JP3833272B2 - 電子写真用転写紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、間接乾式電子写真方式のフルカラー、若しくは、モノクローム複写機、プリンター等に用いられて、高画質な画像が得られ、かつ、カールの小さい転写紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式の複写機、プリンターのカラー化、デジタル化等に伴い、電子写真方式の複写機やプリンター等の高画質化が検討されてきている。特に、電子写真方式のフルカラー複写機やプリンターにおいては、高画質画像を得るために、画像の入出力のデジタル化が進み、画像入力方法及び入力した画像の処理方法や、現像法、転写法、定着法等が大きく改善されている。また、現像剤や感光体の画像形成材料についても、デジタル高精細、高発色カラー記録に対応して改善されている。
【0003】
しかしながら、電子写真方式のモノクローム複写機やプリンターに使用されている従来の電子写真用紙を、上記の改善された電子写真方式のフルカラー複写機やプリンターに使用すると、写真画像等に多く存在する中間調領域での粒状性(画像のざらつき感)が悪く、高画像密度領域では濃度のむらが目立ち、また、彩度が低くカラー発色性に劣るという問題があった。
また、フルカラー複写、プリントの場合には、写真画像等の画像面積率の大きな画像が紙上に形成されることが多く、画像面積率の小さな画像と比較して、熱加圧定着後に比べものにならないほど大きなカールが生じるという問題があった。このような定着工程後の大きなカールは、ドキュメントとしての取扱性が悪いばかりでなく、排紙トレイやソーターへの収容性不良が生じ、この収容性不良に起因する種々のトラブルの原因になっていた。
【0004】
ところで、特開昭62−198,876号公報や特開昭62−198,877号公報には、特別な塗工紙を使用することにより画像欠陥を改善する提案がされている。しかしながら、これらの提案においては、中間調領域での粒状性の改善や、発色性の向上についての改善手段の提示はなされておらず、また、塗工紙であるために鉛筆での筆記性に劣り、コストも高く、しかも、上質紙とは異なる風合があるという欠点があった。
【0005】
また、特開平1−292,354号公報には、記録後にカールを低減する方法が開示されているが、上記と同様に塗工紙であるために、風合、鉛筆筆記性、コスト等の点で問題があった。
更に、特開平2−217,862号公報、特開平3−243,953号公報、特開平3−236,062号公報及び特開平3−180,599号公報には、電子写真用上質紙のカールや寸法安定性の改善に関する方法が開示されているが、何れもフルカラー高画像面積記録の定着後カールに対しては問題があり、その改善手段の提示はなされておらず、また、フルカラー画像の粒状性、濃度むら、発色性等の画質改善に対する改善手段の提示もされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の電子写真用転写紙が有している問題を克服したものであり、間接乾式電子写真方式のデジタルフルカラー複写機やプリンターで記録された場合においても、中間調領域の粒状性、高画像密度領域の濃度むら、発色性が何れも良好で、なおかつ、トナーの定着性を損なうことがなく、高画像面積の記録を行う場合においても、定着後カールが小さい電子写真用上質転写紙を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、JIS−P−8124による坪量が75〜95g/m2 でJIS−P−8119によるベック平滑度が表裏共に65〜120秒であり、かつ、JIS−P−8118による密度が0.80g/cm3 以上である上質紙において、温度20℃及び湿度65%RHから温度20℃及び湿度25%RHに変化したときのCD(抄紙機の進行方向に対して直角方向)の伸縮率が0.45%以下であり、JIS−P−8118で前処理された用紙のCDの引張弾性率E(kgf/mm2 )と紙の厚さt(mm)とがEt3 ≧0.26(式1)の関係を満たすことを特徴とするものである。更に好ましい態様としては、JIS−P−8123によるハンター白色度が82%以上であり、超音波伝播法によるMD(抄紙機の進行方向)とCDとの間の繊維配向比が1.10〜1.30である電子写真用転写紙である。
【0008】
本発明における「紙の伸縮率」とは、温度20℃、“湿度65%R.H.→25%R.H.→65%R.H.→90%R.H.”で3サイクル吸脱湿処理を繰り返し、最後に65%R.H.→25%R.H.と変化させた時の寸法変化率を意味する。
【0009】
また、本発明において、超音波伝播法によるMDとCDとの繊維配向比は次式で示される値を意味する。
超音波伝播法による繊維配向比=MDの超音波伝播速度/CDの超音波伝播速度
また、本発明における上記超音波伝播法による繊維配向比は、以下に示す測定方法によっても求めることができる。すなわち、厚さ10mmの気泡入りゴム板上に試料を載置し、150mmの間隔をおいて送波振動子と受波振動子とを接触させ、超音波の送波部から超音波パルスの縦波を送り出し、これを超音波の受波部で受け、この縦波が送波振動子を通過して試料を通り受波振動子を通過するまでの時間を測定し、これを伝播速度に変換する。試料について、それぞれMD及びCD両方向の伝播速度を測定し、その伝播速度比を求める。
【0010】
本発明においては、紙表面をベック平滑度で表裏共に65〜120秒に平滑化し、更に、密度を0.80g/cm3 以上に高密度化するものであり、これによって、熱加圧定着時に溶融したトナーが紙表面で繊維に沿って流れ出したり、紙内部空隙に浸透する現象を抑制することができる。この時、ベック平滑度が120秒を越える処理を施しても、粒状性等の画質がそれ以上改善されないばかりか、塗工紙のような風合が生じて好ましくない。
【0011】
また、本発明で使用する紙はその秤量が75〜95g/m2 である。75g/m2 を下回る坪量の紙に対して、ベック平滑度が65秒以上で密度が0.80g/cm3 以上となる処理を施すと、紙厚が薄くなり、また、紙層内の空気層が少なくなるために、光の屈折率が低下し画像の裏写りを生じたり、紙の腰が弱くなるために走行不良を生じたり、トレイやソーターへの収容性不良を生ずる。また、95g/m2 を越える坪量では、紙の熱容量が大きくなるために、定着時にトナーを十分溶融することができなくなり、定着性の不良やトナー発色の低下を引き起こすことがある。
【0012】
電子写真方式のフルカラー複写機やプリンターでは、一般に、黒、イエロー、マゼンタ及びシアンからなる各色のトナーを紙上に転写し、定着工程で溶融し、その後固化したトナーの減法混色により発色させている。このため、トナーについては、溶融定着時に透明性の高いものが使われ、紙上のカラー画像の発色性はその紙の色の影響を受けやすい。そこで、色の濁りが少なく、彩度の高い高発色画像を得るためには、この紙の色についてのハンター白色度が82%以上であることが好ましく、これによってフルカラー発色の特に優れた記録を得ることができる。
【0013】
ところで、フルカラー画質を向上させるために、坪量が75〜95g/m2 の電子写真用転写紙をベック平滑度で65〜120秒とし、密度を0.80g/cm3 以上と高密度処理すると、定着後のカールが極端に大きくなるという現象が生じる。
そこで、本発明者らがこのカール発生のメカニズムについて検討した結果、低画像密度時の定着後のカールは、熱加圧定着時の紙の脱湿収縮によるカールが支配的であり、また、高画像密度時の定着後カールは、トナー層と紙層とのバイメタルの様な構造により生じており、吸脱湿による伸縮の小さいトナー層に対して紙層の吸脱湿による伸縮が大きい時に生じる場合と、定着時に溶融したトナー層が室温に冷却固化する際に収縮し、紙層に対して曲げ応力を与え、カールを生じる場合とがあることを知見した。
そして、前者に対しては、CDの20℃、65%RHから20℃、25%RHへの伸縮率を0.45%以下とすることで解決でき、また、後者に対しては、CDの弾性率E(kgf/mm2 )と紙の厚さt(mm)で示される紙の曲げ剛度Et3 を0.26以上、好ましくは0.28以上とすることによって解決できることを見出した。
従って、本発明においては、CDの伸縮率を0.45%以下とし、また、紙の曲げ剛度Et3 を0.26以上とすることが必要である。
【0014】
また、坪量75〜95g/m2 、ベック平滑度で65〜120秒、密度を0.80g/cm3 以上の上質紙を使用し、上記CDの伸縮率とEt3 とを満たすためには、好ましくは、CDの繊維の配向を増加させ、超音波伝播法によるMDとCDの繊維配向比を1.10〜1.30にするのがよい。この超音波伝播法によるMDとCDの繊維配向比が1.10を下回ると、ねじれカールが大きくなり好ましくない。
【0015】
以下、本発明で要求される条件を満足する電子写真用転写紙について詳細に説明する。
本発明の電子写真用転写紙に使用するパルプは、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、LBSP(広葉樹晒亜硫酸パルプ)、NBSP(針葉樹晒亜硫酸パルプ)等、従来から知られているケミカルパルプの何れも使用できるが、CDの伸縮率を小さくし、かつ、Et3 を大きくする観点から、LBKPを全パルプ中80%以上配合することが好ましい。また、LBKP等の乾燥パルプを全パルプ中30%以上配合することにより、繊維間結合面積を減少させることが可能であり、CDの伸縮やEt3 の観点から、更に望ましい。
更に、このようなケミカルパルプには、綿パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプ、GP(グランドパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)等の高収率パルプをハンター白色度が82%を下回らない範囲で混合してもよい。
このハンター白色度を82%以上にするためには、前記パルプを選択して使用してもよいが、パルプの漂白工程を強化したパルプを利用したり、パルプスラリー中へ蛍光染料を混合してもよい。
また、抄紙の前にパルプスラリーの濾水度調整のため、調整工程で叩解度の調整が行われる。叩解度は、高密度に処理した紙においても、繊維間結合面積を低く抑え、CD伸縮量を小さくするため、400mlC.S.F以上、好ましくは、450mlC.S.F以上となるように調整するのがよい。
【0016】
本発明の電子写真用転写紙には、不透明度、白さ、表面平滑性等の調整のため、填料を使用する。使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、パイオロフィライト、セリサイト、タルク等のケイ酸類や、二酸化チタン等の無機填料、及び、尿素樹脂、スチレン等の有機顔料があるが、これらに限られるものではない。電子写真方式における画質維持性及び白色度向上の観点から炭酸カルシウムの配合が好ましい。
また、ベック平滑度が65秒以上の高平滑処理を助けるためや、紙層内部の繊維間結合をある程度切断しCD伸縮率を低下させるために、填料の配合量については、5〜15重量%、好ましくは7〜13重量%とする。填料の配合量が5重量%を下回ると、カレンダー処理等による平滑化処理がかかり難くなったり、填料による光の屈折が低下し、不透明度が低下したり、CD伸縮率が大きくなりすぎたり、更には、紙の腰が強くなりすぎて走行性が低下するという弊害が生じる。また、この填料の配合量が15重量%を上回ると、紙粉の発生が多くなり、複写機やプリンター内を汚染したり、紙の摩擦係数が上がりすぎるために走行性が低下する。
【0017】
本発明において使用する内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤が使用でき、硫酸バンド、カチオン化澱粉等、適当なサイズ剤と繊維との定着剤を組み合せて使用する。望ましくは、電子写真方式の複写機、プリンター等における走行性及びコピー後の用紙保存性の観点から、中性サイズ剤、特にアルケニル無水コハク酸系サイズ剤を使用するのがよい。
このほかに、紙力増強剤、染料、pH調整剤等を添加してもかまわない。
【0018】
本発明の電子写真用転写紙の製造条件のコントロールとしては、前述した紙料を用いて、坪量が75〜95g/m2 となるように抄紙する。前述したように坪量が75g/m2 を下回ると、裏写りを生じたり、走行性、収容性不良を生じ、95g/m2 を上回ると、定着不良や、トナーの発色性不良を生じる。
また、CD伸縮率を0.45%以下にし、Et3 を0.26以上にするためには、繊維配向比を制御することが好ましく、超音波伝播法によるMDとCDの繊維配向比を1.10〜1.30とするために、JET/WIRE比(原料噴出速度/抄紙機ワイヤー速度比)を調整する方法が有効である。これ以外にも、プレス時の紙のマシン方向の張力及びドライヤー乾燥時のマシン方向の張力を小さくすることにより制御することもできる。
更に、ベック平滑度を65〜120秒とし、密度を0.80g/cm3 以上とするために、プレスを強化したり、マシンンカレンダーを強化するのがよい。また、スーパーカレンダーによる処理も可能であるが、これらに限られるものではない。
【0019】
また本発明では、電子写真方式における画像の乱れを防止し、適当なコピー画像濃度を維持するため、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スチレン−マレイン酸コポリマー、第4級アンモニウム塩等の導電剤を抄紙機のサイズプレスで表面塗布して、転写紙の表面電気抵抗(JIS−K−6911)を109〜1011Ωにする。また、開封直後の製品水分は波打ちや、コピー後カールの発生を抑えるために適正水分の4.0〜6.5%になるよう抄紙機のドライヤー、キャレンダー工程や、断裁工程等で調整する。また、保管時に吸脱湿が発生しないように、ポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙や、ポリプロピレンフィルム等で包装する。
【0020】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0021】
実施例1
酸素晒等で多段漂白し高白色化したLBKPをろ水度470mlC.S.F.まで叩解したパルプを原料とし、軽質炭酸カルシウム(TP121:奥多摩工業社製)を10重量%となるよう添加し、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81:王子ナショナル社製)を対パルプ当り0.08重量%配合し、カチオン化澱粉(Cate 15:王子ナショナル社製)を対パルプ当り0.5重量%配合した。この紙料に抄紙後のハンター白色度が84%となるように少量の蛍光染料を配合し、坪量75g/m2 で、かつ、超音波伝播法による繊維配向比が1.20前後となるように、Jet/Wire比とWire速度とを調整して長網多筒式抄紙機で抄紙し、抄紙後水分が5重量%となるようにドライヤー条件を調整した。また、サイズプレス工程で酸化でんぷんを0.9g/m2、NaClを0.1g/m2 塗工した。更に、プレス工程、及び、マシンカレンダーを強化して平滑性及び密度を高くした。この電子写真用転写紙の各特性は、表1に示すように、坪量75g/m2 、密度0.82g/cm3 、FS(フェルトサイド)の平滑度85秒、WS(ワイヤーサイド)の平滑度72秒、超音波伝播法による繊維配向比1.18、CD伸縮率0.32、Et3 0.26、ハンター白色度84%であった。この電子写真用紙をデジタルフルカラー複写機A color 630(富士ゼロックス社製)を用いて、Black、Yellow、Magenta、Cyan、Red、Green、Blue、及び、Yellow、Magenta、Cyanの混色Blackの、各画像面積率10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%の2cm×2cmのパッチを平滑度の低い用紙面に転写、定着し、中間調領域の粒状性としては、各色の画像面積率20、30、40%のパッチを目視で評価した。高画像密度領域の濃度むらは、各色の画像面積率70、80、90、100%のパッチを目視で評価した。また、発色性の良否を各色の画像面積率10〜100%のパッチを目視で評価した。また、この画像の裏写りの評価を目視で行った。トナーの定着度は、Yellow、Magenta、Cyanの混色Blackの画像面積率100%のパッチを中央から画像が内側になるよう折り曲げ、その折り曲げ部に2kgのロールを転がした後、画像面を開き、軽く布でふきとった時の折り曲げ部のトナーの剥離程度を目視により評価した。定着後のカールの評価は、Magentaトナー、Cyanトナーの2色からなるBlueのベタ画像を用紙全面に記録し、定着5分後のカールの大きさを評価した。この時の実験環境は、22℃ 55%R.H.とした。その他、得られた電子写真用紙の普通紙感等の風合は、男性15名、女性15名のパネラーにより官能評価して問題点を抽出した。以上の結果、特に粒状性、濃度むら、トナー定着性に優れた転写紙が得られた。
【0022】
実施例2、3、4
実施例1と同様の紙料を用いて、マシンカレンダーを実施例1より若干弱くかけて、密度を0.80g/cm3 とし、その他の抄紙条件は、実施例1と同様にして実施例2の転写紙を得た。実施例1と同様の紙料を用いて、実施例2の抄紙条件のうち、Jet/Wire比を変更し、超音波伝播法による繊維配向比が1.16になるよう調整し、実施例3の転写紙を得た。また、同様に実施例2に対し、超音波伝播法による繊維配向比が1.30となるよう調整し、実施例4の転写紙を得た。実施例2、3、4の転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙を実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、優れた転写紙が得られた。実施例2、3は、特に定着後カールにすぐれた転写紙が得られた。実施例4では、実用上満足できる転写紙が得られた。
【0023】
実施例5、6、7、8
実施例1と同様の紙料を用いて、坪量を81g/m2 にした以外は、実施例1と同様の抄紙条件で、実施例5の転写紙を得た。また、実施例5に使用したパルプ原料を変更し、乾燥パルプを30%含むLBKPを使用した他は、実施例5と同様の紙料、同様の抄紙条件で実施例6の転写紙を得た。実施例7の転写紙は、実施例5と同様の紙料を用い、マシンカレンダーを実施例5より強くかけて、密度を0.85g/cm3 とし、その他の抄紙条件は、実施例5と同様にして得た。この時の平滑度は、FSで120秒であった。実施例8の転写紙は、実施例5と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.30となるよう調整したほかは、実施例5と同様の抄紙条件により得た。実施例5、6、7、8の転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙を実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、優れた転写紙が得られた。実施例5は、画質、トナー定着性、定着後カール全てに優れた転写紙が得られた。実施例6は、実施例5よりもCD伸縮率が更に小さく定着後カールにより一層すぐれる転写紙が得られた。実施例7は、高平滑なため少し普通紙らしくない風合を与えるが、許容範囲内であり、画質、トナー定着性、定着後カールに優れた転写紙が得られた。実施例8は、特に画質、トナー定着性に優れた転写紙が得られた。
【0024】
実施例9、10、11
実施例1と同様の紙料を用いて、坪量を90g/m2 にした以外は、実施例1と同様の抄紙条件で、実施例9の転写紙を得た。また、実施例1と同様の紙料を用いて、坪量を95g/m2 にした以外は、実施例1と同様の抄紙条件で、実施例10の転写紙を得た。実施例11の転写紙は、実施例10と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.30となるよう調整したほかは、実施例10と同様の抄紙条件により得た。実施例9、10、11の転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙を実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、優れた転写紙が得られた。実施例9は、画質、トナー定着性、定着後カール全てに優れた転写紙が得られた。実施例10は、特に画質、定着後カールに優れた転写紙が得られた。実施例11は、特に中間調領域の粒状性、高画像密度領域の濃度むらに優れた転写紙が得られた。
【0025】
実施例12
実施例5の紙料から、蛍光染料を除去し、実施例5と同様の抄紙条件で、実施例12の転写紙を得た。ハンター白色度は、82%であった。本転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3 を測定して評価し、また、本転写紙を実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。実施例12は、わずかに濁った発色を示すが許容レベルであり、その他画質、トナー定着性、定着後カール共に優れた転写紙が得られた。
【0026】
比較例1、2
坪量を70g/m2 とした以外は、実施例1と同様の紙料、抄紙方法により比較例1の転写紙を得た。同様に坪量を100g/m2 とした以外は、実施例1と同様の紙料、抄紙方法により比較例2の転写紙を得た。これらの転写紙の密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙の坪量の影響を確認するために実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、何れの転写紙も実用に供さないものであった。比較例1は、カールが非常に大きくなり、比較例2の転写紙は、トナーの定着が悪く発色も濁ったものとなった。
【0027】
比較例3、4、5
密度を0.78g/cm3 とした以外は、実施例5と同様の紙料、抄紙方法により比較例3の転写紙を得た。この転写紙の平滑度は、平滑度の低い面で、59秒であった。比較例3に対し密度を0.76g/cm3 と更に低くした以外は同様の方法で比較例4を得た。密度を0.90g/cm3 とした以外は、実施例5と同様の紙料、抄紙方法により比較例5の転写紙を得た。この転写紙の平滑度は、平滑度の高い面で、207秒であった。これらの転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙の平滑度、密度の影響を確認するために実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、何れの転写紙も実用に供さないものであった。比較例3は中間調領域のざらつきが悪く、高画像密度領域の濃度むらも発生した。比較例4は更に中間調領域のざらつきが悪く、高画像密度領域の濃度むらも更に顕著となった。比較例5の転写紙は高平滑となり過ぎたために普通紙の風合を失い、鉛筆での筆記性も十分ではなく、Et3も小さい値となったため、大きなカールを生じた。
【0028】
比較例6、7、8
実施例3と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.35となるよう調整したほかは、実施例3と同様の抄紙条件により比較例6の転写紙を得た。この転写紙のCD伸縮率は、0.46%であった。また、実施例5と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.35となるよう調整したほかは、実施例5と同様の抄紙条件により比較例7の転写紙を得た。この転写紙のCD伸縮率は、0.49%であった。更に、実施例10と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.45となるよう調整したほかは、実施例10と同様の抄紙条件により比較例8の転写紙を得た。この転写紙のCD伸縮率は、0.55%であった。これらの転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙の主にCD伸縮率の影響を確認するために実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、何れの転写紙も実用に供さないものであった。比較例6はCD伸縮率が大きくEt3も小さい値となったため、大きなカールを発生した。比較例7の転写紙はCD伸縮率が比較例5よりも大きいため、非常に大きなカールを生じた。比較例8の転写紙はCD伸縮率が大きいため、非常に大きなカールを生じた。
【0029】
比較例9、10
実施例7と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.28となるよう調整したほかは、実施例7と同様の抄紙条件により比較例9の転写紙を得た。この転写紙のEt3は、0.24であった。また、実施例1と同様の紙料を用いて、超音波伝播法による繊維配向比が1.30となるよう調整したほかは、実施例1と同様の抄紙条件により比較例10の転写紙を得た。この転写紙のEt3は、0.22であった。これらの転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、これらの転写紙の主にEt3の影響を確認するために実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。結果は、何れの転写紙も実用に供さないものであった。比較例9は、Et3も小さい値となったため、大きなカールを発生した。比較例10の転写紙は、Et3が比較例9よりも更に小さいため、非常に大きなカールを生じた。
【0030】
比較例11
漂白程度を落としたLBKPを使用した以外は、実施例5と同様の紙料、抄紙方法により比較例11の転写紙を得た。本転写紙の密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価し、また、本転写紙のハンター白色度の影響を確認するために実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。比較例11は、発色が濁ったものとなり実用に供さないものであった。
【0031】
比較例12
坪量が78g/m2 の市販の電子写真用転写紙を実施例1と同様の方法により、画質、トナー定着性、定着後カール、風合等を評価した。本転写紙の坪量、密度、平滑度、超音波伝播法による繊維配向比、CD伸縮率、Et3、ハンター白色度を測定して評価した。比較例12は、画質、定着後カール共に悪く、実用に供さないものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、上記のような構成、特徴を持ってなるため、間接電子写真方式のフルカラー及びモノクローム記録における中間調領域の粒状性に優れ、高画像密度領域の濃度むらの発生もなく、更に、フルカラー画像の発色性にも優れ、トナーの定着性も良好な画像を提供でき、フルカラー高画像面積記録の定着後カールも小さい電子写真用転写紙を提供できるものである。

Claims (5)

  1. LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)が全パルプ中の80%以上の割合で配合されており、坪量が75〜95g/m2であって、ベック平滑度が表裏共に65〜120秒であり、かつ、密度が0.80 g/cm 3 以上である上質紙において、CDの伸縮率が0.45%以下であって、下記式1
    Et3≧0.26 (1)
    〔但し、式中EはCDの引張弾性率(kgf/mm2)を示し、tは紙の厚さ(mm)を示す〕を満たすことを特徴とする電子写真用転写紙。
  2. ハンター白色度が82%以上である請求項1記載の電子写真用転写紙。
  3. 超音波伝播法による繊維配向比が1.10〜1.30である請求項1又は2に記載の電子写真用転写紙。
  4. 乾燥パルプを全パルプ中30%以上含有してなる請求項1に記載の電子写真用転写紙。
  5. 叩解度が400mlC.S.F以上のパルプを原料としてなる請求項1に記載の電子写真用転写紙。
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