JP3822666B2 - 三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法 - Google Patents

三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は漂白剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、脱臭剤、鮮度保持剤等に利用できる三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
三塩基性次亜塩素酸マグネシウムは次亜塩素酸塩の一種であり、工業化学雑誌
56,834−836(1953).に、
Mg(OCl)(OH)・Mg(OH)2 ・H2
の化学式で示されている。その有効塩素含有量は、41.92%である。
以下、本明細書において、三塩基性次亜塩素酸マグネシウムは、この化学式と有効塩素含有量を有する複塩を示す。
三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法に関しては、例えば、工業化学雑誌 56,917(1953).の緒論の部分にそれまでに報告された製造方法がまとめて記載されている。
これによると、
酸化マグネシウムと塩素を反応させる方法
硫酸マグネシウムと次亜塩素酸カルシウムを反応させる方法
塩化マグネシウム水溶液を電気分解する方法
等が記載されている
また、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの含有水に塩化マグネシウム水溶液を加える方法についても報告されている。〔例えば、生産研究,94−96(1956)、スイス特許第75045号公報[Chem.Abst.,11,3396(1917)]〕
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
先行文献の中で、特開平4−108602号公報には、塩化マグネシウムと次亜塩素酸ナトリウムとを含む水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して加えることにより、三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを収率よく得られる方法が記載されている。ここで、収率は有効塩素を基準にして求めた値である。以下、本明細書においては、同様にして求めた値を収率として使用する。
他方、収率よく三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを得るために、次亜塩素酸イオンの供給源として、塩素を使用したいという強い要望が存在している。
しかしながら、次亜塩素酸イオンの供給源として、塩素を使用し、酸化マグネシウムもしくは、水酸化マグネシウムの水性混合物から、塩基性次亜塩素酸マグネシウムを合成する方法が提案されているが、有効塩素含有量が三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの理論量に比して低く、収率も満足すべきものではない。
例えば、英国特許第142081号公報及び、米国特許第1400167号公報には、有効塩素含有量34.2%、収率71%が記載されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、次亜塩素酸イオンの供給源として、塩素を使用し、理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを収率よく得るために鋭意研究を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、水酸化ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウム水溶液及び塩素を少量ずつ加えることにより、理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを収率よく製造できることを見いだした。
【0005】
【発明の構成】
本発明は次の構成上の特徴を有する。
水酸化ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウム水溶液及び塩素を少量ずつ加えることを特徴とする三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法に関する。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書で、理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムとは、有効塩素含有量が、35〜44%、好ましくは、37〜43%、より好ましくは、39〜42%のものを意味する。
ここで、有効塩素含有量が、化学式からの理論量41.92%からずれている場合の主な原因は、三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを構成する塩素以外の元素(マグネシウム、酸素及び、水素)の多少にある。
したがって、理論量を包含する上記の有効塩素含有量の範囲内の組成を有する複塩もしくはその混合物が、本発明で製造する理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムである。なお、この有効塩素含有量の範囲は、乾燥後の複塩もしくはその混合物について示したものである。したがって、反応後のスラリー状態のものや、ろ物である等の理由で、水分の存在により、35%より少ない有効塩素含有量を示す混合物であっても、ろ物乾燥後の複塩もしくはその混合物の有効塩素含有量が、上記の有効塩素含有量の範囲内にある時には、このスラリー状態のものや、ろ物は、本発明により製造されたものであることは当然である。
さらに、水酸化マグネシウム、これを加えるのに等しい出発原料の組み合わせ及び、酸化マグネシウムの三者を除いた化合物や組成物を反応工程もしくは分離工程に添加して得られる、添加した化合物や組成物自身もしくはこれらに由来する化合物や組成物を夾雑物として含み、乾燥後の有効塩素含有量が35%より少ない複塩含有物であっても、夾雑物を除いて計算した有効塩素含有量が上記の有効塩素含有量の範囲内にある時には、この複塩含有物も本発明により製造されたものであることは当然である。
三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを製造するにあたり、本発明で使用する出発原料は塩素、マグネシウム塩、アルカリ金属水酸化物及び、反応媒体の水である。
塩素は、液状のものを滴下することもできるが、通常、ガス状でアルカリ金属水酸化物水溶液に吹き込むかもしくは、吹きかける。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを1種類または、2種類組み合わせて使用できる。好ましくは、水酸化ナトリウムを使用する。
マグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムまたはそれらの水和物を、1種類または2種類以上組み合わせて使用できる。また、酸化マグネシウムもしくは、水酸化マグネシウムと塩酸、硫酸及び/または硝酸等の無機酸を反応させて調製し使用することも可能である。
好ましくは、塩化マグネシウムもしくは、その水和物を使用する。
【0007】
出発原料、塩素、塩化マグネシウム及び、水酸化ナトリウムと、生成物、三塩基性次亜塩素酸マグネシウムとは、次の反応式の関係にある。
Cl2 +2MgCl2 +5NaOH →
Mg(OCl)(OH)・Mg(OH)2 ・H2 O+5NaCl
したがって、出発原料の使用量は、塩素1モルあたり、塩化マグネシウム1.85〜2.15モル、好ましくは、1.95〜2.10モル、より好ましくは、2.00〜2.05モルであり、水酸化ナトリウムは、4.7〜5.3モル、好ましくは、4.85〜5.15モル、より好ましくは、5.0〜5.1モルである。
水の使用量は、塩素1gあたり、7〜40g、好ましくは、10〜35gを使用する。水の使用量が、7gより少ないと反応混合物の攪拌の負担が増加し、水の使用量が、40gより多いと反応混合物から目的物を単離する時の負担が増加するので、いずれも操作上好ましくない。
上記の水使用量となるように、10〜35%水酸化ナトリウム水溶液及び、20〜35%塩化マグネシウム水溶液を組み合わせて、好ましく使用できる。
反応温度は、0〜60℃、好ましくは、5〜50℃、より好ましくは、10〜45℃である。
【0008】
反応時間は、上記の反応温度を維持する添加速度で、水酸化ナトリウム水溶液に、塩素及び、塩化マグネシウム水溶液を添加するのに要する時間に、添加完了後に反応混合物を攪拌する5分程度を加えたものである。
この内、添加に要する時間は、反応熱の除熱方法により変動する。また、添加完了後の攪拌は、添加中の攪拌が十分であれば、特に必要としない。
水酸化ナトリウム水溶液に、塩素及び、塩化マグネシウム水溶液を添加する反応であるので、反応混合物中には、水酸化ナトリウムが過剰量存在する。このために、添加途中のpHの大半は、14以上を示している。他方、添加完了後のpHは、8〜9.5、好ましくは、8.5〜9.0に調整することが、理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを収率よく製造する本発明の目的にかなっている。
なお、水酸化ナトリウム以外のアルカリ金属水酸化物及び、塩化マグネシウム以外のマグネシウム塩を使用する場合も上記に準じた使用量、使用濃度及び、使用方法で何等差し支えない。
【0009】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
製造例1
三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造
500mlの三ツ口セパラブルフラスコに、15℃の30%水酸化ナトリウム水溶液198g(水酸化ナトリウム59.4gを含有)を仕込み攪拌した。
そこへ、ガラス管を通じての液中への塩素20.84gの吹き込みと、15℃の24.5%塩化マグネシウム水溶液229.4g(塩化マグネシウム56.2gを含有)の液界面への滴下とを、同時に開始して、16.5分間かけて加えた。この反応工程で、塩素1モルあたり、塩化マグネシウム2.01モル、水酸化ナトリウム5.05モルを使用した。また、合計311.8gの水を使用したので、塩素1gあたりの使用量は15.0gであった。
添加中に反応混合物中には、白色の析出物が生じ、温度は15℃から40℃に昇温した。添加終了後、さらに5分間攪拌を続けた。得られた反応混合物の温度は、40℃、pHは、8.8であった。反応混合物から析出物を吸引ろ取した。ろ物を水で洗浄し、吸引ろ取後、乾燥して、白色固形物44.11gを得ることができた。この白色固形物の有効塩素含有量は41.2%であった。
収率:87.2%
【0010】
製造例2
三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造
500mlの三ツ口セパラブルフラスコに、15℃の20%水酸化ナトリウム水溶液258.3g(水酸化ナトリウム59.4gを含有)を仕込み攪拌した。
そこへ、ガラス管を通じての液中への塩素20.84gの吹き込みと、15℃の24.5%塩化マグネシウム水溶液229.4g(塩化マグネシウム56.2gを含有)の液界面への滴下とを、同時に開始して、16.5分間かけて加えた。この反応工程で、塩素1モルあたり、塩化マグネシウム2.01モル、水酸化ナトリウム5.05モルを使用した。また、合計410.8gの水を使用したので、塩素1gあたりの使用量は19.7gであった。
添加中に反応混合物中には、白色の析出物が生じ、温度は15℃から40℃に昇温した。添加終了後、さらに5分間攪拌を続けた。得られた反応混合物の温度は、40℃、pHは、8.7であった。反応混合物から析出物を吸引ろ取した。
ろ物を水で洗浄し、吸引ろ取後、乾燥して、白色固形物45.27gを得ることができた。この白色固形物の有効塩素含有量は41.2%であった。
収率:89.5%
【0011】
【発明の効果】
本発明のように、水酸化ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウム水溶液及び塩素を少量ずつ加えることにより、理論量もしくは、それに近い有効塩素含有量の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムを収率よく製造することができる。

Claims (1)

  1. 水酸化ナトリウム水溶液に、塩化マグネシウム水溶液及び塩素を少量ずつ同時に加えることを特徴とする、有効塩素含有量が39〜42%の三塩基性次亜塩素酸マグネシウムの製造方法であって、(1)塩素を水酸化ナトリウム水溶液に吹き込むかもしくは、吹きかける、(2)塩化マグネシウム水溶液を水酸化ナトリウム水溶液の液界面に滴下する、(3)出発原料の使用量が、塩素1モルあたり、塩化マグネシウム1.95〜2.10モル、水酸化ナトリウム4.85〜5.15モルである、(4)水の使用量が、10〜35%水酸化ナトリウム水溶液及び、20〜35%塩化マグネシウム水溶液を使用して、塩素1gあたり10〜35gである、(5)反応温度が5〜50℃である、(6)添加完了後のpHが8.5〜9.0である、製造方法。
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