JP3821016B2 - オフセット印刷用新聞用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー印刷適性に優れたオフセット印刷用新聞用紙、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
新聞用紙(新聞巻取紙)は、一般に、メカニカルパルプや脱墨パルプ(DIP)を主体とする紙であり、中・下級紙に分類される紙でありながら、他方で、新聞印刷は、指定された時間帯の指定された時間内に、指定された大量の部数を確実に印刷する必要があり、一般印刷用紙以上に厳しい品質を要求される紙である。
【0003】
近年、新聞印刷は、オフセット印刷方式がそのほとんどを占めるようになってきている。また、サテライト型、あるいはタワープレス型等のオフセット方式のカラー印刷機の普及に伴い、新聞のカラー面の増加も大きな傾向である。
【0004】
カラー印刷は、例えば、四色カラー印刷(藍、赤、黄、墨)の場合、同一紙面に対して、4回の印刷が行われるわけであり、単色印刷と比較して、新聞用紙への負担は多大なものとなっている。そのため、着肉性不良の問題(印面カスレの問題、あるいは画線部の印面濃度が十分に得られない問題)が起こるようになってきている。この問題は、言い換えると、用紙の湿潤時のインキの着肉性の問題でもあると言える。なお、この問題は、サテライト型の印刷機の場合において顕著な問題である。
【0005】
一方、新聞用紙は表面強度を向上させるために、澱粉類(酸化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉など)、ポリビニルアルコール(PVA)、あるいはポリアクリルアミド(PAM)などが塗工されているのが普通である。なお、これらの中でも、コスト面、操業面などの点から、澱粉塗工品が最も一般的である。一般に、紙のインキ着肉性は、非塗工品の方が塗工品より優れているとされており、現在の新聞用紙は、その点からも、着肉性には不利な状況にある。
【0006】
着肉性改善の一般的な方法としては、澱粉、PVA、あるいはPAMなどの塗工材料の塗布量を低減させる方法、あるいは紙質(例えば、平滑度など)を変える方法などが知られている。しかしながら、前者の方法は、表面強度対策と相反する関係にあり、自ずから限界があるのが現状である。後者の方法についても、その効果は大きくなく、着肉対策としては不十分である。
【0007】
また、澱粉、PVAなどの水溶性高分子と表面サイズ剤を併用する方法も知られている。紙パルプ技術タイムスVol.34,No.8,(1991)p1-5では、表面サイズ剤(スチレンアクリル系、アクリル系、オレフィン系など)を塗工した紙は、澱粉、PVAのみを塗工した紙より、インキとの接着力が良好であることが記載されている。
【0008】
特開平11-140791号公報では、スチレン系モノマーが40〜80重量%含まれる水溶性重合体を塗布したカラー印刷適性に優れたオフセット印刷用新聞用紙が開示されている。しかしながら、このような表面サイズ剤併用処方は、カラー印刷適性向上に対して、ある程度の効果はあるものの、未だ不十分であった。
【0009】
さらに、特開平11-247095号公報では、澱粉と二酸化チタンと表面サイズ剤の3者を配合した組成物を塗布した新聞印刷用紙が開示されている。しかしながら、このような填料外添型の塗工は、操業性、あるいは表面強度対策の点から考えて、好ましいものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、澱粉類と表面サイズ剤を混合して調製した表面処理剤を外添(塗工)することにより、カラー印刷適性に優れたオフセット印刷用新聞用紙を提供することを課題とした。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、四色カラーオフセット印刷時の色ずれの発生やテンション不良による走行性悪化が新聞用紙が湿し水を吸収し繊維が膨潤することが原因であること、さらに紙面が湿潤することによるインキ着肉性が不良となることを見出した。
【0012】
そして、本発明者等は優れた四色カラー印刷品質と走行性を有するオフセット印刷用新聞用紙を得るべく鋭意研究を重ねた結果、サイズ剤成分を紙層のできる限り表層に存在させ、オフセット印刷時の湿し水が紙に転移した後1秒以内の浸透性を抑制することにより、すなわち、紙面と水との接触角(紙面に5μlの水滴を滴下して測定)の0.1秒後の値と1.0秒後の値の差が40度以内となるように新聞用紙の吸水性を制御することにより上記課題が解決されることを見出した。
【0013】
特に、表面サイズ剤として、特定の構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸との共重体を使用し、このようなサイズ剤と、澱粉及び/または加工澱粉との混合物を表面処理剤として新聞用紙原紙に塗工することによりカラー印刷におけるインキ着肉性を向上させる効果が非常に高いことを見出した。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルを意味する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、新聞用紙の紙面と水との接触角(紙面に5μlの水滴を滴下して測定)の0.1秒の値と1秒後の値の差を40度以内に特定したところにある。
【0015】
4色カラーオフセット印刷の1胴目から4胴目までに紙が通過する時間は、印刷速度にもよるが、通常1秒以内であり、この間の水の吸収による繊維の膨潤が4胴目の着肉不良、色ずれ、テンション不良の原因であると考えられる。本発明者等は、水の紙層への浸透について、超音波透過率の測定(DPM、EMCO社製)により鋭意検討を重ねた結果、水の紙層への浸透は、キャピラリー効果による浸透とパルプ繊維の膨潤による吸収が、紙に転移した直後にほぼ同時に進行することが判明した。そして、水が紙面に転移後の1秒以内における紙表面のパルプ繊維の膨潤度は、紙面に水滴を落下して0.1秒後から1秒後の接触角の減少を測定することにより評価できること見出した。これらの知見を基に、本発明者らは新聞用紙の吸水性とカラー印刷適性に関して種々の検討を行った結果、新聞用紙の表面に5μlの水滴を滴下させ、0.1秒後の接触角と1秒後の接触角の差が40度以内、好ましくは20度以内であれば、紙面が湿し水にて湿潤した状態でのインキ着肉性(ウェット着肉性)が良好であり、結果的にカラー印刷適性に優れることが判明し、本発明を完成するに至った。この接触角の差が40度以内であれば、繊維の膨潤が比較的緩やかなために、紙表面の空隙率の減少が少なく、紙面が湿し水で湿潤した状態でもインキの着肉性が良好になり、カラー印刷適性が向上するものと考えられる。
【0016】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の0.1秒後の接触角は90度以上110度以下であることが好ましいが、1秒後の接触角の絶対値は特に限定されない。また、点滴吸水度(Japan TAPPI No.33に準拠、滴下水量1μlで測定)としては10〜300秒の範囲が好ましい。さらに、後述のネッパリ試験法において、ネッパリ強度が70gf/3cm(690mN/3cm)以下のものが適当である。
【0017】
上述した0.1秒後と1秒後の接触角の差を40度以内とするためには、新聞印刷用紙原紙に、例えば、下記の成分A、成分Bの2成分を主体とする表面処理剤を塗布、乾燥、カレンダー処理することにより得られる。
成分A:澱粉類
成分B:アルコール成分の炭素数が1〜5である(メタ)アクリル酸エステル及びエチレン性不飽和カルボン酸を少なくとも含有するモノマーから合成された水溶性共重体
【0018】
本発明で用いられる表面処理剤の成分Aは、澱粉類であり、未変性の澱粉の他、化工澱粉も使用できる。化工澱粉としては、例えば、“中村道徳、鈴木繁男編:澱粉科学ハンドブック(株)朝倉書店(1977年)、p496-522”などに詳しいが、本発明で用いられる化工澱粉としては、変性澱粉(過硫酸アンモニウム変性澱粉、酵素変性澱粉、特開昭60-28475号公報記載の熱化学変性澱粉など)、アルファー化澱粉、酸化澱粉、澱粉誘導体(エステル化澱粉(アセチル化澱粉など)、エーテル化澱粉(ヒドロキシエチル化澱粉など)、架橋澱粉、カチオン化澱粉など)、グラフト化澱粉などが挙げられる。本発明では、これらの澱粉は、単独で用いてもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。これらの澱粉の中でも、ゲートロール塗工適性に優れること、耐老化性が高いこと、フィルム形成能に優れることなどの性質を有するものがよく、酸化澱粉、エーテル化澱粉などがより好ましい。
【0019】
本発明で使用する表面処理剤の成分Bは(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体であって、アルコール成分が炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸を少なくとも含有するモノマーから合成された共重体を有効成分とする表面サイズ剤である。このような構成でれば、上述した0.1秒後と1秒後の接触角の差を40度以内とするための表面サイズ剤として好適であり、良好なインキ着肉性が得られる。
【0020】
アルコール成分が炭素数1〜18である(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸2,2-ジメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の低級モノアルコールとのエステル類、あるいは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の低級多価アルコールとのエステル類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル類は、単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の低級モノアルコールとの(メタ)アクリル酸エステル類が最も好ましい。
【0021】
一方、エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は、単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0022】
エチレン性不飽和カルボン酸は、モノマー段階で塩を形成させてもよく、また重合後に得られた共重合体の段階で塩を形成させてもよい。塩の種類としては、ナトリウム塩、またはカリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、低級の脂肪族アミン塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの種類の中でも、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく使用される。また、これらの塩は、単独または組み合わせて使用される。また、これらの塩は、完全中和塩、部分中和塩のどちらの形態でもよい。
【0023】
本発明で使用する表面処理剤の成分Bとしては、アクリル酸メチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体が最も好ましい。
【0024】
成分Bの(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸の重量割合は、(メタ)アクリル酸エステル:エチレン性不飽和カルボン酸=20:80〜90:10の範囲が好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸が10重量%未満の場合は、成分Aと併用した際の塗工液の安定性が悪く、一方、エチレン性不飽和カルボン酸が80重量%を超える場合は、新聞インキの着肉性が悪化する問題が発生する。なお、本発明の効果を損なわない範囲で重合が可能な他のモノマーを重合させてもよい。
【0025】
本発明の表面処理剤の成分Bに使用される共重合体の製造方法としては、特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など各種公知の重合法が使用できる。これらの中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法としては、反応容器に前記モノマー、溶媒、及び重合開始剤を仕込み、十分混合し、窒素気流中で反応系内を昇温し、溶媒の還流温度以下の温度で3〜10時間程度の反応条件で共重合するか、または反応容器に溶媒を仕込み、別の容器に用意した前記モノマーと重合開始剤の混合溶液を窒素気流中で溶媒に、溶媒の還流温度以下の温度で連続滴下し、3〜10時間程度共重合して得られた共重合体を、必要により脱溶媒し、アルカリで中和して水に溶解して、本発明の表面処理剤の成分Bが得られる。
【0026】
前記溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコールなどの低級アルコール、水と低級アルコールの混合液、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトンなどを例示できる。
【0027】
前記重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、2,2‘−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、α―クミルハイドロパーオキシド、イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物などの各種公知のものを使用できる。該重合開始剤の使用量は、反応速度、分子量などを考慮して適宜決定できる。通常、モノマー全量に対して、0.5〜5重量%である。
【0028】
本発明で用いられる表面処理剤の成分Bの重量平均分子量としては、0.1万〜10万の範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.3万〜8万の範囲である。
【0029】
本発明の表面処理剤の成分Aと成分Bの配合比(重量比)は、製造される新聞印刷用紙に求められる品質によって決定されればよく、必ずしも限定できるものではない。しかしながら、あえて配合比を限定するとすれば、成分Aが100重量部に対し成分Bが1〜50重量部の範囲が適当である。
【0030】
本発明の表面処理剤は、本発明の影響のない範囲で、ネッパリ防止剤、防腐剤、消泡剤、滑剤、防滑剤、紫外線防止剤、退色防止剤、蛍光増白剤、粘度安定化剤などの助剤、澱粉類以外の水溶性高分子(ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、カルボキシルメチルセルロース類など)を含有していてもよい。
【0031】
本発明の新聞印刷用紙原紙は、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプなどの機械パルプ、クラフトパルプ(KP)に代表される化学パルプ、これらのパルプを含む古紙を脱墨して得られる脱墨パルプ(DIP)、及び抄紙工程からの損紙を離解して得られる回収パルプなどを、要求品質に応じて単独、あるいは任意の比率で混合し、一般に公知公用の抄紙機により抄紙される。DIPは、任意の配合率(0〜100重量%)で配合すればよいが、最近の環境保護への関心の高まりによるDIP高配合化への要求の観点から、特に、50重量%以上使用されるのが望ましい。
【0032】
本発明の新聞印刷用紙原紙は、必要に応じて、填料として、ホワイトカーボン、クレー、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、合成樹脂填料(塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体系樹脂など)などを使用できる。また、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物などのろ水性/歩留まり向上剤;アルキルケテンダイマー(AKD)、無水アルケニルコハク酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、紫外線防止剤、退色防止剤などの助剤などを含有してもよい。
【0033】
本発明で使用する新聞印刷用紙原紙は、中性抄、あるいはアルカリ性抄の新聞用紙原紙である。また、新聞印刷用紙原紙の坪量としては、特に限定されるものではないが、 33 〜 45 g/m 2 程度である。
【0034】
本発明の表面処理剤は、前述の新聞印刷用紙原紙に、通常の製紙用塗工装置で塗布すればよい。例えば、2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、バーコーター、エアーナイフコーターなどの装置が挙げられる。これらの装置の中でも、ゲートロールコーターに代表される被膜転写型コーターが望ましく、新聞印刷用紙の場合、これらの装置の中でも、ゲートロールコーター(GRC)が一般的であり、本発明でも最も好ましく使用される。
【0035】
本発明の表面処理剤を塗工する際の塗工速度は、通常の新聞用紙を製造できる抄紙機の抄速程度であればよく、800〜1800m/分の範囲である。900m/分以上の高速で塗工することにより、表面処理剤が紙層中に十分浸透する前に乾燥されるので、より表層に表面処理剤が存在し、水を吸収した時の紙表層に存在する繊維の膨潤をより効果的に抑えられるものと考えられる。
【0036】
本発明の表面処理剤の塗布量は、製造されるオフセット印刷用新聞用紙の品質に応じて決定されるべきであり、特に限定されるものではないが、塗布量(両面あたり)としては0.3〜2.0g/m2の範囲が適当である。塗布量が0.3g/m2未満の場合、用紙の表面強度が不足する恐れがある。一方、塗布量が2.0g/m2より高い場合、オフセット印刷用新聞用紙特有の問題であるネッパリ問題(新聞用紙が大量印刷された際、塗工材料がブランケットに転移、蓄積することにより引き起こされる粘着性トラブル)を引き起こす可能性が高くなる。
【0037】
本発明の新聞印刷用紙は、表面処理剤を塗布、乾燥後、オフセット印刷に適した紙厚、平滑性を得るために、カレンダー処理をして得られる。カレンダーとしては、通常のハードニップカレンダー、あるいは高温ソフトニップカレンダー(例えば、紙パルプ技術タイムスVol.43,No.1(2000)p23などにまとめられている。)が挙げられる。今後の新聞用紙の軽量化を考えれば、本発明の新聞用紙では、ソフトニップカレンダーをより好ましく使用される。カラー印刷適性の点からすると、本発明の表面処理剤は、ソフトニップカレンダー処理と組み合わせるとよい。
【0038】
本発明の新聞印刷用紙の物性は、少なくとも、通常の新聞印刷用紙程度の引張り強度、引裂き強度、伸び、不透明度、摩擦係数などの物性であればよい。
【0039】
本発明の新聞印刷用紙のカラー印刷適性は、カラー印刷適性に適当な評価法がないこともあり、特に限定することもできないが、実際のカラー印刷機で印刷した際の印面が良好であればよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部及び%は、特に断らない限り、各々重量部及び重量%を示す。
【0041】
実施例、比較例で使用される澱粉類、及び表面サイズ剤として、以下のものを供試した。
<成分A>(澱粉類)
A−2:ヒドロキシエチル化澱粉 ETHYLEX-2025 (ステイレー社製)
<成分B>((メタ)アクリルエステル系表面サイズ剤)
B−1:メタクリル酸メチル・アクリル酸共重合体
B−2:アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体
B−3:アクリル酸ブチル・スチレン・アクリル酸共重合体
B−4:アクリル酸ステアリルエステル・アクリル酸共重合体
<成分C>(スチレン系表面サイズ剤)
C−1:スチレン・(メタ)アクリル酸共重合体
C−2:スチレン・マレイン酸共重合体
なお、B−1〜B−4のアクリルエステル系モノマーの比率は、 10 〜 80 重量%の範囲に、また、C−1〜C−2のスチレン系モノマーの比率は、 20 〜 80 重量%の範囲にあるのは言うまでもない。
【0042】
<新聞用紙原紙Bの製造>
DIP(ろ水度180ml)50部、TMP(ろ水度100ml)30部、NBKP(ろ水度600ml)10部、GP(ろ水度80ml)10部の割合で混合離解し、ろ水度110mlに調製したパルプスラリーに、填料として炭酸カルシウムを対絶乾パルプ1.5%となるように添加して、ベルベフォーマー型抄紙機にて中性抄紙し、無サイズ、カレンダー未処理の坪量42g/m2の新聞用紙原紙Bを得た。この新聞用紙原紙の点滴吸水度は5秒であった。
【0043】
得られたオフセット印刷用新聞用紙について、下記の項目を測定し、結果を表1に示した。
・接触角の測定:Dynamic Absorption Tester 1100DAT(Fibro社製)を用いて、オフセット印刷用新聞用紙のF面に5μlの水滴を滴下し、滴下0.1秒後及び1秒後の接触角を測定した。
・点滴吸水度の測定:オフセット印刷用新聞用紙のF面について、Japan TAPPI No.33(吸収性の紙の吸水速度試験方法)に準じて、滴下水量1μlで測定した。
・ネッパリ強度の測定:オフセット印刷用新聞用紙を4×6cmの寸法で2枚切り取り、塗工面を温度20℃の水に5秒間浸漬後、塗工面同士を貼り合わせた。これに、合紙を当てて、50kgf/m2の圧力でロール処理し、25℃、60%RHで24時間調湿した。試験片を3×6cmとした後、引張り試験機で、引張り速度:30mm/分の条件で測定を行った。測定値が大きいほど、剥がれにくい(逆に言い方をすると、粘着性が強い)ことを意味する。
・カラー印刷適性の評価:オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機:OA-4B2T-600)を使用し、カラー4色印刷(藍、赤、黄、墨の色順)を行い、4色目の墨単色部、4色重ね合わせた重色部の濃度評価、及び濃度ムラについて、目視評価を行った。
◎:4色目墨の印面濃度が非常に高く、濃度ムラもない。また、重色部で、非常に均一な画像が得られている。
○:4色目墨の印面濃度が高く、濃度もムラもほとんどない。また、重色部で、均一な画像が得られている。
△:4色目墨の印面濃度がやや低く、濃度ムラも認められる。また、重色部で、不均一であり、鮮明さがやや悪い画像が得られている。
×:4色目墨の印面濃度が低く、濃度ムラも明確に認められる。また、重色部で、不均一であり、鮮明さに欠けた画像が得られている
【0044】
[実施例1]
成分A−2の澱粉スラリーに、表面サイズ剤として成分B−1の溶液を、固形分換算で成分A−2 100部に対して20部の配合比で混合し、濃度6.0%の表面処理剤を調製した。得られた表面処理剤を、前述の新聞用紙原紙Bに、ゲートロールコーターで塗工(塗工速度:1150m/分、両面塗工)し、塗工後、高温ソフトニップカレンダー処理(ロール温度110℃、線圧130kN/m)を行い、オフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、上記の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
表面サイズ剤としてB−2を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
表面サイズ剤としてB−4を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0047】
[比較例1]
表面サイズ剤として、固形分換算で成分A−2 100部に対してB−3を10部、C−1を10部混合して表面処理剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0048】
[比較例2]
表面サイズ剤として、固形分換算で成分A−2 100部に対してB−3を10部、C−2を10部混合して表面処理剤を調整した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0049】
[比較例3]
表面サイズ剤としてC−1を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0050】
[比較例4]
表面サイズ剤としてC−2を使用した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0051】
[比較例5]
表面サイズ剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造した。得られたオフセット印刷用新聞用紙について、前述の項目を測定し、結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
表1より明らかなように、本発明の、下記の成分A及び成分Bの 2 成分を主体とする表面処理剤を塗布して得られる、紙面と水との接触角(紙面に 5 μlの水滴を滴下して測定)の 0.1 秒後の値と 1.0 秒後の値の差が 40 度以内であり、かつ 1.0 秒後の接触角が 90 度未満とした、実施例1〜3のオフセット印刷用中性新聞用紙は、
(1)本発明で使用する表面サイズ剤とはモノマー組成が異なる表面サイズ剤を塗布し、 1.0 秒後の接触角が 90 度未満ではあるが、 0.1 秒後と 1.0 秒後の接触角の差が 40 度以上とした、比較例3〜5の新聞用紙に比較して、ネッパリ強度が低く、優れたカラー印刷適性を有しているものであった。
(2)本発明で使用する ( メタ ) アクリルエステル系表面サイズ剤と、他のモノマー組成の表面サイズ剤とを併用し、これを塗布し、 0.1 秒後と 1.0 秒後の接触角の差が 40 度以内ではあるが、 1.0 秒後の接触角が 90 度を超える、比較例1、2の新聞用紙に比較して、カラー印刷適性は共に良好で同等であるが、ネッパリ強度が更に改善される。
成分A:ヒドロキシエチル化澱粉
成分B:アルコール成分の炭素数が 1 〜 18 である(メタ)アクリル酸エステル及びエチレ ン性不飽和カルボン酸を少なくとも含有するモノマーから合成された共重合体
Claims (3)
- 新聞用紙原紙に表面処理剤を塗布、乾燥、カレンダー処理して得られるオフセット印刷用中性新聞用紙において、下記の成分A及び成分Bの 2 成分を主体とする表面処理剤を塗布して得られる、紙面と水との接触角(紙面に 5 μlの水滴を滴下して測定)の 0.1 秒後の値と 1.0 秒後の値の差が 40 度以内であり、かつ 1.0 秒後の接触角が 90 度未満であることを特徴とするオフセット印刷用中性新聞用紙。
成分A:ヒドロキシエチル化澱粉
成分B:アルコール成分の炭素数が 1 〜 18 である(メタ)アクリル酸エステル及びエチレン性不飽和カルボン酸を少なくとも含有するモノマーから合成された共重合体 - 成分Bの(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸の重量割合が、(メタ)アクリル酸エステル/エチレン性不飽和カルボン酸= 20/80 〜 90/10 であり、かつ重量平均分子量が 0.1 万〜 10 万であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
- 表面処理剤中の成分Aと成分Bの配合比が、成分A 100 重量部に対し成分Bが1〜 50 重量部であることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷用中性新聞用紙。
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