JP3821509B2 - カテキンの生産方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カテキンの生産方法に関し、更に詳細には、ヤナギタデのカルス由来の培養細胞を用いてカテキンを生産する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヤナギタデ(Polygonum hydropiper L.)は、ホンタデ、マタデとも呼ばれるタデ科の植物であって、独特の辛味成分を含み、古くから食用に供されているだけでなく、神曲の材料になり、胃癌や消化剤など薬用にも利用されている(「沖縄の薬草百科」昭和60年11月20日、新星図書出版、第362〜363頁)。
【0003】
また、ヤナギタデの植物体には、セスキテルペノイドのポリゴジアール(polygodial)が含まれていることは明らかにされているが(Fukuyama et al., Phytochemistry, 21: 2895-2898 (1982))、カテキン(catechin)については、従来より何も報告はなされていない。ましてや、ヤナギタデのカルス由来の培養細胞からカテキンを生産することなど、従来技術は示唆すらするものではない。
このような従来技術の現状にあって、本発明は、ヤナギタデのカルス由来の培養細胞からカテキンを生産することにはじめて成功しただけでなく、カテキンの大量生産にはじめて成功したものであるが、このような本発明は従来全く知られておらず新規なものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
カテキン(Catechin)は、抗癌作用や抗ウイルス作用など薬理効果の高い縮合性タンニンの前駆物質として重要な物質であるばかりでなく、カテキン自体も抗ウイルス作用などの薬理作用を有しており(日本医事新報、No.3737、(平成7年12月9日)第126〜127頁)、大量生産法の確立が業界において強く求められている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ヤナギタデの植物成体から人工的に増殖性細胞塊(カルス)を誘導し、これより安定に且つ迅速に増殖する懸濁培養細胞系を樹立する研究、次いで、得られた懸濁培養細胞が生産する二次代謝産物の研究を行った。
これらの研究の過程において、ヤナギタデのカルス由来の懸濁培養細胞系の樹立に成功し、そして懸濁培養細胞から生産される二次代謝産物としてカテキンが存在することをはじめてつきとめ、その抽出、精製にも成功し、カテキンの新規生産方法を確立するのにはじめて成功し、本発明の完成に至ったものである。
【0006】
更に詳細には、本発明は、下記する一連の研究過程においてなされたものである。
すなわち、ヤナギタデの子葉、胚軸、花芽由来のカルスから懸濁培養細胞系を確立し、この中の子葉、胚軸由来の懸濁培養細胞を用いてポリゴジアールを生産させる培養条件について検討するとともに、培養細胞が生産する二次代謝産物を薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーを用いて分析した。さらに主要な二次代謝産物については、1H-NMR、13C-NMR、DEPT、IR、UV、MS及び融点、比旋光度等を測定して構造を決定した。その結果、主要産物としてカテキンが検出されたので、この物質の培養細胞及び培地中での生産の経時的変化も検討し、一般には、脱分化した培養細胞では二次代謝産物の生産が低下するかあるいは全く生産されないことが多いにもかかわらず、本発明においてはカテキンが生産されることを確認し、遂にカテキンの効率的生産方法を確立するのに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明に係るカテキンの生産方法は、ヤナギタデの各種カルス(例えば、子葉、胚軸、又は花芽由来のカルス)由来の培養細胞の培養物(細胞及び/又は培養液)からカテキンを抽出することを重要なポイントとするものである。
以下、本発明について詳述する。
【0008】
本発明を実施するにはヤナギタデのカルス由来の培養細胞を利用することが必要である。培養細胞としては、固体培地でカルスを培養して得た培養細胞、液体培地を用いて得た懸濁培養細胞のいずれもが使用可能であるが、懸濁培養細胞を例にとって、以下、本発明を説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
懸濁培養細胞系は、ヤナギタデから誘導し、継代、維持してきた子葉、胚軸、花芽のそれぞれのカルスから確立した。それぞれのカルスの継代培地としては、下記表1に示す固体培地を用い、カルスの継代は1カ月毎に行った。
【0010】
【表1】
Figure 0003821509
【0011】
懸濁培養細胞系の培地は、Murashige and Skoog (Physiol. Plant., 15:473-497,1962) の培地(以下、MSと略す)を基本培地とし、これに成長調節物質として2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)とカイネチンを種々の濃度で添加したものを用いた。各培地には炭素源として3%蔗糖を加え、培養細胞の成長を促進するために0.1%カザミノ酸を加えた。培地の組成については下記表2に示す。各培地は1N-KOH、1N-HClを用いてpH5.8に調整した後、オートクレーブ滅菌(120℃、1.2kg/cm2、20分)を行った。
【0012】
【表2】
Figure 0003821509
【0013】
懸濁培養細胞系の確立は以下の方法で行った。子葉、胚軸、花芽由来のカルス2gを上記の組成の培地40mlの入った100ml三角フラスコに移して3週間、連続光照射(約1000ルックス)、25℃の条件下で振とう培養(120rpm)を行った。三角フラスコに浮遊細胞が多く見られるようになったところで、同様の組成の培地100mlの入った300ml三角フラスコに全て移し、3週間培養して浮遊細胞をさらに増殖させた。確立された細胞系は、2週間毎に吸引濾化して培地を除き、細胞1gを新鮮な培地に移すことによって継代し、成長の速い懸濁培養細胞を得た。
【0014】
このようにして得られた子葉、胚軸の懸濁培養細胞系は、灰白色で、細胞塊は少なく、細かい細線から構成されていた。花芽の懸濁培養細胞系は、わずかに緑色がかかった灰色の細かい細胞から構成されていた。細胞の増殖が定常期に達したころにはフラスコの壁面に赤い細胞が付着しているのがどの培養細胞においても観察された。
【0015】
生長量は、子葉由来の懸濁培養細胞を用いて測定した。継代6日後の懸濁培養細胞の生重量1.0gを40mlの液体培地が入った100ml三角フラスコに懸濁し、連続光照射(1000ルックス)、25℃の条件下で振とう培養(120rpm)した。細胞は2分間吸引濾化して培地を除き、生重量を測定した。1回の測定には3本のフラスコを用い、その平均値を求め、測定は2日毎に行った。
【0016】
子葉由来の懸濁培養細胞の成長量を図1に示す。細胞は植え付け後から対数的に増加し、定常期に至った。その詳細は10日目まで急激に増加し、10日目から増殖は緩やかになり、14日目に10.75g.f.w.の最大量を示した後、22日目までほとんど一定の値を示した。
【0017】
継代6日後の子葉の懸濁培養細胞を、押しつぶし法で作成したプレパラートを用い、光学顕微鏡で観察したところ、分裂が盛んに行われると思われる小さな細胞が多く見られた。細胞は単細胞では存在せず、分裂の結果絡み合って集塊となっているもの、分裂して細長くのびているもの、らせん状のものなどが観察された。継代15日後には細胞の伸長が進み、長い細胞が多く観察された。
【0018】
植物体(実生)及び子葉由来の懸濁培養細胞の染色体に関しては、植物体では観察した全ての個体において、染色体数2n=20が確認された。培養細胞では倍数性の細胞が多く観察された。子葉由来の懸濁培養細胞において観察された染色体数の倍数性の頻度を測定した。培養細胞では、20細胞について染色体数を測定した結果、染色体数2n=約20の二倍性の細胞が3、染色体数4n=約40の四倍性の細胞が10、染色体数6n=約60の六倍性の細胞が4、染色体数8n=約80の八倍性の細胞が2、染色体数16n=約160の十六倍性の細胞が1、それぞれ観察された。最も多く観察された細胞は四倍性の細胞で、その頻度は50%であった。観察された細胞のうち、75%の細胞で染色体数に変異が生じていた。
【0019】
このようにして、子葉由来の懸濁培養細胞系は、M−BC(MS+3% Sucrose+0.1% Casamino asids+10-6M 2,4−D+10-6M Kinetin)の培地で確立された。胚軸由来の懸濁培養細胞系は、M−EC(MS+3% Sucrose+0.1% Casamino asids+10-5M 2,4−D)の培地で確立された。花芽由来の懸濁培養細胞系は、M−FC(MS+3% Sucrose+0.1% Casamino asids+10-6M 2,4−D+10-6M Kinetin)の培地で確立された。
【0020】
このようにした得た懸濁培養細胞系は、静置及び/又は攪拌培養することにより、大量培養する。
培地としては、各種培地を使用することができ、炭素源としては、グルコース、フラクトース等の単糖類、マルトース、シュークロース等の二糖類のほか、オリゴ糖や澱粉等の多糖類も使用することができる。窒素源としては、硝安、硝酸カリウムといった硝酸態窒素、硫安、酒石酸アンモニウム等のアンモニア態窒素のほか、カザミノ酸、アミノ酸、ペプトン、コーンスティープリカー、酵母菌体、イーストエキストラクト、麦芽エキストラクト等が使用できる。
そのほか、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、サイアミン、葉酸、ビオチン等のビタミン類;イノシトール、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、チミジル酸、サイクリックAMP等の核酸関連物質;鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、ヨウ素、カリウム、コバルト、マグネシウム、モリブデン、リン、銅等のミネラルも使用する。
【0021】
基本培地としては、例えば、ムラシゲ−スクーグ(Murashige-Skoog)培地(MS)、ホワイト(White)培地等が使用可能である。
【0022】
基本培地にはオーキシン、サイトカイニンを添加するのが好ましく、オーキシンとしては、インドール酢酸、インドール酪酸、ナフタレン酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸などが適宜利用される。また、サイトカイニンとしては、ベンジルアデニン、カイネチンなどが使用できる。これらの植物ホルモンやサイトカイニンは単独でも使用できるが、組合せて用いることが効果的である。
【0023】
必要あれば、更に、ココナツミルク、カゼイン加水分解物、ジャガイモ抽出液、コーンスティープリカー、イーストエキストラクト、麦芽抽出液などの天然有機栄養源を添加することが有効である。培養温度は20〜30℃で培養操作できる。培養液のpHは弱酸性(pH5.5〜6.0)が増殖に有利である。
培養は、液体培地を用いて振とう培養(80〜200rpm)するのが好適である。
【0024】
このようにして得た懸濁培養細胞を用いてカテキンを抽出、単離する。
そのためには、セルラーゼやリゾチームを用いる生物学的処理、化学的処理、機械的ないし超音波などの処理、又はこれらを組合わせたりして細胞を破壊し、エーテル、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルムその他の有機溶媒、水などの単独ないしは、これらの有機溶媒と水との混合液で抽出して回収できる。
【0025】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0026】
【実施例1】
胚軸由来の懸濁培養細胞を用いて、カテキンの単離及び構造決定を、次のようにして行った。
【0027】
(1)胚軸由来の懸濁培養細胞は、濾過吸引して培地を除き、−20℃で冷凍保存した。この細胞約1800gを乳鉢ですりつぶし、ジエチルエーテル(Et2O)で2日間抽出した。なお、抽出効率をあげるために20分間超音波にかけた。抽出液はブフナー漏斗で吸引濾過した。得られた液にはEt2Oを加え、分液漏斗でEt2O層とH2O層に分離した。H2O層には再びEt2Oを加え、Et2O層とH2O層の二層間に生じたエマルジョン(emulsion)とに分離した。Et2O層は一つにまとめ、水温30℃の条件下で減圧濃縮し、ペレット 1(709mg)を得た。
【0028】
エマルジョンは、室温に放置して結晶化させた。H2O層には酢酸エチル(AcOEt)を加え、分液漏斗でAcOEt層とH2O層に分離した。なお、分離をよくするためにNaClを加え塩析を行った。AcOEt層は水温35℃で減圧濃縮し、ペレット 2(3537mg)を得た。H2O層にはAcOEt+メタノール(MeOH)の混液を加え、AcOEt+MeOH層とH2O層に分液漏斗で分離した。AcOEt+MeOH層は水温30℃で減圧濃縮し、ペレット 3(1385mg)を得た。H2O層にはブタノール(BuOH)を加え、BuOH層とH2O層に分液漏斗で分離した。BuOH層は水温50℃で減圧濃縮し、ペレット 4(9.97g)を得た。
また上記で分離した細胞はMeOHを加えて2日間抽出し、水温35℃で減圧濃縮後、AcOEtを加えて分液漏斗でAcOEt層とH2O層に分離した。AcOEt層は水温35℃で減圧濃縮し、ペレット 5(15g)を得た。以上の分画操作については図2に示す。
【0029】
成分の単離には、ペレット 2、3、5(5についてはMeOHに溶解した13g)を用いた。これらをMeOHに溶解して一つにまとめ、水温35℃で減圧濃縮した。それを35gのセライトにまぶし、さらに乳鉢で細かくすりつぶして試料を作成した。試料は、薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離するため、シリカゲルカラム(Silica gel:Merck 70-230 mesh、315g)上に平らになるようにしてのせた。展開は、展開溶媒としてCHCl3:MeOH:H2O=80:20:1を5L、7:3:1を3L、6:4:1を1L用いて行った。展開液は30mlずつ分取し、TLCによってスポットを確認した。展開して得られた同一の単一スポットを含むフラクションは一つにまとめ水温30℃で減圧濃縮した。
【0030】
(2)得られた単一の物質について、1H-NMR(CDCl3 or cd3od、200MHz)、13C-NMR(CDCl3、50.31MHz)、DEPT(CDCl、50.31MHz)、UVスペクトル(Ultraviolet spectrum, UV)、赤外吸収スペクトル(Infraredspectrum, IR)、Massスペクトル(Mass spectrum, MS)を測定した。
【0031】
さらに、アセチル化して1H-NMR(CDCl3、200MHz)、13C-NMR(CDCl3、50.31MHz)、DEPT(CDCl3、50.31MHz)、UV、IR、MSの各スペクトルを測定した。アセチル化は、塩基性下で2mlのピリジンと2mlの酢酸を混ぜ合わせ、その中に単離した成分(48.5mg)を入れ、20時間攪拌して行った。TLCによりアセチル化されていることを確認した後、反応液に50mlの氷水と50mlのAcOEtを加え、H2O層、AcOEt層に分液する操作を4〜5回繰り返すことにより、H2O層に溶解するピリジン、酢酸を除いた。AcOEt層は濾過後、水温30℃で減圧濃縮し、得られた残渣56.1mgをアセチル化された成分として測定に用いた。
【0032】
(3)ペレット(pellet)4については、展開溶媒としてCHCl3:MeOH=1:1を用いてSephadex LH-20カラムにかけた。フラクションは、TLCによってスポットを確認した。展開して得られた同一の単一スポットを含むフラクションは一つにまとめ、水温30℃で減圧濃縮した。得られた単一の物質(2385mg)は、上記と同様の分析を行い物質の構造を決定した。
さらに構造の決定された物質の融点、比旋光度についても測定した。
【0033】
ペレット2、3、5より単離された単一の物質の1H-NMR、13C-NMRのスペクトルを図3及び図4に示す。単離された物質の1H-NMRの測定結果では、高磁場に1H分として観測されるシグナルが2つ観測され、4.5ppm付近には酸素官能基が結合した炭素上のシグナルが1H分観測された。低磁場には芳香族に由来するシグナルが観測された(図3)。13C-NMRの測定結果では、シグナルが15観測され、単離された物質は炭素数が15であることがわかった(図4)。DEPTの測定結果から、2級炭素1、3級炭素7、4級炭素7の存在が観測された。UVの測定において極大吸収波長が、280nmに観察された。IRの測定において3299cm-1に水酸基の吸収が観測された。MSの測定の結果、物質の分子量は290であった。以上の結果から単離された物質は芳香族化合物であることがわかった。
【0034】
アセチル化した物質の1H-NMR、13C-NMR、DEPTの測定結果では、アセチル基由来のメチル炭素のシグナルが5観測され、IRの測定結果のアセチル化していない物質では観測された水酸基の吸収が消失し、1768cm-1アセチル基に由来するカルボニルの吸収が観測された。以上の結果から、単離された物質には水酸基が5つ存在することがわかった。また、MSの測定では分子量が500であることがわかった。
【0035】
これらの結果から、単離された物質の分子式はC15146の芳香族化合物であることが明らかとなった。さらにカテキン標品の1H-NMRと単離された物質との1H-NMRを比較したところ一致したことから、単離された物質は
カテキンであると同定された。
【0036】
用いた胚軸由来の懸濁培養細胞、生重量約1800gから約4585mgのカテキンの結晶が単離された(収率0.26%)。この結晶の融点は、157−159℃で、比旋光度は[α]D=−3.8°であり、(+)−と(−)−のラセミ体であることが示唆された。
【0037】
【実施例2】
子葉由来の懸濁培養細胞を用いて、懸濁培養細胞の成長に伴うカテキン生産量の測定を行った。
【0038】
継代6日後の懸濁培養細胞の生重量1.0gを、40mlの液体培地が入った100ml三角フラスコに懸濁し、連続光照射(1000ルックス)、25℃の条件下で振とう培養(120rpm)した。細胞は、ミラクロースをしいたブフナー漏斗で2分間吸引して細胞と培地に分けた後、細胞の生重量を測定した。測定した細胞は乳鉢に移して乳棒ですりつぶし、Et2Oで抽出した。
【0039】
抽出液はエバポレーターで減圧濃縮し、1.5−2.0mlのエタノールに溶解して試料とした。さらにAcOEtで抽出し、減圧濃縮後1.5−2.0mlのエタノールに溶解して試料とした。培地はEt2Oで抽出し、水温30℃で減圧濃縮後1.5mlのエタノールに溶解して試料とした。さらにAcOEtで1日間抽出後、減圧濃縮して1.5mlのエタノールに溶解して試料とした。培地の抽出では、抽出効率をあげるため超音波で5分間処理した。生重量、生産量は1回の測定につき3本のフラスコを測定し、それらの平均値を求めた。
【0040】
得られた試料の定量分析はHPLCで行い、試料は分析を行う直前に0.45μmのフィルターで濾過した。なおHPLCでの分析は、移動相:アセトニトリル:酢酸:H2O=10:5:85、カラム温度:40℃、検出波長:280nm、流速:0.5ml/minの条件で行った。
【0041】
カテキン標品(A)及び子葉由来の懸濁培養細胞の抽出物(B)のHPLCの結果を図5に示す。カテキンは単一のピークとしてRt.7.9付近に検出された。図中、矢印は、それぞれカテキンを示す。
【0042】
【実施例3:懸濁培養細胞の成長に伴うカテキンの生産量】
子葉由来の懸濁培養細胞をM−BC培地で培養し、その成長量と細胞のフラスコ当りのカテキン生産量を測定した。得られた結果を図6に示す。図6の結果から明らかなように、懸濁培養細胞は、培養開始直後から盛んに成長し、15日目で16.07g.f.w./flaskに達し、その後細胞が枯死し始め生重量が減少した。カテキンの生産量は、12日目まで細胞の増殖に伴って生産量も増加したが、細胞の成長が定常期に達する前の12日目に最大量の6.26mg/flaskの達し、その後急速に生産量は減少した。
【0043】
子葉由来の懸濁培養細胞の生重量当たりのカテキン生産量を図7に示す。カテキンの生産量は1日目から5日目まで増加し、5日目に最大量の815.27μg/g.f.w.に達した。その後16日目まで急激に減少し、その後25日目までは緩やかに減少した。
【0044】
培地中に存在するフラスコ当たりのカテキン量を図8に示す。培地中のカテキン量は5日目までわずかに増加し、5日目から8日目の間に急激に増加した。その後8日目から12日目の間に急激に減少し、12日目には全く検出されなかった。12日目から15日目に再びわずかに増加し、15日目から25日目まで急激に増加した。25日目には最大量の320.85μg/flaskとなった。
【0045】
【発明の効果】
ヤナギタデのカルス由来の培養細胞を確立するのにはじめて成功しただけでなく、培養細胞からカテキンを製造するのにもはじめて成功した。しかも、培養細胞の生重量約1800gから4585mgという大量のカテキンが生産され(収率0.26%)、そのうえ、ヤナギタデの植物体を直接使用するのとは異なり、本発明によれば広い圃場、手間のかかる栽培が必要でなく、天候にも左右されることなく、二次代謝産物であるカテキンの生産を人為的なコントロール下におくことができ、安定生産、生産収率の向上、生産に関する場所及び時間の短縮を達成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】子葉由来の懸濁培養細胞の成長量を示す。
【図2】細胞生産物の分画操作を示す。
【図3】単離された物質の1H-NMRスペクトル(200MHz、CDCl3、TMS int. standard)を示す。
【図4】単離された物質の13C−NMRスペクトル(50MHz、CDCl3、TMS int. standard)を示す。
【図5】カテキン標本及び子葉由来の懸濁培養細胞の抽出物のHPLCパターンを示し、矢印はカテキンを示す。
【図6】子葉由来の懸濁培養細胞の成長量と細胞のフラスコ当りのカテキン生産量を示す。
【図7】懸濁培養細胞の生重量当りのカテキン生産量を示す。
【図8】培地中に存在するフラスコ当りのカテキン量を示す。

Claims (4)

  1. ヤナギタデ(Polygonum hydropiper L.)のカルス由来の培養細胞を用いること、を特徴とするカテキンの生産方法。
  2. カルスがヤナギタデの子葉、胚軸、及び/又は花芽由来のカルスであること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. カルス由来の培養細胞がカルス由来の懸濁培養細胞であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. ヤナギタデのカルス由来の培養細胞を破砕した後、有機溶媒抽出処理すること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカテキンの生産方法。
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