JP3829383B2 - ローラ式ヘミング方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、ドア、ボンネット、トランクリッド等の車両用蓋物をヘムローラにてヘミング加工するようなローラ式ヘミング方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上型、下型、押し型、プリヘム刃等からなる金型式ヘミング装置の大型化および設置スペースの問題点を回避するために特公平5−34101号公報に記載のようなローラ式ヘミング方法およびその装置が既に発明されている。
すなわち、図21、図22に示すように被ヘミング部材を支持する治具101と、ロボットにより移動制御されるヘムローラ102とを備え、上述の治具101にアウタパネル103およびインナパネル104をセットし、まず図21に示すようにヘムローラ102を折曲げ部Rに転圧して同図に仮想線で示す未曲げ状態から約45度折り曲げる予備曲げ加工を実行し、この後、ロボットおよびヘムローラ102による押圧角度を変更して上述と同一のヘムローラ102にて予備曲げ加工後の折曲げ部Rを再度折曲げる仕上げ曲げ加工を実行するローラ式ヘミング方法およびその装置である。
【0003】
この従来手段によれば、予めロボットに移動軌跡を教示(ティーチング)させておくと、ヘムローラ102は被ヘミング部材の周縁形状に正確に追従して転圧され、被ヘミング部材の周縁形状に沿って連続的に効率のよいヘミング加工を施すことができるので、従前の金型式ヘミング手段のような大型化、設置スペースの問題点を解消することができると共に、ワークが変わった場合にはソフトの変更のみで充分な対応できる利点がある。
しかし、この従来手段によればヘミング加工後において確実な拘束力を得るためにヘミング部をスポット溶接する必要があり、アフタヘム溶接工程を必須とする問題点があることは勿論、溶接時の圧痕により品質が低下する問題点があった。
【0004】
一方、アフタヘム溶接を廃止してスポットレス化を図ることを目的として、図21、図22で示した従来手段において被ヘミング部材間つまりアウタパネル103とインナパネル104との間に滑り防止固形材(例えば球状のガラスビーズ)を含有する接着剤を予め介在させてヘムローラ102にてヘミング加工することが考えられるが、この場合にあっては、ヘムローラ102は一方側から他方側に向けて順次転圧されるので転圧時に上述の滑り防止固型材がヘムローラ102の進行方向(転圧が弱い方向)に順次逃げて、この滑り防止固形材が鋼板製の被ヘミング部材間に喰い込むことがなく、クリンチ力(係止力)が得られない問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、接着剤中に含有する滑り防止固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込む予備曲げ加工(プリ本曲げ加工)と、固形材が被ヘミング部材に充分に食い込む本曲げ加工とを備えることで、固形材の逃げがなく確実なクリンチ力を得ることができ、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を図ることができるローラ式ヘミング方法の提供を目的とする。
【0006】
この発明の一実施態様は、予備曲げ加工(プリ本曲げ加工)および本曲げ加工を同一のロボットにて実行することで、同一の設備により2段階加工を行なうことができるローラ式ヘミング方法の提供を目的とする。
【0007】
この発明の一実施態様は、ドア、ボンネット、トランクリッド等の車両用蓋物に対して確実な2段階ヘミング加工を実行することができるローラ式ヘミング方法の提供を目的とする。
【0008】
この発明は、また、被ヘミング部材間に滑り防止固形材を含有する接着剤を介在させてローラにてヘミング加工する装置であって、固形材が僅かに食い込むよう予備曲げ加工(プリ本曲げ加工)すると共に、固形材が充分に食い込むよう本曲げ加工するロボットを設けることで、固形材による被ヘミング部材のクリンチ力を確実に得て、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を達成することができるのは勿論、同一のロボットにて予備曲げと本曲げとの2段階加工を実行することができるローラ式ヘミング加工装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明のローラ式ヘミング方法は、滑り防止固形材を含有する接着剤を被ヘミング部材間に介在させて、該固形材にて被ヘミング部材の滑りを抑制してローラにてヘミング加工するローラ式ヘミング方法であって、上記ローラにて固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込むよう予備曲げ加工した後に、上記ローラにて固形材が被ヘミング部材に充分食い込むよう本曲げ加工するものである。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記予備曲げ加工および本曲げ加工を同一のロボットにて実行するものである。
この発明の一実施態様においては、ドア、ボンネット、トランクリッド等の車両用蓋物をローラにてヘミング加工するものである。
【0011】
この発明のローラ式ヘミング装置は、被ヘミング部材間に滑り防止固形材を含有する接着剤を介在させてローラにてヘミング加工するローラ式ヘミング装置であって、固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込むようにローラにて予備曲げ加工すると共に、固形材が充分に被ヘミング部材に食い込むようにローラにて本曲げ加工するものである。
【0012】
【発明の作用及び効果】
この発明のローラ式ヘミング方法によれば、被ヘミング部材間に滑り防止固形材(ガラスビーズ参照)を含有する接着剤を介在させて、この固形材により被ヘミング部材の滑り(位置ずれ)を抑制してローラで固形材が逃げないようにヘミング加工する方法において、上述のローラで固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込むよう予備曲げ加工し、次にローラで固形材が被ヘミング部材に充分食い込むよう本曲げ加工するので、上述の予備曲げ加工時に固形材の逃げを防止し、次の本曲げ加工時に固形材を被ヘミング部材に充分に食い込ませて確実なクリンチ力を得ることができ、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を図ることができる効果がある。
【0013】
この発明の一実施態様によれば、上述の予備曲げ加工および本曲げ加工を同一のロボット(一台のロボット)にて実行するので、同一の設備により2段階の加工を行なうことができる効果がある。
【0014】
この発明の一実施態様によれば、ドア、ボンネット、トランクリッドなどの車両用蓋物に対して確実な2段階ヘミング加工を実行することができる効果がある。
【0015】
この発明のローラ式ヘミング装置によれば、上述の同一のロボットにより予備曲げと本曲げとの2段階加工を実行するので、同一の設備・装置により斯る2段階の曲げ加工を行なうことができる効果がある。
加えて、ヘミング部材間に滑り防止固形材を含有する接着剤を介在させてローラにてヘミング加工する装置であるから、固形材による被ヘミング部材のクリンチ力を確実に得て、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を達成することができる。
【0016】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
(第1実施例開示構造)
図面はローラ式ヘミング方法およびその装置を示すが、まず図1、図2を参照してローラ式ヘミング装置の構成について説明する。
【0017】
このローラ式ヘミング装置1は床面Aに設置されたヘミングダイ2とロボット3とを備えている。上述のロボット3はロボットアーム4に関節部5を介してロボットハンド6を有する多関節ロボットで、上述のロボットハンド6には油圧シリンダ等により構成される加圧シリンダ7(加圧手段)およびローラチャック8(ローラ保持手段)を介して直径約25〜100mmφのヘムローラ9(以下単にローラと略記する)を回転自在に取付けている。
【0018】
上述の加圧シリンダ7は油圧ユニット10によりコントロールされ、この油圧ユニット10には制御盤等の制御部11(ROM,RAM,CPUを有する)から操作信号(加振信号、加圧信号)が入力され、ローラ9の押圧力をその移動方向において変化させる。
【0019】
上述のヘミングダイ2には被ヘミング部材としてドア、ボンネットまたはトランクリッド等の車両用蓋物を構成する板圧約0.8mmt のアウタパネル12とインナパネル13とが上載され、複数の必要箇所が開閉可能な保持手段(図示せず)で保持されると共に、この保持手段の開閉保持部はローラ9の走行時に、該ローラ9と干渉しないように開放退避し、ローラ9の通過後に再び閉成保持動作を行なう。
【0020】
しかも、このローラ式ヘミング装置1は図3、図4、図5に示すようにアウタパネル12とインナパネル13との間に滑り防止固形材として例えば直径が約200〜300μmφの球状の多数のガラスビーズ14…を約5wt%の割合で含有する接着剤15を塗布等の手段により介在させて上述のローラ9にてヘミング加工するものである。
【0021】
また上述のロボット3は被ヘミング部材としてのドア、ボンネットまたはトランクリッド等の車両用蓋物の各種ワークの形状の対応してその周縁形状に正確に追従すべく予め3次元の移動軌跡がワーク毎にティーチング(教示)されている。
次に図6に示す工程図および図3、図4、図5に示す説明図を参照して、ローラ式ヘミング方法について説明する。
【0022】
まず図6に示す第1の工程S1で、インナパネル13の接合面にガラスビーズ14入りの接着剤15を塗布する。
次に図6に示す第2の工程S2で、アウタパネル12をヘミングダイ2上にセットし、このアウタパネル12上に接着剤15が塗布されたインナパネル13をセットする(図1、図3参照)。この時、上述のアウタパネル12は図3に示す如くその主面12aに対して未曲げ部12bが略直角に起立した状態下にある。
【0023】
次に図6に示す第3の工程S3で、ローラ式ヘミング加工を実行する。このローラ式ヘミング加工は図4に示す仮曲げ工程と、図5に示す本曲げ工程とを備えている。
【0024】
まず、ローラ9をアウタパネル12の折曲げ部Rに対して約45度に傾斜した押圧角度が保持されるようにロボット3を制御(図1参照)し、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧すると、図3の未曲げ部12bは図4に示す如く約45度に仮曲げ加工される。
【0025】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢を図1の状態から図2に示す状態に変更し、ガラスビーズ14入りの接着剤15が介在された両パネル12,13の加工部を上方から略直角方向に押圧すべくロボット3を姿勢制御する。
【0026】
而して、この押圧角度を保持した状態でローラ9を加圧シリンダ7によりローラ移動方向においてローラ押圧力を変化させながら(ローラを上下方向に微振動させながら)折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧移動させると、図4に示す折曲げ部Rは図5に示すように完全に折曲げられてヘミング部Hが構成される。
【0027】
この図4から図5に至る本曲げ加工においては、上述の加圧シリンダ7によるローラ押圧力を強弱変化させるので、ローラ押圧力の弱い時にガラスビーズ14の逃げが確実に防止され、かつ該ガラスビーズ14の両パネル12,13に対する若干の食い込みが得られ、ローラ押圧力の強い時にガラスビーズ14の両パネル12,13に対する充分かつ完全な食い込みが得られるので、上述のガラスビーズ14により両パネル12,13の確実なクリンチ力を確保することができて、両パネル12,13の搬送時等の位置ずれが完全に防止できる。
【0028】
次に図6に示す第4の工程S4で、ヘミング加工完了後の両パネル12,13に対して脱脂・表面処理が実行される。
次に図6に示す第5の工程S5で、脱脂・表面処理終了後の両パネル12,13に対して電着塗装が実行される。
【0029】
次に図6に示す第6の工程S6で、電着塗装終了後の両パネル12,13に対して電着乾燥が実行される。この乾燥処理は例えば塗装乾燥炉を用いて約180℃の温度下で30分程度の乾燥が実行されるので、前述の接着剤15はこの乾燥工程において硬化され、接着剤15の硬化処理によりヘミング部Hは完全に拘束される。
【0030】
次に図6の示す第7の工程S7で、電着乾燥終了後の両パネル12,13に対して中塗が実行され、次の第8の工程S8で、中塗終了後の両パネル12,13に対して乾燥炉を用いて中塗乾燥が実行され、次の第9の工程S9で、中塗乾燥終了後の両パネル12,13に対して上塗が実行され、さらに次の第10の工程S10で、上塗終了後の両パネル12,13に対して乾燥炉を用いて上塗乾燥が実行される。
【0031】
このようなローラ式ヘミング方法によれば、被ヘミング部材(パネル12,13参照)間に滑り防止固形材(ガラスビーズ14参照))を含有する接着剤15を介在させて、このガラスビーズ14により板材(パネル12,13参照)の滑り(位置ずれ)を抑制してローラ9でガラスビーズ14が逃げないようにヘミング加工する方法であるから、上述のガラスビーズ14の嵌合による板材(パネル12,13参照)のクリンチ力を確実に得ることができ、この結果、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を図ることができる。
【0032】
また、ローラ9の加圧力を該ローラ9の移動方向(進行方向)において変化させるので、このローラ9加圧力の強弱によりガラスビーズ14の逃げを確実に防止しつつ、該ガラスビーズ14による被ヘミング部材(パネル12,13参照)の確実なクリンチ力を確保することができる。
【0033】
さらに、上述のローラ9の押圧力をローラ移動方向(ローラ進行方向)において変化させる加圧シリンダ7を用いるので、該加圧シリンダ7による加圧力(押圧力)の調整が容易で、適正圧力を簡単に得ることができる。
【0034】
さらにまた、上述の接着剤15を塗装乾燥工程(図6の第5ステップS5参照)で例えば塗装乾燥炉を用いて硬化させるので、接着剤15の硬化処理によりヘミング部(完全に折り曲げ完了された部分)Hを完全に拘束することができる。
【0035】
また、ドア、ボンネット、トランクリッドなどの車両用蓋物に対して確実なヘミング加工を実行することができる。
【0036】
さらに、上述のローラ式ヘミング装置によれば、上述の加圧シリンダ7はヘミング加工用のローラ9(ヘムローラ)の押圧力をその移動方向において変化させるので、加圧力の調整が容易となり、また適正圧力を容易に得ることができる。
【0037】
加えて、被ヘミング部材(パネル12,13参照)間にガラスビーズ14を含有する接着剤15を介在させてローラ9にてヘミング加工する装置であるから、ガラスビーズ14による被ヘミング部材のクリンチ力を確実に得て、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を達成することができるのは勿論である。
【0038】
(第2実施例開示構造)
図7乃至図12はローラ式ヘミング方法およびその装置の第2実施例開示構造を示す。ローラ式ヘミング装置1については図1、図2を参照して既に説明した第1実施例開示構造の装置とほぼ同一の装置を用いるが、この第2実施例開示構造においてはローラ9の押圧力をその移動方向において変化させる必要がないので加圧シリンダ7は押圧力強弱制御を実行しない状態下において使用する。
【0039】
しかも、この第2実施例開示構造においてはローラ9の外周面に固形材逃げ防止用の凹部9aが設けられている。
上述の凹部9aは図8に示すようにローラ9の外周面にその軸芯方向と平行するように90度の等間隔で形成された合計4個の凹溝であってもよく、60度の等間隔で形成された合計6個の凹溝であってもよく、45度の等間隔で形成された合計8個の凹溝であってもよく、その他の任意の開角で形成された複数個の凹溝であってもよい。
【0040】
また上述の凹部9aは図9に示すようにローラ9の外周面全域に凹設されたディンプル(dimple、略半球状)形状の窪みであってもよく、この窪みの形成領域はローラ9の外周面全域に限定されることなく、図8のように部分的に形成してもよい。
【0041】
さらに上述の凹部9aは図10に示すようにローラ9の全体をギヤ形状に構成し、そのギヤの谷部により形成してもよく、或は一部分にギヤが形成されない周面を残して、ギヤの谷部を部分的に形成してもよい。
ここで、上述の凹部9aの深さはガラスビーズ14の直径=200〜300μmφに対してそれ以下に設定されることが望ましい。
【0042】
このように構成したローラ式ヘミング装置を用いてヘミング加工を行なう方法について以下に説明する。
但し、図6の工程図において第3の工程S3以外の工程については先の第1実施例開示構造と同様である。
【0043】
図6に示す第3の工程S3においてローラ式ヘミング加工を実行するが、このローラ式ヘミング加工は図7に示す仮曲げ工程と、図11、図12に示す本曲げ工程とを備えている。
まず、ローラ9(但し、この場合のローラ9としては凹部9aがないローラを用いることもできる)をアウタパネル12の折曲げ部Rに対して約45度に傾斜した押圧角度が保持されるようにロボット3を姿勢制御(図7参照)し、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧すると、未曲げ部12b(図3参照)は図7に示す如く約45度に仮曲げ加工される。
【0044】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢を図7の状態から図11に示す状態に変更し、ガラスビーズ14入りの接着剤15が介在された両パネル12,13の加工部を上方から略直角方向に押圧すべくロボット3を姿勢制御する。
而して、この押圧角度を保持した状態で凹部9aを有するローラ9を、折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧移動させると、図7に示す折曲げ部Rは図11に示すように完全に折曲げられてヘミング部Hが構成される。
【0045】
ローラ9が図12に右方向に進行して同図の右側部の状態から同図の左側部の状態に至る本曲げ加工においてはローラ9の凹部9aが有る部分と無い部分とでローラ9による加圧力がその移動方向において強弱変化するので、ローラ押圧力の弱い時(凹部9a対向時)にガラスビーズ14の逃げが確実に防止され、かつ該ガラスビーズ14の両パネル12,13に対する若干の食い込みが得られ、ローラ押圧力の強い時(非凹部対向時)にガラスビーズ14の両パネル12,13に対する完全な食い込みが得られるので、上述のガラスビーズ14により両パネル12,13の確実なクリンチ力を確保することができて、両パネル12,13の搬送時等の位置ずれが完全に防止できる。
【0046】
このようにしてヘミング加工が終了された両パネル12,13は図6の第4および第5の各工程S4,S5を経て第6の工程S6に移行され、この第6の工程S6で乾燥処理が施されるので、接着剤15が乾燥硬化され、ヘミング部Hは完全に拘束される。
【0047】
このようなローラ式ヘミング方法によれば、ローラ9の外周に凹部9aを設け、このローラ9の凹部9aで加圧力を弱くし、非凹部で加圧力を強くするので、簡単な構造かつ制御が容易でありながら、上述の加圧力の強弱により確実なクリンチ力を確保することができる。
【0048】
また、上述のローラ9の外周に固形材逃げ防止用の凹部9aを形成したので、このローラ9の回転・転圧により押圧力を強弱制御することができる。
このためローラ9の外周に凹部9aを形成するだけの簡単かつ制御が容易な構成でありながら、確実なクリンチ力を得ることができる。
【0049】
加えて被ヘミング部材(両パネル12,13参照)間にガラスビーズ14を含有する接着剤15を介在させてローラ9にてヘミング加工する装置であるから、ガラスビーズ14による被ヘミング部材のクリンチ力を確実に得て、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を達成することができるのは当然である。
なお、その他の点については第1実施例開示構造とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図7乃至図12において前図と同一の部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0050】
(実施例)
図13、図14はローラ式ヘミング方法およびその装置の実施例を示す。
【0051】
ローラ式ヘミング装置1については図1、図2を参照して先に説明した第1実施例開示構造の装置と同一の装置を用いる。但し、この第3実施例においては本曲げ加工を図13に示すプリ本曲げ加工(予備曲げ加工)と、図14に示す本曲げ加工とに分けるので、上述の単一のロボット3にて次の2つの加工を実行する。
【0052】
すなわち、上述の同一ロボット3により、固形材としてのガラスビーズ14が僅かに両パネル12,13に食い込むようにローラ9にて予備曲げ加工(プリ本曲げ加工)すると共に、ガラスビーズ14が充分に両パネル12,13に食い込むようにローラ9にて本曲げ加工するものである。
このように構成したローラ式ヘミング装置を用いてヘミング加工を行なう方法について以下に説明する。
【0053】
但し、図6の工程図において第3の工程S3以外の工程については先の第1実施例開示構造と同様である。
【0054】
図6に示す第3の工程S3においてローラ式ヘミング加工を実行するが、このローラ式ヘミング加工は図7に示す仮曲げ工程と、図13に示す予備曲げ工程と、図14に示す本曲げ工程とを備えている。
まず、ローラ9(但し、この場合のローラ9としては凹部9aがないローラを用いる)をアウタパネル12の折曲げ部Rに対して約45度に傾斜した押圧角度が保持されるようにロボット3を姿勢制御(図1参照)し、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧すると、未曲げ部12b(図3参照)は図1に示す如く約45度に仮曲げ加工される。
【0055】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢を図1の状態から図13に示す状態に変更し、ガラスビーズ14入りの接着剤15が介在された両パネル12,13の加工部を上方から直角に近い方向に押圧すべくロボット3を姿勢制御する。
【0056】
而して、この図13に示す押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って約50kgf の押圧力にて転圧移動させると、ガラスビーズ14が僅かに両パネル12,13に食い込んで、その逃げが確実に阻止される(予備曲げ工程)。
【0057】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢変更によりローラ9の姿勢を図13の状態から図14に示す状態に変更し、両パネル12,13の加工部を上方から略直角方向に押圧するようにロボット3を姿勢制御する(図2参照)。
【0058】
而して、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って約150〜200kgf の押圧力にて転圧移動させると、図13に示す折曲げ部Rは図14に示すように完全に折曲げられてヘミング部Hが構成され、この時、上述のガラスビーズ14は充分に両パネル12,13に食い込む(本曲げ工程)。つまり、上述のローラ9は仮曲げ工程、予備曲げ工程て、本曲げ工程によりワークの周縁形状に沿って合計3周することになる。
【0059】
このようにしてヘミング加工が終了された両パネル12,13は図6の第4および第5の各工程S4,S5を経て第6の工程S6に移行され、この第6の工程S6で乾燥処理が施されるので、接着剤15が乾燥硬化され、ヘミング部Hは完全に拘束される。
【0060】
このように上記実施例のローラ式ヘミング方法によれば、上述のローラ9でガラスビーズ14が僅かに被ヘミング部材(両パネル12,13参照)に食い込むよう予備曲げ加工し、次にローラ9でガラスビーズ14が被ヘミング部材(両パネル12,13参照)に充分食い込むよう本曲げ加工するので、上述の予備曲げ加工時にガラスビーズ14の逃げを防止し、次の本曲げ加工時にガラスビーズ14を被ヘミング部材(両パネル12,13参照)に充分に食い込ませて確実なクリンチ力を得ることができ、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を図ることができる効果がある。
【0061】
また、上述の予備曲げ加工および本曲げ加工を同一のロボット3(一台のロボット)にて実行するので、同一の設備により2段階の加工(図13と図14参照)を行なうことができる効果がある。
【0062】
さらに、ドア、ボンネット、トランクリッドなどの車両用蓋物に対して確実な2段階ヘミング加工を実行することができる効果がある。
さらにまた、ヘミング加工後に接着剤15を塗装乾燥工程(図6の第6ステップS6参照)において硬化させるので、この接着剤15の硬化処理によりヘミング部Hを完全に拘束することができる効果がある。
【0063】
一方、上記実施例のローラ式ヘミング装置によれば、上述の同一のロボット3により予備曲げと本曲げとの2段階加工を実行するので、同一の設備・装置により斯る2段階の曲げ加工を行なうことができる効果がある。
加えて、ヘミング部材(両パネル12,13参照)間にガラスビーズ14を含有する接着剤15を介在させてローラ9にてヘミング加工する装置であるから、ガラスビーズ14による被ヘミング部材のクリンチ力を確実に得て、アフタヘム溶接を廃止して、スポットレス化を達成することができる。
【0064】
(第3実施例開示構造)
図15、図16、図17はローラ式ヘミング方法およびその装置の第3実施例開示構造を示す。
ローラ式ヘミング装置1については図1、図2を参照して先に述べた第1実施例開示構造の装置と同一の装置を用いる。但し、この第3実施例開示構造においては図15に示すレーザーダル加工装置16により予めレーザーダルロールとしての圧延ロール17を形成し、この圧延ロール17を用いて圧延されたレーザーミラー鋼板をインナパネル13として用いる。
【0065】
上述のレーザーダル加工装置16は、レーザ発振器18からのレーザ光をミラー19で反射させ、この反射光を集光レンズ20で集光した後に、チョッパブレード21を介して圧延ロール17に照射して、旋盤22で支持された圧延ロール17の外周面に圧延加工形状面17aをレーザ加工する。
【0066】
ここで、上述の各要素18〜21は単一のユニット23にユニット化され、圧延ロール17およびチョッパブレード21を矢印方向に回転させながらユニット23を順次矢印方向へ移動制御すると、圧延ロール17の全周面に上述の圧延加工形状面17aを形成することができる。
【0067】
この圧延ロール17を用いて圧延されたインナパネル13は上述の圧延加工形状面17aが転写されるので、図16に示すようにその一方の面全体に凹凸部24が形成され粗面化されている。この凹凸部24が形成された面をアウタパネル12の内側面と対向させて用いる。ここで、上述の凹凸部24の深さはガラスビーズ14の逃げが抑制できる深さ、例えばガラスビーズ14の直径約1/4〜1/3程度が望ましい。
【0068】
上述の凹凸部24を有するインナパネル13を用いてのローラ式ヘミング方法について以下に説明する。
図6に示す第3の工程S3においてローラ式ヘミング加工を実行するが、このローラ式ヘミング加工は仮曲げ工程(図4参照)と、図17に示す本曲げ工程とを備えている。
【0069】
まず、ローラ9(但し、この場合のローラ9としては凹部9aがないローラを用いる)をアウタパネル12の折曲げ部Rに対して約45度に傾斜した押圧角度が保持されるようにロボット3を姿勢制御(図1参照)し、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧すると、未曲げ部12b(図3参照)は図4に示す如く約45度に仮曲げ加工される。
【0070】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢を図1の状態から図2に示す状態に変更し、ガラスビーズ14入りの接着剤15が介在された両パネル12,13の加工部を上方から略直角方向に押圧すべくロボット3を姿勢制御する。
而して、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧移動させると、図1に示す折曲げ部Rは図2、図17に示すように完全に折曲げられてヘミング部Hが構成される。
【0071】
しかも、インナパネル接合面(この実施例ではインナパネル13のアウタパネル12と対向する側の面)にはその前面に凹凸部24が一体形成されているので、この凹凸部24によりガラスビーズ14の逃げが確実に阻止され、この状態下においてローラ9からの加圧力が付勢されるので、両パネル12,13に対する完全な食い込みが得られ、上述のガラスビーズ14により両パネル12,13の確実なクリンチ力を確保することができて、両パネル12,13の搬送時等の位置ずれが完全に防止できる。
【0072】
このようにしてヘミング加工が終了された両パネル12,13は図6の第4および第5の各工程S4,S5を経て第6の工程S6に移行され、この第6の工程S6で乾燥処理が施されるので、接着剤15が乾燥硬化され、ヘミング部Hは完全に拘束される。
【0073】
このようなローラ式ヘミング方法によれば、接着剤15の介在面に凹凸部24が形成されたインナパネル13を用い、この凹凸部24に接着剤15を介在させ、次にローラ9にて押圧してヘミング加工するので、特別なローラ構造や特別なローラ制御を不要としつつ、上述の凹凸部24にてガラスビーズ14の逃げを確実に阻止して、良好なクリンチ力を確保することができる。
【0074】
また、インナパネル接合面(インナパネルのアウタパネルと接する面またはアウタパネルのインナパネルと接する面の少なくとも一方)に上述の凹凸部24を形成したので、この凹凸部24によりガラスビーズ14等の逃げを確実に阻止することができる。
【0075】
さらに、上述の凹凸部24をレーザーダルロール(圧延ロール17参照)により形成するので、この凹凸部24を既存の装置和を有効利用しつつ、偏平な板材状態下において簡単に形成することができる。
【0076】
加えて、ドア、ボンネット、トランクリッド等の車両蓋物に対して確実なヘミング加工を実行することができる。
また、ヘミング加工後に接着剤15を塗装乾燥工程(図6の第6の工程S6参照)において硬化させるので、この接着剤15の硬化処理によりヘミング部Hを完全に拘束することができる。
【0077】
(第4実施例開示構造)
図18、図19、図20はローラ式ヘミング方法およびその装置の第4実施例開示構造を示す。
ローラ式ヘミング装置1については図1、図2を参照して先に説明した第1実施例開示構造の装置と同一の装置を用いる。但し、この第4実施例開示構造においては図18に示すプレス加工機25によりインナパネル13のプレス加工と同時に同パネル13の必要箇所にのみ凹凸部26を同時形成する。
【0078】
上述のプレス加工機25は上型27と下型28とを有し、この下型28の所定部にはローレット形状の凹凸形状面29が一体形成されている。しかも、この凹凸形状面29は部分焼入れ等による表面硬化処理で硬度を有するように構成されている。
【0079】
このプレス加工機25を用いてプレス加工されたインナパネル13は図19に示すようにその一方の面の必要箇所(インナパネル接合面)に上述の凹凸形状面28において凹凸部26が同時形成される。なお、図18の点線30より外側の部分はプレス加工後においてトリミングして除去する。ここで、上述の凹凸部26の深さはガラスビーズ14の逃げが抑制できる深さ、例えばガラスビーズ14の直径の約1/4〜1/3程度が望ましい。
【0080】
この凹凸部26を有するインナパネル13を用いてのローラ式ヘミング方法について以下に説明する。
但し、図6の工程図において第3の工程S3以外の工程については先の第1実施例開示構造と同様である。
【0081】
図6に示す第3の工程S3においてローラ式ヘミング加工を実行するが、このローラ式ヘミング加工は図7に示す仮曲げ工程(図4参照)と、図20に示す本曲げ工程とを備えている。
まず、ローラ9(但し、この場合のローラ9としては凹部9aがないローラを用いる)をアウタパネル12の折曲げ部Rに対して約45度に傾斜した押圧角度が保持されるようにロボット3を姿勢制御(図1参照)し、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧すると、未曲げ部12b(図3参照)は図4に示す如く約45度に仮曲げ加工される。
【0082】
次に、ロボット3におけるロボットアーム4、ロボットハンド6の姿勢を図1の状態から図2に示す状態に変更し、ガラスビーズ14入りの接着剤15が介在された両パネル12,13の加工部を上方から略直角方向に押圧すべくロボット3を姿勢制御する。
而して、この押圧角度を保持した状態でローラ9を折曲げ部Rの周縁形状に沿って転圧移動させると、図1に示す折曲げ部Rは図1、図20に示すように完全に折曲げられてヘミング部Hが構成される。
【0083】
しかも、上述のインナパネル13にはそのプレス加工時に前述の凹凸部26が予め同時形成されているので、本曲げ工程時において、この凹凸部26によりガラスビーズ14の逃げを確実に阻止して、この状態下においてローラ9からの加圧力(押圧力)が付勢されるので、両パネル12,13に対する完全な食い込みが得られ、上述のガラスビーズ14により両パネル12,13の確実なクリンチ力を確保することができて、両パネル12,13の搬送時等の位置ずれが完全に防止できる。
【0084】
このようにしてヘミング加工が終了された両パネル12,13は図6の第4および第5の各工程S4,S5を経て第6の工程S6に移行され、この第6の工程S6で乾燥処理が施されるので、接着剤15が乾燥硬化され、ヘミング部Hは完全に拘束される。
このようなローラ式ヘミング方法によれば、被ヘミング部材(インナパネル13参照)の必要部位に凹凸部26をそのプレス加工と同時に形成することができ、別途の凹凸部加工工程が不要となる。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の滑り防止固形材は、実施例の球状のガラスビーズ14に対応し、
以下同様に、
板材および被ヘミング部材は、インナパネル13、アウタパネル12に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0086】
例えば、上記球状のガラスビーズ14に代えて立方体、六角柱その他の多面体形状のガラスビーズであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のローラ式ヘミング方法およびその装置を示す系統図。
【図2】 ロボット姿勢変更時の説明図。
【図3】 被ヘミング部材セット工程を示す説明図。
【図4】 仮曲げ工程を示す説明図。
【図5】 本曲げ工程を示す説明図。
【図6】 工程図。
【図7】 ローラ式ヘミング装置の実施例開示構造を示す側面図。
【図8】 ローラの斜視図。
【図9】 ローラの構造を示す斜視図。
【図10】 ローラのさらに他の構造を示す斜視図。
【図11】 ロボット姿勢変更時の説明図。
【図12】 凹部をもったローラによる本曲げ時の説明図。
【図13】 予備曲げ加工時の説明図。
【図14】 本曲げ加工時の説明図。
【図15】 レーザーダル加工装置の説明図。
【図16】 インナパネルの凹凸部形状を示す断面図。
【図17】 本曲げ工程を示す説明図。
【図18】 凹凸部のプレス加工と同時成形を示す断面図。
【図19】 インナパネルの凹凸部形状を示す断面図。
【図20】 本曲げ工程を示す説明図。
【図21】 従来のローラ式ヘミング方法を示す説明図。
【図22】 従来方法におけるローラ姿勢変更時の説明図。
【符号の説明】
3…ロボット
9…ローラ
12…アウタパネル(被ヘミング部材)
13…インナパネル(被ヘミング部材)
14…ガラスビーズ(滑り防止固形材)
15…接着剤
Claims (4)
- 滑り防止固形材を含有する接着剤を被ヘミング部材間に介在させて、該固形材にて被ヘミング部材の滑りを抑制してローラにてヘミング加工するローラ式ヘミング方法であって、
上記ローラにて固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込むよう予備曲げ加工した後に、
上記ローラにて固形材が被ヘミング部材に充分食い込むよう本曲げ加工する
ローラ式ヘミング方法。 - 上記予備曲げ加工および本曲げ加工を同一のロボットにて実行する
請求項1記載のローラ式ヘミング方法。 - ドア、ボンネット、トランクリッド等の車両用蓋物をローラにてヘミング加工する
請求項1記載のローラ式ヘミング方法。 - 被ヘミング部材間に滑り防止固形材を含有する接着剤を介在させてローラにてヘミング加工するローラ式ヘミング装置であって、
固形材が僅かに被ヘミング部材に食い込むようにローラにて予備曲げ加工すると共に、
固形材が充分に被ヘミング部材に食い込むようにローラにて本曲げ加工するロボットを備えた
ローラ式ヘミング装置。
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