JP3828855B2 - 超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法 - Google Patents

超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スポット溶接で形成させた高強度鋼板溶接継手、主に、自動車用部品の取付けおよび車体の組立てなどで使用されるスポット溶接方法で形成させた高強度鋼板溶接継手の引張強さを向上させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の低燃費化、CO2排出量削減および衝突安全性向上等の対策のため、自動車分野では、自動車の車体や部品などに、薄肉の高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。
【0003】
自動車の車体の組立てや部品の取付けなどには、スポット溶接方法が主に用いられているが、高強度鋼板をスポット溶接方法で溶接する場合には、以下のような問題がある。
【0004】
スポット溶接部(溶接継手)の重要な品質指標として、まず上げられるのが、引張強さである。通常、溶接継手の引張強さとしては、引張せん断強さ(継手のせん断方向に負荷した場合の引張強さ)と十字引張強さ(継手の剥離方向に負荷した場合の引張強さ)が上げられる。
【0005】
引張せん断強さは、ナゲット径、板厚、鋼板の引張強さの増加に伴い増加し、また、十字引張強さは、ナゲット径、板厚の増加に伴い増加する。十字引張強さは、軟鋼の場合、引張せん断強さと同程度の値を示すが、高強度鋼板では引張せん断強さより低い値を示す。これは、剥離方向に負荷した場合、せん断方向に負荷した場合に比べて、ナゲット周囲での応力集中が高まるからである。
【0006】
ところで、溶接中に散り(通電中、鋼板間に生成された溶融部の直径が銅電極の先端直径より大きくなって、鋼板の隙間から溶融金属が飛散する現象)が発生する場合には、図1に示したように、ナゲット2の端部3が鋭い切り欠き形状になる。その結果、高強度鋼板を用いた場合には、継手の引張せん断強さ(継手のせん断方向4に負荷した場合の引張強さ)や十字引張強さ(継手の剥離方向5に負荷した場合の引張強さ)が、散りが発生しない場合に比べて大きく低下したりばらついたりする。
【0007】
一方、軟鋼板では、引張せん断強さや十字引張強さの低下、ばらつきは小さい。これは、ナゲット端部の切り欠き形状の影響が小さいためである。スポット溶接継手では、ナゲット径の増加とともに、ナゲット内で破断するせん断破断から、ナゲット周囲で破断するプラグ破断に移行する。通常、自動車分野では、十分な継手強度を得るため、ナゲット径を大きくしてナゲット周囲で破断が起こるように溶接条件を設定している。
【0008】
しかし、散りが発生して、ナゲット端部が切り欠き形状になると、通常はナゲット周囲で破断する条件でも、ナゲット内で破断が起こる場合があり、この場合には、引張強さの低下やばらつきが起こる。
【0009】
高強度鋼板を散りが発生するような条件で溶接した場合に、引張強さの低下やばらつきが起こるのは、下記の理由によるものである。一般に、鋼板の引張強さが増加するほど、下記式で示される炭素当量CeqhとCeqtの値が高くなる傾向にあり、溶接部の硬さが上昇し、靭性が低下することが知られている。
Ceqh=C+Si/40+Cr/20 (硬さに関する炭素当量)
Ceqt=C+Si/30+Mn/20+2P+4S (靭性に関する炭素当量)
式中、C、Si、Mn、P、Sは、それぞれ、鋼中の炭素、珪素、マンガン、燐、硫黄の各含有量(質量%)を示す。
【0010】
このように、高強度鋼板の引張強さが増加するほど、一般的には、上記鋼板の炭素当量CeqhとCeqtが高くなるため、引張強さが高い鋼板ほどナゲット形成部と熱影響部(HAZ)の硬さが高くなり、靱性が低下して、ナゲット端部の切り欠き形状に対する感受性が高まり、破壊が容易に起こり易くなったり、ばらつきが生じたりする。
【0011】
高強度鋼板のスポット溶接で散りが発生すると、引張せん断強さや十字引張強さが大きく低下したりばらついたりするため、溶接継手の品質を保証することができず、大きな問題となっている。
【0012】
一方、フェライト中にマルテンサイトやベイナイトを含む2相複合組織鋼板やベイナイト単層組織からなるバーリング鋼板を溶接すると、熱影響部(HAZ)が軟化することは良く知られている。この現象はHAZ軟化と呼ばれ、アーク溶接など入熱が高い溶接法を用いた場合には良く観察される現象である。
【0013】
これに対して、スポット溶接法は熱サイクルが非常に早い溶接法であるため、アーク溶接法などに比べるとHAZ軟化は起こり難いが、それでも780MPa以上の高強度鋼板ではHAZ軟化が認められる。
【0014】
HAZ軟化が生じると、引張試験時に強度が低いその部分に歪が集中して破断が起こるため、引張せん断強さや十字引張強さの低下につながる可能性があり問題となる。また、疲労強度の低下につながる可能性もある。
【0015】
一方、従来、高強度鋼板のスポット溶接において、散りが発生した場合における引張強さの低下やばらつきを抑制する方法に関してはほとんど提案がなされていない。また、HAZ軟化に対しては、耐HAZ軟化性に優れた鋼板が提案されている(例えば、非特許文献1、参照)が、疲労強度向上に対するものであり、また、幅広い組成の2相複合組織鋼板やバーリング鋼板のHAZ軟化を防ぐ方法に関しては提案されていない。
【非特許文献1】
まてりあ 第38巻 第3号(1999)、P242〜244
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、高強度鋼板のスポット溶接で散りが発生したり、HAZ軟化が起こった場合には、溶接継手の引張せん断強さや十字引張強さが低下する懸念があるため、自動車分野において高強度鋼板を用いても、高強度鋼板を用いることによる安全性の向上や軽量化による低燃料費化、CO2排出量削減のメリットを十分に享受することができない。
【0017】
溶接継手の引張せん断強さや十字引張強さを向上させるため、スポット溶接打点数を増やす従来の方法を採用することもできるが、この方法は、作業効率の低下、コスト上昇および設計自由度の制約などの問題を抱えている。
【0018】
本発明は、高強度鋼板のスポット溶接に従来技術を適用した場合において生じる問題を解決するため、高強度鋼板のスポット溶接において、良好な作業性を確保しつつ溶接継手の引張強さを向上させる方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、スポット溶接継手の引張強さが、ナゲット端部の形状(切り欠き状態)やナゲット周囲の熱影響部での軟化状態に依存すると考え、ナゲット端部の形状やナゲット周囲の熱影響部での軟化を何らかの手段で改善すれば、溶接継手の引張強さを高めることができるとの発想の下に、ナゲット端部の形状やナゲット周囲の熱影響部での軟化を改善する手法について鋭意検討した。
【0020】
その結果、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施せば、溶接継手の引張強さを効果的に高めることができることを見出した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は、以下のとおりである。
【0021】
(1) 高強度鋼板を溶接時に散りが発生する条件でスポット溶接して形成させた溶接継手の引張強さを向上させる方法において、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施すことを特徴とする超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
【0022】
(2) フェライト中にマルテンサイトまたはベイナイトを含む2相複合組織からなる高強度鋼板、あるいは、ベイナイト組織単相からなる引張強さが780MPa以上の高強度鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の引張強さを向上させる方法において、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施すことを特徴とする超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
【0023】
(3) 前記超音波衝撃処理を、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mm以上、超音波衝撃処理部の板厚の15%以下になるように施すことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明者は、ナゲット端部の形状やナゲット周囲の熱影響部での軟化を改善する手法について検討した。その結果、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施せば、溶接継手の引張強さを効果的に高めることができることを見出した。
【0025】
本発明は、前述したように上記知見に基づいてなされたものである。以下、詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明の超音波衝撃処理を説明するための図である。本発明では、図2に示したように、発信機6から超音波を発生させ、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に、工具6(図3ではピン)を介して衝撃超音波衝撃処理を施し、ナゲット端部の切り欠き形状を衝撃超音波衝撃処理による塑性変形によって改善し、あるいは、ナゲット周囲の熱影響部における軟化域を塑性変形によって加工硬化させる。
【0027】
このナゲット端部での切り欠き形状の改善によってナゲット端部での応力集中が緩和され、また、加工硬化によってHAZ軟化域の硬さが回復するため、溶接継手の引張強さが向上するものと考えられる。
【0028】
引張強さを向上させるためには、引張試験時に破断が生じるナゲット形成部周囲に超音波衝撃処理を施し、ナゲット端部の切り欠き形状を改善したり、HAZ軟化部を加工硬化させれば良いが、ナゲット形成部に超音波衝撃処理を施した場合にも引張強さは向上する。これは、ナゲット形成部に超音波衝撃処理を施すことによってナゲット形成部が変形し、その結果、ナゲット形成部の周囲が圧縮されて、間接的にナゲット端部の切り欠き形状が変化したり、あるいは、HAZ軟化域が加工硬化するためと考えられる。
【0029】
したがって、超音波衝撃処理は、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲のどちらか一方に施しても良いし両方に施しても良い。確実にナゲット端部の切り欠き形状を変化させたり、HAZ軟化域を加工硬化させるためには、少なくともナゲット形成部周囲には超音波衝撃処理を施した方が望ましい。
【0030】
また、ナゲット形成部に超音波処理を施した場合には、ナゲット自体も加工硬化する可能性があり、また、ナゲット端部の切り欠き形状も改善されるため、ナゲット内でのせん断破断を防ぐことが可能となる。
【0031】
さらに、両面に超音波衝撃処理を施せば、鋼板両面のナゲット形成部周囲で破壊が起こりにくくなるため、引張強さ向上の効果は大きいが、片面に超音波衝撃処理を施しただけでも引張強さ向上の効果が認められる。これは、片面に超音波衝撃処理を施しただけでも、逆側の鋼板で間接的に、ナゲット端部の切り欠き形状を改善させたり、HAZ軟化域を加工硬化させるるためと考えられる。
【0032】
本発明において、超音波衝撃処理は、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mm以上、超音波衝撃処理部の板厚の15%以下になるように施すことが好ましい。この超音波衝撃処理により、スポット溶接継手の疲労強度を効果的に向上させることができる。
【0033】
上記において、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mmを下回る場合には、超音波衝撃処理部の変形量が少なすぎて、ナゲット端部の切り欠き形状が十分改善されなかったり、加工硬化によるHAZ軟化部の硬さ回復が少なすぎて引張強さが効果的に向上しないからである。
【0034】
一方、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が板厚の15%を越える場合には、超音波衝撃処理部(ナゲット形成部またはナゲット形成部周囲)の板厚が減少して、引張強さを低下せしめるからである。
【0035】
通常、板厚減少とともに引張せん断強さと十字引張強さは減少するが、超音波衝撃処理の場合には、超音波衝撃処理部(ナゲット形成部またはナゲット形成部周囲)が加工硬化するため、ある程度板厚が減少しても、引張せん断強さと十字引張強さは減少しない。
【0036】
なお、超音波衝撃処理において用いる超音波の周波数、振幅および発信出力は特に規定する必要はないが、周波数20〜60kHz、振幅20〜40μm、および、発信出力500〜1500Wの超音波を用いて超音波衝撃理を行うのが望ましい。周波数は、これより低いと超音波衝撃処理時の騒音が増加し、これより高いと装置の規模が大きくなりすぎるからである。
【0037】
振幅は、これより低くても高くても引張強さ向上の効果が低くなる。発信出力は、これより低いと、特に引張強さが高い鋼板の場合には十分な変形量が得られなくなり、また、これより高いと超音波衝撃処理を施した部分の板厚が減少しすぎて、逆に引張強さが低下する場合がある。また、装置の規模が大きくなりすぎる等の問題も生じる。
【0038】
超音波衝撃処理において用いる工具(ピン)は、その形状が特に限定されるものではないが、直径2.0〜8.0mm、先端曲率半径10〜100mm、および、ビッカース硬さ500〜900のピンを用いて行うことが望ましい。ピンの直径が2.0mmを下回る場合にはピンが座屈しやすくなり、また、8.0mmを越える場合には、面圧が低くなりすぎて十分な変形が導入されにくくなる。
【0039】
ピンの先端曲率半径が10mmより小さい場合には先端が鋭くなりすぎて損傷しやすく、また、100mmを越える場合には、接触面が平面になりすぎて片当たりの問題が生じる。ピンのビッカース硬さが500を下回る場合にはピンが損傷しやすく、また、900を越える場合にも、靭性が低下してピンが損傷しやすくなる。
【0040】
また、被溶接材の厚みについても特に規定する必要がない。一般に、自動車用部品や車体などで使われる高強度鋼板の板厚は、0.4〜4.0mmであり、本発明は、この板厚において充分に効果を奏することができる。
【0041】
さらに、鋼板の種類についても特に限定する必要がない。固溶型、析出型(例えば、Ti析出型、Nb析出型)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)など、いずれの型の鋼板にも本発明を適用できる。鋼板の製造方法は、熱間圧延法でも冷間圧延法でも良く、裸鋼板でもめっき鋼板でも良い。
【0042】
被覆するめっきの種類は、導伝性のものならいずれの種類(例えば、Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Sn−Zn、など)であっても良いが、目付量は両面で100/100g/m2以下のものが望ましい。
【0043】
【実施例】
以下に実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、実施例で用いた条件に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
表1に示す板厚1.6mm、引張強さ290〜1178MPaの鋼板から、スポット溶接継手の引張試験方法(JIS Z3136)に基づいて、引張せん断試験片、十字引張試験片を作製した。
【0045】
鋼板の種類は、軟鋼(記号:290S)、固溶強化型高強度鋼(記号:440S)、析出強化型高強度鋼(記号:590P)、2相複合組織型高強度鋼(記号:590D、780D、980D、1180D)、加工誘起変態型複合組織高強度鋼(記号:590T、780T、980T)である。
【0046】
これらの試験片を、同鋼種・同板厚の組み合わせで重ね合わせ、表1〜表3の溶接条件でスポット溶接を行って溶接継手を作製した。
【0047】
スポット溶接された継手について、スポット溶接継手の引張試験方法(JISZ3136)に基づいて引張試験を実施し、引張せん断強さ(TSS)と十字引張強さ(CTS)を測定した。引張せん断強さと十字引張強さについては、ばらつきを調査し、ばらつき幅が継手強度の10%未満のものを○で、それ以上のものを×で標記した。また、スポット溶接部の硬さ分布を調査し、HAZ部の硬さ低下量が母材の10%以上のものを○で、それ未満のものを×で標記した。
【0048】
(実施例1)
表1に示したように、溶接時に散りが発生した溶接継手に超音波衝撃処理を施した場合(条件No.1〜No.14)の引張せん断強さ(TSS)、十字引張強さ(TSS)は、超音波衝撃処理を施さなかった場合(条件No.15〜No.24)に比べて高い値を示し、また、それぞれのばらつきも10%未満であった。また、超音波衝撃処理を両面に施した場合(条件No.7〜No.10)の引張せん断強さ、十字引張強さは、片面に施した場合(条件No.11〜No.14)に比べて高い値を示した。
【0049】
【表1】
Figure 0003828855
【0050】
(実施例2)
表2に示したように、2相型複合組織鋼板の溶接継手に超音波衝撃処理を施した場合(条件No.1〜No.6)の引張せん断強さ(TSS)、十字引張強さ(TSS)は、超音波衝撃処理を施さなかった場合(条件No.7〜No.9)に比べて高い値を示し、他の鋼種の場合(条件No.10〜No.11)と同程度の値を示した。また、超音波衝撃処理を両面に施した場合(条件No.1〜No.3)の引張せん断強さ、十字引張強さは、片面に施した場合(条件No.4〜No.6)に比べて高い値を示した。
【0051】
【表2】
Figure 0003828855
【0052】
(実施例3)
表3に示したように、溶接時に散りが発生した継手(条件No.1〜No.3、No.7〜No.12)と2相型複合組織鋼板を溶接した継手(条件No.4〜No.6、No.13〜No.18)に超音波衝撃処理を施した場合において、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mm以上、超音波衝撃処理部の板厚の15%以下になるように設定した場合(条件No.1〜No.6)の引張せん断強さ(TSS)と十字引張強さは、その範囲以外に設定した場合(条件No.7〜No.18)に比べて高い値を示した。また、それぞれの溶接継手のばらつきも低かった。
【0053】
【表3】
Figure 0003828855
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、自動車用部品の取付けおよび車体の組立てなどに用いる、高強度鋼板のスポット溶接において、良好な作業性を確保しつつ溶接継手の引張強さを向上することができる。これにより、自動車技術分野などで、高強度鋼板の適用による安全性向上や軽量化による低燃料費、CO2排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、社会的な貢献は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スポット溶接部の引張試験を説明するための断面図である。
【図2】本発明の超音波衝撃処理を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1…高強度鋼板
2…ナゲット
3…ナゲット端部
4…引張せん断試験時の負荷方向
5…十字引張試験時の負荷方向
6…超音波発信機
7…超音波衝撃処理を施すための工具(ピン)

Claims (3)

  1. 高強度鋼板を溶接時に散りが発生する条件でスポット溶接して形成させた溶接継手の引張強さを向上させる方法において、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施すことを特徴とする超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
  2. フェライト中にマルテンサイトまたはベイナイトを含む2相複合組織からなる高強度鋼板、あるいは、ベイナイト組織単相からなる引張強さが780MPa以上の高強度鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の引張強さを向上させる方法において、溶接継手の両面または片面から、ナゲット形成部とナゲット形成部周囲の両方または片方に超音波衝撃処理を施すことを特徴とする超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
  3. 前記超音波衝撃処理を、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mm以上、超音波衝撃処理部の板厚の15%以下になるように施すことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波衝撃処理によるスポット溶接継手の引張強さ向上方法。
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