JP3838787B2 - 三角形チューブの製造方法及びその成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クレーン車、ホイールローダ、油圧ショベル等の建設車両、産業車両、道路機械、及び農業機械等に広範囲に用いられる作業機の断面形状を三角形に成形した三角形チューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の建設車両、産業車両、道路機械、及び農業機械等(以下、作業車両と言う。)の作業機の主要構成部品として広範囲に用いられる鋼板製中空部材(以下、チューブと言う)の製造方法について図14乃至図16により説明する。
先ず、一般的に作業車両の多くに用いられているチューブの断面形状について説明すると、図14に示すように、四辺を互いに溶接により固着された複数枚のプレートで構成する矩形の箱型構造となっている。
また、図15(a)に示すように1枚の鋼板の両端部を所定角度曲げ、次いで図15(b)に示すようにその鋼板の中央部をU字状に曲げた後に、図15(c)に示すように両端部を突き合わせて溶接し、円筒チューブを製作する方法も知られている。
さらに、図16に示すように、複数個のローラで連続的に所定断面形状のチューブを成形するロール成形法(いわゆる圧延法)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、現在多く使用されている図14に示すような矩形断面形状のチューブは全体として重量が大きくなる傾向があり、このような重いチューブを主要構成部品として有する作業機を作業車両の端部(例えば、油圧式掘削機の場合は前端部)に設けると、この作業機の重量をバランスさせるためのカウンタウェイトを重くしたり、あるいは車両の反対側の端部(上記油圧式掘削機の場合は後端部)に移動させる必要がある。このために、作業車両全体の重量が重くなり、よって車体駆動部の負荷が重くなり、燃費が悪いという問題や、また車両後端部の干渉領域が大きくなり、作業性(油圧式掘削機の場合は後端旋回性)が悪い等の問題がある。したがって、従来から、作業機の軽量化が非常に重要な課題となっている。ところが、作業機にかかる最大荷重に対する剛性を確保する必要があることから、上記矩形断面形状のチューブの形状を小型化する、あるいは板厚を薄くするなどには限度がある。
したがって、従来の矩形断面形状のチューブに比べ、より軽量化が可能な三角断面形状のチューブを実用的な方法で製造することが要求されている。
【0004】
しかしながら、前述した従来の種々のチューブ製造方法によって三角断面形状のチューブを製作するには、以下のような問題がある。
(1)図15(a),図15(b),図15(c)に示した成形方法は円筒形チューブにしか適用できないという問題がある。
(2)また、図16に示したロール成形法(いわゆる圧延法等)によって成形する方法は、チューブの断面が長手方向で一様な場合には適用できるが、チューブの断面形状を長手方向に変化させるようなテーパ断面の成形には実用上適用できないという問題がある。また、この圧延法では、チューブが一様な断面であっても、断面形状が大きくなると(例えば、高さ×幅≧500×500の場合)、大型で、高価な特殊な設備が必要となり実用的でない。
【0005】
(3)また、本出願人は、断面三角形状のチューブを製造する方法について研究を行っており、例えば図17(a)、図17(b)に示すように、予め曲げ加工した2枚の鋼板1のそれぞれの端部を突き合わせて溶接したり、あるいは図17(c)に示すように、予め曲げ加工した3枚の鋼板1のそれぞれの端部を突き合わせて溶接し、三角形チューブを製造する方法を特願平9−189502号公報に開示している。しかしながら、これらの図に示すように、予め曲げ成形された鋼板1を2枚、あるいは3枚用いて三角形チューブを製造する場合には、溶接線が2本以上となるので、溶接作業に多大な時間を要すると共に、溶接時に必要な材料(溶接ワイヤや溶接ガス等)も多く費やし、コスト高となる。さらに、溶接線が多くなることより、外観品質が低下するという問題もある。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目し、断面形状がテーパ状に変化する三角断面形状チューブも高精度に成形できると共に、製造コストの低減、外観品質の向上を図ることができる三角形チューブの製造方法及びその製造に用いる成形金型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記目的を達成するため、本発明に係る三角形チューブの製造方法の第1発明は、鋼板を断面略三角形状のチューブに成形して三角形チューブを製造する三角形チューブの製造方法において、
(1) 予め所定形状に切断した鋼板1の両端部近傍を所定の曲率で曲げる第1曲げ工程と、
(2) 第1曲げ工程で曲げた鋼板1の中央部を所定の曲率で押し曲げる第2曲げ工程と、
(3) 第2曲げ工程で成形した鋼板1の前記中央部を長手方向に対して左右から加圧しつつ、前記両端部を上方から押さえ込んで拘束して突き合わせ、成形する拘束成形工程と、
(4) 拘束成形工程の後、除荷せずに前記両端部の突き合わせ部1dを溶接する溶接工程と、
を有する製造方法としている。
第1発明によれば、1枚の鋼板の両端部近傍及び中央部を所定の曲率(設計値に基づいて予め設定される)で曲げ加工し、この後長手方向に対して左右から加圧しながら上方から押さえ込んで両端部を突き合わせ、この突き合わせによる内力を利用して拘束成形しながら、除荷せずに突き合わせ部を溶接する。このとき、突き合わせによる内力を利用して拘束成形しているので、材料の硬さのバラツキがあつても断面形状を所定の設計値通りに精度良く安定して成形し、溶接することができ、よって簡便に高精度な三角形チューブを製造することができる。
また、テーパ断面を有している場合でも、このチューブを平面に展開した形状に予め鋼板を切断し、この鋼板を所定位置で曲げ加工してテーパ断面を有するチューブを成形できるので、テーパ断面への対応が容易である。
さらに、三角形チューブの突き合わせ溶接線を1本にしたので、溶接時間の短縮化、及び溶接材料使用量の減少により製造コストを低減でき、しかも溶接線が1本なので外観品質も向上させることができる。
したがって、クレーン車、ホイールローダ、油圧ショベル等の建設車両、産業車両、道路機械、及び農業機械等に広範囲に用いることができる三角形チューブの製造方法として実用的である。
【0008】
また、本発明に係る三角形チューブの製造方法の第2発明は、鋼板を断面略三角形状のチューブに成形して三角形チューブを製造する三角形チューブの製造方法において、
(1) 予め所定形状に切断した鋼板1の両端部近傍を所定の曲率で曲げる第1曲げ工程と、
(2) 第1曲げ工程で曲げた鋼板1の中央部を所定の曲率で押し曲げる第2曲げ工程と、
(3) 第2曲げ工程で成形した鋼板1が成形金型の下型10に倣うように鋼板1の前記中央部を下型10に押さえ込むと共に、外側に拡がろうとする鋼板1の前記両端部近傍の曲部を成形金型の上型15で拘束して突き合わせ、成形する拘束成形工程と、
(4) 拘束成形工程の後、除荷せずに前記両端部の突き合わせ部1dを溶接する溶接工程と、を有する製造方法としている。
第2発明によれば、第1発明と同様の作用効果を有するとともに、下型により成形断面を拘束し、また上型により鋼板の両端部を上方から押さえ込んで両端部を突き合わせて拘束することにより、さらに断面形状が一様で高精度の三角形チューブの成形が可能となる。
【0009】
第3発明は、第1発明又は第2発明の三角形チューブの製造方法において、前記第1曲げ工程及び/又は第2曲げ工程は、鋼板1に設けた位置決め部42,44に成形用のパンチP1 ,P2 の位置決め手段Q1,Q2を係合して、鋼板1の前記両端部近傍及び/又は中央部を押し曲げる工程であることを特徴とする製造方法としている。
第3発明によれば、第1発明又は第2発明と同様の作用効果を有するとともに、第1曲げ工程又は第2曲げ工程の少なくともいずれか一方において、鋼板1に設けた位置決め部に成形用パンチの位置決め手段を係合して押し曲げるので、鋼板の曲部の中心位置がずれることがない。したがって、拘束成形時に両端部の突き合わせの位置ずれ(段差、目違い及び溶接部隙間等)を非常に小さくでき、さらに高精度の三角形チューブの曲げ加工が可能となる。
【0010】
第4発明は、第1発明、第2発明又は第3発明の三角形チューブの製造方法において、三角形チューブは、断面が略三角形状で、かつ二辺の会合部が円弧状に成形されることを特徴とする製造方法としている。
第4発明によれば、三角形チューブの二辺の会合部が円弧状に成形されるので、さらに断面形状が一様で高精度となり、かつ会合部に応力集中がなく、しかも外観品質の良い三角形チューブを製造できる。
【0011】
第5発明に係る三角形チューブの製造に用いる成形金型は、鋼板を断面略三角形状のチューブに成形する成形金型において、
成形断面と略同一形状の切り欠き部10cを有する複数のプレート10aを所定間隔で並列に配設した下型10と、
鋼板1の前記両端部を突き合わせるように上方から押さえ込む平坦なプレート15b、及び、プレート15bの下部に所定間隔で並列に、かつ前記プレート10aと交互に配設されると共に、それぞれが鋼板1の前記両端部近傍の曲部を長手方向に対して左右から押さえ込む形状を有する複数のプレート15aを備えた上型15と、
を設けた構成としている。
上記構成の成形金型を用いることにより、材料の硬さや板厚のバラツキがあつても、同一成形条件で断面形状を設計値通りに精度良く安定して成形することができ、よって断面形状が一様で高精度の三角形チューブを製造できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る三角形チューブの製造方法及びその製造に用いる成形金型について、図1乃至図13に基づいて説明する。
先ず、三角形チューブの製造方法の第1曲げ工程を、図1及び図2により説明する。鋼板1は、図1に示すように、予め1枚の鋼板を三角形チューブを平面に展開した形状にレーダ切断機等により高精度に切断加工されており、その鋼板1には曲げ成形すべき曲部1a,1Aが予め設定してある。そして、図2に示すように、鋼板1を所定の曲げ用下型E1 に載せ、図示しないプレスブレーキのパンチP1 を加圧下降させ、鋼板1の前記設定された曲部1aに対応する箇所を押し曲げ、第1曲げ工程を完了する。
次いで、図3に示す第2曲げ工程では、この曲げられた鋼板1を所定の曲げ用下型E2 に載せ、鋼板1の中央の曲部1AをプレスブレーキのパンチP2 を加圧下降させて所定の曲率で押し曲げることにより、この鋼板1は図示の2点鎖線の状態を経て実線の状態に曲げられる。
【0013】
つぎに、図4に示す拘束成形工程では、まず図4(a)に示すように、第1及び第2曲げ工程で曲げられた鋼板1を、中央部を下方に向けて成形金型の下型Bに入るように載置する。次いで、鋼板1は図示しない成形加圧機により成形金型の上型Aを介して所定の加圧力Fで加圧され、上型Aにより上方から押さえ込まれる。これにより、図4(b)に示すように、鋼板1は成形金型の上型Aと下型Bとで拘束される。このとき鋼板1の両端部の突き合わせ部1dには、突き合わせによる内力が発生し、この状態で拘束成形が完了する。
そして、図5に示す溶接工程では、鋼板1を拘束成形した状態で除荷せずに、その両端部の突き合わせ部1dを、上型Aの上部に搭載した溶接トーチ走行装置5に配設した溶接トーチ5Aにより溶接するようになっている。
以上の図1乃至図5に示した第1曲げ工程、第2曲げ工程、拘束成形工程及び溶接工程の各工程により、鋼板1は三角形チューブに製作される。
【0014】
次に、第1及び第2曲げ工程で曲げ中心が前記設定された曲部1a,1Aよりずれないようにするための位置決め手段について、図6(a),図6(b)に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、鋼板1の長手方向(チューブの長手方向)の両端部には、第1及び第2曲げ工程で曲げ中心となる前記曲部1a,1Aにそれぞれ対応する位置に所定のプレート41,43が設けられており、このプレート41,43に、曲げ中心が前記設定された曲部1a,1Aよりずれないようにするために、それぞれ位置決め孔42,44が設けられている。また、図6(b)に示すように、第1曲げ工程及び第2曲げ工程でそれぞれ使用されるパンチP1 ,P2 の長手方向両端部には、前記位置決め孔42,44に対応する位置に、これらの位置決め孔42,44に係合する位置決め手段として位置決めピンQ1 ,Q2 が設けられている。そして、第1曲げ工程及び第2曲げ工程においては、パンチP1 ,P2 の位置決め手段(ここでは位置決めピンQ1 ,Q2 )をそれぞれ鋼板1の位置決め孔42,44に係合(ここでは挿入)した状態で曲げ成形が行われ、曲げ中心の位置がずれないようにしている。
【0015】
次に、図7及び図8に基づいて、前記第1曲げ工程及び第2曲げ工程における成形条件の決め方について説明する。なお、第1曲げ工程及び第2曲げ工程は拘束成形工程のための予備成形工程と位置づけされるので、以後、両工程を合わせて予備成形工程と呼ぶ。
図7(a),図7(b)に示すように、例えばSS材(軟鋼)とHT材(高張力鋼)とのように強度の異なる鋼板を同じ曲げ条件で曲げた場合、通常、材料の強度差によってスプリングバック量が異なる。したがって、金型から鋼板1を取り出すと、図7(b)に示すように、SS材の場合の曲げ形状1Pと、HT材の場合の曲げ形状1Qとの間にバラツキが生じる。
【0016】
そこで、本出願人は、鋼板1の強度差に左右されずに、最終の拘束成形工程での拘束成形後にチュ−ブ形状が所定の設計値通りの曲率半径と曲げ角度となるようにするために、前記予備成形工程の時に使用するパンチP1 ,P2 の半径Rと曲げ加工時の追い込み量とを最適に規定する方法を実験的に求めている。なお、以後、このパンチP1 ,P2 の半径Rと追い込み量とを予備成形条件と呼ぶ。
すなわち、本出願人は、金型内でも、あるいは金型から外しても、図7(c)に示すような鋼板1の塑性変形領域(図示の斜線部)の長さである曲げ長さMは一定であるという現象に着目した。ここで、曲げ成形時の曲げ角度をθ1 、パンチ先端部の半径をR1 とし、また金型から外した時の塑性変形領域の曲げ角度をθ2 、曲率半径をR2 とすると、鋼板1の曲げ長さMは、数式「M=R1 ×θ1 =R2 ×θ2 」で表され、よって一定となっている。
【0017】
図8に、各種の鋼板材を用いて、上述した曲げ長さMの一定則を確認した実験データを示す。同図は、パンチ先端部の半径Rが86〜120mmの範囲にある各種パンチを使用し、曲げ成形時の曲げ角度(すなわちねらい角度)θを40〜110°の範囲の各種角度に設定したときの、パンチ押し込み時の曲げ長さMaと、除荷時の曲げ長さMbとの相関を示している。すなわち、各パンチ先端部の半径Rと各曲げ角度θとの組み合わせ毎に、押し込み時の曲げ長さ「Ma=R×θ」を横軸に表し、また、除荷時の曲部の半径Rb及び曲げ角度θbを測定して演算した曲げ長さ「Mb=Rb×θb」を縦軸に表し、これらの各組み合わせ毎に対応する相関点をプロットしている。
この相関図で分かるように、各鋼板材の強度差による曲げ長さMのバラツキは押し込み時と除荷後とで殆どなく、したがって曲げ長さMの一定則を確認できる。
【0018】
つぎに、上述した曲げ長さ一定則に基づく予備成形工程での予備成形条件の決め方について、図9にしたがって説明する。本発明にかかる三角形チューブの製造方法においては、各工程毎に制約条件を設定し、この制約条件の基で予備成形条件を決定するようにしている。
まず、最終の拘束成形工程では、図9(d)に示すような、各曲部の半径R11,R21及び曲げ角度θ11,θ21は設計値通りとする(制約条件1)。つぎに、鋼板1の両端部近傍の曲部が、拘束成形時に弾性変形を行って金型に倣うようにするために、図9(c)に示すような予備成形工程後の除荷した状態では、前記曲部の半径R22はこの曲部が弾性を有するような曲率半径になるようにしている。したがって、この条件を受けて、図9(a)に示す予備成形工程の第1曲げ工程では、両端部近傍の曲部を加工するパンチP1 の先端部の半径R23及び曲げ角度θ23を、前記設計値通りの半径R21及び曲げ角度θ21で曲げたときの曲げ長さ、つまり(R21×θ21)と等しい曲げ長さとなるように設定する。このとき、前記半径R23を鋼板1の弾性範囲内にとどめるようにする(制約条件2)。また、図9(b)に示すように、予備成形工程の第2曲げ工程での曲げ加工では、パンチP2 で曲げ成形しているときに、パンチP2 と鋼板1の両端部とが干渉しないようにパンチP2 の先端部の半径R13及び曲げ角度θ13を決定する(制約条件3)。すなわち、所定幅Hを有するパンチP2 により半径R13及び曲げ角度θ13での曲げ加工が完了した時に、鋼板1の両端部間の距離が前記所定幅Hよりも大きくなるように、半径R13及び曲げ角度θ13を決定する。ここで、半径R13及び曲げ角度θ13での曲げ長さ(R13×θ13)が設計値通りの半径R11及び曲げ角度θ11で曲げたときの曲げ長さ(R11×θ11)と等しくなるように決定される。
【0019】
このようにして、制約条件1〜3の基で、最終の拘束成形工程から予備成形工程まで順に、曲げ長さ一定則を利用すると、予備成形条件、すなわちパンチP1 ,P2 の半径Rと追い込み量を決定することができる。このとき、追い込み量は、数式「R13×θ13=R11×θ11」を満足するように決定される。
【0020】
図10は、本発明に係る三角形チューブの製造に用いる成形金型の一例を示すものである。図10(a)、図10(b)に示すように、成形金型20は下型10と上型15とを備えている。
下型10は、それぞれが成形断面と同一形状の切り欠き部10cを有すると共に、鋼板1の長手方向に対して垂直に、かつ所定間隔で並列に配設された複数のプレート10aと、鋼板1の長手方向の端部をガイドし、押し込み成形時に鋼板1の中央部が前記切り欠き部10cの中央部に来るようにするプレート10bとから構成されている。また、上型15は、同図に示すように、三角形チューブの突き合わせ部(つまり、鋼板1の両端部)を上にした状態で、突き合わせ部の拡がりを縮めるように、両端部近傍の曲部を上方から押さえ込む構造となっている。すなわち、上型15は、長手方向に対して両側に設けられた(図示で左右1対の)平坦なプレート15b,15bと、各プレート15bの下部に鋼板1の長手方向に対して垂直に、かつ所定間隔で並列に配設され、鋼板1の両端部近傍の曲部を押さえ込む形状を有する複数のプレート15a,15a(鋼板1のガイドとなる)とから構成されている。
【0021】
拘束成形工程においては、下型10に三角形チューブの中央部を下方に向けて載せる。つぎに、上型15のプレート15aで三角形チューブの両端部近傍の曲部をガイドしながら内側に押さえ込むとともに、プレート15bで両端部の突き合わせ部を上方から押圧し、下型10の型(つまり、切り欠き部10c)内に押し込む。このとき、プレート10bは三角チューブの長手方向端面をガイドして中央部が下型10の中央に入るようにする。これにより、鋼板1は下型10内で拘束成形され、両端部の突き合わせ力によって下型10に倣って成形される。したがって、材料の硬さのバラツキがあつても断面形状の精度不良を起こすことがなく、断面形状が常に一様で高精度の三角形チューブを成形することができる。
【0022】
本出願人は、上記のような成形金型を採用することによって、三角形チューブの断面形状を設計値通りに精度良く成形することができることを実測により確認している。すなわち、上記の予備成形及び拘束成形の結果、図11に示すような鋼板1の突き合わせ部1dの段差S1 、目違いS2 、及び突き合わせ溶接部の隙間S3 がそれぞれ許容される微小誤差内に入ることを計測し、確認している。例えば、テストモデルとして、全長(長手方向)が500mmで、底辺部(拘束成形時には上方にある)の長さが約400mm、三角形の高さが約500mm程度の三角形チューブを、材質SS400及びSHT490の鋼板で成形した場合には、両者共に、段差S1 が「S1 ≦0.5mm」を、目違いS2 が「S2 ≦0.5mm」を、及び突き合わせ溶接部の隙間S3 が「S3 =0mm」を満足するものであった。また、形状差(各曲部を結ぶ直線部の膨らみ度合い)も1mm以下であり、非常に精度の良い成形形状が得られている。
【0023】
そして、上記のように拘束成形された状態で種々の溶接テストを行い、溶接後の外観及び溶け込み量共に良好な品質が得られる溶接工程での条件を導いている。図12(a),図12(b),及び図12(c)は、この三角形チューブの突き合わせ溶接のテスト結果の一例を示すものである。
図12(a)は、プラズマ裏波溶接の場合を示すものであり、鋼板1の突き合わせ部をY開先とし、板厚が6mmで、開先部板厚が3mmのとき、電流250A、溶接速度30cm/min で溶接し、溶接品質の良好な結果が得られた。
図12(b)は、TIG裏波溶接の場合を示すものであり、鋼板1の突き合わせ部をY開先とし、板厚が6mmで、開先部板厚が2mmのとき、電流200A、溶接速度25cm/min で溶接し、溶接品質の良好な結果が得られた。
図12(c)は、MAGバッキングつき溶接の場合を示すものであり、鋼板1の突き合わせ部をY開先とし、板厚が6mmで、開先部板厚が2mmのとき、電流220A、電圧20V、溶接速度40cm/min で溶接し、溶接品質の良好な結果が得られた。なお、25はバッキングプレートである。
これら溶接法は、三角形チューブを製造する場合の設備費用、及び適用する車両機種に適合する板厚、その使用分野等を考慮して適宜設定される。
【0024】
図13(a)は、三角形チューブ30の斜視図を示している。鋼板1の突き合わせ溶接線1eを1本のみとしたので、溶接作業に要する時間の短縮化、及び溶接材料の使用量減少による製造コストの低減を図ることができ、しかも溶接線が1本で外観品質も向上する。また、略三角断面形状であるので、従来の矩形断面形状のチューブに比べて断面横方向からの外力に対する剛性が非常に高くなると共に、同じ剛性を確保する場合でも使用する鋼板の板厚や量(つまり断面における外周長)を小さくすることができ、この意味での重量及びコストの低減も可能となる。
さらに、図13(b)に示すように、三角断面形状の各曲部が大きな曲率半径を有しているので、鋼板の曲部への応力集中が無くなり、三角形チューブとして充分な耐久性を有することができる。
【0025】
なお、上記の実施形態において説明した技術を用いて、チューブの断面形状が長手方向の位置によって徐々に変化するテーパ断面を有する三角形チューブ、あるいは、変化が無く一定である三角柱状の三角形チューブのいずれにも適用できることは言うまでもない。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る三角形チューブの製造方法は、先ず、1枚の板材の両端部近傍を曲げ、次いで、その板材の中央部の曲げ成形を行う。この後、図4(a)に示すように、三角形チューブの最終形状と略同一形状の成形金型の下型に上記の予備成形した板材をセットして、図4(b)に示すように、下面が平坦な上型Aにより、この予備成形した板材を下型Bに所定の位置まで押し込んで拘束成形し、その状態で突き合わせ溶接を行う。この結果、板材の硬さのバラツキがあっても、精度の高い断面形状の三角形チューブを常時安定して製作することができるものである。
【0027】
上記の拘束成形において、上型が所定の位置に下降する前に、板材の両端部の突き合わせ部を接触させることにより、その後の上型の下降工程で、板材に上型からの押しつけ力と、板材の突き合わせ部からの突き合わせ力とを同時に発生させることができる。この結果、材料の硬さのバラツキがあつても断面形状の精度不良を起こすことがなく、簡便に三角断面形状の精度の高い成形が安定して可能となり、高精度の三角形チューブを製造することができる。
【0028】
上記の予備成形において、図9に示すように、板材の曲げ長さ一定則があることに着眼し、最終拘束成形時の各曲部の曲率半径及び曲げ角度を設定値通りの値にし、かつ、曲げを板材の弾性領域の範囲内で行い、さらに、中央部曲げ時にパンチと板材の両端部との干渉を防止する、という条件を考慮することにより、最適予備成形条件を設定している。この条件により、拘束成形後の形状を一様に略設計値通りとすることができる。
【0029】
また、予備成形時に、板材の曲部1a,1Aの中心位置を正確にするために、図6(a),図6(b)に示すように、板材の長手方向の両端部の、前記曲部1a,1Aに対応する位置に位置決め部(例えば位置決め孔42,44、あるいは位置決め用の凹部))を設けると共に、パンチの両端部の前記位置決め部に対応する位置に位置決め部に係合する位置決め手段(位置決めピンQ1 ,Q2 等)を設けている。そして、これらの位置決め部と位置決め手段とを係合させながら、パンチで予備成形を行うことにより、曲部の中心位置がずれることがなくなり、したがって精度の高い予備成形ができる。
【0030】
また、三角形チューブの突き合わせ溶接線を1本のみとしたので、溶接作業に要する時間の短縮化と溶接材料の使用量減少とによる製造コストの低減、及び外観品質の向上を図ることができる。
【0031】
さらに、本発明に係る三角形チューブの製造に用いる成形金型は、それぞれが成形断面と同一形状の切り欠き部を有する複数のプレートをチューブの長手方向に対して垂直に、かつ所定間隔で並列に(つまり、櫛状に)配設した下型と、三角形チューブの突き合わせ部を上にした状態で、突き合わせ部の拡がりを縮めるように上方から押さえ込む左右1対の平坦なプレート15b,15b、及び、プレート15b,15bの下部にチューブの長手方向に対して垂直に、かつ所定間隔で並列に配設した、板材の両端部近傍の曲部を左右方向から押さえ込む形状を有する複数のプレート15a,15aを備えた上型とからなっている。
この成形金型を用いることにより、材料の硬さのバラツキがあつても断面形状の精度不良を起こすことがなく、断面形状が常に一様で高精度の三角形チューブを成形することができる。
【0032】
以上説明した本発明の製造方法、及び成形金型を用いて製造される三角形チューブは、クレーン車、ホイールローダ、油圧ショベル等の建設車両、産業車両、道路機械、及び農業機械等の全ての作業を行う車両に広範囲に用いることができる三角形チューブとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る三角形チューブの曲げ成形前の鋼板の説明図である。
【図2】本発明に係る三角形チューブの製造方法の第1曲げ工程の説明図である。
【図3】本発明に係る三角形チューブの製造方法の第2曲げ工程の説明図である。
【図4】本発明に係る三角形チューブの製造方法の拘束成形工程の説明図である。
【図5】本発明に係る三角形チューブの製造方法の溶接工程の説明図である。
【図6】同、(a)は鋼板の端部に設けた位置決め部の説明図、(b)は鋼板の位置決め部とパンチの位置決め手段との係合の説明図である。
【図7】同、鋼板の曲げ長さMと、半径Rと、角度θとの関係を説明する図である。
【図8】同、各種の鋼板及びパンチで曲げた場合の押込み時と除荷時の鋼板の曲げ長さ一定則を表す相関図である。
【図9】同、各工程での成形条件を決める制約条件の説明図である。
【図10】本発明に係る三角形チューブの成形金型例を説明する図であり、(a)は上型と下型の説明図、(b)は下型の説明図である。
【図11】本発明に係る三角形チューブの成形金型による形状精度の説明図である。
【図12】本発明に係る三角形チューブの各種の溶接テスト結果の一例を説明する図であり、(a)はプラズマ裏波溶接の場合を、(b)はTIG溶接の場合を、(c)はMAGバッキングつき溶接を示している。
【図13】本発明に係る三角形チューブの説明図であり、(a)はその斜視図を、(b)はその断面形状を示す。
【図14】従来技術に係わる矩形断面の箱型構造のチューブの説明図である。
【図15】従来技術に係わる円筒チューブの成形方法の説明図である。
【図16】従来技術に係わるロール成形法を説明する図である。
【図17】従来技術に係わる2枚、あるいは3枚板で成形される三角形チューブを説明する図である。
【符号の説明】
1 鋼板
1a,1A 曲部
1d 突き合わせ部
1e 溶接線
1P SS材の曲げ形状
1Q HT材の曲げ形状
5 溶接トーチ走行装置
5A 溶接トーチ
10,B 下型
15,A 上型
10a プレート
10b,15a プレート(案内ガイド)
15b プレート
20 成形金型
30 三角形チューブ
42,44 位置決め部(位置決め孔)
E1 ,E2 曲げ用下型
M 曲げ長さ
P1 ,P2 パンチ
Q1 ,Q1 位置決め手段(位置決めピン)
R 半径
θ 曲げ角度
Claims (5)
- 鋼板を断面略三角形状のチューブに成形して三角形チューブを製造する三角形チューブの製造方法において、
(1) 予め所定形状に切断した鋼板(1) の両端部近傍を所定の曲率で曲げる第1曲げ工程と、
(2) 第1曲げ工程で曲げた鋼板(1) の中央部を所定の曲率で押し曲げる第2曲げ工程と、
(3) 第2曲げ工程で成形した鋼板(1) の前記中央部を長手方向に対して左右から加圧しつつ、前記両端部を上方から押さえ込んで拘束して突き合わせ、成形する拘束成形工程と、
(4) 拘束成形工程の後、除荷せずに前記両端部の突き合わせ部(1d)を溶接する溶接工程とを有することを特徴とする三角形チューブの製造方法。 - 鋼板を断面略三角形状のチューブに成形して三角形チューブを製造する三角形チューブの製造方法において、
(1) 予め所定形状に切断した鋼板(1) の両端部近傍を所定の曲率で曲げる第1曲げ工程と、
(2) 第1曲げ工程で曲げた鋼板(1) の中央部を所定の曲率で押し曲げる第2曲げ工程と、
(3) 第2曲げ工程で成形した鋼板(1) が成形金型の下型(10)に倣うように鋼板(1) の前記中央部を下型(10)に押さえ込むと共に、外側に拡がろうとする鋼板(1) の前記両端部近傍の曲部を成形金型の上型(15)で拘束して突き合わせ、成形する拘束成形工程と、
(4) 拘束成形工程の後、除荷せずに前記両端部の突き合わせ部(1d)を溶接する溶接工程とを有することを特徴とする三角形チューブの製造方法。 - 請求項1又は2記載の三角形チューブの製造方法において、前記第1曲げ工程及び/又は第2曲げ工程は、鋼板(1) に設けた位置決め部(42,44) に成形用のパンチ(P1,P2) の位置決め手段(Q1,Q2) を係合して、鋼板(1) の前記両端部近傍及び/又は中央部を押し曲げる工程であることを特徴とする三角形チューブの製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の三角形チューブの製造方法において、
三角形チューブは、断面が略三角形状で、かつ二辺の会合部が円弧状に成形されることを特徴とする三角形チューブの製造方法。 - 鋼板を断面略三角形状のチューブに成形する成形金型において、
成形断面と略同一形状の切り欠き部(10c) を有する複数のプレート(10a) を所定間隔で並列に配設した下型(10)と、
鋼板(1) の前記両端部を突き合わせるように上方から押さえ込む平坦なプレート(15b) 、及び、プレート(15b) の下部に所定間隔で並列に、かつ前記プレート(10a) と交互に配設されると共に、それぞれが鋼板(1) の前記両端部近傍の曲部を長手方向に対して左右から押さえ込む形状を有する複数のプレート(15a) を備えた上型(15)とを設けたことを特徴とする成形金型。
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