JP2003261593A - 酵素処理イソケルシトリン組成物 - Google Patents
酵素処理イソケルシトリン組成物Info
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Abstract
物は、イソケルシトリンと、α−グルコシルイソケルシ
トリンのイソケルシトリン相当量とを30/70〜2/9
8(重量比)の範囲の組成割合で含有する組成物であ
る。 【解決手段】 イソケルシトリンと、α−グルコシルイ
ソケルシトリンのイソケルシトリン相当量とを30/7
0〜2/98(重量比)の範囲の組成割合で含有する酵
素処理イソケルシトリン組成物の製造は、デキストリン
の存在下に、イソケルシトリンに糖転移酵素を作用させ
ることにより、必要ならば生成した酵素反応物をさらに
吸着樹脂を用いるクロマトグラフィーで精製することに
より得られる。本発明による食品の酸化防止方法は、食
品に上記の酵素処理イソケルシトリン組成物を添加する
ことによる。また色素の退色防止方法は、色素に上記の
酵素処理イソケルシトリン組成物を添加することによ
る。
Description
ン組成物に関する。詳しくはイソケルシトリンと、α−
グルコシルイソケルシトリンのイソケルシトリン相当量
とを所定の範囲の組成割合(重量比)で含有する酵素処
理イソケルシトリン組成物、その製造方法、さらにはこ
の組成物を用いた食品の酸化防止方法および色素の退色
防止方法に関する。
で表されるようにケルセチン(quercetin、クエルセチ
ンともいう)をアグリコンとし、その3位の水酸基に、
L-ラムノシル-(α1→6)-グルコースがβ-結合した
フラボノール配糖体である。
リ、タバコの葉などに含まれる。ルチンは、ビタミンC
とともに脆弱化した血管を正常に戻し、出血を防止する
ビタミンPとしての作用を有し、さらに消炎・鎮痛作
用、骨密度の向上作用を有するほか、紫外線吸収、酸化
防止、着色・退色防止などの作用も有する。ルチンは、
フェノール性物質であり、空気中では不安定である。ま
た、ルチンは、アルカリ性水溶液には可溶であるが、
水、酸性水溶液に難溶であり、室温では、1リットルの
水に僅かに0.1g程度しか溶けないため、その利用分野
が限定されている。そこで、ルチンの水溶性を高めるた
めの種々の方法およびその誘導体が提案されており、ル
チンに糖を転移(付加)させたα-グルコシルルチン混
合物が開発され、市販されている(特許第2926411
号)。
3.2.1.40)を作用させると、下記式〔II〕に示すよう
に、その炭素3位置に結合しているルチノース残基か
ら、ラムノース単位のみが1つ外れてグルコース単位1
つのみ残っているルチン誘導体、すなわちイソケルシト
リン(isoquercitrin、イソクエルシトリンともいう)
が生成する。さらにイソケルシトリンのグルコース残基
が外れると、アグリコンのケルセチンを生成するため、
その生理活性はルチンの活性と同様である。
く水に難溶であり、またイソケルシトリンは苦味を呈す
るため利用分野が限定されていた。特開平1-213293号に
はイソケルシトリンにデンプン質を加え、これにシクロ
デキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させる
ことにより、イソケルシトリンに等モル以上の量のグル
コースを転移させて水易溶性フラボノール配糖体を製造
する方法が開示されている。しかし該公報では、水易溶
性フラボノール配糖体の苦味の改善について何ら言及さ
れていない。さらに、イソケルシトリンとα−グルコシ
ルイソケルシトリンのイソケルシトリン相当量が特定の
範囲内にあるときに苦味が一段と改善されることについ
ては何も記載されていない。
幅広い利用を図るためにその苦味改善に関する研究を進
め、飲食物に含有されたときに該飲食物に水易溶性フラ
ボノール配糖体に起因する苦味による呈味の劣化を生ぜ
ずにケルセチンの多彩な生理・抗酸化作用が期待できる
酵素処理イソケルシトリン組成物を開発して本発明を完
成するに至った。
の特定の糖転移酵素のみしか効率よく行われない。これ
はおそらくルチンのグルコースの6位にラムノースが結
合した立体構造に原因があると考えられる。一方、ラム
ノースの外れたイソケルシトリンへのグルコース転移
は、グルコース転移活性を有する酵素であれば、その多
くの酵素において高率でグルコース転移が行われことか
ら、本発明による方法は汎用性の高い技術であるといえ
る。
しかもルチン類と同様の生理活性を示す酵素処理イソケ
ルシトリン組成物を提供することを目的とする。さらに
本発明は、その製造方法ならびに酵素処理イソケルシト
リン組成物を用いた食品の酸化防止方法および色素の退
色防止方法を提供することを目的とする。
組成物は、イソケルシトリンと、α−グルコシルイソケ
ルシトリンのイソケルシトリン相当量とを30/70〜
2/98(重量比)の範囲の組成割合で含有する組成物
である。本発明による方法は、イソケルシトリンと、α
−グルコシルイソケルシトリンのイソケルシトリン相当
量とを30/70〜2/98(重量比)の範囲の組成割合
で含有する酵素処理イソケルシトリン組成物の製造方法
であって、デンプン質の存在下に、イソケルシトリンに
糖転移酵素を作用させることにより、必要ならば生成し
た酵素反応物をさらに吸着樹脂を用いるクロマトグラフ
ィーで精製することにより、得られることを特徴として
いる。
に上記の酵素処理イソケルシトリン組成物を添加するこ
とを特徴としている。本発明による色素の退色防止方法
は、色素に上記の酵素処理イソケルシトリン組成物を添
加することを特徴としている。
ケルシトリン組成物、その製造方法、酵素処理イソケル
シトリン組成物による食品の酸化防止方法および色素退
色防止方法について具体的に説明する。本明細書におい
て、「酵素処理イソケルシトリン組成物」とは、イソケ
ルシトリンに糖供与体の存在下、糖転移酵素を作用して
得られるもので、イソケルシトリンおよび種々の程度に
グルコシル化されたα−グルコシルイソケルシトリンの
混合物をいう。酵素処理イソケルシトリン組成物 イソケルシトリンは、ルチンと同様に水に難溶性の化合
物であり、苦味を呈するため、その用途は限られる。本
発明者らは、イソケルシトリンのグルコース残基にさら
にグルコースを転移すると、苦味が減少することを見出
した。
成物は、イソケルシトリンに酵素グリコシダーゼ、トラ
ンスグリコシダーゼなどの糖転移作用によりデンプン、
デキストリンなどからグルコースをルチンのグルコース
残基に転移した水溶性ケルセチン配糖体であり、下記式
(III)に示すようにグルコース数の異なるα‐グル
コシルイソケルシトリンの混合物である。
残基、nは1〜数十の整数を表わす)酵素処理イソケル
シトリン組成物は、α-位のグルコース残基数(n)が
1〜数十の範囲、平均ではnが4〜5程度のα-グルコ
シルイソケルシトリンの混合物である。酵素処理イソケ
ルシトリン組成物はイソケルシトリン、ルチンに比べて
その溶解性(水溶性、脂溶性)は向上し、さらに耐熱
性、長期保存性などの安定性も改善されている。例えば
水、アルコール等に対する溶解度については、水100
g当り50g以上溶解し、また濃度50%のアルコール
100g当り20g以上溶解する。このように酵素処理
イソケルシトリン組成物の溶解度は、イソケルシトリ
ン、ルチンに比べて約5,000倍と著しく水溶性に優
れる。
イソケルシトリンとα−グルコシルイソケルシトリンと
を含有する混合物であり、イソケルシトリンと、α−グ
ルコシルイソケルシトリンのイソケルシトリン相当量が
30/70の重量割合を下回る場合(言い換えると、イ
ソケルシトリン換算量当たり未反応のイソケルシトリン
が30重量%を超える場合)、イソケルシトリンに起因
する苦味が飲食物への利用の妨げとなっている。そのた
め、イソケルシトリンと、α−グルコシルイソケルシト
リンのイソケルシトリン相当量とを、好ましくは30/
70〜2/98、より好ましくは20/80〜2/98、
特に好ましくは10/90〜2/98(重量比)の範囲の
組成割合で含有することにより、イソケルシトリンによ
る苦味の低減が図られ、飲食物に任意に利用できる。な
お、イソケルシトリン含量が30%を超えると水への溶
解性が低下して長期保存においては析出し、飲食物の品
質に悪影響を及ぼすおそれがある。逆にイソケルシトリ
ン含量を2%未満にするためには、酵素処理イソケルシ
トリン組成物から未反応物として残っているイソケルシ
トリンを除去する精製操作を繰り返すか、または原理の
異なる複数の方法を組み合わせて精製するなどして極め
て煩雑な工程が必要となる。これは必然的に製造コスト
の上昇につながってしまう。したがって、食品の呈味へ
の影響をとくに考慮する必要性がある場合には、20/
80〜2/98(重量比)の範囲内で適宜選択すればよ
い。とくに、10/90〜2/98(重量比)の範囲内に
あれば、本発明の効果が大抵の場合に望ましく達成でき
るであろう。
食物が摂取され生体内で生理活性型に変換されると、イ
ソケルシトリン、ルチンと同様の薬理・生理作用を示
す。すなわち毛細血管の強化、出血予防等のいわゆるビ
タミンP作用のほか、血中のコレステロールおよび中性
脂質の低下作用による動脈硬化、高血圧などの改善、骨
密度向上作用などの諸作用を発揮することとなる。さら
に酵素処理イソケルシトリン組成物についても、ケルセ
チンの分子構造には何の変化も与えていないため、他の
ルチン類と同様に抗酸化作用、紫外線吸収作用、退色防
止・風味改善作用などの機能も見出されており、食品、
医薬品などに添加すれば、酸化防止、退色防止、品質保
持の目的に用いることができる。この水可溶性のイソケ
ルシトリンの糖付加誘導体、すなわち酵素処理イソケル
シトリン組成物の安全性は高く、有用な機能性素材であ
る。酵素処理イソケルシトリン組成物の製造方法 本発明に係る酵素処理イソケルシトリン組成物は、糖供
与体の存在下に、適当な糖転移酵素をイソケルシトリン
に作用させることにより、イソケルシトリンのグルコー
スにさらにグルコースを転移させて調製することができ
る。
水に極めて難溶(溶解度:水100g当り0.01g程
度)であるイソケルシトリンをアルカリ条件下で溶解
し、糖付与体および糖転移酵素を加えて糖(グルコー
ス)の転移(付加)酵素反応を起こさせる。なお、この
ようにして得られた反応物には、通常、種々の程度にグ
ルコースが付加したα-グルコシルイソケルシトリン混
合物とともに、未反応のイソケルシトリンあるいはイソ
ケルシトリンの分解物であるケルセチン等も少量含まれ
ている。なお、この明細書中においては、その趣旨に反
しない限り、α-グルコシルイソケルシトリンの混合物
というときは、モノグルコシルイソケルシトリン、イソ
ケルシトリンを含む。
分加水分解物(例:デキストリン、アミロース、アミロ
ペクチン、マルトース)、澱粉糖化物、澱粉液化物、シ
クロデキストリンなどが用いられる。この中で、糖鎖が
比較的長くしかも分岐構造の少ないデキストリンが好ま
しい。DE(Dextrose Equivalent)が2〜15のデキ
ストリンが好ましく、特に好ましくはDE2〜10のデ
キストリンである。糖供与体は、イソケルシトリン10
0gに対し、通常100〜600g、好ましくは200
〜600g加える。
ミラーゼ、グリコシダーゼ、トランスグリコシダーゼ、
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどが
挙げられる。なかでも糖転移の速さから、シクロデキス
トリングルカノトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.19)が
好ましい。この酵素は、バチルス属、クレプシーラ属な
どの細菌により産生されるが、いずれの起源の酵素であ
ってもよい。
リンおよび糖供与体との混合物、100g当り、通常、
0.01〜10gの量で、好ましくは0.2〜1gの量で
用いられる。用いられる酵素の種類、活性などの違いに
より一概に決定されないが、例えば、シクロデキストリ
ングルカノトランスフェラーゼでは、イソケルシトリン
含有溶液のpHは、無機酸または有機酸を用いて11以
下、好ましくは5〜8程度に調節することが好ましい。
また、このα−グルコシル化反応の際には、35〜65
℃程度の温度で、1〜60時間程度保持することが好ま
しい。酵素反応の進行を促進するためには、生成したグ
ルコシルイソケルシトリンを反応系外に分離することが
望ましい。あるいは、糖転移酵素を固定化したものを使
用することによっても反応を促進することができる。そ
の場合、バッチ式で繰り返し使用することも、連続式で
反応に使用することもできる。
成物を上記のようにイソケルシトリンを原料とするほか
に、ルチンから出発して調製することも可能である。こ
の場合、ルチンにα-1,6-ラムノシダーゼ(E.C.3.2.1.4
0)を作用させて、イソケルシトリンに変えてから上記
の方法に従って酵素処理イソケルシトリン組成物を得る
ことを特徴としている。ここで用いられる酵素は、α-
1,6-ラムノシダーゼ活性を有する酵素であれば、いずれ
もルチンをイソケルシトリンに変えることができる。こ
のような酵素として田辺製薬(株)のヘスペリジナーゼ
2号、ナリンジナーゼ、天野製薬(株)のセルラーゼA
「アマノ」3などを挙げることができる。
は、水にルチンを1%の割合で懸濁させたスラリー10
0g当り、通常、0.001〜1.0gの量で、好まし
くは0.001〜0.1gの量で、換言すれば、スラリ
ー中のルチン含有量100g当り、通常、0.1〜10
0gの量で、好ましくは0.1〜10gの量で用いられ
る。このような量でナリンジナーゼを用いると、効率的
(変換効率98%程度)にルチンをイソケルシトリンに
変換することができる。
素を作用させる際には、用いられる酵素の種類、活性な
どの違いにより一概に決定されないが、通常、例えば、
ナリンジナーゼでは、酵素反応溶液のpHを3〜7に維
持し、温度、反応時間を上記イソケルシトリンのα−モ
ノグルコシル化反応の場合と同様に保持することが望ま
しい。
の誘導体、酵素標品は市販のものを使用できる。上記の
酵素処理液より、沈殿しているイソケルシトリンをろ別
分離し、必要によりアルコール、アルカリ剤、吸着樹脂
などを用いて所望するレベルまでに精製することができ
る。上記酵素処理イソケルシトリン溶液を得る際にα−
グルコシルイソケルシトリン含有量とイソケルシトリン
の残存含量とが所望する含有比に近い状態になるように
酵素処理の条件を調整して、その後の精製工程を簡単な
ものあるいは不必要とすることも可能である(後述の実
施例1および2を参照)。
着樹脂を用いる方法が効率よく行うことができる。この
ための吸着樹脂として、非極性樹脂、HP−20、HP
−50、XAD−2など、中間極性樹脂としてXAD−
7などが例示される。本発明に係る酵素処理イソケルシ
トリン組成物の形態は特に限定されず、水溶性の特徴を
生かし、酵素反応液そのままを液状品として、あるいは
ペースト状もしくは顆粒状にして用いてもよく、特に液
状品は使用上便利なようにその濃度を適宜調節できるた
め好都合である。あるいは凍結乾燥または減圧乾燥など
により粉末状に乾燥してもよい。必要に応じて増量剤、
賦形剤と混合して顆粒状、球状、キューブ、タブレット
状などに成型して使用に供することができる。成型する
場合には必要量の水などを添加して混捏し、必要により
濃縮、乾燥などをすればよい。酵素処理イソケルシトリン組成物による食品の酸化防止 ルチンと同様に水に難溶性であり、しかも苦味を呈する
イソケルシトリンに代わって、本発明の酵素処理イソケ
ルシトリン組成物を広範な飲食物の酸化防止のために使
用できる。すなわち本発明の酵素処理イソケルシトリン
組成物は水溶性であるがゆえにドリンク剤をはじめ、あ
らゆる形態の飲食物に容易にしかも均一に含有させるこ
とが可能である。酵素処理イソケルシトリン組成物を食
品に添加することにより、酵素処理イソケルシトリン組
成物本来の生理作用に加えて酸化反応に起因する異味異
臭の発生、変色または毒性物質の生成などを有効に防止
し、その品質あるいは栄養価を維持することができる。
このように多面的な作用を発揮する食品用の抗酸化剤は
他に例を見ない。
る酸化防止方法を適用できる飲食物としては、一般食品
のほか、健康食品、機能性食品、栄養機能食品、特定保
健用食品、栄養強化食品などの各種食品などが挙げられ
る。その酵素処理イソケルシトリン組成物を含有する飲
食物において、酵素処理イソケルシトリン組成物の含有
割合は、任意の量で含めることができる。例えば食品総
体量について0.001〜10重量%の範囲で含めてもよい。
本発明に係る酵素処理イソケルシトリン組成物を含有す
る飲食物では使いやすさなどの観点から、酵素処理イソ
ケルシトリン組成物の総量は、好ましくは0.01〜5重量
%、より好ましくは0.1〜1重量%の割合で含有させる。
成物を含有する飲食物について、実施例を含め、以下に
有用な利用態様を例として挙げるが、酵素処理イソケル
シトリン組成物の飲食物への利用はこれらに限定される
わけではない。例えば、乳酸飲料においては、光に当た
ると含有される成分の一部が変質、反応し不快臭を僅か
ながら発するようになる。果汁飲料では、保存中に澱が
生成することがある。酵素処理イソケルシトリン組成物
を添加することによりこうした化学作用などに基づく変
質を効果的に防止することができる。
シトリン組成物を単独で用いてもよいが、本発明の目的
を損なわない範囲で他の物質を配合してもよい。例え
ば、各種アミノ酸、ビタミン類を加えて栄養滋養の強化
を図ってもよく、特にビタミンCを配合することにより
毛細血管の抵抗性増強などのビタミンP作用において相
乗効果を発揮させることができる。
含有する飲食物の嗜好性および品質向上のために甘味
料、増量剤、香味料などの各種成分を1種または2種以
上を必要に応じて配合できる。以上述べたような一般飲
食物(健康食品、機能性食品、栄養強化食品等を含
む)、さらには嗜好品、医薬品などに本発明の酵素処理
イソケルシトリン組成物を使用するには、その製品が完
成するまでの工程のうち適切な段階で、この酵素処理イ
ソケルシトリン組成物を添加することができる。例え
ば、酵素処理イソケルシトリン組成物を添加する際に他
の配合成分と混合、混和、混捏してもよく、飲食物など
に酵素処理イソケルシトリン組成物を浸透、溶解、散
布、塗布、噴霧、注入などしてもよく、また液状の酵素
処理イソケルシトリン組成物を飲食物に浸漬してもよ
く、そのために従来から公知の方法が適宜採用される。
防止に関わるイソケルシトリンの起源は、もともと天然
物由来の化合物であり、昔から食に供されてきた植物か
ら抽出されたものであり、極めて安全性に優れている。
したがって、副作用、摂取量の制限は少なく、継続的摂
取の弊害も通常の場合にはほとんどないと考えられる。色素の退色防止方法 本発明に係る酵素処理イソケルシトリン組成物は色素に
添加して用いることにより、あるいは食品、染料、画
材、香料、ペンキなどの色素含有物に添加(配合)して
用いることにより、例えばこの色素で染色された衣料な
どの退色を防止できる。
クトルを持ち、従来から、紫外線で退色の起きやすい色
素、とくに天然色素の退色防止に利用が試みられてきた
が、イソケルシトリンは水への溶解度が低くまた、苦味
があるために使いづらいという欠点があった。これに対
してα−グルコシルイソケルシトリンを高含量で含む本
発明の酵素処理イソケルシトリン組成物は、水溶性であ
って沈澱を生じにくく、苦味も低減しているため色素の
退色防止に幅広く利用できる。特にパプリカ、クチナ
シ、β-カロチン、アスタキサンチン等のカロチノイド
系色素に有効であるが、赤キャベツ、ムラサキイモ等の
アントシアニン色素、ブドウ果皮、ベニバナ黄、ベニバ
ナ赤、赤ダイコン等のフラボノイド色素、ビートレッ
ド、ウコン色素、クチナシ青、紅麹色素等にも効果的に
使うことができる。
物を色素の退色防止に用いる場合、色素で着色された試
料重量当たり、0.001〜0.2重量%、好ましくは0.005〜
0.1重量%、より好ましくは0.01〜0.05重量%の量で使
用することが望ましい。この場合、酵素処理イソケルシ
トリン組成物、L-アスコルビン酸(またはL-アスコル
ビン酸ソーダ)の何れか1つまたは2つ以上を使用する
ことにより、上記色素の退色防止に相乗効果が得られ
る。天然物由来の本組成物は、色素を使用する幅広い組
成物に添加することができるが、色素を使用する化粧品
にも好適である。 たとえば、口紅、歯磨き、リップクリ
ーム、白粉、香水などに好ましく使用することができ
る。
ルシトリン組成物は、特有の紫外部吸収特性を持つた
め、たとえばUVカット剤などの化粧品においては、特
に有用である。
に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によ
り何ら限定されるものではない。なお、以下の例におい
て、「%」は、特にその趣旨に反しない限り「重量%」
の意味である。
性ソーダを加え溶解した。デキストリン(DE8)30
0gを加え溶解し、60℃まで加温しながら硫酸水でp
H8.5に調整した。糖転移酵素としてシクロデキストリ
ングルカノトランスフェラーゼ(天野製薬(株)、セル
ラーゼA「アマノ」3)を3000U加え2時間反応させた
後、硫酸水でpH6.0とし22時間反応させた。HPLC
で測定した結果、下記の式(1)で表される反応率は6
5%であった。この酵素反応液を加熱して酵素を失活さ
せた(I液)。吸着樹脂(商品名HP−20)200ml
をカラムに充填し、60%エチルコールで洗い、その後
充分に水洗したところにI液を通し通過液を回収した
(II液)。II液の反応率を上記と同様に測定したところ
82%であった。吸着樹脂を再度60%エチルアルコー
ルで洗い、その後充分に水洗したところにII液を通し通
過液を回収した(III液)。III液の反応率を上記と同様
に測定したところ93%であった。
ソケルシトリン相当量の面積を意味する。 <HPLCの分析条件> カラム:C18 溶離液:水/メタノール/酢酸=65/30/5 検 出:254nm 流 速:0.5ml/分 ・呈味質の比較試験 実施例1の方法に基づき製造したI、II、III液それぞれ
の凍結乾燥物を用い、イソケルシトリン換算量(すなわ
ち、グルコシルイソケルシトリン中のイソケルシトリン
換算重量)が0.050%になるようにイオン交換水に溶解
し、パネラー10名でイオン交換水を対照に呈味の比較試
験を行なった。結果を表1に示す。
ないII液は、異味(苦味、えぐみ)が少なく、さらに未
反応イソケルシトリンの少ないIII液はII液よりも一
層、異味が少なかった。
分散させ、苛性ソーダを加えて溶解した。β-サイクロ
デキストリン(塩水港精糖(株)製)300gとデキス
トリン(DE8)200gを加えて溶解し、60℃まで
加温しながら硫酸水でpH6.0に調整した。糖転移酵素
(シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ)を
5000U、加え24時間反応させた。HPLCで測定した
結果、反応率は82.5%であった。この反応液を加熱し酵
素を失活させた(IV液)。吸着樹脂(商品名HP−2
0)200mlをカラムに充填し、60%エチルコールで
洗い、その後充分に水洗したところにIV液を通し通過液
を回収した(V液)。V液の反応率を上記と同様に測定
したところ93%であった。
エン酸緩衝液、pH3.3)に酵素処理イソケルシトリン
(実施例1のII液の乾燥品)を溶液重量当たり400mg/kg
の量で加えたもの(本発明品(イ))と、さらにL−ア
スコルビン酸を上記クチナシ黄色素溶液重量当たり200m
g/kgの量で添加したもの(本発明品(ロ))、上記クチ
ナシ黄色素溶液に酵素処理イソケルシトリンを添加せ
ず、L−アスコルビン酸のみを上記クチナシ黄色素溶液
重量当たり200mg/kgの量で添加したもの(対照区
(イ))と、上記クチナシ黄色素溶液に何も添加しなか
ったもの(対照区(ロ))とを準備した。
処理した後、5℃下、蛍光灯照射(照度:7000ルクス)
下に保存し、クチナシ黄色素の残存率%を0日後(試験
開始直後)、2日後、4日後について分光光度計(442n
m)で測定した。結果を表2に示す。
トリンを添加することにより、呈味に影響を及ぼすこと
なくクチナシ黄色素の退色が有意に抑制された。またL
−アスコルビン酸との相乗効果も見られた。
フルーツさのう1.0重量部、マルチトール6.0重量部、酵
素処理ステビア0.04重量部、pH調整剤0.9重量部、ベ
ニバナ黄色0.01重量部、酵素処理イソケルシトリン組成
物(実施例1のII液乾燥品)0.01重量部に水を加えて全
量を100重量部とし、グレープフルーツゼリーを調製し
た。
に密封し、室温下、日中蛍光灯の光が当たる所に6ヶ月
間保存したが風味の変化もほとんどなく、色調の変化も
少なかった。このように本ゼリーは長期間でも退色しな
かったことから、酵素処理イソケルシトリン組成物によ
る酸化防止および退色防止の効果が示された。さらにこ
のグレープフルーツゼリーの摂取によりイソケルシトリ
ンの有する生理機能が期待できる。
組成物は、苦味がなく、水溶解性に優れ、しかもルチン
類と同様の生理作用が発揮される組成物である。また本
発明に係る酵素処理イソケルシトリン組成物は、水溶液
中でも安定であるため、任意の形態の飲食物、医薬品な
どに容易にしかも均一に含有させることが可能であり、
広範な利用が期待できる。
成物を飲食物に添加すると、苦味などの悪影響を及ぼす
ことなく食品の酸化防止効果が発揮される。本発明に係
る酵素処理イソケルシトリン組成物を色素に添加する
と、苦味などの悪影響を及ぼすことなく色素の退色防止
効果が発揮される。
Claims (4)
- 【請求項1】イソケルシトリンと、α−グルコシルイソ
ケルシトリンのイソケルシトリン相当量とを30/70
〜2/98(重量比)の範囲の組成割合で含有する酵素
処理イソケルシトリン組成物。 - 【請求項2】イソケルシトリンと、α−グルコシルイソ
ケルシトリンのイソケルシトリン相当量とを30/70
〜2/98(重量比)の範囲の組成割合で含有する酵素
処理イソケルシトリン組成物が、デンプン質の存在下
に、イソケルシトリンに糖転移酵素を作用させることに
より、必要ならば生成した酵素反応物をさらに吸着樹脂
を用いるクロマトグラフィーで精製することにより、得
られることを特徴とする酵素処理イソケルシトリン組成
物の製造方法。 - 【請求項3】食品に請求項1に記載の酵素処理イソケル
シトリン組成物を添加することを特徴とする食品の酸化
防止方法。 - 【請求項4】色素に請求項1に記載の酵素処理イソケル
シトリン組成物を添加することを特徴とする色素の退色
防止方法。
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