JP3826486B2 - 鍛造方法並びに鍛造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属素材の冷間あるいは温間、熱間における鍛造方法並びにその装置に関するものであって、特に加工時にワークにおける材料の流れ不良を改善すると同時に金型破損を防止する手法に係るものである。
【0002】
【発明の背景】
アルミニウム等の金属素材を冷間あるいは温間、熱間で塑性変形させて、所定形状の製品を作る鍛造工程においては、技術的課題として金型破損の原因になるクラックの発生と材料の流れ不良により生じる材料滞留、すなわちデッドメタルの発生という問題があった。
【0003】
まずクラックの発生の問題について説明する。この種の鍛造工程では、ワークを加圧することにより塑性変形を促すため、金型には過大な反力が加わる。このため例えば図5(a)に示すように成形前のワークWを収容する保持型4′とワークを所定の形状に規制する案内型5′とを一体で形成した場合、保持型4′を構成する部位にワークWを収容し、押圧型3′でワークWを上方から加圧していくとワークWにおける材料は案内型5′を構成する部位を押圧方向たる下方に押し、保持型4′を構成する部位を外側に押すことになる。従って案内型5′を構成する部位と保持型4′を構成する部位との境界付近のコーナ部にはほぼ直角に異なる二方向の力が作用することとなり、金型2′がこのコーナ部においてクラックCを生じ、破損するという問題があった。
【0004】
このため従来はこれらをあらかじめ保持型4′と案内型5′とに分けて構成し、外部から焼ばめなどで補強し、充分な型強度をとれるようにしたものがあった。しかしながら保持型4′と案内型5′とを分けて構成している以上、加圧時には双方の間に微小な隙間が生じてしまうことは避けられず、加圧された材料がこの隙間に流れ込んでしまい、製品となった状態においてバリを生じさせてしまうという問題があった。またこのバリを作る方向に材料が流れることに起因してあらかじめワークWの表面に施した潤滑被膜が破壊され、本来の成形方向たる案内型5′に材料が流れにくくなる問題、あるいは保持型4′と案内型5′の隙間に流れ込んだ材料は成形を繰り返すことにより楔を打ち込むようにこの隙間を押し広げていき、短期間のうちに金型2′は使用不能となる問題等も併せて生じていた。
【0005】
次にデッドメタルの発生の問題について説明する。例えば図5(b)に示すように押圧方向に対し保持型4′と案内型5′との接合位置に隅角部Eを有する場合等には、加圧された材料が保持型4′内周面に沿って押圧方向たる下方に押された際、案内型5′の上方部に達したところで材料が停滞し、他の材料を案内するかのように取り残されてしまうことがある。この材料の滞留がデッドメタルDであり、もちろんこれが発生すると成形不良の製品になってしまうという問題があった。
【0006】
このデッドメタルDの発生を回避するため、従来は例えば図5(c)に示すようにデッドメタルDの発生する隅角部Eの金型2′に丸みを付ける加工がなされたものがあった。しかしながらこの場合もクラックCによる金型破損を考慮すると、保持型4′と案内型5′とを分けて構成することは避けられず、前記したバリ発生等の問題を生じ、これらの改善が求められていた。
【0007】
【開発を試みた技術的課題】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであり、クラックの発生防止を第一に考慮し、保持型と案内型とを別体とすることを構成上の前提条件としながらも、従来不可避であったバリの発生を防止し、且つ案内型と保持型との接合部付近で発生するデッドメタルを解消するという二つの技術的課題を同時に解決できる新規な手法の開発を試みたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1記載の鍛造方法は、金属素材から成るワークを押圧する押圧型と、ワークを収容する保持型と、ワークを所定の形状に塑性変形させるように規制する案内型とを具えた金型を用い、ワークを押圧型で加圧して一定の形状に塑性変形加工する方法において、前記保持型と案内型との接合位置にシールメタルを組み込み、このシールメタルにおけるワークとの接触部分には、保持型と案内型との接合部付近に位置する材料を積極的に案内型の中央に向けて流す材料案内面を形成することにより、塑性変形時ワークにおける材料の流れを円滑に案内型に導くようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、保持型の内周面に沿って保持型と案内型の接合部付近まで下方に押し込まれてくる材料を滑らかに案内型の中央に向けて流すことができ、デッドメタルを生じさせない。また金型にもこれを破損するような無理な力が加わらない。
【0009】
また請求項2記載の鍛造方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記材料案内面は、保持型に形成されるシールメタル受入部よりも高く形成されることにより材料案内面からその外側に形成される周壁当接面を保持型の内周面に当接させることを特徴として成るものである。
この発明によれば、成形時シールメタルは加圧された材料から外側方向への力を受けるが、シールメタルは保持型に食い込むことなく材料案内面を保持型の内周面上に突出させることができる。またこの力によりシールメタルは保持型及び案内型に押し付けられ、シールメタルと両者とは相互に密着した状態となり、バリを生じない。
【0010】
更にまた請求項3記載の鍛造方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記保持型はその内周面にシールメタルの周壁当接面とほぼ同じ高さの当接面受入部が形成されることにより、周壁当接面を当接面受入部に受け入れるようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、シールメタルの材料案内面と周壁当接面との接合部に形成されるエッジ部の破損を防止でき、またシールメタルと保持型との隙間への材料の入り込みをより効果的に防ぐことができる。
【0011】
更にまた請求項4記載の鍛造装置は、金属素材から成るワークを押圧する押圧型と、ワークを収容する保持型と、ワークを所定の形状に変形させるように規制する案内型とを具えた金型を用い、ワークを押圧型により加圧して一定の形状に塑性変形加工する装置において、前記保持型と案内型との接合位置にシールメタルを組み込み、このシールメタルにおけるワークとの接触部分には、保持型と案内型との接合部付近に位置する材料を積極的に案内型の中央に向けて流す材料案内面が形成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、シールメタルに形成される材料案内面が保持型と案内型との接合部付近に位置する材料を積極的に案内型中央部に向けて流すため、デッドメタルを生じることがない。また金型も無理な力が加わらず、これを破損させることもない。
【0012】
更にまた請求項5記載の鍛造装置は、前記請求項4記載の要件に加え、前記材料案内面は、保持型に形成されるシールメタル受入部よりも高く形成されることを特徴として成るものである。
この発明によれば、成形時外側方向への力が加わるが、シールメタルは保持型に食い込んでしまうことがない。また加圧された材料の外側方向への力によりシールメタルは保持型及び案内型に押し付けられることとなり、シールメタルと両者とは相互に密着した状態となり、バリを生じない。
【0013】
更にまた請求項6記載の鍛造装置は、前記請求項4または5記載の要件に加え、前記保持型は、その内周面にシールメタルの周壁当接面とほぼ同じ高さの当接面受入部が形成されることを特徴として成るものである。
この発明によれば、シールメタルの材料案内面と周壁当接面との接合部に形成されるエッジ部の破損を防止でき、またシールメタルと保持型との隙間への材料の入り込みをより効果的に防ぐことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づき説明する。説明にあたってはまず鍛造装置1について説明し、次いでこの装置の使用状態を説明しながら、併せて鍛造方法について説明する。なお本発明において、ワークWの金属素材はアルミニウムに限らず、適宜の金属素材が適用されるものであり、鍛造装置1は実質的にこのワークWを成形する金型2により構成される。この金型2は図1に示すようにワークWを加圧する押圧型3と、ワークWを収容する保持型4と、ワークWを所定の形状に塑性変形させるように規制する案内型5と、保持型4と案内型5の接合位置に組み込まれるシールメタル6とを具えて成るものである。以下前記各構成部について概要を説明する。
【0015】
まず押圧型3について説明する。押圧型3は上方に適宜シリンダ等を有し、上下に昇降自在に構成されている。そしてワークWを成形する際には上方からワークWを押し、徐々に加圧していきながら保持型4内を更に下方に進み、ワークWにおける材料を強制的に下方の案内型5に押し込むのである。
【0016】
次に保持型4について説明する。保持型4は成形される以前のワークWを収容するとともに、成形中加圧された材料の外側への広がり作用を抑える受入部41が形成され、更に案内型5との接合位置にはシールメタル6を嵌める溝状のシールメタル受入部42が形成される。また図2に拡大して示すようにシールメタル6の材料案内面61aと周壁当接面61bとの接合部に形成されるエッジ部の破損を防止するため、保持型4に周壁当接面61bとほぼ同じ高さの当接面受入部43を形成しても構わない。
【0017】
次に案内型5について説明する。案内型5はその中央付近に加圧された材料を一定の形状に規制し、変形させるための成形案内部51が形成される。この成形案内部51は、例えば製品として円柱状のものが要求される場合には、円柱状の孔を有するように形成される等、適宜製品に応じた形状に形成され、また必要に応じ複数個の孔を形成する場合もある。
【0018】
次にシールメタル6について説明する。シールメタル6は一例として環状に形成されるものであり、保持型4の受入部41を押圧方向から見た投影形状とほぼ一致した全体形状を成すものである。そして図1に示すように断面として見た際、このものは内側に概ね三角形状を成す材料案内部61と、外側に概ね長方形状を成す嵌合突縁62とを具えて成るものである。
【0019】
材料案内部61は更に材料を円滑に案内型5の成形案内部51に流す材料案内面61aと、材料案内面61aの外側に形成され保持型4の内周面に当接する周壁当接面61bを具えて成るものである。
【0020】
材料案内面61aは、シールメタル6の内側部分に形成されるものであり、加圧された材料に接触し、保持型4の内周面に沿って押圧方向たる下方に押し込まれてくる材料を積極的に案内型5に導くようにするためのものである。そして図1に示すように材料案内面61aの高さは保持型4のシールメタル受入部42よりも高く形成され、下すぼまり状に傾いた斜面で形成される。しかしながらより材料を滑らかに流すため、図3に示すように適宜の丸みを付けた曲面で形成されても構わない。この材料案内面61aにより保持型4と案内型5との接合部付近に位置する材料は案内型5の成形案内部51に向けて円滑に流れ込むようになる。
【0021】
周壁当接面61bは材料案内面61aの上端から外周側にほぼ垂直に形成されるものである。従って材料案内面61aと同様に周壁当接面61bも保持型4のシールメタル受入部42よりも高い位置から形成されることになり、周壁当接面61bが保持型4の内周面に当接する際には幾分重なり合う状態となる。そして成形中シールメタル6は加圧された材料により外側方向の力を受けるが、この周壁当接面61bが保持型4の内周面に当接するためシールメタル6は保持型4に食い込むことなく、保持型4の内周面上に材料案内面61aを突出させ続けるのである。
【0022】
嵌合突縁62は材料案内部61から外周部にほぼ水平に形成されるものであり、保持型4に形成されるシールメタル受入部42に嵌め込まれることによりシールメタル6の組み付けに寄与するものである。なおシールメタル6は成形時加圧された材料により外側方向への力を受けるが、加工する材料、材質により受ける力が大きい場合等にはシールメタル6とシールメタル受入部42の隙間を極力小さくし、シールメタル受入部42の壁面においてもこの力を受け止めるように構成することも可能である。更にこの力をより吸収するため、例えば図3に示すようにシールメタル6の一部を切断し、外側方向への力を受けた際、積極的に広がるように形成することも可能である。また図3に示すシールメタル6の全体形状は円形状であるが、製品の形状に応じて矩形状、長円形状等、適宜の形状に形成されるものである。また成形する製品形状により材料案内面61aを充分大きくすることが許される場合には、嵌合突縁62を特に必要としないこともある。
【0023】
次に以上のように構成された鍛造装置1の使用状態を説明しながら併せて鍛造方法について説明する。まず金型2の押圧型3を上方に退去させ、金属材料から成るワークWを保持型4の受入部41に収容する。なおこのとき図4(a)に示すようにワークWはシールメタル6の材料案内面61aに当接した状態となっている。
【0024】
そして押圧型3を保持型4の受入部41に嵌挿させながらワークWに押し当てて徐々に加圧していく。するとワークWは徐々に圧縮され、成形前の形状を保つことができず、加圧された材料の移動が始まることとなる。その際、加圧された材料は周囲のものを外側に押し広げるように作用する。そしてまず載置される際、ワークWに当接していたシールメタル6の材料案内面61aに作用することになる。ここで材料案内面61aが斜面で形成されており、またシールメタル6は下方から案内型5に支持されている等の理由によりシールメタル6はほぼ水平方向の外側にのみ押し広げ作用を受けることになる。このためシールメタル6は図4(b)に示すように周壁当接面61bを保持型4の内周面に当接させた状態となる。
【0025】
なお成形中シールメタル6は、このように材料により外側への力を受け続けるが、この周壁当接面61bを保持型4の内周面に当接させることにより保持型4への食い込みを防ぎ、材料案内面61aを保持型4の内周面上に突出させ続けることができる。また材料による外側方向への力を受け続けることにより、シールメタル6は保持型4及び案内型5に押し付けられることになり、シールメタル6と両者とは相互に密着した状態となり、バリ発生の原因となる隙間を形成しないのである。更に保持型4の内周面に当接面受入部43が形成されている場合には成形中、周壁当接面61bをこの当接面受入部43に受け入れることになり、シールメタル6の材料案内面61aと周壁当接面61bの接合部に形成されるエッジ部の破損を防ぐことになる。また当接面受入部43はシールメタル6の周壁当接面61bとほぼ同じ高さに形成されるため、材料の隙間への入り込みをより効果的に防止できる。もちろん当接面受入部43の深さ(奥行寸法)は極めて微小であり、成形後のワークWの抜き出しにあたっての支障はない。
【0026】
その後、加圧された材料は保持型4の内周面にも接触した状態となり、徐々に案内型5の成形案内部51に押し込まれることになる。その際、成形案内部51の上方に位置する材料は比較的簡単に成形案内部51へ押し込まれる。しかし保持型4の内周面付近に位置する材料はまず内周面に沿って押圧方向たる下方に押され、保持型4と案内型5との接合部付近に達することとなる。そしてここで材料は図4(c)に示すように材料案内面61aにより流れ方向をほぼ90°曲げられるようになり、案内型5の中央に向けて押し込まれていく。このため保持型4と案内型5との接合部付近で従来生じやすかったデッドメタルDを生じさせず、全体的に材料が円滑に案内型5の成形案内部51に導かれることになる。また材料の流れが円滑であるため金型2に対してもこれを破損させるような無理な力がかからないのである。
【0027】
【発明の効果】
請求項1また4記載の発明によれば、保持型4の内周面に沿って保持型4と案内型5との接合部付近まで押し込まれた材料をシールメタル6に形成される材料案内面61aが積極的に案内型5の中央に向けて流すため、デッドメタルDを生じさせることがない。また金型2にも必要以上の無理な力が加わることもない。
【0028】
また請求項2または5記載の発明によれば、成形時外側方向への力が加わるが、シールメタル6は保持型4に食い込んでしまうことがなく、保持型4の内周面上に材料案内面61aを突出させ続けることができる。また加圧された材料の外側方向への力によりシールメタル6は保持型4及び案内型5に押し付けられることになり、シールメタル6と両者とは相互に密着し、隙間を塞ぐようになり、バリも生じることがなく、案内型5への材料の流れを妨げることもない。
【0029】
更にまた請求項3または6記載の発明によれば、シールメタル6の材料案内面61aと周壁当接面61bとの接合部に形成されるエッジ部の破損を防止でき、またシールメタル6と保持型4との隙間への材料の入り込みをより効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鍛造装置を骨格的に示す断面図である。
【図2】シールメタル周辺を拡大して示す断面図である。
【図3】シールメタルを示す斜視図である。
【図4】本発明の鍛造方法を段階的に示す断面図である。
【図5】従来の手法の問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鍛造装置
2 金型
3 押圧型
4 保持型
5 案内型
6 シールメタル
41 受入部
42 シールメタル受入部
43 当接面受入部
51 成形案内部
61 材料案内部
61a 材料案内面
61b 周壁当接面
62 嵌合突縁
C クラック
D デッドメタル
E 隅角部
W ワーク

Claims (6)

  1. 金属素材から成るワークを押圧する押圧型と、ワークを収容する保持型と、ワークを所定の形状に塑性変形させるように規制する案内型とを具えた金型を用い、ワークを押圧型で加圧して一定の形状に塑性変形加工する方法において、前記保持型と案内型との接合位置にシールメタルを組み込み、このシールメタルにおけるワークとの接触部分には、保持型と案内型との接合部付近に位置する材料を積極的に案内型の中央に向けて流す材料案内面を形成することにより、塑性変形時ワークにおける材料の流れを円滑に案内型に導くようにしたことを特徴とする鍛造方法。
  2. 前記材料案内面は、保持型に形成されるシールメタル受入部よりも高く形成されることにより材料案内面からその外側に形成される周壁当接面を保持型の内周面に当接させることを特徴とする請求項1記載の鍛造方法。
  3. 前記保持型はその内周面にシールメタルの周壁当接面とほぼ同じ高さの当接面受入部が形成されることにより、周壁当接面を当接面受入部に受け入れるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の鍛造方法。
  4. 金属素材から成るワークを押圧する押圧型と、ワークを収容する保持型と、ワークを所定の形状に変形させるように規制する案内型とを具えた金型を用い、ワークを押圧型により加圧して一定の形状に塑性変形加工する装置において、前記保持型と案内型との接合位置にシールメタルを組み込み、このシールメタルにおけるワークとの接触部分には、保持型と案内型との接合部付近に位置する材料を積極的に案内型の中央に向けて流す材料案内面が形成されていることを特徴とする鍛造装置。
  5. 前記材料案内面は、保持型に形成されるシールメタル受入部よりも高く形成されることを特徴とする請求項4記載の鍛造装置。
  6. 前記保持型は、その内周面にシールメタルの周壁当接面とほぼ同じ高さの当接面受入部が形成されることを特徴とする請求項4または5記載の鍛造装置。
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