JP3827852B2 - 含クロム溶鋼の脱窒方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧雰囲気下の精錬において行う含クロム溶鋼の脱窒方法に関するものであり、特にVOD(真空脱ガス)処理で低窒素含クロム鋼を溶製するのに適した脱窒方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
含クロム溶鋼の脱窒は、従来から一般的に、溶鋼中の脱炭反応で発生するCO気泡の激しいボイリングを利用して行われている。これは、CO気泡に窒素がくっついて逃げる現象を利用するものであり、脱窒を十分進行させるには脱窒処理前の溶鋼中にある程度高濃度の炭素が含まれていることが必要である。
【0003】
しかし、溶鋼中の炭素濃度([%C])が高いということは、脱炭にそれだけ長時間を要し、往々精錬時間が延びることになる。一方、酸素吹き込み速度をいたずらに大きくすることは過度のボイリングによる溶鋼のオーバーフローを招き、好ましくない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
低窒素鋼を溶製する際の精錬時間の延長を回避する方法として、例えば特開昭60−26611号公報には、VODのみで行っていた脱窒を転炉にも分担させる方法が提案されている。しかしこの方法においても、VODにおける脱窒そのものに関してより一層の効率化を図る試みはなされておらず、更なる生産性改善の余地が残されているのが現状である。そこで本発明は、脱炭に消費される酸素と供給する酸素の収支バランスを適切にコントロールすることによって、より低い初期炭素濃度値においても安定的に脱窒率を高めることができる効率的な脱窒方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、閉鎖容器中で真空排気しながら酸素を吹き付けて脱炭を行う含クロム溶鋼の精錬において脱炭反応のボイリングを利用して該溶鋼の脱窒を行うに際し、酸素供給速度(Nm3/h)を、下記(1)式の脱炭反応における酸素消費速度(Nm3/h)より小さくなるようにコントロールしながら酸素を吹き付ける、含クロム溶鋼の脱窒方法である。
2C+O2→2CO ・・(1)
ここで、「酸素消費速度」とは当該脱炭中において脱炭反応の進行に伴って変化する酸素消費速度を意味し、「Nm3」は標準状態での気体の体積(m3)である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、酸素消費速度(Nm3/h)を特に、予め定めてある脱炭速度(ppm/min)の予想経時変化パターンを用いて算出したものに規定したものである。ここで、「脱炭速度(ppm/min)の予想経時変化パターン」とは精錬条件に応じて予め実験や過去の経験から求めておいた脱炭速度−時間曲線などを意味する。(1)式より、1モルのCを脱炭するのに必要なO2は1/2モルであるから、ある時点での脱炭速度(ppm/min)が判ればそれに対応する酸素消費速度(Nm3/h)は単位を換算して容易に求めることができる。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、酸素消費速度(Nm3/h)を特に、当該脱炭中に真空排気中のガス成分を分析して求めた脱炭速度(ppm/min)の値から算出したものに規定したものである。
【0008】
請求項4の発明は、酸素供給速度(Nm3/h)のコントロール手法を具体的に示したものである。すなわち、脱炭中に、下記(2)式を用いて目標酸素供給速度Q(Nm3/h)を連続的にまたは繰り返し算出し、酸素供給速度(Nm3/h)を該目標酸素供給速度Qになるようにコントロールするものである。
Q=n×S×W×10-6×(22.4/24)×60 ・・(2)
ただし、nは酸素供給速度指数であって0.5以上1未満の範囲にある定数、Sは脱炭速度(ppm/min)を表す変数、Wは溶鋼質量(kg)を表す定数である。
【0009】
請求項4の発明では、脱炭の進行に伴って変化する脱炭速度(ppm/min)の値を連続的にまたは繰り返し求めながら逐次(2)式によって目標酸素供給速度Qを算出し、ほぼリアルタイムで酸素供給速度(Nm3/h)を目標酸素供給速度Qに設定する。(2)式における酸素供給速度指数nを1未満の定数とした点が特徴であり、これにより脱炭の進行に伴う脱炭速度の低下に酸素供給速度をうまく追随させて、酸素の供給・消費の収支バランスを改善して過剰酸素の低減を図ろうというものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、(2)式の脱炭速度Sを特に、当該脱炭中に真空排気中のガス成分を分析して求めたものに規定したものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4または5の発明において、(2)式の酸素供給速度指数nを特に0.8以上0.95以下の範囲にある定数としたものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項4,5または6の発明において、酸素供給速度のコントロールを特に、真空排気開始後に閉鎖容器内の圧力が300Torr以下になってから開始し、溶鋼中の炭素濃度が0.15質量%以下に減少してから終了するように規定したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
含クロム溶鋼における脱窒反応は、2N→N2(g)、の反応であり、これはC−O反応(脱炭反応)の激しいボイリングによって生じる。そのため、脱窒処理前の[%C]を高くすることがトータル的に生成するCO気泡の量を多くし、脱窒促進には有利となる。しかし前述のように、処理前の[%C]を高くすれば往々脱炭時間が延び、好ましくない。もし、実操業において脱窒反応そのものをより効率的に進行させる方法があれば、同じ処理前[%C]値でも一層低窒素の鋼が得られるであろうし、目標窒素濃度が同じなら一層低い処理前[%C]値にて短時間で脱炭を終了できるであろう。
【0014】
本発明者らは、実操業において従来よりも効率的に脱窒反応を促進させる手段を種々検討し、その検討の過程で、溶鋼中の過剰酸素の低減が非常に有効であることを知見した。酸素は溶鋼中において界面活性元素として働くから、溶鋼中の酸素濃度が高くなると脱窒には不利となる。
【0015】
図1は、VODにおいて十分に酸素を供給したときの溶鋼中炭素濃度[%C]および脱炭速度(ppm/min)の一般的な経時変化を定性的に表したものである。[%C]はC−O反応の進行に伴い連続的に減少する。脱炭速度は[%C]や溶鋼温度の影響を受けて変化するが、通常、真空引き開始後しばらくして最大になり、その後、時間の経過とともに低下する。脱炭は実質的に次式、
2C+O2→2CO ・・(1)
の反応であるから、脱炭速度(ppm/min)の変化は酸素消費速度の変化を意味する。溶鋼中に過剰酸素を残さないことだけが目的なら、酸素供給速度を酸素消費速度より十分に小さい値に設定すればよい。しかしそれでは脱炭反応速度自体が酸素供給速度に律速されてしまい、効率的な脱窒を図ろうとする本発明の目的は達成できない。そこで本発明では、刻々変化する脱炭速度(すなわち酸素消費速度)に応じて、適切な酸素供給速度を設定する。ただし、そのコントロールをあまり過剰に高精度化することは、コスト面等において実操業での適用を難しくする。したがって、従来の設備を用いて実施できる簡便な方法を提供することが望まれる。
【0016】
本発明者らは、脱炭速度(ppm/min)の経時変化パターンに着目した。すなわち脱炭速度は、真空引き開始後しばらくして最大になり、その後、時間の経過とともに低下する。脱炭速度が低下する領域は脱炭時間の大部分を占める。そのため、脱炭速度が低下しつつあるときの酸素供給速度のコントロールが、過剰酸素を低減するうえで極めて重要となる。
【0017】
脱炭速度が低下しているときには酸素消費速度が時々刻々低下しているので、例えばある時点でその時の酸素消費速度を求め、それに等しい値に酸素供給速度を設定しても、その値で実際に酸素が供給される時点ではすでに「酸素消費速度<酸素供給速度」となり、酸素は過剰となる。連続的に酸素供給速度をコントロールしたとしても、酸素消費速度算出と酸素供給のタイムラグにより酸素供給が過大になる。酸素消費速度を繰り返し求め、段階的に酸素供給速度を再設定するようなコントロールではなおさらである。
【0018】
閉鎖容器中で真空排気しながら酸素を吹き付けて脱炭を行う含クロム溶鋼の精錬においては、通常、脱炭速度は増加したり低下したりを繰り返すのではなく、図1のようにある時点以降一様に低下する。このような脱炭速度の特性を活かすことを考慮した結果、次式、
2C+O2→2CO ・・(1)
の脱炭反応におけるその時点での酸素消費速度より小さくなるように酸素供給速度(Nm3/h)をコントロールしながら酸素を吹き付けることによって、脱炭速度の変化(酸素消費速度の変化)に追随して過剰な酸素供給を防止することができた。その結果、溶鋼中の酸素濃度は低く維持され、脱窒反応が効果的に促進されるのである。
【0019】
このようなコントロールは精錬中に実際の酸素消費量の変化を求めて、そのデータに基づいて行うのが、精度を高めるうえで有利である。しかし、酸素消費量を計測する設備がない場合や、溶鋼の初期酸素濃度,初期炭素濃度,温度,目標組成などの条件が安定しているような場合には、予め実験等によって求めておいた脱炭速度(ppm/min)の予想経時変化パターンを用いて精錬中の酸素消費速度を予測し、上記のように酸素供給速度(Nm3/h)をコントロールしてもよい。この方法によっても、実用上問題のない精度で過剰酸素を抑制することが可能である。
【0020】
精錬中のある時点での酸素消費速度を知るためには、その時の脱炭速度(ppm/min)が判ればよい。脱炭速度(ppm/min)は、例えば脱炭中に真空排気中のガス成分を分析することによって求めることができる。その具体的方法は特開昭54−42324号公報に開示されているところであるが、簡単に説明すると、例えば真空排気中の排ガスをサンプリングし質量分析装置でCO2,O2,N2,Ar,H2O,H2の各濃度を計測し、系内(閉鎖容器内)に底吹き等により導入しているAr流量を基準に各ガス成分の排出流量を計算し、COおよびCO2の排出流量から単位時間に系外に排出されるC量を計算することによって脱炭速度(ppm/min)が求められる。
【0021】
また、脱炭精錬中のある時点で設定すべき目標酸素供給速度Q(Nm3/h)は、脱炭速度S(ppm/min)と溶鋼質量W(kg)の値を、次式、
Q=n×S×W×10-6×(22.4/24)×60 ・・(2)
に代入することによって、直ちに求めることができる。(2)式は、基本的には前記(1)式の脱炭反応に基づく酸素消費速度を算出するものであり、n以外の各定数は単位を換算するためのものである。nは本発明において「酸素供給速度指数」と呼ぶ定数であり、その値は1未満であることが特徴である。n=1のとき、Qは脱炭速度S(ppm/min)に対応する酸素消費速度(Nm3/h)に等しい。本発明の酸素供給速度コントロールは、前述のように脱炭速度(酸素消費速度)が低下しつつある時期に酸素供給が過剰にならないようにすることに重点を置くものである。酸素供給速度指数nを1未満の定数とすれば、脱炭速度の低下に追随した理想的な酸素供給速度が算出できる。nの値を小さく設定するほど、過剰酸素は安定して低減できる。ただしnの値をあまり小さくしすぎると、そのときの目標酸素供給速度Q(Nm3/h)では逆に酸素供給が脱炭反応に追いつかない状況になり、脱炭速度自体が低下して精錬時間の延長を招く。通常のVOD精錬においては、(2)式におけるnの値を0.5程度まで小さくしても、初期[%C]値を従来より低くできる効果と相まって精錬時間の延長をきたすことなく高い脱窒率(後述)を安定して実現することができる。特に、nの値を0.8以上0.95以下の範囲に設定すれば、脱炭速度の低下が最も大きい時期においても約1分間隔という実用的なデータ・サンプリング間隔によって、過剰酸素は十分に低減され、かつ、脱炭反応速度の低下もほとんど生じない。
【0022】
(2)式における酸素供給速度指数nは、精錬中、常に同じ値に固定しておくことによって酸素供給速度の算出が容易になる。データ・サンプリング間隔等の操業条件に応じて最適な値に定数nを設定しておく限りにおいて、終始失敗なくコントロールを続けることが可能である。しかし、より一層高い精度で脱炭速度の変化に追随させることを望むならば、脱炭速度の変化率に応じてnの値を規定範囲内で変動させてもよい。例えば、脱炭速度の変化が小さい時期にはnを大き目の値に、脱炭速度の変化が大きい時期にはnを小さ目の値に設定するのが好ましい。
【0023】
図2は、酸素供給速度の設定パターンの違いを、本発明の一例と従来例とで定性的に比較して示したものである。これは、脱炭速度の経時変化パターンがいずれも結果的に同じになった場合の概念図であり、本発明の例は脱炭中に数回、その時点での脱炭速度S(ppm/min)を求め、n=0.9の前記(2)式によって算出された目標酸素供給速度Q(Nm3/h)に酸素供給速度をその都度再設定した場合を想定したものである。一方、従来例は脱炭中に脱炭速度の測定や酸素消費速度の算出を実施せずに低窒素含クロム鋼を溶製する場合の一般的な酸素供給パターンを想定したものである。本発明例の方が従来例よりも酸素供給速度(Nm3/h)のパターンが脱炭速度(ppm/min)のパターンに近づいており、酸素の供給・消費のバランスが良いことがわかる。
【0024】
VOD処理に供する溶鋼には「未脱酸溶鋼」と「脱酸溶鋼」があるが、例えば「未脱酸溶鋼」の場合、真空引きを開始したのち閉鎖容器内の圧力が300Torr前後になった時点から脱炭速度が大きくなり始める。この段階では脱炭反応に必要な酸素は溶鋼中からも賄われる。「脱酸溶鋼」であっても真空排気前あるいは真空排気開始後に過剰となり過ぎない所定量の酸素を溶鋼に供給したのち真空排気を継続することによって同等の状況が得られる。したがって、脱炭速度が最大になる前に「酸素供給速度<酸素消費速度」となるコントロールを開始することが、過剰酸素を抑制するうえで望ましい。閉鎖容器内の圧力が300Torr前後まで低下しないと脱炭はほとんど進行しないため、真空排気開始後に閉鎖容器内の圧力が300Torr以下になってから上記コントロールを開始するのがよい。
【0025】
また、溶鋼中の炭素濃度[%C]が約0.15質量%に低下するまでは脱窒反応の進行が期待できるため、上記酸素供給速度コントロールは[%C]が0.15質量%以下に低下したのち終了することが望ましい。
【0026】
本発明の脱窒方法は、Cr含有量が概ね11〜30質量%の範囲のステンレス鋼に適用でき、特に窒素含有量が0.01質量%以下の低窒素鋼を製造するのに適している。本発明の脱窒処理に共する鋼の[%C]は少なくとも0.15質量%以上としておく必要があるが、あまり高くする必要はない。脱窒促進と精錬時間の遅延防止の観点から脱窒処理前の[%C]は0.25〜0.5質量%の範囲としておくことが望ましい。
【0027】
【実施例】
SUS444系の溶鋼を用いてVODで脱窒実験を行った。溶製工程は電気炉−転炉−VODとし、転炉での粗脱炭終了後の溶鋼は未脱酸で出鋼した。1チャージは約70トンである。
【0028】
図3に、使用したVOD設備の概略を示す。この設備は、転炉から出鋼した溶鋼2が入った取鍋3を真空容器4内へセットし、真空容器カバー5で真空容器4を密閉し、真空容器4と真空容器カバー5によって形成された閉鎖容器内のガスを真空排気管14から抜き取ることにより該閉鎖容器内を減圧状態にし、該減圧下で酸素供給パイプ15から溶鋼に酸素を吹き付けて溶鋼2中の炭素を脱炭するものである。酸素供給パイプ15に導入される酸素量は酸素流量計16によって計測され、酸素流量制御弁17によって酸素供給速度を変えることができるようになっている。真空排気管14は真空排気装置10につながっており、真空排気管14の途中には真空計11,質量分析装置12,排ガス流量計13が備わっている。質量分析装置12は排ガスをサンプリングして排ガス中の各ガス成分の濃度が測定できるようになっている。取鍋3の底部に設けられた底吹きガス供給口7が真空容器4内に設置された底吹きガス供給管19に接続され、底吹きガス供給口7から溶鋼2中にArガスが導入できるようになっている。
【0029】
〔本発明例〕
真空処理前(転炉出鋼後)の[%C]値が約0.25〜0.5質量%の範囲にあるSUS444系溶鋼について、真空排気開始後に真空計11の測定値が300Torrを下回った時点で真空排気ガスの最初のサンプリングを行い、質量分析装置12によってCO2,O2,N2,Ar,H2O,H2の各濃度を測定した。この測定値およびサンプリング時の底吹きAr流量値を計算制御装置に入力し、酸素流量制御弁17の開度をフィードバック制御した。その際、計算制御装置においては、入力データから各ガス成分の排出流量を計算し、COおよびCO2の排出流量から単位時間に排出されるC量を計算することによって脱炭速度(ppm/min)を算出し、この脱炭速度と溶鋼質量を前記(2)式に代入して目標酸素供給速度(Nm3/h)を求めた。(2)式における酸素供給速度指数nの値は0.6〜0.95の範囲の定数(チャージにより異なる)とした。酸素供給パイプ15からの酸素供給速度が目標酸素供給速度(Nm3/h)と等しくなるよう酸素流量制御弁17の開度をフィードバック制御した。その後、1〜5分間隔で繰り返しガスサンプリングを行い、各サンプリング毎に同様の手法で酸素供給速度の域値を再設定し、酸素流量制御弁17の開度をフィードバック制御することによって酸素供給速度のコントロールを行った。真空排気ガスの分析に基づいて求めた溶鋼中の炭素濃度[%C]が0.15質量%以下になった時点で酸素供給速度のコントロールを終了し、その後はそのまま一定の酸素供給速度で目標[%C]になるまで脱炭を続けた。なお、(2)式における酸素供給速度指数nの値はコントロール開始から終了まで同じ値に固定した。
【0030】
ガスサンプリングの間隔は脱炭速度の変化率に応じて1〜5分の間で変化させた。例えば、真空処理前の[%C]が0.4質量%であった1チャージの例を示すと、酸素供給速度のコントロールを開始してから脱炭速度がほぼ定常状態になるまで1分間隔で5回、その後3分間隔で6回、脱炭速度が低下し始めてからは2分間隔で5回の、合計16回のガスサンプリングを行った。なお、このチャージにおいては(2)式の酸素供給速度指数nを0.9とした。
【0031】
各チャージについて、真空処理後(脱炭後)の溶鋼サンプルを採取し、鋼中の窒素濃度[%N](質量%)を分析し、次式で定義される「脱窒率」で脱窒効果を評価した。
脱窒率=(真空処理前[%N]−真空処理後[%N])/真空処理前[%N]×100
【0032】
〔比較例〕
真空処理前(転炉出鋼後)の[%C]値が約0.15〜0.6質量%の範囲にあるSUS444系溶鋼について、酸素供給速度が酸素消費速度より小さくなるようにするコントロールを行わない従来法でVODでの脱炭・脱窒を試みた。脱炭中の酸素供給速度は先の図2に示した従来例のパターンのように3段階に変化させた。例えば、真空処理前の[%C]が約0.5質量%であった1チャージの例を示すと、酸素吹精開始から20分経過時点、および30分経過時点で酸素供給速度を変化させた。このとき、各段階での酸素供給速度指数は各々1.7、1.4、1.2であった。
各チャージについて、上記発明例の場合と同様に「脱窒率」で脱窒効果を評価した。
【0033】
以上の本発明例と比較例の評価結果を図4に示す。真空処理前[%C]が同等のもので比較した場合、本発明例では従来例よりも高い脱窒率が得られている。また、同等の脱窒率を得るのに、本発明例では従来例よりも低い真空処理前[%C]とすることができ、脱炭時間の短縮化が図られた。さらに、本発明例では従来例よりも真空処理前[%C]に対する脱窒率のバラツキが小さくなっている。すなわち、本発明法に従えばVOD処理において従来よりも高位安定した脱窒率が得られることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明では酸素供給速度をコントロールすることによってクロム含有鋼の脱窒を効率的に短時間で行う方法を開示した。この方法は特にVODにおいて低炭素域での脱窒効率を高めるので、低窒素含クロム鋼を短時間で溶製するのに適している。しかも、既存の製鋼設備を利用して比較的簡単に実施できるため、低窒素含クロム鋼の製造コスト低減につながり、その普及に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】VODにおいて十分に酸素を供給したときの溶鋼中炭素濃度および脱炭速度の一般的な経時変化を定性的に表したグラフ。
【図2】VODにおける脱炭速度の経時変化パターンおよびそのパターンに対応する本発明の一例と従来例での酸素供給速度の設定パターンを定性的に表したグラフ。
【図3】実施例において使用したVOD設備の構成を表す概略図。
【図4】VOD処理における真空処理前[%C]と脱窒率の関係を表すグラフ。
【符号の説明】
1 VOD設備
2 溶鋼
3 取鍋
4 真空容器4内へセットし、
5 真空容器カバー
6 中蓋
7 底吹きガス供給口
8 測温プローブ
9 副原料添加装置
10 真空排気装置
11 真空計
12 質量分析装置
13 排ガス流量計
14 真空排気管
15 酸素供給パイプ
16 酸素流量計
17 酸素流量制御弁
18 酸素タンク
19 底吹きガス供給管
Claims (7)
- 閉鎖容器中で真空排気しながら酸素を吹き付けて脱炭を行う含クロム溶鋼の精錬において脱炭反応のボイリングを利用して該溶鋼の脱窒を行うに際し、酸素供給速度(Nm3/h)を、下記(1)式の脱炭反応における酸素消費速度(Nm3/h)より小さくなるようにコントロールしながら酸素を吹き付ける、含クロム溶鋼の脱窒方法。
2C+O2→2CO ・・(1) - (1)式の脱炭反応における酸素消費速度(Nm3/h)は、予め定めてある脱炭速度(ppm/min)の予想経時変化パターンを用いて算出したものである、請求項1に記載の含クロム溶鋼の脱窒方法。
- (1)式の脱炭反応における酸素消費速度(Nm3/h)は、当該脱炭中に真空排気中のガス成分を分析して求めた脱炭速度(ppm/min)に基づいて算出したものである、請求項1に記載の含クロム溶鋼の脱窒方法。
- 閉鎖容器中で真空排気しながら酸素を吹き付けて脱炭を行う含クロム溶鋼の精錬において脱炭反応のボイリングを利用して該溶鋼の脱窒を行うに際し、脱炭中に、下記(2)式を用いて目標酸素供給速度Q(Nm3/h)を連続的にまたは繰り返し算出し、酸素供給速度(Nm3/h)を該目標酸素供給速度Qになるようにコントロールしながら酸素を吹き付ける、含クロム溶鋼の脱窒方法。
Q=n×S×W×10-6×(22.4/24)×60 ・・(2)
ただし、nは酸素供給速度指数であって0.5以上1未満の範囲にある定数、Sは脱炭速度(ppm/min)を表す変数、Wは溶鋼質量(kg)を表す定数である。 - (2)式における脱炭速度Sは、当該脱炭中に真空排気中のガス成分を分析して求めたものである、請求項4に記載の含クロム溶鋼の脱窒方法。
- (2)式における酸素供給速度指数nが0.8以上0.95以下の範囲にある定数である、請求項4または5に記載の含クロム溶鋼の脱窒方法。
- 酸素供給速度のコントロールは、真空排気開始後に閉鎖容器内の圧力が300Torr以下になってから開始し、溶鋼中の炭素濃度が0.15質量%以下に低下してから終了する、請求項4,5または6に記載の含クロム溶鋼の脱窒方法。
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