JP3821116B2 - 自動ピアノ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、自動的に鍵盤を駆動して演奏を行う自動ピアノに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動ピアノにおいては、ソレノイドを励磁して鍵を駆動すると、これに応じてハンマが回転して打弦がおこなわれる。そして、ハンマによる打弦の強弱は、鍵の駆動速度に対応し、鍵の駆動速度はソレノイドへの供給電流に対応する。したがって、ソレノイドへの給電量を制御することにより、打弦の強弱、すなわち、発生楽音の大きさを制御することができる。
【0003】
ところで、自動ピアノにおいては、演奏情報を記録する際に、打弦直前のハンマの速度を検出し、これを打弦強度を示すデータ(以下、打弦強度データという)として記録するとともに、ハンマが打弦位置を通過する時刻を打弦時刻データとして記録する。なお、打弦時刻データは、一般的に一つ前の音との間隔を示す時間データ(相対時間データ)として記録されるが、演奏開始時からの絶対時刻が記録されることもある。
そして、記録した演奏情報を再生する際には、演奏情報中の打弦強度データに応じた電流をソレノイドに供給する。また、ソレノイドへの給電量制御は、一般にはパルス幅変調(PWM)によって行われる。
【0004】
この場合、鍵を駆動し始めてからハンマが実際に打弦するまでの時間差を見込んで、打弦時刻データが示す打弦タイミングより少し前にソレノイドへの給電を行う。また、強音と弱音では、押鍵開始から打弦までの時間が異なるので、打弦強度データに応じて、ソレノイドへの給電タイミングを調整するようにした自動ピアノも開発されている。
【0005】
なお、演奏データ記録時において、押鍵速度からハンマ速度を推定するタイプのものもあるが(特開平1−239594号)、この場合には、推定したハンマ速度を打弦強度データとして記録する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の自動ピアノは、打弦時刻データに対応させたタイミングで、打弦強度データに応じた電流をソレノイドに供給するというオープンループの制御を行っており、言い換えれば、押鍵開始時において打弦強度データに応じた力で鍵を押し下げるという単純なものであった。
しかしながら、鍵の起動(この場合の起動は、時間経過に対する位置変化をいう)を考慮すると、押鍵開始時の押下力だけを制御しても、演奏時における鍵軌道を再生したことにはならず、このため、記録時の打弦速度を正確に再現することができなかった。
【0007】
また、演奏家による演奏は、単に押鍵時開始時の押下力だけをコントロールしているのではなく、楽曲の微妙なニュアンスを表現すべく、押鍵開始から離鍵に至るまで、楽音の表情に応じた操作を行う。したがって、単に、押鍵開始時の押下力を制御しただけでは、楽音の表情を正確に再現することはできず、機械的な味気ない演奏となってしまう。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、算出された押鍵加速度を利用して鍵を駆動することにより豊かな演奏表現を得ることのできる自動ピアノを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の構成は、鍵の押下によってハンマーを回動させ、当該ハンマーの動作によって発音動作を行う自動ピアノであって、前記鍵のレスト位置からエンド位置までの範囲内に予め設定された所定点であって鍵の速度とハンマーの打弦による発音強度とが特定の関係を示す所定点での速度を含む一連の押鍵操作における2以上の押鍵速度情報、一連の押鍵操作における2以上の打弦速度情報、または一連の押鍵操作において鍵の動きを検出するキーセンサが検出する区間での押鍵速度情報および打弦速度情報を用い、これらの速度の変化から前記押鍵操作についての押鍵加速度を算出する押鍵加速度算出手段と、前記押鍵加速度算出手段によって算出された押鍵加速度を利用して、鍵の放物線軌道を算出する軌道算出手段と、前記軌道算出手段によって算出された放物線軌道に基づき、前記鍵の駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
A:第1実施例
(イ)制御原理
▲1▼リファレンスポイント
図20は、一般的な自動ピアノの要部の構成を示す断面図である。図に示すように、自動ピアノにおいては、鍵1と、鍵1の運動をハンマ2に伝達するアクション3と、ハンマ2によって打弦される弦4と、鍵1を駆動するソレノイド5とを有している。そして、ソレノイド5のプランジャが突出すると、鍵1がバランスピンPを中心に回動し、その演奏者側が下がり(以下、この状態を押鍵状態という)、また、これに連動してアクション3が作動し、ダンパー6が弦4から離れるとともに、ハンマ2が回動して打弦する。
一方、演奏者が弾く場合は、指で鍵1を押下することにより、上述と同様の作用が生じて打弦が行われる。
【0020】
なお、図において、SE1,SE2は、打弦速度を計測するためのセンサであり、ハンマ2がこれらのセンサSE1,SE2の間を通過する時間を計測することにより、ハンマ2の速度、すなわち、打弦速度が計測される。また、ハンマ2がセンサSE1を通過する時刻が打弦時刻として計測される。なお、ハンマ2が実際に打弦する時刻にセンサSE1で検出される打弦時刻をより近づけるために、センサSE1はハンマ2の打弦位置に近接した位置に設けられている。
ところで、鍵1を押し下げる速度に応じてハンマ2の打弦速度が決まるが、鍵1の速度は初め遅くて次第に早くなる場合や、その逆の場合もあり、さらには、ほとんど一定の速さで押される場合もある。この場合、鍵1のレスト位置(鍵1を押してない場合の初期位置)からエンド位置(鍵を押し切った位置)に至るまでの速度と、ハンマ2の打弦速度とがどのような関係になっているのかが重要である。なぜならば、その関係を考察せず、打弦強度データに応じて鍵速度(初期速度など)を制御しても、記録時の打弦速度を再生することはできないからである。
【0021】
実験によれば、鍵1のある位置における速度とハンマ2の打弦速度とが極めて良い対応を示すことが判った。この位置は、ピアノの個体差にもよるが、概ねレスト位置から9.0mm〜9.5mm程度押し下げた位置であった。したがって、鍵1がこの位置に達するときの速度を、打弦強度データに応じて制御すれば、記録時の打弦速度を忠実に再現することができる。なお、以下においては、上述の所定位置をリファレンスポイントXrという。
【0022】
▲2▼リファレンス速度
次に、上述のようにして求めたリファレンスポイントXrにおいて、どのような鍵速度にすれば、打弦速度を忠実に再現することができるかを設定する必要がある。なお、以下においては、リファレンスポイントXrにおける鍵速度をリファレンス速度Vrという。
【0023】
ここで、図2はリファレンスポイントXrを9.5mmに設定したときの鍵速度と打弦速度の関係を示す図である。図中、白点は鍵をエンド位置まで押し切る単打奏法を行った場合の結果を示し、黒点は鍵をエンド位置まで押し切らずに連打する連打奏法を行った場合の結果を示している。また、C1は1次最小自乗法近似による直線、C2は6次最小自乗法による曲線を示している。
【0024】
図2から明らかなように、リファレンス速度Vrは、直線C1あるいは曲線C2のいずれによっても近似できる。したがって、近似性のよい関数を適宜選択すれば、この関数を用いて任意の打弦強度データ(記録時の打弦速度情報)からリファレンス速度Vrを決定することができる。
この実施例においては、計算が簡単で誤差の少ない1次関数近似を採用している。したがって、リファレンス速度vrは、次式によって求められる。
【0025】
【数1】
vr=α・vH+β
数1において、vHは打弦速度(打弦強度データ)であり、αおよびβは定数である。定数αおよびβは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。なお、αおよびβは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。
【0026】
▲3▼リファレンス時間差
さて、演奏情報に含まれる打弦時刻データは、前述したように、相対時刻あるいは絶対時刻で記録されているが、いずれにしても再生側自動ピアノにおいて打弦時刻データを読み取って処理することにより、再生時の各音の打弦絶対時刻が求められる。そこで、このようにして求めた打弦絶対時刻において正確に打弦を行わせるには、鍵が何時リファレンスポイントXrを通過すればよいかを求める必要がある。
【0027】
ここで、鍵1がリファレンスポイントXrを通過する時刻(以下、リファレンス時刻trという)と打弦時刻(正確には、ハンマが打弦位置直前にあるセンサSEを通過した時刻)との時間差をリファレンス時間差Trと定義し、これと打弦速度との関係を実験により求めたものが図3である。図3において、白点は単打奏法による結果、黒点は連打奏法による結果を示している。そして、図3を縮尺2倍にしたものが図4であり、縮尺4倍にしたものが図5である。これらの図から判るように、リファレンス時間差Trと打弦速度との関係は、双曲線により極めて良好に近似される。すなわち、このリファレンス時間差Trは、打弦速度vHを分母にする1変数式で近似することができ、次式によって算出される。
【0028】
【数2】
Tr=−(γ/vH)+δ
なお、数2における定数γおよびδは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。なお、γおよびδは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。これは、数1におけるα、βの場合と同様である。
【0029】
さて、数2によって、リファレンス時間差Trが求まれば、再生側の打弦絶対時刻からリファレンス時間差Trを減算することによって、リファレンス時刻trが求められ、結局、上述した▲1▼、▲2▼、▲3▼の処理により、リファレンスポイントXr、リファレンス速度Vr、およびリファレンス時刻trが求められる。したがって、リファレンス時刻trにリファレンスポイントXrに達し、かつ、その時の速度がリファレンス速度Vrとなるように鍵1を駆動すれば、記録時の打弦状態を忠実に再現することができることが判る。
なお、鍵1がリファレンスポイントXrに達したときに打弦が行われるのであれば、リファレンス時間差Trを求める処理は不要になる。
【0030】
▲4▼制御の概要
以上のようにして、予め設定したリファレンスポイントXrにおけるリファレンス速度Vrが求められれば、鍵1の挙動をこれに応じて制御することにより、記録時の打弦速度を再生することができる。
【0031】
この場合、レスト位置からエンド位置までの鍵の軌道(時間経過に対する鍵の位置)を設定すれば、鍵の押下開始位置からリファレンスポイントXrに至るまでの各位置と時刻の関係(速度と時刻の関係等)が求められるから、これに応じて鍵の位置をフィードバック制御すればよいことが判る。この場合における鍵の軌道は、例えば、リファレンスポイントXrを通る直線軌道(等速運動の場合)や放物線軌道(等加速度運動の場合)の他、任意の軌道を設定することができる。ただし、打弦状態の再現性が良く、また、制御し易い軌道を選択することが好ましい。また、設定する軌道によっては、リファレンス点における加速度等(運動を決定する他の要素)を求める必要が生じるが、これについては軌道の種類に応じて適宜算出すればよい。
以上がこの実施例の制御原理である。
【0032】
(ロ)第1実施例の構成および動作
以下、図面を参照してこの発明の実施例の構成について説明する。図1は、この実施例の構成を示すブロック図である。なお、前述した図20の各部と対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0033】
図において、10は再生前処理部であり、記録メディアあるいはリアルタイム通信装置から供給される演奏データに基づいて、鍵の軌道データを作成する回路であり、まず、リファレンス時刻tr、リファレンス速度vrを求め、さらに、加速度の推定が必要な場合はこれを演算する。そして、軌道の種類(直線、放物線、その他任意の軌道)に応じて各音に対する鍵の軌道を示すデータを生成する。
11は、再生前処理部10が作成した軌道データに基づいて、ソレノイド5のプランジャの動きを示すデータを作成するモーションコントローラである。また、12はサーボコントローラであり、モーションコントローラ11から供給されるデータに応じてソレノイド5の励磁電流を制御する。この場合、ソレノイド5には、プランジャの位置を検出する検出機構が設けられており、これにより検出されたプランジャ位置をフィードバック信号としてサーボコントローラ12にフィードバックするようになっている。そして、サーボコントローラ12は、モーションコントローラ11から供給されるデータとソレノイド5からのフィードバック信号とを照合しながら、両者が一致するように励磁電流を制御する。
【0034】
上述した構成によれば、演奏データ中の打弦強度データに応じて、リファレンスポイントXrを通過する鍵軌道が生成され、鍵がこの軌道を再現するようにソレノイド5の励磁電流が制御される。
この結果、鍵1がリファレンスポイントXrに達したときの速度は、記録時の打弦速度に対応した速度(すなわち、リファレンス速度Vr)になり、ハンマ2は記録時と同じ速度で打弦を行う。
以上のように、この実施例においては、リファレンスポイントという制御点を導入し、この点における鍵の運動属性を再現するようにしたので、センサ等を増やすことなく、忠実に打弦速度を再現することができる。
【0035】
B:第2実施例
次に、この発明の第2実施例について説明する。なお、第2実施例における制御原理は、第1実施例と同様であるが、第2実施例においては、鍵の軌道として直線軌道を設定し、また、押鍵時のみでなく離鍵時においても鍵をサーボ駆動している。
【0036】
(イ)第2実施例の構成
図6は、第2実施例の構成を示すブロック図である。なお、図1の各部に対応する部分には同一の符号が付けてある。
図6に示す26は、鍵1の下面に取り付けられた板状のシャッタである。25は、上下方向に所定距離隔て設けられる2組のフォトセンサによって構成されているキーセンサであり、鍵1が押下され始めると、まず上方のフォトセンサが遮光され、次いで、下方のフォトセンサが遮光される。離鍵の際には、下方のフォトセンサが受光状態になり、ついで、上方のセンサが受光状態になる。
【0037】
キーセンサ25の出力信号は、演奏記録部30に供給され、演奏記録部30は、キーセンサ25内の下方のフォトセンサが受光状態になってから上方のフォトセンサが受光状態になるまでの時間を測定し、ここから、離鍵速度を検出する。また、演奏記録部30は上方のフォトセンサが受光状態になった時刻を離鍵時刻として処理する。また、演奏記録部30は、センサSE2が遮光されてからセンサSE1が遮光されるまでの時間を計測し、ここから打弦速度を検出する。また、センサSE1が遮光された時刻を打弦時刻として処理する。
【0038】
すなわち、演奏記録部30は、演奏が開始されると、センサSE1,SE2の出力信号に基づいて、打弦時刻および打弦速度を検出し、かつ、キーセンサ25の出力信号に基づいて離鍵時刻および離鍵速度を検出する。以上のようにして検出された各情報は、記録後処理部31に供給される。
【0039】
記録後処理部31においては、演奏記録部30から供給される各種情報に対し、正規化処理を施した後に、外部の記録媒体に演奏情報として供給する。ここで、正規化処理とは、ピアノの個体差を吸収するための処理である。すなわち、打弦速度、打弦時刻、離鍵速度、離鍵時刻等は、各ピアノにおけるセンサの位置や、構造上の違い、あるいは機械的誤差によって固有の傾向を持つため、標準となるピアノを想定し、そのピアノにおける打弦速度、打弦時刻等に変換するための処理である。
次に、本実施例における再生前処理部10について説明する。この実施例においては、鍵軌道として直線を想定するので、次のような手法で軌道データの作成を行う。
【0040】
▲1▼押鍵時の軌道データ作成
図7は、鍵の押鍵軌道(直線軌道)を示す図であり、レスト位置X0から等速運動をしてエンド位置Xeに至っている。ここで、鍵の初速度をV0、鍵の位置をX、鍵の駆動開始時点からの時刻をtとすれば、鍵の軌道は、
【0041】
【数3】
X=V0・t+X0
と表される。
また、鍵がリファレンスポイントXrに達する時刻をtr'とすると、
【0042】
【数4】
Xr=V0・tr'+X0
なる式が成り立つから、この数4から時刻tr'を求めることができる。したがって、押鍵を開始する絶対時刻(以下、押鍵開始時刻という)t0は、次式によって求めることができる。
【0043】
【数5】
Figure 0003821116
なお、リファレンス時刻trは、前述のように、打弦時刻からリファレンス時間差Trを減算することによって求める。
上記数5によって押鍵開始時刻t0を求め、この時刻から、数3で示される軌道に従って鍵1を駆動すれば、鍵1は、リファレンス時刻trにおいて正確にリファレンスポイントXrに達し、しかも、その時の速度は、打弦強度データに対応したリファレンス速度Vrとなる。
【0044】
なお、鍵の挙動については、直線軌道(等速運動)を想定しているから、リファレンス速度Vrと初速度V0は等しい。そして、リファレンス速度Vrは、前述の数1によって求められるから、数5で求めた押鍵開始時刻t0から一定速度vrで鍵を駆動するように制御(速度制御)しても上記と同様の結果を得ることができる。
【0045】
▲2▼離鍵時の軌道データ作成
次に、離鍵時の軌道データ作成について説明する。まず、鍵の位置をXN、離鍵初速度をV0N(<0)、離鍵開始時点からの時刻をtN、エンド位置をXeとすれば、離鍵時の鍵軌道は、次式で表される。
【0046】
【数6】
XN=V0N・tN+Xe
ここで、図8は数6で示される軌道を示す図である。
さて、前述のように、演奏記録部30(図6参照)は、キーセンサ25内の下方のフォトセンサが受光状態になってから上方のフォトセンサが受光状態になるまでの時間を測定して離鍵速度vkNを検出し、また、上方のフォトセンサが受光状態になった時刻を離鍵時刻tkNとして検出する。この場合、離鍵時刻tkNにおけるダンパー6は、弦4に接して音の減衰を開始する状態なっている(そのような状態になるようフォトセンサの位置が調整されている)。そして、このようにして検出された離鍵速度VkNおよび離鍵時刻tkNは、それぞれ演奏情報を構成するデータとして記録され、再生時に読み出される。
【0047】
ここで、ダンパー6が弦4に接するときの鍵の位置を離鍵リファレンスポイントXrNと定義すれば、鍵1が離鍵リファレンスポイントXrNに達したときに、離鍵状態になったということができる。したがって、鍵1が離鍵リファレンスポイントXrNに達する時刻(以下、離鍵リファレンス時刻trNという)と、演奏情報中の離鍵時刻tkNとが一致するように鍵位置を制御すれば、正確な離鍵タイミング制御を行うことができる。
【0048】
また、ダンパー6が弦4に接する速さは、音の減衰状態に影響を与えるから、これを忠実に再現することが望ましい。この速さは、離鍵速度VkNに対応するから、結局、離鍵リファレンスポイントXrNにおける鍵速度(以下、離鍵リファレンス速度VrNという)を正確に離鍵速度VkNに一致させれば、音の減衰状態が正確に再現される。
ここで、鍵の駆動が開始される時刻を基準(=0)にして、鍵がリファレンスポイントXrNに達する時刻をtrN'とすると、
【0049】
【数7】
XrN=V0N・trN'+XeN
(ただし、直線軌道だからV0N=VrN=VkN)なる関係が成り立ち、この数7より時刻trN'を求めることができる。したがって、次式によって離鍵開始時刻t0Nを求めることができる。
【0050】
【数8】
Figure 0003821116
この数8によって離鍵開始時刻t0Nを求め、この時刻から、数6で示される軌道に従って鍵を駆動すれば、鍵は離鍵時刻tkNにおいて離鍵リファレンスポイントXrNに達し、記録時の離鍵状態を忠実に再現することができる。
なお、時刻t0から速度V0N(=vkN:離鍵速度)で鍵駆動するように制御(速度制御)しても上記と同様の結果を得ることができる。
【0051】
▲3▼交差時の軌道データ作成
押鍵軌道および離鍵軌道は上述のようにして作成されるが、鍵の操作には、離鍵の途中から次の押鍵に移ったり、あるいは、押鍵の途中から離鍵されたりする場合がある。このような場合においては、作成した押鍵軌道と離鍵軌道とが交差する。
例えば、図9はこのような軌道の交差状態を示しており、図示の状態では、時刻t0から時刻tcまで押鍵が行われ、時刻tcから時刻t4まで離鍵が行われている。このとき、上述の方法によって生成される押鍵軌道は、時刻t0にレスト位置X0を離れ、時刻t3においてエンド位置Xeに達する軌道であり、また、離鍵軌道は時刻t0Nにエンド位置Xeを離れ、時刻t4においてレスト位置X0に達する軌道である。
【0052】
ここで、交差する時刻tcを求めることができれば、t0〜tcまでは押鍵軌道に基づいて鍵1を制御し、tc〜t4までは離鍵軌道に基づいて鍵を制御すればよい。ここで、図9に示すような、押鍵の後に発生した離鍵の軌道が交差する場合は、交差時刻tcは次のようにして求めることができる。
【0053】
【数9】
Figure 0003821116
なお、数9におけるt3は、次式により算出される。
【0054】
【数10】
3=t0+(Xe−X0)/V0
また、離鍵の後に発生した押鍵の軌道が交差する場合も、2つの直線軌道の交点を求めればよいので、上記と同様の考え方により交差時刻を求めることができる。
このようにして、交差時刻を求め、押鍵軌道と離鍵軌道を組み合わせることにより、交差時の軌道データを作成する。以上が、再生前処理部10における軌道データの作成であり、このようにして作成された軌道データは、図6に示すモーションコントローラ11に供給される。モーションコントローラ11においては、作成された軌道データに基づいて、各時刻における鍵1の位置に対応した位置制御データ(X)を作成し、サーボコントローラ12に供給する。
【0055】
サーボコントローラ12は、位置制御データ(X)に応じた励磁電流をソレノイド5に供給するとともに、ソレノイド5から供給されるフィードバック信号と制御データ(X)を比較し、両者が一致するようにサーボ制御を行う。
【0056】
(ロ)第2実施例の動作
始めに、記録動作について説明する。まず、演奏者によって演奏が行われると、演奏記録部30がセンサSE1,SE2の出力信号に基づいて打弦速度および打弦時刻を検出するとともに、センサ25の出力信号に基づいて離鍵時刻および離鍵速度を検出する。これらの情報は、記録後処理部31において正規化処理された後に、演奏情報としてフロッピーディスク等の記録媒体に記録される。
【0057】
次に、再生動作について説明すると、まず、再生前処理部10は、記録媒体から演奏情報を読み出し、その中の打弦時刻データおよび打弦速度データに基づいて、押鍵軌道を作成する。
作成された押鍵軌道データは、モーションコントローラ11に供給され、ここで、位置制御データ(X)に変換される。すなわち、押鍵開始時刻t0になると、数3に示される軌道データがモーションコントローラ11に供給され、モーションコントローラ11は、数3のXを時間経過とともに順次演算し、位置制御データ(X)を作成する。この位置制御データ(X)は、サーボコントローラ12に供給され、これにより、数3のXに対応した励磁電流がソレノイド5に供給される。この場合、サーボコントローラ12は、ソレノイド5のフィードバック信号と位置制御データ(X)とを比較し、両者が一致するように励磁電流を制御するから、ソレノイド5のプランジャの突出量は、数3のXに対応したものとなる。したがって、鍵1は数3で示される直線軌道に従って押下されていき、リファレンスポイントXrにおいてリファレンス速度Vrを有する運動を行う。これにより、記録時の打弦強度を忠実に再現する打弦が行われる。
【0058】
次に、再生前処理部10は、演奏情報の中の離鍵時刻データ、離鍵速度データに応じて、離鍵軌道を作成し、モーションコントローラ11に供給する。モーションコントローラ11は、上述の場合と同様にして、数6のXNを時間の経過に応じて順次演算し、位置制御データ(X)を作成し、サーボコントローラ12に供給する。この結果、サーボコントローラ12は数6に対応した励磁電流制御を行い、鍵1は数6で示される直線軌道に従ってレスト位置X0に戻っていく。これにより、鍵1の運動は、離鍵リファレンスポイントXrNにおいて離鍵リファレンス速度VrNを有するものとなり、記録時の離鍵状態が忠実に再現される。一方、連打等が行われ、押鍵軌道と離鍵軌道が交差するときは、再生前処理部10が数10によって交差時刻tcを演算し、この時刻を境に、押鍵軌道と離鍵軌道を切り換えてモーションコントローラ11に供給する。これにより、鍵1は押鍵軌道の途中から離鍵軌道に、あるいは離鍵軌道の途中から押鍵軌道に切り換えられ、いわゆる、ハーフストロークの奏法に従った運動を行う。
【0059】
C:第3実施例
(イ)第3実施例の構成
次に、この発明の第3の実施例について説明する。この実施例が前述した第2の実施例と異なる点は、演奏記録部30において、打弦速度とともにキーオン速度も検出する点と、再生前処理部10において放物線の軌道データを作成する点である。そこで、説明の簡略化のため、第3実施例の構成については、第2実施例の構成を示す図6を兼用して説明する。
【0060】
この実施例における演奏記録部30は、キーセンサ25内の上方のフォトセンサが遮光されてから下方のフォトセンサが遮光されまでの時間を計測し、ここからキーオン速度Vkを検出する。また、下方のフォトセンサが遮光された時刻をキーオン時刻tk2として検出する。これらのデータは、打弦速度等のデータと共に、記録後処理部31を介して記録媒体に書き込まれる。
また、この実施例における再生前処理部10は、押鍵時の鍵軌道として放物線、離鍵の鍵軌道として直線を想定するので、次のような手法で軌道データの作成を行う。
【0061】
▲1▼押鍵時の軌道データ作成
押鍵軌道を次のように規定する。
【0062】
【数11】
X=a/2・t2+b・t+c
ここで、aは加速度であり、次式によって求める。
【0063】
【数12】
a=(Vr−Vk)/(tr−(tk1+tk2)/2)
数12におけるリファレンス速度Vrは、前述の実施例と同様に、数1を用いて打弦速度から求める。また、tk1は、次式によって求めることができる。
【0064】
【数13】
tk1=tk2−Xd/Vk
ここで、Xdは、キーセンサ25内に設けられる2つのセンサの取り付け間隔である。また、図10は、この実施例における放物線軌道を示す図であり、図において、Xk2、Xk1は、キーセンサ25内に設けられる2つのセンサの取り付け位置である。この図からも判るように、キーオン速度Vkは、シャッタ26がXk1とXk2の間を通過する間の平均速度であり、放物線軌道においては、中間時刻である時刻(tk1+tk2)/2における速度である。
前述した数12は、リファレンス速度Vrとキーオン速度Vkの速度差を、リファレンス時刻trと中間時刻(tk1+tk2)/2の時間差で除したもので、言い替えれば、リファレンスポイントXrとセンサ中間点との間の速度変化から加速度を算出するものである。なお、加速度一定という推定のもとでは、任意の2点間の速度変化を基にして加速度を検出することができる。
【0065】
以上のことから判るように、演奏データ中の打弦時刻と打弦速度から、リファレンス時刻trとリファレンス速度Vrが求められ、さらに、キーオン速度Vkとキーオン時刻tk2を参照して加速度aが求められる。
したがって、あとは押鍵開始時刻と初速度が求められれば、図10に示す放物線軌道に沿ってキーを駆動できることになる。次に、これらの求め方について説明する。
まず、図11に示すように、押鍵開始時刻をt0、初速度をV0とすれば、数11における係数bは、
【0066】
【数14】
b=V0−a・t0
と表され、また、数11における定数cは、
【0067】
【数15】
c=X0−(a/2)・t0 2+b・t0
と表される(ただし、数15におけるX0は前述のようにレスト位置)。
ここで、押鍵開始時刻を基準(=0)にした場合のリファレンス時刻をtr'とし、さらに、数14、数15を用いて、数11をリファレンスポイントXrにおける式に書き直すと次式になる。
【0068】
【数16】
Xr=(a/2)・tr'2+V0・tr'+X0
ここで、リファレンス速度Vrは、
【0069】
【数17】
Vr=a・tr'+V0
と表すことができるから、この関係を数16に代入して整理すると、
【0070】
【数18】
0=(a/2)・tr2−Vr・tr'−(X0−Xr)
となり、ここから、tr'を求めると、
【0071】
【数19】
tr'=(Vr−(Vr2+2a(X0−Xr))1/2)/a
となる。したがって、加速度a、リファレンス速度Vr、リファレンスポイントXr、およびレスト位置X0が既知であれば、鍵が押鍵開始時からリファレンスポイントXrに至るまでの時刻tr'が求められる。また、リファレンス時刻trと押鍵開始時刻t0の関係は、
【0072】
【数20】
tr'=tr−t0
であるから、数20を用いて、押鍵開始時刻t0が求められる。
また、数16に数17を代入して初速度V0について整理して解けば、
【0073】
【数21】
0=(Vr2+2a(X0−Xr))1/2
となり、これにより初速度V0を求めることができる。
したがって、以上のようにして求めた初速度V0、加速度aを、数11に代入して軌道を求め、押鍵開始時刻t0からその軌道に従って鍵を駆動することにより、打弦時刻と打弦速度とを正確に再現することができる。しかも、人間の鍵操作に近い放物線軌道なので、演奏者の微妙なニュアンスまで表現することが可能になる。
なお、時刻t0から初速度V0で鍵を駆動し、後は、加速度aに対応した速度変化分を用いて速度制御を行っても、上記と同様の効果が奏することができる。
【0074】
離鍵時の軌道データ作成離鍵については、直線軌道を想定するので、前述した第2実施例と同様の離鍵軌道データ作成を行う。
【0075】
交差時の軌道データ作成この実施例における押鍵軌道と離鍵軌道の交差は、放物線軌道と直線軌道との交差であるので、交差時刻tcは、次のようにして求めることができる。
【0076】
【数22】
tc=(−Δb+(Δb2−2・Δa・Δc)1/2)/Δa
ただし、数22におけるΔaは、
【0077】
【数23】
Δa=a−aN
であり、aNは、離鍵時の加速度である。この実施例の場合は、離鍵時の加速度は0であるので、Δa=a(押鍵時の加速度)となる。
また、数22におけるΔbは、
【0078】
【数24】
Figure 0003821116
であり、Δcは、
【0079】
【数25】
Figure 0003821116
である。
このようにして、交差時刻tcを求め、押鍵軌道と離鍵軌道を組み合わせることにより、交差時の軌道データを作成する。
【0080】
以上が、第3実施例における再生前処理部10の軌道データ作成処理である。このようにして作成された軌道データは、図6に示すモーションコントローラ11に供給され、モーションコントローラ11においては、作成された軌道データに基づいて、各時刻における鍵1の位置に対応した位置制御データ(X)を作成し、サーボコントローラ12に供給する。このモーションコントローラ11とサーボコントローラ12の構成は、第2実施例と同様になっている。
【0081】
(ロ)第3実施例の動作
次に、第3実施例の動作について説明するが、概ね、第2実施例の動作と同じであるため、異なる点だけを説明する。
まず、記録動作は、演奏記録部30がセンサ25の出力信号に基づいてキーオン時刻およびキーオン速度をも検出し、記録後処理部31において正規化処理された後に、演奏情報の一つとしてフロッピーディスク等の記録媒体に記録される。
【0082】
次に、再生動作について説明すると、まず、再生前処理部10は、記録媒体から演奏情報を読み出し、その中の打弦時刻データ、打弦速度データ、キーオン速度データおよびキーオン時刻データに基づいて、放物線の押鍵軌道を作成する。
作成された放物線の押鍵軌道データは、モーションコントローラ11に供給され、ここで、位置制御データ(X)に変換される。すなわち、押鍵開始時刻t0になると、数11に示される軌道データがモーションコントローラ11に供給され、モーションコントローラ11は、数11のXを時間経過とともに順次演算し、位置制御データ(X)を作成する。この位置制御データ(X)は、サーボコントローラ12に供給され、これにより、数3のXに対応した励磁電流がソレノイド5に供給される。この場合、サーボコントローラ12は、ソレノイド5のフィードバック信号と位置制御データ(X)とを比較し、両者が一致するように励磁電流を制御するから、ソレノイド5のプランジャの突出量は、数11のXに対応したものとなる。したがって、鍵1は数11で示される放物線軌道に従って押下されていき、リファレンスポイントXrにおいてリファレンス速度Vrおよび加速度aを有する運動を行う。この結果、記録時の打弦強度を忠実に再現する打弦が行われる。しかも、人間の演奏状態に近い放物線軌道により、加速度をも再現するので、演奏の微妙なニュアンスも再現される。
また、押鍵軌道と離鍵軌道が交差するときは、再生前処理部10が数21によって交差時刻tcを演算し、この時刻を境に、押鍵軌道と離鍵軌道を切り換えてモーションコントローラ11に供給する。これにより、鍵1は放物線の押鍵軌道の途中から直線の離鍵軌道に、あるいは直線の離鍵軌道の途中から放物線の押鍵軌道に切り換えられ、いわゆる、ハーフストロークの奏法に従った運動を行う。
【0083】
ここで、図12に本実施例によって鍵駆動した場合の実験例を示す。この図12に示す3つのグラフは、いずれも横軸が時間であり、縦軸が鍵のレスト位置X0からの移動量を示している。
この図に示す(イ)は、演奏者が実際に演奏を行った場合の鍵の軌道を示しており、図に示す時刻t10、t11の付近はハーフストローク奏法のために、鍵がレスト位置X0に戻る前に次の押鍵動作に入っている。また、時刻t12付近は、鍵は動いているが打弦は行われなかった部分である。また、図12(イ)に示す演奏から得られる打弦時刻、打弦速度、キーオン時刻、キーオン速度、離鍵時刻および離鍵速度を基にして、本実施例において再現した押鍵軌道および離鍵軌道が同図(ハ)に示す軌道である。また、同図(ロ)は、同図(イ)および(ハ)に示す2つの軌道を重ねたものであり、両者が良く一致していることが判る。例えば、ハーフストロークの部分については、再生軌道もハーフストローク軌道になっており、打弦が行われなかった時刻t12の部分については、再生軌道は鍵を押し切った状態が継続されている。
【0084】
また、図13は、図12の一部を拡大したものであり、この図からも実際の演奏による鍵軌道と、実施例において再現した鍵軌道との一致性が確認される。なお、実際の演奏による鍵軌道に対して、実施例で再現した鍵軌道は揺らぎが少なく一見単純に見えるが、図12(イ)の軌道に含まれる揺らぎは、演奏者の意図とは違った部分(ミスによる部分、もしくは、アクション機構特性によって生じる演奏に関係しない部分)がほとんどである。したがって、実施例による軌道は、演奏者の意図とは違った部分を除外し、理想に近づいた軌道であると言える。
【0085】
(ハ)第3実施例の変形
▲1▼ダンパー離弦タイミングの再現
鍵を押下していくと、まず、ダンパー6(図6参照)が弦から離れ、次いで、ハンマ2が打弦を行うことは周知の通りである。この場合、ダンパー6が弦から離れても、打弦が行われるまでは音は発生しないから、ダンパー6の離弦を正確に再現しても意味がないという考えもある。しかしながら、複数の鍵を同時あるいは近接したタイミングで押鍵する場合などには、他の弦の振動や共鳴の影響のために、打弦前であっても、ダンパーが離れていれば、その弦が振動することがある。したがって、演奏における他の弦の影響を忠実に再現するために、ダンパーの離弦タイミングを正確に再現することも重要であると言える。
そこで、以下のようにして、ダンパー離弦タイミングを推定する。まず、前述のように、キーオン時刻をtk2、キーオン速度をVkとし、キーオン位置(鍵1に設けられたシャッタ26がキーセンサ25内の下方のフォトセンサを遮光したときの鍵の位置)をXk2とする。次に、図14に示すように、ダンパーの離弦に対応する鍵の位置をX1とし、キーオン速度Vkの傾きに沿って直線を引く。そして、この直線と位置X1との交点の時刻をダンパー離弦時刻t1と推定する。すなわち、ダンパー離弦時刻t1は次式によって求められる。
【0086】
【数26】
1=tk2−(Xk2−X1)/Vk
以上のようにして、ダンパー離弦時刻t1が求められれば、前述の各実施例と同様にしてリファレンス速度Vrおよびリファレンス時刻trを求め、これらを満たす放物線軌道を求める。この放物線軌道を図15に示す。この軌道は、次のように表される。
【0087】
【数27】
X=(((X1−Xr)−Vr・(t1−tr))/(t1−tr)2)・t2+Vr・t
したがって、数27に示される軌道にしたがって、ソレノイドの励磁電流を制御すれば、ダンパー離弦時刻を正確に再現することができる。なお、励磁電流の制御は、前述した各実施例と同様に行えばよい。
【0088】
▲2▼加速度、初速度の固定
第3実施例においては、押鍵時の加速度aと初速度V0の双方を演算によって求めるようにしたが、いずれか一方を固定値にして、計算を簡略化してもよい。この場合の固定値は、実験等を繰り返すことによって、統計的に適切な値を決めることが望ましい。例えば、加速度aを固定する場合には、a=2.5m/s2に設定すると、比較的良好な結果が得られることが判った。ここで、a=2.5m/s2にした場合の実験結果を図16に示す。
【0089】
この図に示す(イ)は、演奏者が実際に演奏を行った場合の鍵の軌道を示しており、(ハ)は同図(イ)に示す演奏から得られる打弦時刻、打弦速度を基にするとともに、加速度を固定して再現した押鍵軌道を示す。すなわち、前述した数11に示す軌道における加速度aの値を固定し、数12に示す加速度算出を省略して押鍵軌道を求めたものである。なお、離鍵軌道は、直線軌道であるため、前述の実施例と同様である。
また、同図(ロ)は、同図(イ)および(ハ)に示す2つの軌道を重ねたものであり、両者が良く一致していることが判る。例えば、ハーフストロークの部分についても、良好な一致性が認められる。なお、図17(イ)、(ロ)、(ハ)は、図16(イ)、(ロ)、(ハ)の軌道を一部拡大したものである。
以上のように加速度を固定すると、演算が省略できるため、処理速度が早くなるとともに、キーオン速度Vkおよびキーオン時刻tk2の検出が不要になるため、装置構成としては第2実施例の構成であっても実施することができる。
【0090】
次に、初速度V0を固定した場合について説明する。この場合には、数20の演算を省略し、予め設定した初速度V0を用いて数11に示す軌道を演算すればよい。ここで、初速度V0を0.1m/sにした場合の実験結果を図18に示す。
この図に示す(イ)は、演奏者が実際に演奏を行った場合の鍵の軌道を示しており、(ハ)は同図(イ)に示す演奏から得られる打弦時刻、打弦速度を基にするとともに、初速度V0を固定して再現した押鍵軌道を示す。すなわち、前述した数20の初速度演算を省略して初速度V0を固定し、この条件の基で数11に示す押鍵軌道を求めたものである。なお、離鍵軌道は、直線軌道であるため、前述の実施例と同様である。そして、同図(ロ)は、同図(イ)および(ハ)に示す2つの軌道を重ねたものであり、両者が良く一致していることが判る。なお、図19(イ)、(ロ)、(ハ)は、図18(イ)、(ロ)、(ハ)の軌道を一部拡大したものである。
【0091】
D:変形例
この発明においては、上述した各実施例に対し、以下に述べる種々の変形が可能である。
▲1▼サーボ制御の変形
上述した各実施例においては、モーションコントローラ11とサーボコントローラ12によって位置サーボ制御を行っていたが、これに代えて、第2実施例では速度を指示する速度サーボ制御を行っても良い。すなわち、モーションコントローラ11が押鍵(あるいは離鍵)開示時刻において初速度を指示し、サーボコントローラ12は鍵1が与えられた速度を保つようにサーボ制御を行うようにしてもよい。また、第3実施例においては、加速度制御を行うようにしてもよい。すなわち、モーションコントローラ11が押鍵開始時刻において初速度を指定し、以後は時間の経過とともに速度の変化分を順次指示する。そして、サーボコントローラ12は、速度変化分を累算して、現時点の速度を算出し、鍵1の速度が累算速度に一致するようにサーボ制御を行う。
【0092】
▲2▼推定した加速度情報の電子楽器への応用
第3実施例において推定した加速度aは、自動ピアノの押鍵制御に限らず、電子楽器等の楽音制御に用いることができる。すなわち、加速度の推定は、押鍵速度情報と打弦速度情報がそれぞれ1以上あれば可能であるから、これらの情報を基に加速度を推定し、それを楽音制御情報として用いることができる。例えば、楽音波形を複数記憶し、これらの波形を音の強さや、高さに応じて選択して読み出す電子楽器があるが、この電子楽器に、さらに加速度情報に応じた波形選択を行わせると、発生楽音の表情がいっそう豊かになるという利点が得られる。
【0093】
さらに、第3実施例においては、キーオン速度Vkとリファレンス速度Vrの偏差に基づいて加速度を推定したが、打弦速度とキーオン速度Vkの差から推定するようにしてもよい。また、打弦速度を2カ所以上で検出するように、これらの速度差から推定してもよく、さらに、押鍵速度を2カ所以上で検出するようにし、これらの速度差から検出してもよい。
【0094】
また、加速度の推定は、記録時に行っても、再生時に行ってもよく、これらの中間において行っても良い。例えば、記録媒体から演奏情報を読み取る際に、加速度推定を行って他の記録媒体に記録するようにしてもよい。
【0095】
▲3▼リファレンスポイントXrにおける運動属性の変形
上述した各実施例においては、リファレンスポイントXrにおける鍵の速度や加速度を再現するようにしたが、鍵の運動を一意的に再現できるのであれば、その他の運動属性を再現するようにしてもよい。例えば、速度、加速度、力のいずれか、あるいは、これらの組み合わせを用いても良い。
【0096】
▲4▼離鍵時の加速度軌道
上述した各実施例においては、離鍵時の軌道は全て直線軌道であったが、これを加速度軌道としてもよい。この場合には、離鍵速度を2カ所以上で測定するようにセンサを追加し、得られた速度の変化から加速度を推定するように構成すればよい。例えば、キーセンサ25内のフォトセンサの数を増やし、演奏記録部30がこれらのセンサの出力信号から2カ所以上の離鍵速度を検出するようにすればよい。
さらに、押鍵時と離鍵時の軌道を直線とするか放物線とするかは、任意に組み合わせることが可能である。
【0097】
▲5▼開平演算態様
第3実施例における初速算出演算(数20)および押鍵開始時刻算出演算(数18、19)は、開平演算が入るが、ソフトウエア上の演算速度が問題になる場合は、例えば、2分探索法を用いて、正数演算をしてもよい。
【0098】
▲6▼弱音の再生
実際の押鍵操作においては、強打よりも弱打において放物線軌道をとる傾向が強く、直線軌道での再現では再現性が悪化してくる。特に、最弱打(pppp)に近い押鍵を直線軌道で再現しようとすると、ピアノのアクション部における構造などの理由から、ハンマへの力伝達が行われず不安定な打弦となることがある。そこで、第2実施例においては、弱音だけを検出して放物線軌道で再現するようにし、その他の音は直線軌道で再現するように構成してもよい。すなわち、再生前処理部10において、打弦速度データを所定のしきい値で振り分け、弱音と判定された音に対しては、予め設定した加速度aを用いて放物線軌道を算出し、これによって鍵を駆動する。
【0099】
▲7▼打弦時刻、打弦速度の代用
例えば、特開平1−239594号では、押鍵速度から打弦速度を推定して記録するようにしているが、このように、打弦速度に代わるデータが記録されている場合は、前述した各実施例において、それを用いることも可能である。したがって、MIDI信号中のキーオン速度(キーベロシティ)のように、打弦速度に対応するデータが記録されている場合においては、これを用いて軌道演算を行うことができる。打弦時刻についても、これに代わるデータがあれば、代用することができる。要は、発音時刻や発音強度に関連したデータ(発音時刻を示す発音時刻情報および発音強度を示す発音強度情報)であれば、用いることができる。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、鍵のレスト位置からエンド位置までの範囲内に予め設定された所定点(リファレンスポイント)であって、鍵の速度とハンマーの打弦による発音強度とが特定の関係を示す所定点での速度を含む一連の押鍵操作における2以上の押鍵速度情報、一連の押鍵操作における2以上の打弦速度情報、または一連の押鍵操作における押鍵速度情報および打弦速度情報を用い、これらの速度の変化から前記押鍵操作についての押鍵加速度を算出し、この押鍵加速度を用いて鍵の放物線軌道を算出する。そして、この算出された放物線軌道に基づき、前記鍵の駆動を制御する。特に、鍵の軌道に、人間の鍵操作軌道に近い放物線軌道を採用しているから、演奏者による微妙なニュアンスの演奏をも再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】 図2はリファレンスポイントを9.5mmに設定したときの鍵速度と打弦速度の関係を示す図である。
【図3】 リファレンス時間差Trと打弦速度との関係を示す図である。
【図4】 図3を縮尺2倍にした図である。
【図5】 図3を縮尺4倍にした図である。
【図6】 第2実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】 鍵の押鍵軌道(直線軌道)を示す図である。
【図8】 数6で示される軌道を示す図である。
【図9】 押鍵の後に発生した離鍵の軌道が交差する場合を示す図である。
【図10】 第3実施例で用いる放物線軌道を示す図である。
【図11】 第3実施例における押鍵開始時刻の算出を説明するための図である。
【図12】 第3実施例において、鍵駆動した場合の実験例を示す図である。
【図13】 図12の一部を拡大した図である。
【図14】 ダンパーの離弦時刻推定方法を説明するための図である。
【図15】 ダンパー離弦時刻を再現した場合の放物線軌道を示す図である。
【図16】 第3実施例において加速度を固定した場合の実験結果を示す図である。
【図17】 図16の一部を拡大した図である。
【図18】 第3実施例において初速度を固定した場合の実験結果を示す図である。
【図19】 図18の一部を拡大した図である。
【図20】 一般的な自動ピアノの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
5……ソレノイド(鍵駆動手段:サーボ駆動手段)、10……再生前処理部(運動属性算出手段:軌道算出手段:弱音抽出手段)、11……モーションコントローラ(鍵駆動手段:指令値出力手段)、12……サーボコントローラ(鍵駆動手段:サーボ駆動手段)。

Claims (1)

  1. 鍵の押下によってハンマーを回動させ、当該ハンマーの動作によって発音動作を行う自動ピアノであって、
    前記鍵のレスト位置からエンド位置までの範囲内に予め設定された所定点であって鍵の速度とハンマーの打弦による発音強度とが特定の関係を示す所定点での速度を含む一連の押鍵操作における2以上の押鍵速度情報、一連の押鍵操作における2以上の打弦速度情報、または一連の押鍵操作において鍵の動きを検出するキーセンサが検出する区間での押鍵速度情報および打弦速度情報を用い、これらの速度の変化から前記押鍵操作についての押鍵加速度を算出する押鍵加速度算出手段と、
    前記押鍵加速度算出手段によって算出された押鍵加速度を利用して、鍵の放物線軌道を算出する軌道算出手段と、
    前記軌道算出手段によって算出された放物線軌道に基づき、前記鍵の駆動を制御する制御手段と、を備えた
    ことを特徴とする自動ピアノ。
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