JP3831826B2 - ダム用魚搬送装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
ダム、堰等の河川横断構造物を構築した場合、これを境に上流側下流側の流水が遮断され、魚類の交流が断たれてしまうので、各種魚道が併設されることになる。そして、上流側の水位変動に耐えるように、上流側に調整用の水槽を設けたりする。数mの水位変動に対しては、セクター式魚道が堤体下流側に用意され、堰高の高い堰にはエレベータ式魚道が設置される。本発明は、高堤高のダムであって貯水面の水位変動が大きい場合に設置されるダム用魚搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、河川における遡上魚、降下魚がその時期になると遡上、降下を容易に行えるように魚道を取付けている。魚道は遡上、降下期だけ設置する場合もあるが、堰と併設することで常置される。
【0003】
前述したセクター式魚道は、長尺の魚道本体の下流側に支点を置き、上流側を上下に回動自在にしたフロート付き階段式魚道装置を設置したものであり、上流水位が上昇するとフロートが上昇し、魚道本体の勾配が大きくなって水路が連続されるようになる。
エレベータ式魚道は収容箱をロープによって上流側と下流側との間を往復させ、遡上魚を収容箱に収容し上流側に放流するものである。収容箱を上流側定位置で開放して魚を放流する場合、上流側水位変動に対しては放流位置に調整用水槽を設け、ここから放流されることもあり、また、上流側定位置より直接放流されることもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高堤高のダムにおいては、適正勾配の階段式魚道を設けた場合には魚道の水路が非常に長くなり、エレベータ式魚道にして魚を搬送した方が有用である。
従来のエレベータ式魚道では、堤高40m位まで魚の搬送が可能であり、魚を収容したケージを上昇させ最上位で反転し、最上位近傍に配した調整用水槽に魚を放流する。調整用水槽では貯水池の水面と連絡させ遡上を容易にさせている。
しかしながら、貯水面の水位変動が大きい場合は調整用水槽で変動幅を吸収するには無理がある。また、セクター式魚道では最大6m位の水位変動幅に対応できるが、それ以上の変動の大きいものには適していない。
このほか、本願出願人が提案したエレベータ式魚道(特願平7−242458号公報参照)は、ダムに設けた垂直架構にエンドレスのチェーンを配置し、チェーンに間隔を開けて収容箱を取り付け、魚を搬送するようにしたものである。この構成も最上部に調整水槽が設けられているので貯水面の水位変動が大きい場合には不適である。
また、特願平7−145669号では、高堤高のダム上流側に貯水池に面してエレベータ式魚道がダムの高所まで設けられ、ここからダム下流側に固定式の階段式魚道を設け、降下魚の降下を容易にさせている。しかしながら、階段式魚道がダムの高所まで構築され、魚の遡上が容易とはいえないものであった。
【0005】
本発明は、高堤高のダムにおいて魚の遡上、降下を確実に支援できるようにしたダム用魚搬送装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、ダム堤体の内部下部とダム堤体の下流側とを連絡するトンネル構造の魚道を設け、該魚道上流部を堤体上流面に沿う鉛直通路と連絡して、該鉛直通路に昇降自在に搬送ケージを設け、また、前記鉛直通路に、ダム貯水池に面して鉛直に設けた搬送通路を併設し、さらに、前記鉛直通路上部と前記搬送通路上部とに渡って連絡部を設けて、該連絡部に前記搬送ケージを前記鉛直通路または前記搬送通路に切り替える移動装置を設け、該移動装置により、前記搬送ケージの巻上装置を移動させると共に前記搬送ケージを前記鉛直通路または前記搬送通路にそれぞれ進入させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記搬送ケージの上流側側壁および下流側側壁を開閉自在に設けると共に、前記下流側側壁に水流発生装置の水噴射ノズルを取り付けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載した発明は、ダム堤体の内部下部とダム堤体の下流側とを連絡するトンネル構造の魚道を設け、該魚道上流部を堤体上流面に沿う鉛直通路と連絡して、該鉛直通路に昇降自在に第1の搬送ケージを設け、また、前記鉛直通路に、ダム貯水池に面して鉛直に設けた搬送通路を併設して、該搬送通路に昇降自在に第2の搬送ケージを設け、さらに、前記鉛直通路上部と前記搬送通路上部とに渡って連絡部を設け、また、前記第1の搬送ケージの上流側側壁を、該上流側側壁の下部を軸として前記第1の搬送ケージに回動自在に設けると共に前記鉛直通路の壁面で保持し、また、前記第2の搬送ケージの下流側側壁を、該下流側側壁の下部を軸として前記第2の搬送ケージに回動自在に設けると共に前記搬送通路の壁面で保持し、また、前記鉛直通路の壁面及び前記搬送通路の壁面は、前記連絡部の下部において連続していることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、高堤高のダムの貯水池側に面して操作室を突出させ、その下方に基礎コンクリートの上面を形成させる。操作室下部と基礎コンクリートの上面との間に架構を設け、垂直に鉛直通路と搬送通路を形成させる。搬送通路は鋼製またはコンクリート製でも良いが、鉛直通路は基礎コンクリートの内部を貫通している。鉛直通路および搬送通路の内部は搬送ケージが昇降するもので、鉛直通路の下端は集魚槽を介して下流側から延長したトンネル構造の魚道と連絡する。
【0010】
トンネル構造の魚道は管状水路となり、通路断面は側壁が垂直にされ天井部が丸くされている。魚道の上流側と下流側に高低差がでる場合は内部において階段式魚道とするのが好適である。また、貯水池から水を引き、減勢して通路の流水、呼び水とする。また、集魚槽には魚類追い込み装置を備えているので、遡上してきた魚は魚類追い込み装置により確実に搬送ケージに収容される。
【0011】
搬送ケージは第1の構成として、操作室下部において水平に移動し、鉛直通路または搬送通路の上方に位置させ、いずれの通路にでも昇降可能にさせる。あるいは第2の構成として、鉛直通路および搬送通路に独自に搬送ケージを配設する。
【0012】
第1の構成の搬送ケージは、遡上魚を運搬する場合は、鉛直通路の下端から上昇、操作室で横方に移動、搬送通路を降下という順に動き、鉛直通路の下端では下流側側壁が開口し、搬送通路では上流側側壁が開口する。また、降下魚に対応するために搬送ケージに散水装置と集魚ランプを取り付けることのほか、搬送ケージが貯水池水面に停止しているときに、搬送ケージ内で、水流発生装置の水噴射ノズルから上流側に向けてジェット流を噴射させ魚に刺激を与える。
【0013】
第2の構成において鉛直通路の搬送ケージは、下流側側壁が開口可能にされ、上流側側壁が傾倒して搬送通路へのシュートとなる。また、搬送通路の搬送ケージは、上流側側壁が開口可能にされ、下流側側壁が傾倒して鉛直通路へのシュートとなる。
【0014】
集魚ブロックは搬送通路に支持され、貯水池水面に浮かび、孔開き鋼管からシャワーを流出し、魚を誘導する。また、夜間において集魚用ランプを点灯して集魚効果を上げる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、高堤高のダム1は、下流側が傾斜され上流側は貯水池2に面して垂直壁面を形成した堤体3を備え、基礎コンクリート4が堤体3の上流側下部に打ち込まれている。また、堤体3の上面には操作室5が堤頂道路面と同一レベルに床面を持って設置され、操作室5は貯水池2側に張り出しており、基礎コンクリート4の上方に位置されている。また、堤体3の下部下流側には副ダム6が設けられ、堤体3と副ダム6との間は洪水吐減勢工とされている(図2、図3参照)。
【0016】
堤体3の下部にはトンネル構造の魚道7が設けられ、魚道7の入口は図3に示すように、洪水吐減勢工の上流側に設け(あるいは副ダム6の直下流)、水流方向に対して斜めに接続されており、入口には制水ゲート8(洪水時には閉塞し、また、緊急時に閉塞する。)が配置されている。魚道7に沿って設けた呼び水配管9はその吐出口を洪水吐減勢工の流路に向けられている。魚道7は入口から上流側に斜めに延び、少し進んだ箇所で湾曲させて本流に平行に構築され、上流部で集魚槽10と接続されている。
この魚道7は魚類遡上に適した勾配をもち、間隔をあけて隔壁11が設置されている(図12参照)。また、天井には一定間隔に照明ライト12が付設されている。また、魚道7の内部の水路に沿い、複数の隔壁11の上部に架設して管理用の歩道13が備えられている(図11、図21参照)。なお、水路は円形内張り鋼管で形成することも可能である。
【0017】
集魚槽10の上流端はエレベータ式魚道装置14の搬送ケージ15の移動最下端と底面の高さを同じにして接続されており、搬送ケージ15の最下端の載置箇所に沿う壁面には減勢工16が設けられている。また、エレベータ式魚道装置14は、基礎コンクリート4に穿設され、さらに上方の操作室5に延長された下流側の鉛直通路17と、隣接する上流側の搬送通路18を備えている。
鉛直通路17は円筒鋼板により水中に没する円筒型の密閉構造とし、補強材を装着して水圧、および地震時、動水圧、操作室自重に耐えるようにしている。
搬送通路18は円管鋼材によるトラス構造とし、操作室5から基礎コンクリート4の上面に架構されている。平面スペースは搬送ケージ15の昇降に支障のない大きさとし、搬送通路18の上流構造面には扁平形円管を水平に配し、左右の主柱を連結している。
また、図16に示すように、両通路17、18間は連結材19で固定し、鉛直通路17と堤体上流側壁面3aとの間には、一方を堤体上流側壁面3aに碇着させ、他方は鉛直通路17に支持した受け桁20を配している。
【0018】
また、図1に示すように、搬送ケージ15は操作室5に移動自在に設けた巻上装置21により、鉛直通路17または搬送通路18内を昇降することができるようになっている。このほか、魚道7、集魚槽10に必要とされる水を供給する流水供給装置22が堤体3内に設けられ、上流側の搬送通路18には、搬送通路18の側面架構に係着し、シャワーや照明により魚を誘導する集魚ブロック23が備えられている。
【0019】
次に、各部の詳細を説明する。
図4ないし図6に示すように、操作室5の内壁面には対向して棚24が形成され、棚24にレール25が敷設されている。巻上装置21はレール25に載置され、モータ26により走行自在にされている。また、巻上装置21は駆動モータ27とドラム28を備え、ドラム28に巻回されたワイヤー29により搬送ケージ15を吊り下げている。そして、巻上装置21が鉛直通路17または搬送通路18の上方に停止したときに搬送ケージ15を昇降させるようになっている。
また、搬送ケージ15は鋼板製の箱形を呈しているが、上流側側壁15aおよび下流側側壁15bは鉛直通路17の断面形状に則した湾曲した形状となっており、出来るだけ魚類を多く収容する大きさにしている。そして、搬送ケージ15の上面に滑車30が設けられてワイヤー29が巻回され、上流側側壁15aおよび下流側側壁15bは上下方向に移動自在にされ、開閉装置31がそれぞれの上面枠に取り付けられている。また、図20に示すように、中央天井部に散水装置32および集魚用ランプ33が設けられている。
【0020】
搬送ケージ15には図7ないし図9に示す水流発生装置34を併設している。
搬送ケージ15の下流側側壁15bは前述した通り、上下方向に移動自在にされており、下流側側壁15bの上端に円弧状に水平管35が固定され、水平管35からは噴射管36が垂下し、噴射管36は略水平に、かつ、互いに平行にして水噴射ノズル36aを複数配置されている。また、水平管35にはフレキシブル管37が接続され、その終端は搬送ケージ15の上部に設けた揚水ポンプ37aに接続される。
【0021】
図10、図11に示すように、流水供給装置22は貯水池2の基礎コンクリート4の上端付近(貯水池2の最低水位の下部)に開口する導水管38から貯水池2の水を取水し、供給管39により定量を放出させる。流水供給装置22内部には流量設定弁、シリンダ、圧力調整弁が配置され、放出する魚道流量と呼び水流量の合計量を制御している。
【0022】
一方、鉛直通路17の下端に設けた減勢工16は供給管39と接続されるが、供給管39は図11、図12に示すように、鋼板製の減勢工16の最下部の隔室に延長され端部を閉塞し、供給管39の管周面に複数開けたオリフィス40を介して連通させている。
減勢工16は図11ないし図14に示すように、高さ方向に5〜6段の箱形室を形成しており、各段の天井部には多数のオリフィス40を有する阻流板41が複数設置されている。減勢工16の最上段は貯溜となり切欠部42を設けた側面から水が鉛直通路17の中央部に向かって落下するようになっている。なお、組み付け上、オリフィス40の位置関係はランダムである。また、供給管39に呼び水配管9が接続されている。
【0023】
図12に示すように、トンネル構造の魚道7に連絡されている集魚槽10は略水平に設けられ、左右上端には上下流方向にレール43が敷設され、魚類の追い込み装置44が走行可能に載置されている。追い込み装置44には櫓が組まれ、金網付き格子枠45を上下移動自在に設け、この格子枠45を操作する駆動モータ46が備えられている。なお、図15に示すように、格子枠45の幅はほぼ集魚槽(魚道7)10の幅とされ、駆動モータ46により格子枠45を降下させると集魚槽10の内部が上流側、下流側に区別され、そのまま、水中に入れて走行することができる。
【0024】
次に、搬送通路18に設置する集魚ブロック23について図16ないし、図19を参照して説明する。
集魚ブロック23は鋼製の浮体構造でフロート47により支持され、搬送通路18の主柱に形成したレール48と上下動自在に係合させたものである。主柱と係合する金具49はフロート47の上下左右4か所に設けられ、また、孔開き鋼管50が横方に延設され、装備したポンプ51によって貯水池2の水を吸い上げ、孔開き鋼管50から散水するようになっている。また、集魚用ランプ33が支持枠に取り付けられている。
【0025】
図16に示すように、集魚ブロック23は平面四角状の搬送通路18の両側に設けられ、孔開き鋼管50の中間部はフロート47に支持され、孔開き鋼管50の両方の先部は内側に曲げられて取り付けられている。なお、孔開き鋼管50の先部とフロート47との間に隙間ができるのでここには魚進入防止用金網52が取り付けられている。また、貯水池2側の孔開き鋼管50の先部は折曲部を回動可能に設け、常時、折曲状態にさせている。
【0026】
ところで、貯水池2の規模、魚の棲息状態によっては人工水路53を搬送通路18に限定期間、接続することもある。人工水路53を接続するときは、孔開き鋼管50の先部は中間部と直線状に配置し人工水路53の側面と合わせる。
なお、人工水路53は貯水池2のさらに上流側と搬送通路18との間にフロートで支持されて掛け渡され、要所に水車を備え、ソーラー発電で回転させ、人工水路53の流れを作っている。
【0027】
以上のように構成した魚搬送装置は、ダム1の貯溜水が流水供給装置22によって常に、集魚槽10、魚道7および呼び水用に、水圧力が減勢され適正流速をもつ水流となって供給されている。供給水は供給管39のオリフィス40から減勢工16の最下部室に流入すると共に、供給管39から分岐して呼び水として呼び水配管9に流れる。
最下部室に流入した水は、減勢工16の下部室の天井に形成したオリフィス40を経て、これより上部の阻流板41のオリフィス40を通過し、さらに水圧が減じられ、減勢工16の最上端の切欠部42から溢流水となって集魚槽10に落下させるようにする。そして、集魚槽10に落下した流水はそのまま魚道7に流下される。
呼び水配管9に流れる呼び水は魚道7の出口の水路方向に沿って貯溜水面に放出させ遡上魚の誘導と集魚を行わせる。
【0028】
また、追い込み装置44は下流側に位置して格子枠45は引き上げられ、搬送ケージ15は鉛直通路17の下端に位置させ、搬送ケージ15の下流側側壁(湾曲側壁)15bは上部に引き上げられている。
【0029】
遡上魚は呼び水と魚道7の流水に刺激され、魚道7を遡上し集魚槽10と搬送ケージ15内を遊泳している。この状態が一定時間経過した後、追い込み装置44の格子枠45を水中に降下させ、追い込み装置44を鉛直通路17の下端側に移動し、追い込み装置44により遡上してきた魚類を確実に搬送ケージ15に収容する。
【0030】
次に、搬送ケージ15の下流側側壁15bを水中に降下させることで、魚類を確実に搬送ケージ15に収容する。搬送ケージ15は巻上装置21により、上昇させ、操作室5の直下方の空間で搬送通路18に移行させ、搬送通路18内を降下させる。そして、搬送通路18内の貯水池2の水面水中に定置させ、搬送ケージ15の上流側側壁15aを開ける。このとき、水流発生装置34を作動させてジェット水流を搬送ケージ15の外側に向けて噴射し魚に刺激を与え、搬送ケージ15内の遡上魚を誘い出すようにしている。降下魚においては、水流発生装置34は集魚ブロック23と共に魚を搬送ケージ15内に誘い込む働きをする。なお、水流発生装置34は搬送ケージ15の流水を補給することができる。
この後、搬送ケージ15は逆の手順で鉛直通路17の下限位置に配置し、追い込み装置44は下流側に配置して、再度、同工程を繰り返す。
【0031】
また、図1に示すように、搬送通路18に人工水路53を接続しているが、人工水路53の下流側扉は搬送ケージ15が同じ高さに停止されていない間は閉めておき、搬送ケージ15が停止し、搬送ケージ15の上流側側壁15aを開けたときに開放し、一定時間放置しておく。遡上魚は人工水路53に生じる水流に刺激され、人工水路53を上って行くことになる。
【0032】
次に、降下魚を対象として説明する。
貯水池2の搬送通路18に係着している集魚ブロック23は水面上に浮かび、シャワーを噴射し、水音を発生させることによって魚を刺激させ、搬送通路18付近に魚を誘導する。搬送通路18付近で遊泳している魚は、水面上に停止している搬送ケージ15内の集魚用ランプ33、散水装置32および、水流発生装置34の作動により刺激され搬送ケージ15内に入ってくる。一定時間後、搬送ケージ15の上流側側壁15aを閉め、集魚用ランプ33、散水装置32を停止する。これにより、搬送ケージ15内に降下魚を収容できる。そして、搬送通路18を上昇し、操作室5内を移動し、鉛直通路17を下降させ、最下端で停止させる。ここで搬送ケージ15の下流側側壁15bを開け、降下魚を集魚槽10に放流し魚道7の流れに沿って降下させる。この場合には追い込み装置44は操作しない。この後、逆の手順で搬送ケージ15を貯水池2の水面に配置する。
【0033】
本案の魚搬送装置は高落差を消化するため、堤体3内部で緩い傾斜のトンネル構造の魚道7と、エレベータ式魚道を組み合わせたものであり、また、貯水池2の下位から魚道7用の水を確保するので、減勢工16を使用して十分な水量を得ているものである。また、上流貯水面の水位変動はエレベータ式魚道により対処できるものであり、高落差を有するダム1であっても、遡上魚、降下魚を効率よく搬送することができる。
従来の発電専用ダム、多目的の比較的中堤高ダムにおいて、下流から魚道勾配をもって、必要高さ地点まで延々と魚道を構築するものは水位変動に不利であり、また、セクター式魚道で水位変動に追従しようとすると、変動幅に相当する高さの魚道水路を設ける必要があり、変動幅6m程度しか対応できず、本案の優位性は既に述べた通りである。
【0034】
また、従来、河川横断構造物に付設される魚道の流水は構造物前面の貯水面水位より水位変動に追従するゲートを介して開水路流として魚道に流入されているが、本案の場合は貯水位に変動があっても一定流量を取水し流下させる装置を有し、装置から導水した圧力水は魚道7の最上上流部に付設した減勢工16に導入し、減勢された後は通常の流水として魚道7に流出できる。
【0035】
次に、鉛直通路17および搬送通路18にそれぞれ搬送ケージ15を設ける構成について図22ないし図24を参照して説明する。
図23に示すように、操作室5には巻上装置21が2基、設けられており、それぞれ搬送ケージ15を吊り下げている。2つの搬送ケージ15の間には案内壁54が設けられ、案内壁54の先端は丸くなり、操作室5の直下方に連絡部としての空間を形成させ鉛直通路17と搬送通路18とを連通させるようになっている。搬送ケージ15の平面形状は角形であり、案内壁54側に三方扉55が設けられ、反対側に側壁扉15cが配され開閉装置31が設けられている。
【0036】
三方扉55は下端を軸支(ヒンジ56)し案内壁54側に倒れるようになっており、倒れ面の縁部は直角に曲げられ凹状を呈し、倒れ面先部にはローラ57および水密ゴム58が設けられ、案内壁54に設けたレール59と接触させている。また、搬送ケージ15の水槽上部は三方扉55側を除き三方に金網を設けている。また、搬送ケージ15は、両通路17、18の横方に形成したガイド溝60に、下部に取り付けたローラ61を接合させるので昇降時の揺動を防いでいる。
【0037】
上記の構成によって、搬送ケージ15が遡上魚を収容して鉛直通路17を上昇する場合には、図23に示すように、搬送通路18の搬送ケージ(第2の搬送ケージ)15を案内壁54の先部に待機させておく。そして、鉛直通路17の搬送ケージ(第1の搬送ケージ)15が案内壁54の先部に近づくと、ローラ57および水密ゴム58が円弧状に形成されたレール59に導かれて変移し、搬送ケージ15の三方扉55が傾倒する。これにより、収容された魚は水と一緒に搬送通路18の搬送ケージ15に向かって放流される。搬送通路18の搬送ケージ15に遡上魚が収容されれば、この搬送ケージ15を降下することで、遡上魚を上流に放流することができる。このとき、水密ゴム58は搬送ケージ15内の水を放流するときに架構内に漏れないようにし、金網は魚類受け渡しのときの魚の搬送ケージ15外への逸脱を防ぐものである。
【0038】
集魚ブロック23は前述したエレベータ式魚道装置14の搬送通路18に設置して魚を刺激させ、特に降下魚に対して有効であり、孔開き鋼管50からフラッシング散水を行い水面に音をたてることにより集魚作用を起こさせる。また、夜間は集魚用ランプ33を点灯することにより降下魚を誘導することができる。
【0039】
集魚ブロック23の他の構成として、図19に示すように、基礎コンクリート4の張り出し部に鉛直通路17と搬送通路18を壁面に沿って並設した場合、鉛直通路17と搬送通路18との接続側には、孔開き鋼管50の先部のみを装着した集魚ブロック23を配することになる。
【0040】
また、図25に示すように、基礎コンクリート4の張り出し部を横方に長く作り、鉛直通路17を鋼管製にして搬送通路18と壁面に沿って並設する構成でもよく、より安定した構造にし、施工経費を安価にすることができる。また、図26、図27に示すように、鋼材、鋼管で製作した鉛直通路17をコンクリートで固める構造でも良く、また、鉛直通路17および、搬送通路18は状況に応じ鋼製またはコンクリート製にすることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、堤体内に設けたトンネル構造の魚道とエレベータ式魚道により魚搬送装置を構成したものであるので、上流水位の変動に対応して魚の遡上および、降下をし易くすることができるようになった。また、堤内魚道において入口から集魚槽までを円形の内張り鋼板で魚道を形成することにより、施工の際に施工費を低減できるものである。そして、高ダムの堤高に対応するための設備費は、従来の施工方法に比べ低減でき、しかも、魚道(魚搬送装置)は堤体に内蔵され、かつ、堤体上流壁面に沿う形状となるので、周辺構造物と比較して違和感がなく、景観を損なわないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による実施例の魚搬送装置を備えた高ダムの側断面図である。
【図2】 図1に示す高ダムの上流側からみた正面図である。
【図3】 図1に示す高ダムの平面図である。
【図4】 実施例の魚搬送装置の搬送ケージの移動手段を示す側断面図である。
【図5】 図4に示す搬送ケージの移動手段の側断面図である。
【図6】 図4に示す搬送ケージの移動手段の平面図である。
【図7】 搬送ケージに装着する水流発生装置の正面図である。
【図8】 図7に示す水流発生装置の側断面図である。
【図9】 図7に示す水流発生装置の平面図である。
【図10】 実施例の流水供給装置の断面図である。
【図11】 図10に示す流水供給装置の平面図である。
【図12】 実施例の堤体の集魚槽付近の断面図である。
【図13】 減勢工の正面図である。
【図14】 図13に示す減勢工の側断面図である。
【図15】 実施例の集魚槽付近の横断断面図である。
【図16】 実施例のエレベータ式魚道の平面図である。
【図17】 図16に示す集魚ブロックの側面図である。
【図18】 図16に示す集魚ブロックの正面図である。
【図19】 実施例の他の集魚ブロックの平面図である。
【図20】 実施例のエレベータ式魚道の搬送ケージの側面図である。
【図21】 実施例のトンネル構造の魚道の断面図である。
【図22】 実施例のエレベータ式魚道の搬送ケージの支持構造を示す平面図である。
【図23】 実施例のエレベータ式魚道の操作室付近の断面図である。
【図24】 実施例のエレベータ式魚道の支持構造を示す平面図である。
【図25】 エレベータ式魚道の配置を示す平面図である。
【図26】 エレベータ式魚道の他の配置を示す平面図である。
【図27】 エレベータ式魚道の他の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ダム,3 堤体,7 魚道,10 集魚槽,15 搬送ケージ,17 鉛直通路,18 搬送通路,21 巻上装置,22 流水供給装置,23 集魚ブロック,25 レール(移動装置),32 散水装置,33 集魚用ランプ,47 フロート,50 孔開き鋼管,54 案内壁,56 ヒンジ
Claims (3)
- ダム堤体の内部下部とダム堤体の下流側とを連絡するトンネル構造の魚道を設け、該魚道上流部を堤体上流面に沿う鉛直通路と連絡して、該鉛直通路に昇降自在に搬送ケージを設け、また、前記鉛直通路に、ダム貯水池に面して鉛直に設けた搬送通路を併設し、さらに、前記鉛直通路上部と前記搬送通路上部とに渡って連絡部を設けて、該連絡部に前記搬送ケージを前記鉛直通路または前記搬送通路に切り替える移動装置を設け、該移動装置により、前記搬送ケージの巻上装置を移動させると共に前記搬送ケージを前記鉛直通路または前記搬送通路にそれぞれ進入させるようにしたことを特徴とするダム用魚搬送装置。
- 前記搬送ケージの上流側側壁および下流側側壁を開閉自在に設けると共に、前記下流側側壁に水流発生装置の水噴射ノズルを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のダム用魚搬送装置。
- ダム堤体の内部下部とダム堤体の下流側とを連絡するトンネル構造の魚道を設け、該魚道上流部を堤体上流面に沿う鉛直通路と連絡して、該鉛直通路に昇降自在に第1の搬送ケージを設け、また、前記鉛直通路に、ダム貯水池に面して鉛直に設けた搬送通路を併設して、該搬送通路に昇降自在に第2の搬送ケージを設け、さらに、前記鉛直通路上部と前記搬送通路上部とに渡って連絡部を設け、また、前記第1の搬送ケージの上流側側壁を、該上流側側壁の下部を軸として前記第1の搬送ケージに回動自在に設けると共に前記鉛直通路の壁面で保持し、また、前記第2の搬送ケージの下流側側壁を、該下流側側壁の下部を軸として前記第2の搬送ケージに回動自在に設けると共に前記搬送通路の壁面で保持し、また、前記鉛直通路の壁面及び前記搬送通路の壁面は、前記連絡部の下部において連続していることを特徴とするダム用魚搬送装置。
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