JP3833383B2 - 高周波用磁器組成物、高周波用磁器および高周波用磁器の製造方法 - Google Patents

高周波用磁器組成物、高周波用磁器および高周波用磁器の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波用磁器組成物、高周波用磁器および高周波用磁器の製造方法に関するものであり、特に、銅や銀と同時焼成が可能であり、マイクロ波、ミリ波用等の高周波で用いられる配線基板、誘電体共振器、LCフィルター、コンデンサ、誘電体導波路および誘電体アンテナに用いることのできる高周波用磁器組成物、高周波用磁器および高周波用磁器の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送はより高速化・高周波化が進行する傾向にある。自動車電話やパーソナル無線等の移動無線、衛星放送、衛星通信やCATV等のニューメディア(無線LAN、自動車用衝突防止レーダー)では、高周波化が推し進められており、これに伴い誘電体共振器等従来のマイクロ波用回路素子に対してもより高周波化が強く望まれている。
【0003】
このようなマイクロ波用回路素子において誘電体の誘電損失ばかりではなく導体の損失を考慮し回路形成のための導体としては、銅や銀などの低抵抗金属を使用することが望まれている。
【0004】
そこで、上述した低損失化等の要求を満足するため、例えば、特開平5−225825号公報に示すように、複合ぺロブスカイト型化合物系の誘電体磁器組成物からなる回路用基板等が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−225825号公報に示されるようなペロブスカイト型化合物系の材料や、従来のアルミナを絶縁基板として用いた回路基板では、焼成温度が1300〜1600℃と高温であるため、銅、銀等を配線導体として用いた多層化や微細な配線化ができないという問題があった。
【0006】
また従来のガラスセラミック材料は、銅、銀等の低抵抗金属との同時焼成が可能であり、また多層化も可能であるが、そのほとんどが誘電損失が10GHzのマイクロ波領域においては20×10−4以上と大きく、高周波用の機器の低誘電損失化の点では満足すべき特性は得られていない。また、従来のガラスセラミックスは、1000℃以下での焼成が可能である反面、このような低温焼成を可能とするためには、少なくともガラスを30重量%以上配合する必要とするために、得られる磁器の特性がガラスの性質に大きく依存してしまう結果、フィラー成分の優れた特性が発揮できないという問題があった。
【0007】
また、誘電体磁器においては、色ムラなどの発生によって製品としての外観不良が生じ歩留りの低下を招く場合がある。そこで、従来より種々の着色剤を添加して磁器を着色することが行われているが、その場合には、着色剤が磁器が有する誘電特性を劣化させてしまうという問題があるために、誘電特性を劣化させずにいかにして着色するかが技術的課題となっている。
【0008】
従って、本発明は、800〜1000℃での焼成が可能であり、特に30GHz以上の高周波領域において5〜80で調整可能な比誘電率と、低い誘電損失を有するとともに着色可能な高周波用磁器組成物と、着色された高周波用磁器と、着色された高周波用磁器の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を鋭意検討した結果、Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であって、Zn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成が特定範囲である酸化物に対して、焼結助剤として、CuOとB、またはCuOと少なくともSiO、Bを含むガラスを特定比率で添加することにより酸化物中から生成するZnを主とする液相とB(ホウ素)成分による液相反応が生じ、僅かな助剤量により、800〜1000℃の温度で焼成でき、しかもを焼成によって、結晶相として、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相、Mg、ZnおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、ZnおよびTiを含むスピネル型結晶相を析出させることにより、5〜80で調整可能な比誘電率と低い誘電損失を有する茶系統に着色された磁器を得ることができることを知見し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の高周波用磁器組成物は、Zn、Mg、TiおよびSiを含み、該金属の原子比による組成を
n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分70〜99.95重量%と、B0.04〜20重量%とCuO0.01〜10重量%とからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の高周波用磁器組成物は、Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であってZn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成を
n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分60〜99.9重量%と、少なくともSiO、Bを含むガラス0.05〜30重量%と、CuO0.05〜10重量%とからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記組成物から得られた高周波用磁器は、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相を含むことを特徴とするもので、さらには、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相、TiO結晶相およびSiO結晶相のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記組成物から得られた高周波用磁器は、30〜60GHzでの誘電率(εr)が5〜80の範囲で調整可能で、誘電損失が20×10- 以下の優れた特性を有するものである。
【0014】
また、本発明の高周波用磁器の製造方法は、前記の組成物を所定形状に成形後、800〜1000℃で焼成することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の高周波用磁器組成物は、第1の形態として、Zn、Mg、TiおよびSi酸化物からなる主成分70〜99.95重量%と、焼結助剤としてB0.04〜20重量%と、CuO0.01〜10重量%とからなるものである。上記の主成分は、酸化物を構成する前記金属の原子比による組成を
n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる。
【0016】
上記の主成分組成によれば、Znの一部をMgによって置換することにより、イルメナイト型結晶相を安定に析出させると同時に、誘電損失を低減する作用を有する。しかし、その置換量xが0.75を越えるとZnの絶対量が不十分となり、焼結助剤中のB成分と液相を形成することが困難となり、焼結助剤を多量に添加しないと磁器を緻密化できず、それに伴い、誘電特性が大きく劣化してしまう。Znに対するMgの置換量xは0.1≦x≦0.4が望ましい。
【0017】
また、上記主成分組成における(Ti+Si)に対する(Zn+Mg)の比率n値を0.14≦n≦3.5としたのは、nが0.14より小さいと、ZnO相が過剰となり誘電特性が劣化し、nが3.5を越えるとTiO相が過剰となり焼結性が劣化し、焼結助剤を多量に添加しないと焼結できず、その結果、誘電特性が劣化してしまうためである。nは特に0.5≦n≦1.5が望ましい。
【0018】
また、上記主成分組成において、TiおよびSi量を変化させ、Ti量を増加させると、誘電率を増大させ、Si量を増加させると誘電率を低下させることができ、その結果、yを0<y<1.0の範囲で変化させることにより、誘電率を5〜80の範囲で任意に制御することが可能となる。
【0019】
また、焼結助剤として、B量及びCuO量を上記の比率に限定したのは、CuOとBの合計量が0.05重量%より少ないか、言い換えれば、Zn、Mg、Ti、Si酸化物からなる主成分量が99.95重量%より多いと、800〜1000℃の低温で十分に緻密化することができず、この組成物を用いて作製される基板特性において、磁器が緻密化しないため誘電率が低下し、また誘電損失は増大してしまうためである。
【0020】
一方、CuOとBの合計量が30重量%より多いか、言い換えれば前記主成分量が70重量%より少ないと、700℃以下の低温で液相が流失し磁器の形状を損ない製品形状を保てず、また磁器特性の点から30〜60GHzの高周波領域における誘電損失が20×10−4以上と高くなるためである。上記の酸化物からなる主成分とCuOとBとの好ましい組成範囲は、前記主成分が85〜99重量%、Bが0.5〜10重量%、CuOが0.5〜5重量%である。
【0021】
なお、Bは焼結助剤として不可欠の成分であり、Bが0.04重量%よりも少ないと、CuO量を増加させても緻密化することは難しく、逆に20重量%を越えると、誘電特性を劣化させてしまう。
【0022】
また、CuOは、Bと同様に焼結性を高める作用をなすとともに、誘電特性を劣化させることなく茶系統に着色可能な成分であり、CuOが0.05重量%より少ないと十分な着色効果が得られず、10重量%を越えると誘電損失が増大し、特性を劣化させてしまう。
【0023】
また、本発明の高周波用磁器組成物における第2の形態としては、前述したZn、Mg、TiおよびSi酸化物からなる主成分60〜99.9重量%と、焼結助剤として少なくともSiOおよびBを含有するガラス0.05〜30重量%と、CuO0.05〜10重量%とからなるものである。
【0024】
ここで、前記ガラス量を上記の比率に限定したのは、上記ガラスとCuOの合計量が0.1重量%より少ないか、言い換えれば、ZnMg、TiおよびSi酸化物からなる主成分量が99.9重量%より多いと、800〜1000℃の低温で十分に緻密化することができず、この組成物を用いて作製される基板特性において、磁器が緻密化しないため誘電率が低下し、また誘電損失は増大してしまうためである。
【0025】
また、上記CuOとBの合計量が40重量%より多いか、言い換えれば前記主成分量が60重量%より少ないと、600℃以下の低温で液相が流失し磁器の形状を損ない製品形状を保てず、また磁器特性の点から30〜60GHzの高周波領域における誘電損失が20×10−4以上と高くなるためである。上記の酸化物からなる主成分と上記ガラスとの好ましい組成範囲は、前記主成分が80〜99重量%、Bが0.5〜15重量%、CuO0.5〜5重量%である。
【0026】
なお、上記ガラスは、焼結助剤として不可欠の成分であり、ガラス量が0.05重量%よりも少ないと、CuO量を増加させても緻密化することは難しく、逆に30重量%を越えると、誘電特性を劣化させてしまう。
【0027】
また、CuOは、上記ガラスと同様に焼結性を高める作用をなすとともに、誘電特性を劣化させることなく茶系統に着色可能な成分であり、CuOが0.05重量%より少ないと十分な着色効果が得られず、10重量%を越えると誘電損失が増大し、特性を劣化させてしまう。
【0028】
また、本発明の高周波用磁器組成物は、第1および第2の形態のいずれの組成物も、大気などの酸化性雰囲気、あるいは窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気中で800〜1000℃の温度範囲での焼成によって、相対密度95%以上まで緻密化することができる。
【0029】
このようにして作製される高周波用磁器は、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相を含み、さらには、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相、TiO結晶相およびSiO結晶相のうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
例えば、図1、図2および図3に示されるような組織構造を有する。図1は、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相1と、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相2と、非晶質の粒界相3から構成されるものである。
【0031】
図2は、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相1と、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相2と、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相4と、非晶質の粒界相3とから構成される。
【0032】
図3は、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相1と、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相2と、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相4と、TiO結晶相5と、SiO結晶相6と、非晶質の粒界相3とから構成される。
【0033】
イルメナイト型結晶とは、FeTiOで代表される三方格子に属する結晶構造を呈し、本発明の磁器では、前記FeがZnに置き換わったものと推定される。また、ウイレマイト型結晶相は、ZnSiOと推定される。
【0034】
このように本発明によれば、磁器中に、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相、さらには、少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相、TiO結晶相およびSiO結晶相のうちの少なくとも1種を析出させることにより、比誘電率を5〜80の間で調整でき、低い誘電損失を得ることができるのである。
【0035】
上記非晶質の粒界相3は、焼結助剤としてBを用いた第1の形態の場合には、ZnおよびBを含み、焼結助剤としてSiOおよびBを含むガラスを用いた第2の形態の場合には、Si、ZnおよびBを含むものから構成される。
【0036】
なお、本発明における磁器成分として含まれるCuOの磁器中での存在箇所は明確ではないが、上記スピネル型結晶相中に固溶しているか、上記結晶相の粒界に金属、又は酸化物として存在しているものと推察される。
【0037】
上記の本発明の第2の形態において用いるSiO、Bを含むガラスとしては、一般にホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛ガラスなどが挙げられるが、特にSiOを5〜80重量%、Bを4〜50重量%の割合でそれぞれ含み、他の成分としてAlを30重量%以下、アルカリ金属酸化物を20重量%以下の割合で含むものが好適に使用され、これらの酸化物成分を所定割合で配合したものを溶融、冷却し、ガラス化したものが使用される。
【0038】
本発明の高周波用磁器を製造する方法としては、主成分原料として、ZnO、TiO、MgO、SiOの各酸化物粉末、あるいはこれらの2種以上の複合化合物(例えば、ZnTiO、ZnTiO、MgTiO、MgTiO、MgSiO、MgSiO、ZnSiO、ZnSiO、(Zn,Cu)TiO)など、さらには、酸化物以外に焼結過程で酸化物を形成し得る炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の形態で用いることができる。この主成分原料は、それら金属の原子比が上記主成分組成を満足するように秤量混合される。
【0039】
本発明の第1の形態に基づくと、上記の主成分原料に対して、焼結助剤としてB粉末あるいは焼結過程で酸化物を形成し得るB、HBO、BN、BC等をBとして、主成分原料70〜99.95重量%、B0.04〜20重量%、CuO0.01〜10重量%、となるように添加混合する。
【0040】
また、本発明の第2の形態に基づくと、上記の主成分原料に対して、焼結助剤として前述したようなSiO、Bを含むガラス粉末を、主成分原料60〜99.9重量%、SiO、Bを含むガラス0.1〜30重量%、CuO0.05〜10重量%となるように添加混合する。
【0041】
なお、上記原料粉末は、分散性を高め安定した誘電率や低い誘電損失を得るために平均粒径がいずれも2.0μm以下、特に1.0μm以下の微粉末であることが望ましい。
【0042】
次に、上記のような割合で添加混合した混合粉末に適宜バインダーを添加した後、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成形、ドクターブレード法、圧延法等により任意の形状に成形後、N、Ar等の非酸化性雰囲気中、または空気中などの酸化性雰囲気中で800〜1000℃、特に900〜1000℃の温度で0.1〜5時間焼成することにより相対密度95%以上に緻密化することができる。この時の焼成温度が800℃より低いと、磁器が十分に緻密化せず、1000℃を越えると緻密化は可能であるが、銅、銀などの導体と同時焼成ができなくなる。因みに、同時焼成時に、導体として銅を用いる場合には非酸化性雰囲気とし、銀を用いる場合には非酸化性または酸化性雰囲気で焼成することが必要である。
【0043】
本発明の上記方法によれば、Zn、Mg、TiおよびSi酸化物とCuOとB、またはCuO、SiO、Bを含むガラスを組み合わせることにより、酸化物から生成するZnを主とする液相とB(ホウ素)成分のより活性な液相反応が生じる結果、少ない焼結助剤量で磁器を緻密化することができる。そのために、誘電損失を増大させる要因となる粒界の非晶質相の量を最小限に押さえることができる。このため高周波領域においてより低い誘電損失を得ることができるのである。
【0044】
また、本発明における磁器組成物は、800〜1000℃で焼成可能であることから、特に金、銀、銅などを配線する配線基板の絶縁基板として用いることができる。かかる磁器組成物を用いて配線基板を作製する場合には、例えば、上記のようにして調合した混合粉末を公知のテープ成形法、例えばドクターブレード法、圧延法等に従い、絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシートの表面に配線回路層用として、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属、特に、銅粉末を含む導体ペーストを用いて、グリーンシート表面に配線パターンにスクリーン印刷法、グラビア印刷法等によって回路パターン状に印刷し、場合によってはシートにスルーホールやビアホール形成後、上記導体ペーストを充填する。その後、複数のグリーンシートを積層圧着した後、上述した条件で焼成することにより、配線層と絶縁層とを同時に焼成することができる。
【0045】
【実施例】
実施例1平均粒径が1μm以下のB、1μm以下のCuO、平均粒径が1μm以下のZnTiO、MgTiO、ZnSiO、TiO、SiOを表1、2の組成に従い混合した。そして、この混合物に有機バインダー、可塑剤、トルエンを添加し、ドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを5枚積層し、50℃の温度で100kg/cmの圧力を加えて熱圧着した。一部の組成について得られた積層体を水蒸気含有/窒素雰囲気中で、500〜700℃で脱バインダーした後、乾燥窒素中で表1、2の条件において焼成して多層基板用磁器を得た。また、他の組成について積層体を大気中、500〜700℃で脱バインダーした後、大気中で表1、2の条件において焼成して多層基板用磁器を得た。
【0046】
得られた焼結体について誘電率、誘電損失を以下の方法で評価した。測定は、形状直径1〜5mm、厚み2〜3mmの試料を切り出し、60GHzにてネットワークアナライザー、シンセサイズドスイーパーを用いて誘電体円柱共振器法により行った。測定では、NRDガイド(非放射性誘電体線路)で、誘電体共振器の励起を行い、TE021、TE031モードの共振特性より誘電率、誘電損失を算出し結果を表1、2に示した。また、X線回折測定から、磁器の構成相を同定し、試料No.7、21のX線回折チャートを図4、図5に示した。
【0047】
また、比較例として、ZnTiO、MgTiO、ZnSiOに代わり、BaTiO、AlSi1 (ムライト)を用いて同様に焼結体を作製し評価した(試料No.38、39)。
【0048】
【表1】
Figure 0003833383
【0049】
【表2】
Figure 0003833383
【0050】
表1、2の結果から明らかなように、結晶相として、イルメナイト型結晶相((Zn、Mg)TiO)、ウイレマイト型結晶相((Zn,Mg)SiO)、あるいは、スピネル型結晶相(ZnTiO)が主として析出した本発明の磁器は、いずれも誘電率が5〜80で調整可能で、60GHzでの誘電損失が20×10−4以下の優れた特性値を示し、800〜1000℃で焼結することができた。なお、本発明品の磁器の結晶粒界相をX線マイクロアナライザーによって分析した結果、粒界相中からZn、BおよびCu元素が検出された。
【0051】
これに対して、B量が0.04重量%未満である試料No.32では、焼成温度を1300℃まで高めないと緻密化することができず、本発明の目的に適さないものであった。一方、CuOとBの合計量が30重量%を越える試料No.28は液相量が多いため、誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。
【0052】
また、(Zn+Mg)に対して(Ti+Si)の比率が少ない(3.5<n)試料No.11では過剰なZnO相が析出し、このため誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。(Zn+Mg)に対して(Ti+Si)の比率が多い(n<0.14)試料No.15ではB量を20重量%を越えて添加しないと磁器を緻密化することができず、Bを20重量%を越えて添加すると、液相が過剰となり磁器の誘電損失が増大した。
【0053】
x>0.75である試料No.28ではZn量が不十分であるため、B中のB成分と液相を形成することが困難となり、CuOとBの合計量を30重量%を越えて添加しなければ磁器が緻密化できず、誘電特性が劣化した。
【0054】
また、比較例として、BaTiOやAlSi1 (ムライト)を用いた試料No.38、39では誘電損失が高く60GHzでは測定不可能であった。
【0055】
なお、CuOを0.01重量%以上含有する磁器は、いずれも茶褐色からこげ茶色を呈するものであった。
【0056】
実施例2平均粒径が1μm以下の表3に示すガラス粉末、平均粒径が1μm以下のCuO、平均粒径が1μm以下のZnTiO、MgTiO、ZnSiOを表4、5の組成に従い混合した。そして、この混合物を用いて実施例1と同様にしてグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを5枚積層し、50℃の温度で100kg/cmの圧力を加えて熱圧着した。一部の組成について得られた積層体を水蒸気含有/窒素雰囲気中で、500〜700℃で脱バインダーした後、乾燥窒素中で表4、5の条件において焼成して多層基板用磁器を得た。また、他の組成について積層体を大気中、500〜700℃で脱バインダーした後、大気中で表4、5の条件において焼成して多層基板用磁器を得た。得られた焼結体について、実施例1と同様な方法で誘電率、誘電損失を評価し結果を表4、5に示した。
【0057】
【表3】
Figure 0003833383
【0058】
【表4】
Figure 0003833383
【0059】
【表5】
Figure 0003833383
【0060】
表4、5の結果から明らかなように、結晶相として、イルメナイト型結晶相((Zn,Mg)TiO)、ウイレマイト結晶相((Zn,Mg)SiO)、あるいは、スピネル型結晶相(ZnTiO)が主として析出した本発明の磁器は、いずれも誘電率が5〜80、60GHzでの誘電損失が20×10−4以下の優れた特性値を示し、800〜1000℃で焼結することができた。なお、本発明品の磁器の結晶粒界相をX線マイクロアナライザーによって分析した結果、いずれも粒界相中から、Zn、BおよびCu元素が検出された。
【0061】
これに対して、CuOとガラスの合計量が0.1重量%未満である試料No.65では、焼成温度を1300℃まで高めないと緻密化することができず、本発明の目的に適さないものであった。一方、CuOとガラスの合計量が40重量%を越える試料No.71は液相量が多いため、誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。
【0062】
また、(Zn+Mg)に対して(Ti+Si)の比率が少ない(n>3.5)試料No.75では過剰なZnO相が析出し、このため誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。(Zn+Mg)に対して(Ti+Si)の比率が多い(n<0.14)試料No.72では磁器の誘電損失が増大し測定できなかった。
【0063】
x>0.75である試料No.71ではZn量が不十分であるため、ガラス中のB成分と液相を形成することが困難となり、CuOとガラスの合計量40重量%を越えて添加しなければ磁器が緻密化できず、誘電特性が劣化した。
【0064】
なお、CuOが0.01重量%以上含有する磁器は、いずれも茶褐色からこげ茶色を呈していた。
【0065】
実施例3各種の磁器について、直径1〜30mm、厚み2〜15mmの円柱サンプルa)を作製し、誘電率および誘電損失の周波数との関係について測定し図6および図7に示した。図6および図7において、1、2は、上記実施例1中のNo.7、14の磁器、3は上記実施例2中のNo.41の磁器、また比較として、4は、汎用品のコージェライト系ガラスセラミックス(硼珪酸ガラス75重量%、Al25重量%)、5は汎用のアルミナ磁器(Al95重量%、CaO、MgO5重量%)である。各磁器について、1GHz、10GHz、20GHz、30GHzおよび60GHzの高周波、マイクロ波、ミリ波領域において、誘電体円柱共振器法により誘電率と誘電損失を測定した。
【0066】
図6および図7の結果、汎用品のコージェライト系ガラスセラミックスは誘電率が5と低く、汎用の低純度アルミナは誘電率は9であることがわかる。これに対して、本発明品は誘電率が17、73および5.5と幅広い値であった。汎用品のガラスセラミックスは低周波領域において誘電損失は低いが、高周波領域になるに従い特性が劣化してしまい30GHz以上では20×10−4を越えてしまう。また、汎用のアルミナ磁器も60GHzで40×10−4と高くなった。一方、本発明の1、2、3は、60GHzでの高周波領域においても誘電損失は15×10−4以下と低いものであった。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の高周波用磁器組成物は、800〜1000℃の温度で緻密化できることから、金、銀、銅などの配線と同時に焼成することができる。しかも、上記組成物を焼成して得られる磁器は、茶系統の色を呈し、30GHz以上の高周波帯において低い誘電損失を示すために、マイクロ波、ミリ波用回路素子等において低損失化が可能となり、しかも磁器として色ムラによる外観不良がなく歩留りよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波用磁器の組織の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の高周波用磁器の組織の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の高周波用磁器の組織のさらに他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の高周波用磁器の(実施例1中試料No.7)のX線回折チャート図である。
【図5】本発明の高周波用磁器の(実施例1中試料No.21)のX線回折チャート図である。
【図6】本発明の磁器と従来の磁器との誘電率εと周波数fとの関係を示した図である。
【図7】本発明の磁器と従来の磁器との誘電損失tanδと周波数fとの関係を示した図である。
【符号の説明】
1・・・イルメナイト型結晶相(I)
2・・・ウイレマイト型結晶相(ZS)
3・・・粒界相(G)
4・・・スピネル型結晶相(SP)
5・・・TiO結晶相(T)
6・・・SiO結晶相(S)

Claims (7)

  1. Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であってZn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成を
    n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
    と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分70〜99.95重量%と、B0.04〜20重量%と、CuO0.01〜10重量%とからなることを特徴とする高周波用磁器組成物。
  2. Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であってZn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成を
    n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
    と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分60〜99.9重量%と、少なくともSiO、Bを含むガラス0.05〜30重量%と、CuO0.05〜10重量%とからなることを特徴とする高周波用磁器組成物。
  3. 請求項1または請求項2記載の高周波用磁器組成物から得られ、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相を含むことを特徴とする高周波用磁器。
  4. 少なくともZn、MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相、TiO結晶相およびSiO結晶相のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項3記載の高周波用磁器。
  5. 30〜60GHzでの誘電率(εr)が5〜80であり、且つ誘電損失が20×10- 以下であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の高周波用磁器。
  6. Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であってZn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成を
    n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
    と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分70〜99.95重量%と、B0.04〜20重量%と、CuO0.01〜10重量%とからなる組成物を所定形状に成形後、800〜1000℃で焼成することを特徴とする高周波用磁器の製造方法。
  7. Zn、Mg、TiおよびSiの酸化物であってZn、Mg、TiおよびSiの原子比による組成を
    n(Zn1−xMg)・(Ti1−ySi
    と表した時、0<x≦0.75、0<y<1.0、0.14≦n≦3.5を満足する酸化物からなる主成分60〜99.9重量%と、少なくともSiO、Bを含むガラス0.05〜30重量%と、CuO0.05〜10重量%とからなる組成物を所定形状に成形後、800〜1000℃で焼成することを特徴とする高周波用磁器の製造方法。
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