以下、本発明の実施形態に係る回路遮断器について説明するにあたって、回路遮断器の基本構成について図面を用いて説明する。回路遮断器は、図2(a),(b)に示すように、器体1と、第1端子部2と、第2端子部3と、接点部4と、リンク機構5と、トリップ機構6と、消弧装置7とを備える。なお、図2(a),(b)では、後述するカバー11を外した状態を示している。また、図2(a),(b)は、接点部4が開極している状態を示す。
器体1は、図3(a)〜(d)に示すように、ボディ10及びカバー11を互いに突き合わせて結合することで構成される。ボディ10及びカバー11は、それぞれ、絶縁性を有する合成樹脂により、幅方向(図3(b)における左右方向)の一面が開口した箱状に形成されている。器体1の内部には、各端子部2,3と、接点部4と、リンク機構5と、トリップ機構6と、消弧装置7とが収納される。
第1端子部2は、器体1の図2(a)における左端に設けられ、負荷(図示せず)と接続するための電線(図示せず)が接続される。第2端子部3は、器体1の図2(a)における右端に設けられ、外部電源(図示せず)と接続するための電線(図示せず)が接続される。各端子部2,3は、図2(a),(b)に示すように、それぞれ端子金具20,30と、端子ねじ21,31とを備える。各端子金具20,30は、導電性を有する金属板を用いて左右方向を軸方向とする角筒状に形成された、所謂ピラー端子である。これら端子金具20,30に電線の一端を挿入し、端子ねじ21,31を締め付けることで、電線を各端子部2,3に接続することができる。
接点部4は、図2(a),(b)に示すように、固定接点40と、固定接点40と接離する可動接点41とを備える。固定接点40は、固定接点板42に固着されている。固定接点板42は、例えば銅などの低抵抗の材料から形成され、ボディ10及びカバー11を結合する際に用いられる組立ねじ12の1つを覆うように断面視で湾曲している(図2(a)参照)。可動接点41は、金属板に抜き加工及び曲げ加工を施して形成されたアーム43の一端に設けられている。アーム43は、その他端側に設けられた軸43Aを支点として、可動接点41が固定接点40と接触する位置と、固定接点40から離れる位置との間で回転自在となっている。アーム43の中間部には、第1編組線44の一端が固着されている。この第1編組線44の他端は、後述するバイメタル板610の中間部に固着されている。
リンク機構5は、開閉操作(オン/オフ操作)に応じて接点部4を開閉させるものである。なお、このようなリンク機構5の構成は周知ではあるが、以下、簡単に説明する。リンク機構5は、図2(a),(b)に示すように、ハンドル50と、複数のリンク部材51とを備える。ハンドル50は、ボディ2の前壁に設けた窓孔2Aから操作摘み50Aを外部に突出させた状態で、ボディ2に回転自在に支持される。各リンク部材51は、ハンドル50とアーム43とを連結し、ハンドル50の回転動作に伴ってアーム43を連動させる。ハンドル50は、接点部4を閉極させるオン位置と、接点部4を開極させるオフ位置との間で回転自在となっている。
トリップ機構6は、異常電流(短絡電流及び過負荷電流)を検知すると、リンク機構5を駆動して接点部4を強制的に開極させる(すなわち、トリップさせる)ものである。なお、このようなトリップ機構6の構成は周知ではあるが、以下、簡単に説明する。トリップ機構6は、図2(a),(b)に示すように、電磁式引き外し装置60と、熱動式引き外し装置61とで構成される。
電磁式引き外し装置60は、図2(a),(b)に示すように、コイル60Aと、固定鉄心(図示せず)及び可動鉄心(図示せず)と、復帰ばね(図示せず)と、ピン60Bと、ヨーク60Cとで構成される。コイル60Aは、絶縁性を有する合成樹脂により円筒状に形成されたコイルボビン60Dの外周面に、平角銅線を巻き回して構成される。コイル60Aの一端は、第1端子部2の端子金具20と接続されており、他端は固定接点板42に接続されている。固定鉄心は、磁性材料から成り、コイルボビン60Dの内部に収納される。可動鉄心は、磁性材料から成り、コイルボビン60D内において固定鉄心と接触する位置と、固定鉄心から離れる位置との間でスライド自在に配置される。復帰ばねは、例えばコイルばねから成り、コイルボビン60D内において可動鉄心と固定鉄心との間に収納される。復帰ばねは、可動鉄心が固定鉄心に接触する向きに移動すると撓み、可動鉄心を固定鉄心から離れる向きに移動させる弾性力を発生する。ピン60Bは、可動鉄心に結合しており、その先端がコイルボビン60Dの外側に突出する。そして、ピン60Bは、可動鉄心が固定鉄心に吸引されると、その先端がリンク部材51の一部と協働するように構成されている。ヨーク60Cは、磁性材料から成り、図2(a)に示すようにコイルボビン60Dの周囲を覆うように断面視で湾曲して形成されている。
熱動式引き外し装置61は、図2(a),(b)に示すように、バイメタル板610から構成される。バイメタル板610としては、自己発熱によって湾曲する形式の直熱型や、ヒータによる加熱で湾曲する傍熱型のものを用いることができる。バイメタル板610の一端は、バイメタル板610が湾曲するとリンク部材51の一部と協働するように構成されている。バイメタル板610の他端には、第2編組線45の一端が固着されている。この第2編組線45の他端は、第2端子部3の端子金具30に接続されている。
消弧装置7は、接点部4の開極時に発生するアークA1(図4参照)を速やかに消弧するためのものである。消弧装置7は、図2(a),(b)に示すように、アーク走行板70と、消弧グリッド71とで構成される。アーク走行板70は、帯板状の金属板を折り曲げることによって形成され、その図2(a)における右側の一端は、バイメタル板610の一端と結合されている。アーク走行板70は、器体1内の図2(a)における下側の壁に沿って、器体1の図2(a)における左側へと延設されている。消弧グリッド71は、複数枚(図示では12枚)の消弧板710と、2枚(図示では1枚)の支持板711とを備える。各消弧板710は、導電材料により形成され、器体1の高さ方向(図2(a)における上下方向)に沿って間隔をおいて平行配置される。各支持板711は、絶縁材料により形成され、各消弧板710の幅方向(図2(a)における紙面と垂直な方向)における両面をそれぞれ覆う。
以下、消弧装置7の動作について図4を用いて簡単に説明する。可動接点41が固定接点40から離れる際にアークA1が生じると、アークA1を介して固定接点板42及びアーク走行板70にアーク電流が流れ、この電流により磁場が発生する。この磁場により、アークA1にローレンツ力が働き、アークA1が伸長しながら図4における左側へと誘導される。消弧グリッド71は、この誘導されたアークA1を複数の消弧板710で分断する。これにより、高いアーク電圧が生じるため、短絡電流を抑制して消弧することができる。すなわち、固定接点板42及びアーク走行板70は、接点間に生じるアークを電磁場の作用により接点から遠ざける向きに誘導する「誘導部材」に相当する。
以下、リンク機構5の動作について簡単に説明する。ハンドル50をオン位置に回転させると、各リンク部材51がハンドル50と協働する。これにより、アーム43が軸43Aを支点として時計回りに回転し、可動接点41が固定接点40に接触する(すなわち、接点部4が閉極する)。これにより、端子金具20、コイル60A、固定接点板42、固定接点40、可動接点41、アーム43、第1編組線44、バイメタル板610、第2編組線45、端子金具30の経路で電路が形成され、通電する。このとき、図示しない接圧ばねの弾性力により、可動接点41は、固定接点40に向かう向きに押圧される。これにより、可動接点41の固定接点40に対する接触圧が大きくなっている。
その後、ハンドル50をオフ位置に回転させると、各リンク部材51がハンドル50と協働する。これにより、アーム43が軸43Aを支点として反時計回りに回転し、可動接点41が固定接点40から離れる(すなわち、接点部4が開極する)。これにより、各端子部2,3間に形成された電路が開放され、通電が解除される。
次に、トリップ機構6の動作について簡単に説明する。先ず、電磁式引き外し装置60の動作について説明する。コイル60Aに電流が流れていない状態(初期状態)では、復帰ばねの弾性力によって可動鉄心が固定鉄心から離間している。このため、可動鉄心に連結されたピン60Bは、リンク部材51の一部と協働しない位置まで後退している。
端子部2,3間に電流が流れて、コイル60Aが通電すると、固定鉄心、ヨーク60C、可動鉄心を通過する磁路の磁気抵抗を小さくするように可動鉄心と固定鉄心との間で吸引力が作用する。そして、コイル60Aに流れる電流が短絡電流等の過大な電流である場合には、復帰ばねの弾性力に抗って可動鉄心が固定鉄心側へ移動することになる。このとき、可動鉄心に連結されたピン60Bが図2(a)における右向きに突出し、その先端がリンク部材51の一部と協働することで、リンク機構5によるトリップ動作が行われる。トリップ動作が行われて接点部4が強制的に開極されると、コイル60Aに流れる電流が減少して可動鉄心に作用する吸引力が低下する。そして、復帰ばねの弾性力によって可動鉄心が初期位置に移動し、ピン60Bも初期位置まで後退する。
次に、熱動式引き外し装置61の動作について説明する。バイメタル板610に電流が流れていない状態(初期状態)では、バイメタル板610は湾曲せず、バイメタル板610はリンク部材51の一部と協働しない。一方、各端子部2,3間に過負荷電流のような過大な電流が流れると、この過大な電流によってバイメタル板610の温度が上昇し、バイメタル板610が湾曲する。これにより、バイメタル板610がリンク部材51の一部と協働し、リンク機構5によるトリップ動作が行われる。トリップ動作が行われて接点部4が強制的に開極されると、バイメタル板610に流れる電流が減少する。すると、バイメタル板610の温度が低下し、その湾曲度合いが小さくなり、やがてバイメタル板610がリンク部材51の一部と協働しない初期状態に戻る。
以下、接点間に生じるアークA1が消弧グリッド71へと誘導される原理について簡単に説明する。なお、以下の説明では、図5に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70を何れも長尺な平板とし、互いに平行に配置されているものと仮定する。また、アークA1は、図5に示すように円柱状であるものと仮定する。
接点間にアークA1が生じると、図5に示すように、固定接点板42とアーク走行板70とがアークA1により短絡する。そして、固定接点板42、アークA1、アーク走行板70にアーク電流I1が流れる。このアーク電流I1により、固定接点板42には、アーク電流I1の周方向に沿った磁場B1が生じる。同様に、アークA1には、アーク電流I1の周方向に沿った磁場B2が、アーク走行板70には、アーク電流I1の周方向に沿った磁場B3が生じる。
アークA1には、図6(a),(b)の矢印で示すように、アークA1の中心に向かうローレンツ力が働く。なお、図6(a),(b)では、矢印が太いほどローレンツ力が大きく、矢印が細いほどローレンツ力が小さい。アークA1に働くローレンツ力は、アークA1の電流路の長さと、アーク電流I1と、アーク電流I1と鎖交する磁束密度とで定まる。
そして、アークA1の図6(b)に示す右側の第1領域では、固定接点板42及びアーク走行板70の各々で発生する磁場B1,B3により、図6(b)に示す左側の第2領域と比較してアーク電流I1と鎖交する磁束密度が大きくなる。したがって、図6(a)に示すように、同図の左向きの第1ローレンツ力F1が同図の右向きの第2ローレンツ力F2よりも大きくなることから、アークA1には全体として同図の左向きの第3ローレンツ力F3が働く。この第3ローレンツ力F3により、アークA1は消弧グリッド71へと誘導される。
アークA1を消弧グリッド71へと素早く誘導するには、第3ローレンツ力F3を大きくすればよい。そして、第3ローレンツ力F3を大きくするためには、第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度を大きくすればよい。そこで、本実施形態の回路遮断器では、図1(b),(c)に示すように、固定接点板42の近傍に、固定接点板42と電気的に絶縁された磁性体8を配置している。また、アーク走行板70の近傍にも、同様にアーク走行板70と電気的に絶縁された磁性体8を配置している。
以下、固定接点板42及びアーク走行板70のモデル、並びに磁性体8のモデルを作成し、固定接点板42とアーク走行板70との間にアークA1が生じたものと仮定して、有限要素法を用いて電磁場解析を行った結果を示す。先ず、基本となるモデルについて説明する。固定接点板42及びアーク走行板70は、図1(a),図7(a)に示すように、何れも長尺な平板に設計する。各板42,70は、幅W1が4mm、厚みT1が1.5mm、長手方向の長さL1が45mmとなるように設計する。また、固定接点板42とアーク走行板70との間には、直径φ0が3mm、高さL0が16mmのアークA1が生じているものと仮定する。更に、各板42,70とアークA1には、4kAのアーク電流I1が流れているものと仮定する。
先ず、図1(a)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を非磁性材料である銅で設計した場合、各板42,70の周囲には、図7(b)に示す磁場B1,B3が発生する。なお、図7(b)では、固定接点板42の周囲に発生する磁場B1のみを図示しており、以下、図7(c)、及び図8(b),(d)においても同様である。また、同図において、矢印が太いほど磁場B1が強く、矢印が細いほど磁場B1が弱くなっており、以下、図7(c)、及び図8(b),(d)においても同様である。この場合の第3ローレンツ力F3は、7.88Nとなる。以下の説明では、各板42,70を銅で設計した図1(a)に示すモデルを「基本モデル」と称する。
ここで、参考として、図1(a)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を磁性材料である鉄(ここでは、SPCC(冷間圧延鋼板))で設計した場合の解析結果を示す。各板42,70の周囲には、図7(c)に示す磁場B1,B3が発生する。この場合、各板42,70を銅で設計した場合と比較して、各板42,70の周囲に発生する磁場B1,B3が強くなり、第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度も大きくなる。したがって、この場合の第3ローレンツ力F3は9.126Nとなり、基本モデルよりも15.8%大きくなる。
次に、磁性体8として第1磁性体80を配置したモデルについて説明する。第1磁性体80は、磁性材料である鉄(ここでは、SPCC(冷間圧延鋼板))から成り、図1(b)に示すように長尺な平板に設計する。第1磁性体80は、図1(b),図8(a)に示すように、幅W2が7mm、厚みT2が1mm、長手方向の長さL2が45mmとなるように設計する。第1磁性体80は、図8(a)に示すように、固定接点板42の同図における上面と一定の間隔G1(=0.5mm)を空けて配置する。同様に、第1磁性体80は、アーク走行板70の同図における下面と一定の間隔G1を空けて配置する。したがって、第1磁性体80は固定接点板42及びアーク走行板70の何れとも電気的に絶縁している。
図1(b)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を銅で設計した場合、各板42,70の周囲には、図8(b)に示す磁場B1,B3が発生する。このモデルでは、磁場B1,B3が第1磁性体80を通過することで、磁場B1,B3が強くなる。このため、結果として第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度も大きくなる。したがって、この場合の第3ローレンツ力F3は9.694Nとなり、基本モデルよりも23.0%大きくなる。
ここで、参考として、図1(b)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を磁性材料である鉄(ここでは、SPCC(冷間圧延鋼板))で設計した場合の解析結果を示す。この場合、基本モデルと比較して、各板42,70の周囲に発生する磁場B1,B3が強くなり、第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度も大きくなる。したがって、この場合の第3ローレンツ力F3は10.278Nとなり、基本モデルよりも30.4%大きくなる。
次に、磁性体8として第1磁性体80及び第2磁性体81、並びに第3磁性体82を配置したモデルについて説明する。第2磁性体81及び第3磁性体82は、何れも磁性材料である鉄(ここでは、SPCC(冷間圧延鋼板))から成り、図1(c)に示すように何れも長尺な平板に設計する。各磁性体81,82は、図1(c),図8(c)に示すように、何れも幅W3が3mm、厚みT3が1mm、長手方向の長さL3が45mmとなるように設計する。第2磁性体81は、図8(c)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70の同図における左面と一定の間隔G2(=0.5mm)を空けてそれぞれ配置する。第3磁性体82は、図8(c)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70の同図における右面と一定の間隔G2を空けてそれぞれ配置する。したがって、各磁性体81,82は固定接点板42及びアーク走行板70の何れとも電気的に絶縁している。
図1(c)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を銅で設計した場合、各板42,70の周囲には、図8(d)に示す磁場B1,B3が発生する。このモデルでは、第1磁性体80のみならず第2磁性体81及び第3磁性体82にも磁場B1,B3が通過するので、図1(b)に示すモデルと比較して磁場B1,B3が更に強くなる。このため、結果として第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度も図1(b)に示すモデルと比較して更に大きくなる。したがって、この場合の第3ローレンツ力F3は12.718Nとなり、基本モデルよりも61.4%大きくなる。
上述のように、本実施形態の回路遮断器では、誘導部材である固定接点板42及びアーク走行板70の周囲に生じる磁場B1,B3が通過するように磁性体8を配置している。このため、本実施形態の回路遮断器では、アークA1に働くローレンツ力(第3ローレンツ力F3)を大きくすることができ、接点間に生じたアークA1を素早く消弧グリッド71へと誘導することができる。換言すれば、本実施形態の回路遮断器は、接点間に生じたアークA1を接点から素早く遠ざけるように誘導することができる。
特に、図1(c)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70それぞれの周囲を覆うようにして磁性体8を配置すれば、アークA1に働くローレンツ力を更に大きくし、より素早くアークA1を消弧グリッド71へと誘導することができる。なお、図8(c)に示すように、固定接点板42の同図における下面や、アーク走行板70の同図における上面をアークA1が走行する。このため、各板42,70の表面のうちアークA1が走行する面を除いた周囲の少なくとも一部の面を覆うように磁性体8を配置するのが望ましい。
ところで、図9(a)〜(c)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70の短手方向(図8(a)における左右方向)に沿った両側に、それぞれ第4磁性体83及び第5磁性体84を配置してもよい。第4磁性体83及び第5磁性体84は、何れも磁性材料である鉄(ここでは、SPCC(冷間圧延鋼板))から成り、何れも長尺な平板に設計する。各磁性体83,84は、図9(a)に示すように、何れも幅W4が10mm、厚みT4が1mm、長手方向の長さL4が22mmとなるように設計する。第4磁性体83は、図9(a)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70の一方の側面(図8(a)における左面)と一定の間隔G3(=3mm)を空けて配置する。また、第5磁性体84は、図9(a)に示すように、固定接点板42及びアーク走行板70の他方の側面(図8(a)における右面)と一定の間隔G3(=3mm)を空けて配置する。したがって、各磁性体83,84は固定接点板42及びアーク走行板70の何れとも電気的に絶縁している。
各磁性体83,84には、アークA1の周囲に生じる磁場B2が通過するため、磁場B2を強くすることができ、第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度を大きくすることができる。したがって、各磁性体83,84を配置することにより、アークA1に働くローレンツ力を大きくし、接点間に生じたアークA1をより素早く消弧グリッド71へと誘導することができる。
例えば、図9(a)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を銅で設計した場合、第3ローレンツ力F3は9.378Nとなり、基本モデルよりも19.0%大きくなる。なお、同図のモデルにおいて、各板42,70を鉄で設計した場合、第3ローレンツ力F3は10.736Nとなり、基本モデルよりも36.2%大きくなる。また、図9(b)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を銅で設計した場合、第3ローレンツ力F3は11.892Nとなり、基本モデルよりも50.9%大きくなる。なお、同図のモデルにおいて、各板42,70を鉄で設計した場合、第3ローレンツ力F3は12.442Nとなり、基本モデルよりも57.9%大きくなる。また、図9(c)に示すモデルにおいて、固定接点板42及びアーク走行板70を鉄で設計した場合、第3ローレンツ力F3は14.464Nとなり、基本モデルよりも83.6%大きくなる。
ところで、本実施形態の回路遮断器では、図4に示すように、固定接点板42に覆われるように組立ねじ12が設けられている。この組立ねじ12は、固定接点板42の周囲に生じる磁場B1が通過する位置に設けられている。したがって、この組立ねじ12を、例えば鉄などの磁性材料で形成すれば、磁場B1が強くなり、第1領域においてアーク電流I1と鎖交する磁束密度を大きくすることができる。この構成では、アークA1に働くローレンツ力を更に大きくすることができ、接点間に生じたアークA1をより素早く消弧グリッド71へと誘導することができる。
なお、本実施形態の回路遮断器では、平板状の磁性体8を固定接点板42及びアーク走行板70の周囲を覆うように配置しているが、例えば断面が半円弧状の磁性体8で各板42,70の周囲を覆ってもよい。また、本実施形態の回路遮断器では、固定接点板42及びアーク走行板70の何れにも磁性体8を設けているが、少なくとも何れか一方に磁性体8を配置する構成であればよい。また、本実施形態の回路遮断器では、磁性体8の材料として鉄を用いているが、他の磁性材料から磁性体8を形成してもよい。
また、本実施形態の回路遮断器は、消弧グリッド71へとアークA1を誘導する構成となっているが、消弧グリッド71を備えていない構成であってもよい。例えば、消弧グリッド71の代わりにアークA1を逃がすための消弧空間が設けられている場合でも、本実施形態の回路遮断器では、この消弧空間へとアークA1を素早く誘導することができる。
また、本実施形態の回路遮断器は、交流用遮断器としても直流用遮断器としても用いることができる。本実施形態の回路遮断器を直流用遮断器として用いる場合は、第4磁性体83及び第5磁性体84を特定の向きに着磁した永久磁石で構成すればよい。