JP3826562B2 - 高光沢射出成形品の製造方法及びその成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢射出成形品または高光沢射出圧縮成形品の製造方法、及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
熱可塑性樹脂の射出成形または射出圧縮成形において、成形品の表面光沢を向上させ、表面外観を向上させるための手段として、金型温度や射出温度及び射出圧力を高くして、金型壁面への密着性を上げることで対策がされてきた。これらの対策の中で成形品の表面品質の向上に最も効果的な方法は金型温度を上げることであるが、そうすると冷却時間が伸び成形サイクルが長くなるだけでなく、離型後の成形品の変形が大きくなるため好ましくない。
【0003】
この欠点を補うため金型表面に薄い断熱層を配し、樹脂充填中の金型壁面からの冷却を一時的に遅らせスキン層を極力生じないように成形品の光沢向上を図る手法が提案されている(特開平2−153715号公報)。
【0004】
また、金型キャビティ側に配した温度制御可能な電磁誘導加熱構造により、樹脂充填時のみ加熱することで同様の効果を狙った金型も提案されている(特公平7−59368号公報)。
これらの手法は、全て通常の金型に手を加え改造することで効果を発現させるものであって、通常の射出成形用金型として制作された金型では効果は得られていない。
【0005】
一方、金型に印刷した樹脂製フィルムや光輝材を含む着色剤を適度に含有した樹脂層を含む多層フィルムをインサートして、成形品の表面を加飾する方法は以前から多くの提案がなされてきたが、これらのフィルムの貼合成形においては、成形品の角部で、印刷模様が流れたり、顔料の濃淡差が現れたりして、きれいな成形品を得ることは困難であった。
また、成形品表面の傷付防止や外観不良を目立たなくさせる手段として、成形品表面にシボ加工を施してある成形品も提案されているが、このようなシボ加工を施した成形品の表面光沢を向上させることは不可能であった。
【0006】
本発明の目的は、成形サイクルを損なうことなく、金型の表面構造にかかわらず、また金型の改造を伴わない高光沢射出成形品または高光沢射出圧縮成形品の製造方法、及びその成形品を提供することにある。
【0007】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、射出成形に供する熱可塑性樹脂とは接着不可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムを金型内にインサートし貼合成形し、離型後、得られた成形品の表面から前記フィルムを剥離することにより本発明の目的を達成することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、射出成形品または射出圧縮成形品の製造方法において、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はアクリル系樹脂から選択される熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムを一方の金型の表面にインサートして、次いでポリプロピレン系樹脂(A)を射出成形または射出圧縮成形することによって、前記フィルムにより成形品意匠面が被覆されてなり、かつ前記フィルムを介して金型の表面が成形品表面に転写されてなる成形品を成形した後、当該成形品の表面から前記フィルムを剥離することを特徴とする射出成形品または射出圧縮成形品の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、射出成形または射出圧縮成形に供するポリプロピレン系樹脂(A)とは溶融接着しない熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムを金型内にインサートして、次いでポリプロピレン系樹脂(A)を射出成形または射出圧縮成形することによって前記フィルムを成形品表面に被覆し、得られた成形品の表面から前記フィルムを剥離する方法である。
本発明の製造方法は、金型がシボ加工を施した金型を用いてもよい。
上記フィルムは、成形品の両表面にインサートする必要はなく、意匠面側にさえインサートしていればよい。
【0010】
射出成形法または射出圧縮成形法(以下、両成形法を「射出成形法」と称する)は、特に限定されるものではなく、公知の射出成形法が用いられる。
【0011】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、これらを主成分とする樹脂組成物である
上記ポリプロピレン系樹脂(A)には、タルク、マイカ、硫酸バリウムに代表される充填剤や、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムやスチレン系エラストマーを含有させてもよい。
また、必要に応じて造核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤などの通常使用される各種の添加剤を適量含有させてもよい。
【0012】
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂(A)に光輝材を0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%含有させることによりメタリック調の外観を得ることができるのでより好ましい。前記光輝材としては、例えばアルミ粉や酸化チタンで表面をコートされたマイカ粉等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)とは溶融接着しないフィルムであり、該熱可塑性樹脂(B)は、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はアクリル系樹脂から選択される。また、熱可塑性樹脂(B)には、必要に応じて造核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤などの通常使用される各種の添加剤適量含有させてもよい。
【0014】
また、上記フィルムは、単層でも多層でもよく、多層フィルムの場合は、成形品に接する面が熱可塑性樹脂(B)からなる層であればよい。
【0015】
さらに、上記フィルムの厚みは、好ましくは50〜200μm、より好ましくは80〜120μmである。これは厚みが50μm未満であると、光沢改良の効果が下がる場合がある。厚みが200μmを越えると、本発明の効果は特に失われないが、金型内にフィルムをインサートする際に、鏡面金型の場合は型表面を傷付ける可能性があり、シボ面金型の場合シボ転写性が劣る場合がある。
フィルムの厚みは、マイクロメーターで測定される。
【0016】
本発明の成形品は、上記フィルムを貼合して成形することにより、意匠面が鏡面加工されている金型を用いた場合、貼合面の光沢度が、非貼合面に比べて向上する。また、意匠面がシボ加工されている金型を用いた場合ではその効果は更に大きくなる。
すなわち、本発明の成形品は、成形品の表面にシボを有していてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、成形サイクルを損なうことなく、しかも従来の金型を改造することなく、金型の表面構造に関わらず、射出成形における表面光沢が向上する射出成形品または射出圧縮成形品の製造方法、及びその成形品が提供できる。
また、本発明は、シボ加工を施した金型を用いて成形した成形品であっても格段に優れた表面光沢を有する成形品が得られる。
また、本発明の高光沢射出成形品または射出圧縮成形品は、自動車、家庭電気製品及び容器等に適するものである。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例及び比較例で使用した射出成形機、金型、成形品形状及び評価法は、下記のとおりである。
(1)射出成形機および金型
日精樹脂製FS160S25ASEN
成形温度:221℃
金型(a) 150mm×300mm×3mmt平板金型、サイド(ファン)ゲート(18mm×1mm)
金型(b) 150mm×300mm×3mmtシボ付金型、4点トンネルゲート(ゲート径1mm)、シボ形状:棚沢八光TH−621
金型温度:固定側38℃、移動側(フィルムインサート側)35℃
(2)光沢度
JIS−K−7105に規定された方法に基づき、成形品のフィルム剥離面の45°鏡面光沢度を測定した。
(3)深み感
フィルムを剥離した射出成形品表面を下記のような目視による官能評価を行った。
5:通常の射出成形体表面にメタリック塗装した上にクリア塗装を施した塗装品の深み感と同じ程度である。
4:上記5よりやや劣るものの十分な深み感が得られている。
3:深み感が認められる。
2:上記3より深み感が劣るものの全く深み感が無いものではない。
1:全く深み感が無い。
【0020】
実施例1
射出成形用熱可塑性樹脂組成物として、下記に示すPPT−1を用いた。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(MFR:58g/10分、エチレン単位とプロピレン単位のランダム共重合体部分の含有量:12重量%)61重量部、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム(ブテン−1単位の含有量:18重量%)14重量部、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(プロピレン単位の含有量:27重量%)14重量部及びタルク(D50:2.1μm)11重量部からなる樹脂組成物である複合系ポリプロピレンを用いた。前記複合系ポリプロピレン及びその各成分は、特開平5−86256号公報の実施例1及び参考例1〜4に記載された方法に基づき製造した。この複合系ポリプロピレン100重量部に、カーボンブラック0.2重量部添加して着色した基材に、アルミ粉(東洋アルミニウム(株)製、平均粒径35μm、アスぺクト比7)を0.7重量部添加して得られた樹脂組成物をPPT−1とした。
また、インサートするフィルムとしては、公知の方法で加工された厚さ100μmのPET製フィルム(F−1)を用いた。該フィルム(F−1)を金型(a)表面にインサートした後、PPT−1を射出成形した後、成形品表面からフィルム(F−1)を剥離し成形品を得た。結果を表1に示す。
【0021】
実施例2
金型として金型(b)を用いる以外は、実施例1と同様にして成形品を得た。結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
実施例1で実施したようなフィルムのインサート成形を行わず、射出成形用熱可塑性樹脂PPT−1を実施例1と同様にして成形品を得た。結果を表1に示す。
【0023】
比較例2
実施例2で実施したようなフィルムのインサート成形を行わず、射出成形用熱可塑性樹脂PPT−1を実施例2と同様にして成形品を得た。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003826562

Claims (4)

  1. 射出成形品または射出圧縮成形品の製造方法において、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はアクリル系樹脂から選択される熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムを一方の金型の表面にインサートして、次いでポリプロピレン系樹脂(A)を射出成形または射出圧縮成形することによって、前記フィルムにより成形品意匠面が被覆されてなり、かつ前記フィルムを介して金型の表面が成形品表面に転写されてなる成形品を成形した後、当該成形品の表面から前記フィルムを剥離することを特徴とする射出成形品または射出圧縮成形品の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂(B)からなるフィルムの厚みが50〜200μmである請求項1記載の成形品の製造方法。
  3. ポリプロピレン系樹脂(A)が光輝材を0.01〜5重量%含有する請求項1記載の成形品の製造方法。
  4. 金型がシボ加工を施した金型である請求項1記載の成形品の製造方法。
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