JP3836042B2 - 堤体 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば海岸に設置されて前方海域における海流を誘起させ得る堤体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、海岸には、護岸設備として、消波堤が多数設置されているが、その設置海域における海流状態および海底の地形状態によっては、海流が緩慢になったり、また停滞したりして、海水の汚染が進むという好ましくない事態が生じている。
【0003】
このような事態を解消するものとして、従来、海岸に設置されるとともに波浪エネルギーを利用して海中に循環流を発生させ、水質改善を行うようにした設備がある。
【0004】
このような設備としては、例えば図5に示すような防波・消波用の護岸設備としての堤体がある。
この堤体51は、その頂部が海面上に露出されるとともに、その内部に断面が矩形状の遊水室52が形成されており、また波(波浪)に対向する堤体51の前壁部51aの海面付近および海底近傍位置には、海側と上記遊水室52とを連通させる管状の海水用導入口53(53A,53B)および海水用導出口54が、それぞれ堤体1の設置方向に沿って所定間隔おきに形成されている。
【0005】
この堤体51によると、沖からの波が堤体51の前壁部51aに到達すると、その一部は、海水用導入口53から遊水室52内に流入するとともに、後壁部51bによりその向きが下方に変えられた後、海水用導出口54から前方海中に流出される。
【0006】
すなわち、沖から到達した波の一部は、この堤体51の遊水室52を介して、海底近傍から前方海中に流出されるため、その海底近傍では、波と逆方向の流れが発生し、したがって前方海域の海面下には、矢印bにて示すような循環流が誘起されて、海流の停滞による水質汚染が防止されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の堤体の構成によると、なる程、沖から到来した波が、遊水室52内を介して堤体51の底部から前方に流出することにより、前方海域に循環流を誘起してその海域における海水の浄化を図ることができるが、波を遊水室52に導入する海水用導入口53が管状であるため、すなわち海水導入用口53の入口および出口が同一面積であるため、どちらかと言えば、消波についてはその効果が発揮されるが、堤体51から流出する海水の勢いの点からみると、すなわち前方海域において、循環流を誘起させるという点では、より強い循環流が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、波浪エネルギーを利用して、循環流をより強く誘起させ得る堤体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の堤体は、海岸に且つ到来する波に対向するように設置される堤体であって、
内部に遊水室を有し、且つ沖側の前壁部の海面付近に、前方海域と上記遊水室とを連通させる上部海水導通路を形成するとともに、前壁部の下部に、上記遊水室と前方海域の海中とを連通する下部海水導通路を形成し、
上記上部海水導通路の鉛直断面形状を、前方海域側の入口部の高さよりも遊水室側の出口部の高さを低くするとともに、上記遊水室の上側内壁面を、上部海水導通路の出口部の上面よりも高くして、当該上部海水導通路から流入する海水の流れを下方に変更させるための流れ変更用空間部を、遊水室内に設けたものである。
【0010】
上記の構成によると、到来した波は、上部海水導通路より遊水室内に入った後、下部海水導通路から前方海域の海中に流出して、前方海域に循環流を誘起させるが、このとき、流れが上部海水導通路にて絞られて遊水室内に勢いよく流入するとともに、前方海域と遊水室との水位差の増大により、下方に力強く移動して下部海水導通路から流出されるため、前方海域で誘起される循環流が、より強く大きいものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る堤体を、図1〜図3に基づき説明する。
本実施の形態における堤体は、例えば海岸(または海岸線近傍の海側)に、所定長さでもって護岸用、すなわち消波用(防波用)として設置されるものである。
【0012】
図1および図2に示すように、この堤体1の波の到来方向に沿う鉛直断面形状は、外壁体2が矩形状にされるとともに、その内部に矩形状の遊水室3が形成されたものである。より具体的に説明すると、外壁体2は、沖から到来する波に対向する前壁部2aと、陸地側に対向する後壁部2bと、前壁部2aと後壁部2bとの上端同士を接続する上壁部2cと、前壁部2aと後壁部2bとの下端同士を接続する底壁部2dと、両側の側壁部2eとから構成されており、したがってこれら各壁部2a〜2eの内側に遊水室3が形成されている。なお、上記外壁体2の外周面については、鉛直面とされている。
【0013】
そして、上記前壁部2aにおける海面近傍位置には、その前方海域と遊水室3とを連通させて海水を遊水室3側に導くための海水導入用通路(上部海水導通路)11が設けられるとともに、前壁部2aにおける海底近傍位置には、その前方海域の海中と遊水室3とを連通させて遊水室3内の海水を前方海域側に導くための海水導出用通路(下部海水導通路)12が形成されている。
【0014】
さらに、上記海水導入用通路11の鉛直断面形状は、前方海域側の入口部11aの高さ(h1i)よりも遊水室3側の出口部11bの高さ(h1o)が低く(狭く)されており、簡単に言えば、海水導入用通路11内に入った波を絞るようにテーパ状にされている。また、上部のテーパ面11cの傾きは0〜1/12の範囲内にされるとともに、下部のテーパ面11dの傾きは1/24〜1/6の範囲内に設定されており、したがって海水導入用通路11の入口部11aの高さに応じて前壁部2aの厚さが決定されることになる。なお、この海水導入用通路11の配置高さは、その中心高さが、ほぼ海面の平均高さ(平均水位)に一致されている。
【0015】
また、上記海水導入用通路11および海水導出用通路12の各幅(出入口部の幅)は当該堤体1の設置長さにほぼ等しく(正確に言えば、外壁体2の両側壁部2eの厚さ分だけ短くされている)されるとともに、幅が広い場合には、その中間の適当位置に、補強材13が配置されている。勿論、堤体1が長い場合には、補強材13は所定間隔おきに複数個配置されるが、堤体1が短い場合には、補強材を設けなくてもよい。
【0016】
また、上記遊水室3の上側内壁面3aは、海水導入用通路11の出口部11bの上面よりも、所定高さHだけ高くされて、当該遊水室3内には、海水導入用通路11から導かれた海水を下方にその流れを変更させ得る流れ変更用空間部3bが形成されている。
【0017】
なお、上記海水導出用通路12の鉛直断面形状は、遊水室3側の入口部12aの高さ(h2i)と前方海域側の出口部12bの高さ(h2o)とが同一と(同一でなくてもよい)なるようにされている。
【0018】
上記堤体1を所定海域の海岸に設置した場合、沖から波が到来すると、この波は海水導入用通路11内を通過して遊水室3内に入る。このとき、波は、海水導入用通路11を通過する際に、絞られることになり(縮流となる)、したがって勢いよく遊水室3内の流れ変更用空間部3bに流入するとともに、前方海域と遊水室3との水位差の増大により、遊水室3内を下方に力強く移動して海水導出用連通路12を経て前壁部2aから前方海域の海中内に流出する。
【0019】
この前壁部2aから流出した海水により、前方海域における海中では、図3の矢印aにて示すような流れ、すなわち循環流が誘起(発生)され、したがって当該海域での海水がより強く且つ広範囲でもって移動するため、海面付近で空気を取り込んだ海水および遊水室3内で空気を取り込んだ海水が海域全体に広がるため、海水の浄化、すなわち水質改善の向上を図ることができる。
【0020】
勿論、この堤体1においても、その前壁部2aに設けられた海水導入用通路11および遊水室3により、当該堤体1に到来した波のエネルギーか消費され、特に、海水導入用通路11の出口部11bでは、流れが絞られた後一気に開放されるため、波のエネルギーが大きく消費されて消波機能が効果的に発揮される。
【0021】
また、少なくとも、海水導入用通路11は、その幅がほぼ堤体1の設置長さに等しくなるようにされているため、堤体1に到来する波をほぼ全面(堤体のほぼ全長)に亘って遊水室3に導くことができ、したがって従来例で示した管状の海水用導入口が所定間隔おきに設けられた場合に比べて、遊水室3への導入海水量が非常に多くなるため、消波機能が一層効果的に発揮される。
【0022】
ところで、上記実施の形態においては、堤体1の前壁部2aの前面を、鉛直面であると説明したが、図4に示すように、前壁部2aの底部が前方に広がるように、その前面を傾斜させるようにしてもよく、この場合には、当該前壁部2aの前面に沿って、より多くの海水が海水導入用通路11内に導かれることになり、海面を伝わる波のエネルギーに加えて、海面下の海流の持つエネルギーについても、利用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明の堤体の構成によると、到来した波は、上部海水導通路より遊水室内に入った後、下部海水導通路から前方海域の海中に流出して、前方海域に循環流を誘起させるが、このとき、流れが上部海水導通路にて絞られて遊水室内に勢いよく流入するとともに、前方海域と遊水室との水位差の増大により、下方に力強く移動し下部海水導通路から流出されるため、前方海域で誘起される循環流が、より強く大きいものとなり、したがって海水の浄化、すなわち水質改善の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る堤体の断面図である。
【図2】同堤体の正面図である。
【図3】同堤体を設置した場合の海域での海流を示す線図である。
【図4】同堤体の変形例を示す断面図である。
【図5】従来例の堤体の断面図である。
【符号の説明】
1 堤体
2 外壁体
2a 前壁部
3 遊水室
11 海水導入用通路
11a 入口部
11b 出口部
12 海水導出用通路
12a 入口部
12b 出口部
Claims (1)
- 海岸に且つ到来する波に対向するように設置される堤体であって、
内部に遊水室を有し、且つ沖側の前壁部の海面付近に、前方海域と上記遊水室とを連通させる上部海水導通路を形成するとともに、前壁部の下部に、上記遊水室と前方海域の海中とを連通する下部海水導通路を形成し、
上記上部海水導通路の鉛直断面形状を、前方海域側の入口部の高さよりも遊水室側の出口部の高さを低くするとともに、上記遊水室の上側内壁面を、上部海水導通路の出口部の上面よりも高くして、当該上部海水導通路から流入する海水の流れを下方に変更させるための流れ変更用空間部を、遊水室内に設けたことを特徴とする堤体。
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