JP4646362B2 - 導体組成物およびこれを用いた配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスセラミックスからなる単板又は積層構造の配線基板に、該基板と同時焼成して形成されたCuを主成分とするメタライズ配線層を形成してなる配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、配線基板においては、高周波回路の対応性、高密度化、高速化が要求され、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線層の低抵抗化が可能な低温焼成配線基板が一層注目されている。この低温焼成配線基板は、ガラスセラミックスからなる絶縁基板に、該基板と同時焼成して形成された銅、金、銀などの低抵抗金属を主体とするメタライズ配線層を施した配線基板が知られている。このような配線基板は、ガラスセラミック組成物からなるシート状成形体に上記低抵抗金属粉末を含む導体ペーストを印刷した後、800〜1000℃で同時に焼成して作製される。
【0003】
また、この低温焼成配線基板は、配線層の低抵抗化、絶縁基板の低誘電率、低誘電損失化によって、半導体素子を収納する半導体素子収納用パッケージ等の配線基板、携帯電話やパーソナルハンディホンシステム、各種衛星通信用に使用される高周波用多層配線基板などのあらゆる分野への応用が進められている。
【0004】
低温焼成配線基板に用いる低抵抗の配線層としては、金系ではコスト的に高く、銀系ではマイグレーションが発生する等の問題から用途などが限定されるのに対して、銅系材料では焼成処理を窒素雰囲気で行う必要があるものの、配線基板の高密度化、配線基板中の回路の高周波化の要求に充分応えることが出来ることから銅系材料が配線層を形成するための材料の主流となっている。
【0005】
ガラスセラミックスからなる絶縁基板の表面及び/または内部にCuを主成分とするメタライズ配線層を形成する具体的方法としては、ガラスセラミック原料粉末、有機バインダーに溶剤を添加して調製したスラリーをドクターブレード法などによってシート状に形成し、得られたグリーンシートに貫通孔を打ち抜き加工し、該貫通孔にCuを主成分とする導体ペーストを充填してビアホール導体を形成し、同時にグリーンシート上にCuを主成分とする導体ペーストを配線パターン状にスクリーン印刷法などで印刷形成し、配線パターンやビアホール導体が形成されたグリーンシートを複数枚加圧積層し、800〜1000℃で焼成することにより作製されている。
【0006】
また、前記Cuを主成分とする導体ペーストは、その用途により適宜Ni等との合金あるいは混合物にて形成されている。(特開平11−66952号、特開平6−10811号、特開平10−308120号、特開平10−64332号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Cuを主成分とする導体に対して前述のようにNiを添加すると、焼成過程中にCuとNiが合金化し導体抵抗が上昇したり、添加したNiが磁器中に過剰に拡散し磁器の誘電率が上昇することによる電気的特性の劣化が生じるという課題があった。
【0008】
本発明は、前記課題を解消せんとしてなされたもので、その目的は、Niを含有する銅配線層とガラスセラミックスからなる絶縁基板を同時焼成しても、配線層の導体抵抗を上昇させることなく、しかもガラスセラミックスの電気特性を劣化させずに、かつ配線層とガラスセラミックスとの濡れ性を向上せしめ接着強度の高い配線基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に対して検討を重ねた結果、ガラスセラミックスからなる絶縁基板に対して形成するCuを主成分とするメタライズ配線層中に、Niの金属または酸化物(Ni、NiO)とともに、所定量のCuOを含有せしめることにより、メタライズ配線層中のCuとNiの合金化を阻害し、配線層の導体抵抗を上昇させることなく、かつ磁器中への拡散を抑制しガラスセラミックスの電気特性の劣化を防止し、しかも配線層とガラスセラミックスとの濡れ性を良好にし接着強度を大きくできることを知見した。
【0011】
また、本発明の配線基板は、ガラスセラミックスからなる絶縁基板の表面及び/または内部にCuを主成分とするメタライズ配線層を被着形成してなり、前記絶縁基板と前記メタライズ配線層とが同時焼成された配線基板において、前記メタライズ配線層が、Cu粉末100重量部に対して、Ni粉末またはNiO粉末をNiO換算で1〜10重量部、さらにCuO粉末を0.1〜3重量部の割合で含有する導体組成物を焼成することにより得られ、前記メタライズ配線層の直下に2〜20μmの領域でNiの拡散層を形成してなることを特徴とする。
【0012】
本発明によればCuを主成分とするメタライズ配線層にNiを添加することによりCuをガラスセラミックスの濡れ性が向上し接着強度が向上する。また、CuOを添加することによりCuOがNiと結びつき、更にこれがメタライズ配線層の直下に集結し、いわゆる拡散層を形成する。これによりNiとCuの合金化を抑制し導体抵抗の上昇を防止し、更にNiの磁器中への過剰な拡散を防止しガラスセラミックスの誘電率、誘電損失の上昇を抑制し電気的特性の劣化を防ぐことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の配線基板の一実施態様について図面に基づいて説明する。なお、説明では複数のガラスセラミック絶縁層からなる多層配線基板を用いて説明する。
【0014】
本発明の配線基板1によれば、絶縁基板2は、複数のガラスセラミック絶縁層2a〜2dを積層した積層体から構成され、その絶縁層2a〜2d間および絶縁基板2表面には、厚みが5〜25μm程度のCuを主成分とするメタライズ配線層3が被着形成されている。また、絶縁基板2内には、絶縁層2a〜2dの厚み方向を貫くように形成された直径が80〜200μm程度のビアホール導体4が形成され、メタライズ配線層3と電気的に接続している。
【0015】
絶縁基板2は、少なくともSiO2を含有するガラス、あるいはSiO2を含有するガラスとフィラーとの複合材料からなるガラスセラミックスからなる。具体的には、用いられるガラス成分としては、少なくともSiO2を含む複数の金属酸化物から構成される非晶質ガラスあるいは焼成後にコージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウィレマイト、ドロマイト、リチウムシリケートやその置換誘導体の結晶を析出する結晶化ガラス等によって構成される。強度を向上させる上では結晶化ガラスが望ましい。
【0016】
ガラスを構成する成分としては、SiO2以外にLi2O、K2O、Na2Oなどのアルカリ金属酸化物、CaO、MgOなどのアルカリ土類金属酸化物、Al2O3、P2O5、ZnO、B2O3、PbOを含有するホウ珪酸ガラスなどが例示できる。また、ガラスに対してフィラー成分を添加することによって強度の向上や焼成温度の制御を行うことができる。具体的なフィラー成分としては、クオーツ、クリストバライト、石英、コランダム(α−アルミナ)、ムライト、コージェライト、フォルステライトなどが例示できる。ガラス成分とフィラー成分とは、ガラス成分が30〜70体積%、フィラー成分が70〜30体積%からなることが適切である。
【0017】
メタライズ配線層3は、Cuを主成分とするものであるが、本発明によればCu100重量部に対して、NiをNiO換算で1〜10重量部、CuOを0.1〜3重量部の割合で含有してなる導体組成物を焼成してなるものである。
【0018】
この導体組成物において、Niを上記の比率にしたのは1重量部未満の場合、メタライズ配線層からガラスセラミック基板へのNiの拡散量が少なくなり、メタライズ配線層とガラスセラミック基板の接着強度が弱くなるためであり、逆に10重量部を超える場合、CuとNiの合金化が進み導体抵抗が大きくなるためである。Ni量は、特に3〜7重量部が望ましい。
【0019】
また、CuOの量を上記の割合にしたのは0.1重量部未満の場合、メタライズ中に添加したNiが磁器中に過剰に拡散したり、その結果ガラスセラミックスの誘電率、誘電損失が劣化し電気的特性が劣化するためである。さらにはCuとNiの合金化がすすみ導体抵抗の上昇も起きる。また3重量部を超える場合、Cu自体の焼結を阻害しメタライズ配線層とガラスセラミック基板の接着強度が低下するとともに、導体抵抗が増大するためである。CuOの量は0.5〜1.5重量部が特に望ましい。
【0020】
上記の導体組成物を用いてメタライズ配線層を形成した場合、焼成後のメタライズ配線層の直下にはNiの拡散層が形成される。Niは、メタライズ金属層3中において、金属Niまたは酸化物(NiO)の形態で存在される。
【0021】
メタライズ配線層の直下のNiの拡散層は厚みが2〜20μm、特に5〜10μmであることが適当である。この拡散層はメタライズ配線層の絶縁基板への密着性を高める大きな要素であって、この拡散層の厚みが2μmよりも薄いと、メタライズ配線層の絶縁基板への9密着性が低下するためであり、20μmよりも厚いと絶縁基板の電気的特性を劣化させてしまうためである。
【0022】
また、多層配線基板の表面のメタライズ配線層3は、ICチップなどの各種電子部品5を搭載するためのパッドとして、あるいはシールド用導体膜として、さらには、外部回路と接続するための電極パッドとしても用いられ、各種電子部品5が配線層3に半田や導電性接着剤などを介して接合される。またビアホール導体4は、上記のメタライズ配線層3と同様な成分からなる導体が充填されていることが望ましい。なお、図示していないが、必要に応じて、配線基板の表面には、更に、珪化タンタル、珪化モリブデンなどの厚膜抵抗体膜や配線保護膜などを形成しても構わない。
【0023】
また、本発明における表面のメタライズ配線層の表面には、半田ぬれ性向上のために、Ni、Auなどの金属からなるメッキ層などを適宜形成してもよい。
【0024】
次に、本発明の配線基板を作製する方法について説明する。まず、上述したようなガラス成分、又はガラス成分とフィラーとを混合してガラスセラミック組成物を調製し、その混合物に有機バインダーなどを加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形してグリーンシートを作製する。
【0025】
次に、このグリーンシートの表面に導体ペーストを印刷する。用いる導体ペースト中の主成分となるCu成分としては、平均粒径が0.5〜10μm、好ましくは3〜5μmの球状のCu粉末であることが望ましい。これはメタライズ配線層の焼結挙動をガラスセラミック基板の焼結挙動を近似させるとともに、印刷精度の向上をはかるためである。
【0026】
本発明によれば、この導体ペースト中に、前述した通り、Cu100重量部に対して、NiをNiO換算で1〜10重量部、特に3〜7重量部、さらにCuOを0.1〜3重量部、特に0.5〜1.5重量部の割合で配合する。Ni、NiO、CuOはいずれも平均粒径が0.1〜2μmの粉末として添加することが望ましい。また導体ペースト中には無機物成分以外に、アクリル樹脂などからなる有機バインダーと、α−テルピネオール、ジブチルフタレート、ブチルカルビトールなどの有機溶剤とを均質混合して形成される。有機バインダーは無機物成分100重量部に対して1〜10重量部、有機溶剤成分は5〜30重量部の割合で混合されることが望ましい。
【0027】
次に、前記ガラスセラミックグリーンシート上に、上述の導体ペーストを用いてスクリーン印刷法などにより配線パターン状に印刷する。また、ビアホール導体を形成するには、グリーンシートにレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより直径50〜200μmの貫通孔を形成し、その内部に上述の導体ペーストを充填する。そして、配線パターンやビアホール導体が形成されたグリーンシートを積層圧着して積層体を形成する。
【0028】
その後、この積層体を400〜800℃の窒素雰囲気中あるいは水蒸気含有窒素雰囲気中で加熱処理してグリーンシート内やペースト中の有機成分を分解除去した後、800〜1000℃の窒素雰囲気中あるいは水蒸気含有窒素雰囲気中で同時焼成することによりメタライズ配線層及びビアホール導体を具備する多層配線基板を作製することができる。
【0029】
また、本発明の配線基板によれば、配線基板構造が積層構造であっても、内部のメタライズ配線層のみを絶縁基板と同時に焼成処理し、表面のメタライズ配線層をすでに焼成された配線基板表面に、内部配線層と同様、CuとNi、CuOからなる導体ペーストを焼き付け処理して形成しても構わない。その場合、焼き付け処理は、窒素雰囲気中で600〜1000℃の温度で処理することができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
重量比率で74%SiO2、14%Li2O、4%Al2O3、2%P2O5、2%K2O、2%ZnO、2%Na2O(屈伏点480℃)の組成のガラス40体積%に対してフィラー成分としてSiO2(クオーツ)を30体積%、フォルステライトを30体積%混合した絶縁基板用のグリーンシートに、分子量3×105のアクリル系バインダーと可塑剤、分散剤、溶剤を加えて混合してスラリーを調製し、かかるスラリーをドクターブレード法により厚さ平均200μmのグリーンシートに成形した。
【0031】
次に、平均粒径が4μmのCu粉末100重量部に対して、平均粒径が1μmのNi粉末、NiO粉末、平均粒径が1μmのCuO粉末をNiO換算およびCuO換算でそれぞれ表1に示す割合で秤量し、これら無機物成分100重量部に対して有機バインダーとしてアクリル樹脂を2重量部、有機溶剤としてα−テルピネオールを15重量部添加混練し、導体ペーストを調製した。
【0032】
かくして得られた導体ペーストを前記ガラスセラミックグリーンシート上に接着強度を評価するサンプルとして、焼成後の形状が2mm角、厚さ約15μmとなる銅配線用パターン状にスクリーン印刷し、その下部にグリーンシート4枚を加圧積層した。同時に導体抵抗を評価するサンプルとして焼成後の形状が幅100μm、長さ50mm、厚さ15μmとなる配線パターンを形成し、その下部にグリーンシート4枚を加圧積層した。
【0033】
次いで、この未焼成状態の配線パターンが形成された積層体を、有機バインダーなどの有機成分を分解除去するために、水蒸気含有窒素雰囲気中で700℃の温度で3時間保持して脱脂した後、窒素雰囲気中で950℃に昇温して1時間保持し配線基板を作製した。
【0034】
得られた配線基板のうち、2mm角の銅配線層に厚さ1μmのNiメッキを行い、その上に厚さ0.1μmのAuメッキを施した後、直径0.8mmの錫メッキ銅線を該メッキ被覆層上に基板と平行に半田付けし、該錫メッキ銅線を基板に対して垂直方向に曲げ、該錫メッキ導線を10mm/minの引っ張り速度で垂直方向に引っ張り、銅配線層が破断したときの最大荷重を銅配線層の接着強度として評価した。なお、良否の判断としては、最大荷重が2kg/2mm□を超える場合を良品とした。
【0035】
次に、銅配線層の導体抵抗の評価については、幅100μm、長さ50mmの銅配線層の抵抗をデジタルマルチメーターにて測定し、銅配線層の実際の幅、長さを光学顕微鏡にて測定した後、断面を金属顕微鏡により測定し、得られた結果から抵抗率を算出した。なお、良否の判断としては、抵抗率が6μΩ・cm以下を良品とした。
【0036】
さらに、メタライズ配線層の直下におけるNiの拡散層の厚みを測定した。測定は、強度評価用の2mm□のパターンでEPMA(WDS)を用いて加速電圧15KV、プローブ電流2×10-7Aの条件にて、Niのカウント数が100カウント以上のエリアを拡散層として定義して測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、試料No.1、2のようにNiの含有量が1重量部未満の場合、メタライズ配線層中のCuとガラスセラミック基板との濡れ性が低下し接着強度が低下し、試料No.8のようにNiの含有量が10重量部を超えるとCuとNiの合金化が進み導体抵抗が上昇した。また、試料No.9のようにCuOの含有量が0.1重量部未満の場合、CuとNiの合金化が進み導体抵抗が上昇し、さらにガラセラミックスの電気的特性も劣化した。試料No.13のようにCuOの含有量が3重量部を超えるとCuの焼結を阻害し接着強度が低下し、更に導体抵抗も上昇した。
【0039】
しかるに、本発明の試料No.3〜7、10〜12、14ではいずれも良好な2kg/2mm□以上の接着強度を示し、かつ6μΩ・cm以下の低い導体抵抗率を保持している。
【0040】
なお、上述の実施例では、基板構造が積層体で説明したが、単状のガラスセラミックシート上に上述のCuを主成分とするメタライズペーストを用いて、所定の配線パターンを形成し、グリーンシートと所定の配線パターンを一体的に焼成した配線基板でも構わない。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明の配線基板は、銅メタライズ配線層中にNiとともにCuOを含有せしめることにより、ガラスセラミック基板との濡れ性を良好にし、接着強度を高め、磁器中へのNiの過剰な拡散を抑制することができ電気特性の優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の概略断面図である。
【符号の説明】
1 配線基板
2 絶縁基板
3 メタライズ配線層
4 ビアホール導体
5 電子部品
Claims (1)
- ガラスセラミックスからなる絶縁基板の表面及び/または内部にCuを主成分とするメタライズ配線層を被着形成してなり、前記絶縁基板と前記メタライズ配線層とが同時焼成された配線基板において、前記メタライズ配線層が、Cu粉末100重量部に対して、Ni粉末またはNiO粉末をNiO換算で1〜10重量部、CuO粉末を0.1〜3重量部の割合で含有する導体組成物を焼成することにより得られ、前記メタライズ配線層の直下に2〜20μmの領域でNiの拡散層を形成してなることを特徴とする配線基板。
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