JP3627322B2 - 自動ピアノ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動ピアノに関するものであり、特に変化系奏法に好適な装置である。
【0002】
【従来の技術】
自動ピアノにあっては、演奏者が鍵を押下すると、これに連動してダンパが弦から離れるとともにハンマが回転し、打弦が行われる。また、離鍵が行われるとダンパが弦に接して消音が行われる。このように楽音は、押鍵→打弦→離鍵→消音という一連の動作によって発生されるのが通常である。このため、記録時には上記各動作に基づいて演奏情報を生成して記録し、再生時には読み出された演奏情報に基づいて鍵の動作を制御することが行われる。この場合の鍵の制御においては、演奏情報に基づいて、ソレノイドを励磁して鍵を駆動し、これに応じてハンマが回転して打弦を行なう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ピアノの演奏法には、鍵をエンド位置まで押し切った後に、レスト位置まで戻し切る通常奏法の他、種々の変化系奏法もある。具体的には、以下の奏法が該当する。
【0004】
例えば、上連打奏法は、完全に押鍵される(鍵をエンド位置まで押し切る)前に離鍵が開始されるのを繰り返す奏法である。一方、下連打奏法は、完全に離鍵される(鍵をレスト位置まで戻し切る)前に押鍵が開始されるのを繰り返す奏法である。また、不規則連打奏法は、上連打奏法と下連打奏法とを適宜組み合わせた奏法である。また、サイレントノート奏法は、ゆっくりと押鍵し、打弦することなくダンパを解除する(ダンパを弦から離間させる)奏法である。また、グリッサンドの如く、鍵の押下量の少ない浅いタッチ呼ばれる奏法や、2打目にはほとんど鍵を動かさない連続打奏法もある。さらに、実際の演奏にあっては、打弦までは至らなくとも鍵に触れてしまうミスタッチも生ずる。これらの変化系奏法は、楽曲の表情を豊かにし、演奏者の個性を表現するものであるため、自動ピアノにあっても再現できることが望ましい。
【0005】
しかし、従来の自動ピアノは、通常奏法に対応して演奏情報を生成していたので、上記した各種の変化系奏法で演奏された場合には、楽曲を十分に再現できる演奏情報を生成することができなかった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑がみてなされたものであり、変化系奏法で演奏された楽音を十分に再現できる演奏情報を生成して記録し、この演奏情報に基づいて楽音を再生すること等を主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段と、鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構とを有する自動ピアノにおいて、前記鍵および前記打弦機構のうち、予め定めた部分の動きから発音状態を検出する発音検出手段と、前記鍵および前記消音機構のうち、予め定めた部分の動きから消音状態を検出する消音検出手段と、前記発音検出手段および前記消音検出手段の検出結果に応じて発音指示データおよび消音指示データを出力する発音消音指示データ出力手段と、本来対になるべき前記発音指示データと前記消音指示データのうちいずれか一方しか出力されない場合、それを識別する識別データを出力する識別データ出力手段と、前記発音指示データ、前記消音指示データおよび前記識別データを演奏情報として記録する記録手段と、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来対になるべき発音指示データと消音指示データが揃っている場合には、それらに基づいて鍵軌道を生成し、前記識別データが読み出された場合には、欠落していないデータに基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段とを具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段を有する自動ピアノにおいて、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下されたことを検出して、その状態を示す押鍵情報を生成する押鍵情報生成手段と、前記ハンマの動きから打弦がなされたことを検出し、その状態を示す打弦情報を生成する打弦情報生成手段と、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放されたことを検出して、その状態を示す離鍵情報を生成する離鍵情報生成手段と、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、これを識別する識別情報を生成する識別情報生成手段と、前記押鍵情報、前記打弦情報、前記離鍵情報および前記識別情報を演奏情報として記録する記録手段と、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段とを具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段を有する自動ピアノにおいて、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下されたことを検出して、その状態を示す押鍵情報を生成する押鍵情報生成手段と、前記ハンマの動きから打弦がなされたことを検出し、その状態を示す打弦情報を生成する打弦情報生成手段と、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放されたことを検出して、その状態を示す離鍵情報を生成する離鍵情報生成手段と、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、これを識別する識別情報を生成する識別情報生成手段と、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、その情報を推定して補足情報を生成する補足情報生成手段と、前記押鍵情報、前記打弦情報、前記離鍵情報、前記識別情報および前記補足情報を演奏情報として記録する記録手段と、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報および前記補足情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段とを具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、前記演奏情報は、発音指示データおよび消音指示データの少なくともひとつを含み、さらに、本来対になるべきこれらのデータが当該演奏情報の生成時に一方しか出力されなかった場合にはそれを識別する識別データを含み、前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来対になるべき発音指示データと消音指示データが揃っている場合には、それらに基づいて鍵軌道を生成し、前記識別データが読み出された場合には、欠落していないデータに基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、前記演奏情報は、押鍵情報、打弦情報および離鍵情報の少なくともひとつを含み、さらに、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されなかった場合にはそれを識別する識別情報を含み、前記押鍵情報は、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下された状態を示す情報であり、前記打弦情報は、前記ハンマによって打弦がなされた状態を示す情報であり、前記離鍵情報は、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放された状態を示す情報であり、前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明にあっては、鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、前記演奏情報は、押鍵情報、打弦情報および離鍵情報の少なくともひとつを含み、さらに、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されなかった場合には、それを識別する識別情報と、生成されなかった情報を推定することによって生成された補足情報とを含み、前記押鍵情報は、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下された状態を示す情報であり、前記打弦情報は、前記ハンマによって打弦がなされた状態を示す情報であり、前記離鍵情報は、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放された状態を示す情報であり、前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報および前記補足情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
1.実施形態の構成
1−1 全体構成
以下、図面を参照してこの発明の実施形態の構成について説明する。図1はこの発明の一実施形態のブロック図である。
図1において、1は鍵であり、3は鍵1の運動をハンマ2に伝達するアクションである。4は、ハンマ2によって打弦される弦であり、5は鍵1を駆動するソレノイドである。この場合、ソレノイド5のプランジャが突出すると、鍵1がバランスピンPを中心に回動し、演奏者側に下がり(以下、この状態を押鍵状態という)、また、これに連動してアクション機構3が作動し、ダンパー6が弦4から離れるとともに、ハンマ2が回動して打弦する。一方、演奏者が弾く場合は、指で鍵1を押下することにより、上述と同様の作用が生じて打弦が行われる。
【0014】
また、図において、SE1,SE2は、打弦速度を計測するためのセンサであり、演奏記録部30は、ハンマ2がこれらのセンサSE1,SE2の間を通過する時間を計測することにより、ハンマ2の速度、すなわち打弦速度を計測し、また、ハンマ2がセンサSE1を通過する時刻を打弦時刻として検出する。
【0015】
次に、26は鍵1の下面に取り付けられた板状のシャッタである。25は、上下方向に所定距離隔て設けられている2組のフォトセンサSF2,SF3によって構成されるキーセンサであり、鍵1が押下され始めると、まず上方のフォトセンサSF2が遮光され、次いで、下方のフォトセンサSF3が遮光される。離鍵の際には、下方のフォトセンサSF3が受光状態となり、次いで、上方のフォトセンサSF2が受光状態になる。
【0016】
キーセンサ25の出力信号は、演奏記録部30に供給される。押鍵時にあっては、演奏記録部30は、上方のフォトセンサSF2が遮光状態になってから下方のフォトセンサSF3が遮光状態となるまでの時間を測定し、ここから押鍵速度Vkを検出する。また、演奏記録部30は下方のフォトセンサSF2が遮光状態となった時刻を押鍵時刻tkとして検出する。
【0017】
一方、離鍵時にあっては、演奏記録部30は、下方のフォトセンサSF3が受光状態になってから上方のフォトセンサSF2が受光状態となるまでの時間を測定し、ここから離鍵速度VkNを検出する。また、演奏記録部30は上方のフォトセンサSF1が受光状態となった時刻を離鍵時刻tkNとして検出する。
【0018】
記録後処理部31においては、演奏記録部30から供給される各種情報に対して、正規化処理を施し、所定のデータ形式に変換した後に、外部の記録媒体に演奏情報として供給する。ここで正規化処理とは、ピアノの個体差を吸収するための処理である。すなわち、打弦時刻、打弦速度、第1,第2の押鍵時刻、押鍵速度、第1,第2の離鍵時刻、または離鍵速度等は、各ピアノにおけるセンサの位置や、構造上の違い、あるいは機械的誤差によって固有の傾向を持つため、標準となるピアノを想定し、そのピアノにおける打弦時刻、打弦速度等に変換するための処理である。
【0019】
10は再生前処理部であり、記録メディアあるいはリアルタイム通信装置から供給される演奏データに基づいて、鍵の軌道データを作成するとともに軌道データを用いて鍵の位置データ(t,X)を作成する回路である。再生前処理部10で作成された位置データ(t,X)は、モーションコントローラ11に供給される。モーションコントローラ11は、供給された位置データ(t,X)に基づいて、各時刻における鍵1の位置に対応した位置制御データ(X)を作成し、サーボコントローラ12に供給する。
サーボコントローラ12は、位置制御データ(X)に応じた励磁電流をソレノイド5に供給するとともに、ソレノイド5から供給されるフィードバック信号と制御データ(X)を比較し、両者が一致するようにサーボ制御を行う。
【0020】
1−2 演奏情報
次に、記録後処理部31において生成される演奏情報について説明する。演奏情報のデータ形式を図2に示す。演奏データは、押鍵、打弦または離鍵等の各動作を単位として生成され、この1単位をイベントと称する。また、イベントには、通常奏法で検出される正規イベントと、変化系奏法で検出される変則イベントとがある。
【0021】
楽曲の演奏データは、イベントを組合せることによって表されるが、再生時に鍵軌道を再現するためにはイベントの発生時刻(以下、イベント時刻と称する)を特定する必要がある。このため、楽曲の演奏データは、イベント間にそれらの時間差を示すインターバルと呼ばれるデータを介挿して構成される。
【0022】
1イベントの演奏データは、図2(A)に図示する3バイトのデータからなる。第1バイトには、正規イベントの種類を示すデータを書き込む。正規イベントの種類には、各動作に対応した押鍵イベント、打弦イベントおよび離鍵イベントがある。また、第2バイトと第3バイトの上位4ビットには、速度を示すデータを書き込む。さらに、第3バイトの下位ビットには、このイベントが正規イベントであるか変則イベントであるかを識別する識別データを書き込む。この識別データ値が「0」であれば正規イベントであり、「8」であれば変則イベントである。
【0023】
図2(B)は、タイムインターバルを示すデータである。第1ビットのデータ値「F,3」は、これに続く第2バイトがタイムインターバルであることを示している。以下、各種のイベントについて具体的に説明する。
【0024】
▲1▼押鍵イベント
押鍵イベントは、鍵1が押し下げられ、上方のフォトセンサSF2が遮光され、次いで、下方のフォトセンサSF3が遮光された際に生成される。また、押鍵イベントのイベント時刻は、鍵1が下方のフォトセンサSF3を通過した押鍵時刻tkとする。
【0025】
押鍵イベントのデータ形式を、図2(C)に示す。第1バイトのデータ値「A,0」は、このイベントが押鍵に関するイベントであることを示している。また、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでの12ビットには、押鍵速度Vkを示す押鍵速度データが書き込まれる。また、押鍵イベントは、正規イベントであるので、第3バイトの下位4ビットの識別データ値を「0」とする。
【0026】
▲2▼打弦イベント
打弦イベントは、ハンマ2がセンサSE1を通過した際に生成される。また、打弦イベントのイベント時刻は、ハンマ2がセンサSE1を通過する打弦時刻とする。
【0027】
打弦イベントのデータ形式を、図2(D)に示す。第1バイトのデータ値「9,0」は、打弦を示している。また、第2バイトと第3バイトの上位4ビットには、打弦速度VHを示す打弦速度データを書き込む。また、打弦イベントは正規イベントであるから、識別データ値を「0」とする。なお、再生時に読み出されたイベントが打弦イベントであるか否かは、第1バイトのデータ値が「9,0」であるか否かによって、判別される。
【0028】
▲3▼離鍵イベント
離鍵イベントは、鍵1が戻され、下方のフォトセンサSF3が受光状態となり、次いで、上方のフォトセンサSF2が受光状態となった際に生成される。また、離鍵イベントのイベント時刻は、鍵1が上方のフォトセンサSF2を通過する離鍵時刻tkNとする。
【0029】
離鍵イベントのデータ形式を、図2(E)に示す。第1バイトのデータ値「8,0」は、このイベントが離鍵に関するイベントであることを示している。また、第2バイトと第3バイトの上位4ビットには、離鍵速度VkNを示す離鍵速度データを書き込む。また、離鍵イベントは正規イベントであるから、識別データ値を「0」とする。
【0030】
▲4▼押鍵欠落イベント
図3は、変化系奏法における鍵軌道の一例を示した図である。同図中、縦方向は鍵1の上下方向の位置を示しており、横方向は時間経過を示している。また、K2は、上方のフォトセンサSF2が配設される位置であり、K3は、下方のフォトセンサSF3が配設される位置である。なお、実際の鍵盤軌道は、演奏操作に応じた複雑な曲線となるが、説明を簡略化するため、直線で図示した。
【0031】
図3(A)においては、時刻t0からレスト位置X0にある鍵1が押し下げられ、時刻t1でK2を通過する。そして、鍵1がK3に到達する前に離鍵が開始され、時刻t2で再びK2を通過する。ところで、押鍵イベントは、上述したように鍵1が押し下げられ、上方のフォトセンサSF2が遮光され、次いで、下方のフォトセンサSF3が遮光された際に生成される。このため、図3(A)に示す例にあっては、押鍵イベントは生成されない。
【0032】
このように、押鍵がなされ、上方のフォトセンサSF2が遮光状態となったことが検出された後、下方のフォトセンサSF3が受光状態のまま離鍵が開始され、上方のフォトセンサSF2が受光状態となったことが検出された場合に、押鍵欠落イベントが生成される。また、押鍵欠落イベントのイベント時刻は、離鍵の際にK2を再び通過する時刻(t2)とする。
【0033】
この押鍵欠落イベントのデータ形式を図4(A)に示す。これを図2(C)に示す正規の押鍵イベントと比較すると、第1バイトのデータ値は「A,0」となり一致するが、第2,第3バイトのデータが相違する。押鍵欠落イベントにあっては、鍵1がK3を通過しないから押鍵速度Vkを示すデータはない。このため、押鍵速度Vkに対応した第2バイトと第3バイトの上位4ビットは不定となるが、ここでは0データを書き込む。また、押鍵欠落イベントは変則イベントであるので、このことを示すために第3バイトの下位4ビットのデータ値を「8」とする。
【0034】
▲5▼押鍵欠落離鍵イベント
図3(A)に示す鍵1の軌道を離鍵動作の観点から検討する。この場合、時刻tcから鍵1は上方(レスト側)に移動し、実際の離鍵が開始される。ところで、離鍵イベントは、上述したように鍵1が戻され、下方のフォトセンサSF3が受光状態となり、次いで、上方のフォトセンサSF2が受光状態となった際に生成される。このため、図3(A)に示す例にあっては、離鍵イベントは生成されない。
【0035】
このように、上述した押鍵欠落イベントと同様に、押鍵によって、上方のフォトセンサSF2が遮光状態となったことが検出された後、下方のフォトセンサSF3が受光状態のまま離鍵が開始され、上方のフォトセンサSF2が受光状態となったことが検出された場合に、押鍵欠落離鍵イベントが生成される。また、押鍵欠落イベントのイベント時刻は、離鍵の際にK2を再び通過する時刻(t2)とする。このため、押鍵欠落イベントと押鍵欠落離鍵イベントは同時に生成される。
【0036】
この押鍵欠落離鍵イベントのデータ形式を図4(B)に示す。これを図3(E)に示す正規の離鍵イベントと比較すると、第1バイトのデータ値は「8,0」となり一致するが、第2,第3バイトのデータが相違する。
まず、押鍵欠落離鍵イベントは変則イベントであるから、これを示すために第3バイトの下位4ビットのデータ値を「8」とする。また、第2バイトと第3バイトの上位4ビットには、次式で算出した近似離鍵速度データvnを書き込む。
【数1】
この数1において、K3、K2はフォトセンサSF2,SF3の配設位置から定まり既知である。また、時刻t2は、上方のフォトセンサSF2が遮光状態から受光状態になった時刻を検出することによって、時刻t1は、上方のフォトセンサSF2が受光状態から遮光状態になった時刻を検出することによって得られる。したがって、これらの値を数1に代入して、近似離鍵速度データvnが求められる。
【0037】
▲6▼離鍵欠落イベント
図3(B)においては、時刻t0からエンド位置Xeにある鍵1が離鍵され、時刻t1でK3を通過する。そして、鍵1がK2に到達する前に押鍵が開始され、時刻t2で再びK3を通過する。ところで、離鍵イベントは、鍵1が戻され、下方のフォトセンサSF3が受光状態となり、次いで、上方のフォトセンサSF2が受光状態となった際に生成される。このため、図3(B)に示す例にあっては、離鍵イベントは生成されない。
【0038】
このように、離鍵がなされ、下方のフォトセンサSF3が受光状態となったことが検出された後、上方のフォトセンサSF2が遮光状態のまま、下方のフォトセンサSF3が遮光状態となったことが検出された場合に、離鍵欠落イベントが生成される。また、離鍵欠落イベントのイベント時刻は、押鍵の際にK3を再び通過する時刻(t2)とする。
【0039】
この離鍵欠落イベントのデータ形式を図4(C)に示す。これを図4(A)に示す正規の離鍵イベントと比較すると、第1バイトのデータ値は「8,0」となり一致するが、第2,第3バイトのデータが相違する。離鍵欠落イベントにあっては、鍵1がK2を通過しないから、離鍵速度VkNを示すデータはない。このため、第2バイトと第3バイトの上位4ビットは、不定となるが、ここでは0データを書き込む。また、離鍵欠落イベントは変則イベントであるので、第3バイトの下位4ビットのデータ値を「8」とする。
【0040】
この例の離鍵に関するイベントには、離鍵イベント、押鍵欠落離鍵イベントおよび離鍵欠落イベントがあり、いずれのイベントにあっても第1バイトのデータ値は「8,0」となる。このため、再生時にあっては、識別データ(第3バイトの下位4ビットのデータ)値が「8」であるか否かによって、押鍵欠落離鍵イベントおよび離鍵欠落イベントと、離鍵イベントとが判別される。また、押鍵欠落離鍵イベントでは、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでに近似離鍵速度データvnが書き込まれるが、離鍵欠落イベントではそこに0データが書き込まれる。このため、再生されたイベントが離鍵欠落イベントであるか押鍵欠落離鍵イベントであるかの判別は、第2バイトから第3バイトの上位4ビットのデータが0データであるか否かによって判別される。
【0041】
したがって、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「8,0」であり、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「0」であれば、このデータ列は離鍵イベントと判別される。
【0042】
また、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「8,0」であり、かつ、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでが0データであり、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「8」であれば、このデータ列は離鍵欠落イベントであると判別される。
【0043】
また、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「8,0」であり、かつ、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでの値が0データでなく、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「8」であれば、このデータ列は押鍵欠落離鍵イベントであると判別される。
【0044】
▲7▼離鍵欠落押鍵イベント
図3(B)に示す鍵1の軌道を押鍵動作の観点から検討する。この場合、時刻tcから鍵1は下方(エンド側)に移動し、実際の押鍵が開始される。ところで、押鍵イベントは、鍵1が押し下げられ、上方のフォトセンサSF2が遮光され、次いで、下方のフォトセンサSF3が遮光された際に生成される。このため、図3(B)に示す例にあっては、押鍵イベントは、生成されない。
【0045】
このように、上述した離鍵欠落イベントと同様に、離鍵がなされ、下方のフォトセンサSF3が受光状態となったことが検出された後、上方のフォトセンサSF2が遮光状態のまま押鍵が開始され、下方のフォトセンサSF3が遮光状態となったことが検出された場合に、離鍵欠落押鍵イベントが生成される。また、離鍵欠落押鍵イベントのイベント時刻は、押鍵の際にK3を再び通過する時刻(t2)とする。このため、離鍵欠落イベントと離鍵欠落押鍵イベントは同時に生成される。
【0046】
この離鍵欠落押鍵イベントのデータ形式を図4(D)に示す。これを図2(C)に示す正規の押鍵イベントと比較すると、第1バイトのデータ値は「A,0」となり一致するが、第2,第3バイトのデータが相違する。
第2バイトと第3バイトの上位4ビットには、押鍵速度データの替わりに、下記数2で算出した近似押鍵速度データvpを書き込む。
【数2】
また、離鍵欠落押鍵イベントは変則イベントであるので、第3バイトの下位4ビットのデータ値を「8」とする。
さて、上述した数2において、K3、K2はフォトセンサSF2,SF3の配設位置から定まり既知である。また、時刻t2は、下方のフォトセンサSF3が受光状態から遮光状態になった時刻を検出することによって、時刻t1は、下方のフォトセンサSF3が遮光状態から受光状態になった時刻を検出することによって得られる。したがって、これらの値を数2に代入することによって、近似押鍵速度データvpが求められる。
【0047】
この例の離鍵に関するイベントには、押鍵イベント、離鍵欠落押鍵イベントおよび押鍵欠落イベントがあり、いずれのイベントにあっても第1バイトのデータ値は「A,0」となる。このため、再生時にあっては、識別データ(第3バイトの下位4ビットのデータ)値が「8」であるか否かによって、離鍵欠落押鍵イベントおよび押鍵欠落イベントと、押鍵イベントとが判別される。また、離鍵欠落押鍵イベントでは、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでに近似押鍵速度データvpが書き込まれるが、押鍵欠落イベントではそこに0データが書き込まれる。このため、再生されたイベントが押鍵欠落イベントであるか離鍵欠落押鍵イベントであるかの判別は、第2バイトから第3バイトの上位4ビットのデータが0データであるか否かによって判別される。
【0048】
したがって、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「A,0」であり、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「0」であれば、このデータ列は押鍵イベントと判別される。
【0049】
また、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「A,0」であり、かつ、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでが0データであり、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「8」であれば、このデータ列は押鍵欠落イベントであると判別される。
【0050】
また、再生されたデータ列において、第1バイトのデータ値が「A,0」であり、かつ、第2バイトから第3バイトの上位4ビットまでの値が0データでなく、かつ、第3バイトの下位4ビットのデータ値が「8」であれば、このデータ列は離鍵欠落押鍵イベントであると判別される。
【0051】
1−3 軌道作成の原理
次に、再生前処理部10における軌道作成の原理について説明する。
▲1▼リファレンスポイント
鍵1を押し下げる速度に応じてハンマ2の打弦速度が決まるが、鍵1の速度は初め遅くて次第に早くなる場合や、その逆の場合もあり、さらには、ほとんど一定の速さで押される場合もある。この場合、鍵1のレスト位置からエンド位置に至るまでの速度と、ハンマ2の打弦速度とがどのような関係になっているのかが重要である。なぜならば、その関係を考察せず、打弦強度データに応じて鍵速度(初期速度など)を制御しても、記録時の打弦速度を再生することはできないからである。
【0052】
実験によれば、鍵1のある位置における速度とハンマ2の打弦速度とが極めて良い対応を示すことが判った。この位置は、ピアノの個体差にもよるが、概ねレスト位置から9.0mm〜9.5mm程度押し下げた位置であった。したがって、鍵1がこの位置に達するときの速度を、打弦強度データに応じて制御すれば、記録時の打弦速度を忠実に再現することができる。なお、以下においては、上述の所定位置をリファレンスポイントXrという。
【0053】
▲2▼リファレンス速度
次に、上述のようにして求めたリファレンスポイントXrにおいて、どのような鍵速度にすれば、打弦速度を忠実に再現することができるかを設定する必要がある。なお、以下においては、リファレンスポイントXrにおける鍵速度をリファレンス速度Vrという。
【0054】
ここで、図5はリファレンスポイントXrを9.5mmに設定したときの鍵速度と打弦速度の関係を示す図である。図中、白点は鍵をエンド位置まで押し切る単打奏法を行った場合の結果を示し、黒点は鍵をエンド位置まで押し切らずに連打する連打奏法を行った場合の結果を示している。また、C1は1次最小自乗法近似による直線、C2は6次最小自乗法による曲線を示している。
【0055】
図5から明らかなように、リファレンス速度Vrは、直線C1あるいは曲線C2のいずれによっても近似できる。したがって、近似性のよい関数を適宜選択すれば、この関数を用いて任意の打弦強度データ(記録時の打弦速度情報)からリファレンス速度Vrを決定することができる。
この実施例においては、計算が簡単で誤差の少ない1次関数近似を採用している。したがって、リファレンス速度Vrは、次式によって求められる。
【0056】
【数3】
数3において、VHは打弦速度(打弦強度データ)であり、αおよびβは定数である。定数αおよびβは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。なお、αおよびβは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。
【0057】
▲3▼リファレンス時間差
さて、この例にあっては、演奏情報に含まれる打弦時刻データは、タイムインターバルとして、相対時刻で記録されているが、再生側自動ピアノにおいてタイムインターバルを読みとって積算処理することにより、再生時の各音の打弦絶対時刻が求められる。そこで、このようにして求めた打弦絶対時刻において正確に打弦を行わせるには、鍵が何時リファレンスポイントXrを通過すればよいかを求める必要がある。
【0058】
ここで、鍵1がリファレンスポイントXrを通過する時刻(以下、リファレンス時刻trという)と打弦時刻(正確には、ハンマが打弦位置直前にあるセンサSE1を通過した時刻)との時間差をリファレンス時間差Trと定義し、これと打弦速度との関係を実験により求めたものが図6である。図6において、白点は単打奏法による結果、黒点は連打奏法による結果を示している。そして、図6を縮尺2倍にしたものが図7であり、縮尺4倍にしたものが図8である。これらの図から判るように、リファレンス時間差Trと打弦速度との関係は、双曲線により極めて良好に近似される。すなわち、このリファレンス時間差Trは、打弦速度VHを分母にする1変数式で近似することができ、次式によって算出される。
【0059】
【数4】
なお、数4における定数γおよびδは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。また、γおよびδは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。これは、数3におけるα、βの場合と同様である。
【0060】
さて、数4によって、リファレンス時間差Trが求まれば、再生側の打弦絶対時刻からリファレンス時間差Trを減算することによって、リファレンス時刻trが求められ、結局、上述した▲1▼、▲2▼、▲3▼の処理により、リファレンスポイントXr、リファレンス速度Vr、およびリファレンス時刻trが求められる。したがって、リファレンス時刻trにリファレンスポイントXrに達し、かつ、その時の速度がリファレンス速度Vrとなるように鍵1を駆動すれば、記録時の打弦状態を忠実に再現することができる。
なお、鍵1がリファレンスポイントXrに達したときに打弦が行われるのであれば、リファレンス時間差Trを求める処理は不要になる。
【0061】
▲4▼押鍵時の軌道データ作成
図9は、鍵の押鍵軌道を示す図であり、レスト位置X0から等速運動をしてエンド位置Xeに至っている。ここで、鍵の初速度をV0、鍵の位置をX、鍵の駆動開始時点からの時間をtとすれば、鍵の軌道は、
【0062】
【数5】
と表される。
また、鍵がリファレンスポイントXrに達する時刻をtr’とすると、
【0063】
【数6】
なる式が成り立つから、この数6から時刻tr’を求めることができる。したがって、押鍵を開始する絶対時刻(以下、押鍵開始時刻という)t0は、次式によって求めることができる。
【0064】
【数7】
なお、リファレンス時刻trは、前述のように、打弦時刻からリファレンス時間差Trを減算することによって求める。
上記数7によって押鍵開始時刻t0を求め、この時刻から、数5で示される軌道に従って鍵1を駆動すれば、鍵1は、リファレンス時刻trにおいて正確にリファレンスポイントXrに達し、しかも、その時の速度は、打弦強度データに対応したレファレンス速度Vrとなる。
【0065】
なお、鍵の挙動については、直線軌道(等速運動)を想定しているから、リファレンス速度Vrと初速度V0は等しい。そして、リファレンス速度Vrは、前述の数1によって求められるから、結局、数7で求めた押鍵開始時刻t0から一定速度vrで鍵を駆動するように制御(速度制御)することができる。
【0066】
▲5▼離鍵時の軌道データ作成
次に、離鍵時の軌道データ作成について説明する。
まず、鍵の位置をXN、離鍵初速度をV0N(<0)、離鍵開始時点からの時間をtN、エンド位置をXeとすれば、離鍵時の鍵軌道は、次式で表される。
【0067】
【数8】
ここで、図10は数8で示される軌道を示す図である。
【0068】
さて、前述のように、演奏記録部30(図1参照)は、キーセンサ25内の下方のフォトセンサSF3が受光状態になってから上方のフォトセンサSF2が受光状態になるまでの時間を測定して離鍵速度VkNを検出し、また、上方のフォトセンサが受光状態になった時刻を離鍵時刻tkNとして検出する。この場合、離鍵時刻tkNにおけるダンパー6は、弦4に接して音の減衰を開始する状態なっている(そのような状態になるようフォトセンサの位置が調整されている)。そして、このようにして検出された離鍵速度VkNおよび離鍵時刻tkNは、それぞれ演奏情報を構成するデータとして記録され、再生時に読み出される。
【0069】
ここで、ダンパー6が弦4に接するときの鍵の位置を離鍵リファレンスポイントXrNと定義すれば、鍵1が離鍵リファレンスポイントXrNに達したときに、離鍵状態になったということができる。したがって、鍵1が離鍵リファレンスポイントXrNに達する時刻(以下、離鍵リファレンス時刻trNという)と、演奏情報中の離鍵時刻tkNとが一致するように鍵位置を制御すれば、正確な離鍵タイミング制御を行うことができる。
【0070】
また、ダンパー6が弦4に接する速さは、音の減衰状態に影響を与えるから、これを忠実に再現することが望ましい。この速さは、離鍵速度VkNに対応するから、結局、離鍵リファレンスポイントXrNにおける鍵速度(以下、離鍵リファレンス速度VrNという)を正確に離鍵速度VkNに一致させれば、音の減衰状態が正確に再現される。
ここで、鍵の駆動が開始される時刻を基準(=0)にして、鍵が離鍵リファレンスポイントXrNに達する時刻をtrN’とすると、
【0071】
【数9】
(ただし、直線軌道だからV0N=VrN=VkN)
なる関係が成り立ち、この数9より時刻trN’を求めることができる。したがって、次式によって離鍵開始時刻t0Nを求めることができる。
【0072】
【数10】
この数10によって離鍵開始時刻t0Nを求め、この時刻から、数8で示される軌道に従って鍵を駆動すれば、鍵は離鍵時刻tkNにおいて離鍵リファレンスポイントXrNに達し、記録時の離鍵状態を忠実に再現することができる。
なお、時刻t0から速度V0N(=VkN:離鍵速度)で鍵駆動するように制御(速度制御)しても上記と同様の結果を得ることができる。
【0073】
▲6▼押鍵スローダウン・離鍵スローアップ軌道データ作成
(a)トランジット位置
上述のようにして作成される押鍵軌道および離鍵軌道は直線状をなす等速軌道であり、以下、これらをそれぞれ押鍵等速軌道、離鍵等速軌道と称する。ここで、押鍵から離鍵へ移る演奏がハーフストロークで行われた場合には、押鍵等速軌道と離鍵等速軌道は、図11(A)に示すように、エンド位置Xeに至る手前で交差する。この自動ピアノでは、押鍵の際には、レスト位置X0から所定位置XTまでは押鍵等速軌道に基づいて鍵1を制御し、所定位置XTとエンド位置Xeの間の範囲では、2次曲線の軌道(以下、押鍵スローダウン軌道と称する)に基づいて鍵1を制御する。また、離鍵の際には、所定位置XTからレスト位置X0までは離鍵等速軌道に基づいて鍵1を制御し、所定位置XTとエンド位置Xeの範囲では、2次曲線の軌道(以下、離鍵スローアップ軌道と称する)に基づいて鍵1を制御する。なお、以下の説明においては、「所定位置」をトランジット位置と称する。また、押鍵等速軌道がトランジット位置XTに達する時刻を押鍵中間時刻(tPT)、離鍵等速軌道がトランジット位置XTから開始する時刻を離鍵中間時刻(tNT)と称する。
ここで、トランジット位置XTは、鍵1に自然な動作を与えるべく適宜設定されるが、押鍵等速軌道が短すぎると、打鍵速度の再現性を不安定にする。よって、押鍵から離鍵へ移る演奏の場合には、トランジット位置XTは、レスト位置X0とエンド位置Xeの中間よりもエンド位置Xe寄りにする。
【0074】
(b)等速時交差時刻tcの計算
図11(A)に示すように、押鍵等速軌道および離鍵等速軌道どうしが交差する位置(以下、等速時交差位置と称する)をXcとし、等速時交差位置Xcに達する時刻(以下、等速時交差時刻と称する)をtcとすると、この交差時刻tcは、押鍵等速軌道および離鍵等速軌道の軌道データから計算により求めることができる。そこで、等速時交差時刻tcに鍵の速度が0となるように、押鍵スローダウン軌道および離鍵スローアップ軌道を設定すれば、図11(B)に示すように、押鍵スローダウン軌道においては、押鍵中間時刻tPTから等速時交差時刻tcまでの間に、鍵の速度VがV0から0まで変化するような軌道を設定すればよい。また、離鍵スローアップ軌道においては、等速時交差時刻tcから離鍵中間時刻tNTまでの間に、鍵の速度Vが0からV0N(<0)まで変化するような軌道を設定すればよい。そこで、まず、等速時交差時刻tcを以下のようにして求める。
【0075】
押鍵開始時刻t0から等速時交差時刻tcまでの時間をa、等速時交差時刻tcから離鍵等速軌道が終了する時刻t4までの時間をbとすると、下記式が成立する。
【数11】
【0076】
【数12】
また、数11および数12により、下記式が成立する。
【0077】
【数13】
【0078】
次に、等速時交差時刻tcは、押鍵開始時刻t0に時間aを加算すれば良いから下記式によって算出される。
【数14】
【0079】
ここで、数14におけるt4は、離鍵等速軌道がレスト位置X0に達する時刻であって、数10によって算出したt0Nを用いて次式により算出される。
【数15】
【0080】
(c)押鍵スローダウン軌道データの作成
次に、押鍵スローダウン軌道における押鍵加速度aPを下記式によって求める。
【数16】
ただし、数16におけるtPTは次式により算出される。
【0081】
【数17】
【0082】
また、押鍵スローダウン軌道における押鍵速度Vは数16で求められるaP(<0)を用いて下記数18によって求めることができ、押鍵スローダウン軌道は、下記数19によって表すことができる。ただし、式中tは、押鍵スローダウン軌道および離鍵スローアップ軌道における絶対時刻である。
【数18】
【0083】
【数19】
ただし、P1,Q1,R1は定数であり、これらは、数19と数19をtで微分した式に図11(A)に示すtの特定値を代入することにより求めることができる。すなわち、数19は、時刻tPTで傾きがV0、等速時交差時刻tcで傾きが0となる2次関数であり、時刻tPTにおける値がXTであるから、これらの値を上記式に代入すればよい。
【0084】
(d)離鍵スローアップ軌道データの作成
次に、離鍵スローアップ軌道における離鍵加速度aN(<0)を以下のようにして求める。
【数20】
【0085】
ここで、数20におけるtNTは次式により算出される。
【数21】
【0086】
また、離鍵スローアップ軌道における離鍵速度Vは下記数22によって求めることができ、離鍵スローアップ軌道は下記数23によって表すことができる。ただし、aN<0である。
【数22】
【0087】
【数23】
【0088】
ただし、P2,Q2,R2は定数であり、これらは、数23と数23をtで微分した式に図11(A)に示すtの特定値を代入することにより求めることができる。
すなわち、数23は、時刻tNTで傾きがV0N、速度等速時交差時刻tcで傾きが0となる2次関数であり、時刻tNTにおける値がXTであるから、これらの値を上記式に代入すればよい。この場合において、数23の最大値は数19の最大値と等しくなり、よって、これら2つの式で表される2次曲線は等速時交差時刻tcに交差する。
【0089】
このように、自動演奏時において、正規イベントが再生され、これによって押鍵速度と離鍵速度とが得られる場合には、上述した押鍵・離鍵時の軌道データ作成と押鍵スローダウン・離鍵スローダウン軌道データ作成によって、鍵1の軌道を再生することができる。
【0090】
▲7▼変則処理
さて、変則イベントは、既に述べたように完全な押鍵・離鍵がなされない場合に生成されるイベントである。このため、変則イベントが再生された場合にあっては、正規の押鍵速度Vkや離鍵速度VkNを有しておらず、上述した数5,8,19,23によって鍵軌道を再生することはできない。また、打弦イベントが再生されず、正規の押鍵イベントのみが再生される場合にあっては、打弦が行われないよう鍵1の軌道を再生することが望ましい。そこで、以下の処理が行われる。
【0091】
(a)打弦速度の参照
図12は、完全な離鍵がなされる前に押鍵された場合の鍵軌道の一例である。同図において、鍵1は、時刻t0から戻され、エンド側からK3を通過し、時刻tcにおいて最小値となり、K2を通過することなく、時刻t2で再びK3を通過し、時刻t3でエンド位置Xeに至る。記録時に上記した鍵軌道をとり、時刻t2以前に打弦が行われたとすると、まず、打弦イベントが生成される。また、時刻t2において、離鍵欠落イベントと離鍵欠落押鍵イベントとが生成される。このため、再生される演奏情報は、以下のデータ列D1となる。
{「9,0」「VH,VH」「VH,0」 ………打弦イベント
「F,3」「T,T」 ………タイムインターバル
「8,0」「0,0」「0,8」、 ………離鍵欠落イベント
「A,0」「vp,vp」「vp,8」} ………離鍵欠落押鍵イベント
このデータ列D1から、鍵軌道を再生するにあっては、時刻t0〜時刻t1までの区間、時刻t1〜時刻t2までの区間、および時刻t2〜時刻t3までの区間に分割して再生処理を行う。
【0092】
イ)押鍵等速度軌道の作成(時刻t2〜時刻t3)
まず、上記データ列に基づいて押鍵等速度軌道を作成する原理を説明する。押鍵等速度軌道は、時刻t2〜時刻t3までの期間に対応する。ここで、鍵は時刻t2でK3を通過することから、鍵の初速度をV0、鍵の位置をX、絶対時刻をtとすれば、鍵の軌道は、
【数24】
と表される。
この場合、鍵は等速度で運動するから、初速度V0は、リファレンス速度Vr(リファレンスポイントXrにおける鍵速度)と一致する。したがって、上記データ列からリファレンス速度Vrと時刻t2を求めることができれば、時刻t2〜時刻t3の期間について、鍵の軌道を再生することができる。
【0093】
ところで、データ列の2行目にあるタイムインターバルは、打弦イベントのイベント時刻から押鍵欠落イベントのイベント時刻までの時間であり、また、打弦イベントの前行には、その前のイベントとの時間差を示すタイムインターバルが介挿される。このため、楽曲の開始からタイムインターバルを積分すれば、押鍵欠落イベントのイベント時刻t2を求めることができる。
【0094】
また、第1行目の打弦イベントには打弦速度VHが示されているが、打弦速度VHとリファレンス速度Vrには、数3の関係があるから、リファレンス速度Vrは、数3に打弦速度VHを代入して算出される。
こうして算出された時刻t2とリファレンス速度Vr(=V0)を数24に代入して、鍵の位置が求められ、これにより、時刻t2〜時刻t3の期間中の押鍵等速度軌道は再生される。
【0095】
ロ)離鍵等速度軌道の作成(時刻t0〜時刻t1)
次に、上記データ列に基づいて離鍵等速度軌道を作成する原理を説明する。離鍵等速度軌道は、時刻t0〜時刻t1までの期間に対応する。ここで、鍵は時刻t1でK3を、時刻tcでK2を通過することから、離鍵初速度をVN、鍵の位置をXN、絶対時刻をtとすれば、鍵の軌道は、
【数25】
と表される。
【0096】
さて、時刻tcは交差時刻であるから、押鍵等速度軌道を表す数24において、t=tc,X=K2が成立する。これをtcについて解くと、
【数26】
となる。ただし、押鍵初速度とリファレンス速度Vrは一致するものとする。
【0097】
また、離鍵欠落押鍵イベント中の近似押鍵速度vpは数2で表されるから、これをt1について解くと、
【数27】
となる。
【0098】
上記数25に、数26、数27を代入し整理すると、
【数28】
となる。ここで、リファレンス速度Vr、近似押鍵速度vpおよびK2は既知であり、また、時刻tcは数26によって算出される。したがって、これらを数28に代入して鍵の位置XNが求められ、これにより鍵の軌道が再生される。
【0099】
ハ)曲線軌道の作成(時刻t1〜時刻t2)
変則イベントにおいても、等速時交差時刻tcに鍵1の速度が0となるように離鍵スローダウン軌道および押鍵スローアップ軌道を設定する。そして、離鍵スローダウン軌道においては、時刻t1から等速時交差時刻tcまでの間に、鍵1の速度VがV0N(<0)から0まで変化するような軌道を設定する。また、押鍵スローアップ軌道においては、等速時交差時刻tcから時刻t2までの間に、鍵1の速度Vが0からV0まで変化するような軌道を設定する。
【0100】
まず、離鍵スローダウン軌道を求める。この場合、離鍵加速度をaNとすれば、離鍵加速度aNは下記数29で表される。
【数29】
【0101】
また、離鍵速度Vは下記数30によって求めることができ、離鍵スローダウン軌道は下記数31によって表すことができる。
【数30】
【0102】
【数31】
【0103】
ただし、P3,Q3,R3は定数であり、これらは、数31と数31をtで微分した式に図12に示すtの特定値を代入することにより求めることができる。すなわち、鍵が時刻t2で位置K3を通過すること、また、時刻t1での鍵速度VはV0Nとなること、時刻tcでの鍵速度Vは0となることから、これらの値を代入することによって求めることができる。
【0104】
次に、押鍵スローアップ軌道を求める。押鍵加速度をaPとおけば、押鍵加速度aPは下記数32で表される。
【数32】
【0105】
また、押鍵スローアップ軌道における押鍵速度Vは下記数33によって求めることができ、押鍵スローアップ軌道は下記数34によって表すことができる。
【数33】
【0106】
【数34】
【0107】
ただし、P4,Q4,R4は定数であり、これらは、数34および数34をtで微分した式に、図12に示すtの特定値を代入することにより求めることができる。すなわち、鍵が時刻t2で位置K3を通過すること、時刻t2での鍵速度VはV0となること、時刻tcでの鍵速度Vは0となることから、これらの値を代入することによって求めることができる。
このようにして、離鍵スローダウン軌道および押鍵スローアップ軌道が生成され、これによって、時刻t1〜時刻t2の期間中の鍵軌道が再生される。
【0108】
(b)打弦イベントのない場合の軌道再生
変化系奏法の一種であるサイレントノート奏法では、鍵1を緩やかに押し下げ、打弦を行うことなく、弦4からダンパー6を離すことが行われる。図13は、ハーフストロークにおけるサイレントノート奏法が行われた場合の鍵軌道の一例である。図において、鍵1は、時刻t0から戻され、時刻t1でエンド側からK3を通過し、時刻tcにおいて最小値となり、K2を通過することなく、時刻t2で再びK3を通過し、時刻t4でエンド位置Xeに至る。記録時に上記した鍵軌道をとり、打弦が行われなかったとすると、時刻t2において、離鍵欠落イベントと離鍵欠落押鍵イベントとが生成され、再生時には、演奏情報として、以下のデータ列D2が得られる。
{「F,3」「T,T」 ………タイムインターバル
「8,0」「0,0」「0,8」、 ………押鍵欠落イベント
「A,0」「vp,vp」「vp,8」} ………離鍵欠落押鍵イベント
このデータ列D2から、鍵軌道を再生するにあっては、前述した打弦速度を参照する場合と同様に、時刻t0〜時刻t1までの区間、時刻t1〜時刻t2までの区間、および時刻t2〜時刻t3までの区間に分割して再生処理を行う。ただし、このデータ列D2には打弦イベントが含まれていないので打弦速度VHを参照して鍵の軌道を再生することはできない。
【0109】
イ)押鍵等速度軌道の作成(時刻t2〜時刻t3)
まず、上記データ列D2に基づいて押鍵等速度軌道を作成する原理を説明する。押鍵等速度軌道は、時刻t2〜時刻t3までの期間に対応する。本来、押鍵時の鍵速度は、押鍵イベント中の押鍵速度Vkや打弦イベント中の打弦速度VHに基づいて定められる。ところが、再生されたデータ列D2には、押鍵イベントや打弦イベントが含まれていない。このため、この例では、離鍵欠落押鍵イベント中の近似押鍵速度vpを鍵速度として用いることによって、鍵の軌道を作成する。ここで、鍵の位置をX、絶対時刻をtとすれば、鍵の軌道は、下記数35で表される。
【数35】
【0110】
上記数35において、近似押鍵速度vpは、データ列D2の3行目から、また、時刻t2は、データ列D2の1行目のタイムインターバルから既知である。さらに、K3は、フォトセンサFS3の取付位置であるので、この値も既知である。したがって、これらの値を数35に代入して、時刻t2〜時刻t3の期間中の鍵軌道が求められる。
【0111】
ロ)離鍵等速度軌道の作成(時刻t0〜時刻t1)
次に、上記データ列D2に基づいて離鍵等速度軌道を作成する原理を説明する。離鍵等速度軌道は、時刻t0〜時刻t1までの期間に対応する。上記データ列D2には、離鍵速度が含まれていないので、この場合も、近似押鍵速度vpを鍵速度として用いることによって、鍵の軌道を作成する。ここで、鍵の位置をXN、絶対時刻をtとすれば、鍵の軌道は、下記数36で表される。
【数36】
【0112】
上記数36において、近似押鍵速度データvpとK3は、既知である。また、t1は数27から算出される。したがって、これらの値を数36に代入して、時刻t0〜時刻t1の期間中の鍵軌道が求められる。
【0113】
ハ)曲線軌道の作成(時刻t1〜時刻t2)
時刻t1から時刻t2までの間は、曲線軌道となる。等速時交差時刻tcに鍵1の速度が0となるように離鍵スローダウン軌道および押鍵スローアップ軌道を設定する。そして、離鍵スローダウン軌道においては、時刻t1から等速時交差時刻tcまでの間に、鍵1の速度VがV0N(<0)から0まで変化するような軌道を設定する。また、押鍵スローアップ軌道においては、等速時交差時刻tcから時刻t2までの間に、鍵1の速度Vが0からV0まで変化するような軌道を設定する。
【0114】
まず、等速時交差時刻tcと交差位置xcは、押鍵等速度軌道と離鍵等速度軌道の交点であるから、数35,数36から求めることができ、下記数37、数38で表される。
【数37】
【0115】
【数38】
なお、上記数37より等速時交差時刻tcは、時刻t1と時刻t2の中間時刻となるが、これは、押鍵時の鍵速度と離鍵時の鍵速度を、ともに近似押鍵速度vpで代用したためである。
【0116】
次に、離鍵スローダウン軌道は上記数31から、また、押鍵スローアップ軌道は上記数34から求めることができる。これによって、時刻t1〜時刻t2の期間中の鍵軌道を再生することができる。
【0117】
(c)打弦イベントがなく、押鍵イベントがある場合の軌道再生
サイレントノート奏法は、上述したようにハーフストロークで行われる場合の他、完全に押鍵した場合にも行われる。このような場合の鍵軌道の一例を図14に示す。図において、鍵1は、時刻t0から緩やかに押下され、時刻t1,t2においてK2,K3を通過し、時刻t3でエンド位置に至る。この場合、打弦は行われず、記録時には、時刻t2において以下のデータ列D3が生成される。
{「F,3」「T,T」 ………タイムインターバル
「A,0」「v,v」「v,0」 ………押鍵イベント
「F,3」「T,T」 ………タイムインターバル
「8,0」「v,v」「v,0」} ………離鍵イベント
再生時にこのデータ列D3を演奏情報として再生した場合にあっては、押鍵速度Vkと押鍵時刻tK(=t2)から押鍵軌道を生成し、離鍵速度VkNと離鍵時刻tkN(=t5)から離鍵軌道を生成する。
【0118】
1.実施形態の動作
始めに、記録動作について説明する。まず、演奏者によって演奏が行われると、
演奏記録部30がセンサSE1,SE2の出力信号に基づいて、押鍵時刻Vkおよび押鍵時刻tk、打弦速度VHおよび打弦時刻を検出するとともに、センサ25の出力信号に基づいて離鍵時刻tkNおよび離鍵速度VkNを検出する。これらの情報は、記録後処理部31において正規化処理された後に、演奏情報としてフロッピーディスク等の記録媒体に記録される。
【0119】
次に、再生動作について図15を参照して説明する。まず、再生前処理部10は、記録媒体から演奏情報を読み出すか、あるいは、外部から供給される演奏情報を受信し、一打鍵中に、打弦イベント、押鍵イベントおよび離鍵イベントが一組として含まれるか否かを判定する(ステップS1)。この判定結果が「YES」となるのは、通常奏法で演奏された楽音を再生した場合であり、この場合は、ステップS2へ進んで数5に示す押鍵等速軌道の軌道データを作成する。押鍵等速軌道は、レスト位置X0からエンド位置Xeに至る軌道であり、この軌道データは、押鍵イベント中の押鍵時刻データおよび押鍵速度データに基づいて作成される。この後、ステップS3に進んで、数8に示す離鍵等速軌道の軌道データを作成する。この軌道データは、離鍵イベント中の離鍵時刻データおよび離鍵速度データに基づいて作成される。
【0120】
次に、ステップS4へ進んで押鍵スローダウン軌道と離鍵スローアップ軌道を作成するための交差処理を行う。まず、2つの軌道の等速時交差時刻tcを数14を用いて計算する。押鍵スローダウン軌道および離鍵スローアップ軌道における加速度aP,aNを数16および数20を用いて計算する。そして、求めた加速度aP,aNを用いて、数17および数21に示す押鍵スローダウン軌道と離鍵スローアップ軌道の軌道データを作成する。なお、押鍵等速軌道と離鍵等速軌道とが交差しないのであれば、ステップS4の処理は省略できる。
【0121】
次に、ステップS6へ進み、モーションコントローラ11に供給する位置データ(t,X)を作成する。この位置データ(t,X)は、時刻tと、時刻tに対応する鍵の位置Xからなる。ここで、時刻tは、押鍵開始時刻t0から離鍵が終了する時刻t4までを一定のピッチで刻んだ時刻である。あるいは、押鍵スローダウン軌道と離鍵スローアップ軌道における時刻tのピッチを短くし、押鍵等速軌道および離鍵等速軌道における時刻tのピッチを長くすることもできる。このようにして時刻tのピッチを設定することにより、押鍵等速軌道および離鍵等速軌道における位置データ(t,X)の計算を簡略化し、かつ、押鍵スローダウン軌道と離鍵スローアップ軌道における鍵1の動作を正確かつ滑らかにすることができる。
【0122】
また、鍵の位置Xは、前述の方法によって求めた各軌道データに各時刻tを代入して求める。すなわち、押鍵開始時刻t0から押鍵中間時刻tPTまでは、時刻tを数5に代入して押鍵等速軌道における鍵1の位置Xを求め、押鍵中間時刻tPTから等速時交差時刻tcまでは、時刻tを数19に代入して押鍵スローダウン軌道における鍵の位置Xを求める。また、等速時交差時刻tcから離鍵中間時刻tNTまでは、時刻tを数23に代入して離鍵スローアップ軌道における鍵の位置Xを求め、離鍵中間時刻tNTから時刻t4までは、時刻tを数8に代入して離鍵等速軌道における鍵の位置Xを求める。そして、こうして作成した位置データ(t,X)を、再生前処理部10に設けたメモリの所定のアドレスから時刻tの順番に格納する。このように、メモリの所定のアドレスから時刻tの順番に位置データ(t,X)を格納することにより、押鍵開始から離鍵終了までの鍵の位置Xを時刻t毎に求めたシーケンシャルデータ列を作成する。
【0123】
次に、一打鍵中に打弦イベント、押鍵イベントおよび離鍵イベントの組がなく、ステップS1の判定結果が「NO」となるのは、変化系奏法で演奏された楽音を再生した場合であり、この場合は、ステップS6へ進んで、一打鍵中に変則イベントが含まれているか否かを判定する。変則イベントが含まれていれば「YES」と判定され、ステップS7に進み、変則イベント処理を行う。
【0124】
例えば、上述したデータ列D1のように、打弦イベント、離鍵欠落イベントおよび離鍵欠落押鍵イベントが存在する場合にあっては、数24に基づいて押鍵等速軌道を、数28に基づいて離鍵等速度軌道を、数31に基づいて離鍵スローダウン軌道を、数34に基づいて押鍵スローアップ軌道をそれぞれ求める。
【0125】
また、上述したデータ列D2のように、打弦イベントが欠落し、離鍵欠落イベントおよび離鍵欠落押鍵イベントが存在する場合にあっては、数35に基づいて押鍵等速軌道を、数36に基づいて離鍵等速度軌道を、数31に基づいて離鍵スローダウン軌道を、数32に基づいて押鍵スローアップ軌道をそれぞれ求める。
【0126】
一方、一打鍵中に変則イベントが無かった場合は、ステップS8に進んで、正規イベントに基づく処理がなされる。この処理の一例を以下に示す。
▲1▼一打鍵中に、打弦イベントと押鍵イベントが有り、離鍵イベントが欠落している場合は、打鍵の途中で楽曲が終了したと判断される。この場合は、押鍵速度と押鍵時刻から押鍵軌道を生成する。
【0127】
▲2▼一打鍵中に、打弦イベントが有り、押鍵イベントと離鍵イベントが欠落している場合は、直前の鍵1の位置がレスト側にあるならば、K2まで押下されないハーフストローク打鍵と判断され、直前の鍵1の位置がエンド側にあるならば、K3まで戻らないハーフストローク打鍵と判断される。この場合は打弦速度と打弦時刻から押鍵軌道を生成し、この押鍵軌道に応じて離鍵軌道を生成する。
【0128】
▲3▼一打鍵中に、押鍵イベントと離鍵イベントが有り、打弦イベントが欠落している場合には、サイレントノート打鍵と判断される。この場合は押鍵速度と押鍵時刻から押鍵軌道を生成し、離鍵速度と離鍵時刻から離鍵軌道を生成する。
【0129】
次に、ステップS5では、このようにして、ステップS7,8で生成された鍵の軌道に基づいて、前述したシーケンシャルデータ列を生成し、これによって、押鍵開始から離鍵終了までの鍵の位置Xを時刻t毎に求める。
【0130】
以上説明したように、この実施形態にあっては、変則イベントを用いて演奏情報を表したので、従来の技術では再現できなかった変化系奏法を再生することができる。例えば、図12に示す場合にあっては、離鍵イベントおよび押鍵イベントが生成されないので、従来の技術では、時刻t0〜時刻t1までの等速離鍵軌道を再生することができなかったが、この実施形態にあっては、離鍵欠落押鍵イベント中の近似離鍵速度データvpに基づいて等速離鍵軌道を再現することが可能となる。
【0131】
また、この実施形態にあっては、エンド位置からレスト位置までの区間を3区間に分割して、鍵の動作を示すことができ、この結果、ハーフストロークで演奏された場合、再生性能を向上することができる。また、鍵の位置が一定である場合にも、このことを演奏情報として記録再生できる。また、変則イベントは、正規イベントと類似している点が多いので、イベントの定義に一貫性をもたせることができる。また、変則イベントは、鍵の位置を詳細に表しているので、演奏データを一見して内容を把握することができる。また、イベント欠落に対する再生系の処理が明快になる。また、編集によってイベントが欠落した場合にあっても、再生系で有効な対応が可能となる。
【0132】
3.変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
【0133】
▲1▼上記実施形態においては、押鍵イベント、打弦イベントおよび離鍵イベントを用いて鍵の動作を詳細に表わしたが、数3を用いれば打弦速度VHからリファレンス速度Vrを求めることができるので、押鍵イベントは省略しても良い。また、打弦イベントは、ハンマが弦を打弦したことを示すイベントであるから、発音がなされたことを示す情報でもある。したがって、発音がなされたことを示す発音情報は、ハンマが弦を打弦したことによっても検出される。また、離鍵イベントは、鍵がエンド側からレスト側に戻る際に生成されるイベントであるから、ダンパーが弦に接触することによって止音がなされたことを示す情報でもある。したがって、止音がなされたことを示す止音情報は、鍵がエンド側からレスト側に戻ることによっても検出される。なお、止音がなされたか否かは、鍵の動作を検出する他、ダンパーの位置を検出することによって判定しても良い。
【0134】
▲2▼上記実施形態においては、変則イベントであること示すために、識別データの値を「8」とし、その値が「0」である通常イベントと区別できるようにしたが、変則イベントである場合にのみ特別なデータ列を付加して、そのイベントが変則イベントであることを識別できるようにしても良い。
【0135】
▲3▼上記実施形態においては、一打鍵期間に行なわれる押鍵または離鍵の各動作の内、一の動作が欠落した場合には、イベントの第1バイトによって対象となる動作を示すと共に、第3バイトの下位4ビットである動作が欠落したことを示すことによって欠落した動作を表わしたが、欠落した動作を識別するために特別なデータ列を付加しても良い。
【0136】
▲4▼上記実施形態において、打弦が欠落した場合に、押鍵欠落イベントや離鍵欠落イベントと同様に、打弦が欠落したことを示す打弦欠落イベントを生成しても良い。この場合の打弦欠落イベントは、例えば、以下のデータ列となる。
{「9,0」「0,0」「0,8」}
【0137】
▲5▼上記実施形態においては、離鍵欠落押鍵イベントが生成される場合にあっては、押鍵欠落イベントを生成したが、この場合に押鍵イベントが欠落することは明かであるから、押鍵欠落イベントを省略しても良い。また、押鍵欠落離鍵イベントが生成される場合にあっては、離鍵欠落イベントを生成したが、この場合に離鍵イベントが欠落することは明かであるから、離鍵欠落イベントを省略しても良い。
【0138】
▲6▼上記実施形態において、打弦イベントが無く押鍵イベントが存在する場合(例えば、データ列D3が再生された場合)にあっては、押鍵速度Vkに基づいて押鍵軌道を作成した。この場合には、打弦イベントが無いことにより、打弦を行わないよう鍵速度を制御するのが望ましいから、打弦が行われないような所定値を予め設定し、押鍵速度Vkを所定値で制限しても良い。
【0139】
▲7▼上記実施形態においては、説明の簡略化のため詳述されていないが、インターバルを除くイベントの演奏データには、当該イベントが発生した鍵を示すキーコードKCが付加されるものである。したがって、記録動作においては、キーコードKCが付加された各イベントがインターバルとともに記録される。また、再生動作においては、このキーコードKCが示す鍵が推定された軌道で駆動されることになる。
【0140】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、識別情報を用いることによって、記録時に行なわれなっかた鍵の動作を表わしたから、変化系奏法を再現可能な演奏情報を生成できる。また、再生時にあっては、識別情報等に基づいて鍵軌道を生成するから、変化系奏法の再現が容易になる。特に、補足情報を用いる場合には、微妙な鍵軌道の再現性を向上でき、自然な演奏を再生できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】演奏情報のデータ列を示す図である。
【図3】記録時における鍵軌道の一例を示す図である。
【図4】演奏情報のデータ列を示す図である。
【図5】リファレンスポイントを9.5mmに設定したときの鍵速度と打弦速度の関係を示す図である。
【図6】リファレンス時間差Trと打弦速度との関係を示す図である。
【図7】図6を縮尺2倍にした図である。
【図8】図6を縮尺4倍にした図である。
【図9】鍵の押鍵軌道を示す図である。
【図10】数8で示される軌道を示す図である。
【図11】(A)は押鍵の後に発生した離鍵の軌道が交差する場合を示す図であり、(B)は鍵の速度の変化を示す図である。
【図12】打弦速度を参照して鍵軌道を再生する場合の一例を示す図である。
【図13】打弦速度を参照することなく鍵軌道を再生する場合の一例を示す図である。
【図14】サイレントノート奏法における鍵軌道を説明するための図である。
【図15】この発明の実施形態における再生前処理部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 鍵
2 ハンマ(打弦機構)
3 アクション機構(打弦機構)
4 弦
6 ダンパー(消音機構)
10 再生前処理部(鍵軌道生成手段)
11 モーションコントローラ(鍵軌道生成手段)
25 キーセンサ(消音検出手段)
30 演奏記録部(発音消音指示データ出力手段、識別データ出力手段、押鍵情報生成手段、打弦情報生成手段、離鍵情報生成手段、識別情報生成手段、補足情報生成手段)
31 記録後処理部(記録手段)
SE1,SE2 フォトセンサ(発音検出手段)
Claims (6)
- 鍵を駆動する駆動手段と、鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構とを有する自動ピアノにおいて、
前記鍵および前記打弦機構のうち、予め定めた部分の動きから発音状態を検出する発音検出手段と、
前記鍵および前記消音機構のうち、予め定めた部分の動きから消音状態を検出する消音検出手段と、
前記発音検出手段および前記消音検出手段の検出結果に応じて発音指示データおよび消音指示データを出力する発音消音指示データ出力手段と、
本来対になるべき前記発音指示データと前記消音指示データのうちいずれか一方しか出力されない場合、それを識別する識別データを出力する識別データ出力手段と、
前記発音指示データ、前記消音指示データおよび前記識別データを演奏情報として記録する記録手段と、
記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来対になるべき発音指示データと消音指示データが揃っている場合には、それらに基づいて鍵軌道を生成し、前記識別データが読み出された場合には、欠落していないデータに基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と
を具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする自動ピアノ。 - 鍵を駆動する駆動手段を有する自動ピアノにおいて、
ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下されたことを検出して、その状態を示す押鍵情報を生成する押鍵情報生成手段と、
前記ハンマの動きから打弦がなされたことを検出し、その状態を示す打弦情報を生成する打弦情報生成手段と、
当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放されたことを検出して、その状態を示す離鍵情報を生成する離鍵情報生成手段と、
本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、これを識別する識別情報を生成する識別情報生成手段と、
前記押鍵情報、前記打弦情報、前記離鍵情報および前記識別情報を演奏情報として記録する記録手段と、
記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と
を具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする自動ピアノ。 - 鍵を駆動する駆動手段を有する自動ピアノにおいて、
ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下されたことを検出して、その状態を示す押鍵情報を生成する押鍵情報生成手段と、
前記ハンマの動きから打弦がなされたことを検出し、その状態を示す打弦情報を生成する打弦情報生成手段と、
当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放されたことを検出して、その状態を示す離鍵情報を生成する離鍵情報生成手段と、
本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、これを識別する識別情報を生成する識別情報生成手段と、
本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されない場合、その情報を推定して補足情報を生成する補足情報生成手段と、
前記押鍵情報、前記打弦情報、前記離鍵情報、前記識別情報および前記補足情報を演奏情報として記録する記録手段と、
記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、 前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報および前記補足情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と
を具備し、前記鍵軌道生成手段によって生成された軌道に従って前記鍵を駆動することを特徴とする自動ピアノ。 - 鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、
前記演奏情報は、発音指示データおよび消音指示データの少なくともひとつを含み、さらに、本来対になるべきこれらのデータが当該演奏情報の生成時に一方しか出力されなかった場合にはそれを識別する識別データを含み、
前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来対になるべき発音指示データと消音指示データが揃っている場合には、それらに基づいて鍵軌道を生成し、前記識別データが読み出された場合には、欠落していないデータに基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する
ことを特徴とする自動ピアノ。 - 鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、
前記演奏情報は、押鍵情報、打弦情報および離鍵情報の少なくともひとつを含み、さらに、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されなかった場合にはそれを識別する識別情報を含み、
前記押鍵情報は、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下された状態を示す情報であり、
前記打弦情報は、前記ハンマによって打弦がなされた状態を示す情報であり、
前記離鍵情報は、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放された状態を示す情報であり、
前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する
ことを特徴とする自動ピアノ。 - 鍵を駆動する駆動手段と、演奏情報を記録する記録手段と、前記鍵の押下に連動して駆動される打弦機構と、前記鍵の解放に連動して駆動される消音機構と、前記演奏情報に基づいて鍵軌道を生成する鍵軌道生成手段と、前記鍵軌道生成手段によって生成された鍵軌道に従って前記駆動手段に前記鍵を駆動させる制御手段とを有する自動ピアノであって、
前記演奏情報は、押鍵情報、打弦情報および離鍵情報の少なくともひとつを含み、さらに、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報のうち、予め定めた情報が生成されなかった場合には、それを識別する識別情報と、生成されなかった情報を推定することによって生成された補足情報とを含み、
前記押鍵情報は、ハンマが打弦可能な状態となる程度に前記鍵が押下された状態を示す情報であり、
前記打弦情報は、前記ハンマによって打弦がなされた状態を示す情報であり、
前記離鍵情報は、当該自動ピアノの消音機構が消音可能となる程度に前記鍵が解放された状態を示す情報であり、
前記鍵軌道生成手段は、記録された演奏情報を読み出して再生を行なう際に、本来組になるべき前記押鍵情報、前記打弦情報および前記離鍵情報が全て揃っている場合には、これらの情報に基づいて鍵軌道を生成し、前記識別情報が読み出された場合には、欠落していない情報および前記補足情報に基づき予め定められた規則に従って鍵軌道を生成する
ことを特徴とする自動ピアノ。
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