JP3837450B2 - 梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種建築構造物を構成する梁に形成された貫通孔に固定され当該梁を補強する梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
H形鋼やI形鋼などは建築構造物を構成する梁の材料として広く使用されている。このような建築構造物においては、その内部に設けられる配管や配線を通過させるため、梁のウェブ部に1または2以上の貫通孔を形成することがある。この場合、梁の強度低下を防止する手段として、貫通孔に取り付ける補強用のスリーブ部材(例えば、特許文献1参照。)や補強プレート(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【0003】
特許文献1には、図11に示すような梁貫通スリーブ83が記載されている。この梁貫通スリーブ83は、スリーブ本体80と、このスリーブ本体80の外周部に位置するフランジ81とを、梁82に溶接可能な材料で一体成形されたものであり、スリーブ本体80の肉厚は、少なくともその内周面側が、スリーブ本体80の両端からスリーブ本体80とフランジ81との交接部に向かって徐々に厚くなるように形成されている。このような構成とすることにより、配管84を斜め方向から挿通しても梁貫通スリーブ83の端部に接触して配管84が損傷することがなくなるという効果がある。
【0004】
特許文献2には、貫通孔が形成された梁ウェブ部の両面に、平板状の開口プレートを高力ボルト止めによって接合することを特徴とする貫通孔補強構造が記載されている。これによって、鉄骨加工工数の少ない合理的経済的な梁貫通孔の補強が可能となる。
【0005】
【特許文献1】
特公平4−63942号公報(第1−2頁、第1図)
【特許文献2】
実開平5−57149号公報(第3−4頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されている梁貫通スリーブ83は、梁82のフランジ部85の幅より少し短い筒状の部材であるため、肉厚の調整によって形成できる内径の変化量にも限界があり、梁貫通スリーブ83の挿通角度にも限界がある。このため、さらに配管84の取り付けの自由度が高い補強部材が求められている。
【0007】
また、特許文献2に記載されている貫通孔補強構造は、2枚の開口プレートを必要とするため部品点数が多くなり、梁のウェブ部の両面に配置される2枚の開口プレートをボルトで締結する際の位置決めが困難であるなどの問題がある。
【0008】
一方、近年のインテリジェントビルに代表されるように、建築構造物の設備機能の複雑化が進み、さらに設計対象である建築物が将来的にも建築計画上および建築設備上、十分に機能するように配慮する必要がある。このため、建築構造物内部の各種配管、配線類は柱梁接合構造において柱に接近した領域、言い換えれば、梁の接合端部に接近した領域に集約することが望ましいため、前記貫通孔も柱梁接合構造の柱に接近した位置に形成したいという要請がある。
【0009】
しかしながら、柱に接近した梁の端部は塑性化領域と呼ばれ、大地震時において地震エネルギを吸収して大変形する部位であり、このような領域に貫通孔を設置すると柱梁接合構造の著しい強度低下を招き、それを補うことのできる補強手段もないので、一般に、塑性化領域における貫通孔の設置は避けられている。したがって、配管や配線の面からは不都合な場所である、柱から離れた部位、即ち梁の塑性化領域から離れた部位に貫通孔を形成せざるを得ないのが実状である。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、梁に開設された貫通孔に対する配管の取り付けの自由度を高めるとともに大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置を可能とする梁補強金具と、前記梁補強金具を用いた梁貫通孔補強構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の梁補強金具は、梁に形成された貫通孔の周縁部に締結手段を用いて固定される略リング状の梁補強金具であって、貫通孔に嵌入可能なリング本体と、リング本体の軸方向の片面側の外周に形成されたフランジ部とを有し、貫通孔の周縁部に設けられた複数の締結手段挿通孔と対応した配置の締結手段取付孔をフランジ部に設け、リング本体の軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍としたことを特徴とする。
【0012】
梁に外力が加わったとき貫通孔の周縁部に生じる応力は、梁のウェブ部から貫通孔の中心軸に沿って離れるに従って徐々に小さくなるため、所定以上の軸方向長さは材料の無駄になる。そこで、梁補強金具の形状を略リング状とし、そのリング本体の軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)に規制することによって、大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、また、貫通孔に対して配管を斜めから挿通しても梁補強金具に当接することがなくなり、取り付けの自由度が高まる。
【0013】
この場合、リング本体の軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍としたのは、0.5倍より小さくすると強度が不十分となり、また、10.0倍より大きくすると軸方向の長さの増大の割には強度が大きくならず、材料の無駄が大きくなるからである。
【0014】
なお、前記締結手段取付孔は4〜16箇所に設けることが望ましい。締結手段取付孔が4箇所より少ない場合は1箇所の締結手段に加わる負荷が大きくなり過ぎて、梁補強金具よりも締結手段の方が先に破断することがあり、16箇所より多い場合は締結作業の手間が増大して作業が遅延することがあるため、4〜16箇所が好適であり、これによって各締結手段の応力集中を回避するとともに締結作業を迅速に行うことができる。
【0015】
また、前記梁補強金具の体積を、梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍にすることも可能である。ここで、空間部の体積は、貫通孔の開口面積に梁のウェブ部の厚みを乗じることにより求めることができる。
【0016】
前記梁補強金具の体積を前記空間部の体積の1.0倍〜3.0倍にしたのは、1.0倍より小さいと、貫通孔が形成されていない梁(以下「無孔梁」という。)より強度が小さくなり、また、3.0倍より大きいと梁の無孔部より強度が大きくなるので品質過剰になり、また、重量が大きくなり過ぎるからである。このような構成とすることによって、大きさが異なる貫通孔に対して所定の強度で補強が行われる。
【0017】
前記リング本体の外周部を、フランジ部の無い面側に向かって徐々に縮径させることも可能である。かかる構成により、リング本体を貫通孔に嵌入させる作業を容易化することができ、作業時間も短縮することができる。
【0018】
一方、リング本体の外周部の最小外径部からフランジ部外周までの長さを外周部の最小外径の半分以下とし、フランジ部の軸方向の長さをリング本体の軸方向の長さの半分以下とすることが望ましい。このような構成を有する梁補強金具を、梁の貫通孔に締結手段を用いて固定すると、優れた補強作用を発揮し、貫通孔が形成されていない梁、いわゆる無孔梁と同等の強度が得られるので、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置が可能となる。
【0019】
また、前記リング本体の内径を梁成の0.8倍以下とすることが望ましい。梁成とは、梁の重力方向の寸法、例えば、H形鋼を素材とする梁であれば片方のフランジ部表面から他方のフランジ部表面までの寸法をいう。
【0020】
従来の梁貫通孔スリーブの場合、梁に形成可能な貫通孔の内径は梁成の0.5倍程度が上限であったので、配管、配線が多いときは複数の貫通孔を設ける必要があったが、リング本体の内径を梁成の0.8倍以下とすることにより、梁の強度低下を招くことなく、配管・配線用の孔のサイズを梁成の0.8倍までサイズアップすることが可能となるため、複数の貫通孔を設ける必要がなくなり、工数低減を図ることができる。なお、リング本体の内径が梁成の0.8倍を超えると、梁補強機能が低下するため、0.8倍以下が好適である。
【0021】
前記貫通孔の内縁部に直接当接する3以上の位置決め突起部を外周部に設けることも可能である。このような構成とすることにより、梁補強金具のリング本体と貫通孔の形状の誤差を吸収することが可能となるため、中心位置合わせ作業を容易化することができる。
【0022】
また、前記フランジ部の梁との対向面に、梁との間にジベルを挟持するためのジベル挟持面を設けることもできる。ジベルとは、複数の突起部を有する部材であって、フランジ部と梁との間に挟持することによって両者間の摩擦力を増大させる作用があるため、締結手段に加わる剪断力に対する抵抗力を高める機能を発揮する。
【0023】
次に、本発明の梁貫通孔補強構造は、柱梁接合構造を構成する梁に形成された貫通孔の周縁部に前述したいずれかの梁補強金具を締結手段を用いて固定して形成したものであって、柱と梁との接合位置から梁補強金具の軸心までの距離を前記梁の梁成の2倍以下としたことを特徴とする。このような構成とすることにより、建築構造物内部の各種配管、配線類を通すために梁に形成される貫通孔を、柱梁接合構造の柱に接近した位置に配置することができるようになるため、配管、配線の集約化を図ることが可能となり建築物の設計上好都合であり、配線・配管の施工性も大幅に向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1(a)は本発明の第1実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図であり、(b)は前記梁補強金具が取り付けられる梁の貫通孔を示す側断面図であり、図2は前記梁補強金具の使用状態を示す部分正面図であり、図3は前記梁補強金具の使用状態を示す斜視図である。
【0025】
図1,図2に示すように、梁補強金具1は全体形状が略リング状の部材であって、例えばH形鋼からなる梁2に形成された内径Rの大きさの円形の貫通孔3に梁補強金具1のリング本体4が嵌入され、リング本体4の外周の軸方向の片面側に設けられたフランジ部5が貫通孔3の周縁部に締結手段であるボルト9、ワッシャ11およびナット10を用いて固定されている。
【0026】
梁2の貫通孔3の周囲には締結手段挿通孔6が60度間隔で合計6カ所に形成されている。また、梁補強金具1のフランジ部5には、締結手段挿通孔6の配置と対応する配置で、締結手段取付部の一例である締結手段取付孔7がそれぞれ形成されている。締結手段挿通孔6および締結手段取付孔7には、ボルト9が連通状態に挿通され、ワッシャ11およびナット10によって締結固定されている。フランジ部5を設けているため、軸方向の位置決めを設置用工具なしで確実に行うことができる。
【0027】
リング本体4の外周部は、フランジ部5の無い面側に向かって徐々に縮径させたテーパ形状としている。また、リング本体4の外周部4aの120度間隔の3カ所には、梁2の貫通孔3の内縁部3aに直接当接する位置決め突起部8が均等配置されている。このような位置決め突起部8を設けることによって、貫通孔3の内縁部3aと梁補強金具1のリング本体4の外周部との間に形状的な誤差がある場合でも、容易かつ正確に位置合わせをすることができる。これによって、取り付け精度を向上させ、品質向上を図るとともに、作業時間も短縮することができる。
【0028】
梁補強金具1のリング本体4の最大外径d1は、貫通孔3の内部に形成された内径Rの円形の空間部16に嵌入可能な大きさであり、リング本体4の軸方向長さAは、ウェブ部2wの厚みt1より厚く形成されている。また、リング本体4の内径d2は、その内側に配管15を挿通可能な大きさであって、梁2の重力方向の大きさである梁成Hの0.8倍以下に形成されている。
【0029】
梁2のウェブ部2wの欠損部分である空間部16の体積V1は、
V1=R2×π×t1×1/4
によって求めることができ、梁補強金具1の概略の体積V2は、
V2=(d12−d22)×π×A×1/4
によって求めることができる。なお、梁補強金具1の体積V2は、厳密には、フランジ部5および位置決め突起部8を含めるべきであるが、これらの部分の体積比率は全体に対して小さいため、本実施形態においては、体積V2として前記の式で算出される概略値を採用している。本実施形態では、梁補強金具1の体積V2を空間部16の体積V1の1.0倍〜3.0倍に設定することによって、貫通孔3が形成された梁2の強度を無孔梁と同等にすることができる。
【0030】
また、従来の梁貫通スリーブのように軸方向の長さを長くしても強度への影響が少ないことを考慮し、軸方向の長さAを、半径方向の肉厚B(但しB=(d1−d2)/2)の0.5倍〜10.0倍に設定している。かかる構成によって、空間部16の体積V1と梁補強金具1の体積V2との体積比率の設定を変えずに必要な強度を確保することができるとともに梁補強金具1の軸方向の長さを短くでき、梁補強金具1の内部を通過する配管15の梁2に対する挿通角度を大きくできるので、配管の取り付けの自由度を上げることができる。
【0031】
図1(a)および図2で示したように、梁補強金具1は、そのフランジ部5を梁2の貫通孔3の周縁部にボルト9、ワッシャ11およびナット10で締結することによって強固に固定されている。したがって、梁補強金具1を固定した後は、図3に示すように、その内部に配管15などを挿通させることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図であり、図5は前記梁補強金具の使用状態を示す部分正面図である。梁補強金具12のリング本体13の外周部13aの外径d1は、梁2に形成された内径Rの貫通孔3に嵌入可能な大きさとなっている。外周部13aにはテーパが形成されておらず、また、位置決め突起部も形成されていない。従って、外周部13aが貫通孔3の内縁部3aに直接当接している。また、締結手段取付孔7は90度間隔で4カ所に配置されている。
【0033】
フランジ部5の梁2のウェブ部2wとの対向面には、ウェブ部2wとの間にジベル14を挟持するためジベル挟持面5aが形成されている。これにより、梁補強金具12のフランジ部5と梁2のウェブ部2wとの間にはジベル14を円状に挟持することができる。ジベル14は、梁補強金具12と梁2との間の摩擦係数を高める作用があり、ボルト9などに加わる剪断力に対する抵抗力を高めることができる。かかる構成により、ボルト9の本数を減らすことができ、取付作業を短時間のうちに終了することができる。
【0034】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば、ボルトの本数は4〜16本の範囲内で増減することができる。また、梁補強金具1のリング本体4の軸方向の長さAを、半径方向の肉厚Bの0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)にすることにより、さらに材料の無駄を省いて梁を軽量化するとともに、配管などの設置の自由度を高めることも可能である。
【0035】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態である梁補強金具を示す正面図であり、図7は図6におけるX−X線断面図であり、図8は図6に示す梁補強金具の使用状態を示す正面図であり、図9は図6に示す梁補強金具の使用状態を示す側断面図であって図8におけるY−Y線断面図に相当する図である。
【0036】
なお、図6〜図9に示す梁補強金具20などおいて、第1,第2実施形態の梁補強金具1,12などと同じ機能、効果を発揮する部分には図1〜図5の場合と同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
図6,図7に示すように、梁補強金具20においては、そのリング本体21の外周部21aの片面側にフランジ部23を設けるとともに、外周部21aをフランジ部23の無い面側に向かって徐々に縮径するテーパ形状としている。ここで、梁補強金具20の各部の寸法を図6,図7に示すような符号で表し、締結手段取付孔7の個数をnとすると、梁補強金具20の体積V2は、
によって求めることができる。また、図9に示すように梁2のウェブ部2wに形成された貫通孔3の空間部16(図示せず)の体積V1は、図1(b)に基づいて算出した場合と同様に、
V1=R2×π×t1×1/4
によって求めることができる。
【0038】
本実施形態においては、梁2の貫通孔3にボルト9およびナット10を用いて固定された梁補強金具20の体積V2を、空間部16の体積V1の1.0〜3.0倍とし、リング本体21の最小外径部21aからフランジ部23の外周までの長さCをリング本体21の最小外径d3の半分以下(より好ましくは1/4以下)とするとともに、フランジ部23の軸方向の長さFをリング本体21の軸方向の長さAの半分以下としている。また、梁補強金具20の内径d2を、梁2の梁成Hの0.8倍以下としている。このような構成により、貫通孔3が形成された梁2の強度を無孔梁の強度とほぼ同等にすることができる。
【0039】
ここで、図10を参照して、前述した図6〜9で示した梁補強金具20を用いて構築した梁貫通孔補強構造について説明する。図10に示すように、垂直な1本の柱24に対して水平な4本の梁2を4方向から90度間隔で接合することによって形成された柱梁接合構造において、互いに直線をなすように配置された2本の梁2に形成された貫通孔3に梁補強金具20が図8,図9で示した状態で固定されている。
【0040】
図10に示す梁貫通孔補強構造においては、柱24とそれぞれの梁2との接合部25から梁補強金具20の軸心20cまでの距離22を梁2の梁成Hの2倍以下としている。このように、梁補強金具20を用いて貫通孔3を補強することにより、貫通孔3を柱24に接近した位置に配置することができるようになる。このため、配管、配線の集約化を図ることが可能となって建築物の設計上好都合であり、建築構造物を構築する際の各種配管、配線類の施工性が大幅に向上する。
【0041】
一般に、梁3と柱24との接合部25から梁成Hの2倍の距離だけ離れた位置までの領域を塑性化領域26といい、この領域26は、通常、貫通孔3の形成を回避する領域であったが、ボルト9およびナット10を用いて梁補強金具20を貫通孔3に固定することによって梁2の強度低下が抑制され、無孔梁と同等の強度が得られるため、このような塑性化領域26にも貫通孔3を形成することが可能となった。
【0042】
前述のような構成を有する梁補強金具20が優れた梁補強作用を発揮する理由については、一部不明な部分もあるが、梁補強金具20の形状、各部の寸法比、体積比率などを前述したように設定すれば、梁補強金具20を梁2の貫通孔3に固定することによって、梁2のウェブ部2wの面外剛性が高まり、梁2に外力が加わったときのウェブ部2wの面外変形が防止されるためではないかと推測される。
【0043】
なお、図10では梁補強金具20を用いて構築した梁貫通孔補強構造を示しているが、前述したその他の梁補強金具1,12を用いても同様の梁貫通孔補強構造を構築することが可能であり、梁補強金具20を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、以下に示す効果を奏する。
【0045】
(1)梁に形成された貫通孔に嵌入可能なリング本体と、リング本体の軸方向の片面側の外周に形成されたフランジ部とを有し、貫通孔の周縁部に設けられた複数の締結手段挿通孔と対応する配置の締結手段取付孔をフランジ部に設け、リング本体の軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍(より好ましくは0.5倍〜5.0倍)とすることにより、大きさの異なる貫通孔に対しても材料の無駄を省きつつ必要な強度まで補強することができ、また、貫通孔に対して配管を斜めから挿通しても梁補強金具に当接することがなくなり、配管などの取り付けの自由度を高めることができる。
【0046】
(2)前記梁補強金具の体積を、梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍とすることにより、大きさが異なる貫通孔に対して所定の強度で補強が行なわれ、また、重量が大きくなり過ぎることを防止することができる。
【0047】
(3)前記リング本体の外周部を、フランジ部の無い面側に向かって徐々に縮径させたことにより、梁の貫通孔への嵌入作業を容易化し、作業時間の短縮を図ることができる。
【0048】
(4)前記外周部の最小外径部からフランジ部外周までの長さを外周部の最小外径の半分以下とし、フランジ部の軸方向の長さをリング本体の軸方向の長さの半分以下とすることにより、梁の貫通孔に固定したとき優れた補強作用を発揮するようになり、無孔梁と同等の強度が得られるので、柱梁接合部に近い塑性化領域における貫通孔設置が可能となる。
【0049】
(5)前記リング本体の内径を梁成の0.8倍以下とすることにより、梁の強度低下を招くことなく、配管・配線用の孔のサイズを梁成の0.8倍までサイズアップすることが可能となるため、複数の貫通孔を設ける必要がなくなり、工数低減を図ることができる。
【0050】
(6)前記貫通孔の内縁部に直接当接する3以上の位置決め突起部を前記外周部に設けることにより、貫通孔と梁補強金具の形状的な誤差を吸収して中心位置を合わせることができるようになるため、取付精度が高まって品質が向上するとともに作業時間を短縮化することができる。
【0051】
(7)前記フランジ部の梁との対向面にジベルを挟持するためのジベル挟持面を設けることにより、両者間にジベルを挟持することが可能となり、これによって剪断力に対する抵抗力が増すので、締結手段の個数を減らして、固定作業を短縮化することができる。
【0052】
(8)柱梁接合構造を構成する梁の貫通孔に前記(1)〜(7)のいずれかに記載の梁補強金具を締結手段で固定して形成した梁貫通孔補強構造において、柱と梁との接合位置から梁補強金具の軸心までの距離を梁成の2倍以下とすることにより、柱に近い位置に梁貫通孔を配置可能となるため、配管および配線の集約化を図ることができ、建築物の設計上好都合であり、配管・配線の施工性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の第1実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図であり、(b)は(a)に示す補強金具が取り付けられる梁の貫通孔を示す側断面図である。
【図2】 図1(a)に示す梁補強金具の使用状態を示す正面図である。
【図3】 図1(a)に示す梁補強金具の使用状態を示す斜視図である。
【図4】 本発明の第2実施形態である梁補強金具の使用状態を示す側断面図である。
【図5】 図4に示す梁補強金具の使用状態を示す部分正面図である。
【図6】 本発明の第3実施形態である梁補強金具を示す正面図である。
【図7】 図6におけるX−X線断面図である。
【図8】 図6に示す梁補強金具の使用状態を示す正面図である。
【図9】 図6に示す梁補強金具の使用状態を示す側断面図である。
【図10】 図6に示す梁補強金具を用いて構築した梁貫通孔補強構造を示す斜視図である。
【図11】 従来技術である梁貫通孔スリーブを示す側断面図である。
【符号の説明】
1,12,20 梁補強金具
2 梁
2w ウェブ部
3 貫通孔
3a 内縁部
4,13,21 リング本体
4a,13a,21a 外周部
5,23 フランジ部
5a ジベル挟持面
6 締結手段挿通孔
7 締結手段取付孔
8 位置決め突起部
9 ボルト
10 ナット
11 ワッシャ
13 外周部
14 ジベル
15 配管
16 空間部
20c 軸心
22 距離
24 柱
25 接合部
26 塑性化領域
H 梁成
Claims (8)
- 梁に形成された貫通孔の周縁部に締結手段を用いて固定される略リング状の梁補強金具であって、前記貫通孔に嵌入可能なリング本体と、前記リング本体の軸方向の片面側の外周に形成されたフランジ部とを有し、前記貫通孔の周縁部に設けられた複数の締結手段挿通孔と対応する配置の締結手段取付孔を前記フランジ部に設け、前記リング本体の軸方向の長さを半径方向の肉厚の0.5倍〜10.0倍としたことを特徴とする梁補強金具。
- 前記梁補強金具の体積を、前記梁に形成された貫通孔の内部に形成された空間部の体積の1.0倍〜3.0倍としたことを特徴とする請求項1に記載の梁補強金具。
- 前記リング本体の外周部を前記フランジ部の無い面側に向かって徐々に縮径させたことを特徴とする請求項1または2に記載の梁補強金具。
- 前記外周部の最小外径部から前記フランジ部外周までの長さを前記外周部の最小外径の半分以下とし、前記フランジ部の軸方向の長さを前記リング本体の軸方向の長さの半分以下としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の梁補強金具。
- 前記リング本体の内径を前記梁の梁成の0.8倍以下としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の梁補強金具。
- 前記貫通孔の内縁部に直接当接する3以上の位置決め突起部を前記外周部に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の梁補強金具。
- 前記フランジ部の前記梁との対向面に、前記梁との間にジベルを挟持するためのジベル挟持面を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の梁補強金具。
- 柱梁接合構造を構成する梁に形成された貫通孔の周縁部に請求項1〜7のいずれかに記載の梁補強金具を締結手段を用いて固定して形成した梁貫通孔補強構造であって、前記柱と前記梁との接合位置から前記梁補強金具の軸心までの距離を前記梁の梁成の2倍以下としたことを特徴とする梁貫通孔補強構造。
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