JP3834185B2 - 成分測定装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、成分測定装置、特に、血液の検査に際し、指先を穿刺針で穿刺して血液を採取するとともに、その血液中の例えばブドウ糖のような特定成分の量を測定する成分測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、糖尿病患者の増加に伴い、日常の血糖値の変動を患者自身がモニターする自己血糖測定が推奨されてきている。
【0003】
この血糖値の測定は、血中のブドウ糖量に応じて呈色する試験紙を装着し、該試験紙に血液を供給、展開して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定(測色)して血糖値を定量化する血糖測定装置を用いて行われる。
【0004】
この測定に先立ち、患者が自分の血液を採取する方法としては、穿刺針や小刀を備えた穿刺装置を用いて指先の皮膚を穿刺した後、その穿刺部周辺を指等で圧迫して血液を絞り出すことが行われる。
【0005】
しかしながら、指先は毛細血管が集中しており血液の採取に適している反面、神経も集中しており痛みが伴うことから、患者へ与える苦痛、負担が大きく、また、穿刺することによる恐怖感を伴うことから、自己血糖測定が続けられなくなる患者も多い。
【0006】
また、従来の血糖測定では、穿刺操作と、血液採取操作と、測定操作とを別々に行うため、操作性にも劣っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より確実かつ短時間で血液中の所定成分の測定が行える成分測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0009】
(1) 内腔部と該内腔部が先端で開放する開口とを有するハウジングと、前記内腔部内に摺動可能に収納された穿刺針とを備えるチップを装着し、前記開口を指で塞ぐようにして使用する成分測定装置であって、
穿刺する指を当てがう指当て部と、
前記指当て部に当てがわれた指を穿刺するよう前記穿刺針を作動させる穿刺手段と、
前記穿刺針の収納空間とともに、前記穿刺針による指の穿刺部位を減圧状態にする減圧手段と、
前記穿刺部位より採取された血液中の所定成分の量を測定する測定手段と、
前記減圧手段による減圧状態を維持しつつ、前記チップを指から離間する方向に移動するチップ退避機構と、
前記チップ退避機構による前記チップの移動距離を規定する移動距離規定手段とを有することを特徴とする成分測定装置。
【0010】
(2) 前記チップの移動は、前記チップを前記穿刺手段に装着した状態で、前記穿刺手段ごと行なわれる上記(1)に記載の成分測定装置。
【0011】
(3) 前記減圧手段の作動により生じる減圧力を利用して、前記チップ退避機構が作動する上記(1)または(2)に記載の成分測定装置。
【0012】
(4) 前記チップ退避機構は、減圧室と、該減圧室と前記収納空間とを連通する空気の通過抵抗が大きい少なくとも1つの通路とを有し、
前記通路を介して、前記減圧室を減圧することにより、前記チップを指から離間する方向に移動させる上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0013】
(5) 前記チップ退避機構は、電気的に駆動する駆動源を有し、該駆動源の駆動により前記チップ退避機構が作動する上記(1)または(2)に記載の成分測定装置。
【0014】
(6) 前記駆動源は、ソレノイドである上記(5)に記載の成分測定装置。
【0015】
(7) 前記チップ退避機構は、付勢手段を有し、前記チップ退避機構の作動を解除したとき、前記チップは、前記付勢手段により前記チップ退避機構作動前の位置に戻る上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0016】
(8) 前記成分測定装置は、前記チップを保持し、前記穿刺手段を内蔵するハウジングを有し、
前記減圧手段は、前記穿刺手段を内蔵するハウジング内の前記収納空間を減圧状態とする上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0017】
(9) 前記穿刺手段の作動と前記減圧手段の作動とをほぼ同時に開始することができる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0018】
(10) 前記チップは、指に当接する当接部を有し、該当接部の内側に前記開口が形成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0019】
(11) 前記指当て部は、指当て面を有し、
前記チップを前記成分測定装置に装着した状態で、前記当接部の先端は、前記指当て面とほぼ同じ位置か、もしくは、前記指当て面から若干突出している上記(10)に記載の成分測定装置。
【0020】
(12) 前記チップは、試験紙と、該試験紙に血液を供給する血液通路とを有する上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の成分測定装置。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者は、従来の問題点を解決するため、穿刺装置と測定装置とを一体化し、かつ、血液を絞り出すための吸引手段を備えた血糖測定装置を開発し、特許出願した(特願平10−183794号、特願平10−330057号)。
【0025】
これらの血糖測定装置では、まず、チップ先端に指先を押し当て、この先端開口を気密性を保持するように封止する。次に、先端開口から突出する穿刺針で指先を穿刺した後、この状態で吸引手段を作動させ、穿刺部位から血液を吸い出すものである。
【0026】
さらに、本発明者は、このような血糖測定装置において、吸引手段を作動させ、チップ先端で指先を吸着した状態で、指先とチップとを離間すると、穿刺部位からの血液の吸い出しをより確実に行え、短時間で必要かつ十分な血液量を確保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
以下、本発明の成分測定装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の成分測定装置の第1実施形態の構成を模式的に示す斜視図、図2は、本発明において使用するチップの構成を示す縦断面図、図3および図4は、それぞれ、第1実施形態の成分測定装置が有する穿刺手段および穿刺手段を内蔵するハウジングの構成を示す縦断面図、図5〜図8は、それぞれ、第1実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図である。なお、図1〜図8中、右側を「基端」、左側を「先端」として説明する。
【0029】
図1に示すように、第1実施形態の成分測定装置(血液成分測定装置)1は、本体2と、本体2に設置された指当て部3と、ハウジング5内に収納された穿刺手段4と、ハウジング5の基端側に設けられたチップ退避機構6と、血液中の所定成分を測定する測定手段7と、ハウジング5内を減圧状態とするポンプ8と、電池9と、回路基板10上に設けられた制御手段11と、表示部12とを備えている。この成分測定装置1は、チップ13を装着して使用する。以下、これらの各構成要素について説明する。
【0030】
本体2は、対向する筐体21と蓋体22とで構成されている。この本体2は、その内部に収納空間23が形成されており、この収納空間23内には、前記の各構成要素4〜12が収納されている。
【0031】
筐体21の先端側の壁部211には、筐体21の内外を貫通して断面形状が円形の開口212が形成されている。この開口212を介して後述のハウジング5にチップ13が装着(保持)される。
【0032】
また、壁部211の先端側の面には、開口212の外周を囲んで、指先(指)の形状に対応して形成された指当て部3が設置されている。この指当て部3の先端側には、指当て面31が形成されている。指当て部3(指当て面31)に指先を当接させつつ、成分測定装置1を作動させる。これにより、指先が穿刺され、採取された血液中の所定成分(以下、本実施形態では、ブドウ糖を代表として説明する。)の量が測定される。
【0033】
蓋体22の上面には、蓋体22の内外を貫通して表示窓(開口)221が形成され、透明な材料で構成される板状部材で塞がれている。
【0034】
この表示窓221に対応する収納空間23内の位置には、表示部12が設置され、表示窓221を介して、表示部12で表示される各種情報を確認することができる。
【0035】
表示部12は、例えば、液晶表示素子(LCD)等で構成されている。この表示部12には、例えば、電源のオン/オフ、電源電圧(電池残量)、測定値、測定日時、エラー表示、操作ガイダンス等を表示することができる。
【0036】
また、蓋体22の上面には、操作ボタン222が設置されている。成分測定装置1では、この操作ボタン222を押圧することにより、後述の穿刺手段4に続き、ポンプ(減圧手段)8が順次あるいはほぼ同時に作動するよう構成されている。
【0037】
なお、この操作ボタン222を押圧することにより、成分測定装置1の電源がオンされる構成としてもよい。
【0038】
表示部12の図1中下側には、回路基板10が設置され、この回路基板10上には、マイクロコンピュータで構成される制御手段11が搭載されている。この制御手段11は、成分測定装置1の諸動作を制御する。また、この制御手段11は、測定手段7からの信号に基づいて血液中のブドウ糖量(血糖値)を算出する演算部を内蔵している。
【0039】
回路基板10の図1中左下側には、減圧手段(吸引手段)として、ポンプ8が設置されている。このポンプ8は、電力により作動するものであり、後述のハウジング5に形成された通気路54とチューブ81を介して連結されている。このチューブ81は、可撓性を有しており、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、シリコーンゴム、ポリウレタン等の高分子材料で構成されている。
【0040】
このポンプ8は、ハウジング5の内腔部52内の空気を吸引、排出することにより、ハウジング5の内腔部52を減圧状態とする。
【0041】
また、ポンプ8は、指先の穿刺部位から血液を吸い出すことできる程度(例えば、100〜400mmHg程度)に、ハウジング5の内腔部52および指先の穿刺部位を減圧状態とすることができるようなものであればよい。
【0042】
回路基板10の図1中右下側には、電源として電池9が設置されている。この電池9は、ポンプ8、制御手段11、表示部12等と電気的に接続され、これらの作動に必要な電力を供給する。
【0043】
ポンプ8の図1中手前側には、測定手段7が設置されている。この測定手段7は、後述のチップ13が備える試験紙18に展開された血液中のブドウ糖量を光学的に測定するものであり、その設置位置は、チップ13をハウジング5に装着、保持した状態で、試験紙18が位置する側位近傍とされる。
【0044】
この測定手段7は、図示しない発光素子(発光ダイオード)と受光素子(フォトダイオード)とを有している。
【0045】
発光素子は制御手段11と電気的に接続され、受光素子は、図示しない増幅器およびA/D変換器を介して制御手段11と電気的に接続されている。
【0046】
発光素子は、制御手段11からの信号により作動し、光を発する。この光は、所定の時間間隔で間欠的に発光するパルス光であるのが好ましい。
【0047】
チップ13をハウジング5に装着した状態で、発光素子を点灯させると、発光素子から発せられた光は試験紙18に照射され、その反射光は、受光素子に受光され、光電変換される。受光素子からは、その受光光量に応じたアナログ信号が出力され、所望に増幅された後、A/D変換器にてデジタル信号に変換され、制御手段11に入力される。
【0048】
制御手段11では、入力された信号に基づき、所定の演算処理を行い、また、必要に応じ補正計算を行って、血液中のブドウ糖の量(血糖値)を求める。求められた血糖値は、表示部12に表示される。
【0049】
測定手段7の図1中手前側には、穿刺手段4を内蔵するハウジング5とハウジング5の基端側に連結して設けられたチップ退避機構6とが設置されている。
【0050】
チップ退避機構6は、筐体21に固着され、一方、ハウジング5は、筐体21には、固着されず、チップ退避機構6により、その軸方向(図1中左右の方向)に移動可能とされている。
【0051】
ハウジング5には、チップ13を装着して使用する。このチップ13は、図2に示すように、穿刺針14と、穿刺針14を摺動可能に収納する第1のハウジング15と、第1のハウジング15の外周部に設置された第2のハウジング16と、第2のハウジング16の外周部に設置された試験紙固定部17と、試験紙固定部17に固定された試験紙18とで構成されている。
【0052】
穿刺針14は、針体141と、針体141の基端側に固着されたハブ142とで構成され、第1のハウジング15の内腔部152内に収納されている。
【0053】
針体141は、例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料よりなる中空部材または中実部材で構成され、その先端には、鋭利な刃先(針先)が形成されている。この刃先により、指先の表面(皮膚)が穿刺される。
【0054】
また、ハブ142は、ほぼ円柱状の部材で構成され、その外周部が第1のハウジング15の内周面151に当接しつつ摺動する。
【0055】
このハブ142の基端部には、縮径した縮径部143が形成されている。この縮径部143は、後述の穿刺手段4を構成するプランジャ41の針ホルダ411と嵌合する。
【0056】
第1のハウジング15は、壁部153を底部とする有底筒状の部材で構成され、その内部には内腔部152が形成されている。
【0057】
壁部153のほぼ中央部には、断面形状が円形の孔154が形成されている。この孔154には、指先(指)の穿刺に際し、針体141が通過する。また、孔154の孔径は、ハブ142の先端外径より小さく設定されている。このため、穿刺針14が内腔部152の先端方向へ移動し、ハブ142の先端と壁部153の基端とが当接すると、それ以上、穿刺針14が先端方向へ移動することが防止される。したがって、針体141は、指先の穿刺に際し、チップ13の先端からの突出長さが一定に保たれる。このため、針体141の刃先が指先を必要以上に深く穿刺してしまうことをより確実に防止することができる。
【0058】
また、後述のプランジャ41の移動距離を調節する機構を設け、これにより、針体141の刃先による指先の穿刺深さを調節するようにしてもよい。
【0059】
第1のハウジング15の外周部には、第2のハウジング16が固着されている。
【0060】
第2のハウジング16は、ほぼ円筒状の部材で構成され、その内部には、内腔部161が形成されている。
【0061】
また、第2のハウジング16の先端には、リング状に突出した当接部163が形成されている。この当接部163は、指先を押し当る部位であり、その内側には、内腔部161が開放する先端開口(開口)162が形成されている。当接部163の先端外周縁は、指先に押し当られたときに穿刺周辺部を刺激し穿刺時の痛みを和らげる効果を発揮するのに適した形状をなしている。また、ポンプ8により減圧状態となったとき、当接部163の先端と指先の表面との間から空気が流入することを極力抑制し得るような形状となっている。なお、第2のハウジング16の先端には、当接部163が設けられず、第2のハウジング16の先端面が平坦な面を構成してもよい。
【0062】
第2のハウジング16には、当接部163の基端付近の外周部に、外側に向かって突出するリング状のフランジ164が形成されている。このフランジ164は、後述のハウジング5に装着した状態で、その基端がハウジング5の先端に当接し、ハウジング5に対する位置を規定する。
【0063】
第2のハウジング16の外周部には、凹部165が形成され、この凹部165には、円盤状の試験紙18が設置された試験紙固定部17が装着されている。
【0064】
また、第2のハウジング16の内周面には、内腔部161に向かって突出する血液導入ガイド166が形成されている。この血液導入ガイド166は、指先の穿刺後、先端開口162から内腔部161に流入した血液(検体)を、受け止める機能を有するものである。
【0065】
このようなチップ13では、第2のハウジング16、試験紙固定部17を経て、第2のハウジング16の内腔部161と外部とを連通する血液通路19が形成されている。この血液通路19は、穿刺により得られた血液を試験紙18へ導くための流路であり、内腔部161へ開放する通路開口191とチップ13の外部へ開放する通路開口192とを有している。なお、通路開口192は、試験紙18の中心部に位置している。
【0066】
また、血液導入ガイド166は、通路開口191付近に形成されている。このため、血液導入ガイド166で受け止められた血液は、効率よく通路開口191から血液通路19に導かれる。この血液は、毛細管現象により通路開口192まで到達し、通路開口192を塞ぐように設置された試験紙18の中心部に供給され、放射状に展開する。
【0067】
この試験紙18は、血液を吸収・展開可能な担体に、試薬を担持させたものである。
【0068】
担体としては、例えば、不織布、織布、延伸処理したシート等のシート状多孔質体が挙げられる。この多孔質体は、親水性を有するものが好ましい。
【0069】
担体に担持される試薬は、検体中の測定すべき成分により、適宜決定される。例えば、血糖値測定用の場合、グルコースオキシターゼ(GOD)と、ペルオキシターゼ(POD)と、例えば4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンのような発色剤(発色試薬)とが挙げられ、その他、測定成分に応じて、例えばアスコルビン酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ等の血液成分と反応するものと、前記と同様の発色剤(発色試薬)とが挙げられる。また、さらにリン酸緩衝液のような緩衝剤が含まれていてもよい。なお、試薬の種類、成分については、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0070】
このようなチップ13は、前述した筐体21の開口212を介してハウジング5(嵌合部53)に着脱自在に装着(嵌合)される。
【0071】
ハウジング5は、図3および図4に示すように、壁部51を底部とする有底筒状の部材で構成され、その内部には、内腔部(収納空間)52が形成されている。また、ハウジング5の先端側は、その内径がチップ13の外周の形状に対応して縮径した嵌合部53が形成されている。この嵌合部53にチップ13が挿入され、嵌合(固定)される。なお、図3および図4では、説明の理解を容易にするために、チップ13の構造を簡略化して示した。
【0072】
ハウジング5の側部には、内腔部52と外部とを連通する通気路54が形成され、この通気路54は、チューブ81を介してポンプ8に接続されている。内腔部52内の空気は、通気路54を介してポンプ8により吸引され、内腔部52は、減圧状態とされる。
【0073】
壁部51には、そのほぼ中央部に孔511が形成されている。この孔511には、内部にオリフィス(通路)651が形成された細管65が設置されている。このオリフィス651を介して、細管65の両側に設けられた内腔部52と後述の容積可変室631との間を空気が流通する。
【0074】
ハウジング5の先端には、リング状のシールリング(封止部材)55が嵌合されている。これにより、チップ13をハウジング5に装着すると、チップ13のフランジ164の基端とシールリング55とが当接し、内腔部52の気密性が保持される。
【0075】
このシールリング55は、弾性体で構成されている。このような弾性体としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、フッ素ゴム系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0076】
ハウジング5は、その基端部外周に、外側に向かって突出するリング状のフランジ56が形成され、また、その基端には、円筒状の凸部59が形成されている。
【0077】
このようなハウジング5の嵌合部53より基端側の内腔部52内には、穿刺手段4が収納されている。この穿刺手段4は、それに装着される穿刺針14を先端方向へ移動させ、針体141の刃先により指先の表面を穿刺する。
【0078】
穿刺手段4は、プランジャ41と、プランジャ41を先端方向へ付勢するコイルバネ(付勢部材)42と、プランジャ41を基端方向へ付勢するコイルバネ(付勢部材)43とを有している。
【0079】
プランジャ41の先端部には、カップ状の針ホルダ411が設けられている。この針ホルダ411には、穿刺針14の縮径部143が着脱自在に嵌合される。また、プランジャ41の基端部には、先端に突起状の係止部413を有する弾性変形可能な弾性片412が設けられている。
【0080】
チップ13をハウジング5に装着する前の状態、すなわち、穿刺針14をプランジャ41に装着する前の状態(図3参照)では、係止部413は、弾性片412の弾性力により図3中上方向へ付勢されてハウジング5の内周面に当接している。一方、チップ13をハウジング5に装着した状態、すなわち、穿刺針14をプランジャ41に装着した状態(図4参照)では、係止部413は、ハウジング5の内外を貫通するように形成された開口57内に挿入され、その縁部に係止する。これにより、プランジャ41の先端方向への移動が規制される。なお、開口57は、平板状のシール部材(封止部材)58で塞がれ、内腔部52の気密性が保持されている。このシール部材58は、前記シールリング55と同様の材料で構成することができる。
【0081】
コイルバネ(穿刺用バネ)42は、プランジャ41の基端側に設置され、その両端は、それぞれ、プランジャ41および壁部51に当接している。一方、コイルバネ(押し戻し用バネ)43は、プランジャ41の先端側に設置され、その両端は、それぞれ、プランジャ41および嵌合部53に当接している。
【0082】
また、図3および図4に示すように、ハウジング5の外部には、係止部413を内腔部52内に向かって(図中矢印方向へ)移動させることができる係止解除部材223が設けられている。この係止解除部材223は、前述の操作ボタン222の押圧に連動して移動する。
【0083】
係止部413が開口57に係止している状態では、コイルバネ42は、圧縮状態とされ、プランジャ41を先端方向へ付勢する。操作ボタン222を押圧し、係止解除部材223を、図中矢印方向へ移動させ、係止部413の係止状態を解除すると、コイルバネ42は、伸張してプランジャ41を先端方向へ移動させ、針体141の刃先が指先の表面(皮膚)を穿刺する。
【0084】
一方、このとき、コイルバネ43は、圧縮され、プランジャ41を基端方向へ付勢、すなわち、プランジャ41を基端方向へ押し戻そうとする。その後、プランジャ41は、減衰運動し、コイルバネ42の弾性力とコイルバネ43の弾性力とが釣り合う位置で静止する。
【0085】
なお、プランジャ41が静止した状態では、針体141の刃先は、チップ13内に収納されている。
【0086】
ハウジング5の基端側には、チップ退避機構6が設けられている。
チップ退避機構6は、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13を指先20から離間する方向(基端方向)へ移動させるものである。
【0087】
このチップ退避機構6は、図5〜8に示すように、本体部61と、シールリング64と、細管65とを有している。
【0088】
本体部61は、壁部62を底部とする有底筒状の部材で構成され、その内部には、内腔部63が形成されている。この内腔部63には、ハウジング5の基端側が挿入されている。
【0089】
本体部61の先端には、その中心方向に向かって突出するリング状の凸部611が形成されている。チップ退避機構6の作動前の状態では、凸部611の基端とフランジ56の先端とが当接している。これにより、ハウジング5は、先端方向への移動が規制される。すなわち、ハウジング5が本体部61から抜けてしまうのを防止することができる。
【0090】
また、このとき、当接部163の先端は、指当て面31とほぼ同じ位置か、もしくは、指当て面31から若干突出している(図5参照)。これにより、指当て部3に指先20を当接すると、指先20の表面は、確実に当接部163に当接し、先端開口162を塞ぐことができる。
【0091】
壁部62には、そのほぼ中央部に、断面形状が円形の凹部621が形成されている。この凹部621の径は、凸部59の外径とほぼ等しく設定され、この凹部621に凸部59が挿入されている。また、フランジ56の外径は、本体部61の内径とほぼ等しく設定されている。このような構成とすることにより、ハウジング5の軸方向の位置にかかわらず、例えば、図中上下方向のズレ(ハウジング5と本体部61との中心のズレ)をより確実に防止することができる。
【0092】
凸部59の外周、すなわち、ハウジング5の基端と壁部62の先端側の面622との間には、リング状のシールリング64が設置されている。このシールリング64は、それぞれ、ハウジング5の基端と面622とに気密的に密着している。これにより、シールリング64とハウジング5の基端と面622と凹部621の内面とで囲まれる領域には、気密性を有する容積可変室(減圧室)631が画成されている。
【0093】
また、シールリング64は、弾性体で構成され、チップ退避機構6の作動状態(図8に示す状態)では、その弾性力によりハウジング5を先端方向へ付勢している。すなわち、このシールリング64は、付勢手段としても機能するものである。このような弾性体としては、前記のシールリング55等と同様の材料を用いることができる。
【0094】
細管65は、円筒状の部材で構成され、その内部には、オリフィス(通路)651が形成されている。このオリフィス651は、ハウジング5の内腔部52と容積可変室631とを連通する通路であり、細径なので空気の通過抵抗が大きい。このようなオリフィス651の径は、特に限定されないが、例えば、0.01〜0.3mm程度であるのが好ましい。オリフィス651の径を前記の範囲内とすることにより、必要かつ十分な空気の通過(流通)抵抗が得られる。
【0095】
また、オリフィス651の径を調節することにより、ポンプ8の作動とチップ退避機構6の作動との開始のタイミングを調節することができる。
【0096】
なお、細管65は、図示のものに限定されるものではなく、また、その設置数も、必要に応じて、複数としてもよい。
【0097】
このようなチップ退避機構6では、当接部163に指先20を当接し、先端開口162を封止した状態でポンプ8を作動させると、まず、内腔部52が減圧状態とされ、オリフィス651を介して、容積可変室631内の空気が内腔部52内へ流入し、容積可変室631の減圧が開始される。オリフィス651の空気の通過抵抗が高いことから、容積可変室631の容積は徐々に減少し、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13が指先20から離間する方向へ徐々に移動する。
【0098】
やがて、凸部59の基端591と凹部621の底面とが当接すると、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13の基端方向への移動が停止する(図8参照)。よって、この凸部59の軸方向の長さを調節することにより、チップ13が指先20から必要以上に離間するのを防止することができる。すなわち、凸部59とこれに当接する凹部621の底面とで、チップ13の指先20からの移動距離(最大退避距離)を規定する手段(移動距離規定手段)が構成される。
【0099】
このようなチップ13と指先20との離間距離(チップ13の最大退避距離)は、特に限定されないが、例えば、0.2〜2.5mm程度とするのが好ましく、0.5〜1.5mm程度とするのがより好ましい。離間距離を前記の範囲内とすることにより、より確実かつ短時間で、十分な血液量を確保することができる。また、指先20が先端開口162から外れてしまうことをより確実に防止することができる。
【0100】
また、チップ退避機構6は、ポンプ8の作動に続いて作動する。すなわち、このチップ退避機構6は、ポンプ8により内腔部52を減圧して、先端開口162で指先20を吸着してから、チップ13を徐々に基端方向へ退避(移動)させるよう構成されている。このため、チップ退避機構6は、指先20の穿刺部位21を減圧状態に維持しつつ、チップ13を指先20から離間することができる。
【0101】
このようなチップ退避機構6は、ポンプ8により生じる減圧力を利用して作動するものである。つまり、ポンプ(減圧手段)8は、チップ退避機構6の構成要素の一つとも言うことができる。
【0102】
また、このようなチップ退避機構6は、他の駆動源の追加を必要としないため、成分測定装置1の小型化、軽量化や製造コストの削減に有利である。
【0103】
なお、成分測定装置1では、図6に示すように、指当て部3に指先20を押し当てると、指先20の表面は、当接部163の先端に当接し、この当接部163の先端により穿刺部位21の周辺部位の毛細血管は、圧迫される。
【0104】
よって、チップ退避機構8が設けられていない成分測定装置1では、ポンプ8を作動させ、穿刺部位21を減圧状態とし、穿刺部位21から血液を吸い出そうとしても、穿刺部位21の周辺部位の毛細血管が圧迫された状態が解除されていないため、ブドウ糖量の測定に必要な血液量が得られないか、または、十分な血液量を得るのに時間を要する。
【0105】
これに対し、本発明の成分測定装置1では、指先20の穿刺部位21を減圧状態に維持しつつ、チップ13を指先20から離間することができるので、当接部163の先端で圧迫されていた穿刺部位21の周辺部位の毛細血管が開放され、血液22がより確実にしかも短時間で穿刺部位21から吸い出され、ブドウ糖量の測定に必要かつ十分な血液量を確保することができる。
【0106】
また、チップ退避機構6の作動状態(図8に示す状態)では、ハウジング5が基端方向へ移動し、シールリング64が圧縮状態とされる。前述したように、シールリング64は、弾性体で構成されているため、図8に示す状態では、ハウジング5を先端方向に付勢している。よって、ポンプ8による減圧状態を、図示しない減圧解除手段により解除すると、シールリング64は、自らの弾性力によりほぼ元の形状に戻り、ハウジング5を先端方向へ移動する。このとき、ハウジング5のフランジ56の先端は、本体部61の凸部611の基端と当接し、それ以上、先端方向へ移動することが規制される。すなわち、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13は、チップ退避機構6の作動前の位置に戻る。
【0107】
次に、成分測定装置1を用いて穿刺、血液の採取、展開および血糖値測定を行う場合の各部の動作について、図2〜図8を参照しつつ説明する。
【0108】
[1] まず、チップ13を筐体21の開口212を介して、ハウジング5の嵌合部53に挿入し、穿刺針14の縮径部143を針ホルダ411に嵌合する(図4参照)。
【0109】
さらに、チップ13を基端方向へ押し込むと、コイルバネ42の付勢力に抗して、プランジャ41が基端方向へ移動する。係止部413は、弾性片412の弾性力により付勢されて内腔部52の内周面に当接しているが、係止部413が開口57の位置にくると、開口57内に挿入される(図4参照)。これにより、チップ13による基端方向の押圧力を解除しても、係止部413が開口57に係止し、プランジャ41は先端方向への移動が規制される。このとき、コイルバネ42は、圧縮状態とされている。この状態で、穿刺手段4による穿刺の準備および血液(検体)採取の準備が完了する。
【0110】
[2] 次に、図示しない電源スイッチをオンとする。これにより、成分測定装置1の各部が起動し、測定可能な状態となる。
【0111】
[3] 次に、指当て部3に指先(指)20を押し当てる。これにより、チップ13の当接部163に指先20が圧着される。このとき、空気の漏れができるだけ少なくなるように、先端開口162を指先20で塞ぐようにする(図5参照)。
【0112】
[4] 操作ボタン222を押圧すると、操作ボタン222と連結している係止解除部材223が図4中下側へ移動する。これにより、係止解除部材223が係止部413に当接し、これを内腔部52側へ押し戻す。これにより、係止部413の係止が外れ、圧縮されていたコイルバネ42の弾性力により、プランジャ41が先端方向に移動し、針体141が先端開口162より突出し、指先20の表面を穿刺する(図6参照)。針体141による穿刺部位21からは、出血が生じる。
【0113】
なお、操作ボタン222の押圧により、ポンプ8の作動スイッチ(図示せず)もほぼ同時にオンされる。
【0114】
[5] 針体141が指先20を穿刺した後は、コイルバネ43がプランジャ41を基端方向へ押し戻す。プランジャ41は減衰運動を経て、コイルバネ42の弾性力とコイルバネ43の弾性力とが釣り合う位置で静止する(図7参照)。このとき、針体141の刃先は、チップ13内に収納されている。このように、針体141の刃先は、穿刺時以外は先端開口162から突出しないようになっており、誤って皮膚等を傷つけることが無く、また、感染も防止することができ、安全性が高い。
【0115】
[6] 前記[4]の操作とほぼ同時にポンプ8が作動し、ハウジング5の内腔部52内の空気の吸引が開始される。これにより、内腔部52は、その圧力が低下し、減圧状態とされる。
【0116】
このとき、指先20の針体141による穿刺部位21も減圧状態となっている。ただし、この状態では、当接部163の内側(先端開口162)に位置する指先20は、丘陵状にチップ13の内部に向かって盛り上がり、当接部163の先端が当接している穿刺部位21の周辺部位では、毛細血管が圧迫されている。
【0117】
[7] さらに、ポンプ8による内腔部52の吸引を継続すると、容積可変室631内の空気は、オリフィス651を介して徐々に内腔部52内へ流出し、容積可変室631は、徐々にその容積が減少する。これにより、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13は、基端方向へ向かって、すなわち、指先20から離間する方向に向かって、徐々に移動を開始する。
【0118】
このとき、内腔部52および指先20の穿刺部位21の減圧状態は、維持されているため、先端開口162から指先20が外れることはない。また、チップ13が指先20から離間する方向へ移動しても、指先20は、指当て部3に当接しているのでチップ13に追従して移動することがない。このため、チップ13は、指先20から確実に離間する。
【0119】
チップ13が指先20から離間することにより、当接部163の先端で圧迫されていた穿刺部位21の周辺部位の毛細血管は、徐々に開放され、穿刺部位21から血液22が吸い出される(図8参照)。すなわち、指先20とチップ13との離間を行わない場合に比べて出血が促進され、必要な血液量を短時間で確保することができる。
【0120】
なお、このようなポンプ8により生じる最低圧力は、例えば100〜400mmHg程度であるのが好ましい。
【0121】
やがて、凸部59の基端591と凹部621の底面とが当接する。これにより、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13の基端方向への移動が停止する。このように、チップ13は、指先20から適度な距離離間したところで停止するので、指先20が先端開口162から外れてしまうことがない。このため、穿刺部位21から吸い出された血液22が飛散し、周囲を汚染するのをより確実に防止することができ、安全性が高い。
【0122】
以上のように、成分測定装置1では、1回の操作ボタン222の押圧により、穿刺動作と減圧動作とがほぼ同時に行われ、また、チップ13の退避動作は、ポンプ8による減圧力を利用して行なわれるため、その操作性が極めて良い。
【0123】
[8] 次に、前記[7]の操作で、穿刺部位21上に粒状に隆起した血液22は、チップ13の内部に形成された血液導入ガイド166に接触し、血液通路19を介して試験紙18へ導かれ、試験紙18の中心部に供給され、放射状に展開される(図2参照)。
【0124】
試験紙18上への血液22の供給、展開に伴い、血液22中のブドウ糖(測定すべき成分)と試験紙18に担持された試薬とが反応し、試験紙18は、ブドウ糖量に応じて呈色する。この呈色の度合いを前述した測定手段7により測定し、得られたデータに基づき制御手段11にて演算処理し、温度補正計算、ヘマトクリット値補正計算等の補正を行い、血糖値を定量化する。そして、その結果を表示部12に表示する。
【0125】
[9] 測定結果を確認した後、図示しない減圧解除手段を作動させると、内腔部52および穿刺部位21に外気が流入し、内腔部52および穿刺部位21は、大気圧に復帰する。指先20の穿刺部位21の周辺部位の吸引感がなくなり、大気圧に戻ったことが確認されたら、チップ13の当接部163を指先20から離す。なお、このような減圧解除手段としては、例えば、チューブ81の途中に設けられた開放弁等(図示せず)が挙げられる。
【0126】
次に、本発明の成分測定装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の成分測定装置では、チップ退避機構の構成が異なる。
【0127】
図9は、第2実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す断面図である。
【0128】
以下、図9に示すチップ退避機構6aついて、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、以下の説明では、図9中の右側を「基端」、左側を「先端」という。
【0129】
チップ退避機構6aは、本体部61aと、シールリング64aと、細管65aと、コイルバネ67aとを有している。
【0130】
本体部61aは、壁部62aを底部とする有底筒状の部材で構成され、その内部には、内腔部63aが形成されている。この内腔部63aには、ハウジング5の基端側が挿入されている。
【0131】
本体部61aの先端部内周には、リング状の凹部66aが形成され、この凹部66aには、ハウジング5のフランジ56が位置している。また、この凹部66aは、その先端に先端側内面661aと、その基端に基端側内面662aとを有している。これらの先端側内面661aと基端側内面662aとで、フランジ56の軸方向への移動を規制している。すなわち、ハウジング5は、その軸方向への移動が、先端側内面661aと基端側内面662aとで規制される。
【0132】
チップ退避機構6aの作動状態では、フランジ56の基端と基端側内面662aとが当接し、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13の基端方向への移動が規制される。すなわち、フランジ56とこれに当接する基端側内面662aとで、チップ13の指先20からの移動距離(最大退避距離)を規定する手段(移動距離規定手段)が構成される。
【0133】
本体部61aの内周面の中央部付近には、リング状のシールリング64aが嵌合され、ハウジング5の外周面およびハウジング5の基端に形成されたリング状の凸部59aの外周面に気密的に密着するよう設置されている。これにより、シールリング64aとハウジング5の基端と内腔部63aの内面とで囲まれる領域には、気密性を有する容積可変室(減圧室)631aが画成され、ハウジング5の軸方向の位置にかかわらず、容積可変室631aの気密性は保持される。この場合、シールリング64aは、後述のコイルバネ67aの伸縮を妨げない程度の摺動抵抗を有しているのが好ましい。
【0134】
このようなシールリング64aは、前記のシールリング55等と同様の材料を用いることができる。
【0135】
また、容積可変室631a内には、付勢手段としてコイルバネ67aが設置され、コイルバネ67aの基端は、壁部62aに当接し、コイルバネ67aの先端は、ハウジング5の基端に当接している。チップ退避機構6aの作動状態では、ハウジング5が基端方向へ移動し、コイルバネ67aは、圧縮状態とされ、ハウジング5を先端方向へ付勢している。
【0136】
このような構成とすることによっても、前述した第1実施形態のチップ退避機構と同様の作用、効果が得られる。
【0137】
次に、本発明の成分測定装置の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の成分測定装置では、チップ退避機構の構成が異なる。
【0138】
図10は、第3実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す断面図である。
【0139】
以下、図10に示すチップ退避機構6bについて、前記第1実施形態および前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。また、以下の説明では、図10中の右側を「基端」、左側を「先端」という。
【0140】
チップ退避機構6bは、本体部61bと、ソレノイド69bと、コイルバネ67bとを有している。
【0141】
本体部61bは、壁部62bを底部とする有底筒状の部材で構成され、その内部には、内腔部63bが形成されている。また、本体部61bの先端には、壁部68bが設けられている。
【0142】
壁部62bおよび68bのほぼ中央部には、それぞれ、孔621bおよび681bが形成され、ソレノイド69bが有するプランジャ691bが挿通されている。
【0143】
チップ退避機構6bは、電気的に駆動する駆動源として、ソレノイド69bを有している。このソレノイド69bは、電池9および制御手段11と電気的に接続されている。なお、制御手段11では、例えば、ポンプ8の作動とチップ退避手段6bの作動との開始のタイミング等を調節している。
【0144】
ソレノイド69bは、プランジャ691bと電磁石692bとで構成され、電磁石692bは、プランジャ691bの基端部外周を囲んで、内腔部63b内に収納されている。
【0145】
プランジャ691bは、棒状の部材で構成され、その先端には、円環状のフランジが形成されている。このプランジャ691bの先端は、ハウジング5の基端に固着されている。
【0146】
電磁石692bに通電すると、すなわち、チップ退避機構6bを作動させると、プランジャ691bは、コイルバネ67bに抗して基端方向へ移動する。プランジャ691bの先端には、ハウジング5が固着されているため、プランジャ691bの基端方向への移動にともない、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13も基端方向へ移動する。
【0147】
やがて、凸部59bの基端591bと壁部68bの先端とが当接すると、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13の基端方向への移動が停止する。よって、この凸部59bの軸方向の長さを調節することにより、チップ13が指先20から必要以上に離間するのを防止することができる。すなわち、凸部59bとこれに当接する壁部68bとで、チップ13の指先20からの移動距離(最大退避距離)を規定する手段(移動距離規定手段)が構成される。
【0148】
また、プランジャ691bの先端側外周には、付勢手段としてコイルバネ67bが設置され、コイルバネ67bの基端は、壁部68bに当接し、コイルバネ67bの先端は、ハウジング5の基端に当接している。チップ退避機構6bの作動状態では、ハウジング5が基端方向へ移動し、コイルバネ67bは、圧縮状態とされ、ハウジング5を先端方向へ付勢している。このとき、電磁石692bへの通電を停止(解除)すると、すなわち、チップ退避機構6bの作動を解除すると、コイルバネ67bの弾性力により、ハウジング5およびそれに装着されたチップ13は、先端方向へ移動し、チップ退避機構6bの作動前の位置に戻る。
【0149】
このような構成とすることによっても、前述した第1実施形態および第2実施形態のチップ退避機構と同様の作用、効果が得られる。
【0150】
以上、本発明の成分測定装置を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができる。
【0151】
また、以上の実施形態では、測定目的とする成分として、ブドウ糖(血糖値)を代表として説明したが、これに限らず、例えば、タンパク、コレステロール、尿酸、クレアチニン、アルコール、ナトリウム等の無機イオン等であってもよい。
【0152】
また、本発明の成分測定装置は、前述したような血液中の成分と試薬との反応により呈色した試験紙の呈色強度を光学的に測定(測色)し、測定値へ換算、表示するものの他に、検体中の成分の量に応じて生じる電位変化を電気的に測定し、測定値へ換算、表示するものでもよい。
【0153】
また、減圧手段およびチップ退避機構の作動は、ぞれぞれ、手動で開始するようにしてもよいし、自動で開始するようにしてもよい。後者の場合、ハウジングの嵌合部の側位近傍に、例えば、指先の穿刺に際し、穿刺針の先端方向への移動を磁気的に感知するよう構成されたセンサ等を設置し、このセンサの情報に基づいて減圧手段およびチップ退避機構が作動するようにすることができる。
【0154】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、より確実かつ短時間で血液中の所定成分の測定が行える成分測定装置を提供することができる。
【0155】
チップ退避機構を設けたことにより、出血量が十分に確保され、測定ミスもなく、より高い精度で測定を行うことができる。
【0156】
また、チップに試験紙を設けた場合には、穿刺、体液の採取および試験紙への展開、測定(成分の定量化)を連続的に行うことができ、成分測定を容易かつ短時間で行うことができる。
【0157】
また、使用に際しての準備操作が容易であるため、定期的に使用する場合や繰り返し使用する場合にも有利である。
【0158】
また、一旦穿刺した後、誤って再度生体表面を穿刺する等の事故が防止され、安全性が高い。しかも、穿刺針が直接見えないので、穿刺の際の恐怖感も軽減される。
【0159】
以上のことから、本発明の成分測定装置は、患者自身が自己の血糖値等を測定する際に使用するのに適している。
【0160】
また、本発明の成分測定装置は、構成が簡単、小型、軽量であり、安価で、量産にも適する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成分測定装置の第1実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明において使用するチップの構成を示す縦断面図である。
【図3】第1実施形態の成分測定装置が有する穿刺手段および穿刺手段を内蔵するハウジングの構成を示す縦断面図(チップをハウジングに装着する前の状態)である。
【図4】第1実施形態の成分測定装置が有する穿刺手段および穿刺手段を内蔵するハウジングの構成を示す縦断面図(チップをハウジングに装着した状態)である。
【図5】第1実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(穿刺手段の作動前の状態)である。
【図6】第1実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(穿刺手段の作動時の状態)である。
【図7】第1実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(減圧手段の作動時の状態)である。
【図8】第1実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(チップ退避機構の作動時の状態)である。
【図9】第2実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(減圧手段の作動時の状態)である。
【図10】第3実施形態の成分測定装置が有するチップ退避機構の構成を示す縦断面図(減圧手段の作動時の状態)である。
【符号の説明】
1 成分測定装置
2 本体
21 筐体
211 壁部
212 開口
22 蓋体
221 表示窓
222 操作ボタン
223 係止解除部材
23 収納空間
3 指当て部
31 指当て面
4 穿刺手段
41 プランジャ
411 針ホルダ
412 弾性片
413 係止部
42 コイルバネ
43 コイルバネ
5 ハウジング
51 壁部
511 孔
52 内腔部
53 嵌合部
54 通気路
55 シールリング
56 フランジ
57 開口
58 シール部材
59、59a、59b 凸部
591、591b 基端
6、6a、6b チップ退避機構
61、61a、61b 本体部
611 凸部
62、62a、62b 壁部
621 凹部
621b 孔
622 面
63、63a、63b 内腔部
631、631a 容積可変室
64、64a シールリング
65、65a 細管
651、651a オリフィス
66a 凹部
661a 先端側内面
662a 基端側内面
67a、67b コイルバネ
68b 壁部
681b 孔
69b ソレノイド
691b プランジャ
692b 電磁石
7 測定手段
8 ポンプ
81 チューブ
9 電池
10 回路基板
11 制御手段
12 表示部
13 チップ
14 穿刺針
141 針体
142 ハブ
143 縮径部
15 第1のハウジング
151 内周面
152 内腔部
153 壁部
154 孔
16 第2のハウジング
161 内腔部
162 先端開口
163 当接部
164 フランジ
165 凹部
166 血液導入ガイド
17 試験紙固定部
18 試験紙
19 血液通路
191 通路開口
192 通路開口
Claims (12)
- 内腔部と該内腔部が先端で開放する開口とを有するハウジングと、前記内腔部内に摺動可能に収納された穿刺針とを備えるチップを装着し、前記開口を指で塞ぐようにして使用する成分測定装置であって、
穿刺する指を当てがう指当て部と、
前記指当て部に当てがわれた指を穿刺するよう前記穿刺針を作動させる穿刺手段と、
前記穿刺針の収納空間とともに、前記穿刺針による指の穿刺部位を減圧状態にする減圧手段と、
前記穿刺部位より採取された血液中の所定成分の量を測定する測定手段と、
前記減圧手段による減圧状態を維持しつつ、前記チップを指から離間する方向に移動するチップ退避機構と、
前記チップ退避機構による前記チップの移動距離を規定する移動距離規定手段とを有することを特徴とする成分測定装置。 - 前記チップの移動は、前記チップを前記穿刺手段に装着した状態で、前記穿刺手段ごと行なわれる請求項1に記載の成分測定装置。
- 前記減圧手段の作動により生じる減圧力を利用して、前記チップ退避機構が作動する請求項1または2に記載の成分測定装置。
- 前記チップ退避機構は、減圧室と、該減圧室と前記収納空間とを連通する空気の通過抵抗が大きい少なくとも1つの通路とを有し、
前記通路を介して、前記減圧室を減圧することにより、前記チップを指から離間する方向に移動させる請求項1ないし3のいずれかに記載の成分測定装置。 - 前記チップ退避機構は、電気的に駆動する駆動源を有し、該駆動源の駆動により前記チップ退避機構が作動する請求項1または2に記載の成分測定装置。
- 前記駆動源は、ソレノイドである請求項5に記載の成分測定装置。
- 前記チップ退避機構は、付勢手段を有し、前記チップ退避機構の作動を解除したとき、前記チップは、前記付勢手段により前記チップ退避機構作動前の位置に戻る請求項1ないし6のいずれかに記載の成分測定装置。
- 前記成分測定装置は、前記チップを保持し、前記穿刺手段を内蔵するハウジングを有し、
前記減圧手段は、前記穿刺手段を内蔵するハウジング内の前記収納空間を減圧状態とする請求項1ないし7のいずれかに記載の成分測定装置。 - 前記穿刺手段の作動と前記減圧手段の作動とをほぼ同時に開始することができる請求項1ないし8のいずれかに記載の成分測定装置。
- 前記チップは、指に当接する当接部を有し、該当接部の内側に前記開口が形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の成分測定装置。
- 前記指当て部は、指当て面を有し、
前記チップを前記成分測定装置に装着した状態で、前記当接部の先端は、前記指当て面とほぼ同じ位置か、もしくは、前記指当て面から若干突出している請求項10に記載の成分測定装置。 - 前記チップは、試験紙と、該試験紙に血液を供給する血液通路とを有する請求項1ないし11のいずれかに記載の成分測定装置。
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