JP3833140B2 - 射出成形機の型締力設定方法及び型締方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型に対する型締力を設定する射出成形機の型締力設定方法及びこの型締力を金型に付与して型締を行う射出成形機の型締方法に関する。
【0002】
【従来技術及び課題】
従来、型締装置に取付けた金型に所定の型締力を付与して型締を行う射出成形機の型締方法としては、既に、本出願人が提案した特公平4−28531号公報で開示される電動式射出成形機の強力型締方法が知られている。
【0003】
この型締方法は、型締機構の駆動源をサーボモータとし、そのサーボモータの回転力を伝動機構を介して可動盤の推力に変換し、その可動盤の移動による型閉と低圧型締に引続いて強力型締を行うに当たり、強力型締工程におけるサーボモータの出力トルクを、所定の型締力に応じたトルク値に設定してトルク制御を行うとともに、速度設定値を型閉スローダウン工程の速度設定値よりも高く設定するようにしたものであり、これにより、型閉スローダウン工程の最終区間における低圧型締から、強力型締への移行をスムーズに行うことができ、また、トルク制御により型締力の設定も容易で、無段階に調整できるとともに、必要最小限の力により強力型締を行うことができ、しかも、型締工程の時間短縮,金型の長寿命化,消費エネルギの低減等を図ることができる。
【0004】
ところで、必要とする型締力は、金型の種類のみならず、樹脂温度,射出速度,保圧力等の各種成形条件により変化するため、的確な型締力を設定することは容易でない。このため、上述した型締方法をはじめ、従来の型締方法では、予め、型締装置(金型)に見合うサーボモータを選定することにより実機に搭載し、型締(型締力)は、このサーボモータの定格出力(最大出力)で行うようにしたり或いはオペレータの経験等により設定していた。
【0005】
しかし、このような従来の型締方法(型締力設定方法)では、金型に対する最適な型締力が設定されているとは言えず、結局、金型の長寿命化,消費エネルギの低減などの目的を十分に達成できないとともに、サーボモータに過大負荷が加わりやすくなるため、過負荷異常の発生により生産の中断を招きやすいという解決すべき課題が存在した。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する課題を解決したものであり、最適な型締力を容易に設定可能にして、過大な型締力が付加されることに伴う不具合を解消、即ち、金型の長寿命化,消費エネルギの低減,生産の中断回避等を確実かつ十分に達成できるようにした射出成形機の型締力設定方法及び型締方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明に係る射出成形機Mの型締力設定方法は、型締装置Mcに取付けた金型Cに対する型締力Fsを設定するに際し、型締力Fを、最大となる型締力Fmから順次1/N(N>1)に変化させるとともに、各型締力F1,F2,F3…による仮成形を行い、仮成形時における可動型Cmの開きを、当該可動型Cmを加圧する駆動モータ2の逆回転量により検出し、可動型Cmの開きを検出したなら、順次M倍(1<M<N)に変化させる処理を行い、可動型Cmが開いた後、最初に開かなくなった型締力又はこの型締力に所定の余裕を付加した型締力を求め、求めた型締力を正規の型締力Fsとして設定するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合、好適な実施の態様により、最大となる型締力Fmによる仮成形時に、可動型Cmの開きを検出したなら、型締力不足としてエラー処理を行う。
【0009】
一方、本発明に係る射出成形機の型締方法は、型締装置Mcに取付けた金型Cに所定の型締力Fを付与して型締を行うに際し、上述した型締力設定方法により正規の型締力Fsを設定したなら、正規の成形時に、設定された型締力Fsを目標値として型締を行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施例に係る型締力設定方法(型締方法)を実施できる射出成形機Mの構成について、図3を参照して説明する。
【0012】
射出成形機Mは、成形機ベッド11を備え、この成形機ベッド11の上面一側に射出装置Miを配設するとともに、上面他側に型締装置Mcを配設する。型締装置Mcは、成形機ベッド11の上面に離間して固定した固定盤12と圧受盤13を備え、固定盤12と圧受盤13間に架設した四本のタイバー14…には、可動盤15をスライド自在に装填する。そして、固定盤12には固定型Ccを取付けるとともに、可動盤15には可動型Cmを取付ける。この固定型Ccと可動型Cmは金型Cを構成する。
【0013】
また、圧受盤13にはボールねじ機構16を取付ける。ボールねじ機構16は、ボールナット部16nとこのボールナット部16nに螺合するスクリュ部16sからなり、ボールナット部16nの外周部を、圧受盤13に対して回動自在に取付けるとともに、スクリュ部16sの前端を、規制盤17を介して可動盤15の裏面に結合する。この場合、規制盤17の一面側にスクリュ部16sの前端を固定し、かつ規制盤17の他面側に可動盤15を回動自在に結合するとともに、規制盤17の下端は、成形機ベッド11の上面に敷設したガイドレール18にスライド自在に装填する。さらに、ボールナット部16nの後端には、被動プーリ19を取付ける。他方、成形機ベッド11の内部には、サーボモータ2s(駆動モータ2)を配設する。このサーボモータ2sは成形機ベッド11に固定した支持板20に支持される。そして、サーボモータ2sの回転シャフトには、駆動プーリ21を取付けるとともに、この駆動プーリ21と被動プーリ19間にタイミングベルト22を架け渡して回転伝達機構23を構成する。なお、サーボモータ2sには、このサーボモータ2sの回転を検出するロータリエンコーダ2eが付設されている。
【0014】
これにより、サーボモータ2sの回転は、回転伝達機構23を介してボールナット部16nに伝達され、規制盤17により回転が規制されたスクリュ部16sが前進又は後退移動する。この結果、可動盤15が一体となって進退移動し、金型Cに対する型閉,型締及び型開を行うことができる。この場合、スクリュ部16sの回転方向の応力は、規制盤17により吸収され、可動盤15には伝達されない。
【0015】
一方、30は制御系を示す。制御系30は、各種制御及び処理を実行するコントローラ(コンピュータ処理部)31を備え、内蔵するメモリには、本実施例に係る型締力設定方法(型締方法)を実行する処理プログラムPsを格納するとともに、各種設定を行う設定部32を備える。また、コントローラ31の出力ポートは、モータドライバ(サーボアンプ)33,負荷電流を検出する電流検出部34を介してサーボモータ2sに接続するとともに、コントローラ31の入力ポートには、電流検出部34及びロータリエンコーダ2eを接続する。
【0016】
次に、本実施例に係る型締力設定方法について、図2及び図3を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0017】
まず、コントローラ31は、型締力Fとして、最大となる型締力Fmを設定する(ステップS1)。この場合の型締力Fmは、搭載したサーボモータ2sの定格出力に基づいて発生する型締力を設定できる。そして、この型締力Fmによる仮成形(射出成形処理)を行う(ステップS2)。なお、この際の成形条件は、型締力Fmを除いて、正規の成形時における成形条件を用いる。一方、コントローラ31は、この仮成形時における可動型Cmの開きの有無を検出する。即ち、ロータリエンコーダ2eからサーボモータ2sの逆回転量を検出し、一定量以上の逆回転が発生したなら可動型Cmが開いたとして検出する。
【0018】
この際、最大となる型締力Fmを設定したにも拘わらず、可動型Cmの開きを検出したなら、型締力不足として設定処理を中止し、アラーム表示などのエラー処理を行う(ステップS3)。これに対して、可動型Cmの開きを検出しないときは、型締力Fmを、Fm/N=F1(Fn)に設定する(ステップS3,S4)。この場合、Nは、N>1を満たすことを条件とする。実施例ではN=2を用いた。なお、サーボモータ2sの回転トルクは、負荷電流に比例するとともに、型締力Fは、回転トルクにより設定できる。したがって、電流検出部34から検出される負荷電流の大きさに基づいて型締力Fを設定することができ、具体的には、型締力Fを、Fm/Nに設定する際は、型締力Fmを設定した際における負荷電流の1/Nに制御する。
【0019】
そして、この型締力F1による仮成形(射出成形処理)を行い、この際における可動型Cmの開きの有無を検出する(ステップS5,S6)。この際、可動型Cmの開きを検出したなら、型締力F1を、F1×M=F2(Fn)に設定する(ステップS6,S7)。この場合、Mは、1<M<Nを満たすことを条件とする。実施例では、M=1.2を用いた。次いで、この型締力F2による仮成形(射出成形処理)を行い、この際における可動型Cmの開きの有無を検出する(ステップS5,S6)。
【0020】
図2に示す実施例では、可動型Cmが開く最小の型締力(臨界型締力)をFoで示している。したがって、実施例の場合には、型締力F2でも可動型Cmが開くため、さらに、型締力F2を、F2×M=F3(Fn)に設定する(ステップS6,S7)。そして、この型締力F3による仮成形(射出成形処理)を行い、この際における可動型Cmの開きの有無を検出する(ステップS5,S6)。これにより、実施例の場合には、F3>Foとなり、型締力F3では可動型Cmの開きを検出しない。
【0021】
よって、この時点で、前回における可動型Cmの開きの有無を判断する(ステップS8)。実施例の場合には、前回、可動型Cmの開きがあったため、この型締力F3を正規の型締力Fs(設定値)としてコントローラ31に設定する(ステップS9)。この場合、F3−Fo=fが余裕(余裕値)となる。
【0022】
これに対し、ステップS4,S5において、型締力Fm/N=F1(Fn)により仮成形を行った際に、可動型Cmに開きがない場合(ステップS6,S7)は、この時点で、前回における可動型Cmの開きの有無を判断する(ステップS8)。この場合、前回、可動型Cmの開きはないため、さらに、F1/Nを設定する(ステップS10)。そして、この型締力F1/Nによる仮成形(射出成形処理)を行い、この際における可動型Cmの開きの有無を検出する(ステップS5,S6)。
【0023】
このように、型締力Fを、最大となる型締力Fmから順次段階的に変化、即ち、最大となる型締力Fmから、順次1/N=1/2に変化させ、可動型Cmの開きを検出したなら、順次M=1.2倍に変化させるとともに、各型締力F1,F2…による仮成形を行い、仮成形時における可動型Cmの開きを検出することにより、可動型Cmが開いた後、最初に開かなくなった型締力Fを求めれば、求めれた型締力Fが、可動型Cmの開きが生じない最小の型締力又はこの型締力に所定の余裕を付加した型締力となる。よって、コントローラ31は、この型締力Fを正規の型締力Fsとして設定する。なお、実施例は、収束しやすい係数値として、N=2,M=1.2を選定したが、この係数値は、設定部32により任意に設定することができる。また、正規の型締力Fsを求める上述した一連の処理は、コントローラ31により自動で実行される。
【0024】
他方、このような最適な型締力Fsが設定されることにより、正規の成形時には、設定された型締力Fsを目標値として金型Cに対する型締を行う。この際、サーボモータ2sの負荷電流を監視し、設定した型締力Fsに対応する負荷電流となるように制御できる。
【0025】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の手法,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。例えば、実施例は、型締力Fとして負荷電流を検出した場合を示したが、タイバー14…の伸縮度合等から直接型締力Fを検出してもよい。また、実施例の型締装置Miは、直圧式型締装置を例示したが、トグル式型締装置にも同様に適用できる。この場合、型締力Fは、クロスヘッド位置から検出することもできる。
【0026】
【発明の効果】
このように、本発明に係る射出成形機の型締力設定方法(型締方法)は、型締力を、最大となる型締力から順次1/N(N>1)に変化させるとともに、各型締力による仮成形を行い、仮成形時における可動型の開きを、当該可動型を加圧する駆動モータの逆回転量により検出し、可動型の開きを検出したなら、順次M倍(1<M<N)に変化させる処理を行い、可動型が開いた後、最初に開かなくなった型締力又はこの型締力に所定の余裕を付加した型締力を求め、求めた型締力を正規の型締力として設定するようにしたため、最適な型締力を容易に設定でき、もって、過大な型締力が付加されることに伴う不具合を解消し、金型の長寿命化,消費エネルギの低減,生産の中断回避等を確実かつ十分に達成できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る型締力設定方法(型締方法)の処理手順を示すフローチャート、
【図2】同型締力設定方法(型締方法)を実施した際における仮成形回数に対する型締力の変化特性図、
【図3】同型締力設定方法(型締方法)を実施できる射出成形機の構成図、
【符号の説明】
M 射出成形機
Mc 型締装置
C 金型
Cm 可動型
F 型締力
Fm 最大となる型締力
F1… 段階的に変化させた際の型締力
Fs 正規の型締力
2 駆動モータ
Claims (3)
- 型締装置に取付けた金型に対する型締力を設定する射出成形機の型締力設定方法において、型締力を、最大となる型締力から順次1/N(N>1)に変化させるとともに、各型締力による仮成形を行い、仮成形時における可動型の開きを、当該可動型を加圧する駆動モータの逆回転量により検出し、可動型の開きを検出したなら、順次M倍(1<M<N)に変化させる処理を行い、可動型が開いた後、最初に開かなくなった型締力又はこの型締力に所定の余裕を付加した型締力を求め、求めた型締力を正規の型締力として設定することを特徴とする射出成形機の型締力設定方法。
- 最大となる型締力による仮成形時に、可動型の開きを検出したなら、型締力不足としてエラー処理を行うことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の型締力設定方法。
- 型締装置に取付けた金型に所定の型締力を付与して型締を行う射出成形機の型締方法において、予め、型締力を、最大となる型締力から順次1/N(N>1)に変化させるとともに、各型締力による仮成形を行い、仮成形時における可動型の開きを、当該可動型を加圧する駆動モータの逆回転量により検出し、可動型の開きを検出したなら、順次M倍(1<M<N)に変化させる処理を行い、可動型が開いた後、最初に開かなくなった型締力又はこの型締力に所定の余裕を付加した型締力を正規の型締力として設定し、正規の成形時に、設定された型締力を目標値として型締を行うことを特徴とする射出成形機の型締方法。
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