JP3754782B2 - 高周波用配線基板およびその製造方法 - Google Patents

高周波用配線基板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅や銀と同時焼成が可能であり、マイクロ波、ミリ波用等の高周波で用いられる配線基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送はより高速化・高周波化が進行する傾向にある。自動車電話やパーソナル無線等の移動無線、衛星放送、衛星通信やCATV等のニューメディアでは、機器のコンパクト化が推し進められており、これに伴い誘電体共振器等のマイクロ波用回路素子に対しても小型化が強く望まれている。
【0003】
このようなマイクロ波用回路素子の大きさは、使用電磁波の波長が基準となる。比誘電率εrの誘電体中を伝播する電磁波の波長λは、真空中の伝播波長をλ0 とするとλ=λ0 /(εr)1/2 となる。したがって、回路素子は、使用される回路用基板の誘電率が大きい程、小型になる。また、回路形成のための導体としては、銅などの低抵抗金属を使用することが望まれている。
【0004】
そこで、上述した高誘電率化等の要求を満足するため、例えば、特開平6−132621号公報に示すように、樹脂中に無機誘電体粒子を分散したものや、特開平6−260035号公報に示されるように、高誘電率フィラーとガラスとの複合材料からなるガラスセラミック回路用基板等が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−132621号公報に示された回路基板では、焼成温度が400℃程度であり銅等を配線導体として用いての多層化、微細な配線化ができないという問題があった。
【0006】
また従来のガラスセラミック材料は、銅等の低抵抗金属との同時焼成が可能であり、また多層化も可能であるが、そのほとんどが誘電率が10より低い低誘電率のものであり、また誘電損失も10GHzのマイクロ波領域においては20×10-4以上と大きく、高周波用の機器の小型化のための高誘電率化、低誘電損失化の点では充分に検討されていない。また、従来のガラスセラミックスは、1000℃以下での焼成が可能であることから金、銀、銅などと同時に焼成する利点を有するが、このような低温焼成を可能とするためには、少なくともガラス成分を30重量%以上を必要とするために、得られる磁器の特性がガラスの性質に大きく依存してしまう結果、フィラ−成分の優れた特性が発揮できないという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、800〜1000℃での焼成が可能であり、特に30GHz以上の高周波領域において高い比誘電率と、低い誘電損失を有する絶縁層を具備した高周波用配線基板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を鋭意検討した結果、30GHz以上の高周波領域において用いられる高周波用配線基板における絶縁層として、ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなる主成分に対して、焼結助剤として、B、または少なくともSiO、Bを含むガラスを特定比率で添加することにより、前記主成分中から生成するZnを主とする液相とB(ホウ素)成分による液相反応が生じ、僅かな助剤量により、800〜1000℃以下の温度で焼成でき、しかも焼成によって、結晶相として、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相を析出させることにより、高い比誘電率と低い誘電正接を得ることができることを知見し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、絶縁層の表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属からなる配線回路層を有し、30GHz以上の高周波領域で使用される高周波用配線基板であって、前記絶縁層が、ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分90〜99.99重量%と、B 粉末0.01〜10重量%とからなる組成物、またはZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分80〜99.95重量%と、少なくともSiO 、B を含むガラス粉末0.05〜20重量%とからなる組成物を焼成して得られたものであって、少なくともZn及びTiを含むスピネル型結晶相と、少なくともZnとBを含有する非晶質の粒界相を含み、30〜60GHzでの誘電率(εr)が15以上、誘電損失が15×10−4以下の磁器からなることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記磁器中に、少なくともZn及びTiを含むイルメナイト型結晶相を含むこと、また、前記磁器中に、TiO 結晶相またはZnO結晶相を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、絶縁層の表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属からなる配線回路層を有し、30GHz以上の高周波領域で使用される高周波用配線基板の製造方法であって、ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分90〜99.99重量%と、B 粉末0.01〜10重量%とからなる組成物によって絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシート表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属を含むペーストを用いて、回路パターン状に印刷して配線回路層を形成した後、複数のグリーンシートを積層圧着し、800〜1000℃で焼成することを特徴とするものである。
【0012】
また、第2の製造方法として、ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分80〜99.95重量%と、少なくともSiO 、B を含むガラス粉末0.05〜20重量%とからなる組成物によって絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシート表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属を含むペーストを用いて、回路パターン状に印刷して配線回路層を形成した後、複数のグリーンシートを積層圧着し、800〜1000℃で焼成することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の高周波用配線基板の絶縁層を形成するのに用いられる磁器組成物は、第1の形態として、ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分80〜99.95重量%と、焼結助剤としてB 粉末0.01〜10重量%とからなるものである。上記の主成分は、前記金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足するものである。
【0014】
ここで、上記の主成分のZnとTiとの複合酸化物における原子比率を示すxにおいて、xが0.3よりも小さいとZnO相が過剰となり誘電特性が劣化し、xが8を越えるとTiO相が過剰となり焼結性が低下し、B量を10重量%以上添加しないと磁器が緻密化しなくなる。の望ましい範囲は、0.5≦x≦1.5である。
【0015】
また、上記の主成分とBとの量比において、組成を上記のように限定したのは、B量が0.01重量%より少ないか、言い換えれば、主成分の量が99.99重量%よりも多いと、800〜1000℃の温度で十分に緻密化することができず、この組成物を用いて作製される基板特性において、緻密化しないために誘電率が低下し、また、誘電正接が増大する。逆に、B量が10重量%より多いか、言い換えれば、主成分の量が90重量%よりも少ないと、700℃以下の低温で液相が流失し磁器の形状を損ない製品形状を保てず、また磁器特性の点から誘電率は15よりも低くなり、同時に30〜60GHzの高周波領域における誘電正接が15×10−4以上と高くなる。上記の組成物の望ましい範囲は、前記主成分95〜99.5重量%、B0.5〜5重量%である。
【0016】
本発明における磁器組成物における第2の形態としては、前記主成分80〜99.95重量%と、焼結助剤として少なくともSiOおよびBを含有するガラス粉末0.5〜20重量%とからなるものである。
【0017】
ここで、主成分組成の限定理由は前記第1の形態で述べた通りである。また前記ガラス量を上記の比率に限定したのは、B2 3 量が0.05重量%より少ないか、言い換えれば、少なくともZnおよびTiを含む複合酸化物からなる主成分量が99.95重量%より多いと、800〜1000℃の低温で十分に緻密化することができず、この組成物を用いて作製される基板特性において、磁器が緻密化しないため誘電率が低下し、また誘電正接は増大してしまうためである。また、上記ガラス量が20重量%より多いか、言い換えれば前記主成分量が80重量%より少ないと、700℃以下の低温で液相が流失し磁器の形状を損ない製品形状を保てず、また磁器特性の点から誘電率は15より低くなり、同時に、30〜60GHzの高周波領域における誘電正接が15×10-4以上と高くなるためである。
【0018】
上記主成分と上記ガラスとの好ましい組成範囲は、前記主成分が85〜99.5重量%、Bが0.5〜15重量%である。
【0019】
また、本発明における磁器組成物は、第1および第2の形態のいずれも非酸化性雰囲気中で800〜1000℃の温度範囲での焼成によって相対密度95%以上まで緻密化することができ、これによって形成される磁器は、少なくともZn及びTiを含むスピネル型結晶相と、少なくともZnとBを含有する非晶質の粒界相を含むものである。例えば、図1、図2および図3のうちのいずれかの組織構造を有する。図1は、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相1と、非晶質の粒界相2とから構成されるものである。図2は、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相1と、少なくともZnおよびTiを含むイルメナイト型結晶相3と、非晶質の粒界相2とから構成される。図3は、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相1と、少なくともZnおよびTiを含むイルメナイト型結晶相3と、TiO相4と、非晶質の粒界相2とから構成される。イルメナイト型結晶とは、FeTiOで代表される三方格子に属する結晶構造を呈し、本発明の磁器では、前記FeがZnに置き換わったものと推定される。
【0020】
このように本発明によれば、磁器中に、少なくともZnおよびTiを含むスピネル型結晶相や、少なくともZnおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、さらにはTiO2 やZnO結晶相を析出させることにより、比誘電率を15〜80の間で調整でき、低い誘電正接を得ることができるのである。
【0021】
なお、上記非晶質の粒界相2は、焼結助剤としてB2 3 を用いた第1の形態の場合には、ZnおよびBを含み、焼結助剤としてSiO2 およびB2 3 を含むガラスを用いた第2の形態の場合には、Si、ZnおよびBを含むものから構成される。
【0022】
なお、本発明の第2の形態において用いるSiO2 、B2 3 を含むガラスとしては、一般にホウケイ酸系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛ガラスなどが挙げられるが、特にSiO2 を5〜80重量%、B2 3 を4〜50重量%の割合でそれぞれ含み、他の成分としてAl2 3 を30重量%以下、アルカリ金属酸化物を20重量%以下の割合で含むものが好適に使用され、これらの酸化物成分を所定割合で配合したものを溶融、冷却し、ガラス化したものが使用される。
【0023】
また、本発明における磁器を製造する方法としては、主成分原料として、ZnO、TiOの各酸化物粉末、あるいはこれらの複合化合物(例えば、ZnTiO)など、さらには、酸化物粉末以外に焼結過程で酸化物を形成し得る炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の形態で用いることができる。この主成分原料は、それら金属の原子比が上記主成分組成を満足するように秤量混合される。
【0024】
本発明の第1の形態に基づくと、上記の主成分原料に対して、焼結助剤としてB2 3 粉末あるいは焼結過程で酸化物を形成し得るB2 3 、H2 BO3 等をB2 3 として、主成分原料90〜99.99重量%、B2 3 0.01〜10重量%となるように添加混合する。
【0025】
また、本発明の第2の形態に基づくと、上記の主成分原料に対して、焼結助剤として前述したようなSiO2 、B2 3 を含むガラス粉末を、主成分原料80〜99.95重量%、SiO2 、B2 3 を含むガラス0.05〜20重量%となるように添加混合する。
【0026】
なお、上記原料粉末は、分散性を高め高い誘電率や低い誘電正接を得るために平均粒径がいずれも2.0μm以下、特に1.0μm以下の微粉末であることが望ましい。
【0027】
次に、上記のような割合で添加混合した混合粉末に適宜バインダ−を添加した後、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成形、ドクターブレード法、圧延法等により任意の形状に成形後、N2 、Ar等の非酸化性雰囲気中、または空気中などの酸化性雰囲気中で800℃〜1000℃、特に900〜1000℃の温度で0.1〜5時間焼成することにより相対密度95%以上に緻密化することができる。この時の焼成温度が800℃より低いと、磁器が十分に緻密化せず、1000℃を越えると緻密化は可能であるが、銅、銀などの導体と同時焼成ができなくなる。因みに、同時焼成時に、導体として銅を用いる場合には非酸化性雰囲気とし、銀を用いる場合には非酸化性または酸化性雰囲気で焼成することが必要である。
【0028】
本発明の上記方法によれば、ZnおよびTiからなる酸化物主成分と、B、またはSiO、Bを含むガラスを組み合わせることにより、主成分酸化物から生成するZnを主とする液相とB(ホウ素)成分のより活性な液相反応が生じる結果、少ない焼結助剤量で磁器を緻密化することができる。そのために、誘電正接を増大させる要因となる粒界の非晶質相の量を最小限に押さえることができる。このため高周波領域においてより低い誘電正接を得ることができるのである。
【0029】
本発明の高周波用配線基板を作製するには、上記のようにして調合した混合粉末を公知のテープ成形法、例えばドクターブレード法、圧延法等に従い、絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシートの表面に配線回路層用として、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属、特に、銅粉末を含む導体ペーストを用いて、グリーンシート表面に配線パターンにスクリーン印刷法、グラビア印刷法等によって回路パターン状に印刷し、場合によってはシートにスルーホールやビアホール形成後、上記導体ペーストを充填する。その後、複数のグリーンシートを積層圧着した後、上述した条件で焼成することにより、配線層と絶縁層とを同時に焼成することで、高周波用配線基板を製造することができる。
【0030】
以下、本発明を次の例で説明する。
【0031】
【実施例】
実施例1
平均粒径が1μm以下のB2 3 、平均粒径が1μm以下のZnO粉末およびTiO2 粉末を用いて表1の組成に従い混合した。そして、この混合物に有機バインダー、可塑剤、トルエンを添加し、ドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを5枚積層し、50℃の温度で100kg/cm2 の圧力を加えて熱圧着した。得られた積層体を水蒸気含有/窒素雰囲気中で、500〜700℃で脱バインダーした後、乾燥窒素中で表1の条件において焼成して多層基板用磁器を得た。
【0032】
得られた焼結体について誘電率、誘電正接を以下の方法で評価した。測定は、形状直径1〜5mm、厚み2〜3mmの試料を切り出し、60GHzにてネットワークアナライザー、シンセサイズドスイーパーを用いて誘電体円柱共振器法により行った。測定では、NRDガイド(非放射性誘電体線路)で、誘電体共振器の励起を行い、TE021,TE031モードの共振特性より誘電率、誘電正接を算出した。測定の結果は表1に示した。また、X線回折測定から、磁器の構成相を同定し、試料No.5についてX線回折チャートを図4に示した。
【0033】
また、比較例として、主成分としてSrTiO3 、CaTiO3 を用いて同様に焼結体を作製し評価した(試料No.27、28)
【0034】
【表1】
Figure 0003754782
【0035】
表1の結果から明らかなように、結晶相として、スピネル型結晶相(Zn2 TiO4 )やTiO2 結晶相が主として析出した本発明の磁器は、いずれも誘電率が15〜90、60GHzでの誘電正接が15×10-4以下の優れた特性値を示し、800〜1000℃で焼結することができた。なお、本発明品の磁器の結晶粒界相をX線マイクロアナライザーによって分析した結果、いずれも粒界相中からZnおよびB元素が検出された。
【0036】
これに対して、B2 3 量が0.01重量%未満である試料No.11、12、21では、焼成温度を1300℃まで高めないと緻密化することができず、本発明の目的に適さないものであった。一方、B2 3 量が10重量%を越える試料No.10、20、26は液相量が多いため、誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。
【0037】
また、Znに対してTiの比率が少ない(x<0.3)試料No.1では過剰なZnO相が析出し、このため誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。Znに対してTiの比率が多い(x>8)試料No.10では焼結温度を1200℃まで高めないと磁器が緻密化できず、本発明の目的に適さないものであった。
【0038】
また、比較例として、SrTiO3 やCaTiO3 を用いた試料No.27、28では、誘電正接が高く60GHzでは測定不可能であった。
【0039】
実施例2
平均粒径が1μm以下の表2に示すガラス粉末と、平均粒径が1μm以下のZnO粉末およびTiO2 粉末を表3の組成に従い混合した。そして、この混合物を用いて実施例1と同様にしてグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを5枚積層し、50℃の温度で100kg/cm2 の圧力を加えて熱圧着した。得られた積層体を水蒸気含有/窒素雰囲気中で、700℃で脱バインダーした後、乾燥窒素中で表3、4の条件で焼成して多層基板用磁器を得た。
【0040】
得られた焼結体について誘電率、誘電正接を実施例1と同様な方法で評価した。測定の結果は表3、4に示した。また、X線回折測定から、磁器の構成相を同定し、試料No.32についてX線回折チャートを図5に示した。
【0041】
【表2】
Figure 0003754782
【0042】
【表3】
Figure 0003754782
【0043】
【表4】
Figure 0003754782
【0044】
表2〜表4の結果から明らかなように、結晶相として、スピネル型結晶相(Zn2 TiO4 )あるいはTiO2 結晶相が主として析出した本発明の磁器は、いずれも誘電率が15〜80、60GHzでの誘電正接が15×10-4以下の優れた特性値を示し、800〜1000℃で焼結することができた。なお、本発明品の磁器の結晶粒界相をX線マイクロアナライザーによって分析した結果、いずれも粒界相中から、ZnおよびB元素が検出された。
【0045】
これに対して、ガラス量が0.05重量%未満である試料No.39、40、47では、焼成温度を1300℃まで高めないと緻密化することができず、本発明の目的に適さないものであった。一方、ガラス量が20重量%を越える試料No.37、46、52は液相量が多いため、誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。
【0046】
また、Znに対してTiの比率が少ない(x<0.3)試料No.29では過剰なZnO相が析出し、このため誘電損失が増大し60GHzにおいて誘電特性が評価できなかった。Znに対してTiの比率が多い(x>8)試料No.38では焼結温度を1200℃まで高めないと磁器が緻密化できず、本発明の目的に適さないものであった。
【0047】
実施例3
各種の磁器について、直径1〜30mm、厚み2〜15mmの円柱サンプルa)を作製し、誘電率および誘電損失の周波数との関係について測定し図6および図7に示した。図6および図7において、▲1▼は、上記実施例1中のNo.5の磁器、▲2▼は、上記実施例2中のNo.36の磁器、また比較として▲3▼は、汎用品のコージェライト系ガラスセラミックス(硼珪酸ガラス75重量%、Al2 3 25重量%)、▲4▼は汎用のアルミナ磁器(Al2 3 95重量%、CaO、MgO5重量%)である。各磁器について、1GHz、10GHz、20GHz、30GHzおよび60GHzの高周波、マイクロ波、ミリ波領域において、誘電体円柱共振器法により誘電率と誘電正接を測定した。
【0048】
図6および図7の結果、汎用品のコージェライト系ガラスセラミックスは誘電率が5とかなり低く、汎用の低純度アルミナは誘電率は9と低いことがわかる。これに対して、本発明品は誘電率が19および67と高い値であった。汎用品のガラスセラミックスは低周波領域において誘電正接は低いが、高周波領域になるに従い特性が劣化してしまい20GHz以上では20×10-4以上になってしまう。また、汎用のアルミナ磁器も60GHzで40×10-4と高くなった。一方、本発明品▲1▼▲2▼は、60GHzでの高周波領域においても誘電正接は15×10-4以下と低いものであった。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の高周波用配線基板は、絶縁層が、800〜1000℃の温度で緻密化できることから、金、銀、銅などの配線と同時に焼成することができる。しかも、絶縁層を形成する磁器は、30GHz以上の高周波帯において高い誘電率と低い誘電正接を示すために、配線基板としての小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体磁器の組織の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の誘電体磁器の組織の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の誘電体磁器の組織のさらに他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の態様の誘電体磁器の(実施例1中試料No.5)のX線回折チャート図である。
【図5】本発明の第2の態様の誘電体磁器の(実施例2中試料No.36)のX線回折チャート図である。
【図6】本発明の磁器と従来の磁器との誘電率εrと周波数f0 との関係を示した図である。
【図7】本発明の磁器と従来の磁器との誘電正接tanδと周波数f0 との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 スピネル型結晶相(SP)
2 粒界相(G)
3 イルメナイト型結晶相(I)
4 TiO2 相(T)

Claims (5)

  1. 絶縁層の表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属からなる配線回路層を有し、30GHz以上の高周波領域で使用される高周波用配線基板であって、前記絶縁層が、
    ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分90〜99.99重量%と、B 粉末0.01〜10重量%とからなる組成物
    または
    ZnO粉末とTiO 粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分80〜99.95重量%と、少なくともSiO 、B を含むガラス粉末0.05〜20重量%とからなる組成物
    を焼成して得られたものであって、
    少なくともZn及びTiを含むスピネル型結晶相と、少なくともZnとBを含有する非晶質の粒界相を含み、30〜60GHzでの誘電率(εr)が15以上、誘電損失が15×10−4以下の磁器からなることを特徴とする高周波用配線基板。
  2. 前記磁器中に、少なくともZn及びTiを含むイルメナイト型結晶相を含むことを特徴とする請求項1記載の高周波用配線基板。
  3. 前記磁器中に、TiO結晶相またはZnO結晶相を含むことを特徴とする請求項1記載の高周波用配線基板。
  4. 絶縁層の表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属からなる配線回路層を有し、30GHz以上の高周波領域で使用される高周波用配線基板の製造方法であって、ZnO粉末とTiO粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分90〜99.99重量%と、B粉末0.01〜10重量%とからなる組成物によって絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシート表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属を含むペーストを用いて、回路パターン状に印刷して配線回路層を形成した後、複数のグリーンシートを積層圧着し、800〜1000℃で焼成することを特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
  5. 絶縁層の表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属からなる配線回路層を有し、30GHz以上の高周波領域で使用される高周波用配線基板の製造方法であって、ZnO粉末とTiO粉末との混合物、またはそれらの複合化合物からなり、金属の原子比による組成をZn・xTiと表した時、0.3≦x≦8(但し、x=1を除く)を満足する主成分80〜99.95重量%と、少なくともSiO、Bを含むガラス粉末0.05〜20重量%とからなる組成物によって絶縁層形成用のグリーンシートを作製した後、そのシート表面に、金、銀および銅のうちの少なくとも1種の金属を含むペーストを用いて、回路パターン状に印刷して配線回路層を形成した後、複数のグリーンシートを積層圧着し、800〜1000℃で焼成することを特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
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