JP3826688B2 - 回路遮断器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドルを操作して固定接点及び可動接点よりなる接点部を開閉させるとともに、短絡電流等の過大電流に応答して接点部を強制開極する回路遮断器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述のような回路遮断器としては特開平7−226143号公報に記載されたものがある。上記公報に記載された回路遮断器では、器体の各側部にそれぞれ電源側端子と負荷側端子とが設けられ、電源側端子には固定接点を備えた端子板が電気的に接続され、負荷側端子には熱動釈放装置を構成するバイメタルの一端部を固着した端子板が電気的に接続される。固定接点は可動端子板に設けた可動接点とともに接点部を構成し、可動接触子は開閉装置の動作に応じて固定接点に対して接離する。可動接触子は編組線よりなる接続線を介して電磁釈放装置のコイルの一端に電気的に接続され、コイルの他端は編組線よりなる接続線を介してバイメタルの中間部に接続される。従って、接点部が閉極すると、電源側端子−接点部−コイル−バイメタル−負荷側端子という経路で電流が流れる主電路が形成される。
【0003】
器体の上面には矩形状に開口するハンドル挿通孔が形成され、ハンドルに設けられた操作部をハンドル挿通孔を通して器体の上面に突出させるようにして器体内に収納され、操作部がハンドル挿通孔の中で移動できる範囲でハンドルが回動自在に軸支される。ハンドルにはリンク支持部が突設され、鋏形ばねよりなるハンドル復帰ばねの一端部がハンドルに係止されるとともに、ハンドル復帰ばねの他端部が開閉装置の引き外し板に係止され、ハンドル復帰ばねの弾発力によってハンドルが一方の回動方向に付勢されている。
【0004】
開閉装置はハンドル、ハンドル復帰ばね、引き外し板、ハンドルリンク、ラッチ板、軸ピン及び接触子リンクで構成され、接点部の閉極状態において主電路に過大な電流が流れたときに電磁釈放装置ないし熱動釈放装置の作動により接点部を開極させるように機能する。
【0005】
電磁釈放装置は、略コ字形のヨークと、ヨークの内側空間に納められるコイルと、コイルが外周に巻設されるコイル筒と、コイル筒の内部空間に軸方向移動自在に納装される可動鉄心と、可動鉄心に対向して一部がコイル筒から突出する形でコイル筒に装着される固定鉄心と、可動鉄心の移動方向の一端面に設けられてコイル筒の端面から突出する押圧ピンと、可動鉄心をコイル筒の軸方向一方側へ付勢する復帰ばねとを備えている。而して、コイルに通電すると、固定鉄心−ヨーク−可動鉄心を通る磁路の磁気抵抗を小さくするように可動鉄心に対して固定鉄心との間で吸引力が作用し、コイルへの通過電流が負荷の短絡時のような過大な電流であると、復帰ばねのばね力に抗して可動鉄心が固定鉄心に近づくように移動し、開閉装置を操作して閉極状態の接点部を強制的に開極させることができる。
【0006】
一方、熱動釈放装置は、上述したようにバイメタルを備え、バイメタルの一端部が負荷側端子の端子板に固着され、他端部にはバイメタルの湾曲方向に挿通された調整ねじが螺合する。調整ねじは引き外し板の第1押圧片に対向し、主電路を通過する過電流(過負荷電流)によってバイメタルが湾曲したときには調整ねじの先端部で引き外し板を押圧することにより、引き外し板を軸ピンの周りで回動させ、ラッチ板によるハンドルのラッチを解除することで開閉装置を操作し、閉極状態の接点部を強制的に開極させることができる。
【0007】
而して、上記従来例においては、電磁釈放装置の押圧ピンで直接可動接触子を引き寄せて接点部を開極するため、接点部の確実な強制開極操作が行えるが、電磁釈放装置がコイル、可動鉄心、固定鉄心、押圧ピン、ヨーク等の多数の部品で構成される関係上、構造が複雑になるとともにこれらの部品の組み込み作業が煩わしいという問題があった。
【0008】
これに対して本出願人は、過電流が通過してバイメタルが変位するとラッチ板を回動させ、開閉装置を操作して閉極状態の接点部を強制的に開極させるとともに、短絡電流のような過大な電流(大電流)が流れるとバイメタルに取り付けられたコ字形の鉄心に生じる磁気吸引力でラッチ板を吸引させ、可動接点が固定接点から開離する向きに可動接触子を弾性付勢している開極ばねのばね力にて可動接触子を操作して閉極状態の接点部を強制的に開極させることができるようにした回路遮断器を提案している(特願平11−199601号参照)。すなわち、複雑な構造の電磁釈放装置を設ける代わりにコ字形の鉄心のみを配設することで短絡電流のような大電流に対応させることができ、構造の簡素化が図れるとともに組み込み作業が容易になるという利点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記後者の従来例にあっては、短絡電流等の大電流が通過した場合でもラッチ板を回動しリンクの均衡状態を崩して開極ばねのばね力のみで接点部を強制開極させているため、可動接触子を移動させる力が十分ではないために接点部に生じるアーク等で接点部が固着してしまう虞がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、可動接点と固定接点を開極させる力を増大させて短絡電流のような大電流が通過した場合でも可動接点と固定接点が固着し難い回路遮断器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、一部を器体から突出させて回動自在に器体に支持されたハンドルと、長手方向における中間部がリンク機構を介してハンドルに連結されるとともに長手方向一端側に可動接点が設けられた可動接触子と、可動接点に接離する固定接点と、過電流が流れていない通常状態ではリンク機構を均衡状態に保持してハンドルの回動操作により中間部を支点として可動接触子を回動して可動接点を固定接点に接離させるとともに過電流が流れる異常状態ではリンク機構の均衡状態を解除して可動接点を固定接点から強制開極させる開閉手段と、可動接触子の他端側に配設され、通常状態では可動接触子の中間部を回動支点として可動接点及び固定接点に接触圧を付与するとともに異常状態では可動接点を固定接点から開離する方向で可動接触子の他端側を器体に形成された当接部に押圧する接圧ばねとを備えた回路遮断器において、可動接触子の中間部と可動接点との間の所定位置に、固定接点から可動接点を開離する方向に付勢する復帰ばねを配設したことを特徴とし、接圧ばねだけでなく復帰ばねのばね力を加えて可動接点を固定接点から開離させる方向に可動接触子を押圧するため、従来構成に比較して可動接点と固定接点を開離させる方向に働く力を増大させることができる。この結果、短絡電流のような大電流が流れてから可動接点と固定接点が開離するまでの時間を短縮することができ、大電流によるアークの発生等で可動接点又は固定接点が溶融して両者が固着してしまうことを防ぐことができる。また、通常状態では中間部が可動接触子の回動支点となるため、中間部を回動支点とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力の影響を小さくすることができ、接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができるとともに、過負荷電流や短絡電流のような過電流が流れて可動接点と固定接点が開離した状態では、当接部に当接した可動接触子の他端部が回動中心となるため、閉極状態に比較して復帰ばねから回動中心までの距離が大きくなり、他端部を回動中心とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力によるモーメントを増大することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、復帰ばねは、可動接触子の中間部と可動接点の中間位置よりも中間部寄りの位置に配設されたことを特徴とし、中間部を回動支点とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力の影響を小さくすることができ、その結果、接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、復帰ばねは、中間部から接圧ばねまでの距離よりも中間部までの距離が短くなる位置に配設されたことを特徴とし、接圧ばねと復帰ばねとに同じばねを使用しても中間部を回動支点とする可動接触子の回動に対しては接圧ばねのばね力によるモーメントの方が大きくなり、これによっても接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3の発明において、復帰ばねは、可動接触子の所定位置と器体の間に配設される圧縮ばねからなることを特徴とし、復帰ばねのみを後から配設することが可能となり、部品の組み込み作業が容易になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の回路遮断器は、例えば分岐ブレーカとして漏電遮断機能を有する主幹ブレーカとともに分電盤内にDINレールを利用して配設され、各分岐回路での過電流(短絡電流等の大電流を含む)事故発生時に遮断動作を行い保護するものである。但し、過電流保護機能を有する主幹ブレーカに本発明の技術思想が適用可能であることは言うまでもない。
【0017】
本実施形態は、図2に示すように、器体を構成するケース1およびカバー2を備えるとともに、図3に示すように、スライダ3、電源側端子部4、異常電流検出・トリップ機能付きの負荷側端子部5、可動接触子部6、開閉機構7および編組線8(図1参照)を器体内部に備えている。ただし、以下の説明の便宜上、図3に示す器体において、上側の面を上面(正面)、下側の面を下面(裏面)、右上側の面を上側面、左下側の面を下側面、左上側の面を左側面、そして右下側の面を右側面とする。
【0018】
ケース1およびカバー2は、例えばフェノール樹脂などの絶縁材料によって、図3に示すように、上面側中央が突出した一面開口の箱状に成形されて成り、ケース1およびカバー2の開口縁部には、それぞれ4組の組立孔1a,2aが穿設されている。これにより、ケース1およびカバー2を内面同士が対面するようにして組み合わせた上で、各組の組立孔1a,2aにリベットを挿通すれば、ケース1およびカバー2が固定されて器体が構成されることになる。また、ケース1およびカバー2の上面中央には、それぞれ後述するハンドル71用の開口部となるコ字状の上面角溝1b,2bが形成され、ケース1およびカバー2の上側面には、それぞれ電源側の電線やブスバーなどの配線部材が挿入される開口部となるコ字状の上側面角溝(図3ではケース1の上側面角溝1cのみ図示)が形成され、そしてケース1およびカバー2の下側面には、それぞれ負荷側の電線やブスバーなどの配線部材が挿入される開口部となるコ字状の下側面角溝1d,2dが形成されている。なお、これらケース1およびカバー2の詳細な構造については、後述の各部品とともに順次説明する。
【0019】
スライダ3は、図3に示すように、器体下側面における下面側から突出する操作部3a、この操作部3aから上側面側に延出する連結片3b、この連結片3bの先端側に一体に設けられる爪部3c、操作部3aから連結片3bの両側に沿って延出する一対の撓み片3d、および各撓み片3dの先端から外向きに延出するV字カット付きの突片3eを備える形状に合成樹脂により一体成形されて成り、図2に示すように、断面コ字状で両側縁部がそれぞれ外向きに延出した一体フランジ9aを有し図略の分電盤内部などに配置される取付レール(DINレール)9に対して、器体を着脱自在に固定するものである。ここで、図3に示すように、ケース1およびカバー2の下面には、それぞれ取付レール9用の取付溝1e,2eが形成され、これら取付溝1e,2eの上側面側には、それぞれ取付レール9の一方の一体フランジ9aに対する掛止用の係止突起(図ではカバー2の係止突起2fのみ図示)が形成され、そして取付溝1e,2eの下側面側には、それぞれスライダ3をスライド自在に狭持するフック状の収納溝1g,2gが形成されている。これにより、スライダ3を収納溝1g,2gに収納しながらケース1およびカバー2を固定すれば、スライダ3は収納溝1g,2gにより狭持された状態で上側面および下側面方向にスライド自在となるので、取付レール9の一方の一体フランジ9aに両係止突起を掛止し、スライダ3を上側面側にスライドさせて他方の一体フランジ9aに爪部3cを掛止すれば、器体が取付レール9に固定されることになる。ただし、図示していないが、収納溝1g,2gの各内面には山突起が形成され、上記のように器体が取付レール9に固定されている場合、上記各山突起に各突片3eのVカットの溝が係合し、スライダ3の移動を禁止する構造になっている。
【0020】
電源側端子部4は、図3に示すように、板金を折曲げて断面四角状の筒状に形成されて成り上面にねじ孔11aを有する端子金具11と、この端子金具11のねじ孔11aに螺挿される引締めねじ12と、端子金具11の下面上部に取着される金属部材13とを備えているとともに、電源側端子41を備えている。この電源側端子41は、上面および下面方向に伸びる板状に形成され固定接点411aが固着された中央部411と、この中央部411の上面側から上側面側に延出し端子金具11内に挿通される端子部412と、固定接点411aの下面側から後述する可動接触子61の周囲の磁界との相互作用でアークに作用する電磁力の向きに、つまり中央部411の下面側から下面下側面寄りに延出するアーク走行板部413とを備える形状に導電部材により一体形成されて構成される。このようにアーク走行板部413を設けると、固定接点411aに対する可動接触子61の可動接点611aの開極時に発生するアークを、器体の下面方向に付勢して器体の長手方向に引き延ばすことができ、この結果、アークの素早い消弧が可能となる。また、端子部412の先端には上面側に延出する屈曲部412aが形成されている。
【0021】
負荷側端子部5は、端子金具11、引締めねじ12および金属部材13を電源側端子部4と同様に備えているほか、上面および下面方向に伸びる板状に形成された連結部511、この連結部511の上面側から下側面側に延出し端子金具11内に挿通される端子部512と、上面および下面方向に伸びる板状に形成され下端が基端となって連結部511に固着されるバイメタル513とを有して成る負荷側端子51と、上側面側に延出する両屈曲部52aを有して成りこれら両屈曲部52a内に負荷側端子51のバイメタル513を囲う短絡検出用の磁性板52とを備えている。また、端子部512の先端には上面側に延出する屈曲部512aが形成されている。また、バイメタル513の上面側にはバイメタル513の屈曲方向に沿って調節ねじ514が螺挿されている。さらに、磁性板52は、ケース1およびカバー2の内面に形成されたコ字状の突部と係合する突起を有している。
【0022】
ここで、図1に示すように、ケース1の内面における上側面および下側面側には、端子金具11およびこれに螺挿された引締めねじ12用の収納室を設けるための隔壁1h,1iがそれぞれ形成され、これら隔壁1h,1iには、それぞれ電源側端子41および負荷側端子51を填め込むための溝1j,1kが形成されている。また、図3に示すように、ケース1およびカバー2の両上面における電源側端子部4の引締めねじ12の頭部側には、それぞれドライバなどの先端挿通用の丸孔となる半円弧状の丸溝1l,2lが形成され、同様に、ケース1およびカバー2の両上面における負荷側端子部5の引締めねじ12の頭部側には、それぞれ半円弧状の丸溝1m,2mが形成されている。これにより、図1に示すように、電源側端子部4の端子金具11の孔がケース1およびカバー2の上側面角溝により形成される開口部に位置する状態で、その開口部に電源側の電線やブスバーなどの配線部材を挿入し、引締めねじ12をドライバなどで例えば時計回りに回せば、端子金具11が上面側に移動するので、配線部材を端子部412の下面に圧着させることができる。同様に、負荷側端子部5の端子金具11の孔がケース1およびカバー2の下側面角溝1c,2cにより形成される開口部に位置する状態で、その開口部に負荷側の電線やブスバーなどの配線部材を挿入し、端子金具11が上面側に移動するように引締めねじ12を回せば、端子金具11が上面側に移動するので、配線部材を端子部512の下面に圧着させることができる。
【0023】
可動接触子部6は、図3に示すように、上面および下面方向に伸びる板状部611、この板状部611の下面側に固着され固定接点411aと接離自在に対向する可動接点611a、板状部611の長手方向略中央において両側上面側から下側面側に延出するとともに軸孔612aが設けられた一対の中間部612、および板状部611の上面側に一体に形成されたL字状のばね受け部613、このばね受け部613の両側に一対の耳部613aが突設されて成る可動接触子61と、後述する開閉機構7により、中間部612(接触子リンク75の脚片75a)を回動支点としてばね受け部613で下側面側に付勢して閉極状態の固定接点411aと可動接点611aに接触圧を付与させるとともに、上側面及び下側面に沿った方向で移動自在とした可動接触子61を下側面側に付勢して固定接点411aから可動接点611aを開離させるための圧縮コイルばねからなる接圧ばね62と、一端が隔壁1hの下側面側に設けられた嵌合溝1vに嵌合されるとともに他端が可動接触子61の板状部611における中間部612よりも下面寄りの位置に固定されて可動接触子61を下側面側に付勢する圧縮コイルばねからなる復帰ばね63とを備えている。ここで、復帰ばね63は、図1に示すように板状部611における中間部612と可動接点611aとの中間位置よりも中間部612寄りであって、且つ板状部611の上面及び下面の対向方向において中間部612から接圧ばね62までの距離よりも中間部612までの距離が短くなる位置に他端が固定されている。なお、復帰ばね63を圧縮ばねとすれば、復帰ばね63のみを後から配設することが可能となり、部品の組み込み作業が容易になるという利点がある。
【0024】
開閉機構7は、ハンドル71、ハンドル軸72、ハンドルリンク73、係止リンク74、接触子リンク75、ハンドル復帰ばね76、ラッチ板77および軸ピン78により構成されている。ハンドル71は、回動支点となるハンドル軸72が挿通される軸孔711aが穿設された軸部711と、この軸部711の上面側に形成された弧状の覆い片712と、この覆い片712の中央部から立設し上面角溝1a,2aにより形成される開口部から外部に突出する操作部713と、左右側面側に突出する軸突起714aを有し軸部711から下面側の上側面寄りに延出するリンク支持部714とを備える形状に合成樹脂により一体成形されて構成される。ハンドル軸72は、ハンドル71を軸支するもので、ハンドル71の軸孔711aに挿通される。ハンドルリンク73は、コ字状に形成されて成り、各脚片の先端部に穿設されリンク支持部714の軸突起714aが挿通される軸受孔73aと、各脚片の基部側に穿設されたリンク孔73bとを有している。係止リンク74は、平板状の係止部741、およびこの係止部741の両端から上側面側の上面寄りに延出する一対のガイド片742を備える形状に形成され、各ガイド片742の先端に穿設されハンドル軸72が挿通される軸孔742aと各ガイド片742の基端側に穿設されたガイド孔742bとを有している。接触子リンク75は、金属製のピンをコ字状に折曲げて成り、可動接触子61の両軸孔612aに挿通される脚片75aを有するとともに、ハンドルリンク73の両リンク孔73bおよび係止リンク74の両ガイド孔742bに挿通され脚片75aよりも短い脚片75bを有している。ハンドル復帰ばね76は、鋏形ばねより成り、一端が覆い片712の左側面側に係止するとともに他端がラッチ板77に係止することで、ハンドル71を図1における反時計回りに付勢するものである。ラッチ板77は、上側面および下側面に対面するとともに上面および下面方向に伸び、切欠部771aを左側面側に有するコ字状に形成され、そのコ字状の上面側の突部における切欠部771a側にハンドル復帰ばね76の他端が係止する係止溝771bを有する板状部771と、この板状部771の中央の左右側面側からそれぞれ上側面側に延出する左腕片772およびこれよりも短い右腕片773とを備える形状に一体形成されて成り、左腕片772および右腕片773の各基端側に穿設された軸孔を有するとともに、左腕片772の先端に形成され係止リンク74の係止部741の下面側と係止する引掛溝772aを有している。軸ピン78は、ラッチ板77を軸支するもので、左腕片772および右腕片773の両軸孔に挿通される。
【0025】
ここで、ケース1およびカバー2の各内面における上面と上側面の隅には、可動接触子61の耳部613aを回動の支点として収納する基端収納壁(図3ではケース1の基端収納壁1nのみ図示)が形成されているとともに、その下面側には、コ字状に成形されて成り、可動接触子61の両軸孔612aに挿通された接触子リンク75の脚片75aの先端部がそのコ字状の内壁に挿入されるガイド突部1oが形成されている。これにより、可動接触子61は、ばね受け部613の上側面側に開極ばね62を挟み込みながら、各耳部613aを基端収納壁1n内に収納するとともに脚片75aの先端部をガイド突部1oの壁内に挿入すれば、両軸孔612aがガイド突部1oに規制されながら両耳部613aを中心として回動可能となる。また、ケース1およびカバー2の各内面における上面側中央には、ハンドル軸72の端部が挿入される円筒状で底部を有する軸受(図3ではケース1の軸受1pのみ図示)が形成されている。これにより、ハンドル71の軸孔711aにハンドル軸72を挿通し、このハンドル軸72の両端を上記両軸受内に挿入した状態でケース1およびカバー2を固定すれば、ハンドル71はハンドル軸72回りに回動自在となる。さらに、ケース1およびカバー2の各内面における上記ガイド突部1oの下側面側には、軸ピン78の端部が挿入される円筒状で底部を有する軸受(図3ではケース1の軸受1qのみ図示)が形成されている。これにより、ラッチ板77の両軸孔に軸ピン78を挿通し、この軸ピン78の両端を両軸受内に挿入した状態でケース1およびカバー2を固定すれば、ラッチ板77は軸ピン78回りに回動自在となる。
【0026】
編組線8は、図1に示すように、負荷側端子51のバイメタル513の上面側に一端(図では左端)が接続され、そのバイメタル513の上面側から可動接触子61の先端方向の斜め方向に、すなわち下面側の上側面寄りの斜め方向に引き延ばして可動接触子61の近傍で器体の上面側に折り返すように引き回され、可動接触子61の基端側に他端が接続されている。これにより、負荷側端子部5と可動接触子61とが編組線8により常時電気的に接続される状態となる。また、バイメタル513の変位および可動接触子61の回動動作に対して、編組線8がバイメタル513や可動接触子61などに引っ掛からない状態でその折返し部分に余裕を持たせることができるので、バイメタル513の引き外しの特性変化を防止することができる。
【0027】
ここで、ケース1の内面において、編組線8を折り返す位置には、編組線8よりも器体の上面側から突出し半円弧状に丸められた側面で編組線8と当接する突起1rが形成されているとともに、器体の上面側に延出する編組線8と可動接触子61との間には、上面および下面方向に伸びる縦壁部1sが形成され、この縦壁部1sは下側面に至る隔壁部1tと連設されている。これにより、可動接触子61の開閉動作のときに編組線8の折り返し近傍が器体の上面側に移動するのを防止することができるので、編組線8が開閉機構7に対してバイメタル513の引き外し特性を変化させる影響を及ぼさなくなる。また、編組線8と当接する突起1rの側面が丸められているので、編組線8を切れ難くすることができる。さらに、バイメタル513の変位によって器体の上面側に延びた編組線8が可動接触子61に近づくのを防止することができるので、編組線8が可動接触子61の動作に影響を及ばさなくなる。
【0028】
また、ケース1の内面において、突起1rから下側面側の若干上面寄りで軸受1qの下面側のバイメタル513近傍には、半円弧状に丸められた側面で編組線8の下面側と当接する突起1uが形成されている。これにより、バイメタル513が変位したとき、突起1u近傍の編組線8は上側面および下側面方向に移動するので、突起1r近傍の編組線8が器体の下面側に移動する量を少なくでき、器体の編組線8を収納するスペースを小さくすることができる。また、編組線8と当接する突起1uの側面が丸められているので、編組線8を切れ難くすることができる。さらに、編組線8が軸受1qと突起1uとの間に狭持され、その狭持領域にラッチ板77の切欠部771aが位置するようになるので、編組線8を位置決めした状態でラッチ板77を配置することができ、ラッチ板77の組込作業が容易となる。また、編組線8がラッチ板77に当接してラッチ板77の回動に支障をきたす恐れがなくなる。
【0029】
図4は本実施形態の動作説明図で、この図を用いて次に本実施形態の動作を説明する。本実施形態が図4(a)に示すようにオフ状態にある場合、ハンドル71の操作部713が下側面側(図では左側)に位置して、リンク支持部714の両軸突起714aがハンドル軸72に対して上側面側(図では右側)に位置し、リンク支持部714およびハンドルリンク73が屈曲して縮み、係止リンク74が接触子リンク75を介してハンドルリンク73によりハンドル軸72に対して反時計回りに引っ張られた状態にある。また、ハンドル復帰ばね76によって、ハンドル71が反時計回りに付勢されているとともに、ラッチ板77の係止溝771bが上面側の下側面寄りに付勢されてラッチ板77の左腕片772が反時計回りに付勢された状態にあり、ラッチ板77の引掛溝772aと係止リンク74の係止部741の下面側とが係止した状態にある。一方、可動接触子61は、接圧ばね62及び復帰ばね63により下側面側に付勢され、両耳部613aが器体の下側面側における基端収納壁(当接部)1nに当接するとともに板状部611が縦壁部1sの上側面側に当接し、可動接点611aが電源側端子41の固定接点411aから開離した状態にある。この結果、電源側端子部4と負荷側端子部5とが非導通状態(オフ状態)になる。
【0030】
このオフ状態から、図4(b)に示すように、ハンドル71の操作部713をハンドル軸72に対して同図中時計回りに回動させてオン側に切り替えると、ハンドルリンク73の両リンク孔73bに挿通された接触子リンク75の脚片75bの移動方向が、係止部741と引掛溝772aとの係止で下側面側への動きが禁止された係止リンク74における両ガイド孔742bによって規制を受けながら、リンク支持部714の軸突起714aがハンドル軸72に対して下面側に位置し、リンク支持部714およびハンドルリンク73が伸びた状態になる。この状態になるとき、規制を受けた接触子リンク75の脚片75bが両ガイド孔742bに沿って上面側から下面側に移動するので、ガイド突部1oのコ字状の内壁に沿って移動する接触子リンク75の脚片75aによって可動接触子61が上側面側に移動して、可動接触子61の可動接点611aが電源側端子41の固定接点411aに接触(閉極)することになる。この結果、電源側端子部4と負荷側端子部5とが導通状態(オン状態)になる。また、接圧ばね62のばね力で可動接触子61が接触子リンク75の脚片75aを回動支点として同図中反時計回りに付勢されており、閉極状態の固定接点411aと可動接点611aに接触圧を付与している。
【0031】
ここで、復帰ばね63が板状部611における中間部612と可動接点611aとの中間位置よりも中間部612寄りの位置で可動接触子61に固定されているため、中間部612(脚片75a)を回動支点とした可動接触子61の回動に対する復帰ばね63のばね力の影響を小さくすることができ、その結果、接圧ばね62による可動接点611aと固定接点411aの接触圧が弱められることを防ぐことができる。また、本実施形態では、板状部611の上面及び下面の対向方向において中間部612から接圧ばね62までの距離よりも中間部612までの距離が短くなる位置に復帰ばね63が固定されているため、接圧ばね62と復帰ばね63とに同じ圧縮コイルばねを使用しても中間部612を回動支点とする可動接触子61の回動に対しては接圧ばね62のばね力によるモーメントの方が大きくなり、これによっても接圧ばね62による可動接点611aと固定接点411aの接触圧が弱められることを防ぐことができる。
【0032】
このような導通状態において、電源側端子部4と負荷側端子部5との間の通電路に過負荷電流のような過電流が流れ、バイメタル513が自己発熱して上側面側に湾曲すると、ラッチ板77の上面側がバイメタル513の上面側に螺挿された調節ねじ514により押圧されるので、ラッチ板77が軸ピン78に対して図中時計回りに回動し、ラッチ板77の左腕片772が下面側に移動する。この結果、係止部741と引掛溝772aとの係止状態が解除されるとともにその係止点に集中していた接圧ばね62及び復帰ばね63の付勢力が一気に放出され、図4(c)に示すように耳部613aが基端収納壁1n(当接部)の上側面側に当接する位置まで可動接触子61が移動し、これにより可動接触子61の可動接点611aが電源側端子41の固定接点411aから瞬時に開離して、電源側端子部4から負荷側端子部5への通電路が遮断される。また、上記通電路に短絡電流のような大電流が流れた場合、バイメタル513に流れる大電流によって生じた磁束が磁気抵抗の小さい磁性板52を集中的に通ることとなり、磁性板52とラッチ板77の下面側端部との間に磁気吸引力が働いてラッチ板77の下面側端部が磁性板52に吸着される。この結果、ラッチ板77が軸ピン78に対して図中時計回りに回動し、ラッチ板77の左腕片772が下面側に移動して上述と同様に可動接触子61の可動接点611aが電源側端子41の固定接点411aから瞬時に開離して、電源側端子部4から負荷側端子部5への通電路が遮断される。この後、ハンドル71は、ハンドル復帰ばね76によって反時計回りに付勢されているので、操作部713が下側面側に位置する図4(a)のオフ状態に復帰することになる。
【0033】
而して、本出願人が既に提案している従来構成では、過電流が流れる異常状態において、接圧ばね62のばね力のみで可動接触子61を移動させて可動接点611aと固定接点411aを開離させているが、本実施形態では、接圧ばね62だけでなく復帰ばね63のばね力を加えて可動接触子61を移動させるため、上記従来構成に比較して可動接点611aと固定接点411aを開離させる方向に働く力を増大させることができる。すなわち、図4(c)に示すように、過負荷電流や短絡電流のような過電流が流れて可動接点611aと固定接点411aが開離した状態では、基端収納壁1nの上側面側に当接した耳部613aが可動接触子61の回動支点となるため、閉極状態に比較して復帰ばね63から回動支点までの距離が大きくなり、耳部613aを回動支点とした可動接触子61の回動に対する復帰ばね63のばね力によるモーメントが増大することになる。この結果、大電流が流れてから可動接点611aと固定接点411aが開離するまでの時間を短縮することができ、大電流によるアークの発生等で可動接点611a又は固定接点411aが溶融して両者が固着してしまうことを防ぐことができる。
【0034】
なお、本実施形態では、異常電流検出・トリップ機能付きの端子部5を負荷側端子部、他方の端子部4を電源側端子部としたが、異常電流検出・トリップ機能付きの端子部5を電源側端子部、他方の端子部4を負荷側端子部としてもよい。
【0035】
【発明の効果】
請求項1の発明は、一部を器体から突出させて回動自在に器体に支持されたハンドルと、長手方向における中間部がリンク機構を介してハンドルに連結されるとともに長手方向一端側に可動接点が設けられた可動接触子と、可動接点に接離する固定接点と、過電流が流れていない通常状態ではリンク機構を均衡状態に保持してハンドルの回動操作により中間部を支点として可動接触子を回動して可動接点を固定接点に接離させるとともに過電流が流れる異常状態ではリンク機構の均衡状態を解除して可動接点を固定接点から強制開極させる開閉手段と、可動接触子の他端側に配設され、通常状態では可動接触子の中間部を回動支点として可動接点及び固定接点に接触圧を付与するとともに異常状態では可動接点を固定接点から開離する方向で可動接触子の他端側を器体に形成された当接部に押圧する接圧ばねとを備えた回路遮断器において、可動接触子の中間部と可動接点との間の所定位置に、固定接点から可動接点を開離する方向に付勢する復帰ばねを配設したので、接圧ばねだけでなく復帰ばねのばね力を加えて可動接点を固定接点から開離させる方向に可動接触子を押圧するため、従来構成に比較して可動接点と固定接点を開離させる方向に働く力を増大させることができ、この結果、短絡電流のような大電流が流れてから可動接点と固定接点が開離するまでの時間を短縮することができ、大電流によるアークの発生等で可動接点又は固定接点が溶融して両者が固着してしまうことを防ぐことができるという効果がある。また、通常状態では中間部が可動接触子の回動支点となるため、中間部を回動支点とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力の影響を小さくすることができ、接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができるとともに、過負荷電流や短絡電流のような過電流が流れて可動接点と固定接点が開離した状態では、当接部に当接した可動接触子の他端部が回動中心となるため、閉極状態に比較して復帰ばねから回動中心までの距離が大きくなり、他端部を回動中心とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力によるモーメントを増大することができる。
【0036】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、復帰ばねは、可動接触子の中間部と可動接点の中間位置よりも中間部寄りの位置に配設されたので、中間部を回動支点とした可動接触子の回動に対する復帰ばねのばね力の影響を小さくすることができ、その結果、接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができるという効果がある。
【0037】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、復帰ばねは、中間部から接圧ばねまでの距離よりも中間部までの距離が短くなる位置に配設されたので、接圧ばねと復帰ばねとに同じばねを使用しても中間部を回動支点とする可動接触子の回動に対しては接圧ばねのばね力によるモーメントの方が大きくなり、これによっても接圧ばねによる可動接点と固定接点の接触圧が弱められることを防ぐことができるという効果がある。
【0038】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3の発明において、復帰ばねは、可動接触子の所定位置と器体の間に配設される圧縮ばねからなるので、復帰ばねのみを後から配設することが可能となり、部品の組み込み作業が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のカバーを取り外した状態の側面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の分解斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は同上の動作説明図である。
【符号の説明】
1 ケース
2 カバー
41 電源側端子
411a 固定接点
51 負荷側端子
513 バイメタル
52 磁性板
61 可動接触子
611a 可動接点
62 接圧ばね
63 復帰ばね
7 開閉機構
71 ハンドル
72 ハンドル軸
73 ハンドルリンク
74 係止リンク
75 接触子リンク
76 ハンドル復帰ばね
77 ラッチ板

Claims (4)

  1. 一部を器体から突出させて回動自在に器体に支持されたハンドルと、長手方向における中間部がリンク機構を介してハンドルに連結されるとともに長手方向一端側に可動接点が設けられた可動接触子と、可動接点に接離する固定接点と、過電流が流れていない通常状態ではリンク機構を均衡状態に保持してハンドルの回動操作により中間部を支点として可動接触子を回動して可動接点を固定接点に接離させるとともに過電流が流れる異常状態ではリンク機構の均衡状態を解除して可動接点を固定接点から強制開極させる開閉手段と、可動接触子の他端側に配設され、通常状態では可動接触子の中間部を回動支点として可動接点及び固定接点に接触圧を付与するとともに異常状態では可動接点を固定接点から開離する方向で可動接触子の他端側を器体に形成された当接部に押圧する接圧ばねとを備えた回路遮断器において、可動接触子の中間部と可動接点との間の所定位置に、固定接点から可動接点を開離する方向に付勢する復帰ばねを配設したことを特徴とする回路遮断器。
  2. 復帰ばねは、可動接触子の中間部と可動接点の中間位置よりも中間部寄りの位置に配設されたことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
  3. 復帰ばねは、中間部から接圧ばねまでの距離よりも中間部までの距離が短くなる位置に配設されたことを特徴とする請求項1又は2記載の回路遮断器。
  4. 復帰ばねは、可動接触子の所定位置と器体の間に配設される圧縮ばねからなることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の回路遮断器。
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