以下、本発明の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。尚、以下の実施形態の説明では、説明の簡略化のために図1における上方を回路遮断器の前方、図1における下方の回路遮断器の後方、図1における左方を回路遮断器の左方、図1における右方を回路遮断器の右方と規定し、図1における紙面に垂直な方向を回路遮断器の幅方向と規定する。
本実施形態の回路遮断器は、図1〜図3に示すように、ボディ10及びカバー11からなる器体1と、外部電源(図示せず)に電気的に接続するための電源側端子部2と、負荷等の電源線(図示せず)を接続するための負荷側端子部3と、器体1内の所定位置に固定される固定接点40a及び固定接点40aに接離する可動接点41aからなる接点部Xと接点部Xの開閉操作(オンオフ操作)用のハンドル42とを有する開閉機構部4と、電磁トリップ機構部5及び熱動トリップ機構部6からなり、異常電流を検出した際に開閉器後部4にトリップ動作を行わせるトリップ機構部と、固定接点40aと可動接点41aとの間に生じるアークを速やかに消弧するための消弧装置7と、器体1に設けられた表示孔1bにトリップ動作が行われたことを表示するためのトリップ表示部材8とを備えている。
まず、器体1に収納される電源側端子部2と、負荷側端子部3と、開閉機構部4と、電磁トリップ機構部5と、熱動トリップ機構部6と、消弧装置7と、トリップ表示部材8とについて説明する。
電源側端子部2は、電源用の導電バー(図示せず)を接続するためのものであって、図1〜図2に示すように、導電性を有する金属板から曲成され、電源用の導電バー(図示せず)を差込接続するための一対の刃受ばね20a,20aを有する刃受部20と、金属棒から曲成され、刃受ばね20a,20aを外側から挟み込んで刃受ばね20a,20aの移動範囲を規制する規制部21とで構成されている。ここで、刃受部20には前方に延出された端子部20bが設けられており、この端子部20bは編組線H1を用いて後述する固定端子板40に接続される。
負荷側端子部3は、負荷用の電源線(図示せず)を接続するためのものであって、図1に示すように、負荷用の電源線を固定するための固定ねじ30と、導電性を有する金属板を用いて、左右方向を軸方向とする角筒状に形成され、前壁部に固定ねじ30用のねじ孔(図示せず)が設けられた端子金具31と、導電性を有する金属板からなり、端子金具31の後壁部における前面側に取り付けられる端子片32とで構成されている。ここで、端子金具31は、左右方向にそれぞれ突出する腕片31a,31bを有しており、一方の腕片31bには、導電性を有する金属板からなる端子板33が固着されており、この端子板33は、熱動トリップ機構部6のバイメタル60の他端側(後端側)に固着される。
開閉機構部4は、図1に示すように、器体1内の所定位置に固定される固定接点40aを有する固定端子板40と、固定接点40aに接離する可動接点41aを有する可動接触子41と、可動接触子41に弾接されて可動接点41aが固定接点40aから離間する開極方向(図1における左方向)の付勢力を可動接触子41に与える開極ばね48と、器体1に回動自在に取り付けられ、固定接点40a及び可動接点41aからなる接点部Xのオンオフ操作用のハンドル42と、ハンドル42に回動自在に取り付けられるハンドルリンク43及び一端側がハンドルリンク43に回動自在に取り付けられるとともに他端側が可動接触子41に回動自在に取り付けられる連結リンク44を有し、ハンドル42の操作に応じて可動接触子41を移動させて接点部Xをオンオフする連結部とを備えている。さらに、開閉機構部4は、ハンドル42に回動自在に取り付けられ、ハンドル42が接点部Xを閉じるオン位置に位置している際に、開極ばね48の付勢力によって可動接触子41が移動しないように開極ばね48の付勢力を受けるトリップリンク45と、トリップリンク45が開極ばね48の付勢力に従って移動しないようにトリップリンク45の移動を規制するラッチリンク46と、ハンドル42用の復帰ばね47と、開極ばね48と、ハンドル42を器体1に幅方向を回転軸として回動自在に取り付けるためのハンドル用軸部S1と、ラッチリンク46を器体1に幅方向を回転軸として回動自在に取り付けるためのラッチ用軸部S2とを備えている。
ここで、復帰ばね47は、一対の脚片を有するねじりコイルばね(トーションばね)であって、ハンドル42に左回り方向(図1における反時計方向)の付勢力を与えるために用いられており、一方の脚片(図示せず)がハンドル42に、他方の脚片47aがラッチリンク46に係止される。また、開極ばね48は、コイルスプリングであり、開極方向に可動接触子41を付勢するために用いられている。
固定端子板40は、導電性を有する金属板を用いて曲成されており、編組線H1が接続される横片部40bと、横片部40bの左端部から後方に垂設された縦片部40cとを有する略L字状に形成されるとともに、縦片部40cの左面側には固定接点40aが固着されている。さらに、縦片部40cの後端部からは、左後方に向けてアーク走行部40dが一体に延設されており、このアーク走行部40dの先端部は、後述するアーク走行板70に接続される。
可動接触子41は、導電性を有する金属板を用いて曲成されており、一端部(後端部)に可動接点41aを備えるとともに、他端部(前端部)にばね受け片41bを備えている。さらに、可動接触子41の中間部には、幅方向で対向する一対の脚片41cが左方に向けて一体に突設されており、各脚片41cには、後述する連結リンク44の第2の軸部44bが幅方向に挿通される軸受け孔41dが貫設されている。また、ばね受け片41bには開極ばね48の一端部に挿入されるばね座(図示せず)が一体に突設されている。さらに、可動接触子41には、前後方向を長手方向とする長孔状の挿通孔(図示せず)が貫設されており、この挿通孔には、後述する引掛ピン56の軸部56aが挿通される。加えて、可動接触子41において可動接点41aよりも後端側の部位には、アーク走行片41eが延設されている。
ハンドル42は、合成樹脂製のものであって、図1に示すように、ハンドル42を、器体1の幅方向を回転軸として器体1に回動自在に取り付けるためのハンドル用軸部S1が挿通される軸受け孔42aを有する本体部42bと、軸受け孔42aを中心とした中心角が略180度の円弧状を有して本体部42bの前端側に形成された摺動部42cと、摺動部42cの前面から前方に突設された操作部42dと、本体部42bの後端部から右後方向に突出された連結部42eとを一体に備えている。また、連結部42eの幅方向の両面には、ハンドルリンク43を幅方向を回転軸として回動自在に取り付けるための軸部42fが一体に突設されている。さらに、本体部42bには、復帰ばね47の一方の脚片(図示せず)が係止される係止部(図示せず)が設けられており、これにより復帰ばね47より左回り方向(図1における反時計回り方向)の付勢力を得るようになっている。
ハンドルリンク43は、合成樹脂や金属板を用いて略コ字状に形成されており、一端側に、ハンドル42の連結部42eに突設された軸部42fに対応する軸受け孔43aが形成されるとともに、他端側に、後述する連結リンク44の第1の軸部44aが幅方向に挿通される軸受け孔43bが形成されている。
連結リンク44は、金属材料を用いて形成されており、ハンドルリンク43の軸受け孔43bに挿入される前述の第1の軸部44aと、可動接触子41の軸受け孔41dに挿入される前述の第2の軸部44bと、両軸部44a,44bを連結する連結部44cとを一体に備えており、第2の軸部44bは、第1の軸部44aよりも長く形成されており、これにより第2の軸部44bの先部をボディ10に設けられた後述するガイド溝14内に挿入できるようにしている。
トリップリンク45は、合成樹脂材料や金属材料を用いて、幅方向において対向する一対の平板部45aと、平板部45aをその長手方向一端側(後端側)で連結する被係止片45bとを一体に備える略コ字状に形成されている。また一対の平板部45a間の距離は、ハンドルリンク43の幅方向の長さよりも長く設定されており、これにより一対の平板部45a間の空間部が、ハンドル42の連結部42e及びハンドルリンク43を収納するための空間部として用いられるようになっている。さらに、各平板部45aの長手方向他端側(前端側)には、ハンドル用軸部S1が回転自在に挿通される軸受け孔45cが形成されており、長手方向一端側(後端側)には、連結リンク44の第1の軸部44bが挿入される長孔状のガイド孔45dが形成されている。ここで、ガイド孔45dは、ハンドル42により接点部Xをオンオフする際に、連結リンク44の移動を妨げないような形状に形成されている。
ラッチリンク46は、合成樹脂や金属板等を用いて形成されており、一端部(後端部)に電磁トリップ機構部5により押圧される第1の押圧片46aを備えるとともに、他端部(前端部)に熱動トリップ機構部6により押圧される第2の押圧片46bを備えている。さらに、ラッチリンク46の中間部には、幅方向において対向する一対の脚片46c,46dが右方に向けて一体に突設されており、各脚片46c,46dには、ラッチ用軸部S2が挿入される軸受け孔46eが貫設されている。また、一方の脚片46dには、ラッチ片46fが右方に向けて一体に突設されており、ラッチ片46fの先端部には、トリップリンク45の被係合片45bと係合する係合用切欠部46gが形成されている。さらに、ラッチリンク46の第2の押圧片46bには、切欠部(図示せず)が設けられており、この切欠部の前側の内側面には、復帰ばね47の他方の脚片47aを取り付けるため凹所(図示せず)が設けられており、これによりラッチリンク46は、復帰ばね47から左回り方向の付勢力を得るようになっている。
以上述べた固定端子板40と、可動接触子41と、ハンドル42と、ハンドルリンク43と、連結リンク44と、トリップリンク45と、ラッチリンク46と、復帰ばね47と、開極ばね48と、ハンドル用軸部S1と、ラッチ用軸部S2とで開閉機構部4が構成されており、この開閉機構部4は、接点部Xが閉極している状態(固定接点40aに可動接点41aが接触している状態)において電路に過大な電流や、短絡電流が通過したときには、電磁トリップ機構部5や、熱動トリップ機構部6でラッチリンク46が押圧されることにより、接点部Xを開極させる(可動接点41aを固定接点40aから離間させる)トリップ動作を行うように構成されている。
電磁トリップ機構部5は、円筒状のコイルボビン50と、コイルボビン50の外周面に巻装されるコイル51と、コイルボビン50内の左端側に設けられた固定鉄芯52と、コイルボビン50内の右端側に左右方向にスライド移動自在に設けられた可動鉄芯53と、固定鉄芯52と可動鉄芯53との間に介装されるコイルスプリングからなる復帰ばね54と、ラッチリンク46の第1の押圧片46aを左方へ押圧するための押圧ピン55と、可動鉄芯53の右端部に設けられた引掛ピン56と、ヨーク57とで構成されている。
ここで、ヨーク57は、磁性体を用いて略コ字状に形成されており、左右方向で対向する一対の磁性片57a,57bと、一対の磁性片57a,57bを連結する連結片57cとを一体に備えており、一対の磁性片57a,57b間にコイルボビン50が配置される。また、左方の磁性片57aには、押圧ピン55が挿通可能な挿通孔(図示せず)が形成され、右方の磁性片57bには、後述する可動鉄芯53の右端部が突出可能な孔部(図示せず)が形成されている。
コイルボビン50は、絶縁性を有する合成樹脂等を用いて円筒状に形成されており、その両端部には、コイル51の位置規制用のフランジ部50aが一体に設けられている。コイル51は、絶縁被覆電線等が用いられており、コイルボビン50の外周面に巻装されている。このコイル51は、一端が可動接触子41のばね受け片41bの左面部に接続され、他端が後述する熱動トリップ機構部6のバイメタル60の左面部に編組線H2を介して接続される。
固定鉄芯52は、磁性材料を用いて円柱状に形成されており、その中心部には、押圧ピン55が左右方向に移動自在に挿通される押圧ピン挿通孔52aが形成されている。そして、この固定鉄芯52は、コイルボビン50内の左端側に収納されるとともに、ヨーク57の磁性片57aに固定される。可動鉄芯53は、磁性材料を用いて円柱状に形成されており、右端部が中央部よりも狭径に形成されている。この可動鉄芯53は、固定鉄芯52との間に復帰ばね54が介装された状態で、コイルボビン50内に収納される。
押圧ピン55は、固定鉄芯52の押圧ピン挿通孔52aの内径と略同様の外径に形成されている。また、押圧ピン55は、押圧ピン挿通孔52aの長さよりも長く形成されるとともに、可動鉄芯53が固定鉄芯52から離間した状態では、左端部がヨーク57の磁性片57aから左方へ突出しないような長さに形成されている。つまり、押圧ピン55は、可動鉄芯53が固定鉄芯52に接触するように左方へ移動したときに、その左端部がヨーク57の磁性片57aの挿通孔を通して左方に突出されるように構成されている。
引掛ピン56は、可動鉄芯53の右端部に取り付けられており、可動接触子41の挿通孔(図示せず)を挿通する軸部56aと、可動接触子41の挿通孔を挿通できない大きさを有して軸部56aの右端部に形成される引掛部56bとを有している。
以上述べたコイルボビン50と、コイル51と、固定鉄芯52と、可動鉄芯53と、復帰ばね54と、押圧ピン55と、引掛ピン56と、ヨーク57とで電磁トリップ機構部5は構成されており、以下にその動作について説明する。
電磁トリップ機構部5は、コイル51に電流が流れていない状態(初期状態)では、可動鉄芯53が復帰ばね54の付勢力によって固定鉄芯52から離間してコイルボビン50内の右端側に位置しており、このとき可動鉄芯53の右端部がヨーク57の右方の磁性片57bから右方へ突出するとともに、押圧ピン55がコイルボビン50内に位置している。
そして、コイル51に通電すると、固定鉄芯52−ヨーク57−可動鉄芯53を通る磁路の磁気抵抗を小さくするように可動鉄芯53に対して固定鉄芯52との間で吸引力が作用し、このときコイル51に流れる電流が短絡電流等の過大な電流である場合には、復帰ばね54の付勢力に抗して可動鉄芯53が固定鉄芯52側(左端側)へ移動することになる。このとき、可動鉄芯53によって押圧ピン55が左方へ押されて、押圧ピン55の左端部がヨーク57の左方の磁性片57aの挿通孔から左方へ突出し、これによりラッチリンク46の第1の押圧片46aが左方へ押圧されることになる。また、可動鉄芯53の移動に伴って引掛ピン56が左方に移動することになる。この後にコイル51に流れる電流が小さくなると、復帰ばね54の付勢力によって可動鉄芯53が右方へ移動させられ、上記の初期状態へと復帰する。
熱動トリップ機構部6は、バイメタル60と、バイメタル60の先端部(前端部)に螺着されて、ラッチリンク46の第2の押圧片46bを右方へ押圧する調節ねじ61とで構成されている。バイメタル60は、自己発熱によって湾曲する形式の直熱型や、板状のヒータが積層されヒータによる加熱で湾曲する傍熱型のものを用いることができる。
調節ねじ61は、バイメタル60からラッチリンク46側(右側)への突出量を調節することによって、熱動トリップ機構部6の動作感度(すなわち、熱動トリップ機構部6が作動するときの電路の通過電流)がばらつかないように調節するためのものである。これは、バイメタル60の通過電流に対する湾曲の程度(動作感度)が、バイメタル60の素材のばらつきや編組線H2の接続位置等によって変化するためである。
以上述べたバイメタル60と、調節ねじ61とで熱動トリップ機構部6は構成されており、以下にその動作について説明する。
熱動トリップ機構部6は、バイメタル60に電流が流れていない状態では、バイメタル60が湾曲せず、バイメタル60の先端部の調節ねじ61はどの部材とも当接していないが、電路を通過する過大な電流によってバイメタル60の温度が上昇すると、やがてバイメタル60が湾曲して、調節ねじ61がラッチリンク46の第2の押圧片46bを右方へ押圧することになる。この後にバイメタル60に流れる電流が小さくなると、バイメタル60の温度が下降してバイメタル60が湾曲の度合いが小さくなり、やがてバイメタル60の先端部の調節ねじ61がどの部材とも当接しない状態に戻る。
消弧装置7は、前述のアーク走行板70と、消弧グリッド71とで構成されている。アーク走行板70は、導電性を有する金属板から曲成され、固定端子板40のアーク走行部40dに固着される固着片70aと、固着片70aの左端側から左方へ延設されて、前後方向においてヨーク57の連結片57cと重複する消弧片70bとを一体に備えている。また、消弧片70bは、固着片70aから離れるに従って幅を段階的に広げる形状に形成されている。消弧グリッド71は、前後方向に所定の間隔を隔てて平行配置された複数(本実施形態では8枚)の矩形状の導電板からなる消弧板71aと、消弧板71aの幅方向における両面と、左面とをそれぞれ覆う絶縁材料製の支持板71bとで構成されている。ここで、各消弧板71aには可動接触子41のアーク走行片41eが挿入される切欠部(図示せず)が形成されている。そして、この消弧グリッド71は、アーク走行板70の消弧片70bとヨーク57の連結片57cのそれぞれに消弧板71aが平行するようにして、アーク走行板70の消弧片70bとヨーク57の連結片57cとの間に配設される。
以上述べたアーク走行板70と消弧グリッド71により消弧装置7が構成されており、この消弧装置7によれば、可動接点41aが固定接点40aから離れる際にアークが生じた場合に、アークを引き伸ばして消弧することができる。尚、消弧装置7は従来周知のものを用いることができるから、本実施形態では詳細な説明を省略する。
トリップ表示部材8は、器体1の表示孔1bに、トリップ動作が行われたか否かの表示を行うために用いられる部材であって、図1に示すように、合成樹脂を用いて形成され、左右方向を長手方向とする長尺状を有し器体1に左右方向にスライド自在に支持される被支持部80と、被支持部80の左端部から左前方向に延設された斜片部81と、斜片部81の左端部から左方に延設される先部82と、被支持部80の右端部に設けられる基部83と、基部83から左前方向に延設された延設部84と、延設部84の先端部(前端部)に設けられた表示部85とを一体に備えている。
また、図4に示すように、被支持部80においてボディ10と対向する面には、トリップ表示部材8を左右方向にスライド移動させるために用いられるガイド片80aが設けられている。斜片部81には、可動接触子41の中間部の右面に対向配置される復帰駆動片81aが設けられており、この復帰駆動片81aは、ハンドル42の回動動作によって可動接触子41が右方へ移動する際に、トリップ表示部材8を右方に移動させるために用いられる。
先部82には、その左端部に、トリップリンク45の被係合部45bの左面に対向配置されるトリップ駆動片82aが設けられており、このトリップ駆動片82aは、トリップリンク45が開極ばね48の付勢に従って右回りに回転した際に、トリップ表示部材8を左方に移動させるために用いられる。また、先部82の後面部には、連結リンク44の第1の軸部44aに係止されることで、トリップ表示部材8の自重等によって予期せずトリップ表示部材8が移動してしまうことを防止するための移動規制手段となる略三角形状の係止突部82bが設けられている。この係止突部82bは、トリップ表示部材8が右方に位置して表示孔1bから表示部85が臨んでいないときに、連結リンク44の第1の軸部44aの右面部(連結リンク44における閉極方向側の部位)に当接してトリップ表示部材8の左方への移動を規制し、トリップ表示部材8が左方に位置して表示孔1bから表示部85が臨んでいるときに、連結リンク44の第1の軸部44aの左面部(連結リンク44における開極向側の部位)に当接してトリップ表示部材8の右方への移動を規制するように構成されている。
基部83には、被支持部80と所定間隔を隔てて平行するとともに、後述する支持リブ18,18を被支持部80との間で挟む一対の弾性片83a,83aが一体に突設されている。この弾性片83a,83aの各規制片83aの先端(左端)には、被時支部80側に突出する係止爪部83bが設けられている。また、一対の弾性片83a,83aは、トリップ駆動片82a又は復帰駆動片81aによりトリップ表示部材8が移動される際に、係止爪部83b,83bが後述する係止突起18a,18aを乗り越え可能な程度の弾性を有するように構成されている。
表示部85は、器体1の表示孔1bと同程度の大きさを有する略矩形状に形成されており、この表示部85の前面には、トリップ動作中を示す文字が印刷されたシール(図示せず)等が貼り付けられる。したがって、延設部84は、トリップ表示部材8がその移動範囲内で最も左側に位置しているときのみ器体1の表示孔1bから表示部85が外部に臨み、トリップ表示部材8がその移動範囲内で最も右側に位置しているときは器体1の表示孔1bから表示部85が外部に臨まないように、その長さ寸法が設定されている。
以上述べた電源側端子部2と、負荷側端子部3と、開閉機構部4と、電磁トリップ機構部5と、熱動トリップ機構部6と、消弧装置7と、トリップ表示部材8とが収納される器体1は、図3に示すように、ボディ10とカバー11とをリベットRを用いて結合することで構成されており、これらボディ10とカバー11は、ともに絶縁性を有する合成樹脂を用いて形成されている。
ボディ10は、図1に示すように、幅方向の一方(図1における紙面手前方)の側壁が開口された箱状に形成されており、その前壁部の中央には、前記開口側が開放されたハンドル用切欠部10aが設けられている。また、ボディ10の前壁部の右端側には、前記開口側が開放された表示用切欠部10bが設けられ、左端側には、前記開口側が開放されたねじ用切欠部10cが設けられている。加えて、ボディ10の左壁部には、前記開口側が開放された負荷用切欠部10dが設けられ、ボディ10の後壁部における右端側には、前記開口側が開放された電源用切欠部10eが設けられ、同じく後壁部における左端側には、回路遮断器を分電盤等に固定するための固定具12を取り付けるための取付溝10fが設けられている。加えて、ボディ10の四隅には、幅方向に貫通するリベットR用の挿通孔10gが設けられている。また、ボディ10の右壁部においてバイメタル60に螺合した調節ねじ61に対向する部位には、調節用窓孔10hが設けられるとともに、調節用窓孔10hを閉塞するための閉塞板13を取り付けるための取付溝10iが設けられている。
このボディ10の内部には、ボディ10の後方に凸となる弧状の前述のガイド溝14が設けられており、このガイド溝14には、連結リンク44の第2の軸部44bの先部が挿入され、これにより連結リンク44の移動範囲がガイド溝14により規制されることになる。さらに、ボディ10の内部には、開極ばね48の他端部を支持するばね受け凹所15が設けられるとともに、可動接触子41が開極ばね48の付勢力によって開極方向に所定距離移動された際に、ばね受け片41bの左面に当接することで可動接触子41の左方向への移動を規制するストッパ部16が設けられている。ここで、ばね受け片41bとストッパ部16との当接部位は、ばね受け片41bのばね座よりも前方に位置するようにしいている。また、ボディ10の内部には、幅方向を回転軸としてハンドル用軸部S1を回動自在に支持するハンドル用軸受け部(図示せず)と、幅方向を回転軸としてラッチ用軸部S2を回動自在に支持するラッチ用軸受け部(図示せず)が設けられている。
さらに、ボディ10の内部には、図5に示すように、トリップ表示部材8の被支持部80のガイド片80aが左右方向に移動自在に挿入されるスライド溝17が設けられており、このスライド溝17の近傍には、被支持部80を前後から挟み込んでトリップ表示部材8を左右方向にスライド移動自在に支持する支持部となる前述の略矩形状の一対の支持リブ18,18が設けられている。
これら支持リブ18,18において被支持部80と当接しない面には、トリップ表示部材8の係止爪部83b,83bをそれぞれ係止して、トリップ表示部材8の自重等によって予期せずトリップ表示部材8が移動してしまうことを防止するための前述の略三角形状の係止突起18a,18aが設けられている。そして、各係止突起18a,18aは、トリップ表示部材8が右方に位置して表示孔1bから表示部85が臨んでいないときには、各係止突起18a,18aの右面部(係止突起18aにおける閉極方向側の部位)に、各規制片83a,83aの係止爪部83b,83bがそれぞれ当接されることで、トリップ表示部材8の左方への移動を規制し、トリップ表示部材8が左方に位置して表示孔1bから表示部85が臨んでいるときには、各係止突起18a,18aの左面部(係止突起18aにおける開極方向側の部位)に各規制片83a,83aの係止爪部83b,83bがにそれぞれ当接されることで、トリップ表示部材8の右方への移動を規制するように構成されている。
また、ボディ10の内部において表示用切欠部10cの後方には、トリップ表示部材8の表示部85の後面に当接して、表示部85の左右方向のスライド移動をガイドするガイド片19が設けられている。さらに、ボディ10の内部におけるハンドル用切欠部10aの近傍には、ハンドル42の摺動部42cの前面が摺接されるリブ(図示せず)が設けられている。
一方、カバー11は、ボディ10の前記開口を閉塞するようにしてボディ10に被着されるものであり、幅方向の他方(図3における右上側)が開口するとともに、ボディ10と略同寸法の箱状に形成されている。このカバー11の前壁部には、ハンドル用切欠部10aとともにハンドル用開口部1aを構成するハンドル用切欠部11aと、ボディ10の表示用切欠部10bとともに表示孔1bを構成する表示用切欠部11bと、ボディ10のねじ用切欠部10cとともにねじ用開口部1cを構成するねじ用切欠部11cとが設けられている。また、カバー11の左壁部には、ボディ10の負荷用切欠部10dとともに負荷用開口部1dを構成する負荷用切欠部11dが設けられ、後壁部には、ボディ10の電源用切欠部10eとともに電源用開口部1eを構成する電源用切欠部(図示せず)と、ボディ10の取付溝10fと連通する取付溝(図示せず)とが設けられている。
さらに、カバー11の内部には、ボディ10のハンドル用軸受け部及びラッチ用軸受け部にそれぞれ対応して、ハンドル用軸部S1とラッチ用軸部S2とを、それぞれ幅方向を回転軸として回動自在に支持する軸受け部(図示せず)が設けられている。さらに、カバー11には、ボディ10のリベットR用の挿通孔10gにそれぞれ対応するリベットR用の挿通孔11gが幅方向に間接されており、ボディ10とカバー11の両挿通孔10g,11gにリベットRを通すことでボディ10とカバー11とを結合できるようになっている。
以上述べた部材により本実施形態の回路遮断器は構成されており、各部材は次のようにして器体1に収納されている。
ボディ10には、図5に示すように、電源用切欠部10eから刃受ばね20a,20aを突出させた状態で刃受部20が収納されるとともに、刃受部20の刃受ばね20a,20aを外側から挟み込むようにして規制部21が収納されることにより電源側端子部2が構成され、この電源側端子部2によれば、刃受ばね20a,20a間に導電バー(図示せず)を差込接続することによって、外部の電源を接続することが可能となる。また、ボディ10の負荷側切欠部10d近傍には、端子金具31が収納され、この端子金具31の後壁部における前面側には端子片32が取り付けられる。そして、端子金具31の前壁部に設けられたねじ孔には、ねじ用切欠部10cを介して固定ねじ30が螺着されるとともに、端子金具31の一方の腕片31bに端子板33が固着されることで負荷側端子部3が構成され、この負荷側端子部3によれば、固定ねじ30と端子片32とで負荷側の電源線を挟み込むことによって電源線を接続することが可能となる。
このようにして各端子部2,3が収納されたボディ10には、開閉機構部4を構成する各部品が次のようにして収納されている。固定端子板40は、固定接点40aを左方に向けた状態でボディ10内に収納され、横片部40bは、電源側端子部2の刃受部20の端子部20bに編組線H1を用いて接続されている。そして、ボディ10には、可動接触子41と、ハンドル42と、ハンドルリンク43と、連結リンク44と、トリップリンク45とが収納されるのであるが、これらは予め相互に連結された状態でボディ10に収納されている。すなわち、ハンドル42の連結部42eの軸部42fは、ハンドルリンク43の軸受け孔43aに軸支され、トリップリンク45は、ハンドル42の軸受け孔42aに軸受け孔45cを連通させるとともに、ハンドルリンク43の軸受け孔43bにガイド孔45dを連通させた状態で、連結リンク44の第1の軸部44aがガイド孔45b及び軸受け孔43bに挿入され、連結リンク44の第2の軸部44bは、可動接触子41の軸受け孔41dに挿入されている。
このように互いに連結された可動接触子41と、ハンドル42と、ハンドルリンク43と、連結リンク44と、トリップリンク45とは、可動接触子41の可動接点41aを固定接点40aに対向させた状態で、ハンドル42の軸受け孔42aとトリップリンク45の軸受け孔45cとを挿通させたハンドル用軸部S1をボディ10の前記のハンドル用軸受け部に軸支させるとともに、連結リンク44の第2の軸部44bの先部をガイド溝14内に挿入することで、ボディ10に収納されている。また、同時に、復帰ばね47が、一方の脚片(図示せず)をハンドル42の本体部42bの係止部(図示せず)に係止された状態でボディ10内に収納されている。開極ばね48は、可動接触子41のばね受け片41bのばね座が一端部に挿入されるとともに、ボディ10のばね受け凹所15に他端部が収納された状態で、ボディ10に収納され、これにより可動接触子41を開極方向に向けて付勢するようになっている。ラッチリンク46は、両脚片46c,46dの軸受け孔46eに挿通させたラッチ用軸部S2を、ボディ10の前記のラッチ用軸受け部に軸支させることでボディ10に取り付けられる。同時に、ラッチリンク46の前記凹所内に復帰ばね47の他方の脚片47aを挿入し、これによりハンドル42及びラッチリンク46は、復帰ばね47により左回り方向(図5における反時計回り方向)に付勢される。
電磁トリップ機構部5は、押圧ピン55をラッチリンク46の第1の押圧部46aの右面に対向させるとともに、引掛ピン56の軸部56aを可動接触子41の挿通孔に挿通させた状態で、ボディ10内に収納されている。さらに、電磁トリップ機構部5のコイル51は、一端が可動接触子41のばね受け片41bの左面部に接続されている。
熱動トリップ機構部6は、バイメタル60の一端側の調節ねじ61を、ラッチリンク46の第2の押圧部46bの左面部に対向させた状態で、バイメタル60の他端側を電源側端子部3の端子板33に固着することによってボディ10に収納され、この熱動トリップ機構部6のバイメタル60の左面部には、編組線H2の一端が接続され、編組線H2の他端は、電磁トリップ機構部5のコイル51の他端に接続されている。
消弧装置7は、アーク走行板70の固着片70aを固定端子板40のアーク走行部40dの先端に固着するとともに、アーク走行板70の消弧片70bを電磁トリップ機構部5の後方に位置させるとともに連結片57cに平行配置し、アーク走行板70の消弧片70bと連結片57cとの間に、消弧グリッド71を配置することによって、ボディ10内に収納されている。
以上により図5に示すようにボディ10内に、電源側端子部2と、負荷側端子部3と、開閉機構部4と、電磁トリップ機構部5と、熱動トリップ機構部6と、消弧装置7とが収納され、この後に、図4に示すトリップ表示部材8がボディ10内に次のようにして収納される。すなわち、トリップ表示部材8は、被支持部80のガイド80bをボディ10のガイド溝17内に挿入するとともに、被支持部80をボディ10の一対の支持リブ18,18間に挿入し、且つ表示部85をボディ10の前壁部とガイド片19との隙間に挿入する。これによりトリップ表示部材8は、ボディ10に、可動接点41aが固定接点40aに接離する方向(左右方向)にスライド移動自在に支持された状態で収納される。そして、この状態では、図2に示すように、トリップ表示部材8のトリップ駆動片82aが、開極方向(図2における左方向)においてトリップリンク45の被係合部45bに対向配置されており、また、復帰駆動片81aが、閉極方向(図2における右方向)において可動接触子41の中間部に対向配置されている。
したがって、トリップリンク45が開極ばね48の付勢力により開極方向に移動した際には、トリップ駆動片82aがトリップリンク45によって開極方向に押圧されることによって、トリップ表示部材8が開極方向に移動し、これにより表示部85が開極方向に移動して、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨むことになる。また、可動接触子41が閉極方向に移動した際には、復帰駆動片81aが可動接触子41によって閉極方向に押圧されることによって、トリップ表示部材8が閉極方向に移動し、これにより表示部85が閉極方向に移動して表示孔1bから器体1外部に臨まなくなる(つまり、表示部85が器体1の前壁部の後方に隠れることになる)。
このように、トリップ表示部材8は、トリップ駆動片82aと、復帰駆動片81aとによってスライド移動させられるので、従来のように巻きばね等の弾性部材を用いる必要がない。
最後に、カバー11をボディ10に、軸部S1,S2を各軸受け部(図示せず)に軸支させた状態で被着し、ボディ10とカバー11の両挿通孔10g,11gにリベットRを通してボディ10とカバー11とを結合することによって、図3に示す回路遮断器が得られる。
以上により本実施形態の回路遮断器は構成されており、この回路遮断器では、電源側端子部2、編組線H1、固定端子板40、接点部X(固定接点40a及び可動接点41a)、可動接触子41、電磁トリップ機構部5のコイル51、編組線H2、熱動トリップ機構部6のバイメタル60、負荷側端子部3からなる電路が構成されており、接点部Xの開閉に応じて電源側端子部2と負荷側端子部3との間の通電がオンオフされるようになっている。
以下に、回路遮断器の動作について説明する。図2は、接点部Xが閉極している状態を示しており、ハンドル42を右回り方向(図2における時計回り方向)に回動させて、操作部42dを右方向に倒してある。
この状態では、ラッチリンク46は、復帰ばね47の付勢力によって左回り方向(図2における反時計方向)に付勢されて、電磁トリップ機構部5の押圧ピン55に第1の押圧部46a、熱動トリップ機構部6の調節ねじ61に第2の押圧部46bがそれぞれ対向した状態に保持されている。トリップリンク45は、ガイド孔45dに連結リンク44の第1の軸部44aが挿通されているために、可動接触子41が受ける開極ばね48の付勢力を、連結リンク44を介して受ける。これによりトリップリンク45は、ハンドル用軸部S1中心に左回り方向に付勢され、これに伴って被係合部45bが開極方向に付勢されることになる。そして、このように開極ばね48により開極方向に付勢されたトリップリンク45の被係合部45bは、ラッチリンク46の係合用切欠部46gに係合されることで、開極方向への移動が規制される。
この状態では、トリップリンク45が、ハンドル用軸部S1とラッチリンク46とによって固定されているために、可動接触子41にかかる開極ばね48の付勢力をトリップリンク45で受けており、これにより開極ばね48の付勢力によって可動接触子41が開極方向へ移動しないようになっている。
したがって、ハンドル42の操作部42dを右方向に倒してオン位置に位置させた際には、連結リンク44の第1の軸部44aがトリップリンク45のガイド孔45aに沿って後方へ移動し、これに伴って連結リンク44の第2の軸部44bがボディ10のガイド溝44に沿って閉極方向へ移動する。そして、第2の軸部44bが閉極方向に移動すると、可動接触子41も閉極方向に移動し、これにより可動接点41aが固定接点40aに接触することになる。
そして、ハンドル42がオン位置に位置している状態では、ハンドルリンク43及び連結リンク44からなる連結部も定位置に固定されているため、可動接触子41は連結リンク44の第2の軸部44bを中心として、開極ばね48の付勢力により左回り方向に付勢されることになる。これにより、可動接点41aは開極ばね48の付勢力に応じた接点圧で固定接点40aに接触されることになる。すなわち、開極ばね48は、接点部Xの接圧ばねを兼用しているのである。
このとき、トリップ表示部材8の表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨んでおらず、この状態では、係止突部82bが連結リンク44の第1の軸部44aの右面部(連結リンク44における閉極方向側の部位)に当接することによって、トリップ表示部材8の左方(すなわち開極方向)への移動が規制されている。さらに、ボディ10の各係止突起18a,18aの右面部に、各規制片83a,83aの係止爪部83b,83bがそれぞれ当接することによっても、トリップ表示部材8の左方への移動が規制されている。そのため、トリップ表示部材8の自重等によってトリップ表示部材8が予期せずに移動することがなくなり、例えばトリップ動作を行っていないにもかかわらず表示孔1bにトリップ動作を行ったことを示す表示が行われてしまうことを防止できる。
以上述べた図2に示す閉極状態では、接点部Xがオンとなり、電源側端子部2と負荷側端子部3とが通電される。
そして、この状態から、操作部42dを左方向に倒してハンドル42を左回り方向に移動させる(つまり、ハンドル42をオフ位置に移動させる)と、図6に示すように、ハンドル42の連結部42eが右方に移動される。これに伴って軸部42fが前方に移動し、その結果、ハンドルリンク43が軸部42fを中心に右回り方向に回転して、連結リンク44の第1の軸部44aがトリップリンク45のガイド孔45dに沿って前方へ引き上げられるとともに、第2の軸部44bがボディ10のガイド溝14に沿って開極方向へと移動させられる。これにより可動接触子41が開極方向へと移動して可動接点41aが固定接点40aから離間し、可動接触子41が所定距離移動した後にばね受け片41bの左面部がボディ10のストッパ部16に当接する。ここで、ばね受け片41bのばね座は、ばね受け片41bとストッパ部16との当接部位よりも後方に位置しているから、開極ばね48の付勢力によって、可動接触子41は、図7に示すように、前記当接部位を回転中心として左回り方向に回動させられる。
以上述べた図7に示す開極状態では、接点部Xがオフとなっており、電源側端子部2と負荷側端子部3とが遮断される。
そして、この状態から、操作部42dを右方向に倒してハンドル42を右回り方向に移動させる(つまり、ハンドル42をオン位置に移動させる)と、図6に示すようにハンドル42の連結部42eが右回り方向に移動され、これに伴って軸部42fが後方に移動することで、ハンドルリンク43が軸部42fを中心に左回り方向に回転することになる。これにより、連結リンク44の第1の軸部44aがトリップリンク45のガイド孔45dに沿って後方へ押し下げられていき、同時に第2の軸部44bがボディ10のガイド溝14に沿って閉極方向へと移動し、やがて上述した図2に示す閉極状態に戻ることになる。
ところで、図2に示す閉極状態において、負荷側での短絡等により電磁トリップ機構部5のコイル51に過大な電流が流れると、上述したように可動鉄芯53が固定鉄芯51に吸引され、これによりラッチリンク46の第1の押圧部46aが押圧ピン55により左方に押圧されることになる。このように第1の押圧部46aが左方に押圧されると、ラッチリンク46は、ラッチ用軸部S2を中心にして右回り方向に回動することになる。また、開極状態において、過負荷状態になり熱動トリップ機構部6のバイメタル60に過大な電流が流れてバイメタル60が湾曲すると、調節ねじ61の右端部によりラッチリンク46の第2の押圧部46bが右方に押圧されることになる。このように第2の押圧部46bが右方に押圧されると、ラッチリンク46は、ラッチ用軸部S2を中心にして右回り方向に回動することになる。
つまり、電磁トリップ機構部5又は熱動トリップ機構部6によって異常電流が検出された際には、ラッチリンク46がラッチ用軸受部S2を中心にして右回り方向に回動することになる。この場合、図8に示すように、ラッチリンク46のラッチ片46fが後方へ移動するため、トリップリンク45の被係合部45bとラッチリンク46の係合用切欠部46gとの係合状態が保たれなくなって、ラッチリンク46によるトリップリンク45の移動規制が解除され、これにより、開閉機構部4では、開極ばね48の付勢力によって可動接触子41を開極方向へ移動させるトリップ動作が行われる。
以下に、トリップ動作についてさらに詳しく説明する。ラッチリンク46によるトリップリンク45の開極方向への移動規制が解除された際には、開極ばね48の付勢によって可動接触子41が開極方向へと移動させられ、これに伴って、連結リンク44の第1の軸部44aがトリップリンク45のガイド孔45dに沿って前方へ移動する。尚、電磁トリップ機構部5によりトリップ動作が開始された際には、可動鉄芯53の移動に伴って引掛ピン56が開極方向に移動することで、引掛ピン56の引掛部56bによっても可動接触子41が開極方向に移動されることになる。
そして、第1の軸部44aが前方に移動した際には、ハンドルリンク43が第1の軸部44aを中心として右回り方向に回動し、これによりハンドル42の軸部42fが右方に移動させられて、図1に示すように、ハンドル42の操作部42dが左方向に倒されてハンドル42がオフ位置に位置する。一方、電磁トリップ機構部5の可動鉄芯53が初期位置(右端側の位置)に戻る、又はバイメタル60が元の形状に戻った際には、上述したように復帰ばね47の付勢力によりラッチリンク46がラッチ用軸部S2を中心にして左回り方向に回動される。このとき、開極ばね48の付勢力から開放されたトリップリンク45が、ラッチ片46によりハンドル用軸部S1を中心にして左回り方向に回動され、やがて図1に示すようにトリップリンク45の被係合部45bがラッチ片45fの係合用切欠部46gに再度係合することになる。
また、トリップ表示部材8のトリップ駆動片82aが、開極方向においてトリップリンク45の被係合部45bに対向配置されているので、トリップ動作時に、トリップリンク45が開極ばね48の付勢力により開極方向に移動した際には、トリップ駆動片82aがトリップリンク45によって開極方向に押圧されることになる。このとき、連結リンク44の第1の軸部44aが一時的に後方へ移動されることになるため、係止突部82bが連結リンク44の第1の軸部44aに当接しなくなり、これにより係止突部82bと連結リンク44によるトリップ表示部材8の移動規制が解除されている。さらに、一対の弾性片83a,83aは、上述したように、トリップ駆動片82a又は復帰駆動片81aによりトリップ表示部材8が移動される際に、係止爪部83b,83bが後述する係止突起18a,18aを乗り越え可能な程度の弾性を有しているので、トリップリンク45の押圧によるトリップ表示部材8の移動を妨げることがないようになっている。したがって、トリップリンク45によってトリップ駆動片82aが押圧されたトリップ表示部材8は、開極方向に移動していくことになる。このようにしてトリップ表示部材8が開極方向に移動していくと、表示部85も開極方向に移動していき、やがて、図1に示すように、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨むことになる。
そして、この状態では、トリップ表示部材8の係止突部82bが連結リンク44の第1の軸部44aの左面部(連結リンク44における開極方向側の部位)に当接することによって、トリップ表示部材8の右方(すなわち閉極方向)への移動が規制されている。さらに、ボディ10の各係止突起18a,18aの右面部(係止突起18aにおける閉極方向側の部位)に、各規制片83a,83aの係止爪部83b,83bがそれぞれ当接することによっても、トリップ表示部材8の右方への移動が規制されている。そのため、トリップ表示部材8の自重等によってトリップ表示部材8が予期せずに移動することがなくなり、例えばトリップ動作後であるにもかかわらず、表示孔1bから表示部85が器体1外部に臨まなくなってしまうことを防止できる。
以上述べた図1に示すトリップ動作終了後の状態では、接点部Xがオフとなるとともに、表示孔1bに表示部85が臨んでおり、表示孔1bを見ることにより、トリップ動作が行われて接点部Xがオフになったことを知ることができる。
そして、図1に示す状態から、操作部42dを右方向に倒してハンドル42を右回り方向に回動させると、上述したように、ハンドル42の連結部42eが左方に移動され、これに伴って軸部42fが後方に移動することで、ハンドルリンク43が軸部42fを中心に左回り方向に回転し、これにより連結リンク44の第1の軸部44aがトリップリンク45のガイド孔45dに沿って後方へ押し下げられ、同時に第2の軸部44bがボディ10のガイド溝14に沿って閉極方向へと移動し、やがて上述した図2に示す閉極状態に戻ることになる。
また、トリップ表示部材8の復帰駆動片81aが、閉極方向において可動接触子41の中間部に対向配置されているので、可動接触子41が閉極方向に移動した際には、復帰駆動片81aが可動接触子41によって閉極方向に押圧される。このとき、連結リンク44の第1の軸部44aが一時的に後方へ移動されることになるため、係止突部82bが連結リンク44の第1の軸部44aに当接しなくなり、これにより係止突部82bと連結リンク44によるトリップ表示部材8の移動規制が解除されている。さらに、一対の弾性片83a,83aは、上述したように、トリップ駆動片82a又は復帰駆動片81aによりトリップ表示部材8が移動される際に、係止爪部83b,83bが後述する係止突起18a,18aを乗り越え可能な程度の弾性を有しているので、トリップリンク45の押圧によるトリップ表示部材8の移動を妨げることがないようになっている。
したがって、可動接触子41によって復帰プ駆動片81aが押圧されたトリップ表示部材8は、閉極方向に移動していくことになる。このようにしてトリップ表示部材8が閉極方向に移動していくと、表示部85も閉極方向に移動していき、やがて、図1に示すように、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨まなくなる。
以上述べたように本実施形態の回路遮断器によれば、トリップ動作時には、トリップ駆動片82aがトリップリンク45の被係合部45bにより開極方向へ押圧されることでトリップ表示部材8が開極方向へ移動して、表示部85を表示孔1bから器体1外部に臨ませてトリップ動作が行われていることを表示する一方、ハンドル42の操作により接点部Xをオンした際には、復帰駆動片81aが可動接触子41により閉極方向へ押圧されることでトリップ表示部材8が閉極方向へ移動して、表示部85を表示孔1bから器体1外部に臨ませないようになっている。そのため、短絡電流や過電流によってトリップ動作を行った際に、トリップ動作が行われたことを示す表示を行えるという効果を奏する。また、トリップリンク45により押圧されるトリップ駆動片82aと、可動接触子41により押圧される復帰駆動片81aによってトリップ表示部材8の移動を行えるようになっているので、従来のようにトリップ表示を行うために巻きばね等の弾性部材を用いなくて済み、これにより回路遮断器を組み立てる際に、巻きばね等の弾性部材をトリップ表示部材8と器体1の両者に引っ掛けた状態で、他の部品の器体への組み込み等を行う必要がなくなって、組立性を向上できるという効果を奏する。
さらに、トリップ表示部材8に設けた係止突部82bによって、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨んでいない状態では、トリップ表示部材8の開極方向への移動が規制され、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨んでいる状態では、トリップ表示部材8の閉極方向への移動が規制されるようになっているから、トリップ表示部材8の自重等によってトリップ表示部材8が予期せずに移動して、例えばトリップ動作後であるにもかかわらずトリップ表示部材8が閉極方向に移動して表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨まなくなることを防止でき、これによりトリップ動作によるオフ状態と、ハンドル操作によるオフ状態を間違えることがなくなって、表示孔1bに正しい表示を行えるようになるという効果を奏する。
加えて、トリップ表示部材8の一対の弾性片83a,83aと、器体1の一対の支持リブ18,18に設けられた係止突起18a,18aによっても、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨んでいない状態では、トリップ表示部材8の開極方向への移動が規制され、表示部85が表示孔1bから器体1外部に臨んでいる状態では、トリップ表示部材8の閉極方向への移動が規制されるから、ハンドル42のオンオフ操作時のように連結リンク44と係止突部82bの係止状態が解除されてしまう場合でも、トリップ表示部材8の自重等によってトリップ表示部材8が予期せずに移動してしまうことをさらに防止できるようになり、常に表示孔1bに正しい表示を行えるようになるという効果を奏する。
尚、本実施形態の回路遮断器は、電磁トリップ機構部5と、熱動トリップ機構部6の両方を備えているものであるが、いずれか一方のみを備えているものでもあってもよいし、各トリップ機構部の構成は上記の例に限られるものではない。また尚、電源側端子部2や負荷側端子部3、開閉機構部4の構成も上記の例に限られるものではなく、状況に応じて好適なものを用いることができることは明らかである。