分値が30ppm以下の極低窒素溶鋼をより経済的に製造することができる。
【0015】
一方,鋼中の成品C値については,任意の値の目標値に制御できる。一般に酸素吹き込みを行うRH−OB脱ガス設備では,高炭素鋼を脱炭処理すると脱炭と同時に脱窒も進行する。しかし,あまり鋼中のC含有量が低下すると脱窒が進行しなくなる。したがって,本発明法では鋼の成品C値は0.01mass%以上とするのがよい。
【0016】
【実施例】
転炉で溶製した溶鋼185tonを取鍋に受けて図1に示したRH−OB真空脱ガス設備にセットし,上昇管2のガス導入口4にアルゴンガスを流し,真空排気装置を作動させて真空処理を開始し,脱ガス処理および2本の羽口5から湯面下の溶鋼中に酸素を吹き込み脱炭処理を行った。脱ガス処理時および脱炭処理時は各羽口5は湯面下にあり,脱ガス処理時には内管および外管ともアルゴンガスを導入した。脱炭処理を促進する場合には内管に酸素ガスを外管に灯油等冷却物質を使用した。その後,脱酸材としてAlを添加し,脱酸が終了して溶鋼レベルが羽口5の先端位置より下降したあと,この真空槽の空間に露出する羽口に窒素ガスを,内管から60Nm3 /hr,外管から30Nm3 /hrの合計90Nm3 /hrを吹き込み,羽口を保護しながら環流処理を行った。
【0017】
比較のために,セミディップ羽口からアルゴンガス(比較例1)またはフルディップ羽口から窒素ガス(比較例2)を吹込んだ以外は,前記の例と同様の処理を行った従来例の鋼中窒素の挙動を,前記の本発明例の鋼中窒素の挙動と共に, 多数のヒートの平均値および標準偏差(σ)として,表1に対比して示した。窒素濃度の単位はppmである。成品〔N〕は脱ガス処理後に連鋳した鋼の窒素含有量を表す。
【0018】
【表1】
Figure 0003842857
【0019】
表1から明らかなように,本発明の実施例では,脱酸後の環流処理時に窒素ガスを使用しているにも係わらず, 比較例1のアルゴンガスを環流処理時に使用したものにほぼ相当する窒素濃度の鋼成品が得られた。また,フルディップ法では,比較例2のように,窒素ガスを環流処理時に併用すると成品窒素濃度が高くなることがわかる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,溶鋼のRH脱ガス処理時に高価なアルゴンガスの使用を低減しながら低窒素溶鋼が製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する例を示したRH脱ガス真空設備の略断面図である。
【符号の説明】
1 真空槽
2 上昇管
3 下降管
4 環流用ガス導入口
5 羽口
6 脱炭時の槽内溶鋼レベル
7 脱酸材投入後の環流処理時の槽内溶鋼レベル

Claims (2)

  1. 羽口を有するRH型真空処理槽を用いた溶鋼の脱ガス処理において,脱炭時に槽内溶鋼レベルを羽口の位置より高くして羽口から湯面下の溶鋼中に酸素を吹き込み,その後,脱酸剤を投入し,脱酸材投入後の槽内の溶鋼レベルを羽口の位置よりも低くして溶鋼を環流処理し,当該環流処理の際に湯面上の槽内空間に露出する羽口に窒素ガスを送気することにより当該羽口を保護することを特徴とする溶鋼のRH脱ガス処理方法。
  2. 脱ガス処理終了時の溶鋼中のN濃度が30ppm以下である請求項1に記載の溶鋼のRH脱ガス処理方法。
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