JP3837847B2 - ターボ過給機付エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はターボ過給機付エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ターボ過給機付エンジンではウェストゲート装置を組み合わせて過給圧の過剰上昇を抑制している。このウェストゲート装置では、過給圧が所定値以上となったとき、ウェストゲート弁が開き、排ガスがタービンをバイパスして流れるようになっている。こうなるとコンプレッサの回転も抑制されて過給圧が抑制され、エンジンが保護されるようになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウェストゲート装置では、ウェストゲート弁が開いたときに排ガスが何等仕事をすることなく捨て去られてしまい、エネルギの有効利用が図れないという問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るターボ過給機付エンジンは、排気行程でタービン上流側に排出された排ガスを吸気行程でシリンダ内に逆流させるべく、吸気行程でリフト可能な排気弁とその排気弁を吸気行程で選択的にリフトさせるための切替手段とを設け、上記切替手段は、吸気行程でエンジン回転数が所定の切替回転数以上となったときに上記排気弁をリフトさせるものである。
【0005】
これによれば、吸気行程でタービン上流側の排ガスがシリンダ内に逆流されるので、タービン上流側の排ガス圧力、即ち背圧が低減され、タービンの回転が抑制されるようになる。これにより、ウェストゲート装置に代わって過給圧の過剰上昇を抑制でき、さらに逆流された排ガスはピストンを押し下げるのに利用できる。
【0006】
なお、上記切替手段は、吸気行程中、吸気弁のリフト開始後に上記排気弁のリフトを開始し、そのリフトした排気弁を上記吸気弁が閉じる前に閉じるのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0008】
図1は本発明に係るターボ過給機付エンジンを概略的に示す平面図である。図示するようにシリンダ1には吸気ポート2と排気ポート3とが臨ませられ、これらポート2,3を開閉すべく吸気弁4と排気弁5とが配設されている。吸気ポート2及び排気ポート3は、それぞれ吸気通路6及び排気通路7の一部を構成している。吸気通路6及び排気通路7はターボ過給機8で連絡され、ターボ過給機8のタービン9が排気通路7の途中に、ターボ過給機8のコンプレッサ10が吸気通路6の途中に、それぞれ配設されている。ターボ過給機8はここでは可変容量型のものが使用され、即ち、タービン9の入口にノズルベーン11が設けられ、ノズルベーン11がタービン入口の通路面積を適宜絞るようになっている。ノズルベーン11の開度制御はECU 等の制御装置12によって行われる。即ち、制御装置12はエンジン回転数、エンジン負荷等のエンジン運転状態を表す各種データを常時読み込んでおり、これらの値と予め記憶してある開度マップとからアクチェータ13を最適に動作させ、ノズルベーン11の開度制御を実行している。
【0009】
ここで特に排気弁5は、図2の破線で示すように、通常の排気行程の他、吸気行程でもリフトすることができる。つまり排気弁5は2段で開閉を行うこととなる。そしてここでは吸気行程におけるリフトが、以下に述べる切替手段により選択的に行われるようになっている。このような切替手段は実開昭61-105705 号等によっても周知であるが、ここでは図3に示すような構成を例示しておく。
【0010】
図示する切替手段Xにあって、カムシャフト14には、排気弁5を通常通り排気行程でリフトさせるための第1カム15と、排気弁5を吸気行程でリフトさせるための第2カム16とが設けられる。これら第1カム15と第2カム16とは、いずれか一方が切替えプッシュロッド17を押し上げ、ロッカーアーム18を介して排気弁5を押し下げる(リフトさせる)ようになっている。即ち、一方のカム15,16による押し上げ力をロッカーアーム18に伝達するのが切替えプッシュロッド17である。
【0011】
切替えプッシュロッド17は二股状に構成され、第2カム16との接触部に油圧シリンダの如き遊動機構19を備えている。遊動機構19は、プッシュロッド17に接続されるピストン20と、ピストン20を摺動自在に収容するシリンダボディ21とから構成される。シリンダボディ21は第2カム16に摺接する。ピストン20の上下の室内にはオイルが満たされ、これらオイルは連絡通路22を介して往来可能である。連絡通路22にはオイルポンプ23から油圧が選択的に供給される。即ち、連絡通路22とオイルポンプ23とを結ぶ油圧通路24に電磁切替弁25が設けられ、電磁切替弁25が前述の制御装置12で切替制御されることにより、油圧が選択的に供給されるようになっている。なおポンプ吐出圧はリリーフ弁26で一定に保持される。
【0012】
この構成によれば、電磁切替弁24がOFF のとき、油圧供給が停止されると共に連絡通路22と油圧通路24とが遮断され、ピストン20の上下の室内が連通され、これらの間でオイルが往来可能となる。よってピストン20はフリーに移動(遊動)できるようになり、排気弁5の開閉は専ら第1カム15によって行われる。一方、電磁切替弁24がONのときには、連絡通路22と油圧通路24とが連通され、ピストン20の上下の室内に油圧が供給され、これによってピストン20がロックされる。こうなるとこんどは第2カム16が遊動機構19を介してプッシュロッド17を押し上げるようになり、排気弁5の開閉が専ら第2カム16によって行われるようになる。
【0013】
さて、このエンジンではウェストゲート装置が省略されており、これに代わって過給圧の上昇を抑制すべく、エンジン高速運転時には以下のように動作する。図2に示すように、先ず排気行程で通常通り排気弁5が1回リフトして排気を行う。次いで排気行程の終りの上死点(TDC)付近で、吸気弁4が排気弁5と僅かにオーバーラップしてリフトを開始し、吸気を開始する。特にこの吸気行程中、排気弁5が再度リフトし、これによってウェストゲート装置と同様の機能を果たすこととなる。即ち、エンジン高速回転時には、排気通路7のタービン9上流側(入口側)で背圧が高くなっているが、吸気行程で排気弁5を開くと、その高圧の排ガスが低圧のシリンダ1内に逆流し、タービン9入口圧が下がるようになる。これによってタービン9及びコンプレッサ10の回転上昇が抑制され、過給圧の上昇も抑制されるようになる。一方、この逆流によってシリンダ1内のピストンが押し下げられる。
【0014】
こうして従来のウェストゲート装置と異なり、排ガスの持つ高いエネルギを捨て去ることなく回収できるため、出力の向上が見込まれ、高過給化も可能となる。また逆流をピストンの下降に有効利用でき、ポンピングロスの防止により燃費も向上できる。さらに内部EGRの効果も十分期待できる。
【0015】
なお、排気弁5の最大リフト量及びリフト期間は、排気行程のものより吸気行程のものの方が小さい。図4は各行程におけるポート内圧力を示すが、図示するように吸気行程で排ガスの逆流(R部)が生じていることが分かる。電磁切替弁24をOFF のまま切り替えなければ、排気弁5は通常通り排気行程で1回リフトするだけである。
【0016】
図5乃至図7は、従来のウェストゲート装置付きエンジンと、本発明に係るエンジンとの比較を行うためのグラフである。図5にはエンジン回転数と背圧との関係が示され、図6にはエンジン回転数と過給圧との関係が示される。NE0は、従来エンジンにあってはウェストゲート弁の開放を行う切替回転数を、本発明エンジンにあっては排気弁5の2回リフトを行う切替回転数をそれぞれ示す。即ち従来エンジンでは、エンジン回転数がNE0より小のときウェストゲート弁が閉、大のとき開であり、本発明エンジンではエンジン回転数がNE0より小のとき1回リフト、大のとき2回リフトとなる。なお、エンジン回転数がNE0より小のときはターボ過給機8のコンプレッサ10がサージラインに入るため、排ガスの逆流は行わず1回リフトとしている。
【0017】
図5から分かるように、本発明エンジンでは排ガスの逆流があることから、従来エンジンよりNE0以上の回転数で背圧が低くなる。そして図6から分かるように、本発明エンジンでは従来エンジンよりNE0以上の回転数で過給圧を高めることができる。
【0018】
さらに図7には、背圧と過給圧とがタービンサイズとの関係で示されている。これから分かるように、タービンサイズが小さいほど背圧及び過給圧は高くなる。ところでタービンサイズがある程度小さくなる領域Aにおいて、従来エンジンの場合だと背圧が高くなってもタービン効率が下がってしまい、過給圧が上がらない。しかし、本発明エンジンの場合だと、背圧が下がるためにタービン効率が良くなり、過給圧を上げることができる。このように本発明エンジンの場合、小さいターボ過給機が選定可能となってレスポンス向上等が図れると共に、高過給化が可能となって出力を向上できる。
【0019】
図8は、可変容量型ターボ過給機を備えた従来エンジンと本発明エンジンとにおけるエンジン回転数とノズルベーン開度との関係を示すグラフである。ここでNE0=1500(rpm) である。これから分かるように、本発明エンジンの場合背圧が下がるので、従来エンジンよりノズルベーン開度を小さくすることができる。即ちこれは、本発明エンジンのターボ過給機が、従来エンジンより小さいサイズのもので済むことを意味する。
【0020】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は他にも様々な実施の形態を採ることが可能である。例えばターボ過給機は可変容量型でなくてもよいし、切替手段についても他の構成が可能である。ここでは2弁式のエンジンを示したが、当然4弁式等のエンジンにも適用可能である。エンジン本体についてもガソリン、ディーゼル等あらゆる形式のものが採用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0022】
(1) 排ガスの持つエネルギを有効利用でき、出力向上、燃費向上等を図れる。
【0023】
(2) 背圧を下げられ、小サイズのターボ過給機が選定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るターボ過給機付エンジンを示す概略平面図である。
【図2】本発明に係るエンジンのバルブリフト線図である。
【図3】切替手段を示す構成図である。
【図4】本発明に係るエンジンのガス流量線図である。
【図5】従来エンジンと本発明エンジンとの比較のためのグラフで、エンジン回転数と背圧との関係を示す。
【図6】従来エンジンと本発明エンジンとの比較のためのグラフで、エンジン回転数と過給圧との関係を示す。
【図7】従来エンジンと本発明エンジンとの比較のためのグラフで、タービンサイズと背圧、過給圧との関係を示す。
【図8】従来エンジンと本発明エンジンとの比較のためのグラフで、エンジン回転数とノズルベーン開度との関係を示す。
【符号の説明】
1 シリンダ
5 排気弁
9 タービン
X 切替手段
Claims (2)
- 排気行程でタービン上流側に排出された排ガスを吸気行程でシリンダ内に逆流させるべく、吸気行程でリフト可能な排気弁とその排気弁を吸気行程で選択的にリフトさせるための切替手段とを設け、
上記切替手段は、吸気行程でエンジン回転数が所定の切替回転数以上となったときに上記排気弁をリフトさせることを特徴とするターボ過給機付エンジン。 - 上記切替手段は、吸気行程中、吸気弁のリフト開始後に上記排気弁のリフトを開始し、そのリフトした排気弁を上記吸気弁が閉じる前に閉じる請求項1記載のターボ過給機付エンジン。
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