JP3836188B2 - リングギアの誘導加熱焼入焼戻装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リングギアの孔内に芯金を挿通して、その変形を防止しつつ誘導加熱及び冷却するリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、リングギアの孔内に芯金を挿通して、その変形を防止しつつ、誘導加熱した後、冷媒で冷却するリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置では、誘導加熱前にリングギアの孔内に、芯金をシリンダーなどで昇降させることで挿通させてリングギアの内周面側から支持して変形を防止して誘導加熱処理し、冷媒を導入して誘導加熱したリングギアを冷却した後、芯金を降下させて引き抜くようにしている。
【0003】
この時、焼入れ及び焼戻しされたリングギアは、熱膨張により、孔径が焼入れ及び焼戻し前に比べて、小さくなることがある。このため、芯金を引き抜くとき抜く難かったり、リングギアの内周面に芯金引き抜きによる傷が付くことがある。このため、リングギア内径より小さい外径をもつ芯金を放射方向に複数分割させて、リングギアへの挿通及び引き抜き時には芯金の分割片間の間隙を狭くすることにより、芯金外径を小さくし、また、誘導加熱開始時から冷却終了時には芯金の外径を拡大し、リングギアの内周面を支持固定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置では、誘導加熱及び冷却時に、芯金分割片間の間隙に対向するリングギアの内周面と、分割片に当接するリングギア内周面とでは、焼入硬化層深さにばらつきが発生する。すなわち、芯金分割片間の間隙に対向するリングギア内周部分においては、芯金分割片に接触するリングギア内周面より焼入硬化層が深くなるといった問題が発生していた。
【0005】
これは、芯金分割片間に間隙がある芯金に内周面を支持固定されたリングギアの外周面を誘導加熱した場合、リングギアに発生する誘導電流が不均一になるためである。すなわち、リングギアの内周面に芯金が接触している部分と接触していない部分があり、接触していない部分では誘導電流量か多くなるためである。また、芯金分割片に接触するリングギアの部分では、誘導加熱時にリングギアの内部保有熱が芯金分割片に熱伝導により吸収発散されるが、芯金分割片の間隙に対向するリングギアの部分では、この現象が発生しないため、焼入れのための誘導加熱後の冷却時に焼入硬化層の深さにばらつきが生じるためである。
【0006】
〔目的〕
本発明の目的は、リングギアの誘導加熱による焼入れ及び焼戻しにおいて、リングギアの変形を防止しつつ、芯金の引き抜きを容易にし、更にリングギアの全外周面において、均一な焼入硬化層を得るリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置は、リングギアの孔内に挿通する複数分割された芯金の外周面に設けられた凹部に導電性かつ熱伝導性を有する金属製環状部材を嵌合し、該金属製環状部材の上面にリングギアを載置し、該リングギアの外周に設けられた誘導加熱コイルによってリングギアを誘導加熱し、その直後に、該リングギアを冷却することによって焼入れを行い、さらに、該冷却の直後に焼入れ時と同じ誘導加熱コイルを用いて、焼入れ時より低い周波数を適宜選定して誘導加熱を行い再び冷却することによって焼戻しを行う。
【0008】
前記芯金は、外周面に凹部を有し、かつ放射方向に複数分割され、前記リングギアの孔内に挿通する時は、芯金の分割片間を中心方向に移動させて芯金外径をリングギアの孔内径より小さくし、リングギア孔内への芯金の挿通を容易にする。また、リングギアの誘導加熱及び冷却時には、該分割片を放射方向に移動させることにより芯金の径を拡大してリングギア内周面を支持固定する。この時、各芯金分割片間には一定の間隙が形成される。そして、冷却終了後の該芯金の引き抜き時には、再び分割片を中心方向に移動させることにより芯金の外径を小さくし、リングギア内からの芯金の引き抜きを容易にする。
【0009】
前記導電性かつ熱伝導性を有する金属製環状部材は、リングギアを誘導加熱コイルにより誘導加熱した場合、一体の電流路を形成する。また、該金属製環状部材の上面にリングギアを載置して、誘導加熱した場合、リングギアの内部保有熱を熱伝導により吸収する。したがって、該金属製環状部材の材質は、導電性で、かつ、熱伝導性が良好な銅等の材質が好ましい。該金属製環状部材の幅は、その上面にリングギアを載置した場合において、リングギアの所望の焼入硬化層の深さが該金属製環状部材に接触しないように設定する。すなわち、リングギアの下面全面が該金属製環状部材に接触すると、金属製環状部材にリングギアの内部保有熱が吸収発散されるため、リングギアの外周に所望の焼入硬化層が得られないからである。
【0010】
また、前記芯金分割片の移動が可能なように、芯金の芯金分割片が中心方向に移動して芯金の外径を小さくした場合において、芯金と前記金属製環状部材の間には所定の隙間を形成する。
【0011】
また、前記誘導加熱コイルは、リングギアの外周に配設され、リングギアの外周を誘導加熱する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1〜図5は、本発明を適用した誘導加熱焼入焼戻装置の一実施の形態を示す図である。
【0014】
まず、構成を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の誘導加熱焼入焼戻装置1の要部構成を示す断面図である。この図1において、誘導加熱焼入焼戻装置1は、分割された芯金2と、この芯金2を図中の矢印方向に移動させる芯金移動機構3と、芯金2により固定される被焼入部材であるリングギアWを誘導加熱する加熱コイル4と、被加熱部材の図中上方への変形を押える押え機構5と、芯金の分割片2の拡径方向移動時に芯金2の凹部に嵌合する金属製環状部材6と、から構成されている。
【0016】
図1の芯金2は、図2に示す平面図のように放射方向に3分割して構成されるとともに、各芯金分割片2bは同心円上に所定間隔を隔てて配置されており、図1の芯金移動機構3により図1及び図2中に示す矢印方向に移動され、芯金2の外径を大きくする方向に移動された場合に、その外周にセットされる後述する被焼入部材であるリングギアW(図示せず)の内周面を各芯金分割片2bが支持固定して、誘導加熱及び冷却時のリングギアWの変形を防止する。また、各芯金分割片2bは、芯金移動機構3により芯金2の外径を小さくする方向に移動された場合には、その外周面とリングギアW内周面との間に充分な隙間を形成して、リングギアWからの芯金2の取り出しを容易にしている。また、各芯金分割片2bの外周には金属製環状部材6が嵌合するように凹部2aが形成されている。
【0017】
芯金移動機構3は、図1に示すように、ケース3aと、このケース3a内に収納される移動部材3b、この移動部材3bに芯金2を固定する固定部材3c、移動部材3bを図中の中心軸方向に付勢して縮径方向に移動させるスプリング3dと、図中の上方に上昇移動されて、その先端部の円錐形状により移動部材3bを図中の左右方向に押し拡げて拡径方向に移動させる移動棒3eと、から構成されている。
【0018】
移動部材3bは、図2の平面図に示すように、固定部材3cとともに3分割された芯金2毎に固定され、各移動部材3bの中心軸方向端部の形状は、移動棒3eの先端部の円錐形状に沿って接するようにテーパー状に形成されている。したがって、移動部材3bは、移動棒3eの上昇移動により、その先端部円錐形状によりスプリング3dの付勢力に抗して押し拡げられて拡径方向に均等に移動される。
【0019】
スプリング3dは、ケース3a内で3つの移動部材3b毎に設けられ、その一端部がケース内壁に固定され、他端部が移動部材3bに当接して移動部材3bを付勢する。スプリング3dは、移動棒3eが下降された場合は、伸張時には図中の中心軸方向に移動部材3bを付勢して縮径方向に移動させ、移動棒3eが上昇移動された場合は、移動部材3bの拡径方向への移動に伴って収縮される。
【0020】
固定部材3cは、3分割された芯金2毎に、その芯金2と移動部材3bとの間に介在して図示しない固定ボルト等により芯金2と移動部材3bとを固定し、移動部材3bの移動に伴って芯金2を移動させる。
【0021】
移動棒3eは、その先端部が円錐状に形成され、図示しない駆動機構により上昇及び下降駆動され、上昇時に先端部テーパー形状によりスプリング3dの付勢力に抗した移動部材3bを図中左右方向に押し拡げて、拡径方向に移動させる。
【0022】
誘導加熱コイル4は、被焼入部材であるリングギアW(例えば、歯車)の外周面を誘導加熱するためのものであり、図示しない高周波電源装置から供給される所定の高周波電流により交番磁束を発生して、リングギアWの外周面に誘導電流を発生させて誘導加熱し、その後、リングギアWを冷却することにより、リングギアWの外周面に焼入硬化層を形成させる。
【0023】
押え機構5は、図示しない駆動機構により上昇及び下降駆動され、その下降移動により芯金2により支持固定されるリングギアWの上面を全周にわたって上方から押えて、誘導加熱及び冷却時のリングギアWの上方への変形を押える。
【0024】
金属製環状部材6は、芯金2の凹部2aに嵌合され、かつ、芯金分割片2bの放射方向への移動が可能なように、芯金2の外径が小さくなっている時、すなわち、芯金分割片2bが中心方向に移動し終えた後では、芯金2との間に所定の間隙を形成する。金属製環状部材6の上面にはリングギアWが載置される。このリングギアWの誘導加熱時には、リングギアWに誘導加熱電流が発生すると同時に、各芯金分割片2bの外周部及び各芯金2間の間隙部においても金属製環状部材6により一体の電流路が形成される。すなわち、この金属製環状部材6が補助的な電流路として作用し、リングギアWに発生する誘導電流量を全周にわたって平均化する。
【0025】
また、リングギアWの冷却後には、芯金分割片2b間の間隙の有無に拘らず、リングギアWの外周面に均一な焼入硬化層を形成する。従って、リングギアWの所望の焼入硬化層の幅には金属製環状部材6を接触させることは好ましくない。すなわち、金属製環状部材6に接触するリングギアWの部分は、前述のように脱熱されるため、焼入硬化層が形成されない恐れがあるためである。
【0026】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0027】
図1の誘導加熱焼入焼戻装置1によるリングギアWの誘導加熱処理の際の芯金2及び芯金移動機構3の動作について図3〜図5を参照して説明する。
【0028】
まず、図3は、誘導加熱焼入焼戻装置1に被焼入部材であるリングギアWが3分割された芯金2に挿通され、かつ金属製環状部材6上に載置されセットされた状態を示しており、この時、リングギアWの焼入硬化層を所望する部分Waには金属製環状部材6が接触しないようにする。また、芯金2の分割片2bは図中の矢印方向に移動しているため芯金2の外径はリングギアWの内径より小さくなっている。
【0029】
また、この時、芯金移動機構3の移動棒3eは図中の下方に固定され、移動部材3bはスプリング3dの付勢力により図中の中心軸方向に付勢されて外径が小さい状態にされている。この芯金2の縮径状態でリングギアWは、加熱コイル4と芯金2の間の所定位置にセットされる。
【0030】
次いで、図4は、誘導加熱焼入焼戻装置1にセットされたリングギアWの誘導加熱及び冷却中の状態を示している。この時、予め、芯金2の分割片2bは図中の矢印方向に移動することにより芯金2の外径が拡大され、リングギアWの内周面を支持固定して誘導加熱及び冷却による変形を防止している。芯金2の移動は、先端がテーパ状の移動軸3eの上昇により移動部材3bが図中の矢印方向に移動し、これに伴い移動部材3b上にボルト等で固定されている固定部材3cを介して移動部材3bと移動部材3bにボルト止めされた芯金2が矢印方向に移動する。
【0031】
そして、押え機構5は、芯金2の移動とほぼ同時に、リングギアWの上方から下降し、リングギアWの上面を全周に亘って押圧しつつ支持固定し、リングギアWの誘導加熱及び冷却時における上方への変形を防止する。金属製環状部材6は、芯金2の外周面に設けられた凹部2aに嵌合される。また、図2に示すように芯金分割片2b間には間隙2cが形成される。
【0032】
誘導加熱コイル4は、リングギアWの外周に所定の間隔を隔てて配置され、リングギアWの外周面を誘導加熱し、その直後に図示しない冷却液噴射ジャケットから噴射される冷却液によりリングギアWの被加熱部を冷却し、焼入硬化層を形成する。焼入れ終了後は、芯金2及び押え機構5を移動させることなく再び焼入れ時と同じ誘導加熱コイル4により誘導加熱を行う。この時、誘導加熱を行う誘導電流をリングギアWに発生させる図示しない高周波電源装置から供給される所定の高周波電流の周波数は、上記焼入れ時より低い周波数を適宜設定する。
【0033】
そして、この誘導加熱終了後は、再び焼入れ時と同じ方法により冷却を行い、リングギアWを焼戻しする。この焼戻し終了後は図5に示す状態になる。
【0034】
すなわち、芯金分割片2bを再び中心方向に移動させることにより、芯金2の外径をリングギアWの内径より小さくし、芯金2の引き抜きを容易にする。芯金分割片2bの移動は、移動軸3eを下降させることにより、移動部材3bが固定部材3c及び芯金2を伴って図中の矢印方向に移動する。この時、移動部材3bは圧縮コイルばね3dの伸張により付勢されているため、移動軸3eの下降のみで芯金2の移動は可能となる。
【0035】
以上のように、本実施の形態の誘導加熱焼入焼戻装置1では、冷却処理時のリングギアWの変形を防止する芯金2を3分割して分割片2bを構成して、この芯金分割片2b間に隙間2cを形成し、この3分割した芯金2を芯金移動機構3により外径が小さくなる方向及び外径が拡大する方向に均等に移動可能としたため、誘導加熱時及び冷却処時には、芯金2の外径を拡大する方向に移動させることにより、リングギアWの変形を防止することができ、この誘導加熱及び冷却時の前後には、芯金2の外径を小さくする方向に移動させることにより、被加熱部材であるリングギアWのセット及びリングギアWからの芯金2の抜き取りを容易にしている。
【0036】
このため、誘導加熱焼入焼戻装置1においては、リングギアWの誘導加熱及び冷却後にリングギアWから芯金2が抜けにくくなったり、芯金2を抜き取る時にリングギアWの内周面に傷を付けてしまうといった事態の発生を防止することができ、リングギアWを誘導加熱する誘導加熱焼入焼戻装置1の信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、各芯金分割片2bに設けた凹部2aに嵌合する金属製環状部材6を設置し、この金属製環状部材6は、芯金2の凹部2aに嵌合され、かつ、芯金分割片2bの放射方向への移動が可能なように、芯金2の外径が小さくなっている時、すなわち、芯金分割片2bが中心方向に移動し終えた後では、芯金2との間に所定の間隙を形成する。金属製環状部材6の上面にはリングギアWが載置される。このリングギアWの誘導加熱時には、リングギアWに誘導加熱電流が発生すると同時に、各芯金分割片2bの外周部及び各芯金2間の間隙部においても金属製環状部材6により一体の電流路が形成される。すなわち、この金属製環状部材6が補助的な電流路として作用し、リングギアWに発生する誘導電流量を全周にわたって平均化するとともに、リングギアWの誘導加熱による内部保有熱を吸収発散せさることができ、リングギアWの外周面に均一な焼入硬化層を得ることができる。
【0038】
ここで、加熱処理時に、上記各芯金2に金属製環状部材6を適用しない場合と、上記各芯金分割片2bに金属製環状部材6を適用した場合とで、リングギアWに形成される焼入層の一例を、図6及び図7に示す。この図6及び図7では、リングギアWとして歯車を誘導加熱した例を示す。
【0039】
図6は、上記各芯金分割片2bに金属製環状部材6を適用しないで誘導加熱した場合に、リングギアWとしての歯車の一部に形成された焼入硬化層の一例を示している。この場合、その歯車の芯金分割片2b間との間隙部に対向する部分の焼入硬化層が深くなって"焼き抜け"状態が発生している。これは、金属製環状部材6による補助電流路が形成されないため、リングギアWの芯金分割片2bの間隙2cに対向する部分に、誘導加熱コイル4により発生される誘導電流量が多くなることにより発生するものである。
【0040】
そして、図7は、上記各芯金分割片2bに金属製環状部材6を適用して誘導加熱した場合に、リングギアWとしての歯車の一部に形成された焼入硬化層の一例を示している。この場合、その歯車の芯金分割片2b間の間隙2cに対向する部分の焼入硬化層の深さは、他の間隙2cに対向しない部分に形成された焼入硬化層の深さと同様である。これは、金属製環状部材6による補助電流路が形成されため、リングギアWの芯金分割片2b間の間隙2cに対向する部分と、他の間隙2cに対向しない部分でも、誘導加熱コイル4により発生される誘導電流量が平均化されて、図6に示した様な"焼き抜け"状態の発生が防止されているからである。
【0041】
また、この誘導加熱及び冷却に際して、環状ワークWは、その内周壁側を芯金分割片2bにより支持固定されることにより、その放射方向への変形が防止されるとともに、押え機構5により上方から押えられることにより、その上方への変形が防止される。
【0042】
次いで、図5は、誘導加熱焼入焼戻装置1にセットされた環状ワークWの誘導加熱後の芯金2及び芯金移動機構3の状態を示しており、この時、芯金移動機構3の移動棒3eは駆動機構により図中の下方に下降移動され、移動部材3bはスプリング3dの付勢力により図中の中心軸方向に付勢されて縮径状態にされる。この芯金2の縮径状態で、芯金2と環状ワークWの間には充分な隙間が形成され、環状ワークWの取り出し、あるいは芯金2の環状ワークWからの抜き取りが容易に行われる。
【0043】
また、本実施の形態の誘導加熱焼入焼戻装置1では、焼入れ後のリングギアWを芯金2及び押え機構5により支持固定したままの状態で、誘導加熱時の周波数を適宜設定し、再び誘導加熱及び冷却を実行することによりリングギアWを焼戻しすることも可能である。
【0044】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態では、芯金2を3分割で構成した場合を示したが、その分割数は限定されるものではなく、芯金移動機構3の構造がより複雑にならない程度に分割数を増やしてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態の芯金移動機構3の構成は限定されるものではなく、上記芯金2を移動させる目的が達成可能なものであれば、種々の構成に変更可能である。
【0046】
【発明の効果】
本発明のリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置は、誘導加熱及び冷却後のリングギアの抜き取りを容易にするために芯金を分割し、芯金外周面に嵌合した金属製環状部材によりリングギアに発生する誘導電流量を全周に亘って平均化することができ、リングギアの誘導加熱による内部保有熱を金属製環状部材に吸収発散させることにより、リングギアの外周面に均一な焼入硬化層を得ることができる。
【0047】
また、本発明のリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置は、焼入れ後のリングギアを芯金及び押え機構により支持固定したままの状態で、誘導加熱時の周波数を適宜設定し、再び誘導加熱及び冷却を実行することによりリングギアを焼戻しすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した誘導加熱焼入焼戻装置の要部構成を示す断面図。
【図2】図1の芯金を上方から見た平面図。
【図3】図1の誘導加熱焼入焼戻装置へのリングギアのセット時の芯金及び芯金移動機構の状態を示す図。
【図4】図1の誘導加熱焼入焼戻装置においてリングギアを誘導加熱中の芯金及び芯金移動機構の状態を示す図。
【図5】図1の誘導加熱焼入焼戻装置においてリングギアを誘導加熱後の芯金及び芯金移動機構の状態を示す図。
【図6】図1の芯金に嵌合部材を適用しないで加熱処理された環状ワークの焼入層の一例を示す図。
【図7】図1の芯金に嵌合部材を適用して加熱処理された環状ワークの焼入層の一例を示す図。
【符号の説明】
1 誘導加熱焼入焼戻装置
2 芯金
2a 凹部
2b 芯金分割片
2c 間隙
3 芯金移動機構
3a ケース
3b 移動部材
3c 固定部材
3d スプリング
3e 移動棒
4 加熱コイル
5 押え機構
6 金属製環状部材
W リングギア
Claims (1)
- リングギアの孔内に放射方向に複数分割された芯金を挿通し、該芯金の分割片間の間隙を拡げることにより該芯金の外径を拡径し、該リングギアの内周面を該各分割片により支持固定し、該リングギアの外周に設けられた誘導加熱コイルにより該リングギアの外周面を誘導加熱を行った後、冷媒により冷却して前記リングギアを焼入れし、その後直ちに、焼入れ時より低い周波数で誘導加熱を行った後、冷媒により冷却するリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置において、
前記リングギアの上方から降下させる支持部材により該リングギアの上面を押圧しつつ支持固定し、前記複数分割された芯金の外周面に凹部を設け、該凹部に導電性かつ熱伝導性を有する金属製環状部材を嵌合させ、該金属製環状部材上に被焼入部材である前記リングギアを載置することを特徴とするリングギアの誘導加熱焼入焼戻装置。
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