JP2005103608A - 高強度めっき鋼板をスポット溶接した継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 スポット溶接された高強度めっき鋼板継手において、スポット溶接部(鋼板間に形成されるナゲット3部とその周囲の熱影響部)で発生する割れを修復し、該溶接部の耐食性、静的強度および疲労強度を高めることが可能で、実操業に適する安定した技術を提供する。
【解決手段】 高強度めっき鋼板をスポット溶接して形成した溶接継手の耐食性、静的強度および疲労強度を向上する方法において、スポット溶接部の片面または両面から、ナゲット部とその周囲の熱影響部割れ発生部に、超音波衝撃処理を、該処理部の板厚減少量が0.03mm以上、該処理部の板厚の30%以下になるように施す。
【選択図】 図3
【解決手段】 高強度めっき鋼板をスポット溶接して形成した溶接継手の耐食性、静的強度および疲労強度を向上する方法において、スポット溶接部の片面または両面から、ナゲット部とその周囲の熱影響部割れ発生部に、超音波衝撃処理を、該処理部の板厚減少量が0.03mm以上、該処理部の板厚の30%以下になるように施す。
【選択図】 図3
Description
本発明は、車体の組立および自動車用部品の取付けなどで使用されるスポット溶接において、特に、高強度めっき鋼板のスポット溶接継手の特性向上、すなわち、耐食性、引張強さおよび疲労強度の向上方法に関するものである。
近年、自動車の低燃費化、CO2排出量削減および衝突安全性向上等の観点から、自動車分野では、自動車の車体や部品などに、薄肉の高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。特に、車体では、防錆の観点から、めっき鋼板が使用されるため、今後、高強度めっき鋼板に対するニーズは、ますます高まるものと考えられる。
一方、自動車の車体組立や部品の取付けなどでは、スポット溶接が主に用いられている。スポット溶接は、図1で示したように、例えば、高強度めっき鋼板1同士を重ね合わせ、水冷された二つの銅電極2で加圧しながら通電して、高強度めっき鋼板1同士の接触部を溶融させ、通電後、その部分を凝固させてナゲット3を形成させる溶接法であるが、車体に使用する高強度めっき鋼板をスポット溶接する場合には、以下のような問題点がある。
車体では、耐食性向上の観点から、通常、めっき材を用いることが多く、高強度鋼板を用いる場合でも、高強度鋼板のめっき材(以下「高強度めっき鋼板」という)を用いることが想定されるが、高強度めっき鋼板を、散り(通電中、鋼板間に形成された溶融部の直径が銅電極の先端直径より大きくなって、鋼板間から溶融鋼が飛散する現象)が発生するような過大電流(入熱)でスポット溶接すると、図2で示したように、溶接電極2と接触するスポット溶接の熱影響部の表面や、鋼板間に存在するナゲット3の端部から割れ(マイクロクラック)4が発生する。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、スポット溶接により鋼板間に形成されるナゲット3部とその周囲の熱影響部を合せてスポット溶接部とする。
この割れ4は、鋼板表面にZn系のめっきが施されためっき鋼板で発生することが多く、めっきの主成分であるZnがスポット溶接部に侵入することによって起こる。すなわち、スポット溶接中に、めっきの主成分であるZnや銅電極から拡散したCuが、鋼板表面からオーステナイト粒界に侵入し、また、めっきの主成分であるZnが鋼板の隙間からナゲット内に侵入して、凝固時の収縮応力によって、ZnやCuの侵入で融点が低下した部分で割れ(凝固割れ)が発生するのである。この現象は、鋼板を真鍮(Cu−Zn)ろうでろう付した場合にも観察され、はんだ脆性として良く知られている。
一方、軟鋼板のめっき材をスポット溶接した場合には、溶接部で割れが発生し難いことが知られている。高強度めっき鋼板をスポット溶接した場合に、スポット溶接部で割れが発生し易くなるのは、溶接部の割れ感受性が高く、また、溶接部周囲の拘束力が大きいためと考えられる。
一般に、鋼板の引張強さが増加するほど、下記式で示される炭素当量Ceqhの値は増加するが、Ceqhの値が増加すると、ナゲット部(溶融した部分)と熱影響部の硬さが増加する。
Ceqh=C+Si/40+Cr/20(質量%)
ただし、C、Si、および、Crは、それぞれ、鋼板中における、炭素、珪素、および、クロムの含有量(質量%)である。
Ceqh=C+Si/40+Cr/20(質量%)
ただし、C、Si、および、Crは、それぞれ、鋼板中における、炭素、珪素、および、クロムの含有量(質量%)である。
したがって、鋼板の引張強さが増加するほど、溶接部の割れ感受性が高くなるので、溶接部で割れが容易に発生すると考えられる。また、鋼板の引張強さが増加するほど、溶接部周囲での拘束力が高くなるので、この作用によっても、溶接部での割れ発生が助長されると考えられる。
ところで、この割れは、散りが発生するような過大電流(入熱)で溶接した場合にのみ発生するが、その理由としては、(a)過大電流(入熱)でスポット溶接すると、適正電流(入熱)で溶接した場合に比べて、溶融体積がかなり大きくなって凝固収縮量が大きくなる、(b)銅電極と接するめっき鋼板表面の温度もかなり上昇して、めっきがオーステナイト粒界に浸入し易くなる、が考えられ、その結果、割れが発生しやすくなるものと考えられる。
さらに、上記理由の一つとして、散り発生や温度上昇により鋼板の変形抵抗が低下して、溶接部の変形量が大きくなり、溶接後、不均一な応力分布状態となることも考えられる。
以上のような理由により、高強度めっき鋼板を過大電流(入熱)でスポット溶接した場合には、溶接部で割れが発生し易くなる。
スポット溶接部で割れが発生すると、例えば、鋼板表面のスポット溶接の熱影響部から割れが発生した場合には、その割れは外観を損ねることは勿論のこと、割れから水分が浸入してその部分の耐食性を低下させる原因となり、その結果、引張強さ(引張せん断強さ:せん断方向の引張強さ、十字引張強さ:剥離方向の引張強さ)や疲労強度の低下にも繋がる。また、鋼板間に形成されたナゲット部とその周囲の熱影響部から割れが発生した場合にも、溶接部の引張強さや疲労強度を低下させる原因となる。
スポット溶接部で割れが発生しないようにするためには、過大電流(入熱)で溶接しなければよいが、通常、自動車組立ラインでは、過大電流(入熱)で溶接することが多い。これは、以下の理由による。
通常、スポット溶接を連続的に行う場合、溶接1点目から散りが発生しないような適正電流(所定のナゲット径が得られるような電流条件)で溶接を開始すると、打点数の増加とともに電極先端径が増大して電流密度が低下するため、これに伴いナゲット径が低下して、やがてナゲットが形成されなくなってしまう。
これに対し、スポット溶接中に散りが発生しているような場合には、この散りによりナゲット径が電極先端径まで到達していることを確認できる。それ故、現状の自動車組立ラインでは、所定のナゲット径を確実に確保するため、散りを発生させるような過大電流でスポット溶接を行っている。このように、実操業ラインでは、適正電流で、連続的に、所定径のナゲットを得ることは難しい。
その結果、高強度めっき鋼板のスポット溶接においても、過大電流(入熱)で溶接することになるため、それに伴い溶接部で割れが発生して問題となる。この問題は、高強度めっき鋼板を車体用鋼板として使用するに際し大きな問題となる。
この問題に対する対策として、従来、非特許文献1に記載されているように、スポット溶接時の電極加圧力を高く設定することにより、スポット溶接部の割れ発生を抑制することは可能である。しかし、この方法においても、割れが発生する溶接電流が高電流側に移行するだけで、完全に割れの発生を防止することは難しい。
また、本発明者は、高強度めっき鋼板のスポット溶接において、スポット溶接部での割れの発生を防止するため、特許文献1で、
(a)溶接通電時間を一定の範囲内に減少させ、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定すること、
(b)溶接通電後、引き続き一定の条件で後通電を行うこと、
(c)溶接通電後、加圧力を一定の範囲内で増加させ、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定すること、または、
(d)一定の組成を有する高強度めっき鋼板を用い、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定して溶接すること、
等によるスポット溶接部の割れ防止方法を提案した。
しかし、上記の方法をもってしても、実ラインでの連続溶接において、溶接部およびその近傍で発生する割れを完全に防止することはかなり難しい。
(a)溶接通電時間を一定の範囲内に減少させ、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定すること、
(b)溶接通電後、引き続き一定の条件で後通電を行うこと、
(c)溶接通電後、加圧力を一定の範囲内で増加させ、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定すること、または、
(d)一定の組成を有する高強度めっき鋼板を用い、溶接後の保持時間を一定の範囲内に設定して溶接すること、
等によるスポット溶接部の割れ防止方法を提案した。
しかし、上記の方法をもってしても、実ラインでの連続溶接において、溶接部およびその近傍で発生する割れを完全に防止することはかなり難しい。
自動車技術会・学術講演会前刷集No.106−00(2000年)、第1〜4頁
特開2003−103377号公報
前述したように、高強度めっき鋼板を実ラインでスポット溶接する場合には、スポット溶接部で割れが発生するという問題がある。そして、現状の技術では、割れがない高品質・高特性の溶接部、すなわち、外観が美麗で、耐食性に優れ、かつ、引張強さおよび疲労強度が高いスポット溶接部を得ることは困難である。
自動車車体を軽量化しつつ安全性や耐久性を確保するためには、板厚の薄い高強度めっき鋼板を用いることが必要であり、上記問題を解決するためには、例えば、溶接点数を増やすことが考えられるが、溶接点数の増加は、生産時間の増加を招き、しいては、コスト上昇の原因となる。また、設計の自由度を制限することにもなる。
それ故、高強度めっき鋼板のスポット溶接においては、スポット溶接部で発生する割れを防止する技術、さらには、溶接部の耐食性、引張強さおよび疲労強度を向上する技術が求められているが、このような技術は、従来、全くといっていいほど提案されていない。
本発明は、上記問題を解決しようとするものであって、高強度めっき鋼板をスポット溶接した継手において、スポット溶接部(鋼板間に形成されるナゲット部とその周囲の熱影響部)で発生する割れを修復するとともに、スポット溶接部の耐食性、引張強さおよび疲労強度を高めることが可能で、しかも、実操業に安定して適用できる技術を提供することを目的とする。
本発明は、上記問題点を解決すべく、発明者が鋭意研究を重ねた結果得られた結果に基づくものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
高強度めっき鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度を向上させる方法において、スポット溶接部の片面または両面から、ナゲット部とその周囲の熱影響部の割れ発生部に、超音波衝撃処理を、該処理部の板厚減少量が0.03mm以上、該処理部の板厚の30%以下になるように施すことを特徴とする高強度めっき鋼板をスポット溶接した継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度向上方法。
高強度めっき鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度を向上させる方法において、スポット溶接部の片面または両面から、ナゲット部とその周囲の熱影響部の割れ発生部に、超音波衝撃処理を、該処理部の板厚減少量が0.03mm以上、該処理部の板厚の30%以下になるように施すことを特徴とする高強度めっき鋼板をスポット溶接した継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度向上方法。
本発明によれば、超音波衝撃処理を施すことにより、溶接部および溶接部近傍で発生した割れを修復することが可能となり、その結果、割れへの水分の浸入を防止して耐食性を高めることができるため、溶接部の引張強さ低下を抑制することが可能となる、また、塑性変形によるHAZ軟化の抑制やナゲット端部の形状改善、圧縮残留応力の導入により、引張強さおよび疲労強度を高めることが可能になる。
したがって、本発明によれば、主に、自動車用部品および車体などに用いられる高強度めっき鋼板のスポット溶接において、信頼性ある継手特性を得ることが可能となる。
したがって、本発明によれば、主に、自動車用部品および車体などに用いられる高強度めっき鋼板のスポット溶接において、信頼性ある継手特性を得ることが可能となる。
次に、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図2で示したように、高強度めっき鋼板1同士を重ね合わせ、銅電極2で加圧しながら通電して鋼板間に溶融部を形成し、通電後、冷却して溶融部を凝固させ、ナゲット3を形成する。
図2で示したように、高強度めっき鋼板1同士を重ね合わせ、銅電極2で加圧しながら通電して鋼板間に溶融部を形成し、通電後、冷却して溶融部を凝固させ、ナゲット3を形成する。
本発明は、このナゲット3部とその周囲の熱影響部の割れ発生部に、スポット溶接部の片面または両面から、超音波衝撃処理を施すことを特徴とする。
図3は、本発明の超音波衝撃処理を説明するための図である。本発明では、図3で示したように、超音波発信機5から超音波を発生させ、溶接継手の両面または片面から、ナゲット部とナゲット部周囲の割れ発生部に、工具6(図3ではピン)を介して衝撃超音波衝撃処理を施す。
この超音波衝撃処理により、超音波衝撃処理を施したスポット溶接部あるいはその近傍の表面がある程度の塑性変形を受け、この塑性変形により、溶接部で発生した開口クラックが口を閉じて消滅するため、開口クラックに水分が浸入しなくなり、その結果、溶接部の耐食性が向上して、クラック部での腐食による継手の引張強さ(せん断方向と剥離方向の引張強さ)低下が防止される。
また、ナゲット周囲の熱影響部で軟化域(焼き戻しによるHAZ軟化域)が生じた場合には、その部分が塑性変形によって加工硬化されるため、HAZ軟化域の硬さが回復して継手の引張強さが向上するものと考えられる。さらに、鋼板間に形成されたナゲット両端部の切り欠き形状が衝撃超音波衝撃処理による塑性変形によって改善され、この効果によってナゲット端部での応力集中が緩和されるため、疲労強度の向上も期待できる。
また、上記塑性加工により、鋼板間に形成されたナゲット部およびその周辺において、引張残留応力を消滅せしめるとともに、圧縮残留応力が導入されて、溶接継手の疲労強度が著しく向上する。
通常、ナゲット部近傍の熱影響部には、熱収縮による引張残留応力が導入されるため、せん断方向に繰り返し荷重を負荷する疲労試験の実施時に、この応力集中部で破壊が起こり易かったが、本発明においては、ナゲット近傍の熱影響部への圧縮残留応力の導入により、従来に比べて溶接継手の疲労強度が向上する。
本発明において、超音波衝撃処理は、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mm以上、超音波衝撃処理部の板厚の30%以下になるように施すことが好ましい。この超音波衝撃処理により、スポット溶接継手の疲労強度を効果的に向上させることができる。
上記において、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が0.03mmを下回る場合には、超音波衝撃処理部の変形量が少なすぎて、クラックが十分修復されなかったり、ナゲット端部の切り欠き形状が十分改善されなかったり、加工硬化によるHAZ軟化部の硬さ回復が少なすぎて引張強さが効果的に向上しないからである。
一方、超音波衝撃処理後の超音波衝撃処理部の板厚減少量が板厚の30%を越える場合には、超音波衝撃処理部(ナゲット形成部またはナゲット形成部周囲)の板厚が減少して、引張強さを低下せしめるからである。
通常、板厚減少とともに引張せん断強さと十字引張強さは減少するが、超音波衝撃処理の場合には、超音波衝撃処理部(ナゲット形成部またはナゲット形成部周囲)が加工硬化するため、ある程度板厚が減少しても、引張せん断強さと十字引張強さは減少しない。
なお、超音波衝撃処理において用いる超音波の周波数、振幅および発信出力は特に規定する必要はないが、周波数20〜60kHz、振幅20〜40μm、および、発信出力500〜1500Wの超音波を用いて超音波衝撃理を行うのが望ましい。周波数は、これより低いと超音波衝撃処理時の騒音が増加し、これより高いと装置の規模が大きくなりすぎるからである。
振幅は、これより低くても高くても引張強さ向上の効果が低くなる。発信出力は、これより低いと、特に引張強さが高い鋼板の場合には十分な変形量が得られなくなり、また、これより高いと超音波衝撃処理を施した部分の板厚が減少しすぎて、逆に引張強さが低下する場合がある。また、装置の規模が大きくなりすぎる等の問題も生じる。
超音波衝撃処理において用いる工具(ピン)は、その形状が特に限定されるものではないが、直径2.0〜8.0mm、先端曲率半径10〜100mm、および、ビッカース硬さ500〜900のピンを用いて行うことが望ましい。ピンの直径が2.0mmを下回る場合にはピンが座屈しやすくなり、また、8.0mmを越える場合には、面圧が低くなりすぎて十分な変形が導入されにくくなる。
ピンの先端曲率半径が10mmより小さい場合には先端が鋭くなりすぎて損傷しやすく、また、100mmを越える場合には、接触面が平面になりすぎて片当たりの問題が生じる。ピンのビッカース硬さが500を下回る場合にはピンが損傷しやすく、また、900を越える場合にも、靭性が低下してピンが損傷しやすくなる。
本発明で使用される鋼板の種類についても特に限定する必要がない。引張強さが400〜1700MPa程度のものであればよく、固溶型、析出型(例えば、Ti析出型、Nb析出型)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)など、いずれの型の鋼板にも本発明を適用できる。鋼板の製造方法は、熱間圧延法でも冷間圧延法でも良い。
被覆するめっきの種類は、Zn系のものならいずれの種類(例えば、Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Sn−Zn、など)であっても良いが、目付量は両面で100/100g/m2以下のものが望ましい。
また、被溶接材の厚みについても特に規定する必要がない。一般に、自動車用部品や車体などで使われる高強度鋼板の板厚は、0.4〜4.0mmであり、本発明は、この板厚において充分に効果を奏することができる。
また、スポット溶接条件についても特に規定されるものではなく、高強度めっき鋼板のスポット溶接において、割れが発生する条件なら、いずれの条件でも良い。
以下に実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、実施例で用いた条件に限定されるものではない。
(実施例1)
表1で示したように、供試材として、板厚が1.6mm、引張強さが590〜980MPaの、合金化亜鉛めっきが施された各種高強度めっき鋼板(記号;590Y:590MPa級DP型複合組織鋼板、780Y:780MPa級DP型複合組織鋼板、980Y:980MPa級DP型複合組織鋼板)を用いた。
表1で示したように、供試材として、板厚が1.6mm、引張強さが590〜980MPaの、合金化亜鉛めっきが施された各種高強度めっき鋼板(記号;590Y:590MPa級DP型複合組織鋼板、780Y:780MPa級DP型複合組織鋼板、980Y:980MPa級DP型複合組織鋼板)を用いた。
スポット溶接継手の引張試験方法(JIS Z3136)に基づいて、引張せん断試験片、十字引張試験片を、さらに、スポット溶接継手の疲れ試験方法(JIS Z3138)に基づいて引張せん断疲労試験片を切り出し、図2で示したように、試験片を重ね合わせてスポット溶接し、引張せん断試験片、十字引張試験片、引張せん断疲労試験片を作製した。なお、引張せん断試験片は、外観観察用試験片としても使用した。
スポット溶接に際しては、表1で示したように、先端径が6.5mmのDR(ドームラジアス)形電極を用い、溶接条件を表1で示した値に設定して、散りが発生するような条件でスポット溶接を行った。
溶接後、溶接部周辺の外観観察を実施したが、いずれの場合においても(条件No.1〜No.10)、ナゲット部とその周囲の溶接熱影響部で割れ(マイクロクラック)が発生していた。
次に、これらの継手の割れが発生した部分に対して、図3に示すように、両面または片面から超音波衝撃処理を施した。処理後、溶接部の外観観察を実施したが、塑性変形によって割れが修復され、開口クラックが閉口クラックに変化していた。
表1の両面処理(条件No.1〜No.3、No.10)において◎で標記したものは、開口クラックが閉口クラックに変化したものである。なお、片面処理(条件No.4およびNo.5)は、片面だけ開口クラックが閉口クラックに変化したため、記号では○で標記した。
また、超音波処理による板厚減少が少なく、本発明の範囲外である場合(条件No.9)には、開口クラックを閉口クラックに充分変化させることはできなかった。
また、超音波処理による板厚減少が少なく、本発明の範囲外である場合(条件No.9)には、開口クラックを閉口クラックに充分変化させることはできなかった。
次に、これらの継手に対して、化成処理および電着塗装を施し、SST試験(JIS Z2371)を実施した。SST試験後、溶接部の外観観察を実施したが、両面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.1〜No.3、No.10)では腐食が認められないのに対し、超音波衝撃処理を施さない継手(条件No.6〜No.8)では、クラック周辺で腐食が認められた。
なお、片面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.4およびNo.5)では処理を施した面では腐食が認められないのに対し、超音波衝撃処理を施さなかった面では、クラック周辺で腐食が認められたため、記号では△で標記した。
また、超音波処理による板厚減少が少なく、本発明の範囲外である場合(条件No.9)には、開口クラックが多く存在するため、クラック周辺で腐食が認められた。
また、超音波処理による板厚減少が少なく、本発明の範囲外である場合(条件No.9)には、開口クラックが多く存在するため、クラック周辺で腐食が認められた。
次に、これらの継手の引張せん断試験、十字引張試験を実施し、それぞれの結果から、引張せん断強さTSS(kN)と十字引張せん断強さCTS(kN)を測定した。その結果、両面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.1〜No.3)の引張せん断強さTSS、十字引張強さCTSは、それぞれ同じ鋼種で比較して、超音波衝撃処理を施さなかった継手(条件No.6〜No.8)よりも高い値を示した。
また、片面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.4およびNo.5)の引張せん断強さTSS、十字引張強さCTSは、それぞれ同じ鋼種で比較して、両面に超音波処理を施した継手(条件No.2およびNo.3)よりは低い値であったが、超音波衝撃処理を施さなかった継手(条件No.7およびNo.8)よりは高い値を示した。
また、超音波処理による板厚減が、本発明の範囲外である場合(条件No.9およびNo.10)では、引張せん断強さTSS、十字引張強さCTSが、同じ鋼種590Yで比較して、本発明の範囲内にある場合(条件No.1)より低い値を示した。
また、超音波処理による板厚減が、本発明の範囲外である場合(条件No.9およびNo.10)では、引張せん断強さTSS、十字引張強さCTSが、同じ鋼種590Yで比較して、本発明の範囲内にある場合(条件No.1)より低い値を示した。
次に、これらの継手の引張せん断疲労試験を実施したが、両面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.1〜No.3)の引張せん断疲労強度は、それぞれ同じ鋼種で比較して、超音波衝撃処理を施さなかった継手(条件No.6〜No.8)よりも高い値を示した。これは、クラック部の腐食が抑制されたことと、ナゲット周囲への圧縮残留応力の導入が原因であると考えられる。
また、片面に超音波衝撃処理を施した継手(条件No.4およびNo.5)の引張せん断疲労強度は、それぞれ同じ鋼種で比較して、両面に超音波処理を施した継手(条件No.2およびNo.3)よりは低い値であったが、超音波衝撃処理を施さなかった継手(条件No.7およびNo.8)よりは高い値を示した。
さらに、超音波処理による板厚減が、本発明の範囲外である場合(条件No.9およびNo.10)では、引張せん断疲労強度が、同じ鋼種590Yで比較して、本発明の範囲内にある場合(条件No.1)より低い値を示した。
さらに、超音波処理による板厚減が、本発明の範囲外である場合(条件No.9およびNo.10)では、引張せん断疲労強度が、同じ鋼種590Yで比較して、本発明の範囲内にある場合(条件No.1)より低い値を示した。
上記において、板厚の異なる鋼板を用いても、他の鋼種を用いても、また、めっき種が異なる鋼板を用いても、実験結果は同様であった。
本発明により、自動車分野などでの高強度めっき鋼板の適用が拡大され、安全性向上や軽量化による低燃費化、炭酸ガス排出量の削減が達成される。したがって、本発明の社会的貢献は大きいものと考えられる。
1…高強度めっき鋼板
2…銅電極
3…ナゲット
4…割れ(マイクロクラック)
5…超音波発信機
6…工具(ピン)
2…銅電極
3…ナゲット
4…割れ(マイクロクラック)
5…超音波発信機
6…工具(ピン)
Claims (1)
- 高強度めっき鋼板をスポット溶接して形成させた溶接継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度を向上させる方法において、スポット溶接部の片面または両面から、ナゲット部とその周囲の熱影響部の割れ発生部に、超音波衝撃処理を、該処理部の板厚減少量が0.03mm以上、該処理部の板厚の30%以下になるように施すことを特徴とする高強度めっき鋼板をスポット溶接した継手の耐食性、引張強さおよび疲労強度向上方法。
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