JP3825644B2 - 電子レンジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子レンジに関し、特に、加熱室内の特定の場所を集中して加熱できる電子レンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子レンジには、特許第2894250号に開示されているように、加熱室内の、食品が載置されている場所を集中して加熱させようとしていた。具体的には、加熱室全体をまんべんなく加熱した際の、加熱室内の温度上昇の分布に基づいて、食品の載置場所が決定され、当該場所が、集中的に加熱されていた。
【0003】
なお、上記の電子レンジにおいて、加熱室に複数の食品が載置されていると判断された場合には、当該複数の食品の載置場所の中心が、集中して加熱されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の電子レンジでは、加熱室に複数の食品が載置された場合、エネルギ効率が悪くなるおそれがあったため、適切に加熱が行なえていたとは言い難かった。このような場合、集中して加熱される場所である、複数の食品の載置場所の中心には、食品が載置されていない場合もあるため、食品が載置されている場所を集中して加熱する場合よりも、食品が、マグネトロンの発振したマイクロ波を吸収する率が低下すると考えられるからである。
【0005】
なお、複数の食品が載置された場合、当該複数の食品の中の一つのみを集中して加熱すれば、他の場所にある食品の加熱が不充分となるおそれがある。また、複数の食品の載置場所を、一箇所ずつ、順次、集中的に加熱したのでは、調理時間が長時間に及ぶおそれがあり、この場合も、適切に加熱が行なえていたとは言い難かった。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、同時に、加熱室内の複数の場所に食品が載置された場合でも、すべての食品を適切に加熱できる電子レンジを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面に従った電子レンジは、食品を収容する加熱室を内部に設けた本体枠と、前記加熱室の底面に設けた底板と、前記食品を加熱するためにマイクロ波を発振するマグネトロンと、該マグネトロンと前記本体枠の底部とを接続する導波管と、前記底板と前記本体枠の底部との間に配置され、前記マグネトロンの発振したマイクロ波を、導波管を介して前記加熱室内に放射するアンテナと、該アンテナを回転させるアンテナモータと、前記加熱室内の複数の場所の温度を検出する赤外線センサと、該赤外線センサの検知結果に応じて前記マグネトロン及び前記アンテナモータの動作を制御する制御部と、を備え、前記アンテナは、マイクロ波が他の部分に比べて強く放射される領域を有し、前記制御部は、前記アンテナを回転させて前記マグネトロンで発振したマイクロ波を前記加熱室内に拡散しつつ供給するために、前記マグネトロンと前記アンテナモータとを駆動させる第1のモードと、前記加熱室内の特定の場所に前記マグネトロンで発振したマイクロ波を集中的に供給するために、前記特定の場所に対応する位置に前記アンテナのマイクロ波が強く放射される前記領域を位置させるように前記アンテナモータの動作を停止させて前記アンテナの回転を停止させる第2のモードと、が実行可能である電子レンジであって、前記制御部は、前記第1のモードを実行して加熱を開始させるとともに、前記赤外線センサで加熱開始時に検出した温度のうち最低温度を検出した場所における所定時間の温度上昇値を検出して一定値と比較した結果、前記温度上昇値が一定値未満なら前記第1のモードの実行を継続し、また前記温度上昇値が一定値未満でないなら、低温部分を集中的に加熱しつつ前記加熱室内全体も加熱するために、前記第1のモードと前記最低温度を検出した場所を前記特定の場所として行なう前記第2のモードとを交互に実行することを特徴とする。
【0008】
これにより、電子レンジにおいて、加熱室内の特定の場所に載置された食品を集中的に加熱しながらも、加熱室内の他の場所に載置された食品も、加熱できる。また、電子レンジにおいて、集中的に加熱したい食品の場所が決定されるため、ユーザは、どの食品を集中的に加熱すべきかを判断する作業、および、当該食品の場所を電子レンジ側に入力する作業を行なう必要がない。
【0009】
したがって、電子レンジにおいて、同時に、加熱室内の複数の場所に食品が載置された場合でも、すべての食品を適切に加熱できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
1.電子レンジの構造
図1は、本発明の一実施の形態の電子レンジの斜視図である。
【0024】
図1を参照して、電子レンジ1は、主に、本体2と、ドア3とからなる。本体2は、その外郭を、外装部4に覆われている。また、本体2の前面には、ユーザが、電子レンジ1に各種の情報を入力するための操作パネル6が備えられている。なお、本体2は、複数の脚に支持されている。
【0025】
ドア3は、下端を軸として、開閉可能に構成されている。ドア3の上部には、把手3aが備えられている。図2に、ドア3が開状態とされたときの電子レンジ1を左前方より見た、電子レンジ1の部分的な斜視図を示す。
【0026】
本体2の内部には、本体枠5が備えられている。本体枠5の内部には、加熱室10が設けられている。加熱室10の右側面上部には、孔10aが形成されている。孔10aには、加熱室10の外側から、検出経路部材40が接続されている。加熱室10の底面には、底板9が備えられている。
【0027】
図3に、外装部4を外した状態にある電子レンジ1を右上方から見た、電子レンジ1の斜視図を示す。また、図4に、図1のIV−IV線に沿う矢視断面図を示す。なお、本体枠5の右側面には、加熱室10に隣接するようにマグネトロン12(図4参照)等の各種の部品が搭載されているが、図3では省略している。
【0028】
図3および図4を参照して、孔10aに接続された検出経路部材40は、開口を有し、当該開口を孔10aに接続された箱形状を有している。なお、検出経路部材40を構成する当該箱形状の底面には、赤外線センサ7が取付けられている。そして、検出経路部材40を構成する箱形状の底面には、検出窓11が形成されている。赤外線センサ7は、検出窓11を介して、加熱室10内の赤外線をキャッチする。
【0029】
外装部4の内部には、加熱室10の右下に隣接するように、マグネトロン12が備えられている。また、加熱室10の下方には、マグネトロン12と本体枠5の下部を接続させる導波管19が備えられている。マグネトロン12は、導波管19を介して、加熱室10に、マイクロ波を供給する。
【0030】
また、本体枠5の底部と底板9の間には、回転アンテナ20が備えられている。導波管19の下方には、アンテナモータ16が備えられている。回転アンテナ20とアンテナモータ16とは、軸15aで接続されている。そして、アンテナモータ16が駆動することにより、回転アンテナ20が回転する。
【0031】
加熱室10内では、底板9上に、食品が配置される。マグネトロン12の発したマイクロ波は、導波管19を介し、回転アンテナ20によって攪拌されつつ、加熱室10内に供給される。これにより、底板9上の食品が加熱される。
【0032】
加熱室10の後方には、図示は省略しているが、ヒータユニットが備えられている。ヒータユニットには、ヒータ(図11のヒータ13)、および、当該ヒータの発する熱を加熱室10内に効率よく送るためのファンが収納されている。また、加熱室10の上方にも、食品の表面に焦げ目をつけるためのヒータが備えられている。
【0033】
また、回転アンテナ20には、補助アンテナ21が取付けられている。回転アンテナ20および補助アンテナ21は、板状である。そして、補助アンテナ21は、回転アンテナ20に、絶縁体によって取付けられている。つまり、回転アンテナ20と補助アンテナ21は、絶縁されている。なお、回転アンテナ20は、軸15aの上端に取付けられている。
【0034】
回転アンテナ20の下方には、軸15aが1回転するごとに、つまり、回転アンテナ20が1回転するごとに、1度オンされるスイッチ89が取付けられている。回転軸15aの回転は、ボックス88内の周知の機構を介して、スイッチ89に伝えられる。
【0035】
図5は、回転アンテナ20の平面図である。また、図6は、補助アンテナ21の、回転アンテナ20と重なった状態での平面図である。
【0036】
回転アンテナ20は、図5に示すように、中央部に、軸15aと接続するための孔20Xが形成されている。また、回転アンテナ20は、孔20Xから放射状に延びた部分20A〜20Cを備えている。孔20X付近の外周は、円弧状となっている。部分20Aの端部の、孔20Xからの距離Aは約60mmであり、部分20Bおよび20Cの端部の、孔20Xからの距離Bは約80mmである。なお、距離Aは、マグネトロン12の発振するマイクロ波の波長の約1/2の長さに相当する。
【0037】
補助アンテナ21は、回転アンテナ20に固定されることにより、回転アンテナ20と同じ周期で、回転される。また、補助アンテナ21の、部分20A付近には、マイクロ波の主な伝播方向(図6中の矢印E)に垂直な方向に長手方向を有するようなスリット状の孔21A〜21Fが形成されている。これにより、孔21A〜21Fから、強く、マイクロ波が放射される。また、孔21B,21D,21E,21Fからは、特に、強く、マイクロ波が放射される。なお、孔21B,21D,21E,21Fから効率良くマイクロ波を放射するために、これらの孔の長手方向の寸法は、55mm〜60mm程度とされる。
【0038】
電子レンジ1では、孔21A〜21Fが加熱室10内のドア3側に位置するように、回転アンテナ20および補助アンテナ21が停止させられている。これにより、これらのアンテナが停止されてマグネトロン12が運転される場合には、加熱室10の内の前の方に食品が載置されると、当該食品に集中的にマイクロ波が供給され、効率良く、加熱されることになる。なお、底板9を透明にする等して補助アンテナ21を加熱室10内から視認可能とし、補助アンテナ21の孔21A〜21Fが形成される付近(図6の領域F部分)に、このことを示す表示がなされることが好ましい。この場合の表示とは、文字で「パワーゾーン」等、集中的に加熱される旨を記載してもよいし、その部分の表面にうねりを設けて(つまり、断面が図6(B)に示すようにして)もよい。
【0039】
なお、補助アンテナ21には、領域Fに対して、当該補助アンテナ21について対象な位置に、孔21Xが形成されている。
【0040】
また、回転アンテナ20は、軸15aの上端に、当該軸15aの上端をかしめることにより、取付けられている。そして、かしめる部分の断面は、円形ではなく、多角形となっている。そして、図5に示すように、孔20Xの断面形状も八角形となっている。軸15aのかしめられている断面が多角形であるため、軸15aを回転させることにより回転アンテナ20を矢印W方向に回転させた場合、回転アンテナ20が軸15aに対して滑ることを回避できる。つまり、軸15aの回転角度を制御することにより、確実に、回転アンテナ20の回転角度を制御できることになる。
【0041】
2.赤外線センサの視野
赤外線センサ7は、吸収した赤外線をデータに変換するための赤外線検出素子(図11の赤外線検出素子7a)を、複数備えている。図7は、赤外線センサ7が、加熱室10の奥行き方向に一列に並んだ赤外線検出素子を備えている場合の、赤外線センサ7の視野を示す図である。なお、以下には、赤外線センサ7の視野とは、複数の赤外線検出素子の視野をまとめたものを意味する。また、図7では、加熱室10の内部を容易に視認できるように、外装部4およびドア3を省略し、かつ、本体枠5の中の、加熱室10の左側壁を構成する部分を省略している。また、図7では、加熱室10の、幅方向にx軸が、奥行き方向にy軸が、高さ方向にz軸が定義されている。これらの3軸は、互いに直交している。
【0042】
電子レンジ1では、赤外線センサ7に、y軸方向に並んだ8個の赤外線検出素子が備えられている。赤外線センサ7が8個の赤外線検出素子を備えることから、加熱室10の底面9a(底板9を含む)上では、実線で記載された、y軸方向に並ぶ8個の視野70aが、同時に投影される。なお、底面9aは、8個の視野70aによって、x方向の或る領域について、y方向の一方端から他方端までを覆われている。
【0043】
また、電子レンジ1には、赤外線センサ7を両矢印93方向に移動させることのできる部材(後述する図11の移動部72)が備えられている。両矢印93は、x−z平面上の回転方向を示している。
【0044】
赤外線センサ7が両矢印93方向に移動されることにより、底面9a上に投影される視野70aの位置が両矢印91方向(x軸方向:加熱室10の幅方向)に移動する。詳しくは、赤外線センサ7が両矢印93方向に移動されることにより、視野70aは、実線で示される視野70aの位置から、破線で示される視野70aの位置までの範囲内で、移動する。
【0045】
図8は、視野70aが底面9a上を移動する状態を模式的に示す図である。図8におけるx軸およびy軸は、図7と同様のものである。また、図8では、底面9a上に、x方向に14点、y軸方向に8点が取られている。そして、底面9a上の8個の赤外線検出素子の視野70aの位置をP(x,y)という座標形式を用いると、それぞれ、P(1,1)〜P(14,1),P(1,2)〜P(14,2),P(1,3)〜P(14,3),P(1,4)〜P(14,4),P(1,5)〜P(14,5),P(1,6)〜P(14,6),P(1,7)〜P(14,7),P(1,8)〜P(14,8)の範囲で変化する、と記載できる。
【0046】
一方、図9は、赤外線センサ7が、加熱室10の幅方向に一列に並んだ赤外線検出素子を備えている場合の、赤外線センサ7の視野を示す図である。なお、図9におけるx軸,y軸,z軸は、それぞれ、図7と同じ方向を示している。
【0047】
図9を参照して、この例では、赤外線センサ7が移動部72(後述する図11参照)によって適宜移動されると、底面9a上に投影される視野70aの位置が両矢印99方向(y軸方向:加熱室10の奥行き方向)に移動する。詳しくは、赤外線センサ7が移動されることにより、視野70aは、実線で示される視野70aの位置から、破線で示される視野70aの位置までの範囲内で、移動する。
【0048】
図10は、図9に示した赤外線センサ7を備える電子レンジ1において、視野70aが底面9a上を移動する状態を模式的に示す図である。図10におけるx軸およびy軸は、図9と同様のものである。また、図10では、底面9a上に、x方向に8点、y軸方向に14点が取られている。そして、この例では、底面9a上の8個の赤外線検出素子の視野70aの位置をP(x,y)という座標形式を用いると、それぞれ、P(1,1)〜P(1,14),P(2,1)〜P(2,14),P(3,1)〜P(3,14),P(4,1)〜P(4,14),P(5,1)〜P(5,14),P(6,1)〜P(6,14),P(7,1)〜P(7,14),P(8,1)〜P(8,14)の範囲で変化する、と記載できる。
【0049】
3.制御ブロック図
図11に、電子レンジ1の制御ブロック図を示す。電子レンジ1は、当該電子レンジ1の動作を全体的に制御する制御部30を備えている。制御部30は、マイクロコンピュータを含む。
【0050】
制御部30は、操作部60および赤外線センサ7から種々の情報を入力される。操作部60とは、操作パネル6で入力された情報を制御部30に送る部分である。そして、制御部30は、該入力された情報等に基づいて、アンテナモータ16,冷却ファンモータ31,表示部61,移動部72,マグネトロン12およびヒータ13の動作を制御する。冷却ファンモータ31は、マグネトロン12を冷却するためのファンを駆動するモータである。表示部61は、操作パネル6に備えられた表示装置である。
【0051】
ここで、赤外線センサ7から制御部30に入力される情報について、詳細に説明する。赤外線センサ7から制御部30へは、加熱室内の位置情報と、当該位置情報に対応した温度情報が、送られる。ここで、図9および図10を用いて説明した電子レンジ1について温度情報の送信の態様を説明する。赤外線センサ7は、加熱室10の幅方向の位置情報を、それぞれの赤外線検出素子に対応させて、1〜8のチャンネル(CH)から、出力する。CH1〜CH8は、それぞれ、加熱室10の幅方向の座標(1〜8)に対応する。そして、各CNから、奥行き方向の位置情報を、奥行き方向に対して定義された座標値(1〜14)の中から、出力する。つまり、加熱室10の底面9aは、赤外線センサ7から出力される位置情報に合わせると、図12に示すような座標が定義されていることになる。
【0052】
図12では、横軸にx軸が、縦軸にy軸が、定義されている。このx軸、y軸は、それぞれ、図9および図10の両軸に対応している。つまり、加熱室10の右から左へCH1〜8が定義されており、加熱室10の奥から手前にy座標1〜14が定義されている。また、図12では、CH3のy座標3,13、CH7のy座標13,3に、順に、点R1,R2,R3,R4が取られている。この4点は、加熱室10の手前の左右隅または奥の左右隅に位置しており、食品の載置されにくい位置であると言える。そして、この4点において検出される温度は、後述するように、マグネトロン12の加熱動作を開始させる際に、食品が載置されていない底面9aの温度(棚温度)として、利用される。具体的には、これらの4点での温度の中の、最大値と最小値を除いた2点の温度の平均が、棚温度とされる。
【0053】
また、制御部30は、後述するように、赤外線センサ7の検出出力に基づいて食品が載置されていると判断された位置の真下または近傍に、補助アンテナ21の領域Fを位置させた状態で、回転アンテナ20の回転を停止させる。回転アンテナ20の停止位置について、図13および図14を参照して、具体的に説明する。
【0054】
図13は、図12に定義された座標を、補助アンテナ21の向きに対応させて8個の領域に分けて示した図であり、図14は、補助アンテナ21を停止させる向きについて説明するための図である。
【0055】
まず、図14を参照して、本実施の形態では、補助アンテナ21の向きを、矢印100と定義する。矢印100は、補助アンテナ21の回転中心から、領域Fに向かう方向である。図14では、補助アンテナ21の回転中心から延びる8本の線(一点破線)が記載され、それぞれに、向き1〜向き8とされている。そして、図14に示す状態では、補助アンテナ21は、向き1の向きにある、といえる。向き1は、加熱室10の中心から前方に伸びる向きである。
【0056】
また、図14では、向き1から、反時計方向に、順に、向き2〜向き8が定義されている。たとえば、向き5は、加熱室10の中心から後方に伸びる向きであり、向き7は、加熱室10の中心から左方に伸びる向きである。
【0057】
さらに、図13を参照して、底面9a上の座標が、向き1〜向き8に対応する8個の領域に分かれている。向き1〜向き8のそれぞれに対応する座標領域を、表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1または図13を参照すると、たとえば食品の載置位置がCH6のy座標11であると判断された場合、この点は「向き1」の領域に属するため、電子レンジ1では、補助アンテナ21を向き1の向きで停止させて加熱動作が実行されるような処理がなされる。
【0060】
補助アンテナ21の向きが変わることにより、領域Fの位置も変化する。領域Fは、補助アンテナ21の他の位置と比べて、強力にマイクロ波を放射できる位置である。また、図13から理解されるように、底面9a上で、食品の存在位置が検出された場合、当該位置に、領域Fが位置するように、補助アンテナ21の停止時の向きが決定される。つまり、食品が載置されていると判断された位置を、強力に、集中的に、加熱するよう、補助アンテナ21の停止位置が決定される。なお、食品の載置位置は、必ずしも電子レンジ1側で検出される必要はない。たとえば、ユーザが、食品の載置位置を入力し、入力された載置位置に応じ、図13の関係に従って、補助アンテナ21の停止時の向きが決定されてもよい。
【0061】
また、制御部30は、カムスイッチ89のオン/オフの情報を入力される。これに従って、回転アンテナ20および補助アンテナ21の停止位置が制御される。この停止位置の制御について、具体的に説明する。
【0062】
補助アンテナ21を回転させている際、カムスイッチ89がオンされてから、上記の向き1〜向き8となる時間を、表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2を参照して、制御部30は、たとえば、電源周波数が60Hzの場合、補助アンテナ21を向き1で停止させるには、カムスイッチ89がオンされてから1.18秒後にアンテナモータ16を停止させて、補助アンテナ21の回転を停止させる。
【0065】
つまり、制御部30は、カムスイッチ89がオンされてから表2に従ったタイミングでアンテナモータ16を停止させることにより、補助アンテナ21の停止位置を向き1〜向き8のいずれかに制御できる。
【0066】
また、制御部30には、サーチ回数カウンタ部32が接続されている。サーチ回数カウンタ部32は、赤外線センサ7のサーチ回数をカウントするものである。赤外線センサ7のサーチ回数とは、加熱室10の底面9a全域の温度が検出された回数を言う。本実施の形態では、図7や図9を参照すると、視野70aが、実線で示された位置から破線で示された位置まで、または、破線で示された位置から実線で示された位置まで、移動された回数を言う。
【0067】
赤外線センサ7は、複数の赤外線検出素子7aを備えている。また、赤外線センサ7は、各赤外線検出素子7aの、ロット毎の検出誤差を補正するためのデータを記憶するメモリ7xを備えている。制御部30は、初めて電力を投入された時点で、メモリ7xに記憶されている補正データを、赤外線センサ7とは別体で備えられている不揮発性メモリ33に記憶させる。これにより、メモリ7xには、赤外線センサ7が電子レンジ1の中の比較的高温となる部位に取付けられても、メモリ7xを構成する部品には、当該部位に対応するまでの耐熱性は要求されない。つまり、メモリ7xを、耐熱性の低い、安価なものとすることができる。したがって、制御部30が、メモリ7xの記憶内容を、不揮発性メモリ33に移すことにより、電子レンジ1のコストを低減できる。
【0068】
4.電子レンジの動作
1) 一般的な動作
次に、電子レンジ1において、電力が投入されてから実行される処理を、フローチャートを参照しつつ、説明する。図15および図16は、電子レンジにおいて、電源投入時の処理のフローチャートである。
【0069】
まず、図15および図16を参照して、電子レンジ1に対して電源から電力が投入されると、S1で、初期設定がなされる。なお、電子レンジ1に対して初めて電力が投入された場合、S1において、前述のように、メモリ7xの記憶内容が不揮発性メモリ33に記憶される。なお、電子レンジ1では、操作パネル6上の所定のキーが操作されるか、閉状態にあるドア3が開状態とされることにより、電力の投入が開始される。
【0070】
次に、S2で、オートパワーオフタイマ(Toff)のカウント値がリセットされる。オートパワーオフタイマとは、電子レンジ1に対して何ら操作がなされず、かつ、電子レンジ1が何ら動作を行なわない状態が継続した期間カウントダウンされるタイマである。当該タイマがカウントダウンされ、カウント値が0となると、自動的に、電子レンジ1への電力の供給を停止される。
【0071】
次に、S3では、Toffのカウントダウンが開始される。
次に、S4では、Toffのカウント値が0であるか否かが判断される。0であると判断されると、S22で、電子レンジ1に対する電源からの電力の投入をオフし、処理を終了する。一方、まだ0ではないと判断されると、S5に進む。
【0072】
S5では、ドア3が開状態であるか否かが判断され、開状態であると判断されると、処理がS2に戻される。つまり、電子レンジ1において、少なくともドア3が開状態とされている間は、Toffは、リセットされる。一方、閉状態であると判断されれば、処理は、S6に進められる。
【0073】
S6では、操作パネル6上のキーのいずれかに対して、操作がなされたか否かが判断され、操作がなされたと判断されると、S7でToffがリセットされた後、処理は、S8に進められる。一方、操作がなされていないと判断されると、処理がS4に戻される。
【0074】
なお、以下に記載する各種のキーは、操作パネル6上に設けられ、当該キーに対する操作がなされたとこは、操作部60から制御部30に伝えられる。
【0075】
S8では、操作されたキーが「あたためキー」であったか否かが判断される。「あたためキー」とは、一般的な食品を加熱させる際に操作されるキーであり、電子レンジ1に、食品の状態を検出させることにより、自動的に、加熱動作の終了時期を決定させる調理を実行させるためのキーである。「あたためキー」であったと判断されると、処理がS9に進められ、他のキーであったと判断されると、処理がS12に進められる。
【0076】
S9では、「あたためキー」が操作された後、他のキーの操作によりさらなる加熱条件の設定があったか否かが判断される。さらなる加熱条件の設定があったと判断されると、処理がS11に進められ、当該他のキーに応じた処理がなされた後、処理がS2に戻される。一方、さらなる加熱条件の設定がなく、加熱を開始させる操作がなされたと判断すると、処理がS10に進められる。
【0077】
S10では、自動あたためコースに対応した処理が実行された後、処理がS2に戻される。自動あたためコースに対応した処理については、図17および図18を参照して、後述する。
【0078】
一方、S12では、操作されたキーが「スピードキー」であったか否かが判断される。「スピードキー」とは、少量の食品を、急速に加熱するために操作されるキーである。「スピードキー」であったと判断されると、処理がS13に進められ、他のキーであったと判断されると、処理がS14に進められる。
【0079】
S13では、スピードあたためコースに対応した処理が実行された後、処理がS2に戻される。スピードあたためコースに対応した処理については、図19を参照して、後述する。
【0080】
一方、S14では、操作されたキーが「取消キー」であったか否かが判断される。「取消キー」であったと判断されると、処理がS15で、キー操作によりそれまで設定された内容が取消され、処理がS2に戻される。一方、他のキーであったと判断されると、処理がS16に進められる。
【0081】
S16では、操作されたキーが「お好み温度キー」であったか否かが判断される。「お好み温度キー」とは、食品を、入力された温度まで加熱するために操作されるキーである。「お好み温度キー」であったと判断されると、処理がS17に進められ、他のキーであったと判断されると、処理がS18に進められる。
【0082】
S18では、操作されたキーが「根菜キー」であったか否かが判断される。「根菜キー」とは、じゃがいも等の根菜を適切に加熱するために操作されるキーである。「根菜キー」であったと判断されると、処理がS19に進められ、他のキーであったと判断されると、処理がS20に進められる。
【0083】
S20では、操作されたキーがS18までに判断対象となったキーとは異なる他のキーであったか否かが判断される。他のキーであったと判断されると、処理がS21に進められ、当該他のキーに相当する処理が実行された後、処理がS2に戻される。一方、他のキーとして挙げられるキーのいずれでもなかったと判断されると、処理がS4に戻される。
【0084】
S17では、お好み温度コースに対応した処理が実行された後、処理がS2に戻される。また、S19では、根菜コースに対応した処理が実行された後、処理がS2に戻される。お好み温度コース、根菜コースのそれぞれに対応した処理については、図20および図21を参照して、後述する。
【0085】
2) 自動あたためコースにおける動作
以下に、自動あたためコースに対応した処理について説明する。図17は、図15の自動あたためコース処理(S10)のサブルーチンのフローチャートである。
【0086】
まず、S1001で、マグネトロン12による加熱動作を開始させた後、加熱開始時の温度サーチとして、底面9a上の全体(CH1〜CH8のy座標1〜14)の温度検出がなされる。なお、ここでは、回転アンテナ20および補助アンテナ21を継続して回転させながら、マグネトロン12による加熱動作が実行されている。
【0087】
次に、S1002で、S1001で検出出力から、図12のR1〜R4の4点の温度の中で、最高温度と最低温度を除いた2点の温度の平均を、棚温度T0 と決定する。
【0088】
次に、S1003で、T0 が40℃以上であるか否かが判断され、40℃以上ではないと判断されると、処理は、S1004の後S1005に進められ、40℃以上であると判断されると、処理は、直接S1005に進められる。
【0089】
S1004では、赤外線センサ7の出力値を補正する処理がなされた後、処理がS1005に進められる。この補正とは、具体的には、赤外線センサ7の検出温度から、棚温度によって高く検出されたと考えられる温度だけ差し引くような補正である。赤外線センサ7の赤外線検出素子の視野70aには、食品と底面9aとが同時に含まれるためである。つまり、この補正により、食品の温度として検出される温度が、加熱室10自体の温度に影響を受けることを、極力回避できる。
【0090】
なお、食品の温度として検出される温度に、加熱室10自体の温度の影響を与えないための別の方法としては、棚温度T0 を温度検出の基準とすること、つまり、赤外線センサ7に加熱室10内の各検出場所の温度として検出温度の棚温度との差を出力させることも考えられる。
【0091】
S1005では、S1001における検出温度から、最低温度Sminが抽出される。
【0092】
次に、S1006で、Sminが(T0 −4℃)を下回っているか否かが判断される。下回っていると判断されると処理がS1009に進められ、(T0 −4℃)以上であると判断されると処理がS1007に進められる。
【0093】
S1007では、底面9a上の最高温度と最低温度との温度差が抽出され、S1008で当該温度差が5℃以上であるか否かが判断される。S1007およびS1008の処理は、温度差が5℃以上であると判断されるまで継続される。そして、温度差が5℃以上であると判断されると、処理は、S1011に進められる。
【0094】
一方、S1009では、異なるタイプの食材が、加熱室10内に配置されているか否かが判断される(異食材判別処理)。ここで言う食材のタイプとしては、冷凍食材、冷蔵食材、常温食材を挙げることができる。そして、S1009では、これらのタイプの中の複数のタイプの食材が加熱室10内に同時に配置されているか否かが、底面9a上の温度分布から判断される。そして、異なるタイプの食材が同時に加熱室10内にあると判断されると、処理はS1016に進められ、ないと判断されると、S1010に処理が進められる。
【0095】
S1010,S1016では、それぞれ、アンテナ制御処理が実行された後、S1011,S1017に処理が進められる。ここで、アンテナ制御処理の詳細な内容を、図18を参照して、説明する。
【0096】
図18は、図17のアンテナ制御処理(S1010,S1016)のサブルーチンのフローチャートである。
【0097】
アンテナ制御処理では、まず、S901で、S1005(図17参照)と同様に、Sminの抽出がなされる。
【0098】
次に、現在実行されている処理が、スピードあたためコース(図19参照)であるか否かが判断され、そうであると判断されるとS912に処理が進められ、そうではないと判断されると、S903に処理が進められる。
【0099】
S903では、Sminが5℃未満であるか否かが判断され、そうであると判断されると、S904に処理が進められ、そうではないと判断されると、S909に処理が進められる。
【0100】
S904では、Sminが検出された座標(Pmin:チャンネルおよびy座標の値)が制御部30内に記憶される。
【0101】
次に、S905では、或る時間内の、Pminにおける温度上昇値(検出温度の温度差:△V)が検出される。この場合の或る時間とは、たとえば、加熱室10の底面9a全域の温度がある回数検出される期間を言い、サーチ回数カウンタ部32の検出出力に基づいて計測できる。或る時間について、より具体的に例示すると、底面9a全域の温度が3回検出される、5秒程度を挙げることができる。
【0102】
次に、S906で、△Vが15℃以上であるか否かの判断がなされる。15℃以上であると判断されると、S907に処理が進められ、そうではないと判断されると、リターンする。
【0103】
S907では、Pminの位置に対応した向き(表1参照)で補助アンテナ21を停止させ、S908で、S907での向きで補助アンテナ21を停止させた状態と補助アンテナ21の回転を再開させる状態とを、5秒ごとに入れ替えながら、マグネトロン12による加熱動作を継続させて、リターンする。これにより、補助アンテナ21を停止させて加熱室10内の低温の食品を集中的に加熱しつつも、補助アンテナ21を回転させて加熱室10全体をまんべんなく加熱できる。なお、Pminが複数有る場合には、当該複数のPminの中央位置を改めてPminとして、処理が続行される。
【0104】
また、ここで、状態の入れ替えが、5秒、という、底面9a全域の温度検出が整数回実行されるタイミングとされている。つまり、電子レンジ1において、部材の制御のタイミングが、赤外線センサ7が加熱室10全域の温度検出を完了するタイミングに合わせられている。これにより、サーチ回数カウンタ部32で1回とカウントされる期間中、つまり、図7または図9において、視野70aが破線から実線へまたは実線から破線へと一度だけ移動される期間中、加熱室10内の食品に対する加熱条件が変更されることを回避できる。したがって、サーチ回数カウンタ部32で1回とカウントされる期間中は、加熱室10の全域の温度検出が、同じ条件で実行される、と考えられる。なお、図7または図9において、視野70aが、破線から実線へまたは実線から破線へと一度だけ移動される態様を、赤外線センサ7による加熱室10全域のサーチパターンと言う。
【0105】
つまり、本実施の形態では、加熱動作に関連のある部材の動作の制御態様変更のタイミングは、赤外線センサ7による加熱室10全域のサーチパターンが終了または開始されるタイミングに合わせられることになる。加熱動作に関連のある部材には、マグネトロン12、回転アンテナ20、および、補助アンテナ21が含まれる。
【0106】
なお、S906で、△Vが15℃未満であると判断されると、補助アンテナ21が回転されたまま、リターンする。これは、△Vが15℃未満であると判断された場合、食品が比較的大きいものと考えられ、補助アンテナ21の向きを固定して局所的な加熱を行なう必要がないからである。
【0107】
一方、S909では、底面9aにおける最大温度Smaxを抽出する処理がなされる。
【0108】
次に、S910で、底面9aにおいて、Smaxから7℃以内の温度が検出された位置が有ったか否かが判断される。このような位置がなかったと判断されると、リターンし、有ったと判断されると、処理がS911に進められる。なお、ここでの判断では、Smaxが検出された位置のCHに隣接するCHは、対象外とされる。
【0109】
S911では、Smaxから7℃以内の温度が検出された位置の中での最小温度を抽出し、当該最低温度が検出された位置をPminとして、S907に処理が進められる。
【0110】
S909〜S911の処理により、加熱室10内に複数の食品が載置された場合、2番目以降に加熱されやすい食品の位置がS910で検出され、その中で、加熱の度合いが低いものが、S911,S907,S908の処理で、集中的に加熱されることになる。なお、S910での判断対象が、Smaxから7℃以内、とされているのは、棚温度を食品の載置されている位置の温度に含めないためである。Smaxから7℃を越えて温度が離れていれば、その温度は棚温度である可能性が高いためである。なお、7℃は一例であり、このような思想に基づくのであれば、判断対象とする温度範囲は、電子レンジ1の形状等によって変更されてもよい。
【0111】
一方、S912では、S901で抽出したSminが5℃未満であるか否か判断し、5℃未満であると判断すると、S913に処理が進められ、5℃以上であると判断すると、S917に処理が進められる。
【0112】
S913では、Sminの検出された位置の座標が制御部30に記憶される。次に、S914で、加熱室10内での検出温度について、CH1〜CH8が存在したが、各CHのy座標1〜14で少なくとも一度は5℃以下の温度が検出された、というCHの数がチェックされる。
【0113】
そして、S915で、S914でチェックしたCHの数が1以上3以下であるか否かが判断される。そして、この範囲内であれば、S916に処理が進められる。一方、この範囲外であれば、そのままリターンする。
【0114】
S916では、S907と同様に、Pminの位置に対応した向き(表1参照)で補助アンテナ21を停止させ、さらにS920で、S908と同様に、補助アンテナ21を停止させた状態(S916)と補助アンテナ21の回転を再開させる状態とを、5秒ごとに入れ替えながら、マグネトロン12による加熱動作を継続させて、リターンする。
【0115】
つまり、S915、S916およびS920で実行される、加熱室10内の特定の場所の集中的な加熱を含む加熱処理は、S913〜916およびS920が実行される際のSminと同様の温度である5℃以下の温度が、1以上3以下のCHでのみ検出された場合にのみ、実行されることにある。
【0116】
一方、S917では、その時点で検出された温度と、S1001(図17参照)で検出された加熱開始時の検出温度とを比較することにより、最も温度上昇の大きい場所の座標Pmax、および、上昇温度△Vmaxが抽出される。
【0117】
次に、S918で、△Vmaxが7℃よりも小さいか否かが判断される。7℃よりも小さい場合には、S919に処理が進められる。一方、△Vmaxが7℃以上であると判断されると、そのままリターンする。
【0118】
S919では、S917と同様に、検出された温度が比較されることにより、各場所の温度上昇値が算出され、当該温度上昇値が7℃以上となった場所の存在するCH数が算出される。ここでは、たとえば、CH3とCH4とに7℃以上の温度上昇を示した場所が存在する場合は、CH数として、「2」が算出されるのである。
【0119】
次に、S915で、S919で算出されたCH数が1以上3以下であるか否かの判断がなされ、判断結果に応じて、そのままリターンしたり、S916に処理が進められたりする。
【0120】
再度、図17を参照して、S1017では、Sminが11℃以下であるか否かが判断され、そうであると判断されるとS1018に処理が進められ、そうではないと判断されるとS1011に処理が進められる。
【0121】
S1018では、Sminが5℃以上であるか否かが判断され、そうであると判断されるとS1019に処理が進められ、そうではないと判断されるとS1022に処理が進められる。
【0122】
S1019では、Sminが20℃に到達するのを待って、S1020に処理が進められる。
【0123】
S1020では、サーチ回数カウンタ部32のカウント値がチェックされ、S1021で、当該カウント値が11以上であるか否かが判断される。11以上であれば、S1022に処理が進められ、11未満であれば、S1011に処理が進められる。
【0124】
S1022では、その時点での加熱室10全域の温度の検出結果において、S1001における温度の検出結果から15℃以上温度が上昇した位置があるか否かが判断される。そのような位置がある場合には、S1011に処理が進められ、そのような位置がない場合には、S1023に処理が進められる。
【0125】
S1023では、Sminが20℃に到達したと判断されるのを待って、処理がS1011に進められる。
【0126】
S1011では、底面9a上のいずれかの位置で、75℃に到達した位置があると判断されるのを待って、処理が、S1012に進められる。ここで、75℃とは、自動あたためコースにおいて、加熱を終了させる温度である。つまり、このコースでは、食品は、75℃まで加熱される。
【0127】
S1012では、S1011で検出された位置とは他の位置で、70℃以上の温度が検出された位置があるか否かが判断され、そのような位置が存在すれば、S1013に処理が進められる。一方、そのような位置が存在しなければ、S1014に処理が進められる。
【0128】
S1013では、S1012で検出された位置で検出された温度が75℃に到達したと判断されるのを待って、処理が、S1014に進められる。
【0129】
S1014では、マグネトロン12による加熱動作が終了され、S1015で、補助アンテナ21の回転を「向き1」(リセット位置)で停止させて、リターンする。
【0130】
以上説明したS1011〜S1014の処理により、加熱室10内のある位置の温度が75℃に到達し、当該位置に配置された食品の加熱が完了したと判断された際、他に70℃以上の温度が検出されている位置があれば、その位置の温度が75℃以上となるのを待って、加熱動作を停止させる。これにより、加熱室10内に複数の食品が配置されても、加熱動作の停止時期を、すべての食品の加熱が完了するよう、適切に、決定できる。
【0131】
また、S1012の処理では、S1011で検出された位置以外のすべての位置を対象としていた。しかしながら、S1011で検出された位置と同じ食品について処理対象としないように、S1011で検出された位置についてのCHと同じCHの位置は、S1012の処理の対象外としてもよい。
【0132】
3) スピードあたためコースにおける動作
以下に、スピードあたためコースに対応した処理について説明する。図19は、図15のスピードあたためコース処理(S13)のサブルーチンのフローチャートである。
【0133】
S131では、マグネトロン12に、最大出力で加熱動作を開始させ、補助アンテナ21が回転され、かつ、底面9a全域の温度検出が開始される。次に、S132では、S1002(図17参照)と同様に棚温度T0 が決定される。
【0134】
次に、S133で、T0 が40℃以下であるか否かが判断され、そうであると判断されると、S135に処理が進められる。一方、そうではないと判断されると、S134で、S1004(図17参照)と同様に赤外線センサ7の検出出力に対して補正がなされる処理が行なわれた後、S135に処理が進められる。
【0135】
S135では、図18を用いて説明したアンテナ制御処理が実行される。
なお、アンテナ制御処理が、スピードあたためコースのサブルーチンとして実行された際には、S912〜S920の処理により、スピードあたためコースでは、食品が存在すると考えられる領域の大きさ(S914またはS919で算出されるCH数)に応じて、食品が載置されているとされる場所への集中的な加熱を含む加熱制御(S920)が実行されるか否かが決定される(S915)。
【0136】
次に、S136で、いずれかの位置の温度が75℃となるのを待って、処理がS137に進められる。
【0137】
S137では、マグネトロン12による加熱動作を停止させる処理がなされ、次に、S138では、補助アンテナ21の回転をリセット位置で停止させる処理がなされ、リターンする。
【0138】
4) お好み温度コースにおける動作
以下に、お好み温度コースに対応した処理について説明する。図20は、図16のお好み温度コース処理(S17)のサブルーチンのフローチャートである。
【0139】
まず、S1701で、最大出力で加熱動作が開始され、補助アンテナ21が回転され、かつ、底面9a全域の温度検出が開始される。次に、S1702では、S1002(図17参照)と同様に棚温度T0 が決定される。
【0140】
次に、S1703で、T0 が40℃未満であるか否かが判断され、そうであると判断されると、S1705に処理が進められる。一方、そうではないと判断されると、S1704で、S1004(図17参照)と同様に赤外線センサ7の検出出力に対して補正がなされる処理が行なわれた後、S1705に処理が進められる。
【0141】
S1705では、ユーザが設定した温度(設定温度:Sset)を制御部30に記憶する処理がなされる。
【0142】
次に、S1706では、Ssetが10℃以下であるか否かが判断される。10℃以下であると判断されると、S1707に処理が進められ、10℃を越えると判断されると、S1714に処理が進められる。
【0143】
S1707では、マグネトロン12の加熱出力を60Wと変更して、加熱室10における温度検出を続行する。なお、マグネトロン12の加熱出力が60Wに変更されるタイミングは、上記した加熱室10全域のサーチパターンが開始されるタイミングと合わさせることが好ましい。また、60Wという加熱出力は、マグネトロン12の最大出力と比較すると、かなり低い出力である。つまり、たとえば冷凍食品等を、10℃以下の温度にまで上昇させて、加熱動作を終了させるような場合には、電子レンジ1では、マグネトロン12の出力を低下させて、加熱動作が実行される。
【0144】
次に、S1708では、加熱時間の最大時間Tmaxが30分と設定される。これにより、赤外線センサ7によって、加熱室10内でSsetに到達したものが検出されなくとも、30分が経過した時点で、加熱動作が終了される。
【0145】
次に、S1709で、赤外線センサ7が、視野70aが、S1701で最低温度Sminが検出された場所に位置するように、固定される。
【0146】
次に、S1710では、図18を用いて説明したアンテナ制御処理が実行される。
【0147】
次に、S1711では、SminがSsetに到達したと判断されるのを待って、処理がS1712に進められる。なお、SminがSsetに到達する前に、加熱開始からTmaxに設定した時間が経過した場合には、SminがSsetに到達するのを待たずに、S1712に処理が進められる。
【0148】
S1713では、補助アンテナ21の回転が停止され、リターンする。
一方、S1714では、Ssetが45℃以下であるか否かが判断される。45℃以下であると判断されると、S1715に処理が進められ、45℃を越えると判断されると、S1716に処理が進められる。
【0149】
S1715では、マグネトロン12の出力が200Wに変更され、上記のTmaxが7分と設定され、かつ、加熱室10全域のサーチパターンが開始され、S1722に処理が進められる。なお、S1715における出力の変更、Tmaxの設定は、サーチパターンの開始のタイミングに合わせて、実行されるのが好ましい。
【0150】
一方、S1716では、Ssetが90℃以下であるか否かが判断され、90°以下であると判断されるとS1718に処理が進められる。一方、90℃を越えると判断されると、S1725でエラーである旨を表示する処理がなされた後、リターンする。
【0151】
S1718では、マグネトロン12による最大出力での加熱動作が継続され、かつ、加熱室10全域のサーチパターンが開始される。
【0152】
次に、S1719では、Ssetが80℃以下であるか否かの判断がなされる。80℃以下であると判断されるとS1720に処理が進められ、Tmaxが7分と設定されて、S1722に処理が進められる。
【0153】
一方、S1721では、Tmaxが11分と設定されて、S1722に処理が進められる。
【0154】
S1722では、SmaxがSsetに到達したと判断されるのを待って、S1723に処理が進められる。
【0155】
S1723では、マグネトロン12による加熱動作が停止された後、補助アンテナ21の回転をリセット位置で停止させて、リターンする。
【0156】
以上説明したお好み温度コース処理において、S1706でSsetが10℃以下であると判断されると、赤外線センサ7の視野70aは、Sminの検出された位置を含むように固定される。このような処理がなされるのは、Sminが、常温よりも低く、かつ、棚温度に対して十分低温であると考えられるため、加熱期間中に視野70aを移動させると、Sminに大きく誤差が含まれると考えられるからである。つまり、このような処理により、電子レンジ1において、赤外線センサ7の検出出力の精度が低下することを回避していることになる。
【0157】
5) 根菜コースにおける動作
以下に、根菜コースに対応した処理について説明する。図21は、図16の根菜コース処理(S19)のサブルーチンのフローチャートである。
【0158】
まず、S191では、マグネトロン12に、最大出力で加熱動作を開始させ、補助アンテナ21が回転され、かつ、底面9a全域の温度検出が開始される。次に、S192では、S1002(図17参照)と同様に棚温度T0 が決定される。
【0159】
次に、S193で、T0 が40℃未満であるか否かが判断され、そうであると判断されると、S195に処理が進められる。一方、そうではないと判断されると、S194で、S1004(図17参照)と同様に赤外線センサ7の検出出力に対して補正がなされる処理が行なわれた後、S195に処理が進められる。
【0160】
S195では、T0 が50℃以上の位置があったか否かの判断がなされ、そのような位置があったと判断されると、S196に処理が進められ、そのような位置を、今回の加熱調理における温度検出の対象から外すよう設定された後、処理がS197に進められる。一方、そのような位置がなかったと判断されると、そのまま、S197に処理が進められる。
【0161】
S197では、図18を用いて説明したアンテナ制御処理が実行される。
次に、S198で、根菜シーケンスが実行された後、リターンする。
【0162】
根菜シーケンスとは、加熱動作を続行しながら、以下の処理を行なうシーケンスである。まず、加熱開始時から、加熱室10内のいずれかの位置が80℃に到達するまでの時間T80が検出される。そして、加熱室10内のいずれかの位置が80℃に到達した後、T80に所定の係数をかけた時間だけ、さらに加熱動作を実行して、その後、加熱動作、補助アンテナ21の回転を停止させる。なお、根菜シーケンスにおいて、いずれの位置においても80℃に到達しないと判断された場合には、最長5分間で、加熱動作は停止される。
【0163】
以上説明した根菜コース処理では、S195でT0 が50℃であると判断された位置は、今回の温度検出の対象外とされる。これにより、直前に、高温の食品が載置されていた場所等、予め高温となっていた場所を、現在も高温の食品が載置されていると誤って判断されることを回避できる。
【0164】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0165】
また、今回の各コースにおいて開示された技術は、単独でも、組合わされても、電子レンジ1に適用することが可能である。
【0166】
また、赤外線センサ7の備える赤外線検出素子の数は、必ずしも8でなくてもよく、それ以外の数であってもよいし、単数であってもよい。なお、必要であれば、赤外線センサ7を、両矢印99等の一方向だけでなく、二次元に、つまり、互いに交わる二方向に、移動すればよい。
【0167】
また、本実施の形態では、補助アンテナ21の向きを、加熱室10内で集中して加熱したい食品の載置場所に応じて、向き1〜向き8のいずれかに停止させる場合があった。なお、集中して加熱したい食品の載置場所は、赤外線センサ7の検出出力に基づいて決定されていた。ただし、集中して加熱したい食品の載置場所は、電子レンジ1において予め定められていても良いし、ユーザが、調理毎に、操作パネル6の所定のキーを操作してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態である電子レンジの斜視図である。
【図2】 図1の電子レンジのドアが開状態とされた状態の斜視図である。
【図3】 図1の電子レンジの外装部を外した状態の斜視図である。
【図4】 図1の電子レンジのIV−IV線に沿う矢視断面図である。
【図5】 図1に示す電子レンジの、回転アンテナの平面図である。
【図6】 図1に示す電子レンジの、補助アンテナの、回転アンテナと重なった状態での平面図である。
【図7】 図1の電子レンジにおける赤外線センサの視野の一例を示す図である。
【図8】 図7の例において、赤外線検出素子の視野が加熱室の底面上を移動する状態を模式的に示す図である。
【図9】 図1の電子レンジにおける赤外線センサの視野の別の例を示す図である。
【図10】 図9の例において、赤外線検出素子の視野が加熱室の底面上を移動する状態を模式的に示す図である。
【図11】 図1の電子レンジの制御ブロック図である。
【図12】 図1の電子レンジにおいて、赤外線センサから制御部に出力される位置情報に対応して、加熱室の底面に定義されている座標を示す図である。
【図13】 図12に定義された座標を、補助アンテナの向きに対応させて8個の領域に分けて示した図である。
【図14】 図1の電子レンジにおいて、補助アンテナを停止させる向きについて説明するための図である。
【図15】 図1の電子レンジにおいて、電源投入時の処理のフローチャートである。
【図16】 図1の電子レンジにおいて、電源投入時の処理のフローチャートである。
【図17】 図15の自動あたためコース処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図18】 図17のアンテナ制御処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図19】 図15のスピードあたためコース処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図20】 図16のお好み温度コース処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図21】 図16の根菜コース処理のサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
1 電子レンジ、6 操作パネル、7 赤外線センサ、7a 赤外線検出素子、9 底板、9a 底面、10 加熱室、12 マグネトロン、20 回転アンテナ、21 補助アンテナ、30 制御部、40 検出経路部材、70a 視野。
Claims (1)
- 食品を収容する加熱室を内部に設けた本体枠と、前記加熱室の底面に設けた底板と、前記食品を加熱するためにマイクロ波を発振するマグネトロンと、該マグネトロンと前記本体枠の底部とを接続する導波管と、前記底板と前記本体枠の底部との間に配置され、前記マグネトロンの発振したマイクロ波を、導波管を介して前記加熱室内に放射するアンテナと、該アンテナを回転させるアンテナモータと、前記加熱室内の複数の場所の温度を検出する赤外線センサと、該赤外線センサの検知結果に応じて前記マグネトロン及び前記アンテナモータの動作を制御する制御部と、を備え、
前記アンテナは、マイクロ波が他の部分に比べて強く放射される領域を有し、
前記制御部は、前記アンテナを回転させて前記マグネトロンで発振したマイクロ波を前記加熱室内に拡散しつつ供給するために、前記マグネトロンと前記アンテナモータとを駆動させる第1のモードと、前記加熱室内の特定の場所に前記マグネトロンで発振したマイクロ波を集中的に供給するために、前記特定の場所に対応する位置に前記アンテナのマイクロ波が強く放射される前記領域を位置させるように前記アンテナモータの動作を停止させて前記アンテナの回転を停止させる第2のモードと、が実行可能である電子レンジであって、
前記制御部は、
前記第1のモードを実行して加熱を開始させるとともに、
前記赤外線センサで加熱開始時に検出した温度のうち最低温度を検出した場所における所定時間の温度上昇値を検出して一定値と比較した結果、前記温度上昇値が一定値未満なら前記第1のモードの実行を継続し、また前記温度上昇値が一定値未満でないなら、低温部分を集中的に加熱しつつ前記加熱室内全体も加熱するために、前記第1のモードと前記最低温度を検出した場所を前記特定の場所として行なう前記第2のモードとを交互に実行することを特徴とする電子レンジ。
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