JP3820469B2 - コンクリート構造物の補強・補修方法および浸透型接着性組成物 - Google Patents

コンクリート構造物の補強・補修方法および浸透型接着性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発見が困難な微細クラックから、幅が 0.5mm程度のひび割れ部を有するコンクリート構造物を補修ないし補強する方法、およびそのための浸透型の接着性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート床板、コンクリート橋脚、コンクリート梁、コンクリート外壁、コンクリート架台、コンクリート堰堤、コンクリート砂防ダム、トンネル、ビルなどのコンクリート構造物のコンクリート表面は、建造後の経年変化によりひび割れ等が生じて劣化を免れない。そしてひび割れ等の劣化が、コンクリート強度を低下させたり剥落を生じさせたりすることになる。ひび割れ発生により、内部鉄筋を腐食させ、構造物破壊の危険が高まる。
【0003】
ひび割れが発生したコンクリート構造物については、そのひび割れ部にグラウトを注入する注入工法により補修がなされる。これらのひび割れ注入工法において使用可能な注入材は、ひび割れ幅が 0.2〜 5.0mmのひび部分に対して、充分に注入がなされることが要求される。
【0004】
ここでひび割れ注入材としては、エポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系などの樹脂系のものが用いられており、またこれら樹脂系注入材のほかに、ポリマーセメントスラリー系や超微粒子無機系などの無機系の注入材も用いられている。
【0005】
上記のうちエポキシ樹脂系注入材は、接着性、耐久性、耐水性、耐アルカリ性、寸法安定性などの性質がすぐれているため、最も多く使用されている。このエポキシ樹脂系注入材は、エポキシ樹脂主剤とその硬化剤とからなる2液型のものであり、主剤または硬化剤の少なくとも一方に充填材を配合することもある。
【0006】
そしてひび割れ注入工法にあっては、壁面や天井面に発生したひび割れに合わせて、低圧注入器具にエポキシ樹脂系注入材を入れたものを多数準備し、ひび割れに合わせてセットし、ゴム、バネ、空気圧などにより注入が行われる。セットする注入材入り低圧注入器具の数は、対象面のひび割れ状況によって異なるが、それほど広くない面積に対しても数十本とか百本以上というようにかなりの本数になる。注入時間は、たとえば半日とか1日である。ある一定面積を修復するとき、通常は、足場組みに1日、セットに1日、取り外しおよび表面の仕上げ化粧に1日を要するので、作業には少なくとも3日を要することになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のひび割れ注入工法は、現在では広く採用されている方法であるが、上記のように作業に少なくとも3日を要し、セット工程に要する人員および費用、低圧注入器具の取り外し工程に要する人員および費用はかなり大きなものとなる。
【0008】
加えて、上記のひび割れ注入工法は、ひび割れ幅が 0.2mm程度から 5.0mm程度までのひび部分に対して注入を行うものであり、ひび割れ幅が 0.2mm程度あるいはそれより狭い微細ひび割れについては、それが余りに多いので対処できない上、たとえ微細ひび割れに対して注入工法を適用しようとしても、その微細ひび割れの内部に注入材が入りこめないという限界がある。
【0009】
結局、微細ひび割れについては、上記従来のひび割れ注入工法にあっては、これを無視して修復作業を行わざるをえないのである。
【0010】
しかしながら、ひび割れ幅が 0.2mm程度かそれ未満の微細ひび割れにあっても、依然としてそこから水や空気が入り込み、鉄筋を腐食させる危険が高まることに変わりはない。しかるに、従来は、このような微細ひび割れに対処する有効な方法自体が見い出されていないのが現状である。
【0011】
本発明は、このような背景下において、発見が困難な微細クラックから、幅が 0.5mm程度のひび割れを有するコンクリート構造物にあっても、単にその構造物の壁面や天井面に塗布するだけで、微細ひび割れ内部に接着性組成物を充填、硬化させることができ、それにより確実かつ容易に補強ないし補修を行うことのできるコンクリート構造物の補強・補修方法を提供すること、およびそのための浸透型の接着性組成物を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のコンクリート構造物の補強・補修方法は、エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液と、硬化剤を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物であり、このエポキシ樹脂組成物が充填剤を含まないクリア系の組成物であり、その粘度がB型粘度計による測定で100〜2000mPa・s/20゜Cの範囲内であり、2液混合後の組成物の5rpmにおける粘度と50rpmにおける粘度との比率ηs/ηsoが、B型粘度計による測定で1.1〜2.0の範囲内であり、水平面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが15mm以上で、垂直面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが25mm以上である浸透型接着性組成物を、コンクリート構造物の表面に複数回塗布して微細なひび割れ部に浸透させて硬化させることを特徴とする。
【0013】
本発明の浸透型接着性組成物は、エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液と、硬化剤を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物であり、このエポキシ樹脂組成物が充填剤を含まないクリア系の組成物であり、その粘度がB型粘度計による測定で100〜2000mPa・s/20゜Cの範囲内であり、2液混合後の組成物の5rpmにおける粘度と50rpmにおける粘度との比率ηs/ηsoが、B型粘度計による測定で1.1〜2.0の範囲内であり、水平面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが15mm以上で、垂直面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが25mm以上であることを特徴とする。また上記のエポキシ樹脂主剤を主成分とするA液は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、反応性希釈剤と、チクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることを特徴とする。また上記のエポキシ樹脂主剤を主成分とするA液は、少なくとも一部がビスフェノールA型エポキシ樹脂であるビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、モノまたはジグリシジルエーテル系の反応性希釈剤と、無機または有機系のチクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0015】
〈浸透型接着性組成物〉
本発明においては、浸透型接着性組成物として、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液とその硬化剤(B) を主成分とするB液とからなり、次の要件を全て満足する2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)を用いる。
【0016】
まず要件(イ)として、そのエポキシ樹脂組成物(AB)は、実質的に充填剤を含まないクリア系の組成物であることが必要である。充填剤を含むものは、浸透性が悪くなるので、本発明の目的には適していない。ただし、浸透性に悪影響を与えない程度の名目的な量の充填剤を含有していても、本発明から外れることにはならない。
【0017】
また要件(ロ)として、2液混合後の組成物の粘度が、B型粘度計による測定で、100〜2000 mPa・s/20℃の範囲内にあることが必要である。粘度が100mPa/20℃未満では、微細ひび割れ部を充填することが難しくなり、また垂れが著しいので、壁面や天井面に対して塗布するときの作業性が悪くなる。一方、粘度が2000mPa/20℃を越えるときには、微細ひび割れ部に対し浸透性が不足するようになり、補強・補修を図ることが難しくなる。
【0018】
次に、要件(ハ)として、2液混合後の組成物の5rpm における粘度と50rpm における粘度との比率η5 /η50が、B型粘度計による測定で、 1.1〜 2.0の範囲内であることが必要である。この比率はチクソトロピック性の指標ということができる。この比率η5 /η50が 1.1未満であるときは、ひび割れ幅が比較的広いときに、浸透した組成物の保持性が低下して、そのような微細ひび割れ部を充填しにくくなる。一方、この比率η5 /η50が 2.0を越えるときは、微細ひび割れ部への浸透性が不足することになる。
【0019】
さらに、要件(ニ)として、40mm×40mmの断面で長さ160mmのセメントモルタルブロックの中央部付近に曲げ荷重を加え2片に破断した後、その2片の破断面を 0.2mmの間隔をあけて突き合わせ対向させた状態で固定することにより試験片となし、その試験片をそれぞれ水平姿勢、垂直姿勢に維持し、温度20℃の条件下において、水平姿勢の試験片にあってはその下面側から、垂直姿勢の試験片にあってはその片面側から、2液混合後の組成物をロールコーターを用いて250g/m2の厚みに塗布して浸透性試験を行ったとき、上記の突き合わせ対向させた 0.2mmの間隙に対する浸透深さが、水平姿勢の試験片については15mm以上(好ましくは20mm以上、殊に25mm以上)であり、垂直姿勢の試験片については25mm以上(好ましくは30mm以上、殊に35mm以上)であることが必要である。浸透深さが上記の下限を下回るときは、微細ひび割れ部を充分には充填することができず、所期の補強・補修効果が得られがたい。なおこの浸透深さは、上記の要件(ロ)、(ハ)によっても影響を受けるが、さらに組成物の表面張力と相関関係がある。浸透深さの上限については限定はないが、水平姿勢の試験片については35mm程度が限界であることが多い(垂直姿勢の試験片については通常は試験片の厚みである40mm全体に浸透するのが通常である)。
【0020】
図1は、この浸透性試験の操作法を示した説明図である。まず▲1▼のブロックを準備し、これを▲2▼のように2片に破断し、ついで▲3▼のように2片の破断面の一辺に厚さ 0.2mmのスペーサーを設置し、 0.2mmの間隙をあけて突き合わせ対向させた状態でクランプにて固定し、▲4▼のように3面をテープにてシールする。次に、▲5▼-1のように試験片を水平姿勢にして未シールの底面(天井面)から組成物を塗布するか、▲5▼-2のように試験片を垂直姿勢にして未シールの側の片面(鉛直面)から組成物を塗布する。
【0021】
上記要件を満足する2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)のうち、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、反応性希釈剤と、チクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることが好ましい。
【0022】
そしてA液は、より具体的には、少なくとも一部がビスフェノールA型エポキシ樹脂であるビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、モノまたはジグリシジルエーテル系の反応性希釈剤と、無機または有機系のチクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることが好ましい。
【0023】
少なくとも一部がビスフェノールA型エポキシ樹脂であるビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、主剤成分である。この場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と併用することが好ましい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の結晶化を防止すると共に、低温下における粘度を低く保つ準主剤成分であるということができる。
【0024】
ここでエポキシ樹脂主剤(A) としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のほか、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂)、グリシジルアミン系樹脂を用いることもできる。ただし、それらを単独で用いるよりも、先に述べたビスフェノールA型エポキシ樹脂またはこれとビスフェノールF型エポキシ樹脂と共に、併用した方が好ましい。そのほか、場合によっては、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、複素環式エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂なども、先に述べたビスフェノールA型エポキシ樹脂またはこれとビスフェノールF型エポキシ樹脂と、併用の形で用いることができる。
【0025】
反応性希釈剤は、先に述べたように、モノまたはジグリシジルエーテル系の反応性希釈剤であることが望ましい。モノまたはジグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールモノまたはジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノまたはジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノまたはジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノまたはジグリシジルエーテル、炭素数が8以上、さらには10以上の長鎖のアルキルグリコールのモノまたはジグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0026】
反応性希釈剤としては、そのほか、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、オレフィンオキサイド、オクチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、3−(ペンタデシル)フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジペンテンモノオキサイド、α−ピネンオキサイド、tert−カルボン酸のグリシジルエステル等のモノエポキシ化合物をはじめとする低粘度のモノまたはポリエポキシ化合物などがあげられる。そのほか、フルフリルアルコールのような反応性の基を有するアルコール系の反応性希釈剤も使用可能である。
【0027】
チクソトロピック性付与剤としては、無機系、有機化した無機系、または有機系のものが用いられる。このうち無機系のチクソトロピック性付与剤の例は、ケイ酸系(微粒子無水ケイ酸ないしヒュームドシリカ)、含水ケイ素マグネシウム系(セピオライト、クリソスタイル等)、ケイ酸アルミニウム系(モンモリロナイト系ベントナイト、ゼオライト等)などである。有機化した無機系のチクソトロピック性付与剤の例は、層間に有機分子を吸着させた有機ベントナイトである。有機系のチクソトロピック性付与剤の例は、ポリヒドロキシカルボン酸またはそのアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ジベンザルソルビット、ある種の界面活性剤などである。
【0028】
表面張力低下剤としては、たとえば、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、シリコーン変性ポリアクリレート、ポリシロキサン、アクリル添加物などがあげられる。上述のチクソトロピック性付与剤の中にも表面張力低下作用を有するものがあるので、そのチクソトロピック性付与剤を表面張力低下剤として兼用することもできる。
【0029】
2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)のうち、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液の各成分の配合割合は、エポキシ樹脂主剤および反応性希釈剤の合計量を100重量%とするとき、たとえば、
・ビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤の割合は60〜90重量%、好ましくは65〜85重量%(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用するときは、その重量比はたとえば50:50〜75:25)、
・反応性希釈剤の割合は40〜10重量%
とすることが多い。また、エポキシ樹脂主剤および反応性希釈剤の合計量を100重量部とするとき、
・チクソトロピック性付与剤の割合は 0.1〜3重量%、
・表面張力低下剤の割合は 0.1〜3重量%
とすることが多い。
【0030】
このような配合割合においてバランスのとれた性質が得られるからである。ただし、上記の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の要件を満足することが必要である。
【0031】
上記要件を満足する2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)のうち、硬化剤(B) を主成分とするB液としては、
・脂肪族第一アミン(脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、芳香環含有脂肪族ポリアミン、脂環ポリアミン、環状ポリアミン等)、芳香族第一アミン、第三アミン硬化剤、含リンまたは含ハロゲンアミン硬化剤、変性ポリアミンアダクトなどのアミン系硬化剤、
・ポリアミノアミド系硬化剤、
・脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、ハロゲン系酸無水物などの酸または酸無水物系硬化剤
などの硬化剤が用いられる。
【0032】
好ましい硬化剤(B) は、低粘度で長いポットライフを与える変性脂肪族ポリアミン系硬化剤、または湿潤面に対する接着性を与える変性脂環式アミン系硬化剤であり、特に好ましい硬化剤(B) は、これらを併用した組成物、あるいはその組成物にさらに低温硬化性を与える第3級アミン系硬化剤を少量併用した組成物からなるものである。このときの割合は、変性脂肪族ポリアミン系硬化剤、変性脂環式アミン系硬化剤、第3級アミン系硬化剤の合計量を100重量%とするとき、変性ポリアミン系硬化剤が35〜70重量%、変性脂環式アミン系硬化剤が30〜65重量%、第3級アミン系硬化剤が0〜10重量%とすることが好ましい。
【0033】
硬化剤(B) を主成分とするB液にも、先に述べた反応性希釈剤、チクソトロピック性付与剤、表面張力低下剤などを配合しておくこともできる。
【0034】
エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液およびその硬化剤(B) を主成分とするB液の少なくとも一方(殊に双方)には、カップリング剤を配合しておくことが好ましい。カップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤などがあげられる。カップリング剤を使用するときは、その配合量は、エポキシ樹脂主剤(A) または硬化剤(B) に対し、たとえば 0.1〜5重量%とすることが多い。
【0035】
また、A液およびB液の少なくとも一方には、本発明の趣旨を損なわない範囲において、可塑剤、有機溶剤、軟化剤をはじめとする粘度低下ないし相溶性向上のための添加剤を含有させることができる。そのほかにも、エポキシ樹脂接着剤に用いられる種々の添加剤を含有させることもできる。
【0036】
A液とB液との割合は、使用するエポキシ樹脂主剤(A) および硬化剤(B) との関係で異なるが、エポキシ当量/活性水素当量の比に基く必要量に、実験的に定めた最適量を参考にして決めればよく、一般にはエポキシ樹脂主剤(A) 100重量部に対し10〜100重量部、殊に20〜80重量部とすることが多い。
【0037】
〈コンクリート構造物の補強・補修方法〉
上述の浸透型接着性組成物を用いて、微細ひび割れ部を生じているコンクリート構造物(1) の補強・補修方法が実施される。コンクリート構造物(1) としては、コンクリート床板、コンクリート橋脚、コンクリート梁、コンクリート外壁、コンクリート架台、コンクリート堰堤、コンクリート砂防ダム、トンネル、ビルなどが例示できる。これらのコンクリート構造物の壁、天井等、外面に適用でき、加えて湿潤面に対しても有効であるところが、本発明の特長点でもある。
【0038】
このときには、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液と硬化剤(B) を主成分とするB液とを用いて、使用の直前に両者を混合するか、二頭ガン等を用いて使用と同時に両者を混合し、ついでロールコート方式やハケによりコンクリート構造物(1) に塗布する操作を1回ないし必要回数繰り返すだけでよい。これにより、コンクリート構造物(1) の微細ひび割れ部にエポキシ樹脂組成物(AB)が浸透して充填されるので、あとは放置しておくだけでよい。浸透したエポキシ樹脂組成物(AB)は半日とか1,2日、長くても数日で自然硬化し、コンクリート構造物(1) の強固な補強・補修が達成される。仕上げは必ずしも必要ではないが、美観の点からモルタル仕上げや樹脂塗装仕上げなどの仕上げ処理をすることもできる。
【0039】
施工場所の気温が低いときには、接着性組成物を少量ずつ何回かに分けて塗布することにより、液だれを防止することができる。
【0040】
塗布面に、ビニロン繊維糸製のネット、ビニロン繊維糸−炭素繊維糸製のネット、ガラス繊維糸製のネットなどを貼着することも好ましい。特にビニロン繊維糸が正三角形の格子を形成した3軸織物の格子点を固定したネットを貼着すると、コンクリート構造物(1) の剥落防止にとって特に有効である。
【0041】
なお、本発明の方法によっては大きなひび割れ部については充填が不充分となるので、そのような大きなひび割れ部については、従来と同様の注入材の注入工法を実施し、ついで本発明の微細ひび割れ部の補強・補修方法を実施すればよい。
【0042】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
【0043】
《粘度、チクソトロピック性、表面張力の影響》
〈粘度条件についての検討〉
次の処方で、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液と硬化剤(B) を主成分とするB液とを調製した。
【0044】
(配合原料の準備)
A液用、B液用の成分として次のものを準備した。
−A液用−
1: 液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との重量比で50:28の混合物
2: アルキルグリシジルエーテル(反応性希釈剤)
3: アルキルグリコールジグリシジルエーテル(反応性希釈剤)
−B液用−
1: 変性脂肪族ポリアミン
【0045】
(配合処方、特性)
上記の原料を用いて表1の配合処方の接着性組成物を調製し、B型粘度計により20℃における粘度(mPa・s/20℃) を測定した。
【0046】
これとは別に、300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート平版試験体に曲げ荷重を加えて微細な未貫通ひび割れを発生させ、そのコンクリート試験体をひび割れ部を下面にして水平にセットし、表1の接着性組成物をロールコーターを用いて下面に250g/m2の厚みに塗布してから、 0.1〜0.25mmの未貫通ひび割れ部への浸透深さを測定した。結果を表1に併せて示す。表1における塗布の容易さの評価は、好ましいものの順に◎、○、□、△の4段階で判定した。
【0047】
【表1】
Figure 0003820469
【0048】
表1から、上記の処方の下においては、塗布の容易さおよび微細ひび割れ部への浸透性から見たときの最適の粘度範囲は350〜700 mPa・s/20℃であり、この範囲より粘度が低くなるにつれて、あるいはこの範囲より粘度が高くなるにつれて、相対的にバランスが悪くなっていく傾向があることがわかる。
【0049】
〈チクソトロピック性についての検討〉
(配合処方、特性)
上述の原料のほかにチクソトロピック性付与剤として
4: セピオライト Mg8Si12O30(OH)4(OH2)4・8H2Oを主たる成分とする無機系
チクソトロピック性付与剤の混合物
を用いて、表2の配合処方の接着性組成物を調製し、上述の条件にて、2液配合後の組成物のB型粘度計による5rpm における粘度(mPa・s/20℃) と50rpm における粘度(mPa・s/20℃) との比率η5 /η50を測定すると共に、塗布の容易さ、ダレの程度、 0.1〜0.25mmの未貫通ひび割れ部への浸透深さを評価または測定した。結果を表2に示す。表中、塗布の容易さ、ダレの有無の評価は、好ましいものの順に◎、○、□、△の4段階で判定した。
【0050】
【表2】
Figure 0003820469
【0051】
表2と表1との対比から、上記の処方の下においては、塗布の容易さ、ダレの抑制、および微細ひび割れ部への浸透性から見たときの最適のチクソトロピック性付与剤の配合量は 0.2〜 1.5部(η5 /η50で1.10〜2.00)であり、この範囲よりチクソトロピック性が小さくなるにつれて、あるいはこの範囲よりチクソトロピック性が大きくなるにつれて、相対的にバランスが悪くなっていく傾向があることがわかる。
【0052】
〈表面張力についての検討〉
(配合処方、特性)
上述の原料のほかに表面張力低下剤として
5: シリコーン変性ポリアクリレート
を用いて、表3の配合処方の接着性組成物を調製し、上述の条件にて、η5 /η50を測定すると共に、塗布の容易さ、湿潤コンクリート面への濡れ性、 0.1〜0.25mmの未貫通ひび割れ部への浸透深さを評価または測定した。結果を表3に示す。表中、塗布の容易さ、湿潤コンクリート面への濡れ性の評価は、好ましいものの順に◎、○、□、△の4段階で判定した。
【0053】
【表3】
Figure 0003820469
【0054】
表3と表1,2との対比から、上記の処方の下においては、塗布の容易さ、湿潤コンクリート面への濡れ性、および微細ひび割れ部への浸透性から、最適の表面張力低下剤の配合量は 0.2〜 1.5部であり、この範囲より表面張力低下剤の配合量が小さくなるにつれて、あるいはこの範囲より表面張力低下剤の配合量が大きくなるにつれて、相対的にバランスが悪くなっていく傾向があることがわかる。
【0055】
《第1の実施例》
〈浸透型接着性組成物の調製〉
次の処方で、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液と硬化剤(B) を主成分とするB液とを調製した。
【0056】
(A液処方)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂 50部
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂 28部
・アルキルグリシジルエーテル(反応性希釈剤) 9部
・アルキルグリコールジグリシジルエーテル(反応性希釈剤) 10部
・無機系チクソトロピック性付与剤(先に述べたもの) 1部
・シリコーン変性ポリアクリレート(表面張力低下剤) 1部
・カップリング剤 1部
【0057】
(B液処方)
・変性ポリアミドアミン 40部
・変性イソフォロンジアミン 30部
・変性ポリオキシプロピレンアミン 20部
・ジメチルアミノメチルフェノール 1部
・メタキシリレンジアミン変性アミン 9部
【0058】
上記のエポキシ樹脂主剤(A) からなるA液と上記の硬化剤(B) からなるB液とを、重量比で100:40(体積比で2:1)の割合で使用直前に混合して組成物を調製し、以下の試験に供した。
【0059】
(エポキシ樹脂組成物(AB))
上記のエポキシ樹脂組成物(AB)は、
(イ)実質的に充填剤を含まないクリア系の組成物であること、
(ロ)2液混合後の組成物の粘度は、B型粘度計による測定で、100〜2000 mPa・s/20℃の範囲内であること、
(ハ)2液混合後の組成物の5rpm における粘度と50rpm における粘度との比率η5 /η50は、B型回転粘度計による測定で、 1.1〜 2.0の範囲内にあること、
(ニ)図1に示した浸透性試験における水平姿勢における底面(天井面)からの組成物の浸透深さは15mm以上であり、垂直姿勢における片面(鉛直面)からの組成物の浸透深さは25mm以上であること
の条件を全て満たしている。
【0060】
(組成物の粘度)
混合後の時間と粘度との関係を表4に示す。
【0061】
【表4】
Figure 0003820469
【0062】
気温と可使時間との関係を下記に示す。300g混合後の液にべたつきを生じる前の状態を可使時間とした。
可使時間
5℃: 120分、10℃: 115分、15℃:75分、20℃:60分、25℃:30分
【0063】
この組成物をコンクリート試験体に250g/m2塗布し、各気温ごとの指触乾燥時間と初期硬化時間を測定した。
指触乾燥時間
5℃:20hr、10℃:15hr、15℃:10hr、20℃: 8hr、25℃: 7hr
初期硬化時間
5℃:28hr、10℃:20hr、15℃:16hr、20℃:12hr、25℃:10hr
【0064】
上記組成物で圧縮、曲げ、引張、引張剪断強度の試験体を作製し、各材令ごとに試験体の強度を測定し、平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
Figure 0003820469
【0066】
〈浸透試験および破壊試験/第1〉
上記のA液とB液とを混合した接着性組成物を用いて、以下の浸透試験および破壊試験を行った。
【0067】
(浸透試験1)
▲1▼ 300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体をハンマーで打ち、図2(イ)のような 0.1〜 0.5mmの貫通ひび割れを発生させた。
▲2▼ ついで、このコンクリート試験体を図2(ロ)のようにセットし、その下面に、上記のA液とB液とを100:40の重量比で混合した接着性組成物を、ロールコーターを用いて、250g/m2の厚みに塗布した。
▲3▼ これを20℃に7日間放置して硬化養生した。
▲4▼ コンクリート試験体のひび割れ接着部分から、ダイアモンドカッターにて外径45mmのコアを採取した。
▲5▼ コア切断面より、ひび割れへの接着性組成物の浸透状況を観察した。
【0068】
(浸透試験2)
▲1▼ 300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体に曲げ荷重を加え、図3(イ)のような 0.1〜 0.5mmの貫通ひび割れを発生させた。
▲2▼ ついで、このコンクリート試験体を図3(ロ)のようにセットし、B液をその下面に、上記のA液とB液とを100:30の重量比で混合して接着力を低減させた接着性組成物(B液を25%低減)を、ロールコーターを用いて、250g/m2の厚みに塗布した。
▲3▼ これを20℃に1日間放置して硬化養生した。
▲4▼ コンクリート試験体に曲げ荷重を加え、供試体を破壊した。
▲5▼ 破断面より、ひび割れへの接着性組成物の浸透状況を観察した。
【0069】
(浸透試験3)
▲1▼ 300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体に、図4(イ)のような曲げ荷重を加え、図4(ロ)のような 0.1〜 0.5mmの未貫通ひび割れを発生させた。
▲2▼ ついで、このコンクリート試験体を図4(ハ)のように水平(天井面を想定)および鉛直(壁面を想定)にセットし、上記のA液とB液とを100:40の重量比で混合した接着性組成物にさらに紫外線発光剤を混合したものを、ロールコーターを用いて、各々250g/m2の厚みに塗布した。
▲3▼ 硬化養生後の供試体に曲げ荷重を加えて破壊した。
▲4▼ 浸透接着部(コンクリート試験体のひび割れ接着部分)から、ダイアモンドカッターにて外径45mmのコアを各2個採取した。
▲5▼ コア切断面に紫外線ランプを照射し、微小クラックを含むひび割れへの接着性組成物の浸透状況を観察した。
【0070】
(浸透試験4)
▲1▼ 300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体に、図4(イ)のような曲げ荷重を加え、図4(ロ)のような 0.1〜 0.5mmの未貫通ひび割れを発生させた。
▲2▼ ついで、このコンクリート試験体を図4(ハ)のように水平(天井面を想定)および鉛直(壁面を想定)にセットし、上記のA液とB液とを100:40の重量比で混合した接着性組成物を、ロールコーターを用いて、各々250g/m2の厚みに塗布した。
▲3▼ これを20℃に8時間放置して硬化養生した。
▲4▼ 供試体に曲げ荷重を加え、破壊した。
▲5▼ 破断面より、ひび割れへの接着性組成物の浸透状況を観察した。
【0071】
(破壊試験1)
▲1▼ 300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体に曲げ荷重を加え、図5(イ)のような 0.1〜 0.5mmの未貫通ひび割れを発生させた。
▲2▼ ついで、このコンクリート試験体を図5(ロ)のように水平(天井面を想定)および鉛直(壁面を想定)にセットし、上記のA液とB液とを100:40の重量比で混合した接着性組成物を、ロールコーターを用いて、各々250g/m2の厚みに塗布した。
▲3▼ これを20℃に7日間放置して硬化養生した。
▲4▼ コンクリート試験体に図5(ハ)のような荷重を加え、破壊荷重の測定と破壊状況を観察した。
【0072】
(浸透試験の試験結果)
上記の浸透試験1〜4の結果を下記および図6〜9に示す。
【0073】
(1) 浸透試験1
接着性組成物は、図6のように、ひび割れに対し、塗布面より約20〜30mmまで浸透した。(図6参照)
【0074】
(2) 浸透試験2
接着性組成物は、図7のように、塗布面より約20mmまでは全体に浸透し、部分的には上端まで浸透した。浸透率は全断面の約60%であった。(図7参照)
【0075】
(3) 浸透試験3
・天井面塗布供試体
接着性組成物は、図8のように、天井面塗布においては塗布面より20〜25mmまで浸透した。また充填部の先端部分では0.04〜0.08mmの微小クラックにも浸透することが確認できた。(図8(イ)、(ロ)参照)
・鉛直面塗布供試体
接着性組成物は、図8のように、鉛直面塗布においては塗布面から反塗布面まで、微小クラックを含むひび割れ部のほぼ全体に浸透することが確認できた。(図8(ハ)参照)
【0076】
(4) 浸透試験4
・天井面塗布供試体
接着性組成物は、図9のように、天井面塗布においては塗布面より20〜25mmまで浸透することが確認できた。(図9(イ)参照)
・鉛直面塗布供試体
接着性組成物は、図9のように、鉛直面塗布においては塗布面から反塗布面までのひび割れ部のほぼ全体に浸透することが確認できた。(図9(ロ)参照)
【0077】
(破壊試験の試験結果)
上記の破壊試験1の結果を下記の表6に示す。いずれの供試体にあっても、その破壊は別の位置による破壊であった。
【0078】
【表6】
Figure 0003820469
【0079】
(解析)
上記の試験結果から次のことがわかる。
1.本発明の接着性組成物は、天井面塗布においては、塗布面より20mmまではひび割れの全体に浸透し、先端部分では0.01mmの微小クラックまで浸透充填される。
2.鉛直面塗布においては、塗布面から反塗布面までほぼ全体に浸透し、 0.1mm以下の微小クラックまで浸透充填される。
3.浸透接着後の曲げ破壊試験においては、天井面塗布供試体および鉛直面塗布供試体とも、約90%の値が得られる。また破壊部位はいずれも、浸透接着部ではなく、新たなひび割れによる破壊である。
【0080】
〈浸透試験および破壊試験/第2〉
(コンクリート斫り面/浸透および破壊試験)
300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体8枚をチッピングハンマーにて目粗した後、曲げ荷重を加えて 0.1〜 0.5mmのひび割れを設け、図10(イ)〜(ニ)のように設置してから、上述の接着性組成物(紫外線発光剤を混合したもの)を塗布した。施工温度は11℃、材料粘度は800 mPa・s 、塗布量は250g/m2(3回塗り)とした。
【0081】
これを20℃で7日間硬化養生の上、ダイアモンドコアカッターで試料を採取後、紫外線ランプを用いて浸透状況を観察した。残りの4枚に曲げ荷重を加え、破壊強度の測定と破壊状況を観察した。
【0082】
浸透性の観察結果を図11(イ)〜(ニ)に示す。破壊試験の結果は次の表7の如くであった。
【0083】
【表7】
Figure 0003820469
【0084】
〈性能試験/第3〉
(低温下における塗布試験)
300mm×300mm×60mmの大きさのコンクリート試験体の表面を平滑および目粗し、曲げ荷重を加えて 0.1〜 0.5mmのひび割れを設け、5℃の恒温室内に傾斜45°に設置後、上述の接着性組成物(紫外線発光剤を混合したもの)の塗布を、塗布方法(塗布回数、塗布量)、液温調整、粘度調整した塗布試験を行い、液だれの有無と浸透状況を観察した。
【0085】
(1)平滑面塗布試験
Figure 0003820469
【0086】
(1-1) 液温5℃で40gを2回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を毛先が埋没する程度(100g)含ませ、30g(333g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に10g(111g/m2)を塗布した。その結果、塗布量40gに対し液だれが12g生じた。浸透深さは約10mmであった。
【0087】
(1-2) 液温5℃で22.5gを5回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を毛先が埋没しない程度(80g)含ませ、4回に分けて18g(200g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に 4.5g(50g/m2)を塗布した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約20〜30mmであった。
【0088】
(1-3) 液温10℃で22.5gを4回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を毛先が埋没しない程度(80g)含ませ、3回に分けて20g(222g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に 2.5g(83g/m2)を塗布した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約25〜40mmであった。
【0089】
(1-4) 液温20℃で22.5gを4回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を毛先が埋没しない程度(80g)含ませ、3回に分けて20g(222g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に 2.5g(83g/m2)を塗布した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約25〜40mmであった。
【0090】
(2)斫り面塗布試験
Figure 0003820469
【0091】
(2-1) 液温5℃で36gを3回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を110g含ませ、2回に分けて20g(222g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に10g(111g/m2)を塗布した。その結果、塗布量36gに対し液だれが14g生じた。浸透深さは約20mmであった。
【0092】
(2-2) 液温5℃で25gを7回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を20〜40g含ませ、5回に分けて20g(222g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に2回に分けて5g(55g/m2)を塗布した後、3分後に 7.5gを刷毛に含ませることにより除去した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約20〜30mmであった。
【0093】
(2-3) 液温10℃で22.5gを8回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を30〜60g含ませ、6回に分けて18g(200g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に2回に分けて 4.5g(50g/m2)を塗布した後、3分後に5gを刷毛に含ませることにより除去した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約20〜40mmであった。
【0094】
(2-4) 液温20℃で22.5gを6回に分けて塗布
刷毛に接着性組成物を30〜60g含ませ、6回に分けて18g(200g/m2)をコンクリート試験体に塗布し、5分後に 4.5g(50g/m2)を塗布した後、3分後に7gを刷毛に含ませることにより除去した。その結果、液だれはなく、浸透深さは約25〜40mmであった。
【0095】
(解析)
本発明の接着性組成物は、5℃の低温下においては、傾斜面などに塗布するときに過剰に塗布すると余剰液が垂れ落ちることがある。このような垂れ落ちは、(a) 1回の塗布量を少なくし、塗布回数を7〜8回にして、200g/m2を目安に塗布する方法、(b) 接着性組成物を20℃前後に加温して塗布回数を7〜8回にして、200g/m2を目安に塗布する方法、(c) 低粘度品を用いる方法、などにより対処することができる。
【0096】
【発明の効果】
本発明において用いる接着性組成物(2) は、エポキシ樹脂主剤(A) を主成分とするA液とその硬化剤(B) を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物(AB)である。そのエポキシ樹脂組成物(AB)は、
(イ)実質的に充填剤を含まないクリア系の組成物であり、
(ロ)2液混合後の組成物の粘度は100〜2000 mPa・s/20℃の範囲内にあり、
(ハ)2液混合後の組成物のチクソトロピック性を示す指標η5 /η50は 1.1〜 2.0の範囲内にあり、
(ニ)図1に示した浸透性試験における水平姿勢における底面(天井面)からの組成物の浸透深さは15mm以上であり、垂直姿勢における片面(鉛直面)からの組成物の浸透深さは25mm以上である。
【0097】
このような工夫を講じてあるため、本発明の組成物を用いてコンクリート面に塗布すると、壁面、天井面、傾斜面であっても、微細なひび割れに組成物が浸透してひび割れを充填すると共に、硬化する。このときの接着力は極めて強力であるので、破壊試験を行っても、破壊部位は浸透接着部ではなく、新たなひび割れによる破壊となる。従って、コンクリート構造物(1) の微細ひび割れ面に対する所期の補強・補修目的が確実に達成できる。
【0098】
しかも、本発明の組成物を用いれば、単に塗布するだけでよいので、上向き姿勢で接着作業を行ってもそれほど苦にならず、施工性が良好であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項で規定する浸透性試験の操作法を示した説明図である。
【図2】浸透試験1の説明図である。
【図3】浸透試験2の説明図である。
【図4】浸透試験3の説明図である。
【図5】浸透試験4の説明図である。
【図6】破壊試験1の説明図である。
【図7】浸透試験2の結果を示した概略図である。
【図8】浸透試験3の結果を示した概略図である。
【図9】浸透試験4の結果を示した概略図である。
【図10】コンクリート斫り面の浸透試験における組成物の塗布態様を示した説明図である。
【図11】浸透性の観察結果を示した概略図である。

Claims (4)

  1. エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液と、硬化剤を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物であり、このエポキシ樹脂組成物が充填剤を含まないクリア系の組成物であり、その粘度がB型粘度計による測定で100〜2000mPa・s/20゜Cの範囲内であり、2液混合後の組成物の5rpmにおける粘度と50rpmにおける粘度との比率ηs/ηsoが、B型粘度計による測定で1.1〜2.0の範囲内であり、水平面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが15mm以上で、垂直面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが25mm以上である浸透型接着性組成物を、コンクリート構造物の表面に複数回塗布して微細なひび割れ部に浸透させて硬化させることを特徴とするコンクリート構造物の補強・補修方法。
  2. エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液と、硬化剤を主成分とするB液とからなる2液型のエポキシ樹脂組成物であり、このエポキシ樹脂組成物が充填剤を含まないクリア系の組成物であり、その粘度がB型粘度計による測定で100〜2000mPa・s/20゜Cの範囲内であり、2液混合後の組成物の5rpmにおける粘度と50rpmにおける粘度との比率ηs/ηsoが、B型粘度計による測定で1.1〜2.0の範囲内であり、水平面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが15mm以上で、垂直面における0.2mmのひび割れに対する浸透深さが25mm以上であることを特徴とする浸透型接着性組成物。
  3. エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、反応性希釈剤と、チクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることを特徴とする請求項に記載の浸透型接着性組成物。
  4. エポキシ樹脂主剤を主成分とするA液は、少なくとも一部がビスフェノールA型エポキシ樹脂であるビスフェノール型のエポキシ樹脂主剤と、モノまたはジグリシジルエーテル系の反応性希釈剤と、無機または有機系のチクソトロピック性付与剤と、表面張力低下剤との組成物からなることを特徴とする請求項に記載の浸透型接着性組成物。
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