JP3830024B2 - 光ファイバ複合ハーネス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバとメタルワイヤとを有する光ファイバ複合ハーネスに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車では多くの電子機器を接続し動作させるため、電線を束ねたワイヤハーネスが大量に使用される。特にここ数年は車載情報機器、今後は高度道路交通システムの実現に向けた電子機器の増加によって、使用するワイヤハーネスはさらに増加する。このことは、車輌の重量の増大につながり、車輌の燃費悪化を引き起こす。また、車内の情報量が増えると情報の伝送速度が上昇し、ワイヤハーネスが放射する電磁ノイズの影響が大きくなる。
【0003】
このようなことから、近年では、メタルワイヤと光ファイバとを押さえ巻きテープで束ねた光ファイバ複合ハーネスが使用されるようになってきている。
【0004】
図5にこのような光ファイバ複合ハーネスを示す。光ファイバ複合ハーネス20は、複数本の光ファイバ21と複数本のメタルワイヤ22とを押さえ巻きテープ23で束ねて構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような光ファイバ複合ハーネス20は、自動車の狭い箇所や所定の空間内に曲げて配索されたり、押しつぶされたりする。このとき光ファイバ複合ハーネス20は、さまざまな方向に曲げられるため、光ファイバ21が曲げに対して外側になったり内側になったりして、一定の曲率半径で曲がらず(曲げに対して外側に位置したときは曲率半径が大きくなり、内側に位置したときは曲率半径が小さくなる)、設計時に想定した曲率半径と実際に配索した際の曲率半径とが異なり、終端部で光ファイバ長に過不足が生じてしまうという問題点がある。
【0006】
一方、図6から明らかなように、光ファイバは曲げたときの曲率半径が小さくなると伝送損失が増加する。したがって、光ファイバ複合ハーネス20を光ファイバ21が内側に位置するようにして曲げると、光ファイバ21の曲率半径が小さくなるので伝送損失が大きくなる。
【0007】
また、図6の、光ファイバを6本のメタルワイヤと一緒に束ねて構成した光ファイバ複合ハーネスのグラフ(実線で示されているグラフ)と光ファイバ単体のグラフ(破線で示されているグラフ)とを比較すると、光ファイバ複合ハーネスの方が光ファイバ単体よりも伝送損失が大きいことが分かる。このように光ファイバ複合ハーネスの方が伝送損失が大きいのは、光ファイバ複合ハーネスは、光ファイバとメタルワイヤとが一緒に束ねられて構成されているため、曲げたときなどに光ファイバがメタルワイヤから局所的な側圧をうけるからである。
したがって、従来の光ファイバ複合ハーネス20においては、光ファイバ21が内側に位置するように曲げたときの光ファイバ21の曲率半径が小さいことと、光ファイバ21がメタルワイヤ22からうける側圧が原因で、伝送損失が大きいという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、終端での光ファイバ長に過不足を生じないとともに、伝送損失を軽減した光ファイバ複合ハーネスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光ファイバ複合ハーネスは、光ファイバ層を形成する光ファイバとメタルワイヤ層を形成するメタルワイヤとを前記光ファイバ層と前記メタルワイヤ層との間に分離板を挿入して束ね、その上から押さえ巻きテープを巻き回して構成され、前記光ファイバ層と前記メタルワイヤ層の間に挿入される前記分離板は、半径方向にアーチ状に形成され、弾性を有するものである。
このような請求項1に記載の光ファイバ複合ハーネスは、光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に半径方向にアーチ状に形成された分離板が挿入されているので、分離板の凹面側を内側に、凸面側を外側にして曲がりやすくなる。したがって、常に一定方向に曲がりやすくなることから光ファイバが曲げに対して外側に位置したり、内側に位置したりせず、一定の曲率半径で曲がるので終端での光ファイバ長に過不足を生じない。また、分離板が挿入されているので、光ファイバ複合ハーネスが極端に鋭角に曲がるのを防止することができ、伝送損失を軽減できる。さらに、分離板によって光ファイバ層とメタルワイヤ層とに分離されているため、光ファイバがメタルワイヤから局所的な側圧をうけることがなく、側圧による伝送損失が生じない。
【0010】
請求項2に記載の光ファイバ複合ハーネスは、前記アーチ状に形成された分離板は、該分離板の凹面側がメタルワイヤ層側になるように前記光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に挿入されていることを特徴とするものである。
このような請求項2に記載の光ファイバ複合ハーネスは、光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に、半径方向にアーチ状に形成された分離板が、その凹面側がメタルワイヤ層側になるようにして挿入されているので、光ファイバ複合ハーネスが、メタルワイヤ層を内側に、光ファイバ層を外側にして曲がりやすくなる。したがって、光ファイバが曲げに対して外側に位置するので、光ファイバの曲率半径が大きくなる。また、分離板が挿入されているので、光ファイバ複合ハーネスが極端に鋭角に曲がるのを防止することができる。また、光ファイバとメタルワイヤとが分離板によって分離されているため、光ファイバがメタルワイヤから局所的な側圧をうけない。したがって、光ファイバの伝送損失を軽減することができる。
また、光ファイバ複合ハーネスが、光ファイバ層を外側にして曲がりやすくなる(一定方向に曲がりやすくなる)ため、一定の曲率半径で曲がり、終端での光ファイバ長に過不足を生じない。
【0011】
請求項3に記載の光ファイバ複合ハーネスは、前記押さえ巻きテープの外表面には、前記光ファイバ複合ハーネスを曲げる方向を指示する指示印が施されていることを特徴とするものである。
このような請求項3に記載の光ファイバ複合ハーネスは、押さえ巻きテープの外周面に施された指示印によって光ファイバ複合ハーネスを曲げる方向が指示されているので、光ファイバ複合ハーネスを自動車内等に配索する際に、作業者が曲げる方向を一目で判断することができ、確実に一定の方向に曲げることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光ファイバ複合ハーネスの実施の形態について説明する。図1、図2には、本発明に係る光ファイバ複合ハーネスの実施の形態の一例が示されている。
【0013】
図において、光ファイバ複合ハーネス1は、光ファイバ層2を形成する光ファイバ3とメタルワイヤ層4を形成するメタルワイヤ5とを前記光ファイバ層2と前記メタルワイヤ層4との間に分離板6を挿入して束ね、その上から押さえ巻きテープ7を巻き回して構成されている。
【0014】
光ファイバ3は、本実施の形態では複数本備えられている。また、メタルワイヤ5は、導体の上に絶縁体を被覆して形成されていて、光ファイバ3と同様に本実施の形態では複数本備えられている。
【0015】
複数本の光ファイバ3によって形成される光ファイバ層2と複数本のメタルワイヤ5によって形成されるメタルワイヤ層4との間には、分離板6が挿入されており、この分離板6により、光ファイバ3とメタルワイヤ5とが分離されていて、メタルワイヤ層4内に光ファイバ3が入り込まないようになっている。
【0016】
この分離板6は、ゴムや可とう性のあるプラスチック等の弾性を有する材料で形成されている。そして、半径方向にアーチ状に形成されており、本形態においては、その凹面8側がメタルワイヤ層4側になり、凸面9側が光ファイバ層2側になるように光ファイバ層2とメタルワイヤ層4の間に挿入されている。なお、分離板6は、あらかじめアーチ状に形成されていてもよいし、光ファイバ層2とメタルワイヤ層4との間に挿入される前は平板状に形成され、光ファイバ層2とメタルワイヤ層4との間に挿入されるときに半径方向に曲げられてアーチ状に形成されてもよい。また、光ファイバ複合ハーネス1が光ファイバ3を外側にして曲がりやすいよう、分離板6は上述のように、その凹面8側がメタルワイヤ層4側になり、凸面9側が光ファイバ層2側になるように挿入されていることが望ましいが、本発明はこのようなものには限られず、凹面8側が光ファイバ層2側になり、凸面9側がメタルワイヤ層4側になるように挿入されていてもよい。
【0017】
押さえ巻きテープ7の外表面には、図3に示すように、光ファイバ複合ハーネス1を曲げる方向を指示する指示印10が施されている。この指示印10は、作業者が光ファイバ複合ハーネス1を曲げる方向を指示するものであり、略U字状の矢印の形態となっていて、光ファイバ複合ハーネス1の曲げ方向に対する側面に施されている。この指示印10は、図3に示したように、押さえ巻きテープ7の外表面の曲げ方向に対する一側面に1つだけ施されていてもよいし、作業者が視認しやすいように、曲げ方向に対する両側面に一対のものが対向するようにして施されていてもよい(不図示)。また、押さえ巻きテープ7の外表面の曲げ方向に対する一側面に長さ方向に沿って複数施されていてもよいし(不図示)、対向する一対のものが曲げ方向に対する両側面に長さ方向に沿って複数施されていてもよい(不図示)。
【0018】
ただし、指示印はこのようなものには限られず、図4に示すように、押さえ巻きテープ7の外表面のうち、光ファイバ複合ハーネス1の曲げに対して外側となる外表面に、例えば網状の形態のものを施してもよい(図中の符号11)。この場合、指示印11は所定の長さで1箇所に施されていてもよいし(不図示)、所定の長さで複数箇所に長さ方向に沿って施されていてもよい(不図示)。また、長さ方向に連続して施されていてもよい(不図示)。
【0019】
その他、指示印は光ファイバ複合ハーネス1を曲げる方向を指示するものであればどのような形態のものであってもよい。なお、作業者が光ファイバ複合ハーネス1を曲げる方向を一目で簡単に判断できる点で、このような指示印を押さえ巻きテープ7の外周面に施すことが望ましいが、本発明においては必ずしもこのような指示印が施されている必要はない。
【0020】
以上のように構成される光ファイバ複合ハーネス1によると、伝送損失を軽減することができる。すなわち、光ファイバ層2とメタルワイヤ層4との間に、半径方向にアーチ状に形成された分離板6がその凹面8側がメタルワイヤ層4側になるようにして挿入されているので、光ファイバ複合ハーネス1が、メタルワイヤ層4を内側に、光ファイバ層2を外側にして曲がりやすくなる。したがって、光ファイバ3が曲げに対して外側に位置するので、光ファイバ3の曲率半径が大きくなる。また、分離板6が挿入されているので、光ファイバ複合ハーネス1が極端に鋭角に曲がるのを防止することができる。また、光ファイバ3とメタルワイヤ5とが分離板6によって分離されているため、光ファイバ複合ハーネス1を曲げたときなどに、光ファイバ3がメタルワイヤ5から局所的な側圧をうけない。このように光ファイバ3がメタルワイヤ5から側圧をうけず、また上記したように曲げたときの光ファイバ3の曲率半径が大きくなることから光ファイバ3の伝送損失を軽減することができる。
【0021】
また、光ファイバ複合ハーネス1が、光ファイバ層2を外側にして曲がりやすくなる(一定方向に曲がりやすくなる)ため、一定の曲率半径で曲がり、終端での光ファイバ長に過不足を生じない。
【0022】
さらに、押さえ巻きテープ7の外周面に施された指示印10又は11によって、光ファイバ複合ハーネス1を曲げる方向が指示されているので、光ファイバ複合ハーネス1を自動車等の車両に配索するとき等に、作業者が曲げる方向を一目で判断することができ、確実に一定の方向に曲げることが可能となる。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に半径方向にアーチ状に形成された分離板が挿入されているので、分離板の凹面側を内側に、凸面側を外側にして曲がりやすくなり、常に一定方向に曲がりやすくなるので、光ファイバが曲げに対して外側に位置したり、内側に位置したりしない。したがって一定の曲率半径で曲がるので終端での光ファイバ長に過不足を生じない。また、分離板が挿入されているので、光ファイバ複合ハーネスが極端に鋭角に曲がるのを防止することができ、伝送損失を軽減できる。さらに、分離板によって光ファイバ層とメタルワイヤ層とに分離されているため、光ファイバがメタルワイヤから局所的な側圧をうけることがなく、側圧による伝送損失が生じない。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に、半径方向にアーチ状に形成された分離板が、その凹面側がメタルワイヤ層側になるようにして挿入されているので、光ファイバ複合ハーネスが、メタルワイヤ層を内側に、光ファイバ層を外側にして曲がりやすい。したがって、光ファイバが曲げに対して外側に位置するので、曲率半径が大きくなる。また、分離板が挿入されているので光ファイバ複合ハーネスが極端に鋭角に曲がるのを防止することができる。また、光ファイバとメタルワイヤとが分離板によって分離されているため、光ファイバがメタルワイヤから局所的な側圧をうけない。したがって、光ファイバの伝送損失を軽減することができる。
また、光ファイバ複合ハーネスが、光ファイバ層を外側にして曲がりやすくなる(一定方向に曲がりやすくなる)ため、一定の曲率半径で曲がり、終端での光ファイバ長に過不足を生じない。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、押さえ巻きテープの外周面に施された指示印によって作業者が光ファイバ複合ハーネスを曲げる方向が指示されているので、光ファイバ複合ハーネスを自動車内等に配索する際に、作業者が曲げる方向を一目で判断することができ、確実に一定の方向に曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバ複合ハーネスの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した光ファイバ複合ハーネスの断面図である。
【図3】押さえ巻きテープの外表面に指示印を施した光ファイバ複合ハーネスを表す図である。
【図4】押さえ巻きテープの外表面に他の例の指示印を施した光ファイバ複合ハーネスを表す図である。
【図5】従来の光ファイバ複合ハーネスの一例を示す断面図である。
【図6】曲率半径と伝送損失の関係を示した図である。
【符号の説明】
1………………………光ファイバ複合ハーネス
2………………………光ファイバ層
3………………………光ファイバ
4………………………メタルワイヤ層
5………………………メタルワイヤ
6………………………分離板
7………………………押さえ巻きテープ
8………………………凹面
9………………………凸面
10、11……………指示印
Claims (3)
- 光ファイバ層を形成する光ファイバとメタルワイヤ層を形成するメタルワイヤとを前記光ファイバ層と前記メタルワイヤ層との間に分離板を挿入して束ね、その上から押さえ巻きテープを巻き回して構成され、
前記光ファイバ層と前記メタルワイヤ層の間に挿入される前記分離板は、半径方向にアーチ状に形成され、弾性を有するものである光ファイバ複合ハーネス。 - 前記アーチ状に形成された分離板は、該分離板の凹面側がメタルワイヤ層側になるように前記光ファイバ層とメタルワイヤ層との間に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ複合ハーネス。
- 前記押さえ巻きテープの外表面には、前記光ファイバ複合ハーネスを曲げる方向を指示する指示印が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ複合ハーネス。
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