JP3833811B2 - α−モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法 - Google Patents
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【発明の技術分野】
本発明は、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法に関し、さらに詳しくはα-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液を処理してα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取することによるα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ヘスペリジン(Hesperidin)は、下記式[I]:
【0003】
【化1】
【0004】
で示されるようにヘスペレチン(5,7,3’-トリヒドロキシ-4’-メトキシフラバノン)の7位の水酸基に、ルチノース(L-ラムノシル-(α1→6)-グルコース)がβ-結合したものをいう。このヘスペリジンは柑橘類の未熟な果皮に含まれ、毛細血管の強化、出血予防、血圧調整等の生理作用を有するビタミンPとして医薬品、化粧品等に供される。またこのヘスペリジンは、アルカリ性水溶液には可溶であるが、水、酸に難溶であり、室温では、50リットルの水に僅かに1g(約0.002W/V%)程度しか溶けず、このヘスペリジンが、例えば、缶詰の液汁に少量でも含まれていると、液汁が白濁し商品価値が損なわれる。
【0005】
従来、ヘスペリジンによる液汁の白濁を防止するとの観点から、種々の方法が提案されている。
例えば、特開平3-7593号公報には、ヘスペリジンに澱粉部分分解物(α-グルコシル糖化合物)共存下で糖転移酵素(α-グルコシル転移活性を有する酵素)を作用させて、下記式[II]で示されるα-グルコシルヘスペリジンを生成させて、水溶性を高めた酵素処理ヘスペリジンの製造方法が開示されている。
【0006】
【化2】
【0007】
このα-グルコシルヘスペリジンは、上記式[II]に示されるように、式[I]で示されるヘスペリジンのグルコースの4位の位置にグルコース(G)がα-1,4結合で順次n個(1〜20個)結合した化合物、またはこれらグルコース数の異なるα-グルコシルヘスペリジンの混合物である。
【0008】
この酵素反応においては、原料液に含まれるヘスペリジンの40〜80%が酵素処理によりα-グルコシルヘスペリジンに変換されるが、20〜60%は未反応ヘスペリジンとして残存してしまう。未反応ヘスペリジン(ヘスペリジン)は、α-グルコシルヘスペリジンが共存すると、水溶液中での溶解性が高まるが、α-グルコシルヘスペリジンに対して未反応ヘスペリジンの比率が高いと、短時間に未反応ヘスペリジンが不溶化して析出してくる。
【0009】
この未反応ヘスペリジンの析出を防ぐ手段の一つとして、CMC(カルボキシメチルセルロース)等の糊料をヘスペリジン含有液に添加し、水溶液の粘性を上げることが考えられるが、このような糊料の添加は商品イメージ上好ましくなく、また輸出商品には使用できないなど、一般的な方法とは言いがたい。
【0010】
他方、未反応ヘスペリジンを析出させ、ろ過などで分離除去してα-グルコシルヘスペリジンに対して未反応ヘスペリジンの比率を低減させることにより、未反応ヘスペリジンの析出を遅らせる方法がある。
【0011】
しかしこの方法を採用しても、長時間経過するとやはり未反応ヘスペリジンが析出するとの問題点があり、本質的な解決になっていない。
また、クロマト分離などの方法で、α-グルコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとを含有する水溶液からα-グルコシルヘスペリジン区分のみを取り出して用いる方法もあるが、コストアップになり、経済的な方法とは言いがたい。
【0012】
このような問題点を解決すべく本発明者らは鋭意研究を重ねて、先に、
α-グルコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとを含有する溶液に、α-L-ラムノシダーゼ活性を有する酵素を作用させると、α-グルコシルヘスペリジンは殆ど変化せずそのままであるが、未反応ヘスペリジンは、加水分解されてラムノースを分離して下記式[III]で示されるβ-モノグルコシルヘスペレチンに変換され、著しく水溶性に優れ、長期間経過しても白濁などが生じないような酵素処理ヘスペリジンが得られることなどを見出している。
【0013】
【化3】
【0014】
また、「サイクロデキストリン合成酵素によるヘスペリジン配糖体生成と天然色素の安定化」と題する米谷、寺田らの論文(日本食品科学工学会誌、第42巻第5号、第376〜382頁、1995年5月刊)には、糖受容体のヘスペリジンと糖供与体のβ-CDと糖転移酵素のCGTaseを反応させて、ヘスペリジン配糖体(Hsp−Gn)を得た後、このヘスペリジン配糖体の精製段階で、このヘスペリジン配糖体にα-ラムノシダーゼを作用させると、未反応ヘスペリジンのみが加水分解され、セファデックスLH−20カラムクロマトグラフィーにより効果的にヘスペリジン配糖体(精製物)と未反応ヘスペリジンとを分離できるとの知見を得たことが記載され、得られたヘスペリジン配糖体(精製物)を天然色素溶液に添加したところ、紫外線による天然色素の退色を抑制できたことが記載されている。
【0015】
しかしながら、式IVで示されるα-モノグルコシルヘスペリジンについては、この米谷、寺田らの論文に記載の方法では、含有されているヘスペレチンを予めAmberlite XAD−16で分離し、得られたβ-モノグルコシルヘスペレチンとα-モノグルコシルヘスペリジンとα-ジグルコシルヘスペリジンとの混合物から、さらにα-モノグルコシルヘスペリジンとα-ジグルコシルヘスペリジンとを高価なカラムクロマトグラフィーにより分離する方法であるため、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物のみを効率よく採取することが困難であり、これをより簡単・安価に採取できれば、医薬品、化粧品、食品添加物など広範な用途へのいっそうの利用が期待できる。
【0016】
【化4】
【0017】
なお、前記の特開平3-7593号公報では、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合液にグルコアミラーゼ(E.C.3.2.1.3)を作用させ、α-グルコシルヘスペリジンをα-モノグルコシルヘスペリジンに変え、ダイヤイオンHP-20カラムに通液し水洗した後、エタノール水溶液中のエタノール濃度を段階的に高めながらα-モノグルコシルヘスペリジン画分を採取する方法が開示されている。この特開平3-7593号公報に記載の方法においても、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を安価に供給することは困難であると思われる。
【0018】
そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、
グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼ(E.C.3.2.1.40)を作用させた後、α-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取する方法、あるいは
グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)を作用させた後、α-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取する方法
のうちの何れかの方法を採用することにより、
得られた混合物からα-モノグルコシルヘスペリジンを効率良く分離・採取(分取)できることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明では、析出したα-モノグルコシルヘスペリジンを元の混合物から固液分離するだけで、極めて効率良くα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を製造することができる。
【0020】
なお、ヘスペリジンにα-L-ラムノシダーゼ活性を有する酵素を作用させてヘスペリジンをβ-モノグルコシルヘスペレチンに変換し、水溶性を向上させる方法はみかん缶詰シラップの白濁防止法として工業的に行なわれている。
【0021】
しかし本発明のように、α-グルコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとを含有する溶液にグルコアミラーゼ、α-L-ラムノシダーゼを作用させるか、またはグルコアミラーゼ、α-L-ラムノシダーゼ及びβ-D-グルコシダーゼの各活性を有する酵素剤を作用させて、α-グルコシルヘスペリジンのラムノースはそのままでグルコース4位に多数結合しているグルコース(G)nのうちの1個のみ残して加水分解してα-モノグルコシルヘスペリジンとし、一方ヘスペリジンのラムノースを加水分解してβ-モノグルコシルヘスペレチン(7-O-β-モノグルコシルヘスペレチン)に変えるか、さらにはβ-モノグルコシルヘスペレチンのβ-グルコースを加水分解してヘスペレチンに変えるかすることにより、効率良くα-モノグルコシルヘスペリジンのみを析出分離し、これを採取する方法は示唆すらされていなかった。
【0022】
また特開平8-80177号公報には、可溶化ヘスペリジンを、ヘスペリジンが含有されている水溶液に添加するヘスペリジン結晶の析出防止方法が開示され、この可溶化ヘスペリジンは、ヘスペリジン中のグルコース基の4位の位置にグルコースがα-1,4結合で順次1〜十数個結合した化合物であり、このような可溶化ヘスペリジンは、糖転移酵素をサイクロデキストリン等の存在下にヘスペリジンに作用させることで生産でき、該糖転移酵素としては、例えばCGTaseすなわち、1,4-α-D-グルカン;1,4-α-D-(1,4-グルカノ)-トランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.19)、さらに具体的には、バチルス属のA2-5a菌株培養物から採取された糖転移酵素を利用して生産できる旨記載されている。
【0023】
しかしながら、該公報には、可溶化ヘスペリジンを未反応ヘスペリジンに添加混合してヘスペリジン含有物中のヘスペリジン結晶析出を防止するとの技術思想の開示にとどまる。また該公報に記載の方法で得られるものはα-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物であり、生成物には、未反応ヘスペリジンがそのまま含有されているため、例えばこのような方法で調製した缶詰ではその液汁が次第に白濁しやすいという問題点がある。この対処方法として、該公報の実施例では、α-モノグルコシルヘスペリジンとα-ジグルコシルヘスペリジン画分を採取し用いている。しかしながら、前記2成分画分を経済的に採取することは、技術的に困難を伴う。
【0024】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に簡単な処理を施すことにより、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を分取する方法を提供することを目的としている。
【0025】
【発明の概要】
本発明に係るα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法では、
α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液(a)に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼとを同時にまたは別々に作用させた後、得られた混合物(酵素反応液)(b-1)からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離するか(第I法)、あるいは
上記溶液(a)に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼ、β-D-グルコシダーゼの各活性とを有する酵素剤類を同時にまたは別々に作用させた後、得られた混合物(酵素反応液)(b-2)からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離するか(第II法)、
の何れかの方法により、上記溶液(a)からα-モノグルコシルヘスペリジンを分離し、これを採取することを特徴としている。
【0026】
本発明の好ましい態様においては、α-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離させる前に、上記酵素反応液を多孔性吸着樹脂と接触させ、α-モノグルコシルヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチン等を該樹脂に吸着させ、次いで水洗によりデキストリン等を流出させた後、有機溶剤(例:アルコール)でα-モノグルコシルヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチンを溶出させることが望ましく、さらにはこのようにして得られた溶出液中に含まれる使用された有機溶剤を除去しておくことが好ましい。さらに、本発明の好ましい態様においては、低級アルコール(例:メタノール)中で、この溶出液中に含まれるα-モノグルコシルヘスペリジンを析出させ、分取することが望ましい。
【0027】
本発明によれば、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液から、ヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチンなどをほとんど含まず、著しく水溶性に優れたα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物が容易に得られる。
【0028】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法について具体的に説明する。
【0029】
本発明に係るα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の分取(製造)方法では、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼとβ-D-グルコシダーゼとを同時にまたは別々に作用させ(但し、β-D-グルコシダーゼを、グルコアミラーゼおよびα-L-ラムノシダーゼより先に作用させることはない)、得られた酵素処理液からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取しているが、
この際に用いられる「α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液」についてまず初めに説明する。
【0030】
[α - グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液]
このような酵素処理の対象となる溶液としては、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有するものであれば、その含量比、濃度などは特に限定されないが、好ましくは、処理すべき溶液中のα-グルコシルヘスペリジン濃度が、0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%であり、ヘスペリジン濃度が、0.02〜15重量%、好ましくは0.2〜5重量%であり、α-グルコシルヘスペリジン/ヘスペリジン(重量比)が、100/1〜200、好ましくは100/1〜20であるものが望ましい。
【0031】
α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液としては、例えば、下記▲1▼〜▲2▼に示すものが挙げられる。
▲1▼: 特開平3-7593号公報に記載されているように、ヘスペリジンに澱粉部分分解物(α-グルコシル糖化合物)共存下で糖転移酵素(α-グルコシル転移活性を有する酵素)を作用させてなり、α-グルコシルヘスペリジンと未反応のヘスペリジンとを含有しているもの。
▲2▼: 上記のようにして得られたα-グルコシルヘスペリジン含有物中のヘスペリジンを析出させた後、さらにろ過などによりヘスペリジンを分離除去してα-グルコシルヘスペリジンに対してヘスペリジンの比率を低減させたもの。
【0032】
[グルコアミラーゼ、α -L- ラムノシダーゼ、
β -D- グルコシダーゼの各活性を有する酵素剤]
本発明においては、グルコアミラーゼ、α-L-ラムノシダーゼ、β-D-グルコシダーゼは、それぞれの酵素活性を有するものであれば、何れも用いることができる。
【0033】
グルコアミラーゼとしては、具体的には、例えば、「グルクザイムNL4,2」(天野製薬(株)製)、「セルラーゼA<アマノ>3」(天野製薬(株)製)、「グルコチーム」(長瀬産業(株)製)、「ユニアーゼ30」((株)ヤクルト製)、「ナリンギナーゼ」(田辺製薬(株)製)などの市販の酵素剤のように、α-1,4グルコシド結合をグルコース単位で切断しうる酵素が挙げられる。
【0034】
α-L-ラムノシダーゼとしては、具体的には、例えば、「ヘスペリジナーゼ」(田辺製薬(株)製)、「ナリンギナーゼ」(田辺製薬(株)製)、「セルラーゼA<アマノ>3」(天野製薬(株)製)等の市販の酵素剤が挙げられ、好ましくは「ヘスペリジナーゼ」が用いられる。
【0035】
β-D-グルコシダーゼとしては、具体的には、例えば、「セルラーゼA<アマノ>3」(天野製薬(株)製)等の市販の酵素剤が挙げられる。
これらの酵素剤のうちグルコアミラーゼ活性を有する酵素剤は、上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液中のα-グルコシルヘスペリジン100重量部当たり、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度の量で用いられる。
【0036】
α-L-ラムノシダーゼ活性を有する酵素剤は、上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液中のヘスペリジン100重量部当たり、好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは1.5〜15重量部程度の量で用いられる。
【0037】
またβ-D-グルコシダーゼ活性を有する酵素剤は、上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液中のヘスペリジン100重量部当たり、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度の量で用いられる。なお、グルコアミラーゼ活性、α-L-ラムノシダーゼ活性、β-D-グルコシダーゼ活性のうち2つ以上の活性を有する市販の酵素剤{例:「セルラーゼA<アマノ>3」(天野製薬(株)製)}を用いる場合には、その量を適宜加減し設定することができる。
【0038】
また、これらの酵素を、上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液中のα-グルコシルヘスペリジンあるいはヘスペリジンに作用させるには、通常、pH3〜7、好ましくはpH3〜4で、通常40〜70℃、好ましくは50〜60℃の温度で、通常0.5〜72時間、好ましくは6〜48時間程度保持すればよい。
【0039】
このような条件で上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液を酵素処理した場合、α-グルコシルヘスペリジンは、上記α-L-ラムノシダーゼ(例:ヘスペリジナーゼ)処理によっては、その作用を実質上受けない。
【0040】
しかしながらこのα-グルコシルヘスペリジンは、グルコアミラーゼの加水分解作用を受けて、このα-グルコシルヘスペリジンのヘスペレチン骨格7位のグルコースにα-1,4結合でn個順次結合(n=1〜十数個)しているグルコースが1個残して加水分解され、上記式[II]中、n=1のα-モノグルコシルヘスペリジンになる。
【0041】
なお、α-グルコシルヘスペリジン(含むα-モノグルコシルヘスペリジン)にβ-D-グルコシダーゼを作用させても実質上加水分解されない。
一方のヘスペリジンは、上記のα-L-ラムノシダーゼの作用を受けてそのラムノース基が加水分解され、β-モノグルコシルヘスペレチン(7-O-β-モノグルコシルヘスペレチン)になる。
【0042】
このβ-モノグルコシルヘスペレチンに、さらにβ-D-グルコシダーゼが作用すると、このβ-モノグルコシルヘスペレチンのヘスペレチン骨格7位に結合しているβ-グルコース基が加水分解されて、β-モノグルコシルヘスペレチンは、水に難溶性のヘスペレチンになる。
【0043】
従って、本発明では、上記α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液への上記各酵素の添加順序としては、
α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼを作用させ、得られた混合物(酵素反応液)からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離する第I法では、α-グルコシルヘスペリジンのα-モノグルコシルヘスペリジン化と、ヘスペリジンのβ-モノグルコシルヘスペレチン化の何れか一方を先に、あるいは同時に進行させればよいため、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼの何れか一方を先に、あるいは同時に進行させればよい。得られた酵素反応液中の各成分含量は、α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対してβ-モノグルコシルヘスペレチンが0.5重量部以下で、ヘスペリジン及びヘスペレチンがそれぞれ0.1重量部以下である。また、糖類等その他の成分は、該酵素反応液中のα-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して1重量部以上の量で含まれることが多い。
【0044】
α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、グルコアミラーゼ、α-L-ラムノシダーゼ、β-D-グルコシダーゼを同時に、または何れか一種を先にして順次作用させ、得られた混合物(酵素反応液)からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離する第II法では、
▲1▼グルコアミラーゼと、α-L-ラムノシダーゼと、β-D-グルコシダーゼを同時に添加する方法、
▲2▼グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼとを添加して作用させた後、β-D-グルコシダーゼを添加して作用させる方法、
▲3▼グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼを任意の順序で添加して作用させた後、β-D-グルコシダーゼを作用させる方法、
▲4▼ヘスペリジンのヘスペレチン化を先に進めるべく、α-L-ラムノシダーゼとβ-D-グルコシダーゼとを作用させた後、グルコアミラーゼを作用させる方法等が挙げられる。何れの場合も、これらの各酵素は一度にあるいは少量ずつ添加することができる。
【0045】
得られた酵素反応液中の各成分含量は、α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、ヘスペレチンが0.4重量部以下で、β-モノグルコシルヘスペレチンとヘスペリジンがそれぞれ0.1重量部以下の量である。そして、糖類等のその他の成分は、該酵素反応液中のα-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、1重量部以上の量で含まれることが多い。
【0046】
本発明では、これらのうちでは、第I法では、α-L-ラムノシダーゼを先に作用させた後、グルコアミラーゼを作用させることが望ましい。
また、第II法では、α-L-ラムノシダーゼを作用させた後、グルコアミラーゼとβ-D-グルコシダーゼを作用させることが反応効率の点から望ましい。
【0047】
[α - モノグルコシルヘスペリジンの分取]
本発明では、上記のように、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液を酵素処理して得られる、α-モノグルコシルヘスペリジンを含有する酵素処理液(酵素処理α-モノグルコシルヘスペリジン含有液とも言う)から、α-モノグルコシルヘスペリジンを分取する。
【0048】
このように酵素処理液からα-モノグルコシルヘスペリジンを分取するには、第I法では、低級アルコールに、下記酵素処理液すなわち、「α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、β-モノグルコシルヘスペレチンが0.5重量部以下で、ヘスペリジン及びヘスペレチンがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類その他の成分が多くの場合1重量部以上の量で含まれる酵素処理液」を混合し、
第II法では、下記酵素処理液すなわち、「α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、ヘスペレチンが0.4重量部以下で、β-モノグルコシルヘスペレチンとヘスペリジンがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類等その他の成分が多くの場合1重量部以上の量で含まれる酵素処理液」を混合するが、
本操作に先だって酵素処理液中の遊離糖分を除去しておくことが望ましい。遊離糖分の除去方法は、酵素処理液中の遊離糖分を効率良く除去出きる方法であればどんな方法でもよいが、多孔性吸着樹脂を用いる方法が簡便である。
【0049】
多孔性吸着樹脂としては、具体的には、例えば、HP−20、HP−50、XAD−2等の非極性樹脂、XAD−7等の中間極性樹脂が好ましく用いられる。
これらの方法では、カラムに多孔性吸着樹脂を充填し、高濃度のエタノール水溶液等で活性化しておいたカラムに上記酵素処理α-モノグルコシルヘスペリジン含有液を10〜60℃の温度で通液する等の方法で、該樹脂に上記酵素処理α-モノグルコシルヘスペリジン含有液を接触させ、α-モノグルコシルヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチン等を吸着させる。
【0050】
次いで、充填樹脂容量の1〜4倍量程度の水で洗浄して遊離糖を主体とする夾雑物を除去した後、アルコール、アルコール−水(アルコール/水=50〜100/25〜1)等の溶離液を10〜60℃の温度で通液する等の方法で、該樹脂に吸着しているα-モノグルコシルヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチン等を溶出させる。
【0051】
第I法では、本操作により、α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、β-モノグルコシルヘスペレチンが0.5重量部以下で、ヘスペリジン及びヘスペレチンがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類等のその他の成分が0.1重量部以下の量である溶出液が得られ、
また第II法では、本操作によりα-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、ヘスペレチンが0.4重量部以下で、β-モノグルコシルヘスペレチンとヘスペリジンとがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類等その他の成分が0.1重量部以下の量である溶出液が得られる。
【0052】
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数が1〜5の低級アルコールが挙げられる。
次いで上記溶出液中のα-モノグルコシルヘスペリジンを低級アルコール中で析出させ、固液分離し、これを採取することにより、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を得ることができる。
【0053】
本操作は、α-モノグルコシルヘスペリジンが、加温された低級アルコール中には容易に溶解する一方、それを室温(例:15〜25℃)以下の温度に下げるとα-モノグルコシルヘスペリジンが容易に析出してくる現象と、β-モノグルコシルヘスペレチンは低級アルコール中に溶解しやすく、室温以下の温度に下げてもβ-モノグルコシルヘスペレチンは析出しにくい現象を見出して、完成させたものである。
【0054】
以下に、析出分離操作を第I法、第II法毎に詳述するが、第I法、第II法とも、酵素処理された上記溶出液を上記低級アルコールに溶解するに先立ち、乾燥物としておくことが好ましい。
【0055】
<析出分取操作>
第I法:
α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、β-モノグルコシルヘスペレチンが0.5重量部以下で、ヘスペリジン及びヘスペレチンがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類等のその他の成分が0.1重量部以下の量で含まれることのある乾燥物を低級アルコール、好ましくはメタノールに溶解する。該乾燥物1gに対して、メタノールを0.2〜20ml、好ましくは1〜10ml加え、20〜120℃、好ましくは60〜90℃の温度に加熱して溶解する。
【0056】
その後、この溶液を冷却、例えば、室温以下〜上記アルコールの融点以上の温度に冷却しあるいは室温下に放置すると、ほとんどα-モノグルコシルヘスペリジンのみが析出してくる。このように溶液を冷却する際には、予め微粉末状に調製しておいたα-モノグルコシルヘスペリジンを該溶液に種晶として少量加える等の操作を行えば、より迅速にα-モノグルコシルヘスペリジンが析出してくる。
【0057】
その後、遠心分離機等で固液分離すればα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を得ることができる。
固液分離に際しては、析出したα-モノグルコシルヘスペリジン結晶を低級アルコールで洗浄すれば、よりα-モノグルコシルヘスペリジン含有率の高いα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物が得られる。
【0058】
第II法:
上記第I法において、α-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して、ヘスペレチンが0.4重量部以下で、β-モノグルコシルヘスペレチンとヘスペリジンがそれぞれ0.1重量部以下であり、そして糖類等のその他の成分が0.1重量部以下の量で含まれることのある乾燥物を用いる以外は、第I法と同様に操作すれば、該乾燥物からα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物が得られる。
【0059】
このようにして得られたα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物((a)、(b))中には、α-モノグルコシルヘスペリジンが85重量%以上、好ましくは95重量%以上の量で含有され、またこのα-モノグルコシルヘスペリジンと共存するヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン(7-O-β-モノグルコシルヘスペレチン)、ヘスペレチンは、何れも全く含まれないことが最も望ましいが、これらを含む場合には、このα-モノグルコシルヘスペリジンと共存するヘスペリジンの含有量は、このα-モノグルコシルヘスペリジン1重量部に対して0.10重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、特に好ましくは0〜0.01重量部の量であり、またβ-モノグルコシルヘスペレチン(7-O-β-モノグルコシルヘスペレチン)の含有量は、0.10重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、特に好ましくは0〜0.02重量部の量であることが望ましい。しかも、ヘスペレチン含有量は、0.10重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、特に好ましくは0〜0.01重量部の量であることが望ましい。
【0060】
このようなα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物((a)(b))は、水溶性に優れ、例えば、固形分濃度が30重量%のα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物溶液を室温(例:25℃)で4週間保持しても、肉眼ではヘスペリジン、ヘスペレチン等の析出など、フロック(floc:凝集塊)の生成が殆ど見られない。
【0061】
このようにして得られたα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物中のα-モノグルコシルヘスペリジンは、体内に摂取されると生体内酵素の作用を受けて元のヘスペリジンに戻り、ビタミンPとしての諸機能を発揮することができる。この場合、α-モノグルコシルヘスペリジン(あるいはその高含有物)をビタミンCと併用すれば、毛細血管の抵抗性の増強等のビタミンP作用において相乗効果を発揮することができる。
【0062】
また、このようなα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物は、天然色素の退色防止剤等の用途に好適に使用できる。
このようにα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を天然色素の退色防止に用いる場合、天然色素で着色された試料重量当たり、0.001〜0.2重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%、より好ましくは0.01〜0.05重量%の量で使用することが望ましい。
【0063】
ここでさらに詳説すれば、ヘスペリジンは特有の紫外部吸収スペクトルを持ち、可視部に目立った吸収がないためほとんど無色であり、従来、紫外線で退色の起きやすい色素、特に天然色素の退色防止に利用が試みられてきたが、ヘスペリジンは水にほとんど溶けなかったため効果を発揮するまでに至らなかった。また水溶性を高めた酵素処理ヘスペリジンであっても、従来品では、未反応ヘスペリジンの析出・沈澱が発生する恐れがあり、その場合商品イメージを損ねるためその利用には問題があった。
【0064】
これに対して本発明に係るα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物は、沈澱発生の恐れのほとんどない水溶性のものであるため、天然色素の退色防止に幅広く利用できる。特にパプリカ、β-カロチン、アスタキサンチン等のカロチノイド系色素に有効であるが、ブドウ果皮、ベニバナ黄等のフラボノイド色素、ビートレッド、ウコン色素、クチナシ青、紅麹色素等にも効果的に使うことができる。
【0065】
この場合、酵素処理ルチン、L-アスコルビン酸(またはL-アスコルビン酸ソーダ)の何れか1つまたは両方を併用することにより、上記天然色素の退色防止に相乗効果が得られる。
【0066】
また、このα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物をみかん缶詰の白濁防止に用いる場合、該α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物は、みかんおよび溶液(みかん缶詰の内の溶液)中に存在するヘスペリジン(未反応ヘスペリジン)1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部の量であることが望ましい。
【0067】
さらに、このα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物は、ヘスペリジンを含有するカンキツ類飲料(例:温州みかん、ネーブル、オレンジなど。)の白濁防止に使用することができ、この場合、用いるα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の使用量は、溶液中に存在するヘスペリジン(未反応ヘスペリジン)1重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部であることが望ましい。
【0068】
また、このα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物は、特有の視外部吸収特性を持つと共に、色が極めて薄い等の特質を持つため、UVカット剤などとして化粧品などに利用することができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液から、ヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、ヘスペレチンなどをほとんど含まず、著しく水溶性に優れ、白濁(結晶析出)が生じないようなα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物が収率よく簡単に得られる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明に係るα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の分取(製造)方法について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、このような実施例により何等限定されるものではない。
【0071】
なお、以下の例において、「%」は、特にその趣旨に反しない限り「重量%」の意味である。
【0072】
【参考例1】
ヘスペリジン50.0gを0.25N-苛性ソーダ(NaOH)0.9リットルに溶解し、そこにDE8のデキストリン150gを加え溶解した。
【0073】
4N-硫酸でpH9.0に調整し、バチルス・ステアロサーモフィルス由来のシクロデキストリングルカノトランスフィラーゼ(株式会社 林原生物化学研究所 販売)をデキストリン1g当たり15単位加え、60℃まで加温しながらさらに4N-硫酸を滴下してpH8.3に調整し、6時間反応させた。
【0074】
その後、再び4N-硫酸を滴下してpH7.0に調整し、68℃に加温して40時間反応させた。
反応終了後、酵素を加熱失活させた後、濾過して酵素処理ヘスペリジン溶液(A液)を得た。
【0075】
A液を下記条件下にHPLC分析したところ、反応前液中のヘスペリジンの72%がα-グルコシルヘスペリジンになっており、残り28%は未反応のままであった。
【0076】
<HPLC分析条件>
カラム:C18
溶離液:メタノール/水/酢酸=30/65/5
検出 :280nm
温度 :40℃
流速 :0.5ml/分
[ヘスペリジン、β - モノグルコシルヘスペレチン、α - モノグルコシルヘスペリジン、α - グルコシルヘスペリジンなどの確認]
ヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、α-モノグルコシルヘスペリジン、α-グルコシルヘスペリジンなどの確認は以下の方法で行った。
1.ヘスペリジン: 試薬ヘスペリジン(東京化成)を用いて同一であることを確認した。
2.β-モノグルコシルヘスペレチン:
試薬ヘスペリジン(東京化成)にα-L-ラムノシダーゼを作用させ、高速液体クロマトグラフィーで分析(上記分析条件)する。次いで、ヘスペリジンのR.T.(=10.90)の後の単一ピーク(R.T.=12.13)画分を採取し加水分解しグルコースを検出する。さらに本ピークの紫外部吸収スペクトルがヘスペリジンと一致することを確認し、このピークをβ-モノグルコシルヘスペレチン(ヘスペレチン−7−グルコシド)とした。
3.α-モノグルコシルヘスペリジン、α-グルコシルヘスペリジン:
試薬ヘスペリジン(東京化成)を用いての反応物を高速液体クロマトグラフィーで分析(上記分析条件)する。各ピークの紫外部吸収スペクトルがヘスペリジンと一致することを確認する。またグルコアミラーゼを作用させ、高速液体クロマトグラフィーで分析(上記分析条件)する。その結果、いずれもヘスペリジンのR.T.(=10.90)の前の単一ピーク(R.T.=10.34)になった。
【0077】
さらに本画分(R.T.=10.34)を採取し、α-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.20)を作用させて加水分解するとグルコースとヘスペリジンが生成することを確認する。R.T.=10.34のピークをα-モノグルコシルヘスペリジンとし、本ピーク及び本ピークよりR.T.の小さいピーク群をα-グルコシルヘスペリジン画分とした。
【0078】
[ヘスペリジン、β - モノグルコシルヘスペレチン、α - モノグルコシルヘスペリジン、α - グルコシルヘスペリジンなどの重量の測定]
またヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチン、α-モノグルコシルヘスペリジン、α-グルコシルヘスペリジンなどの重量の測定は以下の方法で行った。
1.ヘスペリジン: 高速液体クロマトグラフィーで分析し、試薬ヘスペリジン(東京化成)をもとに算出した。
2.β-モノグルコシルヘスペレチン:
高速液体クロマトグラフィーで分析し、試薬ヘスペリジン(東京化成)をもとに分子量換算し算出した。
3.α-モノグルコシルヘスペリジン:
高速液体クロマトグラフィーで分析し、試薬ヘスペリジン(東京化成)をもとに分子量換算し算出した。
4.α-グルコシルヘスペリジン画分:
本品(試料)の乾燥品1.0gを水50mlに溶解し、この溶液を予め高濃度のエタノール水溶液で活性化し水で充分水洗しておいたXAD-7樹脂100mlにSV=1で通液し、その後水洗し、50%エタノール水溶液200mlで溶出する。この液(溶出液)からエタノールを除いてから濃縮・乾燥し重量を求める。高速液体クロマトグラフィーで分析し、もしヘスペリジン、β-モノグルコシルヘスペレチンが含まれていたならば、前述の1,2に基づいて算出した値を減じてα-グルコシルヘスペリジン画分重量を算出する。
【0079】
【実施例1】
参考例1の酵素処理ヘスペリジン溶液(A液)に、ヘスペリジナーゼ(ヘスペリジナーゼ2号,田辺製薬 製)2gを加え、4N-硫酸でpH4に調整し、55℃で24時間反応させた後、グルコアミラーゼ(グルコチーム,長瀬産業 製)1.0gを加え、さらに55℃で24時間反応を継続させた。
【0080】
反応終了後、得られた反応液を90℃で20分間保持して酵素を加熱失活させてから濾過して酵素処理ヘスペリジン溶液(B液)を得た。B液を参考例1に記載の条件でHPLC分析したところ、B液中のα-グルコシルヘスペリジンはその殆どがα-モノグルコシルヘスペリジンに変化し、またB液中の未反応ヘスペリジンは、殆ど(99%以上)がβ-モノグルコシルヘスペレチン(ヘスペレチン−モノグルコサイド)に変わっていた。
【0081】
1.5リットルの中間極性多孔性吸着樹脂(XAD-7)が充填され、高濃度のエタノール水溶液で活性化しておいたカラムに上記酵素処理ヘスペリジン溶液(B液)を通過させ、次いで、カラム容量の2倍量の水で洗浄してから80(V/V)%エタノール水溶液3リットルで樹脂への吸着成分を脱着した。脱着液中のエタノールを除去してから、凍結乾燥し固形物(B−r)を得た。
【0082】
この固形物(B−r)には、α-モノグルコシルヘスペリジンが81重量%、β-モノグルコシルヘスペレチンが18重量%、その他の成分が1重量%の量で含まれており、またヘスペリジンとヘスペレチンは検出されなかった。
【0083】
この固形物(B−r)に99%(V/V)メタノール100mlを加えて80℃で加熱溶解後、室温下に放置し結晶を析出させた。析出した結晶は、99%(V/V)メタノールで洗浄してから乾燥させて固形物(B−r−c)12gを得た。この固形物(B−r−c)には、α-モノグルコシルヘスペリジンが98重量%、β-モノグルコシルヘスペレチンが1重量%、その他の成分が1重量%の量で含まれており、またヘスペリジンとヘスペレチンは検出されなかった。
【0084】
併せて結果を表1〜2に示す。
【0085】
【実施例2】
参考例1に記載の酵素処理ヘスペリジン溶液(A液)にグルコアミラーゼ(グルコチーム,長瀬産業 製)1g、ヘスペリジナーゼ(ヘスペリジナーゼ2号,田辺製薬 製)2g、セルラーゼA<アマノ>3[天野製薬(株)製]10gを加え、4N-硫酸でpH4.0に調整し、55℃で48時間反応させた。
【0086】
反応終了後、酵素を加熱失活させてから濾過して酵素処理ヘスペリジン溶液(C液)を得た。
C液を参考例1に記載の条件でHPLC分析したところ、A液中に存在していたα-グルコシルヘスペリジンは、C液中では、ほとんどがα-モノグルコシルヘスペリジンに変化し、またA液中に存在していた未反応ヘスペリジンは、C液中ではほとんど(99%以上)がヘスペレチンに変わっていた。
【0087】
このC液を実施例1で行ったように、1.5リットルの中間極性多孔性吸着樹脂(XAD-7)で処理し、凍結乾燥して固形物(C−r)を得た。この固形物(C−r)には、α-モノグルコシルヘスペリジンが85重量%、β-モノグルコシルヘスペレチンが2重量%、ヘスペレチンが12重量%、その他の成分が1重量%の量で含まれ、ヘスペリジンは検出されなかった。
【0088】
この固形物(C−r)に99%(V/V)メタノール200mlを加え80℃で加熱溶解した後、室温下に放置し、結晶を析出させた。析出した結晶は、99%(V/V)メタノールで洗浄してから乾燥させ固形物(C−r−c)8gを得た。
【0089】
この固形物(C−r−c)には、α-モノグルコシルヘスペリジンが96重量%、β-モノグルコシルヘスペレチンが2重量%、ヘスペレチンが1重量%、その他の成分が1重量%の量で含有され、ヘスペリジンは含まれていなかった。
【0090】
併せて結果を表1〜2に示す。
【0091】
【比較例1】
参考例1の酵素処理ヘスペリジン溶液(A液)にグルコアミラーゼ(グルコチーム,長瀬産業 製)1gを加え、4N-硫酸でpH4.0に調整し、55℃で48時間反応させた。
【0092】
反応終了後、酵素を加熱失活させてから濾過して酵素処理ヘスペリジン溶液(D液)を得た。
D液を参考例1に記載の条件でHPLC分析したところ、A液中には存在していたα-グルコシルヘスペリジンは、D液中では、ほとんどがα-モノグルコシルヘスペリジンに変化し、またA液中には存在していた未反応ヘスペリジンは、D液中でも変化はなかった。
【0093】
このD液を実施例1、2で行ったように1.5リットルの中間極性多孔性吸着樹脂(XAD-7)で処理し、凍結乾燥して固形物(D−r)を得た。
この固形物(D−r)には、α-モノグルコシルヘスペリジンが76重量%、ヘスペリジンが23重量%、その他の成分が1重量%の量で含まれ、β-モノグルコシルヘスペレチンとヘスペレチンは検出されなかった。
【0094】
この固形物(D−r)に、実施例1、2と同様に99%(V/V)メタノール100mlを加え、80℃で加熱したが、固形物(D−r)は一部しか溶解せず、結晶を析出させて分取するのは困難であった。さらに、99%(V/V)メタノール100mlを追加し80℃で加熱したが、固形物(D−r)は一部しか溶解せず、結晶を析出させてα-モノグルコシルヘスペリジンを分取するのは困難であった。
【0095】
併せて結果を表1〜2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
Claims (4)
- α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼとを同時に、または何れか一方を先にして順次作用させ、
得られた混合物からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取することを特徴とするα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法。 - α-グルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する溶液に、グルコアミラーゼとα-L-ラムノシダーゼとβ-D-グルコシダーゼを同時に、または何れか一種を先にして順次作用させ、
得られた混合物からα-モノグルコシルヘスペリジンを析出分離し、これを採取することを特徴とするα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法。 - 低級アルコール中で析出させることによりα-モノグルコシルヘスペリジン高含有物を分離し、これを採取することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物がα-モノグルコシルヘスペリジンを85重量%以上の量で含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
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