JP4445810B2 - 冷間圧接方法、冷間圧接装置及び金属接合体 - Google Patents
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Description
尚、金属同士を接合する手段については、特許文献1に開示されている。
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記端子金具と前記バスバーが前記凹部の周囲において前記ダイスの押圧方向とは反対側に反り返るように変形することを規制する規制部を備えた治具を用いるところに特徴を有する。
請求項16の発明は、請求項7ないし請求項15のいずれかに記載のものにおいて、前記治具が、前記端子金具と前記バスバーが前記凹部の周囲において前記ダイスの押圧方向とは反対側に反り返るように変形することを規制する規制部を備えているところに特徴を有する。
金属板材を治具にセットしてダイスで押圧したときに、金属板材は、ダイス押圧方向に視た投影形状を拡大させるように変形することが規制されるので、金属接合体の形状や大きさにバラツキが生じることがない。
治具に逃がし手段を設け、ダイスによって形成される凹部の容積増加に伴い、金属板材の板厚を増加させるようにしたので、金属板材の内部圧力が過剰に増大することが回避される。
金属板材をダイスで押圧して凹ませるように変形させると、金属板材のうちダイスで押圧される領域は中心から外周側へ変位しつつ伸展変形する。ここで、ダイスが硬度の低い金属板材を直接押圧した場合には、ダイスの侵入に伴なう伸展量の多くの部分を変形し易い金属板材が受け持つこととなり、金属板材同士の接触界面において過大な滑りが生じ、その結果、両金属板材の接合強度が低下することが懸念される。
これに対し、本発明では、硬度が高い方の金属板材がダイスで直接押圧されるようにしたので、硬度の高い金属板材が凹まされるように変形して中心から外周側へ伸展するように変形すると、これに追従して、硬度の小さい金属板材も中心から外周側へ伸展するように変形する。したがって、硬度の高い金属板材の伸展量と硬度の低い金属板材の伸展量がほぼ同じ量となり、両金属板材の接合面において過大な滑りが発生せず、両金属板材の接合強度は高い。
金属板材の一部が変形しつつ逃がし空間内に侵入する際に、変形部分の一部が金属板材の板面に沿った方向(即ち、逃がし空間への侵入方向と交差する方向)へ変位することが考えられるが、本発明では、逃がし空間の内面とキャビティの内面とが滑らかに連なっているので、逃がし空間内に侵入する変形部分が板面に沿って円滑に変位することができる。これにより、金属板材に割れが発生すること、及び金属板材同士の接合面に剥離が発生することが防止される。
ダイスは金属板材の表面に対して潜り込むのであるが、ダイスの外周面は、金属板材に対する押圧方向に向かって縮径するテーパ状をなしているので、ダイスの金属板材への潜り込みが円滑に行われる。
金属板材のうちダイスの押圧面で押圧される領域は、押圧面の中心から外周側へ流れるとともにダイスの外周面に沿って流れるように変形するのであるが、本発明では、ダイスの押圧面と外周面は弧状面を介して連なっているので、金属板材の流れるような変形が円滑に行われる。
金属板材のうちダイスの押圧面で押圧される領域は、ダイスの表面に沿って流れるように変形するのであるが、本発明では、ダイスの表面が鏡面加工されているので、ダイスと金属板材との間の摩擦抵抗が低減され、金属板材の流れるような変形が円滑に行われる。
金属板材のうちダイスの押圧面で押圧される領域は、治具に沿って流れるように変形するのであるが、本発明では、治具における金属板材との接触面が鏡面加工されているので、治具と金属板材との間の摩擦抵抗が低減され、金属板材の流れるような変形が円滑に行われる。
<請求項6及び請求項16の発明>
端子金具とバスバーを治具にセットしてダイスで押圧したときに、端子金具とバスバーは、凹部の周囲においてダイスの押圧方向とは反対側に反り返るように変形することがないので、形状が安定する。
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態の導電路A(本発明の構成要件である金属接合体)は、冷間圧接によりバスバー20(本発明の構成要件である金属板材)と端子金具10(本発明の構成要件である金属板材)とを接合して製造される。端子金具10は、所定形状に打ち抜いた銅合金製の板材を曲げ加工したものであり、前端側に箱部11を有し、後端側は略方形の平板状をなす接合部12となっている。一方のバスバー20は、所定形状に打ち抜いた銅製の板材を曲げ加工したものであり、前端側が略方形の平板状をなす接合部21となっており、この接合部21の後端から平板状の立上り部22が延出している。バスバー20の接合部21の幅W(13mm)は、端子金具10の接合部12の幅と同じ寸法であり、端子金具10の接合部12の板厚寸法Ta(1.8mm)は、バスバー20の接合部21の板厚寸法Tb(2.3mm)よりも小さい。尚、バスバー20は、立上り部22の上端から更に上方若しくは水平方向へ延出する部分を有するが、図面上は便宜的に延出部分を省略する。
上部治具30は、工具合金鋼(SKD11)製であり、全体として厚い板状をなし、下面には端子金具10を収容するためのキャビティ31が形成されている。キャビティ31は端子金具10の箱部11を前後左右方向(接合部12の板面と平行な方向)へのガタ付き(変位)なく位置決めして収容する箱部用キャビティ32と、接合部12を前後左右方向(接合部12の板面と平行な方向)へのガタ付き(変位)なく位置決めして収容する接合部用キャビティ33とからなっている。
さらに、上部治具30は、その周縁部(四隅)において軸線を上下方向に向けたボルト(図示せず)により下部治具4に固定されているのであるが、後述するように両治具30,40の内部の圧力が上昇したときには、ボルト締め箇所から遠いガイド孔35を略中心として上方へ湾曲するように弾性変形し得るようになっている。
また、上部治具30の内面には、少なくとも接合部用キャビティ33の天井面に対して鏡面加工がなされている。この鏡面加工は、端子金具10の接合部12の上面との摩擦抵抗を低減するための手段である。
さらに、上部治具30における端子金具10及びバスバー20の上面との当接面は、端子金具10とバスバー20が凹部Bの周囲においてダイス50の押圧方向とは反対側(上方)に反り返るように変形することを規制する規制部37として機能する。
また、下部治具40の内面には、少なくともキャビティ41の下面に対して鏡面加工がなされている。この鏡面加工は、バスバー20の接合部21の下面との摩擦抵抗を低減するための手段である。
さらに、下部治具40における端子金具10及びバスバー20の下面との当接面は、端子金具10とバスバー20が凹部Bの周囲においてダイス50の押圧方向とは反対側(上方)に反り返るように変形することを規制する規制部47として機能する。
端子金具10とバスバー20を接合して導電路Aを製造する際には、スクレーパ(キサゲ)、ワイヤブラシ、バフ等を用いることにより、接合部12,21における接合領域(ダイス50との対応領域)を研磨する。この研磨処理を行うことで、接合部12,21の表面の酸化被膜が除去され、接合強度が高まるとともに、密着度が高まって電気的抵抗が低減される。
表面研磨処理の後、下部治具40のキャビティ41にバスバー20の接合部21をセットするとともに、その接合部21の上面に端子金具10の接合部12を重ね、その上から上部治具30を被せて、上下両治具30,40を合体させ、上部治具30の下面と下部治具40の上面とを面接触状態で当接させる。この状態では、バスバー20の接合部21の上面が下部治具40の上面に対して面一状(同じ高さ)に連なり、接合部21の後端側部分が下部治具40の上面と上部治具30の下面との間で上下に挟み付けられることにより、バスバー20が上下両治具30,40に対して上下のガタ付きなく保持される。
これに対し、本実施形態では、硬度が高い端子金具10がダイス50で直接押圧されるようにしたので、硬度の高い端子金具10が凹まされるように変形して中心から外周側へ伸展するように変形すると、これに追従して、硬度の小さいバスバー20も中心から外周側へ伸展するように変形する。したがって、硬度の高い端子金具10の伸展量と硬度の低いバスバー20の伸展量がほぼ同じ量となり、端子金具10とバスバー20の接合面12,21において過大な滑りが発生せず、端子金具10とバスバー20の接合強度は高い。
しかし、本実施形態では、ダイス50における凹部Bとの対応領域の外径とガイド孔35との対応領域の外径とが滑らかに連なるテーパ面となっていて、ダイス50の外周には、端子金具10の接合部12の凹部Bの周縁に沿った盛上り部の動きを拘束する拡径面は存在しないので、端子金具10のうち凹部Bの内周を構成する筒状部分12bが座屈するように変形する虞はない。
また、上部治具30と下部治具40に規制部37,47を設け、端子金具10とバスバー20を治具30,40にセットしてダイス50で押圧したときに、端子金具10とバスバー20が凹部Bの周囲においてダイス50の押圧方向とは反対側に反り返るように変形することを規制したので、接合済みの導電路Aの形状や寸法が安定する。
以下、本発明を具体化した実施形態2を図12乃至図16を参照して説明する。本実施形態2は、上記実施形態1において下部治具40の構成を異なる形態としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
端子金具10とバスバー20を接合して導電路Aを製造する際には、下部治具40のキャビティ41にバスバー20の接合部21をセットするとともに、その接合部21の上面に端子金具10の接合部12を重ね、その上から上部治具30を被せて、上下両治具30,40を合体させ、上部治具30の下面と下部治具40の上面とを面接触状態で当接させる。この状態では、バスバー20の接合部21の上面が下部治具40の上面に対して面一状(同じ高さ)に連なり、接合部21の後端側部分が下部治具40の上面と上部治具30の下面との間で上下に挟み付けられることにより、バスバー20が上下両治具30,40に対して上下のガタ付きなく保持される。このとき、図3に示すように、バスバー20の接合部21における前端側領域の下方に逃がし空間45が構成され、接合部21の下面は逃がし空間45に臨む状態(逃がし空間45に面する状態)となる。つまり、接合部21の下面と逃がし空間45の傾斜面44との間には、接合部21が変形したときにその変形部分を侵入させるためのスペースが確保される。尚、立上り部22は、上部治具30の後端面と下部治具40の後部壁46との間で前後に挟みつけられて位置決めされる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では2枚の金属板材を重ねた場合について説明したが、本発明によれば、3枚以上の金属板材を重ね合わせることもできる。
(2)上記実施形態では硬度が異なる2枚の金属板材のうち、硬度が高い方の金属板材をダイスで押圧される表面側に配置したが、本発明によれば、硬度が低い方の金属板材をダイスで押圧される表面側に配置してもよい。
(3)上記実施形態2では逃がし空間をテーパ状とし、キャビティの内面に対して滑らかに連続するようにしたが、本発明によれば、逃がし空間とキャビティの内面との境界が段差状をなすようにしてもよい。
(4)上記実施形態ではダイスの断面形状を円形としたが、本発明によれば、ダイスの断面形状を非円形(例えば、楕円形、長円形、方形、多角形等)としてもよい。
(5)上記実施形態では金属板材の硬度が異なる場合について説明したが、本発明によれば、硬度が同一の金属板材を重ねて金属接合体を構成してもよい。この場合、金属板材同士は同一の材質でも、互いに異なる材質でもよい。
(6)上記実施形態では端子金具とバスバーとを接合する場合を説明したが、本発明は、金属板材が端子金具やバスバー以外の場合にも適用できる。
(7)上記実施形態では端子金具(ダイスが直接押圧する方の金属板材)の板厚をバスバー(ダイスが直接押圧しない方の金属板材)よりも小さくしたが、本発明によれば、ダイスが直接押圧する方の金属板材の板厚を、ダイスが直接押圧しない方の金属板材よりも大きくしてもよい。
(8)上記実施形態の具体的な寸法、角度及び硬度については、いずれも一例を示したものであり、本発明によれば、寸法、角度及び硬度を任意に設定することができる。
B…凹部
10…端子金具(金属板材)
20…バスバー(金属板材)
30…上部治具
34…規制部
40…下部治具
42…規制部
50…ダイス
Claims (18)
- 重ね合わせた複数の金属板材を、その板面と交差する方向にダイスで押圧することで、表面側に凹部が形成されるように変形させつつ接合して金属接合体を製造する冷間圧接方法であって、
前記金属板材がそのダイス押圧方向に視た投影形状を拡大させるように変形することを規制する規制部を備えた治具を用い、
前記治具にセットした前記複数の金属板材を前記ダイスで押圧することにより、前記金属接合体を製造することを特徴とする冷間圧接方法。 - 前記治具が、前記金属板材が板厚を増加させるように変形することを許容する逃がし手段を備えており、
前記逃がし手段により、前記ダイスによって形成される前記凹部の容積増加に伴い、前記金属板材の板厚を増加させることを特徴とする請求項1記載の冷間圧接方法。 - 前記ダイスの押圧に伴う前記金属板材の内部圧力上昇によって前記治具が変形し得るようにすることによって、前記逃がし手段が構成されており、
前記治具の変形によって前記金属板材の板厚を増加させることを特徴とする請求項2記載の冷間圧接方法。 - 前記金属板材がダイス押圧方向と同方向へ膨らむように変形することを許容する逃がし空間を前記治具に設けることによって、前記逃がし手段が構成されており、
前記ダイスの押圧により、前記金属板材の一部を前記逃がし空間内に逃がすように変形させることを特徴とする請求項2記載の冷間圧接方法。 - 硬度が異なる2枚の前記金属板材のうち、硬度が高い方の金属板材を前記ダイスで押圧される表面側に配置することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の冷間圧接方法。
- 前記端子金具と前記バスバーが前記凹部の周囲において前記ダイスの押圧方向とは反対側に反り返るように変形することを規制する規制部を備えた治具を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の冷間圧接方法。
- 重ね合わせた複数の金属板材を、その板面と交差する方向にダイスで押圧することで、表面側に凹部が形成されるように変形させつつ接合して金属接合体を製造するための冷間圧接装置であって、
前記金属板材がそのダイス押圧方向に視た投影形状を拡大させるように変形することを規制する規制部を有する治具を備えており、
前記治具にセットした前記複数の金属板材を前記ダイスで押圧することにより、前記金属接合体を製造する構成としたことを特徴とする冷間圧接装置。 - 前記治具が、前記金属板材が板厚を増加させるように変形することを許容する逃がし手段を備えており、
前記逃がし手段により、前記ダイスによって形成される前記凹部の容積増加に伴い、前記金属板材の板厚を増加させる構成としたことを特徴とする請求項7記載の冷間圧接装置。 - 前記ダイスの押圧に伴う前記金属板材の内部圧力上昇によって前記治具が変形し得るようにすることによって、前記逃がし手段が構成されており、
前記治具の変形によって前記金属板材の板厚を増加させることを特徴とする請求項8記載の冷間圧接装置。 - 前記金属板材がダイス押圧方向と同方向へ膨らむように変形することを許容する逃がし空間を前記治具に設けることによって、前記逃がし手段が構成されており、
前記ダイスの押圧により、前記金属板材の一部を前記逃がし空間内に逃がすように変形させることを特徴とする請求項8記載の冷間圧接装置。 - 前記治具のキャビティ内に前記金属板材をセットした状態において、前記逃がし空間における前記金属板材との対向面は、前記キャビティの内面のうち前記金属板材の板面に対して当接する領域の端部から、前記金属板材の板面に沿った方向について前記ダイス押圧方向に傾斜して連なっていることを特徴とする請求項10記載の冷間圧接装置。
- 前記ダイスの外周面が、前記金属板材に対する押圧方向に向かって縮径するテーパ状をなしていることを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の冷間圧接装置。
- 前記ダイスにおける前記金属板材との対向面が、押圧方向と略直角な平坦な押圧面とされており、
前記ダイスの外周面と前記押圧面とが弧状面を介して連なっていることを特徴とする請求項7ないし請求項12のいずれかに記載の冷間圧接装置。 - 前記ダイスの表面が鏡面加工されていることを特徴とする請求項7ないし請求項13のいずれかに記載の冷間圧接装置。
- 前記治具における前記金属板材との接触面が鏡面加工されていることを特徴とする請求項7ないし請求項14のいずれかに記載の冷間圧接装置。
- 前記治具が、前記端子金具と前記バスバーが前記凹部の周囲において前記ダイスの押圧方向とは反対側に反り返るように変形することを規制する規制部を備えていることを特徴とする請求項7ないし請求項15のいずれかに記載の冷間圧接装置。
- 重ね合わせた複数の金属板材を、その板面と交差する方向にダイスで押圧し、表面側に凹部が形成されるように変形させつつ接合することによって製造される金属接合体であって、
前記金属板材がそのダイス押圧方向に視た投影形状を拡大させるように変形することを規制する規制部を備えた治具を用い、
前記治具にセットした前記複数の金属板材を前記ダイスで押圧することにより製造されたことを特徴とする金属接合体。 - 硬度が異なる2枚の前記金属板材のうち、硬度が高い方の金属板材を前記ダイスで押圧される表面側に配置したことを特徴とする請求項17記載の金属接合体。
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