以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明では特に断りがないかぎり、図1中の上側を回路遮断器の前側、下側を回路遮断器の後側、左側を回路遮断器の左側、右側を回路遮断器の右側と規定し、紙面に垂直な方向を回路遮断器の幅方向と規定する。
本実施形態の回路遮断器は、図1、図2および図6(a)〜(d)に示すように、ボディ2及びカバー3からなる器体1と、負荷等の電源線(図示せず)を接続するための負荷側端子部4Aと、外部電源(図示せず)に電気的に接続するための電源側端子部4Bと、器体1内の所定位置に固定される固定接点7及び固定接点7に接離する可動接点8からなる接点部6と、開閉操作(オンオフ操作)に応じて接点部6を開閉させるリンク機構9と、異常電流(短絡電流および過負荷電流)を検知するとリンク機構9を駆動して接点部6を強制開極させるトリップ機構(電磁釈放機構部11および熱動釈放機構部12)と、接点部6の開極時に発生するアークを速やかに消弧するための消弧装置13と、器体1(ボディ2)の前面に設けた表示窓14に少なくとも一部を臨ませた状態で配置され、リンク機構9に連結されて、接点部6のオン状態、オフ状態およびトリップ状態を表示する合成樹脂製の表示部材15とを備えている。
ボディ2及びカバー3は、それぞれ、絶縁性を有する合成樹脂により、幅方向の一面が開口した略箱状に形成されている。ボディ2とカバー3とは、互いの開口部を合わせ、ボディ2の四隅に突設されたボス2dをカバー3の側壁に設けた貫通孔に挿入した状態で、ボディ2の左右両側壁に設けた係止爪2cをカバー3の左右両側壁に設けた係止孔3aに引掛係止させ、カバー3の表面から突出するボス2dの先端を潰すことにより、ボディ2とカバー3とが結合される。
負荷側端子部4Aおよび電源側端子部4Bは、それぞれ、電源側および負荷側からの電線(図示せず)を接続するためのものであって、導電性を有する金属板を用いて左右方向を軸方向とする角筒状に形成された端子金具16,16(所謂ピラー端子)と、導電性を有する金属板を略コ字状に折り曲げて形成され、コ字状部の下側片を端子金具16の筒内に挿入した状態でボディ2内に配設される端子板5A,5Bと、端子板5A,5Bが備えるコ字状部の上側片に設けた挿通孔(図示せず)に遊嵌されて、端子金具16,16の前壁部に設けたねじ孔(図示せず)に螺合する固定ねじ17,17とを備えている。そして、負荷側端子部4Aの端子板5Aには電磁釈放機構部11を構成するコイル18が固着され、電源側端子部4Bの端子板5Bには熱動釈放機構部12を構成する帯板状のバイメタル板19に一端が固着された編組線23aの他端が固着されている。
固定接点7は、器体1内部の所定位置に固定される固定接点板20に固着されており、この固定接点板20にはコイル18の他端が固着されている。また可動接点8は、所定の厚みを有する金属板に抜き加工および曲げ加工を施して形成された可動接点アーム22の一端部に設けられている。この可動接点アーム22は、器体1の内壁に設けた円弧状のガイド溝2b(図1参照)に沿って移動自在に取着される第2回動軸21に対して他端側が回動自在に軸支されており、可動接点アーム22の中間部には編組線23bの一端側が固着されている。編組線23bの他端側はバイメタル板19の中間位置に固着されており、端子板5B−編組線23a−バイメタル板19−編組線23b−可動接点アーム22−可動接点8−固定接点7−固定接点板20−コイル18−端子板5Aの経路で電路が形成されている。
リンク機構9は、ボディ2の前壁に設けた窓孔2aから操作摘み(操作部)10aを外部に突出させた状態で、ボディ2に設けたハンドル軸24に回動自在に支持される合成樹脂製のハンドル10と、丸棒状の金属棒の両端部を一方向に折曲することによってコ字形に形成され、ハンドル10に設けた軸穴10bに一方の軸部が回動自在に軸支されたスラストバー27と、所定の厚みを有する金属板に抜き加工および曲げ加工を施して形成され、器体1に設けた第1回動軸25に中間部が回動自在に軸支されるとともに、スラストバー27の他方の軸部を係脱自在に係合する係合部26aが一端側に設けられた支持部材26と、所定の厚みを有する金属板に抜き加工および曲げ加工を施して形成され、中央部で支持部材26とともに第1回動軸25に回動自在に軸支され、一端側に設けたL字形の爪片28と上述の係合部26aとの間にスラストバー27の他方の軸部を係合するための閉空間を形成するとともに、他端側に第2回動軸21が係入される長孔状のリンク孔29が形成されたラッチ部材30と、丸棒状の金属棒の両端部を一方向に折曲することによってコ字形に形成され、ハンドル10において軸穴10bよりもオフ回転側に円周方向に沿って設けられた長円状のガイド溝10cに一方の軸部が係入されるとともに、支持部材26に設けたL字形の係合片26bに他端側の軸部が引掛掛止されるストップバー31と、接点部6に接圧を与える接圧ばね32と、第1回動軸25を中心にしてラッチ部材30の一端側の爪片28が支持部材26の係合部26aに近付く向きにラッチ部材30を回転させる方向の付勢力をラッチ部材30に与えるとともに、表示部材15を第1回動軸25の回りに反時計回りに回転させる方向の付勢力を表示部材15に与えるラッチ用ばね33とを備えている。なおハンドル10には、ハンドル10をオフ回転方向(図1における反時計回り方向)に弾性付勢するハンドルばね(図示せず)と、ストップバー31の軸部をガイド溝10c内で右端方向(軸穴10bに近い側)へ弾性付勢するリンクばね34とが設けられている。
表示部材15は合成樹脂成型品からなり、ボディ2の前面に開口する表示窓14内で、接点部6の状態(オン状態、オフ状態、トリップ状態の何れか)を表示するために用いられる。この表示部材15は、図1、図7および図8に示すように、第1回動軸25が挿入される軸孔40aを有し、支持部材26およびラッチ部材30とともに第1回動軸25に回動自在に枢支される板状の回動体40と、回動体40の前側部の左側縁から幅方向の一側(図1における紙面手前側)に突出して、支持部材26の係合片26bに当接する当接片41と、前面が第1回動軸25を中心とする断面円弧状の曲面に形成されて少なくとも一部が表示窓14に臨む部位に配置される表示面42と、表示面42の左側端の幅方向両側縁から、表示面42の前面に沿って右側方向へそれぞれ延長形成された係止爪片43,43と、回動体40の前側部から右斜め前方に突出して、回動体40と表示面42の後面との間を連結する連結片44と、表示面42の右側部後面より左斜め後方に向かって延出するガイド片45と、回動体40の前側部の右側縁から右側方向へ突出する突出片46とを一体に備えている。なお表示面42は円周方向の中間部に凹部を有し、この凹部がオフ状態を表示するオフ表示部42aとなっている。また表示面42には円周方向においてオフ表示部42aの両側部に、オン状態を表示するオン表示部42bと、トリップ状態を表示するトリップ表示部42cとが設けられており、各表示部42a〜42cの色や表示内容を異ならせることで、オン状態とオフ状態とトリップ状態との判別が行えるようになっている。
接圧ばね32は、両端部が互いに逆方向に突出する捩りコイルばねからなり中央の孔に第1回動軸25が挿通されて、一端部がボディ2に設けたばね受け突起(図示せず)に当接する。また接圧ばね32の他端部は、可動接点アーム22において第2回動軸21に対して可動接点8が設けられた一端側と反対側の端部に設けられたばね受け片22aに当接し、ばね受け片22aを図1中の右側へ弾性付勢することで、可動接点アーム22を第2回動軸21の回りに時計回りに回転する方向へ付勢するとともに、可動接点アーム22に連結された支持部材26を第1回動軸25の回りに反時計回りに回転する方向へ付勢している。
ラッチ用ばね33は、捩りコイルばねからなり中央の孔に第1回動軸25が挿通されて、一端部が表示部材15の当接片41に当接するとともに、他端部がラッチ部材30に設けたばね受け片30aに当接する。このラッチ用ばね33により、ラッチ部材30の爪片28が支持部材26の係合部26aに近づき、且つ、爪片28と係合部26aとで囲まれる空間(つまりスラストバー27の軸部が挿入される空間)を閉空間とする方向へラッチ部材30を回動させるような弾性付勢力がラッチ部材30に与えられるとともに、表示部材15を第1回動軸25の回りに反時計回りに回転させる方向の付勢力が表示部材15に与えられる。
また上述したラッチ部材30は、後端部の左側縁から延長形成されて電磁釈放機構部11により押圧される略L字形の第1押圧片35と、後端部の右側縁から延長形成されて熱動釈放機構部12により押圧される略L字形の第2押圧片36とを備えている。
ここにおいて本実施形態では、リンク機構9の構成部品、すなわち可動接点8を有する可動接点アーム22と可動接点アーム22を支持する支持部材26とラッチ部材30とスラストバー27およびストップバー31とを全て金属部品で形成してあり、一般的に合成樹脂成型品に比べて製造コストが安価な金属部品でリンク機構9を構成しているので、リンク機構9の構成部品を合成樹脂成型品とした場合に比べて、リンク機構9の製造コストを安価にできるから、回路遮断器全体のコストダウンを図ることができる。また合成樹脂に比べて材料強度の高い金属材料でリンク機構9の構成部品を形成しているので、リンク機構9を構成する部品の小型化が可能であり、また温度に対する経年変化にも強いから、長期間に亘って動作性能を安定化させることができる。
また本実施形態では、ラッチ部材30の第1押圧片35に対向して熱動釈放機構部12のトリガーピン38が配置されているのであるが、リンク機構9の構成部品を全て金属製としているので、リンク機構9と熱動釈放機構部12との絶縁を図る必要がある。そこで本実施形態では、トリガーピン38の移動範囲を除いてリンク機構9と熱動釈放機構部12との間に配置される絶縁壁2e,2fをボディ2の内壁から立設するとともに(図1及び図2参照)、カバー3の内壁にも絶縁壁2e,2fに対応する部位に絶縁壁(図示せず)を立設してあり、ボディ2とカバー3とを結合した状態ではトリガーピン38の移動範囲を除いてリンク機構9と熱動釈放機構部12との間に絶縁壁が配置されるようになっている。なお絶縁壁2eは、後述するヨーク39の右側の磁性片39bの前半分と連結片39cの右側部とを覆い、絶縁壁2fは右側の磁性片39bの後半分を覆っている。
而して、ボディ2およびカバー3の内壁に立設した絶縁壁2e,2fによってリンク機構9と熱動釈放機構部12との間が絶縁されるから、これら絶縁壁2e,2fによって接点部6の開極時又は閉極時に接点部6で発生したアークがリンク機構9の構成部品(すなわちトリガーピン38で押されるラッチ部材30)を介して電磁釈放機構部11側へ伝わるのを防止することができる。また更に、リンク機構9と熱動釈放機構部12との間を絶縁する絶縁壁はボディ2及びカバー3の内壁からそれぞれ立設され、ボディ2とカバー3とを結合した状態では、ボディ2に設けた絶縁壁の先端とカバー3に設けた絶縁壁の先端とが当接しているので、器体1(ボディ2およびカバー3)と絶縁壁との間の隙間を無くすことができ、器体1と絶縁壁との間の隙間を通してリンク機構9と電磁釈放機構部11との間で通電する虞を無くすことができる。
電磁釈放機構部11は、絶縁性を有する合成樹脂により円筒状に形成されて、平角巻線からなるコイル18が外周面に巻装されたコイルボビン37と、コイルボビン37の内部に設けられた磁性材料からなる固定鉄芯(図示せず)と、コイルボビン37内に左右方向にスライド移動自在に設けられた磁性材料からなる可動鉄芯(図示せず)と、コイルボビン37内に配置され、可動鉄芯を固定鉄芯から離れる方向に付勢する付勢ばね(図示せず)と、可動鉄心に結合されて先端部がコイルボビン37の外側に突出し、可動鉄芯が固定鉄芯に吸引されると先端部でラッチ部材30の第1押圧片35を右方向に押圧するトリガーピン38と、ヨーク39とで構成されている。
ヨーク39は、図1に示すように磁性材料によって左後部に切欠を有する略ロ字形に形成されており、左右方向において対向する一対の磁性片39a,39bと、一対の磁性片39a,39bの前側縁間を連結する連結片39cとを一体に備えており、両磁性片39a,39b間にコイルボビン37が配置される。また右側の磁性片39bには、上述のトリガーピン38が挿通可能な挿通孔(図示せず)が形成されるとともに、磁性片39bの後側縁(図1の下側縁)から左側に向かって消弧装置13に対向配置される対向片39dが延長形成されている。なおヨーク39には、右側の磁性片39bの一部を切り起こすことによって固着片39eが形成されており、この固着片39eの前側面にコイル18の一端部が固着されるとともに、固着片39eの後側面に固定接点板20が固着されている。
而して電磁釈放機構部11では、コイル18に電流が流れていない状態(初期状態)では、可動鉄芯が復帰ばねの付勢力によって固定鉄芯から離間しており、可動鉄芯に連結されたトリガーピン38が左端の位置まで後退している。一方、端子部4A,4B間に電流が流れて、コイル18に通電されると、固定鉄芯−ヨーク39−可動鉄芯を通過する磁路の磁気抵抗を小さくするように可動鉄芯と固定鉄芯との間で吸引力が作用し、コイル18に流れる電流が短絡電流等の過大な電流である場合には、復帰ばねの付勢力に抗して可動鉄芯が固定鉄芯側へ移動することになる。このとき、可動鉄芯に連結されたトリガーピン38が右方向へ突出し、トリガーピン38の先端部でラッチ部材30の第1押圧片35が右側へ押圧されて、リンク機構9によるトリップ動作が行われる。トリップ動作が行われて接点部6が強制開極されると、コイル18に流れる電流が減少して可動鉄芯に作用する吸引力が低下するため、復帰ばねの付勢力によって可動鉄芯が初期位置に移動し、トリガーピン38が左端の初期位置まで後退する。
熱動釈放機構部12を構成するバイメタル板19としては、自己発熱によって湾曲する形式の直熱型や、板状のヒータが積層されヒータによる加熱で湾曲する傍熱型のものを用いることができる。バイメタル板19に電流が流れていない状態ではバイメタル板19は湾曲せず、バイメタル板19の先端部は第2押圧片36に当接していない。一方、端子部4A,4B間に過負荷電流のような過大な電流が流れると、電路を流れる過負荷電流によってバイメタル板19の温度が上昇し、それに応じてバイメタル板19が湾曲するため、バイメタル板19の先端が第2押圧片36を右側へ押圧して、リンク機構9によるトリップ動作が行われる。トリップ動作が行われて接点部6が強制開極されると、バイメタル板19に流れる電流が減少し、その温度が低下してバイメタル板19の湾曲度合いが小さくなり、やがてバイメタル板19の先端部がラッチ部材36の第2押圧片36から離れた初期状態に戻る。
消弧装置13は、図1及び図2に示すようにアーク走行板13aと消弧グリッド13bとで構成される。アーク走行板13aは、帯板状の金属板を曲成することによって形成され、バイメタル板19の基部が一端に結合されており、器体1の下側壁に沿って器体1の左側へ延設されるとともに、前後方向においてヨーク39の対向片39dと重複する消弧片13cを他端側に備えている。消弧グリッド13bは、前後方向に所定の間隔をおいて平行配置された複数枚の導電板からなる消弧板13dと、絶縁材料により形成されて消弧板13dの幅方向における両面をそれぞれ覆う支持板13eとで構成されている。ここで、消弧グリッド13bは、アーク走行板13aの消弧片13cと、ヨーク39の対向片39dのそれぞれに消弧板13dが平行するようにして、消弧片13cとヨーク39の対向片39dとの間に配設されている。この消弧装置13によれば、可動接点8が固定接点7から離れる際にアークが生じた場合に、アークを引き伸ばして消弧することができる。尚、消弧装置13は従来周知のものを用いることができるので、本実施形態では詳細な説明を省略する。
次に、回路遮断器の動作について図1〜図5を参照して説明する。なお図1および図2はオフ状態の説明図、図3はオン状態の説明図、図4はトリップ直後の状態を示す説明図、図5は接点部6の溶着状態を示す説明図である。
図1に示すように、オフ状態ではハンドル10がハンドルばねの付勢力によってオフ回転方向(図1中の反時計回り)に回転し、操作摘み10aが窓孔2aの左端縁に当接する位置で停止している。この時、ハンドル10の回動に伴ってスラストバー27およびストップバー31が前側(図1の上側)に引き上げられ、スラストバー27が支持部材26を押圧する力が無くなるので、接圧ばね32のばね復帰力によって支持部材26が第1回動軸25を中心に反時計回りに回転するとともに、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に時計回りに回転する。そして支持部材26は、第2回動軸21がガイド溝2bの終端位置まで移動した位置で停止し、可動接点アーム22は、上端部の左側縁から突出するストッパ片22bが支持部材26の係合片26bに当接した位置で停止しており、可動接点アーム22の下端側に設けた可動接点8が固定接点7から開離している。またラッチ部材30はラッチ用ばね33のばね力を受けて図1中時計回りに回転するのであるが、爪片28がスラストバー27の軸部と係合する位置で、ラッチ部材30の回転が停止する。また更に表示部材15もラッチ用ばね33のばね力を受けて図1中反時計回りに回転し、図1および図9(a)に示すように表示部材15の係止爪片43が器体1の内壁に設けた係止突起47と係止する位置で停止する。この時、表示部材15の表示面42において円周方向の中間部(オフ表示部42a)がボディ2の表示窓14から露出する。
また接点部6がオフの状態(図1参照)で、ハンドル10の操作摘み10aをオフ位置からオン方向(図1中の右回り方向)へ回転移動させると、ハンドル10の回転に伴って、スラストバー27の他端側の軸部が支持部材26の係合部26aを押圧することによって、支持部材26を第1回動軸25の周りに図1中右回りに回転させ、支持部材26の後端部に取着された第2回動軸21をガイド溝2bに沿って固定接点板20に近付く方向(図1中の左側)へスライド移動させる。また第2回動軸21に軸支された可動接点アーム22は、ばね受け片22aが接圧ばね32によって右側方向に付勢されているので、第2回動軸21のスライド移動に伴って、可動接点アーム22の全体が図中左側へ移動するとともに、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に図1中時計回りに回転するのであるが、ハンドル10の回転に伴ってストップバー31の他方(後側)の軸部が後側へ移動して可動接点アーム22のストッパ片22bに当接すると、ストップバー31によって可動接点アーム22の回転が止められ、器体に対する可動接点アーム22の回転位置はそのままで第2回動軸21が図1中の左側へスライド移動する。そして、第2回動軸21のスライド移動に応じて、ハンドル10のガイド溝10c内に係入されたストップバー31の一方の軸部が、ストップバー31の他方の軸部(可動接点アーム22のストッパ片22bを押圧する側)とハンドル軸24とを結ぶ線分を超えて図1中の左側に移動すると、ストップバー31の軸部がストッパ片22bを押圧する力が無くなるので、ストップバー31により回転を止められている間に接圧ばね32に蓄積された付勢力によって、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に図1中時計回りに急速に回転し、可動接点8が固定接点7に短時間で接触することになるから、アークの発生を防止することができる。
そして、ハンドル10がオン位置まで回転した状態では、スラストバー27の一端側の軸部(軸穴10bに枢支される側)が、ハンドル軸24とスラストバー27の他端側の軸部とを結ぶ線を越えて反対側(後側)へ移動するので、接圧ばね32のばね力とハンドルばねのばね力などがバランスしてハンドル10がオン位置で保持され、接点部6が閉極状態となる(図3参照)。またハンドル10の回転に伴って支持部材26が時計回りに回転すると、支持部材26の係合片26bがラッチ用ばね33のばね力に抗して表示部材15の当接片41を前側へ押圧することによって、表示部材15が第1回動軸25を中心に図1中の時計回りに回転する。オン状態における表示部材15の回転位置は、閉極状態で係合片26bと当接片41とが接触する位置で決まり、図3および図9(b)に示すように表示部材15の表示面42において円周方向の左側部(オン表示部42b)が表示窓14から露出する。またラッチ部材30はラッチ用ばね33のばね力を受けて図1中時計回りに回転するのであるが、爪片28がスラストバー27の軸部と係合する位置で、ラッチ部材30の回転が停止する。なお、オン状態においては接圧ばね32のばね力によって可動接点8と固定接点7との接圧が得られるようになっている。
また接点部6がオンの状態(図3参照)で、ハンドル10の操作摘み10aをオン位置からオフ側へ回転移動させると、ハンドル10の回転に伴ってスラストバー27およびストップバー31が前側(図3の上側)に引き上げられ、スラストバー27が支持部材26を押圧する力が無くなるので、接圧ばね32のばね復帰力によって支持部材26が第1回動軸25を中心に反時計回りに回転するとともに、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に時計回りに回転する。なお支持部材26は、第2回動軸21がガイド溝2bの終端位置まで移動した位置で停止するとともに、可動接点アーム22は、上端部の左側縁から突出するストッパ片22bが支持部材26の係合片26bに当接した位置で停止し、接点部6が開極する。ここにおいて、ハンドル10をオフ方向へ回転させる際に、スラストバー27の一端側の軸部(軸穴10bに枢支される側)が、ハンドル軸24とスラストバー27の他端側とを結ぶ線を越えて反対側へ移動すると、ハンドルばねのばね力によりハンドル10がオフ方向へ急速に回転するので、可動接点8が固定接点7から短時間で引き外されて、アークの発生を防止することができる。そして、接点部6のオフ時には爪片28がスラストバー27の軸部と係合する位置でラッチ部材30の回転が停止し、表示部材15は、表示面42において円周方向の中間部(オフ表示部42a)が表示窓14から露出する位置で停止する。
次に熱動釈放機構部12および電磁釈放機構部11によるトリップ動作について説明する。まず熱動釈放機構部12によるトリップ動作について説明する。接点部6のオン時(図3参照)に過負荷電流のような異常電流が電路に流れると、電路を流れる過大な電流によってバイメタル板19の温度が上昇し、やがてバイメタル板19が湾曲するので、バイメタル板19の前端部(図3の上側部)によりラッチ部材30の第2押圧片36がラッチ用ばね33のばね力に抗して右方向に押圧される。このとき、ラッチ部材30が第1回動軸25を中心に反時計回りに回転することによって、爪片28が支持部材26から離れる方向へ移動し、爪片28と係合部26aとで囲まれる空間が開空間となる。この空間が開空間になると、スラストバー27の他端側の軸部(軸穴10bで軸支される側と反対側)が爪片28と支持部材26で囲まれる空間から外側に外れ、ハンドル10からの力が支持部材26に加わらなくなるので、接圧ばね32のばね復帰力によって支持部材26が第1回動軸25を中心に反時計回りに回転するとともに、可動接点アーム22が第1回動軸21を中心に時計回りに回転する。そして支持部材26は、第2回動軸21がガイド溝2bの終端位置まで移動した位置で停止し、可動接点アーム22は、上端部の左側縁から突出するストッパ片22bが支持部材26の係合片26bに当接した位置で停止しており、可動接点8が固定接点7から強制的に開極させられる。またスラストバー27の他端側の軸部が爪片28と支持部材26で囲まれる空間から外に出る際には、支持部材26の回転によってスラストバー27の軸部が前側に跳ね上げられ、それによってスライドバー27の軸部が表示部材15のガイド片45を前側に跳ね上げるから、表示部材15が第1回動軸25を中心に反時計回りに回転させられて、図4および図9(c)に示すように係止爪片43が器体1の内壁の係止突起47を乗り越える位置まで回転する。すなわち表示部材15は、オフ状態の位置よりもさらに左側まで移動することになり、表示面42において円周方向の右側部(トリップ表示部42c)が表示窓14から露出する。またトリップ動作が行われると、ハンドル10がハンドルばねのばね力によってオン位置からオフ位置まで回転し、ハンドル10の回転に伴ってスラストバー27の他端側の軸部が図4中の左側へ引っ張られると、この軸部がガイド片45に案内されてラッチ部材30の爪片28と支持部材26の係合部26aとで囲まれる空間内に入り込むので、表示部材15の回転位置を除けばオフ状態と同様の状態となる。
また接点部6がオンしている状態(図3参照)で、電路に短絡電流のような異常電流が流れると、コイル18に流れる電流によって磁界が発生し、固定鉄芯−ヨーク39−可動鉄芯を通過する磁路の磁気抵抗を小さくするように可動鉄芯と固定鉄芯との間で吸引力が作用して、可動鉄芯が固定鉄芯側へ移動する。このとき、可動鉄芯の移動に応じてトリガーピン38が右方向へ突出し、トリガーピン38の先端部でラッチ部材30の第1押圧片35が右側へ押圧されるので、ラッチ部材30が第1回動軸25を中心として図3中反時計回りに回転する。このとき、爪片28が支持部材26の係合部26aから離れる方向へ移動して、爪片28と係合部26aとで囲まれる空間が開空間となり、スラストバー27の他端側の軸部がこの空間から外側に出るので、上述した熱動釈放機構部12の場合と同様のトリップ動作が行われて接点部6が強制開極される。
なおトリップ状態から復帰させる場合、ハンドル10の操作摘み10aをオフ位置からオン方向(図1中時計回り方向)へ回転移動させると、ハンドル10の回転に伴って、スラストバー27の他端側の軸部が支持部材26の係合部26aを押圧することによって、支持部材26を第1回動軸25の周りに図1中右回りに回転させ、支持部材26の後端部に取着された第2回動軸21をガイド溝2bに沿って固定接点板20に近付く方向(図1中の左側)へスライド移動させる。また第2回動軸21に軸支された可動接点アーム22は、ばね受け片22aが接圧ばね32によって右側方向に付勢されているので、第2回動軸21のスライド移動に伴って、可動接点アーム22の全体が図中左側へ移動するとともに、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に図1中時計回りに回転するのであるが、ハンドル10の回転に伴ってストップバー31の他方(後側)の軸部が後側へ移動して可動接点アーム22のストッパ片22bに当接すると、ストップバー31によって可動接点アーム22の回転が止められ、器体に対する可動接点アーム22の回転位置はそのままで第2回動軸21が図1中の左側へスライド移動する。そして、第2回動軸21のスライド移動に応じて、ハンドル10のガイド溝10c内に係入されたストップバー31の一方の軸部が、ストップバー31の他方の軸部(可動接点アーム22のストッパ片22bを押圧する側)とハンドル軸24とを結ぶ線分を超えて図1中の左側に移動すると、ストップバー31の軸部がストッパ片22bを押圧する力が無くなるので、ストップバー31により回転を止められている間に接圧ばね32に蓄積された付勢力によって、可動接点アーム22が第2回動軸21を中心に図1中時計回りに急速に回転し、可動接点8が固定接点7に短時間で接触することになる。そして、ハンドル10がオン位置まで回転した状態では、スラストバー27の一端側の軸部(軸穴10bに枢支される側)が、ハンドル軸24とスラストバー27の他端側の軸部とを結ぶ線を越えて反対側(後側)へ移動するので、接圧ばね32のばね力とハンドルばねのばね力などがバランスして、ハンドル10がオン位置で保持される(図3参照)。またこの時、支持部材26の係合片26bがラッチ用ばね33のばね力に抗して表示部材15の当接片41を前側へ押圧することによって、表示部材15が第1回動軸25を中心に図1中の時計回りに回転し、図3および図9(b)に示すように表示部材15の表示面42において円周方向の左側部(オン表示部42b)が表示窓14から露出する。
このように表示窓14から露出する表示面42の部位は、接点部6のオフ状態、オン状態およびトリップ状態の3つの状態でそれぞれ異なっており、各々の状態で表示窓14から露出する表示面42の部位の色や表示内容(例えば文字)などを異ならせることによって、1つの表示部材15で接点部6のオフ状態、オン状態およびトリップ状態をそれぞれ表示することができる。
また図5は接点部6に過大電流が流れて溶着した状態を示しており、電磁釈放機構部11又は熱動釈放機構部12が過大電流を検知して第1押圧部35又は第2押圧部36を押圧することによって、ラッチ部材30が反時計回りに回転し、爪片28が支持部材26の係合部26aから離れる方向へ移動する。このとき、ハンドル10がハンドルばねのばね力によってオフ方向(図5中の反時計回り)へ回転するのであるが、可動接点8と固定接点7とが溶着しているので、可動接点アーム22が開極方向へ移動することができず、そのため支持部材26もオン時と同じ位置に停止するから、ストップバー31の軸部がガイド溝10cの左端に当接することによって、ハンドル10がそれ以上オフ回転方向へ回転することができず、したがって操作摘み10aはオン位置とオフ位置との中間位置に直立した状態となるから、接点部6の溶着状態を容易に判別することができる。
尚、本実施形態の回路遮断器は、電磁釈放機構部11と熱動釈放機構部12の両方を備えているものであるが、いずれか一方のみを備えているものでもあってもよいし、各釈放機構部の構成は上記の構成に限定されるものではない。また負荷側端子部4Aや電源側端子部4Bやリンク機構9も上記の構成に限定されるものではなく、状況に応じて好適なものを用いれば良い。