JP4762564B2 - 導体組成物及びこれを用いた配線基板とその製造方法 - Google Patents
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この低温焼成配線基板の代表的なものとして、ガラスセラミックス絶縁基板に該基板との同時焼成で得られる銅、金、銀などの低抵抗金属を主体とするメタライズ配線層が施された配線基板が広く用いられている。
たとえば特許文献1では、導体金属にそれより高融点の材料(Ni)からなる粒子を分散添加することによりセラミックグリーンシートとの焼成時の収縮差をなくす手法が開示されている。
また特許文献2の手法では、焼成条件のわずかなズレにより、NiOがCu中に拡散し、抵抗を上昇させるだけでなく、Cuとセラミックの接合強度までもが低下するという問題が生じる。
本発明の導体組成物は銅金属中にNiをNi2SiO4の形で含有することが構成上の顕著な特徴である。
これにより、焼成時にセラミックと銅との界面付近にNi2SiO4層が形成され、両者の整合性を良好にせしめ、接着強度が向上すると共に、Ni単独で添加する場合に比べて、Cu中へのNiの拡散を抑制できるため合金化による抵抗上昇を防ぎ、低抵抗化が達成できる。
Ni2SiO4量を1重量部以上にすることにより、導体層の接着強度を向上することが出来、またNi2SiO4量を20重量部以下にすることにより、CuとNiの合金化を防ぎ、低抵抗化が達成できる。
導体層中にNi2SiO4結晶層が形成されることにより、セラミックと銅との接着強度が向上する。
従って、本発明の導体組成物を用いて導体層を形成してなる配線基板は低抵抗であるだけでなく導体層と絶縁層との密着性が良好で断線等の故障が殆ど無い。
又、上記の配線基板は、セラミック粉末と有機樹脂バインダーとを含有するセラミックグリーンシートの表面及び/又は内部に上記本発明の導体組成物を塗布し導体層を形成する工程と、前記グリーンシートを積層して積層体を作製する工程と、積層体を焼成する工程からなる本発明の方法により容易且つ確実に製造することが出来る。
本発明は、導体組成物、該組成物で導体層を形成した配線基板、該配線基板の製造方法の各発明からなる。
本発明に係る導体組成物は、ペースト状組成物として提供されるが、銅を主成分とし、有機樹脂バインダーと有機溶剤とを含む組成物(ペースト)中にNi2SiO4を含有することを特徴とするものである。
前記組成物(ペースト)中に於けるNi2SiO4の含有量は、銅100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。
Ni2SiO4量を1重量部以上にすることにより、配線基板形成の際の導体層と絶縁層との接着強度を向上させることが出来、又、20重量部以下にすることにより、組成物中のCuとNiの合金化を防ぎ、導体層の低抵抗化が達成できる。
前記Ni2SiO4は平均粒径が0.1〜2μmの粉末として添加することが望ましい。
これはメタライズ配線層の焼結挙動をガラスセラミック基板の焼結挙動に近似させるとともに、印刷精度の向上をはかるためである。
有機樹脂バインダーは無機物成分100重量部に対して1〜10重量部、有機溶剤成分は5〜30重量部の割合で混合されることが望ましい。
次に上記導体組成物を用いて導体層を形成した本発明の配線基板について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では複数のガラスセラミック絶縁層からなる多層配線基板につて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、当然、単層の配線基板やガラスセラミック以外のセラミック、例えば、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、BaSn(BO3)2、LMS(Al2O3・CaO-SiO2・MgO・B2O3)等のセラミック絶縁層よりなる配線基板も本発明に包含される。
また、絶縁基板2内には、絶縁層2a〜2dの厚み方向を貫くように直径80〜200μm程度のビアホール導体4が形成され、メタライズ配線層3と電気的に接続している。
具体的には、用いられるガラス成分としては、非晶質ガラスあるいは焼成後にコージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウィレマイト、ドロマイト、リチウムシリケートやその置換誘導体の結晶を析出する結晶化ガラス等によって構成される。
強度を向上させる上では結晶化ガラスが望ましい。
ガラスを構成する成分としては、SiO2以外にLi2O、K2O、Na2Oなどのアルカリ金属酸化物、CaO、MgOなどのアルカリ土類金属酸化物、Al2O3、P2O5、ZnO、B2O3、PbOを含有するホウ珪酸ガラスなどが例示できる。
なお、アルカリ金属を含有しない無アルカリガラスを用いた場合には、絶縁基板の絶縁性を向上させることができる。
具体的なフィラー成分としては、クオーツ、クリストバライト、石英、コランダム(α−アルミナ)、ムライト、コージェライト、フォルステライトなどが例示できる。
導体層にNi2SiO4層が形成されることにより、これが銅とセラミックの中間層の役割を果たし、導体層の接着強度を高めることが出来る。
またビアホール導体4は、上記のメタライズ配線層3と同様な成分からなる導体が充填されていることが望ましい。
なお、図示していないが、必要に応じて、配線基板の表面には、更に、珪化タンタル、珪化モリブデンなどの厚膜抵抗体膜や配線保護膜などを形成しても構わない。
本発明における表面のメタライズ配線層の表面には、半田ぬれ性向上のために、Ni、Auなどの金属からなるメッキ層などを適宜形成してもよい。
尚、本発明の配線基板に於けるCu中にNi2SiO4結晶が存在する上記導体層は、それをX線回折分析した場合、Ni2SiO4/Cuピーク比が0.01〜0.2以下であることが好ましい。
次に、本発明の配線基板を作製する方法について説明する。
まず、上述したようなガラス成分、又はガラス成分とフィラーとを混合してガラスセラミック組成物を調製し、その混合物に、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェーノール系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン等の有機樹脂バインダー、必要に応じて、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、炭化水素・アルコール混合系溶剤等の溶媒、フタル酸エステル等の可塑剤を添加、混合した後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法、押出形成、射出成形、鋳込み成形、テープ成形などによりシート状に成形してグリーンシートを作製する。
即ち、前記ガラスセラミックグリーンシート上に、上記導体ペーストを用いてスクリーン印刷法、グラビア印刷法などそれ自体公知の印刷手法で配線層の厚みが5〜25μmとなるように配線パターンを印刷塗布する。
また、ビアホール導体を形成するには、グリーンシートにレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより直径50〜200μmの貫通孔を形成し、その内部に上述の導体ペーストを充填する。
そして、配線パターンやビアホール導体が形成されたグリーンシートを積層圧着して積層体を形成する。
その場合、焼き付け処理は、窒素雰囲気中で600〜1000℃の温度で処理することができる。
同時に導体抵抗を評価するサンプルとして、焼成後の形状が幅100μm、長さ50mm、厚さ15μmとなる配線パターンに形成し、その下部にグリーンシート4枚を加圧積層した。
なお、良否の判断としては、最大荷重が2kg/2mm□を超える場合を良品とした。
なお、良否の判断としては、抵抗率が4μΩ・cm以下を良品とした。
またCuとのピーク強度比をNi 2 SiO 4 /Cuの形式で算出した。
上記の評価結果を表1に纏めて示した。
しかるに、本発明の試料No.2〜8ではいずれも良好な2kg/2mm□以上の接着強度を示し、かつ4μΩ・cm以下の低い導体抵抗率を保持している。
2 絶縁基板
3 メタライズ配線層
4 ビアホール導体
5 電子部品
Claims (5)
- 銅を主成分とし、有機樹脂バインダーと有機溶剤を含む導体組成物であって、前記導体組成物中にさらにNi2SiO4を含有することを特徴とする導体組成物。
- 前記Ni2SiO4の含有量が、銅100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする請求項1記載の導体組成物。
- 少なくとも一層のセラミックからなる絶縁層と前記絶縁層の表面又は内部のうち少なくともいずれかに形成された銅を主成分とする導体層とからなる配線基板において、前記導体層にNi2SiO4結晶層が形成されていることを特徴とする配線基板。
- 前記導体層にX線回折を行った際、Ni2SiO4/Cuピーク比が0.01〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の配線基板。
- セラミック粉末と有機樹脂バインダーとを含有するセラミックグリーンシート面に銅を主成分とする導体組成物を塗布して導体層を形成する工程と、前記グリーンシートを積層して積層体を作製する工程と、該積層体を焼成する工程とを具備してなる配線基板の製造方法において、前記導体組成物として請求項1又は2に記載の導体組成物を用いることを特徴とする配線基板の製造方法。
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