JP3842613B2 - 貫通導体用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体LSI・チップ部品等を搭載し、それらを相互配線するためのガラスセラミック基板に貫通導体を形成するのに用いられ、特に貫通導体の内部に隙間やボイド等の欠陥が生じ難い貫通導体用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体LSI・チップ部品等は小型化・軽量化が進んでおり、これらを実装する配線基板も小型化・軽量化が望まれている。このような要求に対して、基板内に内層の配線導体等を配した多層セラミック基板は、高密度配線の要求に対応が可能であり、かつ薄型化が可能なことから、今日のエレクトロニクス業界において多用されている。
【0003】
多層セラミック基板としては、アルミナ質焼結体から成る絶縁基板の表面および/または内部にタングステン(W)・モリブデン(Mo)等の高融点金属から成る配線導体が形成されたものが従来より広く用いられている。
【0004】
一方、近年の高度情報化時代を迎え、使用される電気信号の周波数帯域はますます高周波帯に移行しつつある。このような高周波の信号の伝送を行なう高周波配線基板においては、高周波信号を高速で伝送する上で、配線導体を形成する導体の抵抗が小さいことが要求され、絶縁基板にもより低い誘電率が要求される。
【0005】
しかし、従来のタングステン・モリブデン等の高融点金属は導体抵抗が大きく、信号の伝播速度が遅く、また30GHz以上の高周波領域の信号伝播も困難であることから、タングステン・モリブデン等の金属に代えてCu・Ag・Au等の低抵抗金属を使用することが必要である。ところが、上記のような低抵抗金属の融点は最も融点の高いCuでも1084℃と低いため、800〜1100℃程度の低温で焼成することが必要であることから、このような低抵抗金属から成る配線導体は、高温焼成が必要なアルミナと同時焼成することができなかった。また、アルミナ質焼結体は誘電率が高いため、絶縁基板にアルミナ質焼結体を用いた多層セラミック基板は、高周波回路基板としては不適切である。
【0006】
このため、最近では、ガラスとセラミックス(無機質フィラー)との混合物を焼成して得られるガラスセラミックスを絶縁基板として用いることが注目されている。すなわち、ガラスセラミックスは誘電率が低いため高周波回路基板用の絶縁基板として好適であり、またガラスセラミックスは800〜1100℃の低温で焼成することができることから、Cu・Ag・Au等の低抵抗金属を配線導体として使用できるという利点がある。
【0007】
一方、多層ガラスセラミック基板は、ガラスとフィラーとの混合物に有機バインダ・可塑剤・溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりガラスセラミックグリーンシートを成形した後、Cu・Ag・Au等の低抵抗金属の粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてガラスセラミックグリーンシート上に導体パターンを形成し、次いで複数枚のガラスセラミックグリーンシートを積層して800〜1100℃の温度で焼成して得られる。
【0008】
また、上記の低抵抗金属の中で、Cuは貴金属であるAuやAgより安価であり、またAgに比較するとマイグレーションによる絶縁不良等の不具合が発生しにくいといった利点があり、多層ガラスセラミック基板の導体材料として注目されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法により多層ガラスセラミック基板を製造する際に、上下に位置する配線層同士を絶縁基板を貫通して電気的に接続する貫通導体を形成するために、ガラスセラミックグリーンシートに形成した貫通孔に導体ペーストを充填したガラスセラミックグリーンシート積層体を焼成した場合、貫通導体の内部にボイドが発生したり、貫通導体の周囲の絶縁基板との間(貫通導体の外周面と貫通孔の内周面との間)に隙間が発生したり、貫通導体の周辺の絶縁基板にクラックが発生したり、貫通導体の端部が絶縁基板の表面から突出して、またはへこんで凹凸形状になったりするという問題が発生することがある。貫通導体の内部にボイドが発生すると、貫通導体の比抵抗値が増加し、半導体素子の作動が困難となる。また、貫通導体の周囲に隙間やクラックが発生すると、水分の侵入により貫通導体成分が拡散してマイグレーションが発生したりする。また、貫通導体部の凹凸形状により、多層ガラスセラミック基板上の平滑性が損なわれ、凹凸形状部の上に半田を介して半導体LSI・チップ部品等を実装すると、接合部の強度が充分でなく、一般的に言われている半田接合応力により、接合部が破断することがあるという問題があった。
【0010】
これらの問題が生じる原因は、焼成過程において、貫通孔に充填された導体ペーストとガラスセラミックグリーンシート積層体との焼結タイミングあるいは熱収縮挙動のズレに大きな原因があるものと思われる。ガラスセラミックグリーンシート積層体と貫通孔に充填された導体ペーストとの焼結に大きなズレがあると、焼成された絶縁基板とその貫通孔に形成された貫通導体との間に過大な応力や歪みが生じて、前述のようなボイドや隙間・クラック・貫通導体部での凹凸形状の発生等の不具合が生じることとなる。
【0011】
本発明は以上のような従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、その目的は、ガラスセラミック基板に貫通導体を形成するのに用いられ、貫通導体の内部の隙間やボイドの発生や貫通導体周辺の絶縁基板へのクラックの発生・貫通導体部の凹凸形状等の欠陥が生じ難い貫通導体用組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、貫通導体内部の隙間やボイド等の欠陥を無くし、また貫通導体周辺の絶縁基板へのクラックの発生や貫通導体部の凹凸形状等の欠陥等を無くすためには、ガラスセラミックグリーンシートと比べて貫通導体用組成物の焼結温度が低くなり過ぎないようにし、かつガラスセラミック基板の焼結温度以上の軟化点を有するガラス粉末の含有量を調整すればよいことを見出すに至った。本発明は、このような特性基準に基づき貫通導体用組成物の組成を特定することによって完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明の貫通導体用組成物は、800〜1100℃で焼成されるガラスセラミック基板内に貫通導体を形成するための貫通導体用組成物であって、無機成分が、積算50%粒径が3〜7μmで積算10%粒径が2μm以上のCu粉末80〜90重量%および軟化点が前記ガラスセラミック基板の焼結温度より10〜60℃高いガラス粉末10〜20重量%から成る主要部が97〜99.5重量%と、アルミナ粉末が0.5〜3重量%とから成ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の貫通導体用組成物によれば、ガラスセラミック基板の焼結温度より低い温度領域では、ガラスセラミックグリーンシートは焼結収縮せず、Cu粉末は、ガラス粉末とアルミナ粉末がCu粉末間に存在するために焼結を抑制されている。次に、ガラスセラミック基板の焼結温度付近ではガラスセラミックグリーンシートが焼結収縮を開始し、貫通孔の体積も収縮する。このとき、Cu粉末は、ガラス粉末とアルミナ粉末がCu粉末間に存在するために焼結を抑制されており、Cu粉末が移動できる状態にあるので、ガラスセラミックグリーンシートの焼結収縮に追従して貫通孔に充填された貫通導体用組成物は体積収縮を行なうので、貫通導体の周囲の絶縁基板との間(貫通導体の外周面と貫通孔の内周面との間)に隙間や貫通導体の周辺の絶縁基板にクラックが発生する、あるいは貫通導体の端部が絶縁基板の表面に対して凹凸形状になる、等の問題は発生しない。さらに、焼結温度を超え焼成温度(通常1時間程度保持する)になると、貫通導体用組成中のガラス粉末が軟化し、Cu粉末の焼結が促進して貫通導体が緻密化する。このとき、アルミナ粉末は、軟化したガラス粉末と濡れて、ガラス成分を貫通導体中に保持する核成分として作用し、ガラス成分の流出を抑制して貫通導体内部にボイドが発生するのを抑制する。
【0015】
以上のように、本発明の貫通導体用組成物によれば、ガラスセラミック基板の内部に信頼性の高い貫通導体を形成することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例について添付図面に基づき説明する。
【0017】
図1は本発明の貫通導体用組成物を用いて貫通導体を形成したガラスセラミック基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、1はガラスセラミック基板、2は貫通導体、3は配線導体、4はこれらガラスセラミック基板1・貫通導体2および配線導体3から成る多層ガラスセラミック基板である。
【0018】
多層ガラスセラミック基板4は、ガラスとフィラーとの混合物に有機バインダ・可塑剤・溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード法等によりガラスセラミック基板1となるガラスセラミック・グリーンシートを成形した後、所定の貫通孔を金型にて打ち抜き加工し、この貫通孔に貫通導体2となるCu粉末・ガラス粉末およびアルミナ粉末を含有する貫通導体用組成物を用いた導体ペーストをスクリーン印刷にて充填し、また所定の配線導体3のパターンとなるように導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体パターンを形成し、次いで複数枚のグリーンシートを積層して800〜1100℃程度の温度で焼成することによって得られる。
【0019】
貫通導体2を形成するための導体ペーストは、Cu粉末・ガラス粉末およびアルミナ粉末から成る無機成分である貫通導体用組成物を攪拌脱泡機にて予備分散させた後、3本ロール等を用いて樹脂および溶剤を主成分とするビヒクルに分散させてペースト状にすることにより、汎用的なスクリーン印刷によりガラスセラミックグリーンシートの貫通孔に充填させることができる。
【0020】
なお、ビヒクルの成分は特に限定されないが、例えば、エチルセルロース・ニトロセルロース・アクリル等の樹脂を単独であるいは混合して用い、この樹脂をターピネオール・ブチルカルビトールアセテート等の溶剤やフタル酸ブチル等の可塑剤に溶解させて調製される。
【0021】
本発明の貫通導体用組成物を構成するCu粉末については、最適な粒径範囲として積算50%粒径を3〜7μmの範囲に設定することを要する。その積算50%粒径が3μmより小さいと、ガラス粉末の添加と無関係に焼結が低温領域より開始されるようになり、また、Cu粉末自身の充填性の向上により、体積収縮も大きくなるので、これにより得られる貫通導体2は、ガラスセラミック基板1の表面に対して凹形状になりやすくなる。また、積算50%粒径が7μmより大きいと、貫通導体2の焼結が完了せずに、結果として、体積収縮がガラスセラミックグリーンシートより小さくなり、貫通導体2の凸形状や隙間/クラックの発生が見られるようになるからである。
【0022】
ただし、積算50%粒径が上記最適範囲内でも、粒径の小さいCu粉末が多く含まれる場合には同様に欠陥が発生しやすくなる傾向があるので、2μm以下のCu粉末が10%未満であること、すなわち積算10%粒径が2μm以上であることが好ましい。これは、粒径の小さいCu粉末が多量に存在すると、その粒径の小さいCu粉末が焼結の起点となり、貫通導体部の焼結を促進し、結果として積算50%粒径が3μmより小さい場合と同様な作用をすることとなるからである。
【0023】
なお、Cu粉末の粒径については、例えば、レーザー式粒度分布測定装置により測定して積算50%粒径および積算10%粒径を算出する。
【0024】
ガラス粉末の軟化点は、ガラスセラミック基板1(ガラスセラミックグリーンシート)の焼結温度より10〜60℃高い温度範囲内であることを要する。ガラス粉末の軟化点がガラスセラミック基板1(ガラスセラミックグリーンシート)の焼結温度より10〜60℃高い温度範囲内であると、アルミナ粉末を核として保持されたガラス粉末が、Cu粉末の焼結開始温度領域ではCu粉末同士の焼結を抑制し、ガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック基板1)の厚み方向への焼結収縮温度領域では貫通導体2がガラスセラミックグリーンシートに追従して収縮することとなって、その結果、貫通導体2の内部に隙間・ボイド等の欠陥の少ない、また貫通導体2がガラスセラミック基板1の表面に対して凹凸形状とならないような貫通導体2を形成することができる。その後、焼成温度で、Cu粉末同士の焼結が促進し、また、Cu成分の拡散によりガラス粉末が軟化し、貫通導体2が緻密化する。
【0025】
ガラス粉末の軟化点がガラスセラミック基板1(ガラスセラミックグリーンシート)の焼結温度に対して+10℃より低い場合は、ガラスセラミック基板1を焼成する際の基板磁器の収縮時に、ガラス粉末が軟化しこれに流動性があるためCu粉末同士が接近してしまい、Cu粉末同士の濡れを抑制できずに貫通導体2の内部でのCu粉末同士の焼結が進み過ぎることとなり、貫通導体2の内部の空隙やクラックの発生・貫通導体部の凹形状発生等の不具合が生じることとなる。他方、ガラス粉末の軟化点がガラスセラミック基板1(ガラスセラミックグリーンシート)の焼結温度に対して+60℃を超えると、ガラスセラミック基板1の焼成温度ではガラスが完全には軟化できず、その結果、貫通導体2の内部にボイドやクラック等の欠陥を発生させてしまうこととなる。
【0026】
また、ガラス粉末は、貫通導体用組成物を貫通孔へ充填しやすくし、また貫通導体2の内部でCu粉末間にその焼結を充分に抑制できるように均一に分散させるために、積算50%粒径を3〜5μmとしておくのがよい。
【0027】
貫通導体用組成物の無機成分の配合割合は、主要部としてCu粉末を80〜90重量%、ガラス粉末を10〜20重量%の範囲内にそれぞれ設定し、かつこの2成分から成る主要部を97〜99.5重量%含有し、アルミナ粉末を0.5〜3重量%含有することを要する。
【0028】
貫通導体用組成物の主要部においてガラス粉末が10重量%より少なくなると、Cu粉末同士の焼結抑制に必要なガラス量が不足してしまい、Cu粉末の焼結収縮がガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック基板1)の厚み方向への焼結収縮に追従できなくなって、貫通導体部の凹形状等が生じることとなる。他方、主要部においてガラス粉末が20重量%より多くなると、貫通導体2の抵抗値が高くなる問題を生じさせることとなる。
【0029】
また、アルミナ粉末は、貫通導体用組成物の主要部中に添加したガラス粉末によるガラス成分を貫通導体2の内部に保持する核成分として作用するため、主要部が99.5重量%を超えアルミナ粉末が0.5重量%未満となる場合には、貫通導体2の内部に、ボイドやクラック等の欠陥を有してしまうこととなる。また、主要部が97重量%未満となりアルミナ粉末が3重量%より多くなると、貫通導体2の抵抗値が高くなる問題を生じさせてしまうこととなる。
【0030】
なお、アルミナ粉末は、貫通導体用組成物のガラス粉末を貫通導体2中で充分に保持できるように均一に分散させるために、その積算50%粒径を1〜3μmとしておくのがよい。
【0031】
【実施例】
ガラスセラミック成分として、SiO2−MgO−CaO−Al2O3系ガラス粉末70重量%・Al2O3粉末30重量%を使用した。このガラスセラミック成分100重量部に有機バインダとしてアクリル樹脂12.0重量部・フタル酸系可塑剤5重量部および溶剤としてトルエン30重量部を加え、ボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのガラスセラミックグリーンシートを成形した。
【0032】
また、表1に示すように、Cu粉末・ガラス粉末・アルミナ粉末を各々合計100重量部とした固形分(無機成分)と、エチルセルロース2重量部・ターピネオール溶液14重量部を攪拌脱泡機にて予備混合し、その後、3本ロールで混錬してペーストを作製した。
【0033】
ここで、Cu粉末は、積算50%粒径が1〜9μmの球状タイプのものを使用した。また、ガラス粉末は、SiO2−MgO−CaO−Al2O3系で積算50%粒径が3μmの球状タイプのものを使用した。なお、ガラス粉末の軟化点温度については、組成を調整して変化させている。アルミナ粉末は、積算50%粒径が1.7μmの球状タイプのものを使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
前記ガラスセラミックグリーンシートに、直径200μmの貫通孔を、金型を用いて1000個開孔し、スクリーン印刷で表1中に各実施例ならびに比較例として示した組成比の貫通導体用組成物を用いたCuペーストを充填し、70℃で1時間乾燥した後、4枚を重ねた上で、温度55℃、圧力200kg/cm2の条件で10秒間加圧して一体化した。得られた積層体をアルミナセッターに載置し、100〜700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中で有機物の除去を行ない、次いで、窒素雰囲気中で850℃で1時間焼成した。
【0036】
次に、上述の手順で得られた多層ガラスセラミック基板について評価試験を行なった。
【0037】
この評価試験においては、焼成した各多層ガラスセラミック基板における貫通導体の外観および断面の状態について、貫通導体の凹凸状態および貫通導体の周辺のガラスセラミック基板との隙間やクラックの有無等を、外観については1000箇所を、断面については20箇所を観察して、その不良数を調べた。この結果を表2に示す。
【0038】
なお、評価項目中、「外観/貫通導体凹凸」は、貫通導体の断面でガラスセラミック基板の表面を基準とした凹凸量が10μm以下のときを規格満足と判定して○で示した。また、「隙間/クラック」は、貫通導体と貫通孔あるいは配線導体との間に生じる隙間の有無および貫通導体の周辺のガラスセラミック絶縁基板に生じるクラックの有無を観察した結果を示した。さらに、「比抵抗値」は、貫通導体の1個当りの抵抗を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表1および表2の結果より、本発明の実施例1〜8では、貫通導体の比抵抗は低く、凹凸状態が良好で、隙間/クラックの発生もなく、優れた特性を備えた貫通導体を有するガラスセラミック基板が得られていることが分かる。
【0041】
これに対し、比較例1では、Cu粉末の積算50%径が小さいため、貫通導体の凹形状や隙間/クラックが発生している。また、比較例2では、Cu粉末の積算50%径が大きく、焼結が完了せずに比抵抗値が増大し、貫通導体の凸形状や隙間/クラックが発生していた。
【0042】
比較例3,4にてアルミナ粉末を添加せずに貫通導体用組成物を調製した場合には、ガラス軟化点に関係なく、焼成後に貫通導体の凹形状や隙間/クラックが発生していた。これは、アルミナ粉末が貫通導体用組成物中のガラス成分を保持する核成分の働きをしているために、アルミナ粉末が無いと貫通導体の内部のガラス成分が外部に流出してしまい、貫通導体とガラスセラミック基板との間に隙間が発生するためである。
【0043】
比較例5では、アルミナ粉末の添加量が貫通導体用組成物中のガラス成分を保持する核成分としての量が不十分なため、ガラス成分が貫通導体の外部に流出してしまい、ガラスセラミックグリーンシートの厚み方向の焼結収縮に追従できずに、貫通導体とガラスセラミック基板との間に隙間が発生していた。
【0044】
比較例6では、アルミナ粉末の添加量が過剰になり、貫通導体およびその周辺のガラスセラミック基板に欠陥は発生しないが、貫通導体の焼結が不十分となり、比抵抗値が大幅に増加していた。
【0045】
比較例7では、ガラス粉末の添加量が貫通導体用組成物中のCu粉末の焼結を抑制するのに不十分なため、Cu粉末の焼結が促進し、ガラスセラミックグリーンシートの厚み方向の焼結収縮が開始される温度では既にCu粉末同士が接触しネックを形成して、ガラスセラミックグリーンシートの厚み方向への収縮に追従できずに貫通導体とガラスセラミック基板との間に隙間が発生していた。
【0046】
比較例8では、ガラス粉末の添加量が多過ぎるため、貫通導体および貫通導体の周辺のガラスセラミック基板に欠陥は発生しなかったが、貫通導体の焼結が不十分となり、比抵抗値が大幅に増加してしまった。
【0047】
比較例9では、ガラス粉末の軟化点がガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック基板)の焼結温度より低いために、ガラス粉末がガラスセラミックグリーンシートの焼結収縮開始前に軟化してしまい、Cu粉末の焼結を充分抑制できずに、貫通導体の周囲に隙間が発生してしまった。
【0048】
比較例10では、ガラス粉末の軟化点が高過ぎるため、ガラス粉末が完全には軟化できずに貫通導体の内部にボイドやクラック等の欠陥を有しており、さらに貫通導体の焼結が不十分となり、比抵抗値が大幅に増加した。
【0049】
なお、本発明の以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
【0050】
例えば、Cu粉末の形状を充填性を考慮して変更したり、Cu粉末として2種以上の異なる粒径を有するCu粉末を混合して使用してもよい。
【0051】
【発明の効果】
本発明の貫通導体用組成物によれば、ガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック基板)に対しその焼成時の磁器収縮のタイミングに貫通導体用組成物(貫通導体)の焼結収縮を一致させるようにその無機成分の組成が調整されているため、また、アルミナ粉末を核として保持された、軟化点がガラスセラミック基板(ガラスセラミックグリーンシート)の焼結温度より10〜60℃高い温度であるガラス粉末の添加により、Cu粉末同士の焼結をコントロールし、ガラスセラミックグリーンシート(ガラスセラミック基板)の厚み方向への焼結収縮温度範囲で貫通導体用組成物が追従して収縮し、貫通導体の内部に隙間やボイド等を無くし、また貫通導体周辺の絶縁基板へのクラックの発生や貫通導体部の凹凸等の欠陥等を無くすことができ、ガラスセラミック基板の内部に信頼性の高い貫通導体を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の貫通導体用組成物を用いて貫通導体を形成したガラスセラミック基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・ガラスセラミック基板
2・・・貫通導体
3・・・配線導体
4・・・多層ガラスセラミック基板
Claims (1)
- 800〜1100℃で焼成されるガラスセラミック基板内に貫通導体を形成するための貫通導体用組成物であって、無機成分が、積算50%粒径が3〜7μmで積算10%粒径が2μm以上のCu粉末80〜90重量%および軟化点が前記ガラスセラミック基板の焼結温度より10〜60℃高いガラス粉末10〜20重量%から成る主要部が97〜99.5重量%と、アルミナ粉末が0.5〜3重量%とから成ることを特徴とする貫通導体用組成物。
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