JP2004019279A - 防波堤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】防波堤本体21の内部に高さの異なる第1、第2逆流防止壁27,28を立設すると共に、各逆流防止壁27,28の後方に第1、第2遊水部29,30をそれぞれ設け、前壁部23の上部に外海15と各遊水部29,30とを連通するスリット31を形成する一方、後壁部24の下部に各遊水部29,30と内海16とを連通する第1、第2導水孔32,33を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外海と内海を区画するように海底に設置される防波堤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、港湾においては、ケーソンなどによって防波堤が設けられており、この防波堤によって外海と内海とが区画され、内海側に閉鎖的水域が形成されている。この内海側の閉鎖的水域は外海からの海水の流通性が不十分であり、内海での海水が汚れてしまうという問題がある。
【0003】
そこで、防波堤に透水機能を設けることで、内海側の閉鎖的水域における海水の流れを発生して外海との海水の流通性を向上し、内海での海水の汚れを防止するようにしたものが各種提案されている。例えば、特開平11−350449号公報に開示された海水交換型防波堤にあっては、越波が生じる高さのケーソンの港内側に後退型パラペットを設け、このケーソンとパラペットとの間に遊水室を設けると共に、遊水室と内海とを連通管によって連通させ、ケーソンを越えた波を遊水室に取り込み、これにより生じた水位差で海水を連通管によって内海に導入するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、潮の満ち引きにより外海では朝夕で海水に水位差が生じる。そのため、上述した従来の海水交換型防波堤にて、海水の水位が下がったときには、波がケーソンを越えず、遊水室の海水を内海に導入することができず、内海側の閉鎖的水域における海水の流れが促進されずに海水の汚れを十分に防止することができないという問題がある。
【0005】
なお、特開平8−311843号公報には、高さの異なって傾斜する3つの波遡上板を設けることで、潮の満ち引きによる水位変動に対応可能とした防波堤が開示されている。ところが、この公報に開示された防波堤では、3つの波遡上板により水位変動に対応することができるものの、開口部及び濾層により直接外海と内海を連通しているため、外海の波のエネルギが開口部を通して内海に伝わりやすく、内海の海面を十分穏やかに維持することができない。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するものであって、海水位が変動しても確実に透水機能を作用させて閉鎖的水域における海水の流通性を向上し、内海での海水の汚れを確実に防止可能とした防波堤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための請求項1の発明の防波堤は、外海と内海を区画するように海底に設置された防波堤本体と、前記外海に対向して該防波堤本体に設けられた高さの異なる複数の逆流防止壁と、該各逆流防止壁の前記内海側に設けられた複数の遊水部と、該各遊水部と前記内海とを連通するように前記防波堤本体の下部に設けられた複数の導水部とを具えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明の防波堤では、前記各逆流防止壁の前記内海側に越流誘導部が設けられたことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明の防波堤では、前記内海側に位置する前記逆流防止壁に越流補助用の湾曲誘導部が設けられたことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明の防波堤では、前記防波堤本体は中空形状をなし、内部に前記複数の逆流防止壁が設けられ、前記外海側に入水部が設けられたことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明の防波堤では、前記防波堤本体の下部に前記外海と前記内海とを連通する潮流導入用導水孔が設けられたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1に本発明の一実施形態に係る防波堤の断面、図2に本実施形態の防波堤の正面視、図3に本実施形態の防波堤の背面視、図4に本実施形態の防波堤が適用された港湾を表す概略を示す。
【0014】
本実施形態において、図4に示すように、港湾においては、岸壁11から所定距離離れた沖合にケーソンなどによって防波堤12,13が設置され、その間に船舶の出入航路14が設けられている。また、この防波堤12,13によって外海15と内海16とが区画され、内海16が閉鎖的水域となっている。そして、この防波堤12,13の一部に本実施形態の透水機能を有する防波堤17が設けられている。
【0015】
この本実施形態の防波堤17において、図1乃至図3に示すように、防波堤本体21は、例えば、鉄筋コンクリートにより中空箱型形状に形成され、基礎部22の外海15側に立設された前壁部23と内海16側に立設された後壁部24とが左右の側壁25により連結されて構成されている。そして、基礎部22の下面には海底18に敷設されたマウント26が位置している。
【0016】
防波堤本体21の内部には高さの異なる2つの逆流防止壁27,28が立設されており、各逆流防止壁27,28の後方、つまり、内海16側には遊水部29,30がそれぞれ設けられている。そして、前壁部23の上部には外海15に連通する入水部としてのスリット31が左右方向に沿って複数形成されており、このスリット31により外海15と各遊水部29,30とを連通することができる。一方、後壁部24の下部には内海16に連通する導水部としての導水孔32,33が左右方向に沿ってそれぞれ複数形成されており、この導水孔32,33により内海16と各遊水部29,30とを連通することができる。
【0017】
外海15側に位置する第1逆流防止壁27は、前面(内海15側)に越流誘導部としての誘導面27aが形成されており、この誘導面27aは湾曲形状をなして越流補助用の湾曲誘導部としても機能するようになっている。また、内海16側に位置する第2逆流防止壁28は第1逆流防止壁27の後方に位置し、この第1逆流防止壁27よりも高く形成されており、前面(内海15側)の上部に越流誘導部としての誘導面28aが形成されている。そして、第1逆流防止壁27と第2逆流防止壁28との間に第1遊水部29が形成されると共に、第2逆流防止壁28の後方で第1遊水部29よりも高い位置に第2遊水部30が形成されており、第1遊水部29の下部に第1導水孔32が連通し、第2遊水部30の下部に第2導水孔33が連通している。
【0018】
また、防波堤本体21の下部には外海15と内海16とを連通する潮流導入用導水孔34が左右方向に沿って複数形成されている。一方、防波堤本体21の上部には天端板35が着脱自在に設けられており、この天端板35により防波堤本体21の内部を被覆可能であると共に、この天端板35上を作業者が歩行可能となっている。
【0019】
上述した防波堤17が所定の位置に設置されて外海15と内海16とが区画された港湾にて、干潮時には、図1に実線で示すように、外海15からくる波の高さは低く、防波堤本体21内の第1逆流防止壁27が機能する。即ち、波が各スリット31から防波堤本体21内に入って第1逆流防止壁27に到達し、この第1逆流防止壁27を越えて第1遊水部29に取り込まれる。このとき、波は第1逆流防止壁27における誘導面27aに誘導され、適正に第1逆流防止壁27を越えることができ、海水はこの誘導面27aに誘導されて上昇するため、波が第1逆流防止壁27を越える作用を補助できる。そして、この第1遊水部29と内海16との水位差により第1遊水部29の海水が各第1導水孔32を通って内海16に導入される。そのため、内海16内で適正な流れが生成されて海水の滞留部が減少し、内海16での海水の汚れが防止される。
【0020】
一方、満潮時には、図1に二点鎖線で示すように、外海15からくる波の高さが高くなり、防波堤本体21内の第2逆流防止壁28が機能する。即ち、波が各スリット30から防波堤本体21内に入って第2逆流防止壁28に到達し、干潮時と同様に、この第2逆流防止壁28を越えて第2遊水部30に取り込まれる。このとき、波は第2逆流防止壁28における誘導面28aに誘導され、適正に第2逆流防止壁28を越えることができ、海水は第1逆流防止壁27における誘導面27aに誘導されて上昇するため、波が第2逆流防止壁28を越える作用を補助できる。そして、この第2遊水部30と内海16との水位差により海水が各第2導水孔33を通って内海16に導入される。そのため、満潮時であっても、内海16内で適正な流れが生成されて海水の滞留部が減少し、内海16での海水の汚れが防止される。
【0021】
また、干潮時や満潮時に、波は各逆流防止壁27,28における誘導面27a,28aに誘導されてこの逆流防止壁27,28を越えることができるが、特に、第1逆流防止壁27の誘導面27aは湾曲形状であるため、海水の横方向の流れを上昇流に変換し、波が各逆流防止壁27,28を越える作用を補助できる。更に、干潮時から満潮時への移行時には、海底18付近で潮流が発生するため、外海15の海水が各潮流導入用導水孔34を通って内海16に導入されるため、内海16に発生する適正な流れの生成を促進できる。
【0022】
このように本実施形態の防波堤17にあっては、防波堤本体21の内部に高さの異なる第1、第2逆流防止壁27,28を立設すると共に、各逆流防止壁27,28の後方に第1、第2遊水部29,30をそれぞれ設け、前壁部23の上部に外海15と各遊水部29,30とを連通するスリット31を形成する一方、後壁部24の下部に各遊水部29,30と内海16とを連通する第1、第2導水孔32,33を形成している。
【0023】
従って、干潮時と満潮時では外海15の海面が上昇あるいは下降して水位差が発生するものの、この水位差に対応して高さの異なる第1、第2逆流防止壁27,28を形成しており、波は各スリット31から各逆流防止壁27,28に到達してこれを越えて各遊水部29,30に適正に取り込まれるため、各遊水部29,30と内海16との水位差により海水を各導水孔32,33を通して内海16に確実に導入され、内海16に適正な流れを生成して海水の滞留部が減少して内海16での海水の汚れを防止することができる。
【0024】
また、2つの逆流防止壁27,28に対して、2つの遊水部29,30及び2つの導水孔32,33をそれぞれ独立して設けている。従って、第2逆流防止壁28を越えた海水が第1遊水部29や第2遊水部30を通して逆流し、第1逆流防止壁27を越えて外海15に流動することはなく、海水を各導水孔32,33を通して内海16に確実に導入できる。なお、各導水孔32,33における内海16への連通部が近接する場合には、導水孔32,33の少なくとも一方に配管を連結して離間するとよい。
【0025】
更に、第1、第2逆流防止壁27,28の前面に湾曲形状をなす誘導面27a,28aを設けている。従って、外海15の波は各逆流防止壁27,28の誘導面27a,28aに誘導されてこの逆流防止壁27,28を越えることができ、特に、誘導面27aが上下に長い湾曲形状であるため、逆流防止壁27に直交する海流や横方向の海流を上昇流に変換することで、波が各逆流防止壁27,28を越える作用を補助することができる。
【0026】
また、防波堤本体21の下部に外海15と内海16とを連通する潮流導入用導水孔34を設けている。従って、干潮時から満潮時への移行時に、海底18付近で潮流により外海15の海水をこの潮流導入用導水孔34を通して内海16へ導入することができ、内海16に発生する適正な流れの生成を促進できる。
【0027】
また、防波堤本体21の上部に天端板35を着脱自在に設けており、作業者がこの天端板35上を歩行して防波堤17の調査やメンテナンスを行うことができ、また、メンテナンスを行う場合には、天端板35を取り外すことで作業性を向上できる。
【0028】
なお、上述の実施形態では、防波堤本体21の内部に高さの異なる2つの逆流防止壁27,28を立設したが、その数は2つに限定されるものではなく、設置する防波堤17の幅に応じて3つ以上立設してもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明の防波堤によれば、外海と内海を区画するように海底に設置される防波堤本体に、外海に対向して高さの異なる複数の逆流防止壁を設けると共に、各逆流防止壁の内海側に複数の遊水部を設け、各遊水部と内海とを連通するように防波堤本体の下部に複数の導水部を設けたので、干潮時と満潮時で外海の海面に水位差が発生しても、この水位差に対応して高さの異なる複数の逆流防止壁が形成されており、波は各逆流防止壁に到達してこれを越えて各遊水部に適正に取り込まれるため、遊水部と内海との水位差により海水を各導水孔を通して内海に確実に導入することができ、内海に適正な流れを生成して海水の滞留部が減少して内海での海水の汚れを防止することができる。
【0030】
請求項2の発明の防波堤によれば、各逆流防止壁の内海側に越流誘導部を設けたので、外海の波は越流誘導部に誘導されて逆流防止壁を越えることができ、海水を内海に効率的に導入することができる。
【0031】
請求項3の発明の防波堤によれば、内海側に位置する逆流防止壁に越流補助用の湾曲誘導部を設けたので、逆流防止壁に直交する海流や横方向の海流を上昇流に変換することで、波が逆流防止壁を越える作用を補助することができる。
【0032】
請求項4の発明の防波堤によれば、防波堤本体を中空形状として内部に複数の逆流防止壁を設け、外海側に入水部を設けたので、波を入水部から効率よく逆流防止壁に導くことができ、波のエネルギを確実に内海の流れに変換することができる。
【0033】
請求項5の発明の防波堤によれば、防波堤本体の下部に外海と内海とを連通する潮流導入用導水孔を設けたので、海底付近で潮流により外海の海水を潮流導入用導水孔を通して内海へ導入することができ、内海に発生する適正な流れの生成を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る防波堤の断面図である。
【図2】本実施形態の防波堤の正面図である。
【図3】本実施形態の防波堤の背面図である。
【図4】本実施形態の防波堤が適用された港湾を表す概略図である。
【符号の説明】
15 外海
16 内海
17 防波堤
18 海底
21 防波堤本体
27 第1逆流防止壁
28 第2逆流防止壁
27a,28a 誘導面
29 第1遊水部
30 第2遊水部
31 スリット(入水部)
32 第1導水孔(導水部)
33 第2導水孔(導水部)
34 潮流導入用導水孔
35 天端板
Claims (5)
- 外海と内海を区画するように海底に設置された防波堤本体と、前記外海に対向して該防波堤本体に設けられた高さの異なる複数の逆流防止壁と、該各逆流防止壁の前記内海側に設けられた複数の遊水部と、該各遊水部と前記内海とを連通するように前記防波堤本体の下部に設けられた複数の導水部とを具えたことを特徴とする防波堤。
- 請求項1において、前記各逆流防止壁の前記内海側に越流誘導部が設けられたことを特徴とする防波堤。
- 請求項1または2において、前記内海側に位置する前記逆流防止壁に越流補助用の湾曲誘導部が設けられたことを特徴とする防波堤。
- 請求項1において、前記防波堤本体は中空形状をなし、内部に前記複数の逆流防止壁が設けられ、前記外海側に入水部が設けられたことを特徴とする防波堤。
- 請求項1において、前記防波堤本体の下部に前記外海と前記内海とを連通する潮流導入用導水孔が設けられたことを特徴とする防波堤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002176670A JP2004019279A (ja) | 2002-06-18 | 2002-06-18 | 防波堤 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family
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JP (1) | JP2004019279A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101072482B1 (ko) | 2009-03-16 | 2011-10-12 | 현대건설주식회사 | 와류 발생형 스텝식 슬릿케이슨 및 이를 이용한 방파제 |
KR101198337B1 (ko) | 2012-01-12 | 2012-11-06 | 주식회사 삼안 | 월파차단 및 해수교환을 위한 방파제 |
-
2002
- 2002-06-18 JP JP2002176670A patent/JP2004019279A/ja active Pending
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