JP3830233B2 - アクリル酸エステル化合物およびその用途 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル酸エステル化合物、該化合物を重合して得られるポリマー、ならびに、該ポリマーからなる光学部品に関する。
本発明の光学部品は、透明性、機械強度、耐熱性が良好であり、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基盤、ピックアップレンズ、液晶セル用プラスチック基盤、プリズム等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる透明性ポリマーの開発が盛んに行われている。
透明性ポリマーとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等は、透明性、機械物性(例えば、耐衝撃性など)に優れ、且つ、加工性、成形性に優れることから、無機ガラスの代替分野、例えば、自動車の透明部品やレンズ等に使用されている。
【0003】
一方、レーザー光を用いて、音声、画像、文字等の情報を記録、再生する光ディスクは、近年、急速に用途が拡大している。しかしながら、情報記録媒体として使用される光ディスクにおいては、ディスク本体をレーザー光線が通過するために透明であることは勿論のこと、情報の読みとり誤差を少なくするために光学的均質性が強く求められている。すなわち、例えば、従来より公知のポリマー(例えば、ポリカーボネートなど)を用いた場合には、ディスク基盤成形時の樹脂の冷却および流動過程において生じた熱応力、分子配向、ガラス転移点付近の容積変化等による残留応力が原因となり、レーザー光線がディスク基盤を通過する際に複屈折が生じる。この複屈折に起因する光学的不均一性が大きいことは、例えば、記録された情報の読みとり誤りが生じるなど、光ディスク基盤等の光学部品にとっては致命的欠陥となる。このような光ディスク基盤を初めとする光学部品においては、より高度な光学特性、すなわち、低複屈折性を有し、且つ、透明性、耐熱性等に優れた材料が要求されている。
【0004】
上述した問題を解決するための方法の一つとして、スピロビインダノール単独またはスピロビインダノールとビスフェノールAとの共重合型ポリカーボネートのような、スピロ化合物を用いた低複屈折性ポリカーボネートが開示されている(特開昭63−314235号公報)。しかしながら、前者のポリカーボネートは低複屈折であるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また後者のポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により、透明性および機械強度は向上するものの、複屈折率が大きくなり、光学部品としての使用範囲が限定されてしまう問題点があり、これらの相反する問題点を解決することが強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、透明性、機械強度、耐熱性が良好であり、且つ、低複屈折性を有する光学部品を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に関して鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一般式(1)(化2)で表されるアクリル酸エステル化合物に関し、また、該アクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマー、ならびに該ポリマーからなる光学部品に関する。
【0007】
【化2】
(式中、R1 はアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、R2 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、
mは0〜3の整数を表し、nは0〜20の整数を表す)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物において、R1 はアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数6〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基または炭素数6〜12のアラルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基、アリル基またはベンジル基であり、該置換基R1 として、メチル基、アリル基またはベンジル基は特に好ましい。
【0009】
該置換基R1 としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、3,3−ジメチルプロペニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−フェニルエチル基などが例示される。
【0010】
一般式(1)において、R2 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。
また、R2 のアルキル基またはアルコキシ基中のアルキル基は置換基を有していてもよく、例えば、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0011】
一般式(1)のR2 は、好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐アルキル基、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐アルコキシ基あるいは塩素原子であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基または塩素原子である。特に好ましくは、R2 はメチル基または塩素原子である。
【0012】
R2 の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、2−メトキシエトキシエチル基、2−エトキシエトキシエチル基、2−フェノキシメチル基、2−フェノキシエトキシエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、
【0013】
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、2−メトキシエトキシエトキシ基、2−フェノキシメトキシ基、2−フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、
ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)において、R3 およびR4 はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)において、mは0〜3の整数であり、好ましくは、0〜2の整数であり、整数0は特に好ましい。
また、一般式(1)において、nは0〜20の整数であり、好ましくは、0〜10の整数であり、寄り好ましくは、0〜4の整数であり、さらに好ましくは、0〜2の整数であり、整数0または1は特に好ましい。
【0015】
一般式(1)で表される化合物において、置換基R1 O−基の置換位置は4位、5位、6位または7位であり、もう一方のアクリル酸エステル基を含む置換基の置換位置は、4’位、5’位、6’位または7’位である。
これらの内、好ましいアクリル酸エステル化合物は、一般式(1−a)〜(1−d)で表される化合物であり、より好ましくは、一般式(1−a)、(1−b)または(1−c)(化3)で表される化合物であり、これらの構造の内、一般式(1−a)で表される化合物は特に好ましい。
【0016】
【化3】
(式中、R1 、R2 、mおよびnは前記に同じ)
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の具体例としては、下記の第1表(表1〜12)中に示された化合物が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
【表7】
【0024】
【表8】
【0025】
【表9】
【0026】
【表10】
【0027】
【表11】
【0028】
【表12】
【0029】
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は、反応それ自体は公知の方法により製造される。すなわち、代表的な方法としては、下記一般式(2)(化4)で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(3)(化4)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物、酸臭化物など)とを反応させることにより製造される。
【0030】
【化4】
(式中、R1 、R2 、R3 、mおよびnは前記に同じ)
【0031】
原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物は、反応それ自体は公知の方法により製造される。すなわち、下記一般式(4)(化5)で表されるスピロビインダノール誘導体を各種公知のアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル類、パラトルエンスルホン酸アルキルエステル類、リン酸アルキルエステル類など)と作用させることにより、上記一般式(2)においてn=0の化合物は製造される。
【0032】
【化5】
(式中、R2 およびmは前記に同じ)
【0033】
該化合物をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、2−ブロモエタノール、2−クロロエタノール、2−ブロモ−1−プロパノール等のβ−ハロヒドリン類と反応させることにより、上記一般式(2)においてn=1以上の化合物が好適に製造される。
また、原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物は、反応条件によっては、一般式(2)においてnが異なるヒドロキシ化合物の混合物となることがあるが、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーの原料として使用する場合、分離を行うこと無く使用することができる。
【0034】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造方法についてさらに詳しく述べる。
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(3)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物とを反応させる方法としては、公知の方法、例えば、J.Org.Chem.,45,5364(1980)、Eur.Polym.J.,19,399(1983)に記載の方法と同様の方法を用いることができる。例えば、撹拌下、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物中に一般式(3)で表されるアクリル酸類の酸ハロゲン化物を滴下する方法、あるいは、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類との脱水反応などの方法が挙げられる。
【0035】
上記反応の際、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物に対して作用させる一般式(3)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物の使用量は、特に制限するものではないが、通常、ヒドロキシ化合物1モルに対して、0.5〜6モルであり、好ましくは、1〜3モルであり、より好ましくは、1〜2モルである。
反応は、無溶媒で行なってもよく、あるいは反応に対して不活性溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を併用しても差し支えない。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃の範囲であり、好ましくは0〜100℃である。反応時間は反応温度等の条件により左右されるが、通常、数分から数十時間である。
【0036】
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を製造する際に、反応中の重合を防止するために、重合禁止剤を使用することは好ましいことであり、好ましい重合禁止剤としては、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン等を例示することができる。重合禁止剤の使用量は特に制限はないが、反応原料混合物に対して、通常、0.01〜5%であり、好ましくは、0.05〜3%である。
【0037】
一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類の酸ハロゲン化物との反応により本発明のアクリル酸エステル化合物を製造する際には、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素など)が副生するので、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等の有機塩基、あるいは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム等の無機塩基を脱ハロゲン化水素剤として使用してもよい。かかる脱ハロゲン化水素剤の使用量としては、特に制限はないが、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、0.5〜6モルであり、好ましくは、1〜3モルであり、より好ましくは、1〜2モルである。
【0038】
一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類の脱水反応により、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を製造する際に、公知の各種エステル化触媒を用いることは好ましいことである。該触媒としては、例えば、鉱酸(例えば、塩酸、硫酸)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム)等を挙げることができる。かかる触媒の使用量は、特に制限するものではないが、通常、反応原料混合物に対して、好ましくは、0.01〜50重量%、好ましくは、0.1〜30重量%である。また反応の進行を促進するため、副生した水を系外に除去することは好ましいことであり、前記溶媒のうち水と共沸する溶媒(例えば、ベンゼン、トルエンなど)を用いたり、モレキュラーシーブス等の脱水剤を用いることができる。
【0039】
反応終了後、生成した本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は、公知の後処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、分液など)により後処理されて単離される。また、さらに必要に応じて、公知の方法(例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭処理など)により精製して、高純度の化合物として単離することも可能である。
原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物において、nが異なるヒドロキシ化合物からなる混合物を用いると、一般式(1)中のnが異なるアクリル酸エステル化合物の混合物が製造されるが、勿論、該混合物も本発明のポリマーあるいは光学部品の原料モノマーとして使用する上で問題ない。
【0040】
次に、本発明のアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーについて詳述する。
本発明のポリマーは、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーであり、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物から誘導される下記式(1−A)(化6)で表される構造単位を必須構造単位として含有するポリマーである。
【0041】
【化6】
【0042】
本発明のポリマーは、一般式(1−A)で表される構造単位以外の他の構造単位を含有していてもよい。この場合、ポリマーの全構造単位中に占める一般式(1−A)で表される構造単位の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲であれば特に制限はないが、好ましくは、5モル%以上であり、より好ましくは、10モル%以上であり、さらに好ましくは、20モル%以上である。前記一般式(1−A)で表される構造単位以外の他の構造単位としては、後で詳しく述べるが公知の各種モノマー(例えば、不飽和脂肪酸エステル類、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体、不飽和脂肪酸またはその誘導体等など)から誘導される構造単位を挙げることができる。
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して本発明のポリマーを製造する際には、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は1種類単独を使用してもよく、あるいは、異なる2種類以上の該アクリル酸エステル化合物を使用してもよい。
【0043】
以下、本発明のポリマーを製造する方法についてさらに詳しく述べる。
本発明のポリマーを製造する際、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合する方法としては、特に限定はなく、公知の各種重合方法、例えば、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、転位重合が適用できる。代表的には、本発明のポリマーは、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を、重合開始剤の存在下で塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の方法により重合することにより製造される。
【0044】
かかる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサヒドロフタレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトシキ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒、ならびに、過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤との組み合わせによるレドックス触媒物等、ラジカル重合に使用される公知の各種重合開始剤を挙げることができる。
重合開始剤の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して0.001〜30重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0045】
重合の際には、分子量調節などの目的のために必要に応じて重合調節剤、例えば、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマーなどを添加してもよい。
かかる重合調節剤の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して0.001〜10重量%であり、好ましくは0.001〜1重量%である。
重合温度は、特に制限するものではないが、通常、0〜200℃であり、好ましくは50〜120℃である。
【0046】
本発明のポリマーを溶液重合により製造する際に使用する溶媒としては、重合反応に対して不活性な溶媒であれば特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロルエチレン等が例示される。
本発明のポリマーを懸濁重合により製造する際には、水性媒体中で行われ、懸濁剤および必要に応じて懸濁助剤が使用される。かかる懸濁剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物が挙げられる。かかる懸濁剤の使用量は、特に制限はないが、通常、水溶性高分子の場合は一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜1重量%であり、難溶性無機化合物の場合は一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜1重量%である。
懸濁助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の陰イオン界面活性剤を挙げることができ、懸濁剤として難溶性無機物質を使用する場合には、該懸濁助剤を併用することが好ましい。
該懸濁剤の使用量は、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜0.02重量%である。
【0047】
さらに、本発明のポリマーを製造する際に、所望の効果を損なわない範囲において、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物以外に該アクリル酸エステル誘導体と重合可能な各種公知のモノマー(例えば、不飽和脂肪酸エステル類、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体、不飽和脂肪酸またはその誘導体等など)を併用してもよい。この場合、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物と併用する各種公知のモノマーを合わせた総重量における、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の含有量は、5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上である。
【0048】
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物と併用し得るモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸フルオロメチル、アクリル酸フルオロエチル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸ブロモエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルオロベンジル、アクリル酸クロロベンジル、アクリル酸ブロモベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸フルオロフェニル、アクリル酸クロロフェニル、アクリル酸ブロモフェニル、
アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエステル、アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル類、アクリル酸シアノアルキルエステル類などのアクリル酸エステル誘導体、
【0049】
メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチルシクロヘキシル、メタアクリル酸ボルニル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸アダマンチル、メタアクリル酸フルオロメチル、メタアクリル酸フルオロエチル、メタアクリル酸クロロエチル、メタアクリル酸ブロモエチル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸フルオロベンジル、メタアクリル酸クロロベンジル、メタアクリル酸ブロモベンジル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ナフチル、メタアクリル酸フルオロフェニル、メタアクリル酸クロロフェニル、メタアクリル酸ブロモフェニル、
メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ジエチレングリコールエステル、メタアクリル酸ポリエチレングリコールエステル、メタアクリル酸アルキルアミノアルキルエステル類、メタアクリル酸シアノアルキルエステル類などのメタアクリル酸エステル誘導体、
α−フルオロアクリル酸エステル、α−クロロアクリル酸エステル、α−シアノアクリル酸エステルなどのα−置換アクリル酸エステル誘導体等で例示される不飽和脂肪酸エステル類;
【0050】
スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロロスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレン等で例示される芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等で例示されるシアノ化ビニル化合物;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等で例示される不飽和二塩基酸およびその誘導体;
【0051】
アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのアクリル酸アミド誘導体、
N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミドなどのメタアクリル酸アミド誘導体、
アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸スズ、アクリル酸亜鉛、メタアクリル酸カルシウム、メタアクリル酸バリウム、メタアクリル酸鉛、メタアクリル酸スズ、メタアクリル酸亜鉛などのアクリル酸またはメタアクリル酸の金属塩、
アクリル酸、メタアクリル酸等で例示される不飽和脂肪酸およびその誘導体などを挙げられる。
【0052】
これらのモノマーの中でも、光学部品としての使用する際の諸性能(例えば、複屈折性、耐熱性、吸水性など)を考慮すると、アクリル酸エステル誘導体、メタアクリル酸エステル誘導体の併用が好ましく、メタアクリル酸アルキルエステル(例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチルシクロヘキシル、メタアクリル酸ボルニル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸アダマンチル、メタアクリル酸フルオロメチル、メタアクリル酸フルオロエチル、メタアクリル酸クロロエチル、メタアクリル酸ブロモエチルなど)が特に好ましい。
【0053】
本発明のポリマーは、その重量平均分子量については特に限定するものではないが、耐熱性、機械物性等の観点から、重量平均分子量が10000〜2000000であることが好ましく、より好ましくは、20000〜1000000である。
本発明のポリマーは、所望の効果を損なわない範囲で、他のポリマーと併用して成形材料として使用されることも可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリエステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0054】
また、本発明のポリマーに対して、該ポリマーの製造時または製造後に公知の方法で、顔料、染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、有機ハロゲン化合物、アルカリ金属スルホン酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、TiO2 等の公知の添加剤を添加して使用してもよい。
本発明のポリマーは単独または他のポリマーと混合した状態で、所望により上記の添加剤を添加して、成形材料として機械部品、光ディスク等の情報記録媒体の基盤、カメラや眼鏡のレンズ等の光学材料、ガラス代替の建材等に成形される。
【0055】
本発明のポリマーは熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、フィラー等への含浸等が可能であり、さらには、圧縮成形、溶液キャスティングなど、各種公知の成形方法により容易に成形可能である。
本発明のポリマーからなる光学部品としては、光ディスク基盤、光磁気ディスク基盤などの光記録媒体基盤、ピックアップレンズなどの光学レンズ、液晶セル用プラスチック基盤、プリズム等の各種光学部品を挙げることができる。これらの光学部品は、上述したような従来より公知の各種成形方法(代表的には、射出成形、射出圧縮成形など)により、好適に製造することができる、
このようにして得られる本発明の光学部品は、低複屈折性を有し、諸性能(例えば、光ディスクとしての光記録特性、耐久性など)に優れており、非常に有用である。
【0056】
【実施例】
以下、参考製造例および実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの参考製造例および実施例に限定されるものではない。
参考製造例1〔下記式(2−1)で表されるヒドロキシ化合物の製造〕
反応容器に6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン61.9g(0.20mol)、炭酸カリウム13.8g(0.10mol)およびN,N,−ジメチルホルムアミド70gを装入した後、80℃で加熱、攪拌している混合物に対して、パラトルエンスルホン酸メチル37.3g(0.20mol)を30分かけて滴下した。さらに10時間、加熱、攪拌を続けた後、反応混合物を水1200gに排出して、析出した固体を濾過して集めた。得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的の下記式(2−1)(化7)で表される6−ヒドロキシ−6’−メトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン25.8gを無色結晶として得た。
・融点; 98〜99℃
・FD−MS; 322(M+ )
【0057】
【化7】
【0058】
参考製造例2〔下記式(2−2)で表されるヒドロキシ化合物の製造〕
反応容器に6−ヒドロキシ−6’−メトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン322g(1.00mol)、エチレンカーボネート96.9g(1.10mol)、炭酸カリウム3.5g(25mmol)および混合キシレン200gを装入し、10時間加熱還流した。
冷却後、生じた固体を濾取し、メタノール−水混合系で再結晶して精製し、目的の下記式(2−2)(化8)で表されるヒドロキシ化合物330g(収率90%)を白色固体として得た。
・FD−MS; 366(M+ )
【0059】
【化8】
【0060】
実施例1〔式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造〕
上記参考製造例1で合成した式(2−1)で表される化合物32.2g(0.10mol)、トリエチルアミン10.1g(0.10mol)、トルエン300gおよび重合禁止剤として4−メトキシフェノール0.01gを、反応容器に装入して、得られた混合溶液に対して、アクリル酸クロリド9.9g(0.10mol)を氷冷下、30分かけて滴下した。さらに、25℃で6時間、攪拌した後、反応溶液を濾過して副生したトリエチルアミン塩酸を除いた。濾液を3回水洗した後、溶媒を減圧留去して目的とする式(1−1)(化9)で表される化合物を無色の粘性のある液体として得た。
・ 1H−NMR δ(CDCl3 );
1.2〜1.5(m,12H)、2.2〜2.4(m,4H)、
3.6(s,3H)、5.6〜7.4(m,9H)
・FD−MS; 376(M+ )
【0061】
【化9】
【0062】
実施例2〔式(1−2)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造〕
実施例1において、アクリル酸クロリドを使用する代わりメタアクリル酸クロリドを使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして、下記式(1−2)(化10)で表される化合物を製造した。
・ 1H−NMR δ(CDCl3 );
1.2〜1.5(m,12H)、2.0(s,3H)、
2.2〜2.4(m,4H)、3.6(s,3H)、
5.6〜6.2(m,2H)、6.2〜7.4(m,6H)
・FD−MS; 390(M+ )
【0063】
【化10】
【0064】
実施例3〜実施例6
実施例1に記載の方法と同様な方法により、下記第2表(表13)に示したアクリル酸エステル化合物を製造した。
【0065】
【表13】
【0066】
以下の実施例において、上記実施例1〜実施例6において製造した一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を用いて重合を行い、本発明のポリマーを製造した。なお、実施例および比較例で製造したポリマーの分子量の測定は下記の方法により行った。
〔分子量の測定〕
各ポリマーの0.2重量%クロロホルム溶液をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)[昭和電工(株)製、Sysytem−11]により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。尚、測定値は標準ポリスチレン換算の値である。
【0067】
実施例7〔式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物の重合〕
前記式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300g、メタアクリル酸メチル700g、ラウロイルパーオキサイド4.0g、n−オクチルメルカプタン2.60gを混合溶解してモノマー溶液を得た。攪拌機および冷却器を備えた5リットルセパラブルフラスコに、懸濁剤としてリン酸カルシウム10重量%懸濁液83g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004g、硫酸ナトリウム1gおよび純水2400gを加えて攪拌し、懸濁溶液とした。窒素雰囲気下、該懸濁溶液に対して上記モノマー溶液を加え、攪拌回転数240rpmにて65℃で4時間、反応させ、さらに98℃にて2時間、反応させた。生成した微粒固体を水洗、脱水した後、乾燥して、目的とするポリマーを得た。重量平均分子量は240000であった。
走査熱量計(DSC−3100、マックサイエンス社製)で、0℃から300℃の温度範囲で示差熱分析を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は150℃であった。
【0068】
実施例8
実施例1において、モノマーとして式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300gおよびメタアクリル酸メチル700gを使用する代わりに、前記式(1−2)で表されるアクリル酸エステル化合物1000gを使用する以外は、実施例1に記載の方法に従って行い、目的とするポリマーを得た。
重量平均分子量; 200000
実施例9〜12〔アクリル酸エステル化合物の重合〕
実施例1〜6で得られたアクリル酸エステル化合物および公知の各種材料を用い、第3表(表14)に示す組成(重量部)のモノマー混合物を得、実施例7に記載の方法と同様な方法により、ポリマーの製造を行った。
【0069】
【表14】
【0070】
比較例1
実施例1において、モノマーとして式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300gおよびメタアクリル酸メチル700gを使用する代わりに、メタアクリル酸メチル1000gを使用する以外は、実施例1に記載の方法に従って重合して、メタアクリル酸メチルのポリマー(ポリメタアクリル酸メチル)を製造した。重量平均分子量は240000であり、ガラス転移温度(Tg)は105℃であった。
【0071】
比較例2
ビスフェノールAとホスゲンから、常法(界面重合法)に従い、公知のポリカーボネートを製造した。すなわち、
内容量2リットルのバッフル付きフラスコに、格子翼を備えた撹拌機、還流冷却管、ホスゲン吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコに、114g(0.50モル)のビスフェノールA、56g(1.40モル)の水酸化ナトリウム、2.58gの4−tert−ブチルフェノールおよび、600ミリリットルの脱イオン水を装入し、水溶液を調製した。その後、該水溶液に600ミリリットルのジクロロメタンを添加し、2相混合物とし、この2相混合物を撹拌しながら、該混合物に59.4g(0.60モル)の塩化カルボニルを9.9g/分の供給速度で供給した。塩化カルボニルの供給終了後、0.08gのトリエチルアミンを反応混合物に添加し、さらに90分間撹拌混合した。その後撹拌を停止し、反応混合物を分液し、ジクロロメタン相を塩酸水溶液により中和し、脱イオン水を使用して、水性洗浄液に電界質が実質的に検出されなくなるまで洗浄した。その後、ジクロロメタン相から、ジクロロメタンを蒸発留去することにより、固体状態の芳香族ポリカーボネートを得た。重量平均分子量は51000であった。
【0072】
比較例3
特開昭63−314235号公報、実施例7に記載の方法に従い、ビスフェノールAとスピロビインダノールとの共重合ポリカーボネートを製造した。重量平均分子量は44800であった。
【0073】
各実施例および比較例で製造したポリマーを用い、プレス成形して厚さ1.2mmの板状試験片を作製し、この試験片について以下に示した項目の評価試験を行った。結果を下記の第4表(表15)に示した。
〔評価方法〕
(1)外観:試験片の透明性、光学的面状態を目視観察、評価した。
○:ひび割れ、クラック、面荒れ等が無く、無色透明で面状態の良いもの
×:ひび割れ、クラック、面荒れ等が観察されるもの
(2)全光線透過率(以下、透過率と称する):
ASTMD−1003法に従った。
(3)複屈折:エリプソメーターによって測定した。
(4)耐熱性:
120℃で熱風乾燥基中に4時間放置した後、試験片を取り出して、肉眼で観察し評価した。
○:成形物の着色、表面の歪、クラック等が無いもの
×:成形物の着色、表面の歪、クラック等が観察されるもの
【0074】
【表15】
第4表から明らかなように、本発明のポリマーを成形して得られる成形物(シート)は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有していることが判る。
【0075】
実施例13(光ディスクの作製および評価)
実施例7で製造したポリマーを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度250℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、280℃にて射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた基盤の中心部を内径15mmとなるように打ち抜いてドーナツ状円盤とした。次に、アルミの真空蒸着を行い、片面に、厚み600オングストロームの反射層を設けた。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した。
ビットエラーレートは、波長780nm、線速2m/sec、0.8mWのレーザー光を用いて、記録の読みとりのエラーの発生率を測定した。
結果を下記の第5表(表16)に示した。
【0076】
実施例14〜18
実施例8〜実施例12で製造したポリマーを用いる以外は、実施例13に記載の方法と同様な方法により、光ディスクを作製して評価を行った。
結果を下記の第5表に示した。
【0077】
比較例4
上記比較例2で製造したポリカーボネートを使用する以外は、実施例13と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、下記の第5表に示した。
【0078】
比較例5
上記比較例3で製造したポリカーボネートを使用する以外は、上記実施例13と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0079】
【表16】
第5表から明らかなように、本発明の光ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマー(ポリカーボネート)を用いて得られる光ディスクと比較して、BERが向上している。
【0080】
実施例19(光磁気ディスクの製造および記録特性の評価)
実施例7において得られたポリマーをペレタイザー付き押出機(シリンダー温度250℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた基盤上に、Tb23.5、Fe64.2、Co12.3(原子%)の合金ターゲットを用いてスパッタリング装置〔RFスパッタリング装置、日本真空(株)製〕中で厚み1000オングストロームの光磁気記録層を形成した。この記録膜上に、厚み1000オングストロームの無機ガラスの保護膜を、上記と同じスパッタリング装置を用いて形成した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率率を測定した。
尚、CN比は、書き込みパワー7mW、読みとりパワー1mW、キャリア周波数1MHz、分解能帯域幅30KHzで測定を行った。
CN保持率は、初期CN比に対する60℃、90%RH条件下で30日経過後のCN比の低下度を百分率(%)で示した。
結果を下記の第6表(表17)に示した。
【0081】
実施例20〜24
実施例8〜実施例12で製造したポリマーを使用する以外は、上記実施例19と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた各光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN変化率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0082】
比較例6
比較例2で製造したポリマー(ポリカーボネート)を使用する以外は、上記実施例と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0083】
比較例7
比較例3で製造したポリマー(ポリカーボネート)を使用する以外は、上記実施例と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0084】
【表17】
第6表から明らかなように、本発明のポリマーを用いて得られる光磁気ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマー(ポリカーボネート)より得られる光磁気ディスクと比較して、CN比およびBERが向上しており、またCN保持率が改良されていることが判る。
【0085】
【発明の効果】
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーは、従来より知られているポリマー(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネートなど)と比較して透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基盤、ピックアップレンズなどの光学部品として非常に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル酸エステル化合物、該化合物を重合して得られるポリマー、ならびに、該ポリマーからなる光学部品に関する。
本発明の光学部品は、透明性、機械強度、耐熱性が良好であり、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基盤、ピックアップレンズ、液晶セル用プラスチック基盤、プリズム等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる透明性ポリマーの開発が盛んに行われている。
透明性ポリマーとして、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等は、透明性、機械物性(例えば、耐衝撃性など)に優れ、且つ、加工性、成形性に優れることから、無機ガラスの代替分野、例えば、自動車の透明部品やレンズ等に使用されている。
【0003】
一方、レーザー光を用いて、音声、画像、文字等の情報を記録、再生する光ディスクは、近年、急速に用途が拡大している。しかしながら、情報記録媒体として使用される光ディスクにおいては、ディスク本体をレーザー光線が通過するために透明であることは勿論のこと、情報の読みとり誤差を少なくするために光学的均質性が強く求められている。すなわち、例えば、従来より公知のポリマー(例えば、ポリカーボネートなど)を用いた場合には、ディスク基盤成形時の樹脂の冷却および流動過程において生じた熱応力、分子配向、ガラス転移点付近の容積変化等による残留応力が原因となり、レーザー光線がディスク基盤を通過する際に複屈折が生じる。この複屈折に起因する光学的不均一性が大きいことは、例えば、記録された情報の読みとり誤りが生じるなど、光ディスク基盤等の光学部品にとっては致命的欠陥となる。このような光ディスク基盤を初めとする光学部品においては、より高度な光学特性、すなわち、低複屈折性を有し、且つ、透明性、耐熱性等に優れた材料が要求されている。
【0004】
上述した問題を解決するための方法の一つとして、スピロビインダノール単独またはスピロビインダノールとビスフェノールAとの共重合型ポリカーボネートのような、スピロ化合物を用いた低複屈折性ポリカーボネートが開示されている(特開昭63−314235号公報)。しかしながら、前者のポリカーボネートは低複屈折であるものの、透明性および機械強度が悪く、実用的に問題を有しており、また後者のポリカーボネートはビスフェノールA成分の増加により、透明性および機械強度は向上するものの、複屈折率が大きくなり、光学部品としての使用範囲が限定されてしまう問題点があり、これらの相反する問題点を解決することが強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、透明性、機械強度、耐熱性が良好であり、且つ、低複屈折性を有する光学部品を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に関して鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一般式(1)(化2)で表されるアクリル酸エステル化合物に関し、また、該アクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマー、ならびに該ポリマーからなる光学部品に関する。
【0007】
【化2】
(式中、R1 はアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、R2 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、R3 およびR4 はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、
mは0〜3の整数を表し、nは0〜20の整数を表す)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物において、R1 はアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数6〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基または炭素数6〜12のアラルキル基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基、アリル基またはベンジル基であり、該置換基R1 として、メチル基、アリル基またはベンジル基は特に好ましい。
【0009】
該置換基R1 としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、3,3−ジメチルプロペニル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−フェニルエチル基などが例示される。
【0010】
一般式(1)において、R2 は置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。
また、R2 のアルキル基またはアルコキシ基中のアルキル基は置換基を有していてもよく、例えば、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0011】
一般式(1)のR2 は、好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐アルキル基、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐アルコキシ基あるいは塩素原子であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基または塩素原子である。特に好ましくは、R2 はメチル基または塩素原子である。
【0012】
R2 の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、2−メトキシエトキシエチル基、2−エトキシエトキシエチル基、2−フェノキシメチル基、2−フェノキシエトキシエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、
【0013】
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、2−メトキシエトキシエトキシ基、2−フェノキシメトキシ基、2−フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、
ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)において、R3 およびR4 はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)において、mは0〜3の整数であり、好ましくは、0〜2の整数であり、整数0は特に好ましい。
また、一般式(1)において、nは0〜20の整数であり、好ましくは、0〜10の整数であり、寄り好ましくは、0〜4の整数であり、さらに好ましくは、0〜2の整数であり、整数0または1は特に好ましい。
【0015】
一般式(1)で表される化合物において、置換基R1 O−基の置換位置は4位、5位、6位または7位であり、もう一方のアクリル酸エステル基を含む置換基の置換位置は、4’位、5’位、6’位または7’位である。
これらの内、好ましいアクリル酸エステル化合物は、一般式(1−a)〜(1−d)で表される化合物であり、より好ましくは、一般式(1−a)、(1−b)または(1−c)(化3)で表される化合物であり、これらの構造の内、一般式(1−a)で表される化合物は特に好ましい。
【0016】
【化3】
(式中、R1 、R2 、mおよびnは前記に同じ)
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の具体例としては、下記の第1表(表1〜12)中に示された化合物が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
【表7】
【0024】
【表8】
【0025】
【表9】
【0026】
【表10】
【0027】
【表11】
【0028】
【表12】
【0029】
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は、反応それ自体は公知の方法により製造される。すなわち、代表的な方法としては、下記一般式(2)(化4)で表されるヒドロキシ化合物と、下記式(3)(化4)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物、酸臭化物など)とを反応させることにより製造される。
【0030】
【化4】
(式中、R1 、R2 、R3 、mおよびnは前記に同じ)
【0031】
原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物は、反応それ自体は公知の方法により製造される。すなわち、下記一般式(4)(化5)で表されるスピロビインダノール誘導体を各種公知のアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル類、パラトルエンスルホン酸アルキルエステル類、リン酸アルキルエステル類など)と作用させることにより、上記一般式(2)においてn=0の化合物は製造される。
【0032】
【化5】
(式中、R2 およびmは前記に同じ)
【0033】
該化合物をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、2−ブロモエタノール、2−クロロエタノール、2−ブロモ−1−プロパノール等のβ−ハロヒドリン類と反応させることにより、上記一般式(2)においてn=1以上の化合物が好適に製造される。
また、原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物は、反応条件によっては、一般式(2)においてnが異なるヒドロキシ化合物の混合物となることがあるが、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーの原料として使用する場合、分離を行うこと無く使用することができる。
【0034】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造方法についてさらに詳しく述べる。
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と、一般式(3)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物とを反応させる方法としては、公知の方法、例えば、J.Org.Chem.,45,5364(1980)、Eur.Polym.J.,19,399(1983)に記載の方法と同様の方法を用いることができる。例えば、撹拌下、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物中に一般式(3)で表されるアクリル酸類の酸ハロゲン化物を滴下する方法、あるいは、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類との脱水反応などの方法が挙げられる。
【0035】
上記反応の際、一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物に対して作用させる一般式(3)で表されるアクリル酸類またはその酸ハロゲン化物の使用量は、特に制限するものではないが、通常、ヒドロキシ化合物1モルに対して、0.5〜6モルであり、好ましくは、1〜3モルであり、より好ましくは、1〜2モルである。
反応は、無溶媒で行なってもよく、あるいは反応に対して不活性溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を併用しても差し支えない。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃の範囲であり、好ましくは0〜100℃である。反応時間は反応温度等の条件により左右されるが、通常、数分から数十時間である。
【0036】
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を製造する際に、反応中の重合を防止するために、重合禁止剤を使用することは好ましいことであり、好ましい重合禁止剤としては、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン等を例示することができる。重合禁止剤の使用量は特に制限はないが、反応原料混合物に対して、通常、0.01〜5%であり、好ましくは、0.05〜3%である。
【0037】
一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類の酸ハロゲン化物との反応により本発明のアクリル酸エステル化合物を製造する際には、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素など)が副生するので、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等の有機塩基、あるいは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム等の無機塩基を脱ハロゲン化水素剤として使用してもよい。かかる脱ハロゲン化水素剤の使用量としては、特に制限はないが、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、0.5〜6モルであり、好ましくは、1〜3モルであり、より好ましくは、1〜2モルである。
【0038】
一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるアクリル酸類の脱水反応により、本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を製造する際に、公知の各種エステル化触媒を用いることは好ましいことである。該触媒としては、例えば、鉱酸(例えば、塩酸、硫酸)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム)等を挙げることができる。かかる触媒の使用量は、特に制限するものではないが、通常、反応原料混合物に対して、好ましくは、0.01〜50重量%、好ましくは、0.1〜30重量%である。また反応の進行を促進するため、副生した水を系外に除去することは好ましいことであり、前記溶媒のうち水と共沸する溶媒(例えば、ベンゼン、トルエンなど)を用いたり、モレキュラーシーブス等の脱水剤を用いることができる。
【0039】
反応終了後、生成した本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は、公知の後処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、分液など)により後処理されて単離される。また、さらに必要に応じて、公知の方法(例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭処理など)により精製して、高純度の化合物として単離することも可能である。
原料となる一般式(2)で表されるヒドロキシ化合物において、nが異なるヒドロキシ化合物からなる混合物を用いると、一般式(1)中のnが異なるアクリル酸エステル化合物の混合物が製造されるが、勿論、該混合物も本発明のポリマーあるいは光学部品の原料モノマーとして使用する上で問題ない。
【0040】
次に、本発明のアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーについて詳述する。
本発明のポリマーは、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーであり、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物から誘導される下記式(1−A)(化6)で表される構造単位を必須構造単位として含有するポリマーである。
【0041】
【化6】
【0042】
本発明のポリマーは、一般式(1−A)で表される構造単位以外の他の構造単位を含有していてもよい。この場合、ポリマーの全構造単位中に占める一般式(1−A)で表される構造単位の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲であれば特に制限はないが、好ましくは、5モル%以上であり、より好ましくは、10モル%以上であり、さらに好ましくは、20モル%以上である。前記一般式(1−A)で表される構造単位以外の他の構造単位としては、後で詳しく述べるが公知の各種モノマー(例えば、不飽和脂肪酸エステル類、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体、不飽和脂肪酸またはその誘導体等など)から誘導される構造単位を挙げることができる。
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して本発明のポリマーを製造する際には、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物は1種類単独を使用してもよく、あるいは、異なる2種類以上の該アクリル酸エステル化合物を使用してもよい。
【0043】
以下、本発明のポリマーを製造する方法についてさらに詳しく述べる。
本発明のポリマーを製造する際、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合する方法としては、特に限定はなく、公知の各種重合方法、例えば、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、転位重合が適用できる。代表的には、本発明のポリマーは、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を、重合開始剤の存在下で塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の方法により重合することにより製造される。
【0044】
かかる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサヒドロフタレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトシキ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒、ならびに、過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤との組み合わせによるレドックス触媒物等、ラジカル重合に使用される公知の各種重合開始剤を挙げることができる。
重合開始剤の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して0.001〜30重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0045】
重合の際には、分子量調節などの目的のために必要に応じて重合調節剤、例えば、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマーなどを添加してもよい。
かかる重合調節剤の使用量は、特に制限するものではないが、通常、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して0.001〜10重量%であり、好ましくは0.001〜1重量%である。
重合温度は、特に制限するものではないが、通常、0〜200℃であり、好ましくは50〜120℃である。
【0046】
本発明のポリマーを溶液重合により製造する際に使用する溶媒としては、重合反応に対して不活性な溶媒であれば特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロルエチレン等が例示される。
本発明のポリマーを懸濁重合により製造する際には、水性媒体中で行われ、懸濁剤および必要に応じて懸濁助剤が使用される。かかる懸濁剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物が挙げられる。かかる懸濁剤の使用量は、特に制限はないが、通常、水溶性高分子の場合は一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜1重量%であり、難溶性無機化合物の場合は一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜1重量%である。
懸濁助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の陰イオン界面活性剤を挙げることができ、懸濁剤として難溶性無機物質を使用する場合には、該懸濁助剤を併用することが好ましい。
該懸濁剤の使用量は、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物に対して、0.001〜0.02重量%である。
【0047】
さらに、本発明のポリマーを製造する際に、所望の効果を損なわない範囲において、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物以外に該アクリル酸エステル誘導体と重合可能な各種公知のモノマー(例えば、不飽和脂肪酸エステル類、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体、不飽和脂肪酸またはその誘導体等など)を併用してもよい。この場合、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物と併用する各種公知のモノマーを合わせた総重量における、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物の含有量は、5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上である。
【0048】
一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物と併用し得るモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸フルオロメチル、アクリル酸フルオロエチル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸ブロモエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルオロベンジル、アクリル酸クロロベンジル、アクリル酸ブロモベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸フルオロフェニル、アクリル酸クロロフェニル、アクリル酸ブロモフェニル、
アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエステル、アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル類、アクリル酸シアノアルキルエステル類などのアクリル酸エステル誘導体、
【0049】
メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチルシクロヘキシル、メタアクリル酸ボルニル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸アダマンチル、メタアクリル酸フルオロメチル、メタアクリル酸フルオロエチル、メタアクリル酸クロロエチル、メタアクリル酸ブロモエチル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸フルオロベンジル、メタアクリル酸クロロベンジル、メタアクリル酸ブロモベンジル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ナフチル、メタアクリル酸フルオロフェニル、メタアクリル酸クロロフェニル、メタアクリル酸ブロモフェニル、
メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ジエチレングリコールエステル、メタアクリル酸ポリエチレングリコールエステル、メタアクリル酸アルキルアミノアルキルエステル類、メタアクリル酸シアノアルキルエステル類などのメタアクリル酸エステル誘導体、
α−フルオロアクリル酸エステル、α−クロロアクリル酸エステル、α−シアノアクリル酸エステルなどのα−置換アクリル酸エステル誘導体等で例示される不飽和脂肪酸エステル類;
【0050】
スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロロスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレン等で例示される芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等で例示されるシアノ化ビニル化合物;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等で例示される不飽和二塩基酸およびその誘導体;
【0051】
アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのアクリル酸アミド誘導体、
N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルメタアクリルアミドなどのメタアクリル酸アミド誘導体、
アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、アクリル酸鉛、アクリル酸スズ、アクリル酸亜鉛、メタアクリル酸カルシウム、メタアクリル酸バリウム、メタアクリル酸鉛、メタアクリル酸スズ、メタアクリル酸亜鉛などのアクリル酸またはメタアクリル酸の金属塩、
アクリル酸、メタアクリル酸等で例示される不飽和脂肪酸およびその誘導体などを挙げられる。
【0052】
これらのモノマーの中でも、光学部品としての使用する際の諸性能(例えば、複屈折性、耐熱性、吸水性など)を考慮すると、アクリル酸エステル誘導体、メタアクリル酸エステル誘導体の併用が好ましく、メタアクリル酸アルキルエステル(例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチルシクロヘキシル、メタアクリル酸ボルニル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸アダマンチル、メタアクリル酸フルオロメチル、メタアクリル酸フルオロエチル、メタアクリル酸クロロエチル、メタアクリル酸ブロモエチルなど)が特に好ましい。
【0053】
本発明のポリマーは、その重量平均分子量については特に限定するものではないが、耐熱性、機械物性等の観点から、重量平均分子量が10000〜2000000であることが好ましく、より好ましくは、20000〜1000000である。
本発明のポリマーは、所望の効果を損なわない範囲で、他のポリマーと併用して成形材料として使用されることも可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリエステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0054】
また、本発明のポリマーに対して、該ポリマーの製造時または製造後に公知の方法で、顔料、染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、有機ハロゲン化合物、アルカリ金属スルホン酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、TiO2 等の公知の添加剤を添加して使用してもよい。
本発明のポリマーは単独または他のポリマーと混合した状態で、所望により上記の添加剤を添加して、成形材料として機械部品、光ディスク等の情報記録媒体の基盤、カメラや眼鏡のレンズ等の光学材料、ガラス代替の建材等に成形される。
【0055】
本発明のポリマーは熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、フィラー等への含浸等が可能であり、さらには、圧縮成形、溶液キャスティングなど、各種公知の成形方法により容易に成形可能である。
本発明のポリマーからなる光学部品としては、光ディスク基盤、光磁気ディスク基盤などの光記録媒体基盤、ピックアップレンズなどの光学レンズ、液晶セル用プラスチック基盤、プリズム等の各種光学部品を挙げることができる。これらの光学部品は、上述したような従来より公知の各種成形方法(代表的には、射出成形、射出圧縮成形など)により、好適に製造することができる、
このようにして得られる本発明の光学部品は、低複屈折性を有し、諸性能(例えば、光ディスクとしての光記録特性、耐久性など)に優れており、非常に有用である。
【0056】
【実施例】
以下、参考製造例および実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの参考製造例および実施例に限定されるものではない。
参考製造例1〔下記式(2−1)で表されるヒドロキシ化合物の製造〕
反応容器に6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン61.9g(0.20mol)、炭酸カリウム13.8g(0.10mol)およびN,N,−ジメチルホルムアミド70gを装入した後、80℃で加熱、攪拌している混合物に対して、パラトルエンスルホン酸メチル37.3g(0.20mol)を30分かけて滴下した。さらに10時間、加熱、攪拌を続けた後、反応混合物を水1200gに排出して、析出した固体を濾過して集めた。得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的の下記式(2−1)(化7)で表される6−ヒドロキシ−6’−メトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン25.8gを無色結晶として得た。
・融点; 98〜99℃
・FD−MS; 322(M+ )
【0057】
【化7】
【0058】
参考製造例2〔下記式(2−2)で表されるヒドロキシ化合物の製造〕
反応容器に6−ヒドロキシ−6’−メトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン322g(1.00mol)、エチレンカーボネート96.9g(1.10mol)、炭酸カリウム3.5g(25mmol)および混合キシレン200gを装入し、10時間加熱還流した。
冷却後、生じた固体を濾取し、メタノール−水混合系で再結晶して精製し、目的の下記式(2−2)(化8)で表されるヒドロキシ化合物330g(収率90%)を白色固体として得た。
・FD−MS; 366(M+ )
【0059】
【化8】
【0060】
実施例1〔式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造〕
上記参考製造例1で合成した式(2−1)で表される化合物32.2g(0.10mol)、トリエチルアミン10.1g(0.10mol)、トルエン300gおよび重合禁止剤として4−メトキシフェノール0.01gを、反応容器に装入して、得られた混合溶液に対して、アクリル酸クロリド9.9g(0.10mol)を氷冷下、30分かけて滴下した。さらに、25℃で6時間、攪拌した後、反応溶液を濾過して副生したトリエチルアミン塩酸を除いた。濾液を3回水洗した後、溶媒を減圧留去して目的とする式(1−1)(化9)で表される化合物を無色の粘性のある液体として得た。
・ 1H−NMR δ(CDCl3 );
1.2〜1.5(m,12H)、2.2〜2.4(m,4H)、
3.6(s,3H)、5.6〜7.4(m,9H)
・FD−MS; 376(M+ )
【0061】
【化9】
【0062】
実施例2〔式(1−2)で表されるアクリル酸エステル化合物の製造〕
実施例1において、アクリル酸クロリドを使用する代わりメタアクリル酸クロリドを使用する以外は実施例1に記載の方法と同様にして、下記式(1−2)(化10)で表される化合物を製造した。
・ 1H−NMR δ(CDCl3 );
1.2〜1.5(m,12H)、2.0(s,3H)、
2.2〜2.4(m,4H)、3.6(s,3H)、
5.6〜6.2(m,2H)、6.2〜7.4(m,6H)
・FD−MS; 390(M+ )
【0063】
【化10】
【0064】
実施例3〜実施例6
実施例1に記載の方法と同様な方法により、下記第2表(表13)に示したアクリル酸エステル化合物を製造した。
【0065】
【表13】
【0066】
以下の実施例において、上記実施例1〜実施例6において製造した一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を用いて重合を行い、本発明のポリマーを製造した。なお、実施例および比較例で製造したポリマーの分子量の測定は下記の方法により行った。
〔分子量の測定〕
各ポリマーの0.2重量%クロロホルム溶液をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)[昭和電工(株)製、Sysytem−11]により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。尚、測定値は標準ポリスチレン換算の値である。
【0067】
実施例7〔式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物の重合〕
前記式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300g、メタアクリル酸メチル700g、ラウロイルパーオキサイド4.0g、n−オクチルメルカプタン2.60gを混合溶解してモノマー溶液を得た。攪拌機および冷却器を備えた5リットルセパラブルフラスコに、懸濁剤としてリン酸カルシウム10重量%懸濁液83g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004g、硫酸ナトリウム1gおよび純水2400gを加えて攪拌し、懸濁溶液とした。窒素雰囲気下、該懸濁溶液に対して上記モノマー溶液を加え、攪拌回転数240rpmにて65℃で4時間、反応させ、さらに98℃にて2時間、反応させた。生成した微粒固体を水洗、脱水した後、乾燥して、目的とするポリマーを得た。重量平均分子量は240000であった。
走査熱量計(DSC−3100、マックサイエンス社製)で、0℃から300℃の温度範囲で示差熱分析を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は150℃であった。
【0068】
実施例8
実施例1において、モノマーとして式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300gおよびメタアクリル酸メチル700gを使用する代わりに、前記式(1−2)で表されるアクリル酸エステル化合物1000gを使用する以外は、実施例1に記載の方法に従って行い、目的とするポリマーを得た。
重量平均分子量; 200000
実施例9〜12〔アクリル酸エステル化合物の重合〕
実施例1〜6で得られたアクリル酸エステル化合物および公知の各種材料を用い、第3表(表14)に示す組成(重量部)のモノマー混合物を得、実施例7に記載の方法と同様な方法により、ポリマーの製造を行った。
【0069】
【表14】
【0070】
比較例1
実施例1において、モノマーとして式(1−1)で表されるアクリル酸エステル化合物300gおよびメタアクリル酸メチル700gを使用する代わりに、メタアクリル酸メチル1000gを使用する以外は、実施例1に記載の方法に従って重合して、メタアクリル酸メチルのポリマー(ポリメタアクリル酸メチル)を製造した。重量平均分子量は240000であり、ガラス転移温度(Tg)は105℃であった。
【0071】
比較例2
ビスフェノールAとホスゲンから、常法(界面重合法)に従い、公知のポリカーボネートを製造した。すなわち、
内容量2リットルのバッフル付きフラスコに、格子翼を備えた撹拌機、還流冷却管、ホスゲン吹き込み用浸漬管を設けた。このフラスコに、114g(0.50モル)のビスフェノールA、56g(1.40モル)の水酸化ナトリウム、2.58gの4−tert−ブチルフェノールおよび、600ミリリットルの脱イオン水を装入し、水溶液を調製した。その後、該水溶液に600ミリリットルのジクロロメタンを添加し、2相混合物とし、この2相混合物を撹拌しながら、該混合物に59.4g(0.60モル)の塩化カルボニルを9.9g/分の供給速度で供給した。塩化カルボニルの供給終了後、0.08gのトリエチルアミンを反応混合物に添加し、さらに90分間撹拌混合した。その後撹拌を停止し、反応混合物を分液し、ジクロロメタン相を塩酸水溶液により中和し、脱イオン水を使用して、水性洗浄液に電界質が実質的に検出されなくなるまで洗浄した。その後、ジクロロメタン相から、ジクロロメタンを蒸発留去することにより、固体状態の芳香族ポリカーボネートを得た。重量平均分子量は51000であった。
【0072】
比較例3
特開昭63−314235号公報、実施例7に記載の方法に従い、ビスフェノールAとスピロビインダノールとの共重合ポリカーボネートを製造した。重量平均分子量は44800であった。
【0073】
各実施例および比較例で製造したポリマーを用い、プレス成形して厚さ1.2mmの板状試験片を作製し、この試験片について以下に示した項目の評価試験を行った。結果を下記の第4表(表15)に示した。
〔評価方法〕
(1)外観:試験片の透明性、光学的面状態を目視観察、評価した。
○:ひび割れ、クラック、面荒れ等が無く、無色透明で面状態の良いもの
×:ひび割れ、クラック、面荒れ等が観察されるもの
(2)全光線透過率(以下、透過率と称する):
ASTMD−1003法に従った。
(3)複屈折:エリプソメーターによって測定した。
(4)耐熱性:
120℃で熱風乾燥基中に4時間放置した後、試験片を取り出して、肉眼で観察し評価した。
○:成形物の着色、表面の歪、クラック等が無いもの
×:成形物の着色、表面の歪、クラック等が観察されるもの
【0074】
【表15】
第4表から明らかなように、本発明のポリマーを成形して得られる成形物(シート)は、透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有していることが判る。
【0075】
実施例13(光ディスクの作製および評価)
実施例7で製造したポリマーを、ペレタイザー付き押出機(シリンダー温度250℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、280℃にて射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた基盤の中心部を内径15mmとなるように打ち抜いてドーナツ状円盤とした。次に、アルミの真空蒸着を行い、片面に、厚み600オングストロームの反射層を設けた。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した。
ビットエラーレートは、波長780nm、線速2m/sec、0.8mWのレーザー光を用いて、記録の読みとりのエラーの発生率を測定した。
結果を下記の第5表(表16)に示した。
【0076】
実施例14〜18
実施例8〜実施例12で製造したポリマーを用いる以外は、実施例13に記載の方法と同様な方法により、光ディスクを作製して評価を行った。
結果を下記の第5表に示した。
【0077】
比較例4
上記比較例2で製造したポリカーボネートを使用する以外は、実施例13と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、下記の第5表に示した。
【0078】
比較例5
上記比較例3で製造したポリカーボネートを使用する以外は、上記実施例13と同様な方法により光ディスクを製造した。得られた光ディスクの複屈折およびBER(ビットエラーレート)を測定した結果を、以下の第5表に示した。
【0079】
【表16】
第5表から明らかなように、本発明の光ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマー(ポリカーボネート)を用いて得られる光ディスクと比較して、BERが向上している。
【0080】
実施例19(光磁気ディスクの製造および記録特性の評価)
実施例7において得られたポリマーをペレタイザー付き押出機(シリンダー温度250℃)にてペレット状とした。該ペレットを110℃にて4時間乾燥した後、射出成形を行った。すなわち、金型に鏡面を有するスタンパーを装着して、外径130mm、厚さ1.2mmの円盤状の成形物を得た。
得られた基盤上に、Tb23.5、Fe64.2、Co12.3(原子%)の合金ターゲットを用いてスパッタリング装置〔RFスパッタリング装置、日本真空(株)製〕中で厚み1000オングストロームの光磁気記録層を形成した。この記録膜上に、厚み1000オングストロームの無機ガラスの保護膜を、上記と同じスパッタリング装置を用いて形成した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率率を測定した。
尚、CN比は、書き込みパワー7mW、読みとりパワー1mW、キャリア周波数1MHz、分解能帯域幅30KHzで測定を行った。
CN保持率は、初期CN比に対する60℃、90%RH条件下で30日経過後のCN比の低下度を百分率(%)で示した。
結果を下記の第6表(表17)に示した。
【0081】
実施例20〜24
実施例8〜実施例12で製造したポリマーを使用する以外は、上記実施例19と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた各光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN変化率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0082】
比較例6
比較例2で製造したポリマー(ポリカーボネート)を使用する以外は、上記実施例と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0083】
比較例7
比較例3で製造したポリマー(ポリカーボネート)を使用する以外は、上記実施例と同様な方法により光磁気ディスクを製造した。得られた光磁気ディスクの複屈折、CN比、BER(ビットエラーレート)およびCN保持率を測定した結果を、以下の第6表に示した。
【0084】
【表17】
第6表から明らかなように、本発明のポリマーを用いて得られる光磁気ディスクは複屈折の低下により、既存のポリマー(ポリカーボネート)より得られる光磁気ディスクと比較して、CN比およびBERが向上しており、またCN保持率が改良されていることが判る。
【0085】
【発明の効果】
本発明の一般式(1)で表されるアクリル酸エステル化合物を重合して得られるポリマーは、従来より知られているポリマー(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネートなど)と比較して透明性、耐熱性等が良好で、且つ、低複屈折性を有しており、光ディスク基盤、ピックアップレンズなどの光学部品として非常に有用である。
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