JP3836573B2 - 流動床式排水処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動床式排水処理装置に関し、詳しくは、生物膜付着担体を用いた流動床によって下排水の処理を行う流動床式排水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
流動床による排水処理法は、生物の保持量が多く、高い撹拌力が得られることから、処理効率が良好で、コンパクトな装置で十分な排水処理を行うことが可能である。このため、従来から多くの研究が成されているが、産業排水処理における小規模施設での実用化例はあるものの、公共の下水処理等の比較的大規模での実用例はほとんど無い。
【0003】
図4は、従来の生物膜付着担体を用いた流動床を示すものである。この流動床1は、処理槽2の底部に設けられた原水流入部3と、槽頂部に設けられた処理水流出部4と、槽下部に設けられた支持層5と、槽上部の大径部2a内に設けられた担体流出防止用の分離筒6とにより形成されている。なお、好気性処理を行うものでは、支持層5の部分に散気手段が設けられている。
【0004】
上記従来の流動床1において、生物膜付着担体7としては、ケイ砂,粒状活性炭,アンスラサイト等が用いられており、その比重は、1.4〜2.7程度である。また、担体のサイズ(大きさ)は、直径が0.4〜1mm程度のものが一般的である。このような担体を用いた場合の流動床の流動化速度は、通常、300〜800m/日程度となる。
【0005】
しかし、同じ担体を用い、一定の流速とした場合でも、担体の流動化率(膨張率)は、水温や担体への生物の付着量により大きく影響を受け、流動化率が低過ぎる場合には処理効率は低下し、高過ぎると担体が処理水と共に流出することがある。特に、高負荷で運転される流動床の場合は、生物膜が肥大化し易く、最適な流速範囲が大幅に変化し、例えば、生物が付着する前と比較して1/3〜1/10になることもある。
【0006】
したがって、従来の流動床では、流動化率がある程度高くなっても担体が流出しないようにするため、処理槽の上部に十分な余裕高を設けておく必要があり、しかも、装置上部に、流出する処理水と担体とを分離するための大掛かりな分離装置を設ける必要もあった。特に、好気性処理を行うものでは、散気した空気等のガスも分離する必要があるため、上部の水面積を大きくしなければならなかった。このようなことから、従来の流動床式排水処理装置では、その設置面積が大きくなってしまうという欠点があった。
【0007】
そこで本発明は、簡単な構造で、担体の肥大化した生物膜を剥離し、流動化率を最適な範囲とすることにより、効率的な生物処理を行うことができる流動床式排水処理装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の流動床式排水処理装置は、担体含有水を処理槽上部に上昇させる上昇流路及び上昇流発生手段と、上昇した担体含有水を処理槽下方に向けて流下させる下降流路とを設けた処理槽内に生物膜付着担体を投入した流動床によって下排水の処理を行う排水処理装置において、前記上昇流発生手段が処理槽内に設けられた水中ポンプで、前記上昇流路が前記水中ポンプの吐出管であり、かつ、前記下降流路が前記吐出管の外周を覆うとともに上部が水面上に突出するように設けられた外筒と前記吐出管との間に形成された流路であることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記吐出管内にスタティックミキサーを設けるとともに、吐出管と外筒との間に複数のバッフルプレートを設けこともできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は流動床式排水処理装置の参考例を示す概略断面図であって、処理槽11の底部には、前記同様の原水流入部12と、生物膜付着担体13の支持層14と、散気手段15とが設けられ、槽上部には、処理水流出部16が設けられている。さらに、処理槽11内の上方には、担体13に付着する生物量を制御するための生物膜剥離手段21が設けられている。
【0011】
本参考例における生物膜剥離手段21は、処理槽の中心軸に添って水中に全体が浸漬するように設けられ、その内部に上昇流路を形成する内筒(ドラフトチューブ)22と、このドラフトチューブ22の略上半分を囲い、上部が水面から突出する外筒23と、ドラフトチューブ22内に上昇流を形成するための上昇流発生手段として設けられた上下2段の撹拌翼24とによって形成されており、槽上方には、撹拌翼24を回転軸25を介して駆動するモーター(M)26が設置されている。
【0012】
なお、外筒23は、回転軸25に固着して一体に回転させてもよく、処理槽11に適宜な支持構造を介して回転不能に支持し、回転軸25を適宜な軸受で支持するようにしてもよい。また、外筒23の上部は、担体13の流出が防止できれば完全に密封しなくてもよい。
【0013】
一般に、流動床においては、担体13に生物膜が付着していない運転開始時に、20〜30%程度の流動化率となるように通水速度を設定するが、生物膜が形成されるのに伴って流動化率は増加してくる。効率的な処理を行うためには、流動化率を100〜200%程度に維持することが必要である。
【0014】
上記担体13の流動化に必要なエネルギーは、50%程度の流動化率までは、流速の上昇に従って上昇するが、その後は略一定であり、流動化率は、担体13への生物膜付着量によって左右されることになる。すなわち、100〜200%の流動化率においては、流速による流動化エネルギーは一定であり、流動化層の単位容積に対する投入エネルギーは、流動化率に逆比例するように減少することを意味している。
【0015】
したがって、原水流入部12から流入する原水の流速に伴う撹拌力のみによって生物膜付着量を制御することは困難であり、流動化率を所定範囲に維持することはできない。そして、生物膜が肥大化するのに伴って流動化率は更に増加し、ついには、処理水と共に担体が流出してしまうことになる。
【0016】
上述のように、担体13は、生物膜付着量が多くなるのに伴って処理槽11の上部にまで上昇するようになるので、処理槽11の上部の適当な位置に生物膜剥離手段21を設けることにより、担体13に付着した過剰の生物膜を剥離することができる。すなわち、本形態例では、処理槽11内を上昇する担体13は、撹拌翼24によって上昇流が形成されているドラフトチューブ22内に吸込まれて上昇し、撹拌翼24による機械的な撹拌力が加えられることによって付着した生物膜が適度に剥離される。
【0017】
生物膜が剥離された担体13は、ドラフトチューブ22の上端から流出し、ドラフトチューブ22と外筒23との間に形成されている下降流路を通って流動床の下層部へ戻る。このようにして生物膜が適度に剥離された担体13は、適度な浮上力によって流動床下層部で流動する状態となる。
【0018】
特に、生物膜剥離手段21を流動床の上層部に設置することにより、上層部の肥大化した生物膜のみを効率よく剥離し洗浄することができる。このとき、過度の撹拌力を与えて生物膜を剥離し過ぎたとしても、上層部に上昇したものだけであるため、装置全体の生物保持量が大きく変化することはなく、処理水質への影響もほとんどない。
【0019】
したがって、生物膜剥離手段21の運転時間や撹拌力(撹拌翼24の形状や回転数等)、あるいは、ドラフトチューブ22及び外筒23の長さや径、設置位置を適切に設定することにより、担体13の生物膜付着量を制御することが可能となり、処理槽11内を、最も効果的な流動化率(膨張率)に管理することができ、例えば、流動化率を常に100〜200%の範囲に維持して高効率の処理を行うことができる。また、汚泥界面計等のように担体の膨張率を検出する手段を設けて槽内の流動化状態を測定し、検出した膨張率によって撹拌翼24の運転状態を制御する制御手段を設けることにより、更に効果的な運転を自動的に行うことができる。
【0020】
さらに、担体13の生物膜付着量を適当な範囲に制御することにより、担体13が処理水流出部16まで上昇することがなくなるので、従来のように、槽上部の水面積を大きくしたり、散気に伴うガスの分離手段を設けたりする必要がなくなり、装置の簡略化やコンパクト化を図ることができる。また、従来行われていた担体の洗浄を行う必要がなくなるので、連続運転が可能となり、処理効率を更に向上させることができる。
【0021】
なお、前記担体13としては、従来と同様のケイ砂,粒状活性炭,アンスラサイト等をはじめとして、ポリプロピレンやポリエチレンに比重調整用のシリカやカルシウム等の無機物,金属粉を添加したプラスチック製担体も使用することができる。
【0022】
図2は、本発明の流動床式排水処理装置の第1形態例を示す概略断面図である。なお、以下の説明において、生物膜剥離手段の構成以外は、前記参考例と同様に形成することができるので、同一構成要素に同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0023】
本形態例に示す生物膜剥離手段は、上昇流発生手段となる水中ポンプ31と、該水中ポンプ31から上方に延出して上昇流路を形成する吐出管32と、吐出管32の外周を覆うように設けられて吐出管32との間に下降流路を形成する外筒33とにより形成されている。
【0024】
水中ポンプ31は、生物膜が肥大化した担体13を効果的に吸入できるように、処理槽11の中央部上方に設けられており、外筒33は、吐出管32から吐出される担体含有水が処理水流出部16に流出しない形状に形成されている。本形態例においても、第1形態例と同様に、担体13に付着した肥大化した生物膜は、水中ポンプ31における機械的な剪断力と水の流れによる撹拌力とによって担体13から剥離される。なお、水中ポンプ31には、様々な形式のものが適用できるが、夾雑物による閉塞や、担体13の損傷を考慮すると、スクリュー型ポンプが最適である。
【0025】
図3は、本発明の第2形態例を示す概略断面図である。本形態例は、前記第1形態例における吐出管32内にスタティックミキサー34を設けるとともに、吐出管32と外筒33との間にジグザグ流路を形成する複数のバッフルプレート35を設けたものである。このように、流路内にスタティックミキサー34やバッフルプレート35のような撹拌部を設けて水流の撹拌作用を向上させることにより、生物膜の剥離をより効果的に行うことができ、生物膜剥離手段の小型化等を図ることができる。
【0026】
なお、以上の各形態例に示す生物膜剥離手段は、処理槽の大きさや担体の種類等の処理条件に応じて最適な構造のものを選定することができ、各種構造・形状のものを組み合わせて使用することもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の流動床式排水処理装置によれば、担体に付着する生物量を制御することができるので、最も効果的な流動化率で排水処理を行うことができ、流動床における処理効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例を示す排水処理装置の概略断面図である。
【図2】 本発明の第1形態例を示す排水処理装置の概略断面図である。
【図3】 本発明の第2形態例を示す排水処理装置の概略断面図である。
【図4】 従来の流動床式排水処理装置の概略断面図である。
【符号の説明】
11…処理槽、12…原水流入部、13…担体、14…支持層、15…散気手段、16…処理水流出部、31…水中ポンプ、32…吐出管、33…外筒、34…スタティックミキサー、35…バッフルプレート
Claims (2)
- 担体含有水を処理槽上部に上昇させる上昇流路及び上昇流発生手段と、上昇した担体含有水を処理槽下方に向けて流下させる下降流路とを設けた処理槽内に生物膜付着担体を投入した流動床によって下排水の処理を行う排水処理装置において、前記上昇流発生手段が処理槽内に設けられた水中ポンプで、前記上昇流路が前記水中ポンプの吐出管であり、かつ、前記下降流路が前記吐出管の外周を覆うとともに上部が水面上に突出するように設けられた外筒と前記吐出管との間に形成された流路であることを特徴とする流動床式排水処理装置。
- 前記吐出管内にスタティックミキサーを設けるとともに、吐出管と外筒との間に複数のバッフルプレートを設けたことを特徴とする請求項1記載の流動床式排水処理装置。
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