JP3825814B2 - 画像記録装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、装置に固有の入出力特性が環境の影響を受けて変動した場合でも、中間調画像を良好に再現することが可能な画像記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリンタの入出力特性に基づいて画像データを補正する方式としては、たとえばある環境下において数レベルの階調を記録した出力サンプルの濃度、反射率などを測定し、そのデータを階調特性として用いてそのまま逆テーブルを作成する方法などが利用されている。
【0003】
しかし、環境の影響を受けて変動した不安定な入出力特性のデータをそのまま補正用の逆関数の作成などに利用する場合、プリンタが逆関数作成用のデータを測定したときの特性を保ったままであるならば良いが、少しでもプリンタの入出力特性が変動してしまうと、逆関数を掛けて補正した結果かえって画質が悪くなる場合もあった。
【0004】
また、逆関数を求める場合、変動後の曲線ももとの曲線もその入出力関係を表す関数は単純な一次もしくは二次関数では表せないような複雑な形状をなしており、データの補間を行う変換式を直接関数を解いて求めることは困難であるためルックアップテーブルによる参照方式を取ることで補間計算に代用することが多かった。
【0005】
しかしながら、上記テーブルを用いた変換ではなめらかな特性を得るため、なるべく多くの制御量対出力のサンプルデータを必要とした。しかも同サンプルデータには高い信頼性が求められ、サンプリングを複数回行うなどの方法も必要とした。さらに、ほとんどのプリンタは定常状態における特性自体がS字型の形状をなしており、ハイライトとシャドウ部は非常にγが低くなっていることが多い。そこで、変動後の入出力特性がさらに極端に硬調になってしまった場合、その逆特性はハイライトやシャドウ部において局所的にγが高くなる。その逆特性を補正データとして使用する場合、ノイズが多いとハイライトやシャドウ部における階調の飛びを増長して、かえって画質を悪くしてしまうことも多かった。
【0006】
一方、特開平 04-284465号では、帯電、像露光、現像、転写、定着などの各部位に電圧計、電流計、湿度センサ、温度センサ、トナー量計などの計測器を設置して、プロセスの状態を変化させて学習させておき、最適なプロセス制御を可能にするという方法が提案されている。
【0007】
しかし、この方式はプリンタの要所毎に環境測定用の機器を設置して、その測定値をもとに帯電用グリット電圧、トナー供給量などを調整するというものであるため、プリンタのコストダウンや小型化という点からは不利な方法であるといえる。
【0008】
また、特開平 04-268874号では、所定の階調パターンを感光体上に形成し、同パターンを読み取り、センサの読み取り出力から階調特性を決定し、補正不可能な場合は所定の表示を行うという方法が提案されている。この方法は特定の制御量を与えた5点に対する入出力特性をセンサで読み取り、サンプルデータとし、初期状態における入出力特性の傾きと比較し、補正演算回路によって補正ルックアップテーブルの内容を書き換える。このとき、初期状態の階調特性はγ=1の線形な特性を持つようにしてある。
【0009】
しかし、前述したように、もともとが非線形である入出力特性を5点だけで線形に合わせても他の階調では補正できるとは限らない。従って多くの測定点が必要となる。また、同方式では不自然な特性になる場合はメッセージを表示するとあるが具体的なその判断の基準についての記述がない。また、実際に読み取ったデータ自体も特に低濃度領域のものほど信頼性が低いデータであることが多く、適正な補正データを得るにはその領域に対してかなりの多くの回数のサンプリングや同データの平均化などの処理を必要とし、5点という少ないサンプルデータ数では不正確になる。また、仮にサンプリングを複数回行わない場合は補正データに変動ノイズが含まれ正確な補正を行うことができなくなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の画像記録装置では、サンプリングしたデータの信頼性が低いために補正の効果が現れなかったり、かえって階調の飛びなどが生じたりするなどの問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ごく少数のデータを読み取るだけであらゆる環境の変動に対応して良好な入出力特性を得ることが可能な画像記録装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る画像記録装置は、画像データを入力する入力手段と、白及びベタ信号を含む5レベル以上の制御量である階調データを発生する階調データ発生手段と、前記入力手段により入力された画像データ及び前記階調データ発生手段により発生される前記階調データが選択的に入力される階調補正手段と、前記階調補正手段から出力される前記階調データを記録する記録手段と、前記記録手段により記録された前記階調データの記録結果を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段によって得られる読み取りデータから求められた入出力特性を表す曲線が、予め定められた基準入出力特性を表すS字型カーブまたはS字型カーブをつないだ基準曲線を、横軸方向であって、入力側を示す制御量方向について変倍及びシフトし、並びに縦軸方向であって、出力側を示す出力方向について変倍及びシフトして変形させたときの前記基準曲線の前記制御量方向への変倍及びシフト並びに前記出力方向への変倍及びシフトの各量が、それぞれ光量、帯電電圧、温度及びトナー電荷量、及びヘッドの消耗などである各種補正の物理的要因の変動量を示す、として求め、求められた各変動量に基づいて前記入力手段により入力される画像データと出力画像データとの間の入出力特性を制御する入出力特性制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記入出力特性制御手段は、前記各種補正の物理的要因の前記変動量を求める際に出力濃度の不安定なレベルと安定なレベルとで異なる重み付けをして演算処理するものであることが好ましい。
【0014】
また、前記変動量があらかじめ指定された許容範囲を超える場合は、所定のメッセージを表示し、上記許容範囲を超えた変動量が表す変動要因によってメッセージ内容を切り替えるようにしてもよい。
【0015】
更に、カラープリンタのように複数色のデバイスを利用する場合は、各色デバイスの入出力特性を基準入出力特性に近づけるよりも、各色デバイス間の入出力特性を揃えることを優先させる、すなわち前記階調データ発生手段、階調補正手段、記録手段及び読み取り手段を複数色に対応して設け、前記入出力特性制御手段においては、各色に対応する前記階調補正手段の入出力特性を前記基準入出力特性に近付けるよりも前記階調補正手段の入出力特性を揃えることを優先させることが望ましい。
【0016】
【作用】
環境の変化による物理要因に伴う入出力特性の変動は、たとえば光量変動は制御方向に対する変倍、帯電電圧は制御量方向に対するシフト、温度、トナー電荷量は出力方向に対する変倍、また感光体の劣化などは出力方向に対するシフトで表すことができる。したがって、環境変動の各要因に伴う入出力特性の変動はほとんど2方向の変倍、シフトの4種類の変動要素によって表すことができる。すなわち、環境の変化による総合的な入出力特性の変動に対する補正はこの4種類の変動要素の単体もしくは複数の組み合わせによって表すことが可能である。そこで、入出力特性の補正は、以上の変動要素に従ってそれぞれ逆方向に動かすような処理あるいは設定の変更を行うことによって成しうる。
【0017】
本発明によれば、このように、入出力特性の変形の仕方に制限を与えることによって、ごく少数のデータを読み取り、4つの係数を切り替えるという簡単な処理だけで良好な階調補正を行うことが可能になる。
【0018】
変動量算出に当たっては、制御量に対する出力濃度のばらつきが多い読み取りデータに対しての重み付けを小さくすることで、ばらつきの影響を小さくし、安定な補正を行うことが可能となる。
【0019】
また、変動量があらかじめ指定された許容範囲を超える場合は、所定のメッセージを表示すると共に、その変動要因によってメッセージ内容を切り替えることにより、劣化が著しく補正が不可能な場合も適切に対処可能になる。
【0020】
更に、複数色のデバイスを利用する場合は、各色デバイスの入出力特性を基準入出力特性に近づけるよりも、各色デバイス間の入出力特性を揃えることを優先させることにより、カラーバランスを良好に保つことができる。
【0021】
【実施例】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0022】
図1は、この発明をモノクロームプリンタに応用した例を示すブロック図である。
【0023】
同図において、入力部1から入力された画像データは、階調補正部2においてプリンタの入出力特性に応じて階調を補正され、感光体ドラム等の記録部3を介して出力部4に出力され、出力部4から階調補正された出力画像が出力される。コントロールパネルのスイッチ等からなるプリント/補正切替部5は、階調補正部2における入出力特性を補正する補正モードと、補正後の入出力特性によって階調補正を行うプリントモードとを切替える。階調データ発生部6は、補正モード時に所定の階調パターンを階調補正部2に供給する。この階調パターンの記録部3での記録結果は、読み取り部7で読み取られ、特性計算部8に入力される。特性計算部8は、階調パターンの記録結果に基づいて階調補正部2の入出力特性を補正する。
【0024】
以下、この装置の動作を説明する。
【0025】
まず、電源点灯時もしくはコントロールパネル上においてプリント/補正切替部5にて補正モードに切り替えられ、補正処理の開始が指示されると、階調補正部2にクリアクロックが入力され、階調補正部2の内容が補正をしない状態にセットされる。続いて、階調データ発生部6にあらかじめ内蔵されているセンシトメトリ用の階調データがステップパターン状のデータとして出力され、階調補正部2に供給される。このデータは白及びベタ信号を含む5レベル以上の制御量である。たとえば、白を0、ベタを1で表した場合、これらの制御量は、X1 =0.000 ,X2 =0.375 ,X3 =0.500 ,X4 =0.625 ,X5 =1.000 の5レベルの制御量であるとする。記録部3はこの階調パターンを記録する。
【0026】
上記記録作業によって記録部3上に付着した5レベル以上の制御量に対するトナー濃度は、読み取り部7によって読み取られる。この読み取り部7によって取り込まれた各レベルにおける濃度は特性計算部8へ入力される。この特性計算部8は入力されたデータから入出力特性の基準状態からの変動量に見合う補正係数を求める。求められた補正係数は階調補正部2に入力され、上記変動量に対応した補正条件がセットされる。この処理条件が整った後、自動的に補正モードからプリンタモードに切り替わり、通常画像が入力部1から階調補正部2に出力され、階調補正が行われる。
【0027】
本発明者等の実験によれば、プリンタの入出力特性の環境の各要因による変動は、以下に示すように、4種類の動きで表されることが分かった。始めに、物理的な要因の変動が生じた時のトナー付着量について実験を行い、入出力特性を比較し、その変動に伴う特性の動きを分析した。図2にその結果を示す。
【0028】
同図において、(a)は光量変動のあった場合のグラフを表しており、制御量の方向に変倍させると形がほぼ一致する。(b)は帯電電圧が変動した場合であるが、これは制御量方向にシフトさせると形が一致する。(c)は温度変化の場合で、出力方向の変倍で対応できる。(d)はトナー電荷量の変動について示している。この変動はこの図面からでは少し分かり難いが、温度と同様に出力方向の変倍で表せる。なお、この例には、出力方向のシフトに相当する変動要因の実験結果が示されていないが、このような変動要因としては、ヘッドの消耗などが挙げられる。
【0029】
このように、あまり大きくない各変動要因についての動きは非常に基本的な2方向4種類の動き方であることが実験結果から分かった。したがって補正可能な小さな変動に対しては、これら4つの動きの組み合わせで吸収可能であることが分かった。
【0030】
次に、変動に対する補正方法の詳細について説明する。
【0031】
第3図は階調補正部2及び特性計算部8の具体的構成例を示した図である。
【0032】
この特性計算部8は読み取り専用メモリ(以下、ROMと呼ぶ)11とCPU12とを備えて構成されている。ROM11内には比較対象とするための基本特性が記憶されている。
【0033】
CPU12は、例えば図4〜図6に示すような手順に従って補正係数を求める。すなわち、先ず読み取り部7から得られた5レベルのサンプルデータ(X1 〜X5 )に対応する出力のスキャナ読み取り値(Y1 〜Y5 )が特性計算部8に入力される(S1)。次に4種類の係数K1 〜K4 の適正化を行っていくための微調整の刻みaを入力し(S2)。補正係数を求めて行くときの5個のサンプル点に対する重み付け係数W1 〜W5 を入力する(S3)。
【0034】
この重み付け係数を掛ける理由は以下の通りである。すなわち、プリンタは一般に低濃度域は比較的不安定であり、サンプルとして読み取ったデータにばらつきが多く、その読み取り値の信頼性が低い。図5は、各濃度レベルに対する濃度ばらつきの測定結果を示したグラフである。同図を見ると出力濃度の不安定な部分が低濃度レベルに分布していることが分かる。従来技術として先に述べた特開平 04-268874号に示されている処理方法のように、この不安定なレベルのデータを他のデータと同じように処理してしまうと有効な補正処理を行うことは難しく、特性推定や補正において大きな誤差が生じることは明かである。本方式では読み取りの回数は各レベルにつき一回に止めてあるので、2乗和を求める際、この不安定なレベルと安定なレベルのデータとの間で特性推定時の重み係数を変えて処理する。つまり、信頼性の高いデータに対する重み係数を大きくして、信頼性の低いデータの重み係数を小さくすれば良い。同係数W1 〜W5 としては、濃度ばらつきから逆算してW1 、W5 に20、W2 、W3 に1、W4 に2を割り付ける。
【0035】
次に、補正係数K1 〜K4 の初期値がセットされる(S4)。このうち第1のサンプル点X1 に対するスキャナ読み取り値Y1 を第4の補正係数K4 としておく。はじめに係数K1 〜K4 の初期値を与えたときの曲線とサンプル点の距離の2乗和を求める(S5〜S10)。次に各係数を微調整量aだけ正の方向(S11)または負の方向(S18)に動かして、それぞれの係数で変形した曲線とサンプル点との距離の2乗和を求める(S12〜S16、S19〜S23)初期条件の2乗和と比較し、各係数の変化に対する偏微分値を求める(S17,S24)。
【0036】
そこで、それぞれの偏微分値を見て、正と負の方向での偏微分値の符号が異なり、かつ距離の2乗和が小さくなる方向へ係数を変える(S25〜S31)。いずれの係数も変えなかった場合は各偏微分値の大きさを調べ、所定の値(この実施例では1)以上ならば変更の刻みaをさらに小さくして(この実施例では1/2)上記の処理を繰り返す(S34〜S40)。この結果、偏微分値のすべてが所定の値に達せず、変形した曲線とサンプル点の距離の2乗和が十分に小さくなったと見做すことができた時点でアルゴリズムは終了し、そのときの各係数を補正係数とする。
【0037】
なお、ここでは、偏微分値のすべてが1未満になったときに、そのときの各係数を補正係数とするようにしたが、もう少し大きい値でも差し支えない。また、上述のアルゴリズムでは集束が早くなるように、補正係数の微調整ループにおいて4種類の補正係数K1 〜K4 のうちK4 を除く3種類の係数のみの微調整を行っているが、4種類の補正係数を一緒に同ループの中で求めても良い。
【0038】
プリントモードになると、上記の処理によって求めた補正係数を使用して、入力画像データの階調補正が実行される。ここでは、各種補正の物理的要因による入出力特性の変形が、基準の入出力特性から図8に示すような4方向への変形要素を合成したものであるとして以下のように処理する。
【0039】
基準とする入出力特性は、20℃などの標準温度で、光源のライフサイクルが著しく低下しない程度の印加電圧で、且つ濃度のダイナミックレンジを広く、高濃度、低濃度ともつぶれが生じない程度に調節した状態で測定したものを利用する。図9は、上記基準とする入出力特性の2つの例を示したグラフである。(a)は典型的なS字型カーブである。(b)はS字型カーブを2個つなげた形状の曲線で、たとえば2画素変調のような表現方式を利用した場合などの入出力特性を示す。いずれの場合も基準の入出力特性とする曲線はルックアップテーブル(以下、LUTと呼ぶ)作成の作り易さの点から考えると、つぶれがなく、入力と出力は一対一で対応していることが望ましい。すなわち、逆変換用LUT作成の際にデータが一意に選べることが必要である。また、このS字の形状は一般のプリンタでは最も一般的な形状である。基準の入出力特性にこの形状を選ぶと、無理に線形の特性に近づけようとしないので、低濃度あるいはベタに近いところに階調の飛びが生じない。
【0040】
画像データは、階調補正部2において次のようにして加工される。階調補正部2は書換可能メモリ(以下、RAMと呼ぶ)13で構成され、特性計算部8から出力される補正係数によってその内容を書き換えられる。なお、補正部2の内部で行う処理は次の通りである。
【0041】
まず、入力方向の倍率がK1 倍である場合は以下に示す式(1)、シフト量がK2 であったと判定された場合は式(2)を用いて入力信号を変形する。
【0042】
S1 =S0 /K1 (1)
S1 =S0 −K2 (2)
ここでS0 は補正前の信号、S1 は補正後の信号を表す。
【0043】
一方、出力方向の倍率がK3 、シフト量がK4 であれば、次式(3)(4)を用いて入力データを変形する。
【0044】
S1 =f-1(f(S0 )/K3 ) (3)
S1 =f-1(f(S0 )−K4 ) (4)
ここで、f()はプリンタの標準状態における入出力特性を表す関数、f-1()は上記関数f()の逆関数を表し、ROM11の内部にあらかじめセットされており、CPU12で加工したデータがRAM13に書き込まれる。
【0045】
RAM13では、入力された画像信号Sinをアドレスとして補正信号Sout を得る。
【0046】
この補正を演算式で表すと式(1)〜式(4)をまとめた次式(5)のようになる。
【0047】
従って、補正変換および演算は画像信号に対して式(4)→…→式(1)の順で行うことになる。
【0048】
また、上述のように階調補正部2を1個のRAM13で構成する以外に、図10に示すように、階調補正部2を2個のLUT15、17および2個の演算回路16、18で構成して処理を行う方法も考えられる。その場合、LUT15では関数f()、LUT17では関数f-1( )の変換を行い、第1の演算回路16では式(3)(4)、第2の演算回路18では式(1)(2)をまとめた演算を行う。
【0049】
以上のようにプリンタの変動に対する補正を行うと、入出力特性の変動要素を限定しているので、変動を推定する際の煩雑さが軽減され、読み込むサンプルデータも少ない数で補正処理を行い、安定な階調特性を得ることが可能となる。また、このように入出力特性が変形する条件を限定することにより、計算上の誤差を最小限に止めることができる。たとえば本方式を用いて近似した場合と、変形後の入出力特性を誤差最小法の三次曲線で近似して求めた場合とを比較すると、その誤差は、多いときは1/20程度にまで軽減することもできる。
【0050】
図11は実際に本方式による曲線近似と三次曲線近似とを比較したグラフである。同図において本方式による近似曲線は対象とする曲線とほぼ一致している。それに対して三次曲線で近似したものが破線で示されており、ややずれていることがわかる。それゆえ、従来の方法のように単純に変動後の入出力特性を初期条件と比較して求めるよりもはるかに有効な方法といえる。
【0051】
しかしながら変動量が著しく大きい場合、入力データの加工を行っても、もとの特性からの変形がはげしく、補正しきれないこともある。すなわち、変動が大きいことが原因で、オーバフローまたはアンダーフローする部分が大きくなり、有効制御量の範囲が狭くなった場合、かぶりがひどいかまたは最高濃度が所定の濃度に到達せず表現可能な出力濃度範囲が狭くなった場合がこれに相当する。
【0052】
これに対処するべく、あらかじめそれぞれの変動要素に対して上限と下限の閾値を設定し、その閾値から外れた場合はメッセージランプが点灯してプリンタが停止するようにしておくことが望ましい。図3、図10及び図13の各種メッセージ表示部9は、この目的のために設けられている。上記閾値は、補正係数K1 〜K4 の順に初期値からの変動量が−0.30と+0.40、−0.15と+0.20、−0.45と+0.60、および−0.30と+0.40となる値に設定する。補正係数中の一つでも以上の閾値から外れる場合は特性計算部8から補正不能の信号がメッセージ表示部9に送られ、信号源と外れた方向の正負によって、サービスマンコールのランプを点灯させるか、もしくは表示するメッセージを変える。そのメッセージの一例を図12に示す。このように変動の方向およびその仕方別にメッセージが表示されると対応も容易になる。
【0053】
上記実施例では、特性計算部8にCPUを用いたが、精度および速度を優先させて処理を行いたい場合には、以下に示すようにCPUの代わりにLUTを用いて構成することも可能である。
【0054】
図13はこの第2の実施例の読み取り及び補正に係る部分を示すブロック図である。同図に示されているように、読み取り部7はスキャナ23と量子化回路24とによって構成されている。スキャナ23から入力された上記5つのレベルに対応するデータはそれぞれ量子化回路24において4ビットのデータに量子化され、下位ビットから順次割付けられて20ビットのデータとして形成される。同データはLUT21へ入力される。LUT21は読み取り専用メモリ(ROM)で構成されており、入力された20ビット構成の5つのレベルに対応するデータをアドレスとして、4種類の補正を表す信号、即ち入力方向に対する倍率及びシフト量並びに出力方向に対する倍率およびシフト量を表した補正信号を発生する。この補正信号は16ビットの数値で表現され、上位からそれぞれ入力方向の倍率、シフト量、出力方向の倍率、シフト量の順に4ビットずつ割り付けてある。これら4ビットのうちの各下位3ビット分のみが階調補正部2にそれぞれ送信されるように割り付けてある。
【0055】
LUT21から得られた信号が階調補正部2に入力され、階調補正部2での補正データのセットが完了すると、補正モードから自動的にプリントモードになる。この実施例では、階調補正部2もROMのLUT22から構成されている。このLUT22の動作は第1の実施例の階調補正部2の動作とほぼ同様であるが、入力される画像信号のほかに特性計算部8からの信号もアドレスとして用いる。従って、第1の実施例のRAMと比較するとかなり大きな容量を必要とすることになる。また、この実施例では図10の演算回路16,18の代わりにLUT22を用いている。
【0056】
図14は、この補正信号に対する補正係数の割り付けの例を示す図である。制御量と出力のいずれの方向も、補正係数K1 〜K4 のうち倍率は1倍を中心にして、シフト量は0を中心にして±に割り付けてある。同図において変動の各要素ごとに変動の比率が異なるのは、被験者実験を行って感覚量を等しくするように決定したためである。なお、本実施例では補正限界の閾値は図14の表の両端に明示してある値であるが、基本的には第一の実施例と同様である。すなわち、特性計算部8内のLUT21からの補正信号で上記各要素に割り付けられた4ビットの中の下位3ビットを除いた最上位ビットは、閾値を超えるとHとなる。これらの各4要素に対する補正信号の最上位ビットの論理和がHであるならばサービスマンコールのランプを点灯させるかもしくは、各要素の補正信号のうち上位2ビットをとった信号を各種メッセージ表示部9に送信してその値に応じたメッセージを表示する。なお、表示内容は第一の実施例にて示した表に準ずる。
【0057】
上記実施例において補正処理は、入力信号を加工することのみで対応していたが、2成分現像方式の電子写真ならば画質維持制御機能を持たせて、サンプルパターンを読み取って得られたデータに基づいて以下に示すようなプリンタへの制御を加えることによっても成し得る。
【0058】
この場合、たとえば図15のブロック図で示す装置によって処理を行っていく。電源点灯時もしくは補正モード選択時に階調パターンの記録を行う。出力された階調パターンを読み取り、特性計算部8にて補正信号を求める。この階調パターンの読み取りから補正信号を求めるまでは第一の実施例に示した方法と同様に行う。この補正信号の内容は画質制御部31に入力される。入出力特性の4種類の変動要素によって画質制御部31では記録部3の制御内容および制御量が求められる。この制御信号は記録部3に与えられる。画質制御部31は制御信号ととも制御が完了した時点で補正モードからプリントモードに切り替える信号を出力する。たとえば入出力特性が制御量方向に変倍しているならば光量を調節し、シフトしていればグリッド電圧を調整する。また、出力方向に変倍していれば転写電圧を調整し、シフトしていればトナー供給量を増減させるなどの制御を与える。なお、1成分方式の電子写真のような装置の場合はトナーの供給量は調節できないなどの問題もある。また、光源にレーザでなく個体ヘッドを用いる場合は光量の調節の自由度が低い。このような場合は、ハード的な制御を行うと同時に第一の実施例に示したような画像信号に対する数値的な処理を加えて、補正を行うとよい。
【0059】
本発明は、また、以下のようにカラープリンタに応用することも可能である。
【0060】
たとえば、YMC3色またはYMCK4色のトナーを用いたプリンタならぱ、上述のような、データ発生、読取り作業をトナーの色数の回数だけ繰り返すか、色数だけの補正部もしくは補正部内に色数分のLUTを持ち、並列処理によって行う。ただし、カラープリンタの場合はモノクロプリンタとは異なり、それぞれのトナー色の入出力特性が同じように変動した場合は不自然には感じないが、ある色だけの入出力特性だけが変動した場合、すなわちトナーの特性が揃わないと変動がたとえ微量であっても不自然さが急激に感じられるという問題が被験者実験を行って確認された。従って、カラープリンタに応用する場合は各色のトナー同士の入出力特性を比較してさらに高精度の補正処理を行い、カラーバランスを保証する必要がある。
【0061】
図16は、YMCK4色のトナーを使用したプリンタの例を示すブロック図である。この実施例では、入力部41から入力される各色の画像データが各色の階調補正部42a〜42dで補正され、各色の記録部43a〜43dで記録され、出力部44を介して出力される。
【0062】
このプリンタでは、各色毎に第1の実施例と同様に変動補正処理を行う。即ち、特性計算部46から階調変動の測定階調パターンを発生させ、そのパターン信号を各色の階調補正部42a〜42dにセットし、各色の記録部43a〜43dで記録する。次に各色の読み取り部45a〜45bで読み取られ、特性計算部46で計算され、第1の実施例と同様の手法により、各色の補正係数が求められる。次に各色の規格化した補正後の濃度値を予測し、各色の規格化された濃度値での平均値を求め、その平均値に近づくようにそれぞれの色変動補正パラメータを変更して、色バランスをとる。このパラメータに基づいて各色の階調補正曲線を計算し、各色の階調補正部42a〜42dにセットし補正を行う。このようにすることで、各色の変動を抑えると同時に色バランスを優先してとることが可能となる。したがって、この実施例では多少濃度が変動しても色味が変わることなくより自然な色再現が保証される。
【0063】
なお、本発明の応用はプリンタに限るものではない。たとえば上述の回路にスキャナとデータ変換部(カラーならば色変換部)を接続すれば複写機にも応用することが可能である。なお、複写機として線形な階調特性を得ることが必要ならば、上記データ変換部に線形への補正機能を持たせればよい。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、環境の変動による様々な物理的要因の影響を受けてプリンタの入出力特性が変化した場合でも、その入出力特性とほぼ一致するように基本入出力特性を2方向に変倍、シフトさせて変形させたときの各変動要素の変動量を求め、この変動量から入出力特性を制御しているので、環境変動に作用されない良好な階調の出力を得ることが可能になる。また、特性曲線の変形のパターンを限定していることから、ごく少数のデータをサンプリングするだけでよく、この場合にも正確な階調変動を推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を適用したモノクロプリンタのブロック図
【図2】4種類の変動要素と入出力特性の関係を模式的に表したグラフ
【図3】本発明の第一の実施例の補正に係る部分の詳細ブロック図
【図4】本発明の特性計算部の処理の前段を示す流れ図
【図5】本発明の特性計算部の処理の中段を示す流れ図
【図6】本発明の特性計算部の処理の後段を示す流れ図
【図7】プリンタの制御濃度レベルに対する出力濃度のばらつきを表すグラフ
【図8】各種環境の変動と入出力特性の変動を表したグラフ
【図9】基準となるプリンタの入出力特性の例を表したグラフ
【図10】本発明の第一の実施例の補正に係る部分の他の例を表した詳細ブロック図
【図11】本方式により推定した階調特性曲線と三次の曲線近似で推定したものを比較したグラフ
【図12】補正不能時の表示メッセージの一覧を示す図
【図13】本発明の第二の実施例の補正に係る部分のブロック図
【図14】補正係数の一覧を示す図
【図15】本発明の第三の実施例を適用したプリンタのブロック図
【図16】本発明の第四の実施例を適用したカラープリンタのブロック図
【符号の説明】
1,41…入力部
2,42a〜42d…階調補正部
3,43a〜43d…記録部
4,44…出力部
5,47…プリント/補正切替部
6…階調データ発生部
7,45a〜45d…読み取り部
8,46…特性計算部
9…各種メッセージ表示部
31…画質制御部
Claims (4)
- 画像データを入力する入力手段と、
白及びベタ信号を含む5レベル以上の制御量である階調データを発生する階調データ発生手段と、
前記入力手段により入力された画像データ及び前記階調データ発生手段により発生される前記階調データが選択的に入力される階調補正手段と、
前記階調補正手段から出力される前記階調データを記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された前記階調データの記録結果を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段によって得られる読み取りデータから求められた入出力特性を表す曲線が、予め定められた基準入出力特性を表すS字型カーブまたはS字型カーブをつないだ基準曲線を、横軸方向であって、入力側を示す制御量方向について変倍及びシフトし、並びに縦軸方向であって、出力側を示す出力方向について変倍及びシフトして変形させたときの前記基準曲線の前記制御量方向への変倍及びシフト並びに前記出力方向への変倍及びシフトの各量が、それぞれ光量、帯電電圧、温度及びトナー電荷量、及びヘッドの消耗などである各種補正の物理的要因の変動量を示す、として求め、求められた各変動量に基づいて前記入力手段により入力される画像データと出力画像データとの間の入出力特性を制御する入出力特性制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。 - 前記入出力特性制御手段は、前記各種補正の物理的要因の前記変動量を求める際に出力濃度の不安定なレベルと安定なレベルとで異なる重み付けをして演算処理するものであることを特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
- 前記基準入出力特性は、標準環境下での入出力特性であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像記録装置。
- 前記階調データ発生手段、階調補正手段、記録手段及び読み取り手段は複数色に対応して設けられ、前記入出力特性制御手段は、各色に対応する前記階調補正手段の入出力特性を表す曲線を前記基準曲線に近付けるよりも前記階調補正手段の入出力特性を揃えることを優先させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の画像記録装置。
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