JP3842063B2 - 金めっき液の再生処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金めっき液、特に電子部品の接続端子部に使われる金めっき液、の再生処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金めっきは、金皮膜の優れた耐食性、耐熱性、機械特性、電気特性等の理由で、電子部品の接続端子表面を保護する用途に広く用いられており、電子部品の信頼性を保証するには欠かせない材料となっている。
【0003】
近年、電子部品が高密度化、高速化へと進むにつれ、金めっきの信頼性もますます高いものが要求されるようになっている。特に安定した電流効率および使用可能な電流密度が安定している金めっき液への要求が高まっている。
【0004】
ここで、電流効率とは、一定の電流を流して電気めっきを行う時、めっき液からどれだけの重量の金が皮膜として析出するかを、析出する金重量で表現したものである。電流効率が低下すると一定量の電流を流しても所定の金めっき膜厚を得ることが困難になる。電子部品等の金めっき皮膜が薄くなると、耐食性、耐熱性、機械特性などが不足し、結果として電子部品等が規格に合格しないケースが増えてくることから、長時間使用しても電流効率の低下しない金めっき液が求められている。また、電流密度とは、めっき対象物(例えば、基板等)の一定面積あたりに流せる電流をA/dm にて表示したものである。めっき時の電流密度が許容量以上であると“焼け”といわれる現象が発生する。“焼け”が起きためっき表面は皮膜が均一でなくめっきの色調も赤みがかかったものになって、めっきの表面の特性が低下し、不合格品となる。従って、使用電流密度範囲が狭いめっき液は、焼けによる製品の歩留まりのい低下をもたらすことが多い。このことから、焼けを起こさないようにめっきを行うためには、電流密度を下げなくてはならず、所定のめっき厚を得るのに時間がかかり生産性が低くなる。
【0005】
金めっきの工場では、一般に、めっき反応に伴って消費される金塩の濃度を測定し、減少分を補い、同時にめっき対象物(例えば、基板等)に付着して浴外に持ち出される他の成分を補充する作業が定期的に行われている。更にめっき液のpH、比重等も調整されることも行われている。しかし、これだけでは金めっき液を長時間安定して使用することは難しい。
【0006】
この理由は、めっき作業中にめっき液中に有害成分が溶解ないし生成するためと考えられている。すなわち、めっき作業中、陰極で金イオンが還元され金が析出している時に、同時に陽極では多様な酸化反応が起こっており、その反応生成物がめっき液に混入したり、また金めっきされる端子表面は銅、ニッケル等の金属で覆われている場合にはこれらの金属が溶解してめっき液に混入することが考えられる。更に、電子部品の接続端子部の周辺は、レジスト樹脂で覆われていることが多く、レジスト樹脂がめっき液に長時間浸されたときには、樹脂中の低分子有機化合物が浴中に溶出すること可能性も考えられる。
【0007】
これらの溶出成分はいずれも、めっき浴を建浴した時にはメッキ液に含まれていない成分であって、長時間の運転に伴い次第に蓄積してゆく成分である。これらの蓄積成分は、複雑であり、めっき条件、めっき基板の材質等により変わるものであるが、代表的な金属イオンとしては、銅イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、クロムイオンなどが挙げられる。有機化合物についてはほとんど不明である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来、これらの妨害成分を除去すべく様々な吸着剤およびこれを利用した除去法が試みられてきた。しかし、従来の方法では、蓄積された妨害成分だけでなく、必要なめっき液成分も吸着されることが多く、本発明者らが知る限りでは、満足すべき結果は得られなかった。例えば、銅、鉄、クロム等を除去すべくイオン交換樹脂で処理すると、めっきの主成分の金や、金めっきに必要なもしくは有利に作用する成分も同時に吸着されてしまうという問題点があった。また、活性炭処理は、有機化合物の吸着には有効であるが、妨害金属イオンの除去が不十分という問題点があった。
【0009】
メッキ液中の構成成分には影響なく、生成した妨害成分を選択的に吸着除去する技術は金めっきに関わる人々にとっては、永年待望されていたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の目的は、使用された金めっき液から有機または無機の妨害成分を除去する金めっき液の再生処理方法を提供することである。
【0011】
第二の目的は、妨害物除去の際、金めっき液中の主要成分、すなわち金塩、伝導塩、錯化剤、結晶調節剤などの吸着はめっき作業に影響がない範囲内に抑えることである。特に高価な金塩の吸着は絶対に避けねばならない項目であり、微量添加されている結晶調節剤の吸着も起きてはならない。
【0012】
第三の目的は、再生された金めっき液から析出した金皮膜の結晶構造が再生前のものと実質的に変わらないことである。
【0013】
本発明者らは、各種のイオン交換樹脂、イオン交換膜、吸収剤、活性炭などを用いて使用済みの金メッキ液を処理し、再度その特性を測定しその効果を調べたところ、ある種のキレート樹脂を用いることによって特異的に本目的が達成されることを見出して本発明に到達した。
【0014】
したがって、請求項1に記載の本発明による金めっき液の再生処理方法は、シアン化金を金源とする、めっきに使用された、金塩、伝導塩、錯化剤およびタリウムを含有する金めっき液に、イミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂を接触させることによって銅イオンを除去すること、を特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載の本発明による金めっき液の再生処理方法は、めっきに使用されて電流効率が低下した、金塩、伝導塩、錯化剤およびタリウムまたは鉛を含有する金めっき液にイミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂を接触させることによって、金めっき液の電流効率を回復させること、を特徴とするものである。
【0018】
請求項に記載の本発明による金めっき液の再生処理方法は、キレート樹脂が、イミノジ酢酸型の配位基を有し、かつ錯体生成定数がめっき液中に含まれる錯化剤よりも大きいものであること、を特徴とするものである。
【0019】
請求項に記載の本発明による金めっき液の再生処理方法は、めっきに使用された金めっき液にキレート樹脂を分散させた後、このキレート樹脂を金めっき液から分離すること、を特徴とするものである。
【0020】
請求項に記載の本発明による金めっき液の再生処理方法は、めっきに使用された金めっき液の一部を抜き出して、これをキレート樹脂と接触させて再生処理したのち、これを前記めっきに使用された金めっき液に導入すること、を特徴とするものである
【0021】
【発明の実施の形態】
<金めっき液>
本発明は、各種の金めっき液、例えば装飾めっきならびに工業用めっき等に用いられているもの、を対象とするものである。従って、本発明が対象とする金めっき液としては、金塩、伝導塩、錯化剤および結晶調節剤を必須成分として含有する金めっき溶を例示することができる。上記必須成分からなる金めっき液は、本発明において代表的かつ好ましいものものである。なお、本発明で対象とする金めっき液は、上記の必須成分の他に、必要に応じて各種の任意成分(例えば、触媒、緩衝剤、pH調節剤、酸化剤、還元剤、イオン封鎖剤、沈殿防止剤、界面活性剤、光沢剤、物性調節剤、分散剤などを)を包含することができる。
【0022】
・金塩
必須成分である金塩としては、シアン化第一金カリウム、シアン化第二金カリウムおよびこれらの混合物を例示することができる。本発明で特に好ましいものは、シアン化第一金カリウムである。これらの金塩のめっき液中の濃度は、一般的には0.1g/Lから100g/Lの範囲、好ましくは0.2g/Lから30g/Lの範囲、である。
【0023】
・伝導塩
伝導塩としては、(イ)アジピン酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、コハク酸、酢酸、乳酸、マロン酸、蓚酸、酒石酸等の有機カルボン酸およびその塩(好ましくはカリウム塩)などに代表される有機化合物、(ロ)亜硫酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、硝酸塩、リン酸、リン酸塩、硫酸塩、塩酸塩などに代表される無機化合物を例示することができる。本発明で特に好ましいものは、クエン酸、リン酸およびこれらのカリウム塩である。これらの伝導塩のめっき液中の濃度は、一般的には5g/Lから500g/Lの範囲、好ましくは10g/Lから200g/Lの範囲、である。
【0024】
・錯化剤
錯化剤としては、(イ)シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、アンモニア、ヨウ素、フッ化アンモニウム等の無機化合物、(ロ)クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸、シュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプトプロピオン酸、アスコルビン酸、ジメルカプトコハク酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ヒドロキシメチルイミノ2酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ジアミノヒドロキシプロパン4酢酸等のカルボン酸、(ハ)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピペラジン、ヒダントイン、コハク酸イミド、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、フェナントロリン、グリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパン等の窒素化合物、(ニ)アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸等のホスホン酸、および(ホ)チオアセトアミド、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメルカプトプロパノール、ジメルカプトプロパンスルホン酸、スルホサリチル酸、チオグリコール酸、チオカルバジド、チオセミカルバジド、チオ尿素等の硫黄化合物等、を例示することができる。これらの錯化剤のめっき液中の濃度は、一般的には0.1g/Lから100g/Lの範囲、好ましくは1g/Lから50g/Lの範囲、である。
【0025】
・結晶調整剤結晶調整剤としては、(イ)砒素、鉛、タリウム、セレンなどの無機化合物、(ロ)ジピリジル、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、トリエチレンテトラミン、硫酸ヒドラジン、スルファミン酸などの有機化合物を例示することができる。
本発明では、タリウムを用いる。これらの結晶調整剤のめっき液中の濃度は、一般的には1mg/Lから10g/Lの範囲で用いられる。
【0026】
・金めっき液の調製およびその使用
上記の必須成および任意成分からなる金めっき液は、常法に従って調製および使用することができる。例えば、清澄な水(好ましくはイオン交換水)に、所定量の上記必須成分、および必要に応じて任意成分を、同時にあるいは別々に投入し、攪拌して調製することができる。かかる金めっき液は、用途や目的に応じて、pHを酸性、中性またはアルカリ性に調節することができる。
【0027】
金めっき液の使用条件、即ちめっきの条件も、常法を採用することができる。例えば、温度は30℃から90℃の範囲で、電流密度は0.01A/dmから60A/dmの範囲で使用することができる。金塩成分ならびに必要成分を、定期的あるいは連続的に補充すること、およびpH調整、比重調整も、常法に従って行うことができる。
【0028】
このような金めっき液は、上記の通りに、金塩成分ならびに必要成分を補充しかつめっき条件を調整しても、建浴当初は充分であった電流効率あるいは電流密度範囲がめっき液の使用に伴って低下していく現象が観察されるようになるのが普通である。
【0029】
ここで、電流効率とは、一定の電流を流して電気めっきを行う時、めっき液からどれだけの重量の金が皮膜として析出するかを、析出する金重量で表現したものである。電流効率が低下すると一定量の電流を流しても所定の金めっき膜厚を得ることが困難になったり、また所望の膜厚を得るのに多くの時間が必要となる。また、電流密度とは、めっき対象物(例えば、基板等)の一定面積あたりに流せる電流をA/dm にて表示したものである。めっき時の電流密度が許容量以上であると“焼け”といわれる現象が発生する。“焼け”が起きためっき表面は皮膜が均一でなくめっきの色調も赤みがかかったものになって、めっきの表面の特性が低下する。焼けが生じないように電流密度が低い条件でめっきを行うと、所望の膜厚を得るのに多くの時間が必要となる。
【0030】
本発明は、めっきに使用された金めっき液、例えば上記のような、電流効率が低下した金めっき液、あるいは電流密度範囲が縮小した金めっき液、の再生処理方法に関するものである。なお、めっき液の使用による電流効率の低下および電流密度範囲の縮小は同時に観察される場合が多く、そして本発明による再生処理方法によれば電流効率および電流密度範囲の回復が同時にみられる場合が多い。しかし、本発明は、電流効率および電流密度範囲の回復が常に同時に観察される場合のみに限定されるものではなく、両者の片方のみに回復が見られる場合をも包含している。
【0031】
<キレート樹脂>
本発明による金めっき液の再生処理方法において用いられるキレート樹脂の具体例としては、イミノジ酢酸型配位基を有する樹脂を挙げることができる。本発明において特に好ましいキレート樹脂は、上記のイミノジ酢酸型配位基を有する樹脂であり、その中でも特に、セルロース系、フェノール系、アクリル系、エポキシ系、ポバール系、スチレン系、ジビニルベンゼン系ポリマーを母体とし、これにアミノポリカルボン酸を化学的に結合した構造の樹脂が好ましい。ここでのアミノポリカルボン酸としては、エチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ニトリロ3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ジアミノヒドロキシプロパン4酢酸などを例示することができる。
【0032】
キレート樹脂に用いられるポリカルボン酸の選定にあたっては、その錯体生成定数がめっき液に含有されている錯化剤のそれよりも大きなものを選定することが好ましい。キレート樹脂の錯体生成定数がめっき液中の錯化剤の定数よりも大きいことによって満足すべき除去作用を得ることができる。
【0033】
キレート生成定数は、下記式によって求めることができる。
【数1】
Figure 0003842063
ここで、〔MYn−l〕は錯体濃度を、〔M+n〕は金属イオン濃度を、〔Y−l〕は錯化剤濃度を、表す。
【0034】
なお、下記化合物を錯体生成定数に従って示すと次の通りになる。
【0035】
ジヒドロキシエチルグリシン < ヒドロキシエチルイミノ2酢酸 < ニトリロ3酢酸 < ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸 < エチレンジアミン4酢酸 < ジエチレントリアミン5酢酸 < トリエチレンテトラミン6酢酸
キレート樹脂の中には、例えば廃水中から有害物質を除去するための吸着剤として利用されているものもある。しかし、上記のキレート樹脂が、めっき液、それもめっきに使用された金めっき液、の再生処理に適用された場合には、(イ)めっき時の電流効率および(または)電流密度範囲を後記実施例に示されるように著しく回復できること、(ロ)金めっき液の金塩および他の必須成分(即ち、伝導塩、錯化剤および結晶調節剤)の吸着を影響がない範囲内に抑えることができること、かつ(ハ)再生処理された金めっき液から析出した金皮膜の結晶構造は建浴当初のものと実質的に変わらない、という効果が得られたのは全く思いがけなかったことである。
【0036】
<キレート樹脂の接触処理>
使用された金めっき液とキレート樹脂との接触処理は、合目的的な任意の方法によって行うことができる。例えばバッチ法と連続法(カラム法)が採用可能である。具体的には、バッチ法は、めっきに使用された金めっき液にキレート樹脂を分散させた後、このキレート樹脂を金めっき液から分離することによって行うことができ、連続法は、めっきに使用された金めっき液の一部を抜き出して、これをキレート樹脂と接触させて再生処理したのち、これを前記めっきに使用された金めっき液に導入することによって行うことができる。キレート樹脂の使用量は、めっきの種類、運転条件、再生処理の程度に応じ適宜決定することができるが、バッチ法の場合には、再生処理すべきめっき液に対し5g/Lから100g/Lの範囲、好ましくは10g/Lから50g/Lの範囲、のキレート樹脂を、3分間から300分間、好ましくは5分間から60分間、接触させることによって行うことができる。連続法の場合、空間速度(Space Velocity)が1から100、好ましくは3から30、で通液することによって行うことができる。
【0037】
処理時のキレート樹脂の形態、形状ないし大きさも、合目的的な任意のものを採用することができる。例えば紛状、粒状ないし塊状、これらの凝集物、繊維状および布状物を例示することができる。また、必要に応じて適当な担体等にキレート樹脂を付着させたものでも良い。
【0038】
更に、キレート樹脂を繊維状の袋に収納し、この袋をめっき液に浸すことによて、キレート樹脂とめっき液を接触させることも可能である。
【0039】
かくして再生処理された金めっき液は、銅イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、及び有機化合物等の電流効率を低下あるいは電流密度範囲を縮少させる妨害成分は除去されるが、金イオンや結晶調節剤のタリウムイオン等の成分はほとんど吸着されず、再度実用に供することが出来るものである。
【0040】
【実施例】
下記の実施例は、本発明による金めっき液の再生処理方法の好ましい具体例を記載するものである。従って、本発明は、下記実施例に具体的に開示された範囲内のもののみに限定されないことはいうまでもない。
【0041】
下記の実施例おいて採用された評価試験は下記の通りある。
【0042】
・ICP(高周波誘導結合プラズマ)測定:「ICPS−1000」(島津製作所社製)
・電流効率測定:「ガルバノスタット HA−151」(北斗電工社製)
・電流密度範囲測定:「ガルバノスタット HA−151」(北斗電工社製)
・X線回折測定:「JDX−8030」(日本電子社製)
・SEM(走査型電子顕微鏡)測定:「S−800」(日立製作所社製)
・金イオン濃度測定:「ICPS−1000」(島津製作所社製)
・銅イオン濃度測定:「ICPS−1000」(島津製作所社製)
・タリウムイオン濃度測定:「ICPS−1000」(島津製作所社製)
・鉛イオン濃度測定:「ICPS−1000」(島津製作所社製)
【0043】
<実施例1>
下記の組成の金めっき液を用意した。
シアン化第一金カリウム 8g/L
クエン酸カリウム 150g/L
リン酸カリウム 30g/L
硫酸アンモニウム 50g/L
タリウム 8mg/L
このめっき液を用いて、5cm角の銅基板上にpH6.0、電流密度0.2A/dm、めっき温度65℃の条件で金めっきのランニング試験を行った。金塩および上記めっき液成分の補充は0.1ターンごとに行い、計1.5ターンのランニングを終了した。
【0044】
このめっき液にセルロース系イミノジ酢酸型キレート樹脂(キレスト社製、「ICP−S」)10g/Lを添加し、30分、72時間と時間を変えて攪拌後、濾過し、ICP測定、電流効率測定およびX線回折測定を行った。
【0045】
表1は、キレート樹脂との接触処理前後のめっき液の金属成分の分析結果を示すものである。キレート樹脂との接触処理後では、金イオンおよびタリウムイオンはほとんど残っているが、銅イオンは大部分除去されていることがわかる。
表2は、ランニング前後と、キレート樹脂との接触処理前後のめっき液の電流効率および得られた金析出物の結晶粒形および結晶配向を示すものである。
めっき液の電流効率は、ランニングにより110.9mg/A.minに低下するが、キレート樹脂との72時間の接触処理によって再び117.3mg/A.minに復帰していることがわかる。
【0046】
【表1】
Figure 0003842063
【表2】
Figure 0003842063
【0047】
参考例1
下記の組成のめっき液を用意した。
シアン化第一金カリウム 8g/L
クエン酸3カリウム 50g/L
クエン酸 40g/L
リン酸2カリウム 50g/L
ヒドロキシエチルイミノ2酢酸 5g/L
鉛 8ppm
このめっき液を用いて、pH6.0、電流密度0.3A/dm、温度60℃の条件で5cm角の銅基板上への金めっきランニングテストを行った。0.1ターンごとに金塩および上記めっき液成分の補充を行い、総計1.6ターンのランニングを行った後、このめっき液1Lをイミノジ酢酸型キレート樹脂(三菱化学社製、「CR−11」)を100g充填したカラムに空間速度(Space Velocity)50の流速で通液し、濾液をICP分析、電流効率測定後、生成した金めっき皮膜のSEM測定およびX線回折測定を行った。
【0048】
表3は、ICP測定結果を示すものである。この表から、キレート樹脂との接触処理後は、金イオンおよび鉛イオンはほとんど濾液に残り、銅イオンが除去されていることがわかる。
表4は、電流効率、SEMおよびXDの結果を示すものである。キレート樹脂との接触処理によって電流効率が回復していることがわかる。また、この再生処理工程を経ても金皮膜の粒形および結晶配向は一定であることがわかる。
【0049】
【表3】
Figure 0003842063
【表4】
Figure 0003842063
【0050】
<実施例
下記の組成の金めっき液を用意した。
シアン化第一金カリウム 8g/L
クエン酸カリウム 150g/L
リン酸カリウム 30g/L
硫酸アンモニウム 50g/L
ジヒドロキシエチルグリシン 5g/L
タリウム 8mg/L
このめっき液を用いて、5cm角の銅基板上にpH6.0、電流密度0.2A/dm、めっき温度65℃の条件で金めっきのランニング試験を行った。金塩および上記めっき液成分の補充は0.1ターンごとに行い、計1.5ターンのランニングを終了した。
【0051】
このめっき液にセルロース系イミノジ酢酸型キレート樹脂10g/L(キレスト社製、「ICP−S」)を添加し、30分、72時間と時間を変えて攪拌後、濾過し、ICP測定、電流密度範囲測定、X線回折測定およびSEM測定を行った。
【0052】
表5は、キレート樹脂との接触処理前後のめっき液の金属成分の分析結果を示すものである。キレート樹脂との接触処理後は、金イオンおよびタリウムイオンはほとんど残っているが、銅イオンは大部分除去されていることがわかる。
表6は、ランニング前後と、キレート樹脂との接触処理前後のめっき液の電流密度範囲測定および得られた金析出物の結晶粒形および結晶配向を示すものである。
【0053】
めっき液の使用可能な電流密度範囲は、ランニングにより0.1A/dm−0.9A/dm から0.1A/dm−0.7A/dm へ縮小するが、キレート樹脂との接触処理によって、再び0.1A/dm−0.9A/dm に復帰していることがわかる。
【0054】
【表5】
Figure 0003842063
【表6】
Figure 0003842063
【0055】
参考例2
下記の組成のめっき液を用意した。
シアン化第一金カリウム 8g/L
クエン酸3カリウム 50g/L
クエン酸 40g/L
リン酸2カリウム 50g/L
鉛 8ppm
このめっき液を用いて、pH6.0、電流密度0.3A/dm、温度60℃の条件で5cm角の銅基板上への金めっきランニングテストを行った。0.1ターンごとに金塩および上記めっき液成分の補充を行い、総計1.6ターンのランニングを行った後、このめっき液1Lをイミノジ酢酸型キレート樹脂(三菱化学社製、「CR−11」)を30g充填したカラムに空間速度(Space Velocity)20の条件で通液し、濾液をICP分析、電流密度範囲測定後、生成した金めっき皮膜のSEM測定およびX線回折測定を行った。
【0056】
表7は、ICP測定結果を示すものである。この表から、キレート樹脂との接触処理後は、金イオンおよび鉛イオンはほとんど濾液に残り、銅イオンが除去されていることがわかる。
表8は、電流密度試験、SEMおよびXDの結果を示すものである。キレート樹脂との接触処理によって電流密度範囲が回復していることがわかる。またこの再生処理工程を経ても金皮膜の粒形および結晶配向は一定であることがわかる。
【0057】
【表7】
Figure 0003842063
【表8】
Figure 0003842063
【0058】
<実施例
実施例の金めっき液組成においてジヒドロキシエチルグリシンをエチレンジアミン4酢酸に代替して、下記の組成の金めっき液を用意した。
シアン化第一金カリウム 8g/L
クエン酸カリウム 150g/L
リン酸カリウム 30g/L
硫酸アンモニウム 50g/L
エチレンジアミン4酢酸 5g/L
タリウム 8mg/L
このめっき液を用いて、5cm角の銅基板上にpH6.0、電流密度0.2A/dm、めっき温度65℃の条件で金めっきのランニング試験を行い、金塩および上記のめっき液成分を0.1ターンごとに補充しながら、1.5ターンのランニングを終了した。
【0059】
このめっき液にセルロース系イミノジ酢酸型キレート樹脂10g/L(キレスト社製、「ICP−S」)を添加し、30分、72時間と時間を変えて攪拌後、濾過し、ICP測定、電流密度範囲測定、X線回折測定およびSEM測定を行った。表9および表10に示すように銅イオンの除去効果および使用電流密度の改善効果は、実施例3よりも低かった。これは、めっき液中の錯化剤のキレート生成定数がキレート樹脂に比べて低くなかったためと推定される。
【0060】
【表9】
Figure 0003842063
【表10】
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【0061】
【発明の効果】
本発明による金めっき液の再生処理方法によれば、めっき時の電流効率および電流密度範囲を著しく回復することができ、金めっき液の金塩および他の必須成分(即ち、伝導塩、錯化剤および結晶調節剤)の吸着を影響がない範囲内に抑えることができ、かつ建浴当初の金めっき液から得られたものと実質的に変わらない結晶構造の皮膜を再生処理されためっき液から析出させることが可能である。

Claims (5)

  1. シアン化金を金源とする、めっきに使用された、金塩、伝導塩、錯化剤およびタリウムを含有する金めっき液に、イミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂を接触させることによって銅イオンを除去することを特徴とする、金めっき液の再生処理方法。
  2. めっきに使用されて電流効率が低下した、金塩、伝導塩、錯化剤およびタリウムまたは鉛を含有する金めっき液にイミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂を接触させることによって、金めっき液の電流効率を回復させることを特徴とする、請求項1に記載の金めっき液の再生処理方法。
  3. キレート樹脂が、イミノジ酢酸型の配位基を有し、かつ錯体生成定数がめっき液中に含まれる錯化剤よりも大きいものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の金めっき液の再生処理方法。
  4. めっきに使用された金めっき液にイミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂を分散させた後、このキレート樹脂を金めっき液から分離することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金めっき液の再生処理方法。
  5. めっきに使用された金めっき液の一部を抜き出して、これをイミノジ酢酸型の配位基を有するキレート樹脂と接触させて再生処理したのち、これを前記めっきに使用された金めっき液に導入することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金めっき液の再生処理方法。
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