JP3831433B2 - 透明導電膜およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明導電膜、特に耐熱性および耐プラズマ性の低い基材上に成膜される低抵抗の透明導電膜と、このような透明導電膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、種々の電子部品、画像表示装置等に透明導電膜が使用されており、この透明導電膜は酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびその合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の成膜方法により形成されていた。
【0003】
上記の成膜方法のうち、スパッタリング法では、例えば、ITO酸化物ターゲット材をArイオンでスパッタして基材上にITO膜を形成するものである。このようなITO膜は、成膜時の基材温度および成膜後のアニール温度を200〜300℃として結晶化させることにより低抵抗化がなされ、パターニング特性が付与されていた。
【0004】
しかし、透明導電膜の成膜対象である基材のなかには、成膜時の加熱やプラズマの影響等が原因で水分や有機成分等のガスを発生する脱ガス現象を生じるもの、あるいは、変質や劣化、熱分解等を生じるものがある。基材からの脱ガスがある場合、発生するガスによって透明導電膜中に結晶粒塊が生じて粗密な膜となり、透明導電膜の低抵抗化が阻害される。また、例えば、透明導電膜の成膜対象が液晶ディスプレイ用のカラーフィルタを備えた基板の場合、透明導電膜に生じた上記の結晶粒塊が原因で、透明導電膜の表面と接する液晶の配向状態に悪影響が生じるという問題がある。このため、上述のような脱ガスを生じる基材に対しては、予めガスバリアー性の薄膜を形成し、この薄膜上に透明導電膜を形成することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のガスバリアー性の薄膜は、珪素酸化物等の無機薄膜や合成樹脂等の有機薄膜のような電気絶縁性の薄膜であり、このようなガスバリアー性薄膜を形成することにより、透明導電膜の製造工程が複雑になり、製造コストの上昇を来たしていた。さらに、ガスバリアー性の薄膜を設ける場合あっても、高温で透明導電膜を形成することによって耐熱性の低い基材に変質、劣化等(例えば、カラーフィルタの色差変化)が生じることは避けられない。
【0006】
これに対応するために、基材を150℃以下の温度としてスパッタリング法による透明導電膜の形成を行い、その後、熱処理(160〜250℃)を施して結晶化する方法が提案されている(特開平1−259320号)。しかし、このような透明導電膜は、工程が煩雑であり、また、プラズマの影響等による基材からの脱ガス、すなわち、質量分析計で測定するとマスナンバー68以上のガス発生が生じ、形成された膜は粒塊構造を有した膜になっており、比抵抗の低い透明導電膜は得られないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、加熱やプラズマにより変質、劣化、熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性および耐プラズマ性の低い基材上に成膜される低抵抗で透明性が高くパターニング特性に優れる透明導電膜と、このような透明導電膜を簡便に形成することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の透明導電膜は、結晶粒を有し、X線回折法における(222)面のピーク強度I1 と(400)面のピーク強度I2 との比I1 /I2 が6〜100の範囲であるとともに、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmの範囲であり、移動度が30〜50cm2 /Vsecの範囲であり、波長550nmの光に対する透過率が80〜100%の範囲である酸化インジウムスズ膜からなるような構成とした。
【0009】
また、本発明の透明導電膜は、透明導電膜の表面における100Å以上の大きさの溝の面積占有率が15%以下であるような構成とした。
【0010】
本発明の透明導電膜の製造方法は、フォロカソード型イオンプレーティング法を用い、蒸着源と基材との間にプラズマを形成し、かつ、前記基材を前記プラズマに曝されない位置に配置して、前記基材上に酸化インジウムスズ膜を成膜するような構成とした。
【0012】
このような本発明では、基材がプラズマに曝されて悪影響を受けることなく透明導電膜が反応性蒸着法によって成膜されるので、基材が加熱により変質、劣化、熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性および耐プラズマ性の低い基材であっても、成膜された透明導電膜は結晶粒を有する緻密で表面平坦性に優れたものであり、これにより、膜構造中に空孔が生じないため、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmと極めて低いものとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
【0014】
本発明の透明導電膜は結晶粒を有するものであり、この透明導電膜のX線回折法における(222)面のピーク強度I1 と(400)面のピーク強度I2 との比I1 /I2 は5以上、好ましくは6〜100であり、非結晶性ではなく明確な結晶構造をなすものである。上記の結晶粒は、平均粒子径が300〜1000Å程度の結晶性の粒子であるが、結晶粒塊は存在せず、透明導電膜の表面は平坦である。また、上記のピーク強度比I1 /I2 が5未満であると、透明導電膜の結晶性が不十分となり、下記のような良好な比抵抗および移動度が得られない。ここで、本発明では、X線回折のピーク強度比I1 /I2 は、バックグランドを削除したX線回折曲線の(222)面のピーク高さと(400)面のピーク高さの比より算出するものである。
【0015】
本発明の透明導電膜には、上記の結晶粒に伴う粒界、および結晶粒の配向方向がある領域ごとに異なるようなドメインが存在しない。そして、結晶粒は隙間なく密に詰まった状態であるため、膜構造中には空孔が生じておらず、これによって、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmと極めて低いものとなっている。また、本発明の透明導電膜は、その移動度が30〜50cm2 /Vsecの範囲であり、かつ、波長550nmの光に対する透過率が80〜100%である。したがって、本発明の透明導電膜は、低抵抗で透明性の高い透明導電膜である。
【0016】
さらに、本発明の透明導電膜の表面は、大きさが100Å以上の溝の面積占有率が15%以下であり、極めて平坦な表面状態を有している。尚、透明導電膜の表面における100Å以上の溝の面積占有率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察(倍率10万倍)で、7cm×7cmの面積内で1mm以上の溝が占める面積の総和を求めて算出する。
【0017】
このような本発明の透明導電膜は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、および、その合金(AZO(AlドープのZnO膜))、NESA膜(SnO2 )等で形成された薄膜であり、厚みは50〜10000Å、好ましくは500〜3000Å程度とすることができる。
【0018】
次に、本発明の透明導電膜の製造方法を説明する。
【0019】
本発明の透明導電膜の製造方法は、上述のような本発明の透明導電膜を、加熱やプラズマの影響により変質、劣化、熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性および耐プラズマ性の低い基材上に簡便に成膜できるものであり、反応性蒸着法を用い、蒸着源と基材との間にプラズマを形成し、かつ、このプラズマに曝される基材に悪影響が生じないような条件で基材上に透明導電膜を成膜するものである。
【0020】
ここで、本発明における耐熱性および耐プラズマ性の低い基材とは、真空中200℃加熱あるいはArプラズマ雰囲気中に基材を曝したとき、質量分析計でマスナンバー68以上に該当する出力の分圧比が1×10-11 Torr以上を呈するような基材を意味する。また、基材がプラズマに曝されて悪影響が生じないような条件とは、基材をプラズマ雰囲気中に曝したとき、質量分析計でマスナンバー68以上に該当する出力の分圧比が1×10-11 Torr未満を呈するような条件を意味する。
【0021】
本発明の透明導電膜の製造方法に使用する反応性蒸着法としては、フォロカソード型イオンプレーティング法、DC型イオンプレーティング法、RF型イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0022】
ここで、フォロカソード型イオンプレーティング法について、図1を参照して説明する。図1は横形フォロカソード型イオンプレーティング装置の一例を示す構成図である。図1において、フォロカソード型イオンプレーティング装置1は、排気口2aと反応ガス供給口2bを設けた真空チャンバー2と、この真空チャンバー2内の下部に配設された陽極(ハース)3、真空チャンバー2内の上部に配設された基材ホルダー4、真空チャンバー2の所定位置(図示例では真空チャンバー左側壁)に配設されたプラズマガン5、陰極6、中間電極7および補助コイル8を備えている。また、陽極3の下方には永久磁石9が配設されている。
【0023】
このようなフォロカソード型イオンプレーティング装置1を用いたイオンプレーティング法による透明導電膜の形成は以下のように行われる。まず、陽極3に蒸発源11を配置し、また透明導電膜の被形成体である基材12を基材ホルダー4に保持し、真空チャンバー2内部を10-6〜10-5Torr程度の真空度にする。この状態で、アルゴン(Ar)等のプラズマ用ガスをプラズマガン5に導入する。そして、プラズマガン5で発生したプラズマビーム15は、補助コイル8により形成される磁界によって真空チャンバー2内に引き出され、陽極3下方の永久磁石9が作る磁界によって蒸発源11に収束し、この蒸発源11を加熱する。その結果、加熱された部分の蒸発源11は蒸発し、プラズマビーム15の領域を通過する際に一部電離し、基材ホルダー4に保持されている基材12に到達して表面に膜を形成する。
【0024】
上述のような本発明の透明導電膜の製造方法では、基材12はプラズマビーム15に曝されない位置に配置されていることを特徴としている。これは、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタのような加熱により熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性および耐プラズマ性の低い基材をプラズマに曝した場合、基材からの脱ガスが発生して、成膜したITO膜に結晶粒塊が生じて粗密な膜となり低抵抗化が阻害されるという事実を見いだしたことに起因している。すなわち、本発明の透明導電膜の製造方法では、透明導電膜の被形成体である基材の温度を、従来のスパッタリング法によるITO膜の形成時に比べて大幅に低い温度に設定することができ、プラズマに基材を曝さない状態でイオンプレーティング法により透明導電膜を形成するので、加熱による変質、劣化、熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性の低い基材に対しても、この基材の耐熱性温度内で透明導電膜を形成することが可能である。そして、本発明では、基材の脱ガスを有効に阻止しながら透明導電膜を形成するので、従来のガスバリアー性の薄膜上に透明導電膜を形成する2層成膜のような煩雑な工程が不要となり、生産性が大幅に向上する。また、従来の2層成膜による透明導電膜に比べてパターニング特性に優れた透明導電膜が得られる。
【0025】
尚、本発明の透明導電膜の製造方法における反応性蒸着法に用いるイオンプレーティング装置は、蒸発源と基材との間に形成したプラズマに基材が曝されても、上述の条件を満足するような構成のイオンプレーティング装置であればよく、図1に示されるものに限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
厚み1.1mmのガラス基板(コーニング社製 7059)と、このガラス基板の一方の面に顔料分散法により液晶ディスプレイ用のカラーフィルタを形成したカラーフィルタ基板とを準備した。
【0027】
次に、図1に示されるようなフォロカソード型イオンプレーティング装置の基材ホルダー上に上記のカラーフィルタ基板あるいはガラス基板を保持した。また、陽極(ハース)に蒸発源として蒸着材料(In2 O3 −SnO2 燒結体(SnO2 5重量%))を載置した。その後、下記の成膜条件で成膜を行い、基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(試料1、比較試料1)を作製した。
【0028】
また、比較として、基材温度を60℃とした他は、上記の試料1と同様にして基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(比較試料2、3)を作製した。
【0029】
さらに、比較として、上記と同様のガラス板およびカラーフィルタ基板を用い、下記の成膜条件でスパッタリング法により成膜を行って基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(比較試料4〜7)を作製した。
【0030】
(成膜条件)
・雰囲気ガス : Ar=100sccm,O2 =2sccm
・雰囲気圧力 : 6×10-3Torr
・導入パワー : DC2.5W/cm2
・成膜レート : 720Å/分
・基板温度 : 60℃、190℃
・ターゲット材: In2 O3 −SnO2 燒結体(SnO2 10重量%)
さらに、比較として、基材ホルダーをプラズマ放電内に位置するようにした他は上記の試料1、2と同様(基材温度190℃)にして、基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(比較試料8、9)を作製した。尚、この場合、基材は質量分析計(四重極質量分析計(SKKバキュームエンジニアリング(株)製 DAQ200/DXM))でマスナンバー61,91(レジスト)、129,172(顔料)、190(開始剤)に該当する出力(分圧比1×10-11 〜10×10-11 Torrに相当)を呈した。本実施例で用いた材料では、このような質量分析計での出力となったが、使用する材料が変わればマスナンバーも当然変化する。但し、樹脂や顔料が用いられる基材は、マスナンバー68以上のものが検出される。
【0031】
上記のように作製した透明導電膜(試料1および比較試料1〜9)について、結晶構造、比抵抗、移動度、透過率および配向膜適性を測定、評価して結果を下記の表1に示した。
【0032】
(結晶構造の評価)
X線回折法により、結晶性を示す2θ=30.08°(222)の回折ピーク強度I1 および2θ=35.12°(400)の回折ピーク強度I2 の比I1 /I2 を算出した。
【0033】
X線回折測定条件
・測定装置 :粉末X線回折装置(理学電気(株)製)
(広角ゴニオメータ使用、CuKα線、2θ/θスキャン)
・管電圧 :40Kv
・管電流 :200mA
・サンプリング幅:0.020°
・走査速度 :4°/分
・発散スリット :1°
・散乱スリット :1°
・受光スリット :0.30nm
(比抵抗値の測定)
三菱油化(株)製表面抵抗計LORESTA−FPを用いてシート抵抗Rs (Ω/□)を測定し、式(1)に示すように透明導電膜の厚みd(Å)をかけて比抵抗ρ(Ω・cm)を求めた。
【0034】
ρ=d×Rs …(1)
(移動度の測定)
Van der Pauw法によって作製して算出した。
【0035】
(透過率の測定)
ガラス基板上に形成した透明導電膜について、波長550nmでの透過率を測定した。
【0036】
(配向膜適性の評価)
ポリイミド塗布用の溶剤であるn−メチルプロテイド(NMP)を滴下してカラーフィルタの色材が流出するか否か評価した。
【0037】
【0038】
【表1】
表1に示されるように、カラーフィルタ基板上に形成した透明導電膜(試料1)は、ガラス板上に形成した透明導電膜(比較試料1)と同様にX線回折ピーク強度比I1 /I2 が5以上であり、結晶性の良好な透明導電膜であった。そして、この本発明の透明導電膜は、比抵抗が3.5×10-4Ω・cm以下、移動度が30cm2 /Vsec以上であり、かつ、波長550nmにおける透過率が80%以上(比較試料1において)であり、電気的特性および透明性ともに優れた透明導電膜であることが確認された。さらに、配向膜特性も良好であり、液晶ディスプレイ用の透明導電膜として実用に供し得るものであった。
【0039】
これに対して、イオンプレーティング法や従来のスパッタリング法により比較的低い基材温度で形成された透明導電膜(比較試料2、3、4、6)は、X線回折ピーク強度I1 、I2 が極めて小さく非結晶性に近いものであり、比抵抗、移動度は不十分なものであった。また、比較的高い基材温度で形成された透明導電膜(比較試料5、7)のうち、カラーフィルタ基板上に形成された透明導電膜(比較試料8)は、X線回折ピーク強度比I1 /I2 が5未満で結晶配向度が違い構造の異なるものであり、このため比抵抗が3.5×10-4Ω・cmを上回り、移動度が30cm2 /Vsec未満で、電気的特性に劣り、かつ、配向膜特性も悪く、液晶ディスプレイ用の透明導電膜として実用に供し得ないものであった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、本発明の透明導電膜の製造方法により下記の条件で基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(試料I、比較試料I)を作製した。尚、この透明導電膜(試料I、比較試料I)は、実施例1の透明導電膜(試料1、比較試料1)に相当する。
【0040】
比較として、実施例1と同様のガラス板およびカラーフィルタ基板を用い、下記の成膜条件でスパッタリング法により成膜を行い、基材上に厚さ1500Åの透明導電膜(比較試料II、III )を作製した。
【0041】
(成膜条件)
・雰囲気ガス : Ar=100sccm,O2 =2sccm
・雰囲気圧力 : 6×10-3Torr
・導入パワー : DC2.5W/cm2
・成膜レート : 720Å/分
・基板温度 : 165℃
・ターゲット材: In2 O3 −SnO2 燒結体(SnO2 10重量%)
さらに、比較として、実施例1と同様のカラーフィルタ基板を用い、下記の成膜条件でスパッタリング法により成膜を行い、その後、熱処理(200℃、30分間)を行って基材上に厚さ2400Åの透明導電膜(比較試料IV)を作製した。
【0042】
(成膜条件)
・雰囲気ガス : Ar=100sccm,O2 =2sccm
・雰囲気圧力 : 6×10-3Torr
・導入パワー : DC2.5W/cm2
・成膜レート : 720Å/分
・基板温度 : 60℃
・ターゲット材: In2 O3 −SnO2 燒結体(SnO2 10重量%)
上記のように作製した透明導電膜(試料Iおよび比較試料I〜IV)について、表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面状態を撮影(倍率10万倍)し、結果を図2乃至図6に示した。また、実施例1と同様にして比抵抗、透過率および配向膜適性を測定、評価して結果を下記の表2に示した。
【0043】
【表2】
図2に示されるカラーフィルタ基板上に形成した透明導電膜(試料I)は、図3に示されるガラス板上に形成した透明導電膜(比較試料I)と同様に、結晶粒が密に存在して表面が平坦であり、結晶粒の配向方法がある領域ごとに異なるようなドメインが存在せず、かつ、表2に示されるようにX線回折ピーク強度比I1 /I2 が5以上であり、結晶性の良好な透明導電膜であった。そして、これらの本発明の透明導電膜は、比抵抗が4.0×10-4Ω・cm以下、波長550nmにおける透過率が80%以上であり、電気的特性および透明性ともに優れた透明導電膜であることが確認された。さらに、配向膜特性も良好であり、液晶ディスプレイ用の透明導電膜として実用に供し得るものであった。
【0044】
これに対して、従来のスパッタリング法によりカラーフィルタ基板上に形成された透明導電膜(比較試料III )は、成膜時にカラーフィルタから発生したガスの影響により図5に示されるように結晶粒塊が生じて粗密な膜となり、このため、X線回折ピーク強度比I1 /I2 が極めて小さく、比抵抗は不十分なものであった。
【0045】
一方、比較的低い基材温度でカラーフィルタ基板上に形成された後、熱処理を施した透明導電膜(比較試料IV)は、成膜時の脱ガスの発生がなく、図6に示されるように結晶粒塊が生じて粗密な膜ではあるものの、熱処理により比抵抗および透過率が大幅に向上している。しかし、この透明導電膜(比較試料IV)は配向膜特性が悪く、液晶ディスプレイ用の透明導電膜として実用に供し得ないものであった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば基材が加熱やプラズマの影響により変質、劣化、熱分解を生じたり脱ガスを生じるような耐熱性の低い基材であっても、この基材がプラズマに曝されることなく透明導電膜がフォロカソード型イオンプレーティング法によって成膜されるので、基材の変質、劣化、熱分解等、および基材からの脱ガスが防止され、成膜された透明導電膜は、結晶粒を有しX線回折法における(222)面のピーク強度I1 と(400)面のピーク強度I2 との比I1 /I2 が5以上である緻密で表面平坦性に優れ膜構造中に空孔がほとんどない透明導電膜であるため、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmと極めて低いものとなる。また、本発明の透明導電膜は単層構造であり1種のエッチング剤によるパターニングが可能であり、パターニング特性に優れた透明導電膜が得られる。さらに、本発明の透明導電膜は、表面平坦性が優れるため、液晶ディスプレイ等における配向膜適性を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明導電膜の製造方法に使用できる横形フォロカソード型イオンプレーティング装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の透明導電膜を走査型電子顕微鏡で観察した図面代用写真である。
【図3】ガラス基板上に形成した透明導電膜を走査型電子顕微鏡で観察した図面代用写真である。
【図4】従来の透明導電膜を走査型電子顕微鏡で観察した図面代用写真である。
【図5】従来の透明導電膜を走査型電子顕微鏡で観察した図面代用写真である。
【図6】従来の透明導電膜を走査型電子顕微鏡で観察した図面代用写真である。
【符号の説明】
1…フォロカソード型イオンプレーティング装置
2…真空チャンバー
3…陽極(ハース)
4…基材ホルダー
5…プラズマガン
6…陰極
7…中間電極
8…補助コイル
11…蒸発源
12…基材
15…プラズマビーム
Claims (3)
- 耐熱性および耐プラズマ性の低い基材上に設けられる透明導電膜において、
結晶粒を有し、X線回折法における(222)面のピーク強度I1 と(400)面のピーク強度I2 との比I1 /I2 が6〜100の範囲であるとともに、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmの範囲であり、移動度が30〜50cm2 /Vsecの範囲であり、波長550nmの光に対する透過率が80〜100%の範囲である酸化インジウムスズ膜からなることを特徴とする透明導電膜。 - 透明導電膜の表面における100Å以上の大きさの溝の面積占有率は、15%以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- フォロカソード型イオンプレーティング法を用い、蒸着源と基材との間にプラズマを形成し、かつ、前記基材を前記プラズマに曝されない位置に配置して、前記基材上に酸化インジウムスズ膜を成膜することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
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