JP3833179B2 - 光波長変換装置、及び光波長変換方法 - Google Patents

光波長変換装置、及び光波長変換方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザー(Laser Diode:LD)光と他のLD光などである2つの光源光を和周波混合して波長変換を行う光波長変換装置及びその方法に関するものである。特に詳細には、レーザーディスプレイ、光記録、光計測用の光源などとして利用でき、高速変調駆動が可能で、緑色レーザー光を出射できる光波長変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、非線形光学材料を利用してLD光を別の波長に変換する試みは、様々行われている。この技術によれば、LDとしては実用化に至っていない波長域、例えば緑色域や紫外域のレーザー光を発生させる光源を得ることが可能となり、この光源はレーザーディスプレイや光記録用の光源としての応用が期待できる。
【0003】
非線形光学材料を用いて緑色レーザー光を発生させる方法としては、LD励起固体レーザーと非線形光学材料とを組み合わせたものが知られている。これは、808nmの波長のLD光でNd:YAG等のレーザー結晶を励起して波長1064nmのレーザー光を発振(LD励起固体レーザー)させ、それをKTP(KTiOPO)等の非線形光学材料に照射して第2次高調波を発生させ、532nmのレーザー光を出射させるものである。1060nm付近のLD光を直接非線形光学材料に照射して第2次高調波(530nm)を発生する方式も考えられる。この場合、LDを直接変調することで出力光を変調できるので、高速変調が可能である。
【0004】
一方、波長λ、波長λの2つのLD光を非線形光学材料に入射して、2つの光の周波数の和の周波数を有する波長λの光を発生させる和周波発生と呼ばれる方法がある。この方法は、次の様なものである(例えば、特許文献1参照)。図15はその光学系を示したものであり、図中、401は変調信号、402は信号用LD、417は励起用LDであり、光ファイバ403やダイクロイックミラー418を介して、分極反転層420を備えた非線形光学素子414に2つのLD光を入射している。2つのLD光は非線形光学素子414によって和周波光に変換されて出射される。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−175180号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記LD励起固体レーザーを用いたタイプは、YAGの蛍光寿命が0.23ms程度であるため、数kHzでの変調が限界であり高速変調には不向きである。したがって、変調させるためには外部変調器が必要になり、小型化に限界があると共に消費電力も増加してしまう。
【0007】
また、波長1060nmのLD光から第2高調波を発生させる方式は、第2次高調波への変換効率がLD光波長に対して敏感であり、入力パワーにも依存するため、LD光源に高出力かつ高い波長安定性(1nm以下)が要求される。さらに、出力光を高出力で変調させるためには、LD光源に振幅の大きい変調電流を注入する必要があり、大電流対応のレーザードライバーが必要になってコスト高の要因となる。
【0008】
また、和周波発生方式も、和周波光への変換効率がLD光波長に対して敏感であるため、2つのLD光源に高い波長安定性(1nm以下)が要求され、さらに励起用LDには高出力が要求される。
【0009】
したがって、第2高調波発生方式あるいは和周波発生方式において、LD光源の高出力かつ高い波長安定性を満たすためには、DFB(Distributed Feedback)レーザーやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザー等のグレーティング加工を施したレーザーであって高電流注入を可能にするための特別なデバイス構成を持つレーザが必要となり、レーザー作製コストが増加する。
【0010】
また、一般に、第2高調波発生方式あるいは和周波発生方式においては、変換効率が非線形光学材料の温度に対して敏感であるため、非線形光学材料の温度変動を数℃以内に抑える必要がある。そのため、温度制御装置といった特別な工夫が必要となり、小型化に限界があり、コスト高、高消費電力化の要因となる。
【0011】
そこで、本発明は、励起用光源として波長安定性に劣る安価なLDなども用いられて、小型化するのにも適し、高速変調も容易に可能にできる構成を有する光波長変換装置、および光波長変換方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記課題を解決するために、本発明の光波長変換装置は、第1の光源と第2の光源(それぞれ、典型的には、コヒーレントで高エネルギー密度の光波を出射できる第1の半導体レーザーと第2の半導体レーザーである)と非線形光学材料を有し、前記2つの光源からの光を非線形光学材料に入射してそれらの光の和周波光を発生させる光波長変換装置であって、非線形光学材料には前記2つの光源からの光とそれらの和周波光とを位相整合させる周期的構造(周期的分極反転構造、周期的屈折率変調構造など)が設けられており、前記第2の光源の発振波長と前記非線形光学材料の温度の少なくとも一方が変化しても和周波光への変換効率を変動させないように、前記2つの光源からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での偏光方向および伝搬方向が決定される如く構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の光波長変換方法は、第1の光源と第2の光源と非線形光学材料を用い、前記2つの光源からの光を非線形光学材料に入射してそれらの光の和周波光を発生させる光波長変換方法であって、非線形光学材料には前記2つの光源からの光とそれらの和周波光とを位相整合させる周期的構造を設け、前記第2の光源の発振波長と前記非線形光学材料の温度の少なくとも一方が変化しても和周波光への変換効率を変動させないように、前記2つの光源からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での偏光方向および伝搬方向を決定することを特徴とする。
【0014】
非線形光学材料として、KTPなどの二軸性結晶を用いた場合を例にとり、本発明の作用・原理を説明する。この説明は、下記の3つの屈折率のうちの2つが等しい一軸性結晶でも本質的に同じである。
【0015】
非線形光学材料中の主軸をx軸、y軸、z軸とする。一般に、二軸性結晶の場合、主軸に対応する屈折率n、n、nがn<n<nになるように軸をとる。さらに、或る伝搬方向(極座標表記したときのz軸との角度をθ、x軸との角度をφと置く)に非線形光学材料中を伝搬する光を考え、第1のLD(光源)からの光の波長およびその光に対する非線形光学材の屈折率を夫々λ、n、第2のLD(光源)からの光の波長およびその光に対する非線形光学材の屈折率を夫々λ、n、それらの和周波の光の波長およびその光に対する非線形光学材の屈折率を夫々λ、nとする。
【0016】
ここで、位相不整合量Δkを
Δk=n3(2π/λ3)-n1(2π/λ1)-n2(2π/λ2) (1)
とおく。さらに、非線形光学材料には、2つのLD(光源)からの光とそれらの和周波光とを位相整合させる周期的分極反転構造などの周期的構造を設けておく。その周期Λは、
Λ=2π/|Δk|=1/|n33-n11-n22| (2)
であればよい。ただし、周期的構造が、周期的に屈折率が変調する構造である場合には、屈折率n等は光伝搬方向に沿って平均化した屈折率とする。
【0017】
二軸性結晶中を或る伝搬方向に伝搬する波長λiの光は、その伝搬方向に応じて2つの基本となる伝搬モードをとり得る。この2つの伝搬モードは異なる偏光方向と異なる屈折率を有している。この伝搬モードをモード1、モード2とし、その屈折率をn( )、n( )とする。ここで、n( )<n( )になるようにモード1、2を決める。
【0018】
波長λ、λ、λの各光がどちらの伝搬モードをとるかは自由に設定できる。具体的には、或る波長λiにおいて、選択したい伝搬モードとなる偏光状態で非線形光学材料中を伝搬させればよい。そして、そのときの屈折率n ( )(i=1,2,3、m(モード)=1,2)に対応させて周期的構造の周期を決めればよい。一般的には、非線形光学定数テンソルの最大成分が光の変換効率に寄与するように各波長において伝搬モードを選択するのが通常であるが、本発明では、和周波光への変換効率を規定するパラメータ(λi、T、θ、φなど)のうちの少なくとも1つが変化しても該変換効率を変動させないように各波長の伝搬モードが選択されている。
【0019】
パラメータの変化による位相ずれδを
δ=|Δk|−2π/Λ (3)
で表す。変化がないときはδ=0である。ここで、伝搬距離をLとすると、変換効率は
sin(δL/2)/(δL/2) (4)
に比例することが一般に知られており、δの絶対値が大きくなるにつれて変換効率は低下する。本発明では、変換効率を規定するパラメータのうちの少なくとも一つが変化してもΔkが変動しないように構成されている。すなわち、典型的には、第2のLD(光源)の波長λに関して
∂Δk/∂λ2=0(概ね0になる意味) (5)
或いは、非線形光学材料の温度Tに関して
∂Δk/∂T=0(概ね0になる意味) (6)
になるように波長λ、λ、λの各光の伝搬モードが選択されている。そのため、λすなわち第2のLD(光源)の波長が変動しても、或いは非線形光学材料の温度(T)が変動しても、Δkおよびδはほとんど変化しないことになり変換効率が安定化する。
【0020】
以上のことを要約すれば、和周波光への変換効率は位相ずれδ(式(3)の如くΔkを含んで定義される)に依存するが、これを規定するパラメータのうちの少なくとも1つが変化してもΔkがほとんど変化しない様に構成して変換効率を安定化させるのである。
【0021】
式(5)では概ね0に等しいとしているが、具体的には、
|∂Δk/∂λ|≦0.05(μm-2
であることが望ましい。例えば、結晶長10mmのKTP結晶、波長1610nm近傍の発振波長(λ)を有する第1の半導体レーザー、波長790nm近傍の発振波長(λ2)を有する第2の半導体レーザーを用いた場合において、∂Δk/∂λを0から0.05(μm-2)まで段階的に変化させたときの、和周波光への変換効率のλ2依存を図2に示す。∂Δk/∂λが増加すると波長帯域(λ2に求められる波長許容度)が狭くなるが、∂Δk/∂λ=0.05(μm-2)の場合でも、半値全幅で10nm以上の波長許容度を有することになり実用上十分である。
【0022】
さらには、
|∂Δk/∂λ|≦0.01(μm-2
を満たせば、10nm以上の波長幅に対して変換効率をほとんど一定とすることができ、実用上さらに有利となる。
【0023】
同様に、式(6)では概ね0に等しいとしているが、具体的には、
|∂Δk/∂T|≦0.5(K-1cm-1
であることが望ましい。この場合、λ2に対して、半値全幅で10℃以上の波長許容度を有することになり実用上十分である。
【0024】
さらには、
|∂Δk/∂T|≦0.1(K-1cm-1
を満たせば、10℃以上の波長幅に対して変換効率をほとんど一定とすることができ、実用上さらに有利となる。
【0025】
この様に、本発明の光波長変換装置ないし方法では、典型的には第2のLD(光源)の波長、或いは非線形光学材料の温度が変動しても、設計からの位相ずれδはほとんど変化しないため、変換効率がほとんど一定である。そのため、励起用の第2のLD(光源)の波長安定性は低くてよく、マルチ縦モードLDであってもよくなり、安価なLDでよいことになる。また、非線形光学材料の温度変化が生じても変換効率はほとんど変動しないので、特別な温度制御装置を用いなくても出力を安定化させることが可能となる。
【0026】
上記基本構成に基づいて、以下の如き形態も可能である。
前記第1のLDはシングル縦モードで発振するLDであり、前記第2のLDはマルチ縦モードで発振するLDである様にできる。更には、前記第1のLDはDFBレーザーあるいはDBRレーザーであり、前記第2のLDはファブリペローレーザー或いはブロードエリアレーザーである様にできる。この構成において、第2の光源を励起用LDとして用いる場合、変換効率が励起光パワーに依存するので、できるだけ高出力なものが望まれるが、高出力かつマルチ縦モードのLDの実現は容易である。
【0027】
前記第1のLDは変調駆動され、前記第2のLDは連続駆動される様に構成され得る。変調駆動させる場合、2つの光源のどちらか一方を変調させればよいが、第1のLDを駆動電流の小さいLDとして、第1のLD側を変調駆動させるのが望ましい。
【0028】
特に、第1のLDをパルス変調駆動した場合、2つのLDからの光が同時に非線形光学結晶に入射しているときのみ出力光が得られるので、LD光の立ち上がり時間、立下り時間に依存して出力光の立ち上がり立下り時間が決まる。そのため、出力光の光パルス幅を正確に把握できるのでレーザー安全基準で規定される安全クラスの決定が容易であり、製品に搭載する際にクラスに応じた的確な安全手段を設けることができる(音響光学変調器などの外部変調器を用いた場合は立ち上がり、立ち下がりが緩やかなアナログ的な変調となり変調光の光パルス幅を正確に把握することは難しい)。
【0029】
また、前記非線形光学材料中に伝搬方向に沿った光導波路が形成されてもよい。すなわち、変換効率は光のパワー密度に依存するので、光導波路構造を用いて断面積を小さくすることでパワー密度を高めてもよい。
【0030】
典型的には、前記非線形光学材料はKTiOPO(KTP)であり得る。KTPを用いて緑色(波長域で500≦λ≦550nm)の出力光を得る場合、式(5)を満たして第2のLD(光源)の波長変化に対して変換効率が変動しないようにするためには、非線形光学定数テンソルdijのd24成分またはd15成分もしくはその両方を用いるように第1、第2のLD(光源)からの光およびそれらの和周波光の伝搬モードを選択すればよく、第1のLD(光源)として1220nm≦λ≦1745nm、第2のLD(光源)として701nm≦λ≦1002nmの波長域から適当なものを選択すればよい。このとき、KTP中の主軸をx軸、y軸、z軸とし、伝搬方向を極座標表記したときのz軸との角度をθ、x軸との角度をφと置いた場合、第1、第2のLD(光源)からの光およびそれらの和周波光の伝搬方向が64°≦θ≦90°、0°≦φ≦90°の範囲になるようにすればよい。特に、1300nmや1550nm近傍の波長域では光通信用として波長の安定なDFBレーザーやDBRレーザーが広く開発されているので、第1のLD(光源)として適当である。また、波長800nm付近のLDは固体励起用として高出力のタイプ(ファブリペローレーザー、ブロードエリアレーザー)が広く開発されており、第2のLD(光源)として適当である。
【0031】
より具体的には、θ=90°、φ=0°であり、第1、第2のLD(光源)からの光および和周波光の波長が、1519nm≦λ≦1745nm、701nm≦λ≦862nm、500nm≦λ≦550nmの範囲にあり、第1のLD(光源)の光の偏光方向がy軸方向であり、第2のLD(光源)の光の偏光方向がz軸方向であり、和周波光の偏光方向がy軸方向であってもよい。この場合、非線形光学定数テンソルのd24成分を用いることになる。
【0032】
また、θ=90°、φ=90°であり、第1、第2のLD(光源)からの光およびその和周波光の波長が、1220nm≦λ≦1421nm、772nm≦λ≦1002nm、500nm≦λ≦550nmの範囲にあり、第1のLD(光源)の光の偏光方向がx軸方向であり、第2のLD(光源)の光の偏光方向がz軸方向であり、和周波光の偏光方向がx軸方向であってもよい。この場合、非線形光学定数テンソルのd15成分を用いることになる。
【0033】
非線形光学材料中の伝搬方向(θ、φ)が0°または90°であるとき、∂Δk/∂θ=0、∂Δk/∂φ=0となり、角度ずれがおきても位相ずれがほとんど発生せず、変換効率はほとんど変化しない。そのため、角度に対する許容度が大きく、非線形光学材料の加工(切断、研磨等)や各光素子のアライメント精度が緩和でき、歩留まりが向上する。
【0034】
加えて、特に非線形光学材料としてKTPを用いる場合、非線形光学材料の温度をTとして、|∂Δk/∂T|≦0.5(K-1cm-1)(より望ましくは≦0.1(K-1cm-1))になるように第1、第2のLD(光源)からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での伝搬方向および偏光方向が決定されていてもよい。この場合、非線形光学材料の温度変化が生じても変換効率はほとんど変動しないので、特別な温度制御装置を用いなくても出力を安定化させることが可能となる。
【0035】
より具体的には、緑色(波長域で500nm≦λ≦550nm)の出力光を得るためには、非線形光学材料(KTP)の非線形光学定数テンソルdijのd24成分またはd15成分もしくはその両方を用いるように第1、第2のLD(光源)からの光およびそれらの和周波光の波長、伝搬方向および偏光方向を決定しておき、第1、第2のLD(光源)からの光およびそれらの和周波光の伝搬方向が79.1°≦θ≦90°、20.4°≦φ≦27.6°の範囲になる様に設定し、第1、第2のLD(光源)からの光およびその和周波光の波長を、1460nm≦λ≦1745nm、701nm≦λ≦882nm、500nm≦λ≦550nmの範囲になるように設定しておけばよい。
【0036】
さらに、非線形光学材料としては、KNbO(KN)、LiNbO(LN)、LiTaO(LT)などを用いてもよい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を具体的な実施例を用いて説明する。
【0038】
(第1の実施例)
以下、本発明の第1の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施例における光波長変換装置の模式的な構成図である。図1において、11、19は第1、第2のLD、13、21はコリメート用のレンズ、15、23は2分の1波長板、27はダイクロイックミラー、29はKTP結晶からなる非線形光学材料、31はKTPに設けられた分極反転領域、33は波長フィルターである。
【0039】
本実施例では、光学研磨したKTP結晶29のyz面を光入出射面としている。ここで、主軸(x、y、z軸)に対応する屈折率n、n、nがn<n<nになるように各軸をとる。光伝搬方向はx軸方向であり、極座標表記ではθ(z軸からの角度)=90°、φ(x軸からの角度)=0°である。
この方向に伝搬する場合、y軸方向に電界成分を持つ伝搬モード1とz軸方向に電界成分を持つ伝搬モード2の2つの伝搬モードが存在する。ここで、第1のLDからの光(波長λ)を伝搬モード1、第2のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2、それらの和周波光(波長λ)を伝搬モード1で伝搬させた場合、上記式(5)を満たす波長範囲が存在する。
【0040】
これを図3に示す。例えば緑色のレーザー光(500nm≦λ≦550nm)出力を得るためには、1519nm≦λ≦1745nm、701nm≦λ≦862nmの範囲で波長を選べば、第2のLD19の波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できる。この場合、KTPの非線形光学定数テンソルのd24成分を用いることになる。
【0041】
本実施例においては、第1のLD11として、発振波長1610nm、出力30mWのDFBレーザーを用い、第2のLD19として、発振波長790nm、出力5Wのファブリペローレーザーを用いた。第1のLD11は、シングル縦モード発振をしており、温度制御を行って波長変動を0.3nm以下に抑えてある。また、第2のLD19は、マルチ縦モード発振をしており、波長幅約3nmを有している。
【0042】
第1のLD11からのLD光17は2分の1波長板15によって偏光方向がKTP結晶29のy軸方向に合うように調整されている。また、第2のLD19からのLD光25は2分の1波長板23によって偏光方向がKTP結晶29のz軸方向に合うように調整されている。ダイクロイックミラー27は、LD光17を透過し、LD光25を反射するように設計されたものを用いている。
【0043】
KTP結晶29には、LD光17、LD光25とそれらの和周波光35(波長530nm)とを位相整合させるように周期(Λ)28.7μmの分極反転構造31が設けられている。結晶長(L)は20mmとした。波長フィルター33は波長530nm近傍の光のみを透過するように設計されており、和周波光35のみを取り出すことができる。
【0044】
その結果、出力1mW、中心波長530nmの緑色の和周波光を得ることができた。波長幅は約1.3nmであり、第2のLD光25の波長幅3nmの全ての波長で和周波変換が起きていることを確認できた。
【0045】
また、第2のLD19の波長を変化させたところ、±10nmの変化で変換効率が2分の1となり、第2のLD19の波長許容幅(半値全幅)は20nmと、実用上十分な値を得ることができた。
【0046】
さらに、第1のLD11を500MHzでパルス変調駆動を行ったところ、それに追随して、500MHzで変調された和周波光35を得ることができた。
【0047】
加えて、本実施例の構成では、KTP結晶の温度許容幅が比較的大きいという特徴があった(すなわち、本実施例は、∂Δk/∂Tが比較的0に近い条件となっている)。実際に結晶温度を変えながら測定したところ、結晶温度20℃付近で変換効率がピークとなり、0℃および28℃で変換効率がピークの2分の1となり、結晶の温度許容幅(半値全幅)は28℃であった。LiNbOを用いた第2高調波発生による波長変換では温度許容幅は1℃・cm程度であるのに比べ、大きい値が得られた。すなわち、本実施例の構成は、結晶温度の温度調節が不要もしくは厳密でない制御でよく、装置を生産する上で有利な構成であることがわかった。なお、本実施例では、第1のLD11として温度制御によって波長変動を抑えたDFBレーザーを用いたが、これに限ったものではなく、例えば、波長を調節するために位相制御領域を設けた複数電極構造のDBRレーザーであってもよい。
【0048】
(第2の実施例)
以下、本発明の第2の実施例について図面を用いて説明する。
図4は、本発明の第2の実施例における光波長変換装置の模式的な構成図である。図4において、111、119は第1、第2のLD、113、121はコリメート用のレンズ、115、123は2分の1波長板、127はダイクロイックミラー、129はKTP結晶からなる非線形光学材料、131はKTPに設けられた分極反転領域、133は波長フィルターである。
【0049】
本実施例では、光学研磨したKTP結晶のxz面を光入出射面としている。伝搬方向はy軸方向であり、極座標表記ではθ=90°、φ=90°である。
この方向に伝搬する場合、x軸方向に電界成分を持つ伝搬モード1とz軸方向に電界成分を持つ伝搬モード2の2つの伝搬モードが存在する。ここで、第1のLD111からの光(波長λ)を伝搬モード1、第2のLD119からの光(波長λ)を伝搬モード2、それらの和周波光(波長λ)を伝搬モード1で伝搬させた場合、上記式(5)を満たす波長範囲が存在する。
【0050】
これを図5に示す。例えば緑色のレーザー光(500nm≦λ≦550nm)出力を得るためには、1220nm≦λ≦1421nm、772nm≦λ≦1002nmの範囲で波長を選べば、第2のLD119の波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できる。この場合、KTPの非線形光学定数テンソルのd15成分を用いることになる。
【0051】
本実施例においては、第1のLD111として、発振波長1303nm、出力30mWのDFBレーザーを用い、第2のLD119として、発振波長893nm、出力5Wのファブリペローレーザーを用いた。第1のLD111は、シングル縦モード発振をしており、温度制御を行って波長変動を0.3nm以下に抑えてある。また、第2のLD119は、マルチ縦モード発振をしており、波長幅約3nmを有している。
【0052】
第1のLD111からのLD光117は2分の1波長板115によって偏光方向がKTP結晶129のx軸方向に合うように調整されている。また、第2のLD119からのLD光125は2分の1波長板123によって偏光方向がKTP結晶129のz軸方向に合うように調整されている。ダイクロイックミラー127は、LD光117を透過し、LD光125を反射するように設計されたものを用いている。
【0053】
KTP結晶129には、LD光117、LD光125とそれらの和周波光135(波長530nm)とを位相整合させるように32.9μmの分極反転構造31が設けられている。結晶長は20mmとした。波長フィルター133は波長530nm近傍の光のみを透過するように設計されており、和周波光135のみを取り出すことができる。
【0054】
その結果、出力0.2mW、中心波長530nmの緑色の和周波光135を得ることができた。波長幅は約1.0nmであり、第2のLD光125の波長幅3nmの全ての波長で和周波変換が起きていることを確認できた。
【0055】
また、第2のLD119の波長を変化させたところ、±12nmの変化で変換効率が2分の1となり、第2のLD119の波長許容幅(半値全幅)は24nmと実用上十分な値を得ることができた。
【0056】
さらに、第1のLD111を500MHzでパルス変調駆動を行ったところ、それに追随して、500MHzで変調された和周波光を得ることができた。
【0057】
本実施例の構成では、結晶129の温度許容幅(半値全幅)は7℃であった。第1の実施例と比べるとこの値は悪くなっているが、それでもLiNbOを用いた第2高調波発生による波長変換の場合と比較すると十分大きい。すなわち、本実施例の構成では、結晶温度の温度調節は厳密でない制御でよい。
【0058】
本実施例により、第1の実施例とは異なる波長範囲でも本発明による光波長変換装置を構成できることが明らかになった。
【0059】
(第3の実施例)
第1、第2の実施例では、光伝搬方向(θ、φ)が0°または90°の場合について示したが、これに限ったものではない。本発明の第3の実施例は、KTP結晶を用いたその他の伝搬方向の構成に関するものである。
【0060】
或る伝搬方向θ、φにおいて、第1のLD光(波長λ)をモード1の偏光方向で伝搬させ、第2のLD光(波長λ)をモード2の偏光方向で伝搬させ、それらの和周波光(波長λ)をモード1の偏光方向で伝搬させた場合の、上記式(5)を満たすLD波長(λ、λ)と伝搬方向(θ、φ)の関係について図7に示す。ここで、λ=530nmとした。図7において、曲線a1はλ=1610nm、λ=790nmの例を示し、曲線b1はλ=1560nm、λ=803nmの例を示し、曲線c1はλ=1447nm、λ=836nmの例を示し、d1はλ=1344nm、λ=875nmの例を示し、e1はλ=1303nm、λ=893nmの例を示す。
【0061】
この図より、64°≦θ≦90°、0°≦φ≦90°、1303nm≦λ≦1610nm、790nm≦λ≦893nmの伝搬方向、波長域から適当なものを選択すれば、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できることがわかる。図7はλ=530nmの場合であり、500nm≦λ≦550nmとλの範囲を広げると、1220nm≦λ≦1745nm、701nm≦λ≦1002nmの波長域となる。よって、第1、第2の実施例に比べ、選択可能なLDの波長範囲が広くなっており、装置を生産する上で有利な波長帯を選んだり、より高性能な条件を選ぶことが可能となる。
【0062】
具体例として、λ=1550nm、λ=808nmとなる2つのLDを選択した場合を以下に示す。これらの波長は光通信用あるいは固体励起用として一般的であり、大量生産による低コスト化が見込める波長帯である。
【0063】
図6を用いて説明する。図6は、本発明の第3の実施例における光波長変換装置の模式的な構成図である。図6において、211、219は第1、第2のLD、213、221はコリメート用のレンズ、215、223は2分の1波長板、227はダイクロイックミラー、229はKTP結晶からなる非線形光学材料、231はKTPに設けられた分極反転領域、233は波長フィルターである。
【0064】
本実施例では、伝搬方向をθ=90°、φ=23.7°と設定して、これに合わせて分極反転構造231を形成し光入出射面を光学研磨したKTP結晶229を用いている。第1のLD211としては、発振波長1550nm、出力30mWのDFBレーザーを用い、第2のLD219としては、発振波長808nm、出力5Wのファブリペローレーザーを用いた。第1のLD211は、シングル縦モード発振をしており、温度制御を行って波長変動を0.3nm以下に抑えてある。また、第2のLD219は、マルチ縦モード発振をしており、波長幅約3nmを有している。
【0065】
第1のLD211からのLD光217は2分の1波長板215によって偏光方向がKTP結晶229のxy面に平行なように調整されている。また、第2のLD219からのLD光225は2分の1波長板223によって偏光方向がKTP結晶229のz軸方向に合うように調整されている。ダイクロイックミラー227は、LD光217を透過し、LD光225を反射するように設計されたものを用いている。
【0066】
KTP結晶229には、LD光217、LD光225とそれらの和周波光235(波長531nm)とを位相整合させるように29.4μmの分極反転構造231が設けられている。結晶長は20mmとした。波長フィルター233は波長531nm近傍の光のみを透過するように設計されており、和周波光235のみを取り出すことができる。
【0067】
このような構成の場合、KTPの非線形光学定数テンソルのd24成分およびd15成分の両方を用いることになる。
【0068】
その結果、出力0.8mW、中心波長531nmの緑色の和周波光を得ることができた。波長幅は約1.25nmであり、第2のLD光225の波長幅3nmの全ての波長で和周波変換が起きていることを確認できた。
【0069】
加えて、本実施例の構成では、KTP結晶229の温度許容幅が非常に大きいという特徴があった(すなわち、本実施例は、結晶温度が変化しても変換効率がほとんど変化しないような後記する第5の実施例にもなっている)。実際に結晶温度を変えながら測定したところ、結晶温度26℃付近で変換効率がピーク、−5℃および55℃で変換効率がピークの2分の1となり、結晶の温度許容幅(半値全幅)は60℃であった。すなわち、本実施例の構成は、結晶温度の温度調節が実質的に不要でよく、装置を生産する上で有利な構成であることがわかった。
【0070】
(第4の実施例)
本発明の第4の実施例は、KTP結晶の温度が変動しても変換効率がほとんど変化しない様な光波長変調装置に関するものである。
【0071】
外観的構成は図6とほぼ同じである。或る伝搬方向θ、φにおいて、第1のLD光(波長λ)をモード1の偏光方向で伝搬させ、第2のLD光(波長λ)をモード2の偏光方向で伝搬させ、それらの和周波光(波長λ)をモード1の偏光方向で伝搬させた場合の、上記式(6)を満たすLD波長(λ、λ)と伝搬方向(θ、φ)の関係例について図8に示す。ここで、λ=530nmとした。
【0072】
図8において、曲線a2はλ=1610nm、λ=790nmの例を示し、曲線b2はλ=1560nm、λ=803nmの例を示し、曲線c2はλ=1447nm、λ=836nmの例を示し、d2はλ=1344nm、λ=875nmの例を示し、d2はλ=1303nm、λ=893nmの例を示し、e2はλ=1303nm、λ=893nmの例を示す。
【0073】
この図より、28.3°≦θ≦90°、19.2°≦φ≦90°、1303nm≦λ≦1610nm、790nm≦λ≦893nmの伝搬方向、波長域から適当なものを選択すれば、KTP結晶の温度が変動しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できることがわかる。図8はλ=530nmの場合であるが、λの範囲を広げると、λとλの波長域も広げることができる。
【0074】
(第5の実施例)
本発明の第5の実施例は、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないと共にKTP結晶の温度が変動しても変換効率がほとんど変化しない様な光波長変調装置に関するものである。既に第3の実施例がこうした光波長変調装置になっているを述べたが、このことを図7と図8のグラフを重ねた図9のグラフを用いて説明する。
【0075】
図9において、或る波長λ、λに対して、波長が変化しても変換効率がほとんど変化しない線(例えばa1)と温度が変動しても変換効率がほとんど変化しない線(例えばa2)の交点は本実施例となる。第3の実施例も交点にあたる例である。ここではλ=530nmの場合であるが、λの範囲を500nm≦λ≦550nmと広げると交点の領域は図10で示すようなものとなる。
【0076】
図10から分かるように、第3の実施例において、第1、第2の半導体レーザーからの光およびそれらの和周波光の伝搬方向が79.1°≦θ≦90°、20.4°≦φ≦27.6°の範囲になる様に設定し、第1、第2の半導体レーザーからの光およびその和周波光の波長を、1460nm≦λ≦1745nm、701nm≦λ≦882nm、500nm≦λ≦550nmの範囲になるように設定すれば、これらの例は図10の領域内にあるもので、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないと共にKTP結晶の温度が変動しても変換効率がほとんど変化しない光波長変調装置となる。
【0077】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例について図面を用いて説明する。
図11は、本発明の第6の実施例における光波長変換装置の模式的な構成図である。構成は第1の実施例とほぼ同様であり、詳細の説明は省略する。同一部材には同一番号を付ける。
【0078】
第1の実施例との違いは、KTP結晶329に、周期的な分極反転構造331および光導波路332が構成されていることである。光導波路332の断面積は約80μmである。光導波路332にLD光17、25を結合させるため、集光レンズ301が設けられている。
【0079】
第1の実施例と比べ、本実施例では、KTP結晶329中でのLD光の光パワー密度が増加している。変換効率は光パワー密度に比例するため光導波路構造とすることで変換効率をを大きくすることができる。
【0080】
本実施例においては、第1のLD11として、発振波長1610nm、出力30mWのDFBレーザーを用い、第2のLD19として、発振波長790nm、出力5Wのファブリペローレーザーを用いて光を入射したところ、出力30mW、中心波長530nmの緑色の和周波光35を得ることができた。
【0081】
また、第2のLD19の波長許容幅(半値全幅)は18nmと実用上十分な値を得ることができた。加えて、本実施例の構成でのKTP結晶329の温度許容幅(半値全幅)は24℃と比較的大きい値を得ることができた。
【0082】
(第7の実施例)
上記した複数の実施例では、非線形光学材料としてKTP結晶を用いた例を示したが、その他の非線形光学材料であってもよい。第7の実施例として、非線形光学材料にKN(KNbO)結晶を用いた場合について説明する。
【0083】
KNは二軸性結晶であり、屈折率n、n、nがn<n<nになるように主軸(x、y、z軸)をとり、極座標表記したときのz軸との角度をθ、x軸との角度をφと置く。伝搬方向をy方向(θ=90°、φ=90°)とし、この方向に伝搬する場合、x軸方向に電界成分を持つ伝搬モード1とz軸方向に電界成分を持つ伝搬モード2の2つの伝搬モードが存在する。ここで、第1のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2、第2のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2、それらの和周波光(波長λ)を伝搬モード1で伝搬させた場合、上記式(5)を満たす波長範囲が存在する。これを図12に示す。例えば緑色のレーザー光(500nm≦λ≦550nm)出力を得るためには、1751nm≦λ≦1939nm、674nm≦λ≦802nmの範囲で波長を選べば、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できる。
【0084】
この場合、KNの非線形光学定数テンソルのd13成分を用いることになる。KNのほうがKTPよりも非線形光学定数が大きいことから、本実施例は、第1の実施例に比べ、同じ変換効率を得るための結晶長(L)を短くできるという利点がある。
【0085】
なお、KN結晶の主軸を屈折率がn>n>nになるようにとる場合もあるが、その場合はそれに対応させて伝搬方向や偏光方向を決めればよい。
【0086】
(第8の実施例)
非線形光学材料としてLN(LiNbO)結晶を用いた場合について説明する。
【0087】
LNは負の一軸性結晶(異常光の屈折率が常光の屈折率より小さい)であり、nが異常光に対する屈折率となるように主軸のz軸をとり、極座標表記したときのz軸との角度をθと置く。一軸性結晶であるため、z軸に垂直な面内では光学的に等価であり角度φは意味を持たない。
【0088】
伝搬方向をz軸に垂直な方向(θ=90°)とする。便宜上この方向をy軸方向とする。この方向に伝搬する場合、z軸方向に電界成分を持つ伝搬モード1(異常光に対応)とz軸に垂直な方向に電界成分を持つ伝搬モード2(常光に対応)の2つの伝搬モードが存在する。ここで、第1のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2(常光)、第2のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2(常光)、それらの和周波光(波長λ)を伝搬モード1(異常光)で伝搬させた場合、上記式(5)を満たす波長範囲が存在する。
【0089】
これを図13に示す。この範囲で波長を選べば、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できる。この場合、LNの非線形光学定数テンソルのd31成分を用いることになる。
【0090】
例えば、第1のLDの波長を1900nm、第2のLDの波長を1300nmとすればよい。この場合、和周波光の波長は772nmとなる。波長1900nm付近の波長帯はガス検知用の光源として有望である。それを和周波変換により短波長化することで、受光素子として一般的なSiフォトディテクターの受光感度の高い領域にシフトさせることができ、受光部の低コスト化が図れる。
【0091】
(第9の実施例)
非線形光学材料としてLT(LiTaO)結晶を用いた場合について説明する。
【0092】
LTは正の一軸性結晶(異常光の屈折率が常光の屈折率より小さい)であり、nが異常光に対する屈折率となるように主軸のz軸をとり、極座標表記したときのz軸との角度をθと置く。一軸性結晶であるため、z軸に垂直な面内では光学的に等価であり角度φは意味を持たない。
【0093】
伝搬方向をz軸に垂直な方向(θ=90°)とする。便宜上この方向をy軸方向とする。この方向に伝搬する場合、z軸方向に電界成分を持つ伝搬モード1(常光に対応)とz軸に垂直な方向に電界成分を持つ伝搬モード2(異常光に対応)の2つの伝搬モードが存在する。ここで、第1のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2(異常光)、第2のLDからの光(波長λ)を伝搬モード2(異常光)、それらの和周波光(波長λ)を伝搬モード2(異常光)で伝搬させた場合、上記式(5)を満たす波長範囲が存在する。
【0094】
これを図14に示す。この範囲で波長を選べば、第2のLDの波長が変化しても変換効率がほとんど変化しないような光波長変換装置を構成できる。この場合、LTの非線形光学定数テンソルのd33成分を用いることになる。
【0095】
ところで、本発明では、上記の複数の実施例で示した非線形光学材料に限定されるものではなく、その他の非線形光学材料であってももちろんよい。また、非線形光学材料はその育成方法によって組成や不純物密度等が異なり、屈折率の波長分散や温度分散が変わることもありえるが、その場合は、その状態に応じて最適な波長、伝搬方向、伝搬モードを選べばよい。加えて、位相整合のための周期的構造として分極反転構造を用いたがこれに限ったものではなく、周期的に屈折率が変調された屈折率変調構造であってもよく、また、その両方を兼ね備えていてもよい。
【0096】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光波長変換装置ないし方法によると、和周波光への変換効率を規定するパラメータのうちの少なくとも1つ(典型的には励起用光源の波長、非線形光学材料の温度)が変化しても変換効率がほとんど変動しないようにできる。したがって、励起用光源として波長安定性が不要で安価なLDなどを用いることが可能となる。また、高効率で小型化に適した高速変調可能な構成を持つ光波長変換装置も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の光波長変換装置の模式的な構成図である。
【図2】変換効率の第2の半導体レーザーの波長依存性を示す図である。
【図3】第1の実施例における2つの半導体レーザーの波長の相関を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例の光波長変換装置の模式的な構成図である。
【図5】第2の実施例における2つの半導体レーザーの波長の相関を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例の光波長変換装置の模式的な構成図である。
【図7】第3の実施例における2つの半導体レーザーの波長に対する伝搬方向を示す図である。
【図8】第4の実施例における2つの半導体レーザーの波長に対する伝搬方向を示す図である。
【図9】第5の実施例を説明するための図7と図8を重ねた図である。
【図10】第5の実施例における2つの半導体レーザーの波長に対する伝搬方向を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施例の光波長変換装置の模式的な構成図である。
【図12】第7の実施例における2つの半導体レーザーの波長の相関を示す図である。
【図13】第8の実施例における2つの半導体レーザーの波長の相関を示す図である。
【図14】第9の実施例における2つの半導体レーザーの波長の相関を示す図である。
【図15】従来の光波長変換装置の模式的な構成図である。
【符号の説明】
11、111、211 第1の半導体レーザー
19、119、219 第2の半導体レーザー
13、21、113、121、213、221 コリメートレンズ
15、23、115、123、215、223 2分の1波長板
17、117、217 第1のLDからの光
25、125、225 第2のLDからの光
27、127、227 ダイクロイックミラー
29、129,229 非線形光学材料
31、131、231 分極反転構造
33、133、233 波長フィルター
35、135、235 和周波光
301 集光レンズ
332 光導波路

Claims (8)

  1. 第1の光源と第2の光源と非線形光学材料を有し、前記2つの光源からの光を非線形光学材料に入射してそれらの光の和周波光を発生させる光波長変換装置であって、非線形光学材料には前記2つの光源からの光とそれらの和周波光とを位相整合させる周期的構造が設けられており、前記第2の光源の発振波長と前記非線形光学材料の温度の少なくとも一方が変化しても和周波光への変換効率を変動させないように、前記2つの光源からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での偏光方向および伝搬方向が決定される如く構成されていることを特徴とする光波長変換装置。
  2. 前記第1の光源と第2の光源がそれぞれ第1の半導体レーザーと第2の半導体レーザーであることを特徴とする請求項に記載の光波長変換装置。
  3. 前記周期的構造が周期的分極反転構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の光波長変換装置。
  4. 前記第1の半導体レーザーはシングル縦モードで発振する半導体レーザーであることを特徴とする請求項に記載の光波長変換装置。
  5. 前記第2の半導体レーザーはマルチ縦モードで発振する半導体レーザーであることを特徴とする請求項に記載の光波長変換装置。
  6. 前記第1の半導体レーザーは変調駆動され、前記第2の半導体レーザーは連続駆動される様に構成されていることを特徴とする請求項に記載の光波長変換装置。
  7. 第1の光源と第2の光源と非線形光学材料を用い、前記2つの光源からの光を非線形光学材料に入射してそれらの光の和周波光を発生させる光波長変換方法であって、非線形光学材料には前記2つの光源からの光とそれらの和周波光とを位相整合させる周期的構造を設け、前記第2の光源の発振波長と前記非線形光学材料の温度の少なくとも一方が変化しても和周波光への変換効率を変動させないように、前記2つの光源からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での偏光方向および伝搬方向を決定することを特徴とする光波長変換方法。
  8. 第1の光源からの光、第2の光源からの光、それらの和周波光の波長を夫々λ、λ、λとし、それらの光に対する非線形光学材料の屈折率(或いは光伝搬方向に沿って平均化した屈折率)を夫々n、n、nとし、位相不整合量Δkを
    Δk=n3(2π/λ3)-n1(2π/λ1)-n2(2π/λ2)
    と定義したときに周期的構造が
    Λ=2π/|Δk|=1/|n33-n11-n22|
    で与えられる周期Λを有するようにさせ、|∂Δk/∂λ|≦0.05(μm-2)になるように第1、第2の光源からの光およびそれらの和周波光の波長、非線形光学材料中での伝搬方向および偏光方向を決定することを特徴とする請求項に記載の光波長変換方法。
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