JP2000027142A - 海底導水設備 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 消波堤から流入する外海の海面近傍の富酸素
溶存海水を海底へ積極的に送り込み、消波堤内の温度、
密度躍層を解消し、海底部の水質悪化を防止することを
課題とする。 【解決手段】 頂部１ａが海上に露出する堤体１であっ
て、波浪Ｗに対向する前記堤体の前面壁２の水線高さに
海水導入開口４が設けられ、該海水導入開口４から前記
堤体背面側の海底５まで導水管６が配設されてなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、海底導水設備に
関し、詳しくは防波堤、堤防等を利用して構築される海
底導水設備に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、防波堤で囲まれる水域の海水浄化
を図る設備として図４に示すような消波堤が知られてい
る。

【０００３】この消波堤は、図４に示すように波浪Ｗに
対向する堤体１の前面壁２に堤体背面３に貫通する海水
導入部４を設け、この海水導入部４の堤体前面側の内面
に絞り部５を設け、波Ｗが打ち付けたとき、波のエネル
ギを海水導入部４で奪い防波堤内水域に直接波が侵入す
るのを防止しつつ、海水を流入させるものである（例え
ば特開平９−３１６８４７号公報）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記消波堤は
港内海水の平面的な海水の移動交換を図るもので、海面
付近の海水を海底へ積極的に導き対流循環を図るもので
はない。

【０００５】従って、消波堤で囲まれる海域の海面付近
と海底付近の温度、密度躍層を解消したり海底付近の富
酸素化を積極的に促進することはできなかった。この発
明は上記問題に鑑み、消波堤から流入する外海の海面近
傍の富酸素溶存海水を海底へ積極的に送り込み、消波堤
内の温度、密度躍層を解消し、海底部の水質悪化を防止
することを目的としてなされたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明の海底導水設備
は、頂部が海上に露出する堤体であって、波浪に対向す
る前記堤体の前面壁の水線高さに海水導入開口が設けら
れ、該海水導入開口から前記堤体背面側の海底まで導水
管が配設されてなるものである。

【０００７】この発明によれば、打ち寄せた波浪が水塊
となって海水導入口に流入し、この水塊が導水管を介し
て海底へ排出されるので、水面付近の富酸素溶存水が強
制的に海底へと送り込まれることとなり、水底部の定常
的な富酸素化が図れ、また表面と水底の上下層の水の擾
乱も図られるので温度、密度躍層の解消も図られる。

【０００８】

【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態を説
明する。 実施の形態１ 図１はこの発明の実施の形態１の断面図である。

【０００９】図１において、１は堤体を示し、コンクリ
ート製、ケーソンの組み合わせなどにより構築され、頂
部１ａが海上に露出されている。上記堤体１の波浪Ｗに
対向する前面壁２に、堤体背面３に貫通する海水導入開
口４が設けられ、この海水導入開口４の堤体背面３から
堤体背面側の海底５までダクタイル鋳鉄管など腐蝕され
にくい管による導水管６が配設されている。

【００１０】上記海水導入開口４は、海面の干満及び波
高を勘案して上下に複数段設けることが望ましく、図示
例の場合上下に二段設けた場合を示す。また、導水管６
はこれら上下の海水導入口４が合流接続されている。

【００１１】上記構成によれば、波浪が堤体１の前面に
押し寄せると、波による水位上昇により海面付近の富酸
素溶存海水が海水導入開口４へ流れ込み、これが導水管
６を通じて堤体背面側の海底５へと導かれて放流され
る。

【００１２】また、海水導入開口４への海水供給は波浪
の運動による自然流入によるものであるから、海水導入
開口４から導水管６へ至る流れは常時海面から海底へ向
かう流れとなり、これによって富酸素溶存海水が常時海
底へと供給され続ける。

【００１３】従って、この実施の形態１の海底導水設備
によれば、導水管６が開口する海底の海水が海面の海水
と常時交換、攪拌されるので海底導水設備付近の海底の
水質悪化が防止されると共に温度、密度躍層が解消され
る。 実施の形態２ 図２は実施の形態２の断面図を示し、図１と同一符号は
図１で説明した部材と同一または相当する部材を示す。

【００１４】図２において、導水管６はダクタイル鋳鉄
管など腐蝕されにくい管で堤体１の背面壁に沿って配設
されている。この実施の形態２によれば、導水管６は構
造物及び海底に沿うので航行船舶の障害とならず堤体内
水域を広く使用可能となる。

【００１５】なお、上記各実施の形態において、海水導
入開口４の内面に図３に拡大して示すように絞り部７を
設ければ、流入した海水の逆流が有効に防止できるので
導水管６からの海水排出量の増加も図られる。

【００１６】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の海底導
水設備によれば、海面付近の富酸素溶存海水を滞留水域
となり易い堤壁内側の海底付近に積極的に流入させるの
で、海底に蓄積した「へどろ」などの分解を積極的に促
進させることができ、海底の生物学的環境の改善に寄与
する他、堤壁内の温度、密度躍層や海底の水質改善が容
易に実現される。

【００１７】また、海水の循環は波浪エネルギを利用す
るので、環境に及ぼす影響も全く無く自然環境保護も達
成されるなどの効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施の形態１の海底導水設備の断面
図である。

【図２】この発明の実施の形態２の海底導水設備の断面
図である。

【図３】各実施の形態の他の構成例の拡大断面図であ
る。

【図４】従来例の断面図である。

【符号の説明】 １ 堤体 １ａ 堤体頂部 ２ 堤体の波浪に対向する前面壁 ３ 堤体背面 ４ 海水導入開口 ５ 海底 ６ 導水管 ７ 絞り部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 頂部が海上に露出する堤体であって、波
   浪に対向する前記堤体の前面壁の水線高さに海水導入開
   口が設けられ、該海水導入開口から前記堤体背面側の海
   底まで導水管が配設されてなる海底導水設備。