JP4222395B2 - 自動演奏ピアノ - Google Patents
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1.1.リファレンスポイント
図10は、一般的な自動ピアノの要部の構成を示す断面図である。図に示すように、自動ピアノにおいては、鍵1と、鍵1の運動をハンマー2に伝達するアクション3と、ハンマー2によって打弦される弦4と、鍵1を駆動するソレノイド5とを有している。そして、ソレノイド5のプランジャが突出すると、鍵1がバランスピンPを中心に回動し、その演奏者側が下がり(以下、この状態を押鍵状態という)、また、これに連動してアクション3が作動し、ダンパー6が弦4から離れるとともに、ハンマー2が回動して打弦する。
一方、演奏者が弾く場合は、指で鍵1を押下することにより、上述と同様の作用が生じて打弦が行われる。
ところで、鍵1を押し下げる速度に応じてハンマー2の打弦速度が決まるが、鍵1の速度は初め遅くて次第に早くなる場合や、その逆の場合もあり、さらには、ほとんど一定の速さで押される場合もある。この場合、鍵1のレスト位置(鍵1を押してない場合の初期位置)からエンド位置(鍵を押し切った位置)に至るまでの速度と、ハンマー2の打弦速度とがどのような関係になっているのかが重要である。なぜならば、その関係を考察せず、打弦強度データに応じて鍵速度(初期速度など)を制御しても、記録時の打弦速度を再生することはできないからである。
次に、上述のようにして求めたリファレンスポイントXrにおいて、どのような鍵速度にすれば、打弦速度を忠実に再現することができるかを設定する必要がある。なお、以下においては、リファレンスポイントXrにおける鍵速度をリファレンス速度Vrという。
ここで、図2はリファレンスポイントXrを9.5mmに設定したときの鍵速度と打弦速度の関係を示す図である。図中、白点は鍵をエンド位置まで押し切る単打奏法を行った場合の結果を示し、黒点は鍵をエンド位置まで押し切らずに連打する連打奏法を行った場合の結果を示している。また、C1は1次最小自乗法近似による直線、C2は6次最小自乗法による曲線を示している。
この実施形態においては、計算が簡単で誤差の少ない1次関数近似を採用している。したがって、リファレンス速度Vrは、次式によって求められる。
Vr=α・VH+β
数1において、VHは打弦速度(打弦強度データ)であり、αおよびβは定数である。定数αおよびβは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。なお、αおよびβは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。
さて、演奏データに含まれる打弦時刻データは、前述したように、相対時刻あるいは絶対時刻で記録されているが、いずれにしても再生側自動ピアノにおいて打弦時刻データを読みとって処理することにより、再生時の各音の打弦絶対時刻が求められる。そこで、このようにして求めた打弦絶対時刻において正確に打弦を行わせるには、鍵が何時リファレンスポイントXrを通過すればよいかを求める必要がある。
Tr=−(γ/vH)+δ
なお、数2における定数γおよびδは、ピアノの機種等に応じ実験等によって決定する。なお、γおよびδは、同一ピアノであっても、リファレンスポイントXrをどこにするかによって変動する。これは、数1におけるα、βの場合と同様である。
なお、鍵1がリファレンスポイントXrに達したときに打弦が行われるのであれば、リファレンス時間差Trを求める処理は不要になる。
この場合、レスト位置からエンド位置までの鍵の軌道(時間経過に対する鍵の位置)を設定すれば、鍵の押下開始位置からリファレンスポイントXrに至るまでの各位置と時刻の関係(速度と時刻の関係等)が求められるから、これに応じて鍵の位置をフィードバック制御すればよいことが判る。
ところで、上述したような再生処理を実現するためには、演奏記録時において、押鍵時刻、打弦時刻および打弦速度を得ておく必要がある。しかし、演奏状態あるいは自動ピアノの性能等により、押鍵イベントあるいはハンマーイベント等が抜ける虞がある。その詳細を図11,図12を参照し説明する。まず、図11(a)は、演奏記録時における鍵1の押鍵深さを示している。図において一点鎖線L1は、センサによって押鍵または離鍵イベントが検出される押鍵深さである。また、同図(b)は、押鍵深さの軌道が一点鎖線L1と交差するタイミング、すなわち押鍵または離鍵イベントが発生するタイミングを示している。また、同図(c)は、センサSE1,SE2によりハンマーイベントの検出された時刻(正確には、ハンマーが打弦位置直前にあるセンサSE1を通過した時刻)と、検出されたハンマー速度Vh1,Vh2を示す。
また、これらダミーイベントを追加する理由を説明しておく。まず、本実施形態においては、上述したように、演奏記録時において、押鍵時刻、打弦時刻および打弦速度を得ておく必要がある。従って、これらのうち一部が抜けた場合には、正確なリファレンス軌道を生成することが困難になる。
(押鍵時について)
ところで、上述したように、演奏データの記録および再生に供される自動ピアノには個体差があるため、何れかの自動ピアノにおいて得られた学習結果を他の自動ピアノにそのまま適用することは困難である。しかし、本発明者らが各種の自動ピアノについて個体差の内容を検討したところ、「押鍵時のリファレンス速度とハンマー速度との関係」は個体差が比較的小さく、「リファレンス時間」については個体差が比較的大きいことが判明した。
離鍵時の鍵の動きは、ダンパーの動きに関連するため、これを忠実に再現することも重要である。まず、再生しようとする離鍵速度が最大離鍵速度(鍵が自重によってレスト位置に戻る速度)よりも十分に遅い場合は、所望の離鍵速度が得られるようにソレノイドによって鍵を制動すれば良いのであるから、特に問題になることは少ないであろう。最も問題になる状況は、記録時の離鍵速度が再生用の自動ピアノの最大離鍵速度付近になっている場合である。かかる場合は、サーボ特性の個体差によって、両者の離鍵軌道に大きな差が生じる。例えば、再生用の自動ピアノのレスポンスが遅い場合においては、ダンパーが弦に接触するタイミングが遅れ、音が響き過ぎるような不具合を招くことになる。
以上のようにして、予め設定したリファレンスポイントXrにおけるリファレンス速度Vrが求められれば、鍵1の挙動をこれに応じて制御することにより、記録時の打弦速度を再生することができる。また、イベント抜けが検出された場合には適宜ダミーイベントが追加されるから、ハーフストローク等の奏法が採られた場合においても、安定して演奏状態を再生することが可能である。
以上がこの実施形態の制御原理である。
次に、本実施形態の全体構成を説明する。図1は、この実施形態の自動ピアノの構成を示すブロック図である。なお、前述した図10の各部と対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。また、記録および再生に用いられる複数の自動ピアノが存在する場合においても、以下に述べる構成自体は共通である。
11は、再生前処理部10が作成した軌道データに基づいて、ソレノイド5のプランジャの動きを示すデータを作成するモーションコントローラである。また、12はサーボコントローラであり、モーションコントローラ11から供給されるデータに応じてソレノイド5の励磁電流を制御する。この場合、ソレノイド5には、プランジャの速度を検出する検出機構が設けられており、これにより検出されたプランジャ速度をフィードバック信号としてサーボコントローラ12にフィードバックするようになっている。そして、サーボコントローラ12は、モーションコントローラ11から供給されるデータとソレノイド5からのフィードバック信号とを照合しながら、両者が一致するように励磁電流を制御する。
この結果、鍵1がリファレンスポイントXrに達したときの速度は、記録時の打弦速度に対応した速度(すなわち、リファレンス速度Vr)になり、ハンマー2は記録時と同じ速度で打弦を行う。
3.1.呼称データの収集
最初に自動ピアノにおいて、呼称データと称するデータを収集する。この呼称データは、主として演奏データの記録に用いられる自動ピアノの基本的特性を定めるものであり、リファレンス速度Vr、打弦速度およびリファレンス時間差Trの関係を記述したデータである。
また、呼称データは複数の自動ピアノの実測値の平均値によって求めたり、設計上の理想値であってもよい。このような場合、呼称ピアノは実在しないことになる。
実際に記録・再生に用いられる自動ピアノの特性は、一般的に呼称ピアノのものとは異なる。そこで、記録・再生を行う前に、使用される自動ピアノと呼称ピアノとの個体差を学習しておく必要がある。この学習内容について以下詳述する。
上述したように、ソレノイド5には、プランジャの速度を検出する検出機構が設けられており、これにより検出されたプランジャ速度がフィードバック信号(例えば電圧)としてサーボコントローラ12にフィードバックされる。ここで、この速度フィードバック信号をサーボコントローラ12の内部で用いられる値(内部正規化値という)に変換するために、最初に速度フィードバック値に所定値(センサ・オフセット値)が加算され、その結果に対して他の所定値(センサ・ゲイン)が乗算されることになる。
次に、押鍵時における各種のパラメータの学習について、図14を参照し説明する。
まず、サーボコントローラ12が、押鍵指示時刻tPs0において、一定の押鍵速度vPrで押鍵動作を行うべくソレノイド5を駆動制御したとする。この場合、サーボコントローラ12のサーボ限界により、鍵は完全な直線運動を行うことができず、同図の実押鍵軌道L1に示すように、立ち上がりが鈍くなる。
(1)押鍵立上むだ時間TPdについて
押鍵立上むだ時間TPdは、サーボコントローラ12における定数のばらつきや、鍵の慣性モーメント等によって変動する。
本実施形態にあっては、仮想押鍵速度と呼称押鍵速度とが等しいものとしているため、実打弦速度vHが得られると、これに対応するリファレンス速度Vr(仮想押鍵速度vPrそのものに等しい)が一意に求まる。そして、レスト位置からエンド位置までのストロークは自動ピアノの種類に応じて一意に定まる。結局、仮想押鍵移動時間TPmは、実打弦速度vHに基づいて一意に定まる。
押鍵エンド到着時刻偏差TPcは、ピアノのアクション部分の質量や慣性モーメント等の個体差に基づいて変動する。
(4)呼称打弦時間差TPrHについて
呼称打弦時間差TPrHは、実打弦速度vHに対応する呼称データに基づいて一意に定まる。
そして、得られた多数の測定結果に基づいて、最小自乗法等の手法により、呼称押鍵速度vPrに対する押鍵エンド到着時刻偏差TPcの近似関数を得ることができる。本実施形態にあっては、この近似関数がテーブルTPc@vPrに記憶される。
上述した押鍵時の動作では、打弦速度および打弦時刻の再現性を重視したため、呼称押鍵速度と仮想押鍵速度とを相違させなければならない場合もあった。しかし、離鍵時においては呼称離鍵速度と仮想離鍵速度とが全く等しいものと考えて差し支えない。従って、学習は、時間軸上のタイミングの個体差について行えば十分である。
まず、サーボコントローラ12が、離鍵指示時刻tNs5において、一定の離鍵速度vDで離鍵動作を行うべくソレノイド5を駆動制御したとする。この場合も、サーボコントローラ12のサーボ限界により、鍵は完全な直線運動を行うことができず、同図の実離鍵軌道L4に示すように、立ち下がりが鈍くなる。
演奏記録を行う場合、演奏者は、まず演奏記録部30を動作状態にしておき、自動ピアノを演奏する。これにより、演奏記録部30においてハンマーイベントおよび鍵イベント等が記録される。
次に、演奏者が記録後処理部31を動作させると、図6に示すプログラムが実行される。図において処理が開始されると、ステップSP100において各種の変数の初期設定が行われる。次に処理がステップSP101に進むと、演奏記録部30からハンマーイベントおよび鍵イベント等のデータが読出される。また、ステップSP101においては、読出されたデータに対して対応関係にあるデータも併せて読出される。例えば、最初に読出されたデータが所定のキーコードKCの押鍵イベント(押鍵時刻)であった場合、そのキーコードKCの離鍵イベント(離鍵時刻)およびハンマーイベント(打弦時刻、打弦速度)が検索され、存在するならばこれらのデータも演奏記録部30から読出される。
次に、処理がステップSP102を介してステップSP103に進むと、先に読出されたデータの対応関係がどのような状態であるか判定される。一般的な(正常な)演奏状態では、押鍵イベントと離鍵イベントとの間に1回のハンマーイベントが存在する。かかる場合は処理がステップSP104に進む。ステップSP104においては、押鍵時刻が打弦時刻以下であるか否かが判定される。一般的な状態では押鍵イベントが生じた後にハンマーイベントが生じるから「YES」と判定され、処理がステップSP105に進む。ステップSP105においては、押鍵時刻および打弦時刻の時間差が所定値A以上であるか否かが判定される。
このように、一般的な演奏状態においては、演奏記録部30から読出されたデータに対して単に正規化処理が施され、その結果が演奏データとして出力されることが判る。
演奏記録時において何れかの鍵がゆっくりと押下されると、押鍵時刻から打弦時刻までの時間が所定値Aよりも長くなる場合がある。かかる演奏状態が演奏記録部30に記録された場合は、ステップSP105において「YES」と判定され、処理はステップSP106に進む。ステップSP106においては、所定値Bが押鍵速度で除算され、その商は押鍵時刻,打弦時刻の時間差以上であるか否かが判定される。ここで「NO」と判定されると、処理はステップSP113に進む。すなわち、押鍵速度が遅い場合には、時間差が所定値Aを越えている場合であっても、この時間差が押鍵速度に鑑みて妥当な値であれば、一般的な場合と同様に処理をステップSP113に進めることとしたものである。ここで、所定値Bは、例えば「10mm」(所定値Bのディメンジョンはs・mm/s=mmになる)程度に設定するとよい。
先に図11について説明したように、ハーフストロークの連打を行った場合等においては、複数のハンマーイベントの間に離鍵/押鍵イベントが存在しない場合がある。かかる状態のデータが読出され処理がステップSP103に進むと、離鍵/押鍵イベント抜けであると判定され、処理がステップSP111に進む。ステップSP111においては、最後のハンマーイベントを除く全てのハンマーイベントに対応して、各打弦時刻と同一時刻のダミーの離鍵および押鍵イベントが追加される。
まず、離鍵/押鍵イベント抜けが生じた場合においても、ハンマーイベントの内容、すなわち打弦時刻および打弦速度は既知である。また、先に図2〜図5において説明したように、打弦速度が既知であればリファレンス速度Vrおよびリファレンス時間差Trを求めることができる。従って、「打弦時刻よりもリファレンス時間差Trだけ前の時刻にリファレンス点を通過し、かつ、リファレンス速度Vrの傾きを有する直線」は一意に決定される。
このように、ダミーの離鍵および押鍵イベントが追加され、これらの内容が修正されると、処理がステップSP113に進み、一般的な場合と同様の処理が行われる。
先に図12の時刻t3〜t4について説明したように、ハーフストローク奏法を行った場合は、押鍵イベントおよび離鍵イベントは生ずるが、これらに対応するハンマーイベントは発生しないことがある。かかる状態のデータが読出され処理がステップSP103に進むと、ハンマーイベント抜けであると判定され、処理がステップSP107に進む。ステップSP107においては、押鍵時刻と同一時刻にダミーのハンマーイベントが追加される。
このように、弱いハンマーイベントが追加されるとともに押鍵イベントの内容が修正されると、処理がステップSP113に進み、一般的な場合と同様の処理が行われる。
押鍵時刻,打弦時刻の時間差が大きすぎる場合の具体例を、図13(a)〜(c)に示す。これらの図において、鍵軌道は時刻t1にセンサ位置に達しており、この時刻t1に押鍵イベントが発生している。しかし、この時の押鍵動作はダンパー操作を行うためのハーフストロークであり、ハンマーイベントは発生していない。その後、センサ位置近くまで鍵が戻されるが、センサ位置に達する前の時刻t2において再び鍵が押下され、時刻t3にハンマーイベントが発生し、時刻t4に離鍵イベントが発生している。
一般的な演奏状態では、最初に押鍵イベントが生じた後、ハンマーイベントが発生する。従って、打弦時刻が押鍵時刻よりも早くなることは、ほとんど起り得ないと考えられる。しかし、例えば同一の鍵を高速に連打した場合などにおいて、ハンマー2やアクション3の運動状態によっては、かかる事態が生じる可能性も否定できない。
3.4.1.押鍵に対するデータ設定
さて、上述のように記録後処理部31を介して出力された演奏データは磁気ディスク等の記録媒体に適宜記録されるが、この演奏データに基づいて自動演奏を行う場合には、演奏データを再生前処理部10に供給する。以下、本実施形態における再生前処理部10について説明する。この実施形態においては、鍵軌道として直線を想定するので、次のような手法で軌道データの設定を行う。
次に、以上のようにして生成される軌道データの一例を説明する。図7は、鍵の押鍵軌道(仮想押鍵軌道である直線軌道)を示す図であり、レスト位置X0から等速運動をしてエンド位置Xeに至っている。ここで、鍵の初速度をV0(呼称押鍵速度vPrに等しい)、鍵の位置をX、鍵の駆動開始時点からの時刻をtとすれば、鍵の仮想軌道は、
X=V0・t+X0
と表される。
また、鍵がリファレンスポイントXrに達する時刻をtr'とすると、
Xr=V0・tr’+X0
なる式が成り立つから、この数4から時刻tr'を求めることができる。したがって、押鍵を開始する押鍵開始時刻t0(仮想押鍵出発時刻tPc0)は、次式によって求めることができる。
t0=tr―tr’=tr―(Xr―X0)/V0
なお、リファレンス時刻trは、前述のように、打弦時刻からリファレンス時間差Trを減算することによって求める。
上記数5によって押鍵開始時刻t0を求め、この時刻から、数3で示される軌道に従って鍵1を駆動すれば、鍵1は、リファレンス時刻trにおいて正確にリファレンスポイントXrに達し、しかも、その時の速度は、打弦強度データに対応したリファレンス速度Vrとなる。
次に、再生前処理部10は、離鍵イベントを検出すると、これに対するデータ設定を行う。その詳細を図16を参照し説明する。
図において処理がステップSP31に進むと、テーブルvNr@vDと、演奏データの離鍵速度vDとに基づいて、呼称離鍵速度vNrが求められる。なお、離鍵速度vDと呼称離鍵速度vNrは等しいものとしているため、実際にはリニアスケールからログスケールへの変換が行われるのみである。すなわち、テーブルvNr@vDは、対数表と等価なテーブルである。また、ステップSP31においては、呼称離鍵時間差TNrDに「0」が代入される。
次に、離鍵時の軌道データ作成について説明する。
まず、鍵の位置をXN、離鍵初速度をV0N(<0)、離鍵開始時点からの時刻をtN、エンド位置をXeとすれば、離鍵時の鍵軌道(仮想鍵軌道)は、次式で表される。なお、離鍵初速度V0Nの絶対値は、呼称離鍵速度vNrに等しい。
XN=V0N・tN+Xe
ここで、図8は数6で示される軌道を示す図である。
さて、前述のように、演奏記録部30(図1参照)は、キーセンサ25内の下方のフォトセンサが受光状態になってから上方のフォトセンサが受光状態になるまでの時間を測定して離鍵速度vkNを検出し、また、上方のフォトセンサが受光状態になった時刻を離鍵時刻tkN(離鍵時刻tDに等しい)として検出する。この場合、離鍵時刻tkNにおけるダンパー6は、弦4に接して音の減衰を開始する状態なっている(そのような状態になるようフォトセンサの位置が調整されている)。そして、このようにして検出された離鍵速度VkNおよび離鍵時刻tkNは、それぞれ演奏情報を構成するデータとして記録され、再生時に読み出される。
ここで、鍵の駆動が開始される時刻を基準(=0)にして、鍵がリファレンスポイントXrNに達する時刻をtrN'とすると、
XrN=V0N・trN’+XeN
(ただし、直線軌道だからV0N=VrN=VkN)
なる関係が成り立ち、この数7より時刻trN'を求めることができる。したがって、次式によって離鍵開始時刻t0N(仮想離鍵出発時刻tNc5に等しい)を求めることができる。
t0N=trN−trN’=trN−(XrN−XeN)/V0N
この数8によって離鍵開始時刻t0Nを求め、この時刻から、数6で示される軌道に従って鍵を駆動すれば、鍵は離鍵時刻tkNにおいて離鍵リファレンスポイントXrNに達し、記録時の離鍵状態を忠実に再現することができる。
押鍵軌道および離鍵軌道は上述のようにして作成されるが、鍵の操作には、離鍵の途中から次の押鍵に移ったり、あるいは、押鍵の途中から離鍵され場合がある。このような場合においては、作成した押鍵軌道と離鍵軌道とが交差する。
例えば、図9はこのような軌道の交差状態を示しており、図示の状態では、時刻t0から時刻tcまで押鍵が行われ、時刻t1から時刻t4まで離鍵が行われている。このとき、上述の方法によって生成される押鍵軌道は、時刻t0にレスト位置X0を離れ、時刻t3においてエンド位置Xeに達する軌道であり、また、離鍵軌道は時刻t0Nにエンド位置Xeを離れ、時刻t4においてレスト位置X0に達する軌道である。
tc=(V0・t3−V0N・t0N)/(V0−V0N)
=t0N+V0・(t3−t0N)/(V0−V0N)
なお、数9におけるt3は、次式により算出される。
t3=t0+(Xe−X0)/V0
また、離鍵の後に発生した押鍵の軌道が交差する場合も、2つの直線軌道の交点を求めればよいので、上記と同様の考え方により交差時刻を求めることができる。また、上述したように、本実施形態にあっては適宜ダミーイベントを追加するから、図12(e)のように、押鍵軌道同士あるいは離鍵軌道同士が交差することも考えられる。押鍵軌道同士が交差する場合には、同図に示すように、先にエンド位置に達する軌道(押鍵速度の速い軌道)を採用するのが妥当である。これは、強いアタックを忠実に再現するためである。一方、離鍵軌道同士が交差する場合には、最初に離鍵速度の速い軌道を採用し、交差点を過ぎた後は、離鍵速度の遅い軌道を採用するとよい。
以上が、再生前処理部10における軌道データの作成であり、このようにして作成された軌道データは、図1に示すモーションコントローラ11に供給される。モーションコントローラ11においては、作成された軌道データに基づいて、各時刻における鍵1の位置に対応した位置制御データ(X)を作成し、サーボコントローラ12に供給する。サーボコントローラ12は、位置制御データ(X)に応じた励磁電流をソレノイド5に供給するとともに、ソレノイド5から供給されるフィードバック信号と制御データ(X)を比較し、両者が一致するようにサーボ制御を行う。
以下、図11、図12、図13について、上述した軌道データを作成した場合の具体例を説明する。
まず、図11(e)によれば、時刻t15以前の再生リファレンス軌道は、レスト位置から等速運動をしてエンド位置に至っている。その速度はハンマー速度Vh1に対応したリファレンス速度である。その後、リファレンス軌道は、直ちに最大離鍵速度でレスト位置に向かっている。これは、ダミーの離鍵イベントが、当初においてはハンマーイベントと同一の時刻(時刻t15,同図(d)参照)に追加されたためである。この離鍵時の軌道は、時刻t25のハンマーイベントに対応する押鍵軌道と交差しているため、上述した交差処理が行われる。この結果、リファレンス軌道は同図の実線に示すようになる。
次に、演奏再生時における実施形態の全体動作を説明する。
まず、再生前処理部10は、記録媒体から演奏情報を読み出し、その中の打弦時刻データおよび打弦速度データに基づいて、押鍵軌道を作成する。
作成された押鍵軌道データは、モーションコントローラ11に供給され、ここで、速度制御データに変換される。すなわち、押鍵指示時刻tPs0において呼称押鍵速度vPrに対応する速度データがサーボコントローラ12に供給される。これにより、呼称押鍵速度vPrに対応した励磁電流がソレノイド5に供給される。この場合、サーボコントローラ12は、ソレノイド5のフィードバック信号と速度制御データとを比較し、両者が一致するように励磁電流を制御するから、鍵1の軌道は仮想押鍵軌道に追従するものとなる。
以上説明したように、本実施形態によれば、呼称ピアノに対する各自動ピアノの個体差を、押鍵立上むだ時間TPd、テーブルTPc@vPr、テーブルvPs@vPr、離鍵立上むだ時間TNd、テーブルTNc@vNr、およびテーブルvNs@vNrに集約して学習するから、簡単な学習に基づいて忠実な演奏再生を行うことができる。
これにより、再生前処理部10等におけるメモリ容量等も低く抑えることが可能になり、自動ピアノを安価に構成することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるわけではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
5.1.仮想押鍵・離鍵軌道
上記実施形態においては、仮想押鍵・離鍵軌道として直線軌道を採用したが、特願平6−79604号に示されているような放物線軌道、その他任意の軌道に基づいて押鍵・離鍵速度を制御してもよい。
また、上記実施形態においては、モーションコントローラ11とサーボコントローラ12によって速度サーボ制御を行っていたが、これに代えて、特願平6−79604号に示されているような鍵位置を指示する位置サーボ制御を行っても良い。
Claims (1)
- 演奏データを供給する供給手段と、
使用に先立って個体差を学習する個体差学習手段であって、
(1)鍵がエンド位置からレスト位置に移動するときの当該鍵の軌道の収束状態の部分に 基づいて想定される仮想鍵軌道が、エンド位置とレスト位置との間にある所定の離鍵位置に達する時刻と、
(2)前記仮想鍵軌道がエンド位置と交差するタイミングである離鍵出発時刻と離鍵を指示した時刻である離鍵指示時刻との差を離鍵立上むだ時間とした場合の、当該離鍵立上むだ時間の呼称値と、実測された離鍵速度とに基づいて得られた呼称離鍵軌道が、前記離鍵位置に達する時刻と
の差を離鍵到着時刻偏差として、呼称離鍵速度に対する前記離鍵到着時刻偏差及び前記離鍵立上むだ時間の個体差を学習する個体差学習手段と、
前記演奏データに基づいて再生するときに、学習した前記離鍵到着時刻偏差及び前記離鍵立上むだ時間に基づいて、離鍵サーボ指示速度値及び離鍵指示時刻を算出する算出手段と、
前記演奏データから得られる離鍵時刻データと離鍵速度データとに基づいて、鍵がエンド位置からレスト位置に移動するまでの当該鍵の位置と、当該位置に鍵がエンド位置から至るまでに経過した時間との関係を表す離鍵軌道を生成する軌道生成手段と、
前記離鍵指示時刻において前記離鍵速度データに従った速度で鍵をエンド位置からレスト位置に向かって移動させ、前記離鍵軌道に従って鍵が移動するように、当該鍵の駆動を制御する駆動制御手段と
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