JP3839730B2 - マイクロ波焼結炉用接着材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波によって陶磁器材料やファインセラミックス材料などの被焼結物を、自己発熱によって焼結を行うための焼結炉に使用するのに適した接着材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被焼結物の焼結には、電気炉やガス炉などが一般に使用されている。
【0003】
しかし、このような外部からの加熱による焼結の場合には、被焼結物の表面と内部との間で温度差が大きくならないように、炉内温度を緩やかに上昇させることが必要であった。このため、焼結時間が長くなるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、マイクロ波による被焼結物の焼結法が提案されている(例えば、特開平6−87663号など)。この方法は、焼結時間の短縮や雰囲気の制御性等に優れており、環境負荷の低減等の要求と相まって、将来の焼結法として注目を集めている。
【0005】
マイクロ波焼結の場合、マイクロ波が被焼結物に吸収され、被焼結物が自己発熱するため、被焼結物の表面と内部との間で温度差は小さくなる。従って、焼結時間の短縮が可能であると同時に被焼結物の均一な焼結が可能である。
【0006】
また、マイクロ波による被焼結物の自己発熱による焼結において、耐火断熱材で被焼結物を囲み、被焼結物の放射冷却による温度勾配の発生を抑制することによって、被焼結物の、より一層の均一な焼結が可能であることがわかっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロ波焼結用の炉は、炉殻で囲われた内部に耐火断熱材を配置して、耐火断熱材によって被焼結物を囲む構造になっている。この構造においては、炉殻と耐火断熱材の間は、底部を除いて空間になっている。ここで耐火断熱材としては、セラミックファイバーを主成分として一体に成形した成形品が用いられていた。
【0008】
しかし、炉の大型化に伴って、耐火断熱材は一体成形が困難となってきた。そのため、分割して製作されるようになった。分割した耐火断熱材は、炉内に施工するときに、接着する必要が生じる。また、耐火断熱材の修理のときにも、接着材が必要である。
【0009】
本発明は、マイクロ波の照射を受けても発熱が小さく、さらに、セラミックファイバー成形品を接着するのに適した接着材を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決手段を例示すると、請求項1〜2に記載のとおりの接着材である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の接着材は、好ましくは、無機繊維と無機粉末と無機結合材からなる。接着材が乾燥した状態で、無機結合材は小滴状になっていて、それらが離散した状態で存在する。
【0012】
接着材は、耐火断熱材と同様の材料で構成されていることが好ましい。同様の材料であれば、特性が類似しており、反応が起こりにくく、耐火断熱材の劣化が少ないからである。
【0013】
本発明の接着材に使用する無機粉末は、耐火断熱材と類似の組成を有し、マイクロ波によって比較的発熱しにくいものであれば使用できる。例えば、アルミナまたはシリカを主成分とすることが好ましい。この理由は、耐火断熱材に使用されるセラミックファイバーはアルミナシリカ系が普通に用いられているからである。このような無機粉末の具体例としては、アルミナ粉末、シリカ粉末、ムライト粉末などがある。
【0014】
また、接着材に耐スポーリング特性を発現させるために、補強材として、無機繊維を含むことが望ましい。マイクロ波焼結においては、短時間での昇温、冷却が行われるため、熱的スポーリングに耐えることが要求される。補強材として無機繊維を使用することは、耐スポーリング特性を発現させるのに有効である。
【0015】
また、耐火断熱材が繊維質であるため、耐火断熱材との馴染みを良くするためにも、無機繊維を含むことが有効である。
【0016】
このような無機繊維としては、例えば、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維が使用できる。
【0017】
本発明に使用する無機結合材は、耐熱性が有り、強い接着力のあるものが好ましい。このような無機結合材の例として、水ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナがある。これらの無機結合材を1種類以上を使用すればよい。
【0018】
無機結合材は、乾燥した状態で小滴状になっていて、多数のものが離散している。
【0019】
本発明者は、接着材の構成成分が同じであっても、その構造を「小滴離散」構造にすることによって発熱量が小さくなることを発見した。
【0020】
発熱が小さい接着材の微小構造の走査型電子顕微鏡写真を図1に示し、微小構造の模式図を図2に示す。
【0021】
発熱が小さい接着材の微小構造においては、図1および図2に示すように、無機結合材1が、小滴状となっており、しかも、多数の小滴状の結合材1が接着材の全体に一様に離散して広がっている。そして、無機結合材1による無機粉末2あるいは無機繊維3の結合が部分的なものとなっている。
【0022】
このような「小滴離散」構造を有する接着材は、マイクロ波を照射しても、温度がほとんど昇温しない。
【0023】
接着材を構成する粒子と粒子(粉末や繊維)の結合部分が少なく、結合材1が小滴状となって、多数の小滴状の結合材1が離散した状態であると、接着材の発熱が小さく、耐火断熱材の劣化を防止できる。さらに、マイクロ波のエネルギーが接着材に使われることが少なく、エネルギー効率の良い焼結が達成できる。
【0024】
このような接着材の「小滴離散」構造は、例えば、電荷の異なる2種の結合材を使用する方法や、接着時に接着材の水分濃度を調整する方法等で形成することができる。
【0025】
マイクロ波焼結用に使われる耐火断熱材としては、マイクロ波の透過が可能で、かつ高い断熱性を有している材料が好ましく使用できる。マイクロ波が耐火断熱材に吸収され、エネルギーが消費されてしまうと、結果として、被焼結物の焼結に必要なエネルギー量が著しく増大してしまう。
【0026】
また、放射冷却による温度降下を防ぐために、耐火断熱材は高い断熱性を有することが望ましい。さらに、耐火断熱材は高い耐スポーリング特性を有することが望ましい。
【0027】
このような特性を満たすために、例えば、アルミナシリカ繊維を主成分とするセラミックファイバボードが耐火断熱材として使われている。セラミックファイバボードは、マイクロ波の透過が可能であると共に、優れた断熱性および耐火性と、高い耐スポーリング特性を有しており、特に好ましく使用できる。
【0028】
本発明の接着材は、特に、このような無機繊維質の耐火断熱材を接着するのに適している。
【0029】
【実施例】
次に、実施例1と比較例1を示して、本発明を更に具体的に説明する。これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0030】
実施例1
アルミナ粉末100重量部、アルミナシリカ繊維8重量部、カルボキシルメチルセルロース0.8重量部、無機増粘剤1.0重量部、(−)の電荷をもつコロイダルシリカ6重量部、(+)の電荷をもつコロイダルアルミナ6重量部、および水50重量部を混合した。
【0031】
次に、この混合物を接着材として使用して、肉厚40mmのセラミックファイバボード(東芝モノフラックス株式会社製FMX−17SR)の表面に1mmの厚さで塗布し、その上に同じセラミックファイバボードを重ねて、2枚のセラミックファイバボード同士を接着した。塗布の方法は、こて塗り、刷毛塗りおよび吹き付け等のいずれでもよい。
【0032】
その後、接着材で接着された2枚のセラミックファイバボードを100℃で3時間乾燥させ、1000℃で1時間焼成して、耐火断熱材を得た。
【0033】
次に、この耐火断熱材を用いて閉空間を作った。
【0034】
被焼結物として、コーヒーカップ形状の陶土製容器を用意した。この陶土製容器を、耐火断熱材で形成した閉空間内に置いて、周波数2.45GHzのマイクロ波を照射し、焼成した。
【0035】
焼成後、耐火断熱材を観察したが、強固に接着されており、接着材の発熱による変質はなかった。そして、接着材の微構造は、図1に示すように、結合材が小滴状となって、多数の小滴状結合材が離散した状態であった。
【0036】
比較例1
アルミナ粉末100重量部、アルミナシリカ繊維8重量部、カルボキシルメチルセルロース0.8重量部、無機増粘剤1.0重量部、水ガラス12重量部、および水50重量部を混合して、接着材を作った。
【0037】
この接着材を上記実施例1と同様の方法で使用したところ、接着材に顕著な発熱が認められた。また、この発熱により耐火断熱材に劣化が認められた。
【0038】
比較例1の接着材の微構造を調べたところ、接着材の水分濃度が低いため結合材が小滴状となっていなかった。
【0039】
実施例1と比較例1を比較すると、結合材の用い方に差があり、この差が構造の顕著な差となったことが理解できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の接着材は、マイクロ波を吸収しにくいので、接着材による発熱が小さく、耐火断熱材を劣化させることがない。従って、安全に被焼結物を囲む耐火断熱材の接着が可能であり、大型のマイクロ波焼結炉を容易に製作できる。
【0041】
また、本発明の接着材を使用すれば、耐火断熱材の破損を容易に補修できる。さらに、本発明の接着材は、マイクロ波の吸収が少ないので、エネルギーの効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着材の微小構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】接着材の微小構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1 無機結合材
2 無機粉体
3 無機繊維

Claims (2)

  1. マイクロ波の照射によって被焼結物を自己発熱で焼結するためのマイクロ波焼結炉に使用する接着材であって、無機繊維と無機粉末と無機結合材を含んだ混合物であり、乾燥した状態で無機結合材が小滴状になっていて、しかも、小滴状の無機結合材が離散していることを特徴とする接着材。
  2. 混合物が、無機繊維と無機粉末と無機結合材に加えて、さらにカルボキシルメチルセルロースを含むことを特徴とする請求項1に記載の接着材。
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